説明

媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法及び媒体記憶装置

【課題】装置固有情報を媒体からメモリに読み出し、媒体へのリード/ライト動作を行う媒体記憶装置において、装置固有情報のリードエラーが生じても、ホストからのコマンド受領を可能とする。
【解決手段】媒体記憶装置(1)の電源投入後の装置固有情報読み出し処理で、エラーが発生した場合、媒体(19)に格納した代替データを展開して、パワーオンエラーを擬似的に回復する。この代替データは、工場出荷時のデータを、予めROMまたは媒体(19)のシステム領域(19A)に保存し、必要な場合は、ここから展開する。コマンドの受領および実行が可能になることにより、ホストシステムが立ち上がらなくなることを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体上に記憶された装置固有情報をメモリに展開して、動作する装置固有情報の回復処理方法及び媒体記憶装置に関し、特に、媒体上に記憶された更新された装置固有情報のリードエラーの回復処理を行う装置固有情報の回復処理方法及び媒体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデータ電子化処理の要求により、データを記憶する磁気媒体装置や光媒体装置の媒体記憶装置に、大容量化が要求されている。このため、媒体媒体は、益々トラック密度や記録密度が高くなっている。このような媒体記憶装置では、媒体の状態やリード/ライトの状態監視が不可欠となり、このため、装置毎に、装置固有情報を、不揮発性メモリである媒体に記憶している。
【0003】
この装置固有情報には、更新される情報がある。例えば、磁気ディスク装置では、自動交代処理が発生した場合、エラーセクタ(交代元セクタ)とそれを交代した交代先セクタのアドレスは欠陥セクタ管理情報に登録され、電源がオフされても保持していなければならない(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
又、保障情報であるSMART(Self Monitoring Analysis Report Technology)ドライブ属性値には,電源投入時間やリード/ライトのエラーレートなど磁気媒体装置動作時に累積される情報があり、これらの情報も、電源がオフされても、保持していなければならない。
【0005】
この様に、磁気ディスク装置には、工場出荷後に更新され、電源がオフされても保持していなければならない情報があり、これらは装置固有情報として不揮発性メモリまたはユーザがアクセスできない媒体上のシステムエリアに保存される。
【0006】
そして、電源投入時には、前回電源オフされる前までに更新/累積された情報をロードし、これを基に、情報を更新/累積しなければならない。このため電源投入時に、不揮発性メモリまたはシステムエリアから情報を読み出す必要がある。
【0007】
このような磁気ディスク装置では、媒体の大容量化に伴い、欠陥セクタ管理情報やSMRT情報等は,膨大なサイズのデータが必要とされる。これらのデータは,磁気ディスク装置のメディアアクセスやコマンド動作を正常に実行するため必要不可欠であり、メディア上の装置固有領域に保存されている。
【0008】
そして、上記データは、パワーオンシーケンスで読み出しを行い、メモリに常駐し、磁気ディスク装置の動作中に更新され、定期的またはコマンド受領などの決められたタイミングで、媒体の装置固有領域に保存される。
【特許文献1】特開平4−245072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年のモバイル機器の普及により、かかる媒体記憶装置もモバイル機器(例えば、ノート型パーソナルコンピュータや携帯型AV(Audio/Visual)機器)へ搭載される。このような利用環境では、媒体記憶装置は、温度変化や振動等のライトエラーが起こりやすい。このため、このような環境化で、装置固有情報を媒体上のシステムエリアに書き込み、保存した場合、次の電源オン時に装置固有情報が読み出せない可能性がある。
【0010】
