説明

媒体カセット、記録装置

【課題】上段載置部と下段載置部と分離部とを有する構成における媒体の分離精度を考慮した媒体カセットを提供すること。
【解決手段】媒体カセット(5)は、下段載置部6と、媒体(P)の送り方向上流側の第1位置のときと、下流側の第2位置のときとを切り換えることができる上段載置部11と、前記下段載置部6に設けられ、媒体(P1、P2)を分離する共通分離部(7)と、前記上段載置部11に設けられ、送り方向下流側に突出した突起部11a、11a…と、前記下段載置部6に設けられ、前記上段載置部11が前記第2位置のとき、前記突起部11a、11a…を支持する支持部6a、6a…と、を備え、該支持部6a、6a…は、前記共通分離部(7)に対して、力伝達的に独立して設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を送る送り装置本体に対して着脱可能な媒体カセットであって、下段載置部と、上段載置部と、前記下段載置部に設けられた分離部と、を備えた媒体カセットおよび該媒体カセットを備えた記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、給紙カセットは、上段トレイと、下段トレイと、を備えていた。前記上段トレイは、前記下段トレイより用紙の載置方向上方に設けられ、前記下段トレイに対して相対的に、用紙の送り方向にスライド移動可能に構成されていた。また、前記上段トレイには、比較的小さいサイズの用紙が載置され、前記下段トレイには、前記上段トレイに載置される用紙サイズよりも大きなサイズの用紙が載置されるように構成されていた。
【0003】
またさらに、前記上段トレイを送り方向上流側へスライド移動させると、前記下段トレイに載置された用紙が選択されるように設けられていた。一方、送り方向下流側へスライド移動させると、該上段トレイに載置された用紙が選択されるように設けられていた。具体的には、前記上段トレイを送り方向上流側へスライド移動させると、記録装置本体側のピックアップローラーが、前記下段トレイに載置された用紙と接触して該用紙を送り方向下流側へ送ることができるように構成されていた。一方、前記上段トレイを送り方向下流側へスライド移動させると、前記ピックアップローラーが、該上段トレイに載置された用紙と接触して該用紙を送り方向下流側へ送ることができるように構成されていた。
【0004】
ここで、前記下段トレイにおける送り方向下流側には、重送された場合に余分な用紙を載置方向最上位の用紙から分離する傾斜分離板が形成されていた。該傾斜分離板は、載置された用紙を側視した姿勢に対して傾斜して設けられていた。また、該傾斜分離板は、前記下段トレイの用紙だけでなく、前記上段トレイの用紙をも分離することができるように設けられていた。言い換えると、前記傾斜分離板は、前記下段トレイの用紙が選択されたときおよび前記上段トレイの用紙が選択されたときの両方に共通して用いられる構成だった。
【0005】
また、前記下段トレイの前記傾斜分離板には、位置決め孔が形成されていた。一方、前記上段トレイの送り方向下流端には、係止片が形成されていた。そして、該上段トレイが送り方向下流側へスライド移動して上段トレイの用紙が選択されたとき、前記係止片が前記位置決め孔に挿入されるように構成されていた。これは、前記上段トレイの用紙が選択されたとき、前記上段トレイが、前記下段トレイに対して用紙の幅方向左右、載置方向上下にずれないようにするためであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4264749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記上段トレイの用紙が選択されている場合において、前記ピックアップローラーが用紙を送り方向下流側へ送る際、前記ピックアップローラーが用紙を押圧して摩擦力を発生させながら用紙を下流側へ送る。このとき、前記ピックアップローラーからの押圧力が、前記上段トレイの前記係止片を介して前記下段トレイの前記位置決め孔に作用する。そして、前記位置決め孔が受けた力は、前記傾斜分離板へ伝達する。即ち、前記上段トレイを支持する前記位置決め孔は、受けた力を前記傾斜分離板へ直接伝達する構成であった。そのため、該傾斜分離板が変形し、姿勢が変化する虞が生じる。これにより、相対的に用紙が前記傾斜分離板へ進入する角度が変わり、用紙の分離精度が不安定になる虞が生じる。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、上段載置部と下段載置部と分離部とを有する構成における媒体の分離精度を考慮した媒体カセットおよび該媒体カセットを備えた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の媒体カセットは、媒体を送る送り装置本体に対して着脱可能な媒体カセットであって、第1の媒体が載置される下段載置部と、載置された前記第1の媒体より載置方向上方に設けられ、前記下段載置部に対して媒体の送り方向上流下流に移動することにより、送り方向上流側の第1位置のときと、該第1位置より下流側の第2位置のときとを切り換えることができる構成であり、第2の媒体が載置される上段載置部と、前記下段載置部において、載置された前記第1の媒体より送り方向下流側に設けられ、前記第1位置のとき送られる前記第1の媒体、および前記第2位置のとき送られる前記第2の媒体がそれぞれ重送された場合に重送された媒体を分離する共通分離部と、前記上段載置部における送り方向下流側に設けられ、送り方向下流側に突出した突起部と、前記下段載置部に設けられ、前記上段載置部が前記第2位置のとき、前記突起部を支持する支持部と、を備え、該支持部は、前記共通分離部に対して、力伝達的に独立して設けられていることを特徴とする。
