説明

媒体給送装置及び該媒体給送装置を備えた記録装置と液体噴射装置

【課題】 媒体のスキューを矯正して媒体を正しい状態で給送することができる媒体給送装置、及び、該媒体給送装置を備えた記録装置と液体噴射装置を提供することにある。
【解決手段】 本発明に係る媒体給送装置(給紙部130)は、記録用紙200(媒体)の幅方向の位置決めを行う可動エッジガイド35a(媒体ガイド)及び固定エッジガイド35b(媒体ガイド)に案内されて媒体を給送する媒体給送装置であって、記録用紙200を押圧する押圧ローラ301、401(押圧手段)が、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの中央又は中心線に対称な位置に配置され、記録用紙200を押圧して記録用紙200の給送中に発生したスキューを矯正することができる。これにより、本発明に係る媒体給送装置は媒体のスキューを矯正して媒体を正しい状態で給送することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を給送する媒体給送装置、及び、その媒体給送装置を備えた記録装置と液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な記録装置の1つであるインクジェット式プリンタは、背面側上部に給紙部が形成され、前面側下部に排紙部が形成されている。そして、給紙部には記録媒体としての用紙が傾斜した状態で積層支持されるペーパーサポートや積層された用紙の幅方向の位置決めを行う一対のペーパーガイド等が配設され、排紙部には用紙を水平状態で積層載置するスタッカ等が配設されている。一対のペーパーガイドは、例えばJIS規格のA4サイズ、B5サイズ等の異なる大きさの用紙に対応するため、少なくとも片方のペーパーガイドが可動する。
【0003】
このペーパーガイドは、用紙の幅方向の位置決めをすると共に積層された用紙の荷崩れを防止する機能を有するが、一方で、用紙にスキューを生じさせる原因となる。スキューとは用紙が斜めに傾いた状態で給送されることであり、例えば、ペーパーサポート上に積層された用紙の側端部がペーパーガイドの側面と当接することにより、搬送方向と反対の方向に用紙を引っ張るバックテンションがかかり、用紙にスキューを生じさせる。用紙がスキューした状態で記録が行われると傾いた記録となってしまうので、スキューの発生を防止、又は、発生したスキューを矯正・補正することが、良好な記録を得る上で重要である。
【0004】
例えば、特許文献1にはスキューの発生を防止する搬送機構が開示され、また、特許文献2にはスキューを補正する用紙斜行制御装置が開示されている。特許文献1の搬送機構は、媒体の挟持圧力が調整可能な駆動ローラ(給紙ローラ)と従動ローラとが並列に2組配設され、駆動ローラと搬送中の媒体のすべりを従動ローラの回転数変化により検出して各挟持圧力を調整することで、媒体を挟持したときのすべりを抑制して媒体の搬送を安定させるものである。また、特許文献2の用紙斜行制御装置は、複写機等の画像形成装置において、用紙搬送路の湾曲部分で用紙の幅方向の通路経路の長さを変化させることにより用紙搬送路内で発生したスキューを補正するものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−67042号公報
【特許文献2】特開平6−263289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載された搬送機構では、媒体の挟持圧力が調整可能な2組の駆動ローラ(給紙ローラ)と従動ローラ、各従動ローラの回転数を検出する検出装置、各挟持圧力を調整する調整機構、各従動ローラの回転数変化により各調整機構を制御する制御部等が配設される。このため、当該搬送機構の構造は複雑となり、また、電気部品を使用することにより製造コストも高い。
【0007】
また、特許文献2に記載された用紙斜行制御装置では、用紙搬送路の湾曲部分で用紙の幅方向の長さを調整して通路経路を取り付ける作業や調整作業が必要となり、当該作業により生産性が低下する。また、用紙搬送路の湾曲部分でスキューの補正を行うので、上述したペーパーガイドのバックテンションによるスキュー等には適していない。