例えば、ディスク装置は、振動が加わった状態には、オフトラックが生じ、正確に対象トラック内に、装置固有情報をライトできないおそれがある。そのため、その後のパワーオンシーケンスで、ヘッドを対象トラックにシークしても、装置固有情報をリードすることができない。
【0011】
同様に、近年の記録密度の高密度化により、温度が異なる場合には、オフトラックしやすく、装置固有情報のライトとリードで温度変化があると、装置固有情報保存時に、ライトエラーが発生し、そのまま電源が切断された場合、その後のパワーオンシーケンス時に、装置固有情報のリードでエラーが発生する。
【0012】
このディスク装置の装置固有情報には、コマンド実行に必要不可欠なものも存在し、パワーオンシーケンス時にこれらを読み出せない場合、正常に動作しなくなる可能性がある。また、リードエラーした装置固有情報が、欠陥管理情報だった場合は、正常なメディアアクセスが保障できない。
【0013】
即ち、欠陥セクタ管理情報が読めない場合、自動交代処理が発生している装置では、交代先セクタではなく交代元セクタにアクセスしてしまう。交代元セクタは元々エラーが発生したセクタであり、またデータは交代先セクタにライトしているので、リードエラーまたはデータミスコンペアが発生する。また、欠陥セクタ管理情報に、工場出荷時の欠陥セクタ情報が登録されているような場合には、工場出荷時の欠陥セクタへのアクセスも生じる。
【0014】
同様に、SMARTドライブ属性値が読めない場合、SMARTコマンドでホストに報告すべき属性値が存在しなくなるためコマンドを実行できなくなる。
【0015】
ディスク装置が上記のような状態に陥ると正常動作が保障できないため、自己診断エラーや受領コマンドのアボートなどを行う。又、ディスク装置がホストシステムから発行されたコマンドを、全てアボートまたはエラーで終了した場合、ホストシステムが立ち上がらなくなることもあるため、ディスク装置に保存しているデータのバックアップ作業も行えなくなってしまう。
【0016】
従って、本発明の目的は、更新された装置固有情報にライトエラーが生じても、装置固有情報を回復して、ホストからのコマンド受領を可能にするための装置固有情報の回復処理方法及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0017】
又、本発明の他の目的は、装置固有情報のライトエラーが生じても、装置固有情報を擬似的に回復するための装置固有情報の回復処理方法及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0018】
更に、本発明の更に他の目的は、装置固有情報のライトエラーが生じても、電源投入時に、装置固有情報のリードエラーを防止するための装置固有情報の回復処理方法及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0019】
更に、本発明の更に他の目的は、電源投入時に、装置固有情報のリードエラーが生じても、ホストからのライトデータを保護するための装置固有情報の回復処理方法及び媒体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的の達成のため、本発明の媒体記憶装置は、記憶媒体のトラックのデータのリード及びライトのいずれかを行うヘッドと、前記記憶媒体の所望トラックに前記ヘッドを位置付けるアクチュエータと、装置固有情報を格納するためのメモリと、ホストからのコマンドを受け、前記メモリの装置固有情報を参照して、前記アクチュエータを制御し、前記ヘッドで、前記所望のトラックのデータのリード及びライトのいずれかを実行する制御部とを有する。そして、前記制御部は、電源投入時に、前記ヘッドを前記記憶媒体のシステム領域に位置付け、前記システム領域に格納された前記装置固有情報を読み出し、前記メモリに展開するとともに、前記読み出しエラーを検出した時は、不揮発性メモリに格納された前記装置固有情報の代替情報を読み出し、前記メモリに展開する。
【0021】
又、本発明の記憶媒体装置の装置固有情報の回復処理方法は、電源投入時に、前記ヘッドを前記記憶媒体のシステム領域に位置付け、前記システム領域に格納された装置固有情報を前記メモリに読み出すステップと、前記読み出しエラーが生じたかを判定するステップと、前記読み出しエラーを検出した時は、不揮発性メモリに格納された前記装置固有情報の代替情報を読み出し、前記メモリに展開するステップとを有する。