ここで、「力伝達的に独立して」とは、複数の部分のうちの一の部分が力を受けた場合であっても、その他の部分に対して前記力が直接及ばない関係をいう。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、前記送り装置本体側の送りローラー等の送り手段によって前記第2の媒体が送り方向下流側へ送られる前記第2位置のとき、前記送り手段の付勢力が前記突起部から直接前記共通分離部に伝達することを防止することができる。具体的には、前記付勢力は前記上段載置部に載置された第2の媒体、前記上段載置部、前記突起部を介して、前記支持部へ伝達する。ここで、該支持部は、前記共通分離部に対して、力伝達的に独立して設けられているため、前記共通分離部に対して前記力が直接及ぶことがない。従って、前記共通分離部の位置が変化する虞や、該共通分離部が変形する虞が殆ど無い。その結果、前記第2位置のとき、前記第2の媒体が前記共通分離部に進入する角度を安定させることができ、前記共通分離部の分離精度を安定させることができる。
また、前記支持部および前記突起部の位置や形状の制約を少なくすることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、載置されている媒体の先後方向において、前記下段載置部における前記共通分離部を基準として前記上段載置部が設けられている側と反対側に向かって、前記第1の媒体が載置される箇所から延びた第1延設部を、前記下段載置部はさらに備えており、前記支持部は、前記第1延設部から載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、前記先後方向において前記共通分離部から離間していることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記支持部は、前記先後方向において、前記共通分離部に対して物理的に離間している。即ち、距離が離れている。従って、容易に前記支持部を、前記共通分離部に対して、力伝達的に独立して設けることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記支持部は、前記下段載置部において、載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、媒体の送り方向に対する幅方向において、前記支持部と前記共通分離部とが並んで配設され、前記支持部と前記共通分離部との間に隙間が設けられていることを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記支持部は、前記共通分離部に対して距離では接近しているが、前記隙間により前記共通分離部に対して直接的に力を伝達しない構成とすることができる。従って、容易に前記支持部を、前記共通分離部に対して、力伝達的に独立して設けることができる。
さらに、前記上段載置部における送りローラーが押圧する箇所に対して、できるだけ近い位置において、前記支持部は前記突起部を介して前記上段載置部を支持することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1の態様において、載置されている媒体の先後方向において、前記下段載置部における前記共通分離部を基準として前記上段載置部が設けられている側と反対側に向かって、前記第1の媒体が載置される箇所から延びた第1延設部と、前記共通分離部における載置方向上方の箇所から下方の前記第1延設部へ延びた第2延設部と、を前記下段載置部はさらに備えており、前記支持部は、前記先後方向に対して側視したときの前記共通分離部と、前記第1延設部と、前記第2延設部とによって形成される領域内において、前記第1延設部から載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、前記共通分離部および前記第2延設部から離間していることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記支持部は、前記共通分離部に対して物理的に離間している。従って、上記第2の態様と同様の作用効果を得ることができる。即ち、容易に前記支持部を、前記共通分離部に対して、力伝達的に独立して設けることができる。
さらに、前記第2延設部は、前記共通分離部を支えることができ、該共通分離部の剛性を高めることができる。従って、前記共通分離部の位置が変化する虞や、該共通分離部が変形する虞をより確実に防止することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の記録装置は、載置された被記録媒体を送る送り手段と、該送り手段によって送られた被記録媒体に対して記録ヘッドにより記録する記録部と、を備えた記録装置であって、前記送り手段は、上記第1から第4のいずれか一の態様の前記媒体カセットを備えており、前記被記録媒体は、前記媒体であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、前記送り手段は、上記第1から第4のいずれか一の態様の前記媒体カセットを備えており、前記被記録媒体は、前記媒体である。従って、前記記録装置において、上記第1から第4のいずれか一と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例のプリンター全体の概略を示す側面図。
【図2】本実施例の二段カセットを示す平面図(上段載置部が第1位置のとき)。
【図3】本実施例の二段カセットを示す側断面図(上段載置部が第1位置のとき)。
【図4】本実施例の二段カセットを示す平面図(上段載置部が第2位置のとき)。
【図5】本実施例の二段カセットを示す側断面図(上段載置部が第2位置のとき)。
【図6】(A)(B)は他の実施例1の二段カセットの要部を示す図。
【図7】他の実施例2の二段カセットの要部を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る記録装置の一例であるプリンターの概略を示す側面図である。