【0008】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、媒体のスキューを矯正して媒体を正しい状態で給送することができる媒体給送装置、及び、該媒体給送装置を備えた記録装置と液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明の媒体給送装置では、媒体の幅方向の位置決めを行う第1及び第2の媒体ガイドに案内されて前記媒体を給送する媒体給送装置であって、前記第1の媒体ガイドと前記第2の媒体ガイドとの中央又は中心線に対称な位置に配置され、前記媒体を押圧して前記媒体の給送中に発生したスキューを矯正する押圧手段を含むスキュー矯正手段を備えたことを特徴としている。これにより、前記第1の媒体ガイドと前記第2の媒体ガイドとの中央又は中心線に対称な位置に配置された押圧手段が、前記媒体の給送中に発生したスキューを矯正するので、本発明に係る媒体給送装置は媒体のスキューを矯正して媒体を正しい状態で給送することが可能である。
【0010】
また、本発明の媒体給送装置では、前記押圧手段は、任意の押圧幅で前記媒体を押圧することを特徴としている。これにより、任意の押圧幅で前記媒体を押圧するので、前記媒体の給送中に発生したスキューを確実に矯正することができる。
【0011】
また、本発明の媒体給送装置では、前記スキュー矯正手段は、前記媒体の供給側に配設されていることを特徴としている。これにより、前記媒体の供給側で発生した前記媒体のスキューを確実に矯正することができる。
【0012】
また、本発明の媒体給送装置では、前記スキュー矯正手段は、少なくとも前記第1又は第2の媒体ガイドと連動することを特徴としている。これにより、大きさの異なる複数の媒体に対応したスキューの矯正を行うことができる。
【0013】
また、本発明の媒体給送装置では、前記スキュー矯正手段は、常に前記押圧手段が前記第1の媒体ガイドと前記第2の媒体ガイドとの中央又は中心線に対称な位置に配設されることを特徴としている。これにより、前記媒体のスキューを容易に且つ確実に矯正することができる。
【0014】
また、本発明の媒体給送装置では、前記スキュー矯正手段は、前記第1、第2の媒体ガイドより搬送下流側に配設されることを特徴としている。これにより、スキューの再発を防止することができる。
【0015】
上記目的達成のため、本発明の記録装置では、媒体に記録する記録装置であって、上記各媒体給送装置を備えたことを特徴としている。また、上記目的達成のため、本発明の液体噴射装置では、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、上記各媒体給送装置を備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏する記録装置または液体噴射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る媒体給送装置の一実施形態として、記録装置の1つであるインクジェット式プリンタに用いられている媒体給送装置について、図1乃至図8を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式複合機100の外観構成の全体を示す斜視図、図2は、その内部構造を示す斜視図、図3は、その概略側面図である。このインクジェット式複合機100は、例えばJIS規格のL判やA6判からA4判までのサイズの単票紙やハガキに記録することができるプリンタ機能と、JIS規格のA4判までのサイズの原稿及びUS規格のレターサイズまでの原稿を読み取ることができるスキャナ機能と、JIS規格のL判、2L判、B5判、A4判、六切り、ハガキのサイズの用紙に複写することができるコピー機能を備えている。
【0018】
このインクジェット式複合機100は、図1に示すように、全体が略直方体状のハウジング101で覆われており、下段にプリンタ110が配設され、上段にスキャナ120が配設された構成となっている。そして、背面側に本発明の特徴的な部分であるスキュー矯正装置300(図5参照)を備えた給紙部130(媒体給送装置)が配設され、前面側に給排紙部140が配設されている。ユーザは、記録前の用紙のセッティング方向として背面側の給紙部130及び前面側の給排紙部140の一方または両方を選択することができるので、インクジェット式複合機100の設置位置の自由度を高めることができる。さらに、記録後の用紙は常に前面側の給排紙部140から排紙されるので、ユーザは用紙を容易に取り出すことができる。
【0019】
ハウジング101の上面には、図1に示す矩形平板状のスキャナカバー102が配設されている。このスキャナカバー102は、前部に取っ手103が形成されており、後部の回転軸を中心に図示矢印A方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、スキャナ120を使用するときは取っ手103に指を差し込んでスキャナカバー102を開閉することができるので、原稿の出し入れを容易に行うことができる。