【0022】
更に、本発明は、好ましくは、前記制御部は、前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報を更新し、少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込む。
【0023】
更に、本発明は、好ましくは、前記装置固有情報及び前記代替情報は、少なくとも、前記記憶媒体の欠陥セクタ管理情報を有する。
【0024】
更に、本発明は、好ましくは、前記装置固有情報及び前記代替情報は、少なくとも、前記記憶媒体の欠陥セクタ管理情報とSMART情報とを有する。
【0025】
更に、本発明は、好ましくは、前記装置固有情報の代替情報を格納する不揮発性メモリが、前記記憶媒体である。
【0026】
更に、本発明は、好ましくは、前記制御部は、前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報の代替情報を更新し、少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報の代替情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込む。
【0027】
更に、本発明は、好ましくは、前記制御部は、前記代替情報を前記メモリに展開した後、前記ホストからのライトデータを一時記憶メモリに格納し、前記ホストからのリード要求に対し、前記一時記憶メモリのデータを読み出し、前記ホストへ転送する。
【0028】
更に、本発明は、好ましくは、前記制御部は、前記ホストからの要求が到来しない場合には、前記一時記憶メモリのライトデータを、前記ヘッドにより、前記記憶媒体にライトバックする。
【0029】
更に、本発明は、好ましくは、前記制御部は、前記代替情報を前記メモリに展開した後、装置ユーザに通知する。
【0030】
更に、本発明は、好ましくは、前記記憶媒体が、磁気ディスクである。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、媒体記憶装置の電源投入後の装置固有情報読み出し処理で、エラーが発生した場合、代替データを展開して、パワーオンエラーを擬似的に回復するため、コマンド受領が可能となる。この代替データは、工場出荷時のデータを、予めROMまたは媒体のシステム領域に保存し、必要な場合は、ここから展開する。代替データを展開することにより、正確なコマンド動作を実行できない可能性もあるが、コマンドの受領および実行が可能になることにより、ホストシステムが立ち上がらなくなることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を、媒体記憶装置、装置固有情報の回復処理の第1の実施の形態、装置固有情報の回復処理の第2の実施の形態、他の実施の形態の順で説明する。
【0033】
[媒体記憶装置]
図1は、本発明の一実施の形態の媒体記憶装置の構成図、図2は、図1のデイスク媒体の構成図、図3は、図2の装置固有情報の説明図である。図1は、媒体記憶装置として、媒体記憶装置である、磁気デイスクにデータをリード/ライトする磁気デイスク装置(HDD)を例に示す。
【0034】
磁気デイスク装置10は、図1に示すように、パーソナルコンピュータに内蔵され、パーソナルコンピュータのホスト1とATA(AT Attachment)規格のインターフェースのケーブル9で接続される。
【0035】
磁気デイスク装置10は、磁気デイスク19と、磁気デイスク19を回転するスピンドルモータ20と、磁気デイスク19にデータをリード/ライトする磁気ヘッド25と、磁気ヘッド25を磁気デイスク19の半径方向(トラック横断方向)に移動するアクチュエータ(VCM)22とを備える。
【0036】
又、制御部として、HDC(Hard Disk Controller)26と、データバッファ14と、MPU11と、メモリ(RAM)13と、ヘッドIC18と、スピンドルモータドライバ21と、VCMドライバ23と、位置検出部24と、これらを接続するバス17とを備える。
【0037】