図1に示す如く、本発明に係るプリンター1は、媒体送り装置としての媒体送り手段2と、送り経路と、記録部16と、排出部20と、を備えている。
【0019】
このうち、媒体送り手段2は、被送り媒体の一例である用紙Pを送り方向Yに送ることができるように設けられている。また、送り経路は、媒体送り手段等によって送られる用紙Pを案内する媒体案内部によって構成されており、用紙Pが送られる経路である。
また、記録部16は、媒体送り手段2によって送られた用紙Pに対して記録を実行することができるように構成されている。またさらに、排出部20は、記録された用紙Pを排出し、排出トレイ上(図示せず)に載置することができるように設けられている。
【0020】
具体的に、媒体送り手段2は、載置部としての多段カセットの一例である二段カセット5と、ピックアップローラー3と、アーム部4と、分離部7と、第1ローラー対14と、第2ローラー対15と、を備えている。
このうち、二段カセット5は、プリンター本体(媒体送り装置本体)に対して着脱可能な構成であり、用紙Pが載置されるように設けられている。また、二段カセット5は、下段載置部6と、上段載置部11と、分離部7としての傾斜面7aと、を備えている。
【0021】
詳しくは後述するが、下段載置部6には、第1の媒体としての比較的大きいサイズの用紙P1が載置され、上段載置部11には、第2の媒体としての比較的小さいサイズの用紙P2が載置される。そして、上段載置部11をスライド移動させることにより、送られる用紙Pについて、下段載置部6に載置された用紙P1および上段載置部11に載置された用紙P2のいずれかを選択することができるように構成されている。
また、ピックアップローラー3は、モーターの動力によって駆動することができ、二段カセット5の下段載置部6および上段載置部11のそれぞれに積層された用紙P1、P2のうち、それぞれの積層方向(載置方向)最上位の用紙P1、P2と接触することができるように設けられている。尚、Z軸の矢印が示す方向は載置方向上方である。
【0022】
またさらに、アーム部4は、送り方向上流側である一端側の揺動軸4aを中心に揺動可能に設けられている。そして、送り方向下流側である他端側にピックアップローラー3を回動可能に保持するように構成されている。
尚、モーターは、アーム部4とは別のプリンター1の基体部側の箇所に設けてもよいし、アーム部上に設けてもよい。前者の場合、揺動軸4aを介してギア輪列等の動力伝達手段によってピックアップローラー3まで動力を伝達するように構成する。一方、後者の場合、揺動軸4aを介さずにギア輪列等の動力伝達手段によってピックアップローラー3まで動力を伝達するように構成する。
【0023】
また、分離部7は、二段カセット5の下段載置部6における用紙P1がセットされる箇所より送り方向下流側に設けられている。具体的には、ピックアップローラー3によって送られる用紙Pを側視した姿勢に対して傾斜した傾斜面7aと有している。そして、用紙P(P1、P2)が重送された場合、ピックアップローラー3に対して最上位の用紙P(P1、P2)と次位以降の用紙P(P1、P2)とを分離することができるように設けられている。所謂、土手分離機構である。
ここで、「土手分離機構」とは、所定の角度で用紙Pが進入するように面を設け用紙Pの先端に負荷を与えることにより分離する機構をいう。
【0024】
尚、用紙Pの幅方向Xにおいて、傾斜面7aが設けられていない箇所には、用紙P(P1、P2)の先端を案内するリブ8、8…が適度な間隔で設けられている(図2、図4参照)。リブ8、8…は、傾斜面7aが設けられていない箇所における用紙P(P1、P2)の経路と、設けられている箇所における用紙P(P1、P2)の経路との差をなくすことができるように形成されている。
【0025】
またさらに、第1ローラー対14および第2ローラー対15は、分離部7を通過した用紙P(P1、P2)を記録部16へ送ることができるように設けられている。このうち、第1ローラー対14は、第1駆動ローラー14aと、第1従動ローラー14bとを有している。
尚、第1従動ローラー14bに代えて回動に所定の負荷を伴う所謂、リタードローラーでもよい。係る場合、土手分離機構での分離が十分でない場合に、重送された用紙P(P1、P2)を確実に分離することができる。即ち、第1駆動ローラー14aと直接的に接触する用紙を、該用紙よりリタードローラー側の用紙から分離することができる。
【0026】
また、第2ローラー対15は、送り経路において第1ローラー対14より下流側に設けられている。具体的には、第2ローラー対15は、第2駆動ローラー15aと第2従動ローラー15bとを有している。そして、例えば、ステッピングモーターによって精度よく用紙P(P1、P2)を記録部16へ送ることができるように設けられている。
尚、用紙P(P1、P2)の先端が第2ローラー対15に到達した際、送り方向Yに対する用紙P(P1、P2)の姿勢を正す所謂、スキュー取りが実行されるように構成されているのは言うまでもない。
【0027】
また、記録部16は、キャリッジ17と、記録ヘッド18と、媒体支持部19と、を備えている。このうち、キャリッジ17は、用紙P(P1、P2)の幅方向Xへ延設されたガイド軸(図示せず)に案内されながら移動手段(図示せず)の動力によって幅方向Xへ移動するように構成されている。また、記録ヘッド18は、キャリッジ17に設けられており、インクを用紙P(P1、P2)に対して吐出することができるように設けられている。所謂、インクジェット式の記録である。
【0028】
またさらに、媒体支持部19は、記録ヘッド18と対向する位置に設けられ、用紙P(P1、P2)を支持し、用紙P(P1、P2)と記録ヘッド18との間の距離を所定の間隔にすることができるように構成されている。
尚、本実施形態では、インクを吐出するインクジェット式の記録部16を採用したが他の構成でもよい。例えば、トナーを用紙Pに付着させ、熱と圧力をかけて用紙Pに記録する所謂、レーザープリンターの構成でもよい。