【0020】
ハウジング101の前面両側には、図2に示す複数のインクカートリッジ109が抜き差しされるカートリッジ収納部104、104が形成されている。各インクカートリッジ109は、記録用の各色のインクを貯留している。各カートリッジ収納部104は、図1に示す透明もしくは半透明のカートリッジカバー105によって覆われている。カートリッジカバー105は、その下部の回動軸を中心に図示矢印B方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、従来のように重量のあるスキャナ120全体を持ち上げてプリンタ110の内部を開放しなくても、カートリッジカバー105を軽く押して係止部を外しカートリッジ収納部104を開放するのみにより、インクカートリッジ109の交換作業等を行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0021】
ハウジング101の上面のスキャナカバー102の手前には、図1に示すように、プリンタ110、スキャナ120、コピーの各動作を指示する操作部106が配設されている。操作部106は、パワーをオン・オフするパワー系、用紙の頭出し等を操作したりインクのフラッシング等を操作する操作系、画像処理等を行う処理系等の図示しないボタン等と、状態を表示する液晶パネル107等を備えている。ユーザは、液晶パネル107を見て確認しながらボタン等を操作することができる。
【0022】
ハウジング101内には、図2及び図3に示すように、本発明に係る媒体給送装置の一実施形態である給紙部130と、給排紙部140、記録部150等が配設されている。給紙部130には、図1に示すように、上方に向かって矩形状に開口したリア給紙口31が形成され、このリア給紙口31の両端縁と後縁に沿ってフレーム32が配設されている。そして、このフレーム32には、図1〜図3に示すように、給紙する用紙を1枚もしくは複数枚支持するペーパーサポート33と、ペーパーサポート33に支持されている用紙を1枚ずつ自動的に給送する背面給紙機構(以下、「リアASF」という)34等が配設されている。
【0023】
図4は、ペーパーサポート33とリアASF34の詳細を示す側面図である。図1〜図4を参照して給紙部130について説明する。ペーパーサポート33は、用紙の裏面を支持する第1サポート33a及び第2サポート33bより略構成され、用紙の両サイドエッジをガイドする可動エッジガイド35a(媒体ガイド)と固定エッジガイド35b(媒体ガイド)と連設されている。可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの間には、本発明の特徴部分を構成する押圧ローラ301(押圧手段)と押圧ローラ軸302が配設される。押圧ローラ301は用紙をホッパ36に押し付ける押圧部材であって、押圧ローラ軸302は押圧ローラ301を支持する部材である。なお、当該押圧ローラ301、押圧ローラ軸302を含むスキュー矯正装置300(スキュー矯正手段)の各構成を図5に示し、その詳細な説明を別途後述する。
【0024】
図4に示すリアASF34は、ペーパーサポート33に支持されている用紙を給送するために持ち上げるホッパ36、このホッパ36により持ち上げられた用紙を取り出す給紙ローラ37、この給紙ローラ37により重送された用紙を1枚のみに分離するリタードローラ38、このリタードローラ38により分離された残りの用紙をホッパ36へ戻すリア紙戻しユニット39(図4参照)等を備えている。
【0025】
第1サポート33aは、平板状に形成されてフレーム32の後壁内側に格納・引出自在に配設され、第2サポート33bは、平板状に形成されて第1サポート33aに格納・引出自在に配設されている。第1サポート33a及び第2サポート33bは、給紙方向に伸縮自在に形成されているので、不使用のときはコンパクトに格納しておくことができ、また使用のときは種々のサイズの用紙を確実にサポートすることができる。
【0026】
また、固定エッジガイド35bはフレーム32の装置前面側から見て右側壁に沿う形状に形成され、可動エッジガイド35aは、フレーム32の装置前面側から見て左側壁に沿う形状に形成され、フレーム32の左側壁と右側壁の間をフレーム32の後壁と略平行に移動可能なように取り付けられている(図2参照)。可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bは、用紙のサイズが異なっても確実に用紙の両側縁をガイドすることができるので、用紙の給送を高精度に行うことができる。
【0027】