HDC26は、ホストからタスクをセットするタスクファイル12Aを有するATAインタフェース制御回路12と、データバッファ14を制御するデータバッファ制御回路15と、記録データのフォーマットの制御を行うフォーマッタ制御回路16とを有する。
【0038】
ヘッドIC18は、ライト時は、記録データに従い磁気ヘッド25に記録電流を流し、リード時は、磁気ヘッド25からの読取信号を増幅して、リードデータ(サーボ情報を含む)を出力する。位置検出部24は、ヘッドIC18からのサーボ情報から磁気ヘッド25の位置を検出する。
【0039】
スピンドルドライバ21は、スピンドルモータ20を回転駆動する。VCMドライバ23は、磁気ヘッド25を移動するVCM22を駆動する。MPU(Micro Processor)11は、磁気ヘッド25の位置制御、リード/ライト制御、リトライ制御を行う。メモリ(RAM)13は、MPU11の処理に必要なデータを格納する。
【0040】
図2は、磁気デイスク19のデータ領域の説明図である。データ領域は、ユーザがアクセス可能なユーザーデータ領域(LBA0〜LBAn−1)19Cと、それ以外のシステム領域19A,19Bに分割される。システム領域の代替データ保存領域19Aは、予め工場出荷時の装置固有情報を代替データとして保存する。又、装置固有情報保存エリア19Bは、HDD動作時更新される装置固有情報をする。
【0041】
図3に示すように、装置固有情報は、欠陥セクタ管理情報190と、SMARTドライブ属性値192とを含む。欠陥セクタ管理情報190は、欠陥のあった交代元セクタと交代先セクタの対応テーブルである。この欠陥セクタ管理情報190は、工場での欠陥セクタのテストにおいて、検出され、セットされた工場出荷時の管理情報190−1と、稼動時に、検出された欠陥セクタの管理情報190−2とを有する、
SMARTドライブ属性値192は、例えば、電源投入時間や、リード/ライトエラーレイト等を格納する。工場出荷後、代替データ保存エリア19Aは、更新されず、また装置固有情報保存エリア19Bと別領域にすることで、装置固有情報更新時にエラーが発生しても、代替データ保存領域19Aには影響しない。
【0042】
一方、装置固有情報保存エリア19Bでは、欠陥セクタ管理情報190の稼動時の管理情報190−2は、欠陥セクタの交代処理を行う毎に、更新され、SMARTドライブ属性値192は、パワーオフ時に更新される。
【0043】
図1のMPU11は、電源投入時に、磁気デイスク19の装置固有情報エリア19Bを読み出し、メモリ13に展開する。そして、MPU11は、メモリ13に展開されたこの装置固有情報を使用して、媒体上の欠陥セクタの位置情報を認識し、磁気デイスク19をリード/ライトアクセスし、交代処理を実行すると、装置固有情報を更新する。同様に、MPU11は、エラーレートや投入時間を累積し、SMARTドライブ属性値を更新する。そして、ホストからのSMARTコマンドに応じて、ホストにこのSMARTドライブ属性値を伝達する。
【0044】
MPU11は、パワーオフシーケンスにおいて、このメモリ13に展開され、更新された装置固有情報を、磁気デイスク19の装置固有情報エリア19Bに書き込み、保存する。
【0045】
[装置固有情報の回復処理の第1の実施の形態]
図4は、本発明の一実施の形態の装置固有情報の回復処理フロー図である。
【0046】
(S10)電源投入後に、MPU11は、必要な初期設定を実行する。即ち、MPU11は、ハードウェアの診断及びスピンドルモータ20の起動等を行う。例えば、メモリ13、HDC26の診断を行い、診断結果が良好なら、必要なレジスタ類の初期設定を行い、スピンドルモータ20を起動する。
【0047】
(S12)スピンドルモータ20の起動に成功すると、MPU11は、VCMドライバ23を介しVCM22を駆動して、磁気ヘッド25を、磁気デイスク19の装置固有情報保存エリア19Bに位置付ける。これにより、磁気ヘッド25は、磁気デイスク19の装置固有情報保存エリア19Bの情報の読み込みを実行する。
【0048】
(S14)MPU11は、メモリ13への装置固有情報の読み込みが正常終了したかを判定する。正常終了と判定すると、ステップS18に進む。逆に、例えば、フォーマッタ制御回路16で、エラー訂正不可能なリードデータブロックを検出した場合や、ヘッドIC18のアンプゲインを最大にしても、所望のリードレベルが得られない場合には、リードエラーとなり、正常終了しない。