また、排出部20は、第3ローラー対21と、図示しない排出トレイを備えている。第3ローラー対21は、送り経路において記録部16より下流側に設けられ、記録された用紙P(P1、P2)を排出トレイへ送ることができるように設けられている。
【0029】
続いて、本実施例の二段カセット5について詳しく説明する。
図2に示すのは、本実施例の二段カセットの概略を示す平面図である。また、図3に示すのは、本実施例の二段カセットの概略を示す側断面図である。またさらに、図4に示すのは、本実施例の二段カセットの概略を示す平面図である。また、図5に示すのは、本実施例の二段カセットの概略を示す側断面図である。このうち、図2および図3は、上段載置部が第1位置のときである。一方、図4および図5は、上段載置部が第2位置のときである。
【0030】
ここで、「第1位置」とは、送り方向に移動可能な範囲における送り方向上流側の位置をいう。そして、「第1位置」のときには、送られる用紙について、上段載置部の用紙および下段載置部の用紙のうち、下段載置部の用紙が選択されるように構成されている。
一方、「第2位置」とは、第1位置より送り方向下流側の位置をいう。そして、「第2位置」のときには、上段載置部の用紙および下段載置部の用紙のうち、上段載置部の用紙が選択されるように構成されている。
【0031】
[第1位置のとき]
図2に示す如く、下段載置部6には、第1エッジガイド9aと、第2エッジガイド9bと、第1後端ガイド10とがさらに設けられている。このうち、第1エッジガイド9aは、用紙Pの幅方向Xの一端側に固定して設けられている。そして、下段載置部6に載置された用紙P1の一端と接触し、該一端の位置決めをすることができるように構成されている。
【0032】
また、第2エッジガイド9bは、用紙Pの幅方向Xの他端側に、幅方向Xにスライド移動可能に設けられている。そして、第2エッジガイド9bを下段載置部6に載置された用紙P1のサイズに応じた位置にスライド移動させることにより、第2エッジガイド9bは用紙P1の他端と接触し、該他端の位置決めをすることができるように構成されている。従って、第1エッジガイド9aおよび第2エッジガイド9bによって、幅方向Xにおいて、下段載置部6に載置された用紙P1の位置を決めることができる。
【0033】
その結果、用紙P1が複数枚である場合、用紙P1の側端を揃えることができる。また、送り方向Yに対する用紙P1の姿勢を安定させることもできる。
尚、本実施例では、用紙P1を、第1エッジガイド9aを基準に位置決めをする所謂、片側揃えの構成としたが、これに限られるものではない。第1エッジガイド9aおよび第2エッジガイド9bを、ラックアンドピニオン機構によって左右対称に移動させ、用紙P1を幅方向中央に揃える所謂、中央揃えの構成としてもよいのは勿論である。
【0034】
またさらに、第1後端ガイド10は、用紙Pの送り方向上流側に、送り方向Yにスライド移動可能に設けられている。そして、第1後端ガイド10を下段載置部6に載置された用紙P1のサイズに応じた位置にスライド移動させることにより、第1後端ガイド10は用紙P1の後端と接触し、該後端の位置決めをすることができるように構成されている。従って、用紙P1が複数枚である場合、用紙P1の後端を揃えることができる。
【0035】
また、上段載置部11には、第3エッジガイド12aと、第4エッジガイド12bと、第2後端ガイド13と、突起部11a、11a…とが設けられている。このうち、第3エッジガイド12aは、第1エッジガイド9aと同様、用紙Pの幅方向Xの一端側に固定して設けられている。そして、上段載置部11に載置された用紙P2の一端と接触し、該一端の位置決めをすることができるように構成されている。
【0036】
また、第4エッジガイド12bは、第2エッジガイド9bと同様、用紙Pの幅方向Xの他端側に、幅方向Xにスライド移動可能に設けられている。そして、第4エッジガイド12bを上段載置部11に載置された用紙P2のサイズに応じた位置にスライド移動させることにより、第4エッジガイド12bは用紙P2の他端と接触し、該他端の位置決めをすることができるように構成されている。従って、第3エッジガイド12aおよび第4エッジガイド12bによって、幅方向Xにおいて、上段載置部11に載置された用紙P2の位置を決めることができる。
尚、本実施例では、片側揃えの構成としたが、中央揃えの構成としてもよいのは勿論である。
【0037】
またさらに、第2後端ガイド13は、第1後端ガイド10と同様、上段載置部11における用紙Pの送り方向上流側に、送り方向Yにスライド移動可能に設けられている。そして、第2後端ガイド13を上段載置部11に載置された用紙P2のサイズに応じた位置にスライド移動させることにより、第2後端ガイド13は用紙P2の後端と接触し、該後端の位置決めをすることができるように構成されている。
【0038】
また、突起部11a、11a…は、上段載置部11における用紙P2の送り方向下流端に、送り方向下流側に突出して設けられている。これは、後述する第2位置のときに、下段載置部6に設けられた支持部6a、6a…と接触し、支持部6a、6a…に支持されることにより、載置方向Zにおける上段載置部11の位置を決めるためである。
尚、幅方向Xにおいて、分離部7の傾斜面7a、7aは、ピックアップローラー3、3と対向する位置に設けられている。これは、ピックアップローラー3、3が接触することにより、該接触する箇所の近傍の用紙Pの先端側の姿勢を安定させることができるからである。そして、用紙Pの先端が傾斜面7a、7aに進入する角度を安定させ、分離精度を安定させることができるからである。
【0039】
また、図3に示す如く、突起部11a、11a…における載置方向上側の箇所には、傾斜部11bが形成されている。傾斜部11bは、送り方向上流側の箇所より下流側の箇所が、載置方向Zにおいて高くなるように傾斜している。従って、上段載置部11が第1位置のとき、上段載置部11に載置されている小さいサイズの用紙P2が、何らかの原因によって送り方向下流側へ移動してピックアップローラー3と接触することを防止することができる。