ホッパ36は、用紙が載置可能な平板状に形成されてフレーム32の後壁と略平行に配設されており、下端が給紙ローラ37の近傍に位置し、上端がフレーム32の後壁頂部に近接して位置するように配設されている(図2、図4参照)。そして、ホッパ36は、下端側の裏面にフレーム32の後壁に一端が取り付けられた図示しない圧縮バネの他端が取り付けられており、この圧縮バネの伸縮により上端側を中心に下端側が旋回するように配設されている。
【0028】
給紙ローラ37は、断面の一部が切り欠かれたD字状に形成されてホッパ36の下端近傍に配設されており、間欠的に回転してホッパ36により持ち上げられた用紙を摩擦給送するようになっている(図4参照)。リタードローラ38は、給紙ローラ37と当接可能に配設されており、給紙ローラ37により用紙が重送されたときに最上層の用紙のみを下層の用紙から摩擦分離するようになっている。リア紙戻しユニット39は、爪状に形成されて給紙ローラ37の近傍に配設されており、リタードローラ38により分離された下層の用紙を爪に掛けてホッパ36へ戻すようになっている(図4参照)。
【0029】
次に、図2、図3を参照して、給排紙部140及び記録部150について説明する。給排紙部140には、図2及び図3に示すように、前方に向かって矩形状に開口したフロント給排紙口41が形成され、このフロント給排紙口41の下側に給紙トレイ42が配設され、給紙トレイ42の上側に排紙トレイ43が配設されている。そして、フロント給排紙口41の奧には、図3に示すように、給紙トレイ42に収納されている用紙を1枚ずつ自動的に給送する前面給紙機構(以下、フロントASFという)44と、排紙トレイ43に用紙を自動的に排送する前面排紙機構(以下、フロントEJという)45が配設されている。
【0030】
給紙トレイ42は、図2及び図3に示すように、平板状に形成されており、上面に記録前の給紙される用紙が積層収納されるようなっている。排紙トレイ43は、図2及び図3に示すように、第1トレイ43a、第2トレイ43b及び第3トレイ43cを備えている。第1トレイ43aは、平板状に形成されて後部が給排紙部140の奧の本体フレーム108に回動自在に配設され、第2トレイ43bは、平板状に形成されて第1トレイ43aに格納・引出自在に配設され、第3トレイ43cは、平板状に形成されて第2トレイ43bに格納・引出自在に配設されている。
【0031】
排紙トレイ43は、第2トレイ43b及び第3トレイ43cが引き出された状態で、上面に記録後の排紙される用紙が積層載置されるようなっている。第2トレイ43b及び第3トレイ43cは、排紙方向に伸縮自在に形成されているので、不使用のときはコンパクトに格納しておくことができ、また使用のときは種々のサイズの排紙される用紙を確実に積層載置することができる。なお、この給排紙部140は、給排紙時に折り曲げることが不可能な厚手の用紙や光ディスク等が収納されたトレイを手差しで給紙、供給することが可能なようにも形成されている。
【0032】
記録部150には、図3に示すように、記録動作に同期して副走査方向に用紙を送る紙送りローラ51とその従動ローラ52、記録動作に同期して主走査方向に移動するキャリッジ53、記録動作に同期してインクを吐出する記録ヘッド54、記録時の用紙を平坦に保持するプラテン55等が配設されている。
【0033】
紙送りローラ51は、図3に示すように、プラテン55の搬送上流側に配設されており、給紙ローラ37により給送される用紙もしくは中間ローラ46を介して給紙トレイ42より反転給送される用紙を、図2に示す紙送り機構56により従動ローラ52と共に挟持してプラテン55へ送り出すようになっている。キャリッジ53は、プラテン55の上方で図3に示すキャリッジガイド軸57に貫装されてキャリッジベルト58(図2参照)に連結されており、図2に示すキャリッジモータ59によってキャリッジベルト58が作動すると、キャリッジベルト58の動きに連行され、キャリッジガイド軸57に案内されて往復移動するようになっている。
【0034】
記録ヘッド54は、図3に示すように、プラテン55と所定の間隔が空くようにしてキャリッジ53に搭載されており、例えばブラックインクを吐出するブラックインク用記録ヘッドと、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタの5色のインクをそれぞれ吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド54は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口から用紙に向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。