【0049】
(S16)MPU11は、メモリ13への装置固有情報の読み込みが正常終了しないと判定した場合には、MPU11は、VCMドライバ23を介しVCM22を駆動して、磁気ヘッド25を、磁気デイスク19の代替データ保存エリア19Aに位置付ける。これにより、磁気ヘッド25は、磁気デイスク19の代替データ保存エリア19Aの情報の読み込みを実行し、代替データを、メモリ13へ展開する。そして、MPU11は、ホストに異常を通知するために、メモリ13の読み込んだSMART属性値を,意図的に悪化させる。例えば、図3のエラーレイトを操作し、エラーレイトを高い値とする。
【0050】
(S18)その後、MPU11は、HDC26のインターフェース回路12を介しホストへREADYを通知する。
【0051】
このように、磁気デイスク装置の電源投入後の装置固有情報読み出し処理で、エラーが発生した場合、代替データを展開して、パワーオンエラーを擬似的に回復し、コマンド受領を可能する。この代替データは、工場出荷時のデータを、予めROMまたは媒体のシステム領域に保存し、必要な場合は、ここから展開する。
【0052】
代替データを展開することにより、正確なコマンド動作を実行できない可能性もあるが、コマンドの受領および実行が可能になることにより、ホストシステムが立ち上がらなくなることを防ぐことができる。また、このような状態に陥った場合、SMART属性値を悪化させることにより、ホストシステムが,磁気デイスク装置の異常を検知することができる。
【0053】
工場でのテストデータは、システムエリアに保存され、出荷後に更新等で書き換えられることは無いので、必ず読み出しが可能である。このような代替データを展開すれば、工場出荷時の欠陥セクタへのアクセスを防止することができる。
【0054】
又、SMARTドライブ属性値は、保障障害しきい値を、代替データとして展開することも可能である。ただし、この場合、保障障害しきい値としては、デフォルトとして、属性を悪化させたデータを格納する。
【0055】
[装置固有情報の回復処理の第2の実施の形態]
次に、このように代替データを展開しても、装置固有情報読み出しエラーで、コマンドは受領できるが、当初は、正常なメディアアクセス(磁気媒体19のユーザーエリアのアクセス)が保障できない場合がありうる。例えば、欠陥セクタ情報の読み出しでエラーが発生し、工場出荷時の欠陥セクタ情報しか得られない場合で、出荷後の欠陥セクタの数が多い場合には、1コマンドに対して、交代処理が頻発し、ホストが期待した時間内に、リード/ライト処理を実行できない場合等である。
【0056】
このような場合には、設定により、図5のライト処理、図6のリード処理を実行することが好適である。図5は、装置固有情報読み出しでエラーが発生し、正常なメディアアクセスが保障できない場合のライトコマンド処理フロー図である。
【0057】
(S20)MPU11は、ホストからATAインターフェース回路12を介しライトコマンドを受領すると、一時退避メモリ(例えば、バッファメモリ14)に空き領域があり、ライトデータを保存可能かをチェックする。
【0058】
(S22)保存可能な場合は,一時退避メモリ14に,ホストからのライトデータを保存し、コマンドステータスをホストに報告する。
【0059】
(S24)一方、一時退避メモリ14に、空き領域が無い場合は、ホストにエラーを通知する。
【0060】
又、図6は、装置固有情報読み出しでエラーが発生し正常なメディアアクセスが保障できない場合のリードコマンド処理フロー図である。
【0061】
(S30)MPU11は、ホストからATAインターフェース回路12を介しリードコマンドを受領すると、受領したリードコマンドの要求データが、一時退避メモリ14に退避されているかを判断する。
【0062】
(S32)MPU11は、一時退避メモリ14に、要求データが退避されていると判断すると、バッファ制御回路15により、リードデータとして一時退避メモリ14のデータを転送し、コマンドステータスを報告する。
【0063】