尚、傾斜部11bの高さは、上段載置部11に載置可能な用紙P2の最大枚数に応じて決められる。
【0040】
またさらに、上段載置部11が第1位置のとき、下段載置部6に載置された第1の媒体としての比較的大きいサイズの用紙P1が、ピックアップローラー3と接触可能な状態となる。このとき、上段載置部11に載置された第2の媒体としての比較的小さいサイズの用紙P2は、ピックアップローラー3と対向しないため、ピックアップローラー3とは接触しない。また、前述したように、傾斜部11bは、上段載置部11に載置された比較的小さいサイズの用紙P2を上段載置部11に留めることができる。
従って、ピックアップローラー3は、下段載置部6に載置された比較的大きいサイズの用紙P1のみを送り方向下流側へ送ることができる。
【0041】
また、下段載置部6には、用紙P1の先端が載置される箇所から載置された用紙P1の先後方向Uの後から先へ向かう方向へ延びた第1延設部としての底部6cが形成されている。さらに、底部6cから載置方向上方へ延びた壁部6b、6b…が形成されている。壁部6b、6b…は、下段載置部6の下流端の壁としての役割がある。そして、壁部6b、6b…の上方には、後述する第2位置のときに突起部11a、11a…と接触し、突起部11a、11a…を下側から支持する支持部6a、6a…が形成されている。
【0042】
尚、壁部6bは、幅方向Xに間隔を空けて複数形成されていてもよいし、幅方向Xに連なって形成されていてもよいのは勿論である。本実施例では、用紙P1の先後方向Uにおいて、壁部6bが傾斜面7a、7aから離間していればよい。
また、壁部6bに支持部6a、6a…が形成されている構成としたが、壁部自体を支持部6a、6a…としてもよいのは勿論である。
【0043】
[第2位置のとき]
図4および図5に示す如く、上段載置部11は、図2および図3の第1位置から下流側の第2位置へスライド移動することができる。尚、上段載置部11は、下段載置部6に設けられた図示しないガイドレールに案内されながらスライド移動することができるものとする。
上段載置部11が第2位置のとき、上段載置部11に載置された用紙P2は、ピックアップローラー3と対向する関係となり、ピックアップローラー3と接触可能な状態となる。また、下段載置部6の支持部6a、6a…は、上段載置部11の突起部11a、11a…を載置方向下方から接触して支持することができるように設けられている。
【0044】
尚、突起部11a、11a…の傾斜部11b、11b…は、分離部7の傾斜面7a、7aより、載置された用紙P2に対して退避した位置まで移動する。従って、用紙P2の先端が分離部7の傾斜面7a、7aと当接することを、突起部11a、11a…の傾斜部11b、11b…が妨げる虞はない。また、用紙P2が送り方向下流側へ送られることを、突起部11a、11a…の傾斜部11b、11b…が妨げる虞はない。
【0045】
ここで、支持部6a、6a…は、分離部7の傾斜面7a、7aに対して、力伝達的に独立して設けられている。
「力伝達的に独立して」とは、複数の部分のうちの一の部分が力を受けた場合であっても、その他の部分に対して前記力が直接及ばない関係をいう。本実施例では、支持部6a、6a…と、傾斜面7a、7aとの関係は、支持部6a、6a…が力を受けた場合であっても、傾斜面7a、7aに対して前記力が直接及ばない関係である。具体的には、載置された用紙P1の先後方向Uにおいて、支持部6a、6a…は、傾斜面7a、7aから物理的に離間して形成されている。
【0046】
そして、ピックアップローラー3が、上段載置部11に載置された用紙P2を押圧して、用紙P2とピックアップローラー3との間に摩擦力を発生させながら、送り方向下流側へ用紙P2を送る。この際、ピックアップローラー3の載置方向下方への押圧力を、突起部11a、11a…を介して支持部6a、6a…が受け止めることができるように構成されている。即ち、該押圧力が、分離部7の傾斜面7a、7aに直接伝達されないように構成されている。
【0047】
従って、前記押圧力によって傾斜面7a、7aが変形する虞がなく、傾斜面7a、7aの姿勢を安定させることができる。その結果、用紙P2が傾斜面7a、7aに進入する角度を安定させることができ、傾斜面7a、7aによる分離精度を安定させることができる。
また、上段載置部11におけるピックアップローラー3、3と対向する箇所が、それ以外の箇所、例えば、上段載置部11における幅方向両端に対して相対的に載置方向下方へ下がるように撓んで変形する量を低減することができる。即ち、ピックアップローラー3の押圧力をしっかりと用紙P2に対して作用させることができる。従って、ピックアップローラー3は、用紙P2に対して送り方向下流側へ送ろうとする力である送り力を確実に作用させることができる。その結果、上段載置部11の用紙P2が選択されている場合も、ピックアップローラー3は、上段載置部11に載置された用紙P2を安定して一枚ずつ送り方向下流側へ送ることができる。
【0048】
尚、上段載置部11を第2位置から第1位置へ戻す場合、上段載置部11を送り方向上流側へスライド移動させるだけでよい。
また、本実施例において、突起部11aおよび支持部6aをそれぞれ三つ設けたが、三つに限らない。それぞれ二つ以下でもよいし、四つ以上でもよいのは勿論である。
またさらに、傾斜面7aおよびピックアップローラー3を幅方向Xにそれぞれ二つ設けたが、二つに限らない。それぞれ一つでもよいし、三つ以上でもよいのは勿論である。
【0049】
また、突起部11aの先端における載置方向下側の部分をスライド移動方向に対して傾斜した形状にしてもよいのは勿論である。これにより、第1位置から第2位置への切り換え時に支持部6aに突起部11aの先端が引っ掛かることがなく、突起部11aの先端を支持部6aの上面に案内することができる。