【0035】
次に、本発明に係る媒体給送装置の一実施形態である給紙部130について、図5〜図7を参照して詳細に説明する。
【0036】
図5は、本発明の特徴部分を構成するスキュー矯正装置300(スキュー矯正手段)を備えた給紙部130の要部を示す斜視図である。スキュー矯正装置300は、図5に示す押圧ローラ301(押圧手段)、押圧ローラ軸302、コイルばね303、303、押圧ローラブラケット304、304等により構成される。
【0037】
押圧ローラ軸302は主走査方向(プリンタの幅方向)に延びる棒状部材であって、紙送りローラ51と平行に配設されている。この押圧ローラ軸302に貫通された押圧ローラ301は、押圧ローラ軸302に対して回転可能に且つ押圧ローラ軸302に沿って移動可能に嵌合されている。この押圧ローラ301は、ホッパ36に給送された記録用紙200(図6参照)をホッパ36側に押し付ける部材である。
【0038】
押圧ローラ軸302は、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bも貫通し、押圧ローラ軸302の左右両端部は押圧ブラケット304、304を介して、フレーム32に連設されている。ここで、押圧ブラケット304、304は、押圧ローラ301が記録用紙200をホッパ36側に押し付けるように、押圧ローラ軸302に所定の付勢力を与えるように形成されている。そして、押圧ローラ301の右側には、押圧ローラ軸302の周りに捲回されたコイルばね303が押圧ローラ301と可動エッジガイド35aとの間に配設され、押圧ローラ301の左側にも、コイルばね303が押圧ローラ301と固定エッジガイド35bとの間に配設される。押圧ローラ301は、この左右のコイルばね303、303からの荷重を受け、押圧ローラ軸302に沿って移動する。
【0039】
このように、押圧ローラ軸302に嵌合された押圧ローラ301は、押圧ローラ軸302に対して回転可能であって、コイルばね303、303からの荷重を受けて押圧ローラ軸302に沿って移動する。但し、押圧ローラ301の押圧ローラ軸302に対する回転には、所定の負荷がかけられており、この負荷により、押圧ローラ301は記録用紙200をホッパ36側に押し付けつつ、記録用紙200にバックテンションを与える。
【0040】
次に、スキュー矯正装置300の原理とその特徴について、図6、図7を参照して説明する。
【0041】
図6及び図7は、スキュー矯正装置300の概要を示す説明図である。図6は紙送りローラ51上を記録用紙200が傾く(スキュー)ことなく給送されている状態を示しており、図7は記録用紙200がスキューして紙送りローラ51上に給送された後にスキューが矯正される状態を示している。なお、図6、図7はスキュー矯正装置300の原理とその特徴を説明するための略図であり、上述したインクジェット式複合機100の各構成は省略した。
【0042】
図6に示す記録用紙200は、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bにより傾くことなく紙送りローラ51上に案内された後に、紙送りローラ51とその従動ローラ52(図3参照)により下方向に給送されている。図6に示す押圧ローラ軸302は、図6では省略されている左右の各押圧ブラケット304(図5参照)により紙面の表から裏の方向(以下、「紙面方向」という)の付勢力を受け、この付勢力により押圧ローラ301は記録用紙200を紙面方向へ押し付ける。押圧ローラ301は任意の押圧幅を有し、押圧ローラ301の外周面が記録用紙200と当接することにより記録用紙200を紙面方向へ押し付けると共に、押圧ローラ301の外周面は記録用紙200の紙面を滑る。
【0043】
また、押圧ローラ301は可動エッジガイド35a又は固定エッジガイド35bとの間にそれぞれ配設されたコイルばね303、303から等しい荷重を受けるので、押圧ローラ301は常に可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの中央に位置している。なお、図6に示す一点鎖線(L1)は、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bとの中心線L1であって、押圧ローラ301はこの中心線L1上に位置する。
【0044】