またさらに、本実施例では、多段カセットの一例として下段載置部および上段載置部を備える二段カセットについて説明したが、二段に限らない。三段以上でもよいのは勿論である。下段載置部の上方に設けられ、載置された用紙の先後方向Uにスライド移動する中段載置部および上段載置部を備え、該中断載置部および上段載置部に設けられた突起部が、第2位置のときに下段載置部に設けられた支持部に支持される構成であればよい。
また、下段載置部、支持部および傾斜面を一体成形で構成したが、一体成形でなくてもよい。言い換えると、下段載置部、支持部および傾斜面を一部材で構成したが、別部材で構成してもよい。少なくとも、支持部と、傾斜面とが別部材であれば、より力が伝達しにくくすることができる。
またさらに、本実施例では、分離部7の一例として表面が平らな傾斜面7aについて説明したが、表面に小さなへこみと出っ張りを有する傾斜面であってもよいのは勿論である。
【0050】
本実施例の媒体カセットとしての二段カセット5は、媒体の一例である用紙Pを送る送り装置本体としての媒体送り手段2に対して着脱可能な二段カセット5であって、第1の媒体としての比較的大きいサイズの用紙P1が載置される下段載置部6と、下段載置部6に載置された用紙P1より載置方向上方に設けられ、下段載置部6に対して用紙Pの送り方向上流下流に移動することにより、送り方向上流側の第1位置のときと、該第1位置より下流側の第2位置のときとを切り換えることができる構成であり、第2の媒体としての比較的小さいサイズの用紙P2が載置される上段載置部11と、下段載置部6において、載置された用紙P1より送り方向下流側に設けられ、前記第1位置のとき送られる用紙P1、および前記第2位置のとき送られる用紙P2がそれぞれ重送された場合に重送された用紙(P1、P2)を分離する共通分離部である分離部7としての傾斜面7a、7aと、上段載置部11における送り方向下流側に設けられ、送り方向下流側に突出した突起部11a、11a…と、下段載置部6に設けられ、上段載置部11が前記第2位置のとき、突起部11a、11a…を支持する支持部6a、6a…と、を備え、支持部6a、6a…は、分離部7の傾斜面7a、7aに対して、力伝達的に独立して設けられていることを特徴とする。
【0051】
また、本実施例において、載置されている用紙Pの先後方向Uにおいて、下段載置部6における傾斜面7a、7aを基準として上段載置部11が設けられている側と反対側に向かって、用紙P1が載置される箇所から延びた第1延設部としての底部6cを、下段載置部6はさらに備えており、支持部6a、6a…は、底部6cから載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、前記先後方向Uにおいて傾斜面7a、7aから離間していることを特徴とする。
【0052】
尚、本実施例では、壁部6bに支持部6a、6a…が形成されている構成としたが、壁部自体を支持部6a、6a…としてもよい。
また、支持部6a、6a…は、底部6cから載置方向上方に延びた壁部6b、6b…に設けられているが、載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられていればよい。該方向に延びていれば、第2位置のとき、ピックアップローラー3から突起部11aを介して作用する載置方向下方への押圧力を受け止めることができ、載置方向Zにおける上段載置部11の位置を決めることができるからである。
【0053】
本実施例の記録装置としてのプリンター1は、二段カセット5に載置された被記録媒体の一例である用紙P(P1、P2)を送る送り手段である媒体送り手段2と、媒体送り手段2によって送られた用紙P(P1、P2)に対して記録ヘッド18により記録する記録部16と、を備えていることを特徴とする。
【0054】
[他の実施例1]
図6(A)(B)に示すのは、他の実施例1の二段カセットの要部を示す図である。このうち、図6(A)は平面図である。一方、図6(B)は側断面図である。尚、図6(A)(B)に示すのは、上段載置部が第2位置のときである。
図6(A)(B)に示す如く、幅方向Xにおいて、分離部7の傾斜面7a、7aの両側には、傾斜面7a、7aと隙間Sを空けて、案内傾斜面31、31…が形成されている。
尚、その他の部材については、前述した実施例と同様であるので、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0055】
案内傾斜面31、31…は、リブ8、8…と同様に用紙P1(P)を案内することができるように設けられている。また、案内傾斜面31、31…は、分離部7の傾斜面7a、7aから用紙P1(P)に対して僅かに退避した位置で、下段載置部6の底部6cから傾斜面7a、7aと同じ傾きで送り方向下流側へ延設されている(図6(B)参照)。
そして、上段載置部11の突起部32、32…を支持することができる下段載置部6の支持部30、30…は、案内傾斜面31、31…における載置方向上方に形成されている。
ここで、支持部30、30…は、分離部7の傾斜面7a、7aに対して、力伝達的に独立して設けられている。具体的には、幅方向Xにおいて、支持部30、30…と、分離部7の傾斜面7a、7aとの間に隙間Sが設けられている。
【0056】
従って、上段載置部11が第2位置のとき、ピックアップローラー3の載置方向下方への押圧力が、突起部32、32…を介して支持部30、30…に作用した場合、該押圧力が、分離部7の傾斜面7a、7aに直接伝達しないようにすることができる。その結果、傾斜面7a、7aの姿勢を安定させることができる。そして、用紙P2が傾斜面7a、7aに進入する角度を安定させることができ、傾斜面7a、7aによる分離精度を安定させることができる。
また、上段載置部11において、ピックアップローラー3、3と対向する箇所が、それ以外の箇所、 例えば、上段載置部11における幅方向両端に対して相対的に載置方向下方へ下がるように撓んで変形する量を低減することができる。
【0057】