紙送りローラ51とその従動ローラ52(図3参照)は、記録用紙200の幅方向全体に均一な荷重で記録用紙200を挟持して、図6の下方向に記録用紙200を給送する。この記録用紙200の幅方向全体にかかる均一な荷重の合力S1を図6に矢印で示す。また、上述したように押圧ローラ301は記録用紙200を紙面方向へ押し付けつつ記録用紙200にバックテンションを与えるので、記録用紙200は反給送方向(図6における上方向)に引っ張り荷重S2(合力S1と同様に図6に矢印で示す)を受ける。
【0045】
図6では、記録用紙200がスキューすることなく、紙送りローラ51とその従動ローラ52により給送されるので、合力S1と引っ張り荷重S2はどちらも中心線L1上に働く。また、記録用紙200は、紙送りローラ51とその従動ローラ52により幅方向全体にかかる均一な荷重を受けて給送されるので、その後も傾くことなく給送される。なお、引っ張り荷重S2は、合力S1に対する反力として作用するので、引っ張り荷重S2の大きさは合力S1の大きさより小さい。そして、押圧ローラ301の押圧ローラ軸302に対する回転負荷を調節することにより、引っ張り荷重S2の大きさを任意に調整することができる。また、押圧ローラ301の押圧幅を任意に調整して、良好な押し付け及び引っ張りを得ることができる。
【0046】
次に、記録用紙200がスキューして紙送りローラ51上に給送された場合について図7を参照して説明する。図7に示す押圧ローラ軸302は、図6と同様に、左右の各押圧ブラケット304(図5参照)より紙面方向の付勢力を受け、この付勢力により押圧ローラ301は記録用紙200を紙面方向へ押し付ける。押圧ローラ301は、図6と同様に、左右のそれぞれに配設されたコイルばね303の荷重を受けて、常に、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの中央(中心線L1上)に位置する。そして、押圧ローラ301は記録用紙200を押し付けつつ記録用紙200にバックテンションを与えるので、記録用紙200は、図6と同様に、引っ張り荷重S2を受ける。この引っ張り荷重S2は、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの中央(中心線L1上)に働く。
【0047】
これに対し、紙送りローラ51が回転すると、記録用紙200は、紙送りローラ51とその従動ローラ52(図3参照)により記録用紙200の紙送りローラ51と平行な方向(以下、「横方向」という)全体にかかる均一な荷重を受ける。図7では、記録用紙200が傾いているので、紙送りローラ51とその従動ローラ52により挟持される記録用紙200の横方向の長さは、記録用紙200の幅より長い。この横方向全体にかかる均一な荷重の合力S3を図7に矢印で示す。この合力S3は、図6とは異なり、記録用紙200の横方向の中央位置に働く。なお、図7には、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bとの中心線L1と、記録用紙200の横方向の長さに対する中心線L2とをそれぞれ一点鎖線で示す。すなわち、記録用紙200の横方向全体にかかる均一な荷重の合力S3は、この中心線L2上に働く。
【0048】
図6では、合力S1と引っ張り荷重S2はどちらも中心線L1上に働き、記録用紙200は、紙送りローラ51とその従動ローラ52により幅方向全体に均一にかかる荷重を受けて給送されるので、傾くことなく給送される。一方、図7では、合力S3が中心線L2上に働き、引っ張り荷重S2が中心線L2上に働くので、記録用紙200は時計方向(図7に示す矢印Dの方向)に回転させるモーメントを受ける。このモーメントは記録用紙200のスキューと反対方向に働くので、スキューした記録用紙200のスキューを矯正することができる。
【0049】
このように、記録用紙200を押し付けつつ記録用紙200にバックテンション(引っ張り荷重S2)を与える押圧ローラ301を、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの中央又は中心線L1上に配設することにより、記録用紙200のスキューを矯正することができる。そして、押圧ローラ301の押圧ローラ軸302に対する回転負荷を調節することにより、引っ張り荷重S2の大きさを任意に調整することができ、また、押圧ローラ301の押圧幅を任意に調整して、良好な押し付け及び引っ張りを得ることができるので、記録用紙200のスキューを確実に矯正することが可能である。
【0050】
なお、図5に示すように、スキュー矯正装置300(押圧ローラ301、押圧ローラ軸302等)は、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bより搬送下流側に配設されている。これにより、可動エッジガイド35a、固定エッジガイド35bのバックテンションにより発生した記録用紙200のスキューを矯正し、更に、スキューの再発を防止することができる。
【0051】
次に、スキュー矯正手段の第2の形態について説明する。
【0052】
図8は、第2の形態に係るスキュー矯正装置400の概要を示す説明図である。スキュー矯正装置400は、押圧ローラ401が2個並列に配設されている以外は第1の形態に係るスキュー矯正装置300と同じ構成であるので、スキュー矯正装置300と同一符号で示し、その説明は省略する。
【0053】
2個の押圧ローラ401、401は、押圧ローラ軸302に対してそれぞれ回転可能であって、接続部材401aにより一体となった押圧ローラ401、401は押圧ローラ軸302に沿って移動可能に、押圧ローラ軸302に嵌合されている。図8に示す押圧ローラ軸302は、第1の形態と同様に、左右の各押圧ブラケット304(図5参照)より紙面方向の付勢力を受け、この付勢力により各押圧ローラ401は記録用紙200を紙面方向へ押し付ける。一体となった押圧ローラ401、401は、左右のそれぞれに配設されたコイルばね303の荷重を受けて、常に、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの中央(中心線L1上)に位置する。すなわち、押圧ローラ401、401は、中心線L1に対して対称な位置に配設される。そして、各押圧ローラ401は記録用紙200を押し付けつつ記録用紙200にバックテンションを与えるので、記録用紙200は、各押圧ローラ401より引っ張り荷重S4を受ける。この二つの引っ張り荷重S4、S4は中心線L1に対して対称な位置に働くので、その合力は、図7と同様に、可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bの中央(中心線L1上)に働く。
【0054】
これに対し、紙送りローラ51が回転すると、記録用紙200は、紙送りローラ51とその従動ローラ52(図3参照)により記録用紙200の紙送りローラ51と平行な方向(横方向)全体にかかる均一な荷重を受ける。この横方向全体にかかる均一な荷重の合力S3は、図7と同様に、記録用紙200の横方向の中心線L2上に働く。
【0055】
第2の実施形態においても、合力S3が中心線L2上に働き、引っ張り荷重S4、S4の合力が中心線L1上に働くので、記録用紙200は時計方向(矢印Dの方向)に回転させるモーメントを受ける。このモーメントは記録用紙200のスキューと反対方向に働くので、スキューした記録用紙200のスキューを矯正することが可能である。
【0056】
以上、本発明の一の実施形態について説明したが、本発明によれば、記録用紙200(媒体)を押圧する押圧ローラ301、401(押圧手段)は、可動エッジガイド35a(媒体ガイド)と固定エッジガイド35b(媒体ガイド)の中央又は中心線に対称な位置に配置され、記録用紙200を押圧して記録用紙200の給送中に発生したスキューを矯正することができる。これにより、本発明に係る媒体給送装置は媒体のスキューを矯正して媒体を正しい状態で給送することが可能である。
【0057】
また、本発明によれば、押圧ローラ301、401は、任意の押圧幅で記録用紙200を押圧することを特徴としている。これにより、押圧ローラ301、401の押圧幅を任意に調整して、良好な押し付け及び引っ張りを得ることができるので、記録用紙200のスキューを確実に矯正することが可能である。
【0058】
また、本発明によれば、スキュー矯正装置300、400(スキュー矯正手段)は、記録用紙200の供給側に配設されているので、記録用紙200の供給側で発生した記録用紙200のスキューを確実に矯正することが可能である。
【0059】
また、本発明によれば、スキュー矯正装置300、400は、少なくとも可動エッジガイド35a又は固定エッジガイド35bと連動するので、大きさの異なる複数の記録用紙に対応したスキューの矯正を確実に行うことができる。
【0060】
また、本発明によれば、スキュー矯正装置300、400は、常に、押圧ローラ301、401が可動エッジガイド35aと固定エッジガイド35bとの中央又は中心線に対称な位置に配設されるので、記録用紙200のスキューを容易に且つ確実に矯正することが可能である。
【0061】
また、本発明によれば、スキュー矯正装置300、400は、可動エッジガイド35a、固定エッジガイド35bより搬送下流側に配設されるので、可動エッジガイド35a、固定エッジガイド35bのバックテンションにより発生した記録用紙200のスキューを矯正し、更に、スキューの再発を防止することが可能である。
【0062】