またさらに、載置された用紙Pの先後方向Uにおいて、支持部30、30…の位置が、前述した実施例と比較して、傾斜面7a、7aに接近した構成とすることができる。言い換えると、先後方向Uにおいて、支持部30、30…が突起部32、32…を支持する位置を、前述した実施例と比較して、ピックアップローラー3が用紙P2(P)を押圧する位置に近づけることができる。従って、その分、ピックアップローラー3が用紙P2(P)を押圧する箇所が、突起部32、32…が支持部30、30…に支持された箇所に対して相対的に載置方向下方へ下がるように撓んで変形する量を低減することができる。その結果、用紙P2(P)の先端が分離部7の傾斜面7a、7aへ進入する角度を安定させることができ、その分、分離精度を安定させることができる。
【0058】
他の実施例1において、支持部30、30…は、下段載置部6において、載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、用紙Pの送り方向Yに対する幅方向Xにおいて、支持部30、30…と傾斜面7a、7aとが並んで配設され、支持30、30…と傾斜面7a、7aとの間に隙間Sが設けられていることを特徴とする。
尚、他の実施例1では、支持部30、30…は、底部6cから傾斜面7a、7aと同じ傾きで載置方向上方へのベクトル成分を有する送り方向下流側へ延設されている案内傾斜面31、31…に設けられているが、載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられていればよい。また、案内傾斜面31が前記押圧力によって変形しないように支持部30から載置方向下方の底部6cへ延設した部分を追加して強度を高めてもよいのは勿論である。係る場合、支持部30が前記押圧力をしっかりと受け止めることができる。また、隙間Sは、細い隙間である所謂、スリットでもよい。僅かな隙間があれば、支持部30、30…から傾斜面7a、7aへ力が直接伝達することを防止することができるからである。隙間Sの距離は長くてもよいのは勿論である。同様の作用効果を得ることができるからである。
【0059】
[他の実施例2]
図7に示すのは、他の実施例2の二段カセットの要部を示す側断面図である。尚、図7に示すのは、上段載置部が第2位置のときである。
図7に示す如く、幅方向Xにおいて、分離部7の傾斜面7a、7aの両側には、案内傾斜面41、41…が形成されている。さらに、用紙Pの先後方向Uに対して側視して、案内傾斜面41、41…と、第1延設部としての底部43と、先後方向Uにおいて案内傾斜面41、41…を基準としたときの用紙P2(P)と反対側に設けられた第2延設部としての壁部42、42…とによって領域Aが形成されている。この領域内において、支持部40、40…が、底部43から載置方向上方へ延設されている。また、案内傾斜面41、41…には、穴部44、44…が設けられている。
【0060】
そして、上段載置部11の突起部45、45…は、穴部44、44…を介して前記領域Aに進入することができるように構成されている。上段載置部11が第2位置のとき、下段載置部6の支持部40、40…によって突起部45、45…が支持されるように設けられている。
尚、その他の部材については、前述した実施例と同様であるので、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0061】
その結果、前述した実施例と同様、ピックアップローラー3の載置方向下方への押圧力が、分離部7の傾斜面7a、7aに直接伝達されない。従って、傾斜面7a、7aの姿勢を安定させることができる。その結果、分離部7の傾斜面7a、7aによる分離精度を安定させることができる。
また、上段載置部11において、ピックアップローラー3と対向する箇所が、それ以外の箇所、例えば、上段載置部11における幅方向両端に対して相対的に載置方向下方へ下がるように撓んで変形する量を低減することができる。
またさらに、壁部42、42…によって、傾斜面7a、7aの剛性を高めることができる。
また、前記領域Aに支持部40、40…を設けることによって所謂、デッドスペースを有効に利用することができる。
【0062】
他の実施例2において、載置されている用紙Pの先後方向Uにおいて、下段載置部6における傾斜面7a、7aを基準として上段載置部11が設けられている側と反対側に向かって、用紙P1が載置される箇所から延びた第1延設部としての底部43と、傾斜面7a、7aにおける載置方向上方の箇所から下方の底部43へ延びた第2延設部としての壁部42、42…と、を下段載置部6はさらに備えており、支持部40、40…は、前記先後方向Uに対して側視したときの傾斜面7a、7aと、底部43と、壁部42、42…とによって形成される領域内において、底部43から載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、傾斜面7a、7aおよび壁部42、42…から離間していることを特徴とする。
尚、他の実施例2では、支持部40、40…は、底部43から載置方向上方に延びて設けられているが、載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられていればよい。
【0063】
[他の実施例3]
他の実施例3において、下段載置部6は、前述した実施例の支持部(6a、30、40)に加え、載置方向上方から突起部(11a、32、45)と接触する押さえ部(図示せず)をさらに備えている。尚、他の実施例3の図示は省略する。また、その他の部材については、前述した実施例と同様であるため、同じ符号を用いることとする。
【0064】
押さえ部(図示せず)も、支持部(6a、30、40)と同様、分離部7の傾斜面7a、7aに対して、力伝達的に独立して設けられている。また、押さえ部は、載置された用紙P2(P)の先後方向Uにおいて、支持部(6a、30、40)が突起部(11a、32、45)の下側と接触する箇所を基準として、ピックアップローラー3が用紙P2(P)と接触する側と反対側で、突起部(11a、32、45)の上側と接触するように構成されている。