なお、本発明の範囲は上述した実施形態に限られず、特許請求の範囲の記載に反しない限り、他の様々な実施形態に適用可能である。例えば、本発明の実施形態では、給紙部130にスキュー矯正装置300を設けた例について説明したが、給排紙部140にも同様のスキュー矯正手段を設けることができ、更に、媒体を給送する媒体給送装置であれば広く適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
媒体給送装置を備えた記録装置であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置等であっても適用可能である。また、記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を液体噴射ヘッドから被噴射媒体に噴射して液体を被噴射媒体に付着させる液体噴射装置の意味として、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等を備えた装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式複合機100の外観構成の全体を示す斜視図である。
【図2】図1の複合機の内部構造を示す斜視図である。
【図3】図2の複合機の内部構造の概略側面図である。
【図4】図1の複合機のペーパーサポート33とリアASF34の詳細を示す側面図である。
【図5】本発明の特徴部分を構成するスキュー矯正装置300を備えた給紙部130の要部を示す斜視図である。
【図6】スキュー矯正装置300の概要を示す第1の説明図である。
【図7】スキュー矯正装置300の概要を示す第2の説明図である。
【図8】第2の形態に係るスキュー矯正装置400の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
31 リア給紙口、32 フレーム、33 ペーパーサポート、34 リアASF、35a 可動エッジガイド、35b 固定エッジガイド、36 ホッパ、37 給紙ローラ、51 紙送りローラ、52 従動ローラ 、55 プラテン、100 インクジェット式複合機、110 プリンタ、120 スキャナ、130 給紙部、140 給排紙部、150 記録部、200 記録用紙、300 スキュー矯正装置、301 押圧ローラ、302 押圧ローラ軸、303 コイルばね、304 押圧ローラブラケット、400 スキュー矯正装置、401 押圧ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の幅方向の位置決めを行う第1及び第2の媒体ガイドに案内されて前記媒体を給送する媒体給送装置であって、
前記第1の媒体ガイドと前記第2の媒体ガイドとの中央又は中心線に対称な位置に配置され、前記媒体を押圧して前記媒体の給送中に発生したスキューを矯正する押圧手段を含むスキュー矯正手段を備えたことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、任意の押圧幅で前記媒体を押圧することを特徴とする請求項1に記載の媒体給送装置。
【請求項3】
前記スキュー矯正手段は、前記媒体の供給側、且つ、前記媒体を搬送する媒体搬送手段の上流側に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体給送装置。
【請求項4】
前記スキュー矯正手段は、少なくとも前記第1又は第2の媒体ガイドと連動することを特徴とする請求項1乃至3に記載の媒体給送装置。
【請求項5】
前記スキュー矯正手段は、常に前記押圧手段が前記第1の媒体ガイドと前記第2の媒体ガイドとの中央又は中心線に対称な位置に配設されることを特徴とする請求項1乃至4に記載の媒体給送装置。
【請求項6】
前記スキュー矯正手段は、前記第1、第2の媒体ガイドより搬送下流側に配設されることを特徴とする媒体給送装置。
【請求項7】
媒体に記録する記録装置であって、
請求項1〜6の何れか一項に記載の媒体給送装置を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、
請求項1〜6の何れか一項に記載の媒体給送装置を備えたことを特徴とする液体噴射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−36374(P2006−36374A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214168(P2004−214168)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】