ここで、上段載置部11における支持部(6a、30、40)が突起部(11a、32、45)の下側と接触する箇所よりピックアップローラー側が、ピックアップローラー3の押圧力によって、支持部(6a、30、40)が突起部(11a、32、45)の下側と接触する箇所に対して相対的に載置方向下方に下がるように撓もうとする。
【0065】
そこで、他の実施例3では、前記押さえ部が設けられており、該押さえ部が、前記反対側で撓みを打ち消すように作用することができる。具体的には、上段載置部11の前記基準より前記ピックアップローラー側が下方へ下がるように撓むと、前記基準より前記反対側が上方へ上がる。前記押さえ部が前記反対側を押さえることにより、該反対側が上方へ上がることを防止することができる。その結果、前記基準より前記ピックアップローラー側が下方へ下がるように撓む量を殆ど無にすることができる。
【0066】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1 プリンター、2 媒体送り手段、3 ピックアップローラー、4 アーム部、
4a 揺動軸、5 二段カセット、6 下段載置部、6a 支持部、6b 壁部、
6c 底部、7 分離部、7a 傾斜面、8 リブ、9a 第1エッジガイド、
9b 第2エッジガイド、10 第1後端ガイド、11 上段載置部、11a 突起部、
11b 傾斜部、12a 第3エッジガイド、12b 第4エッジガイド、
13 第2後端ガイド、14 第1ローラー対、14a 第1駆動ローラー、
14b 第1従動ローラー(リタードローラー)、15 第2ローラー対、
15a 第2駆動ローラー、15b 第2従動ローラー、16 記録部、
17 キャリッジ、18 記録ヘッド、19 媒体支持部、20 排出部、
21 第3ローラー対、30(他の実施形態1の)支持部、31 案内傾斜面、
32 突起部、40(他の実施形態2の)支持部、41 案内傾斜面、42 壁部、
43 底部、44 穴部、45 突起部、A 領域、P 用紙、
P1 大きいサイズの用紙(第1の媒体)、P2 小さいサイズの用紙(第2の媒体)、
S 隙間、U 載置された用紙の先後方向、X 幅方向、Y 送り方向、
Z 載置方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を送る送り装置本体に対して着脱可能な媒体カセットであって、
第1の媒体が載置される下段載置部と、
載置された前記第1の媒体より載置方向上方に設けられ、前記下段載置部に対して媒体の送り方向上流下流に移動することにより、送り方向上流側の第1位置のときと、該第1位置より下流側の第2位置のときとを切り換えることができる構成であり、第2の媒体が載置される上段載置部と、
前記下段載置部において、載置された前記第1の媒体より送り方向下流側に設けられ、前記第1位置のとき送られる前記第1の媒体、および前記第2位置のとき送られる前記第2の媒体がそれぞれ重送された場合に重送された媒体を分離する共通分離部と、
前記上段載置部における送り方向下流側に設けられ、送り方向下流側に突出した突起部と、
前記下段載置部に設けられ、前記上段載置部が前記第2位置のとき、前記突起部を支持する支持部と、を備え、
該支持部は、前記共通分離部に対して、力伝達的に独立して設けられていることを特徴とする媒体カセット。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体カセットにおいて、載置されている媒体の先後方向において、前記下段載置部における前記共通分離部を基準として前記上段載置部が設けられている側と反対側に向かって、前記第1の媒体が載置される箇所から延びた第1延設部を、前記下段載置部はさらに備えており、
前記支持部は、前記第1延設部から載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、前記先後方向において前記共通分離部から離間していることを特徴とする媒体カセット。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体カセットにおいて、前記支持部は、前記下段載置部において、載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、
媒体の送り方向に対する幅方向において、前記支持部と前記共通分離部とが並んで配設され、前記支持部と前記共通分離部との間に隙間が設けられていることを特徴とする媒体カセット。
【請求項4】
請求項1に記載の媒体カセットにおいて、載置されている媒体の先後方向において、前記下段載置部における前記共通分離部を基準として前記上段載置部が設けられている側と反対側に向かって、前記第1の媒体が載置される箇所から延びた第1延設部と、
前記共通分離部における載置方向上方の箇所から下方の前記第1延設部へ延びた第2延設部と、を前記下段載置部はさらに備えており、
前記支持部は、前記先後方向に対して側視したときの前記共通分離部と、前記第1延設部と、前記第2延設部とによって形成される領域内において、前記第1延設部から載置方向上方へのベクトル成分を有する方向に延びて設けられており、前記共通分離部および前記第2延設部から離間していることを特徴とする媒体カセット。
【請求項5】
載置された被記録媒体を送る送り手段と、
該送り手段によって送られた被記録媒体に対して記録ヘッドにより記録する記録部と、を備えた記録装置であって、
前記送り手段は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載された前記媒体カセットを備えており、前記被記録媒体は、前記媒体である記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−35949(P2012−35949A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176160(P2010−176160)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】