(S34)一方、一時退避メモリ14に、退避されていなければ、MPU11は、メディア(磁気媒体)19からのリード処理を実行する。この場合に、当初は、出荷後の欠陥セクタのリードはできないが、それ以外のセクタは、リードできる。リードできない場合には、エラーを報告する。
【0064】
このように、装置固有情報読み出しで、エラーが発生し、正常なメディアアクセスが保障できない場合、ライトデータをメモリに退避することにより、メディアアクセスを回避し、データを保護することができる。又、ホストがアクセスしていない時間を利用して、一時退避メモリ14のライトデータを、磁気デイスク19にライトバックする。
【0065】
この場合に、ホストへの応答時間に影響しないため、欠陥セクタが検出されると、交代処理を行い、装置固有情報の欠陥セクタ情報を更新できる。即ち、次第に、メモリ13の代替データが、リードエラーした装置固有情報の内容に近づくことになる。
【0066】
更に、図4の装置固有情報読み出しエラー発生に、代替データを展開した時に、装置の性能が低下するため、ユーザへの通知処理を行うことが望ましい。図7は、装置固有情報読み出しエラー発生時のユーザ通知処理フロー図である。
【0067】
(S40)ステップS10と同様に、電源投入後に、MPU11は、必要な初期設定を実行する。
【0068】
(S42)ステップS12と同様に、MPU11は、VCMドライバ23を介しVCM22を駆動して、磁気ヘッド25を、磁気デイスク19の装置固有情報保存エリア19Bに位置付ける。これにより、磁気ヘッド25は、磁気デイスク19の装置固有情報保存エリア19Bの情報の読み込みを実行する。
【0069】
(S44)ステップS14と同様に、MPU11は、メモリ13への装置固有情報の読み込みが正常終了したかを判定する。正常終了と判定すると、IDLEループへ進む。逆に、装置固有情報の読み込みでエラーが発生した場合、ユーザに異常を通知するために発振処理を実行する。例えば、磁気デイスク装置にブザーを設け、ブザーを発振して、音で、ユーザに通知し、アイドルループに進む。
【0070】
[他の実施の形態]
前述の実施の形態では、装置固有情報を、図3の構成で説明したが、SMARTドライブ属性値については、他の属性値(ドライブの状況に応じて、自動調整されてしきい値や、設定情報等)を適用できる。又、媒体記憶装置を磁気デイスク装置で説明したが、光媒体、光磁気媒体、他の記憶媒体を使用した記憶装置にも適用できる。
【0071】
更に、インターフェースは、ATAに限らず、他のインターフェースにも適用できる。又、装置固有情報の代替データは、媒体に限らず、他の不揮発性メモリに格納することもできる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態により説明したが、本発明の趣旨の範囲内において、本発明は、種々の変形が可能であり、本発明の範囲からこれらを排除するものではない。
【0073】
(付記1)記憶媒体のトラックのデータのリード及びライトのいずれかを行うヘッドと、前記記憶媒体の所望トラックに前記ヘッドを位置付けるアクチュエータと、装置固有情報を格納するためのメモリと、ホストからのコマンドを受け、前記メモリの装置固有情報を参照して、前記アクチュエータを制御し、前記ヘッドで、前記所望のトラックのデータのリード及びライトのいずれかを実行する制御部とを有し、前記制御部は、電源投入時に、前記ヘッドを前記記憶媒体のシステム領域に位置付け、前記システム領域に格納された前記装置固有情報を読み出し、前記メモリに展開するとともに、前記読み出しエラーを検出した時は、不揮発性メモリに格納された前記装置固有情報の代替情報を読み出し、前記メモリに展開することを特徴とする媒体記憶装置。
【0074】
(付記2)前記制御部は、前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報を更新し、少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込むことを特徴とする付記1の媒体記憶装置。
【0075】
(付記3)前記装置固有情報及び前記代替情報は、少なくとも、前記記憶媒体の欠陥セクタ管理情報を有することを特徴とする付記1の媒体記憶装置。
【0076】
(付記4)前記装置固有情報及び前記代替情報は、少なくとも、前記記憶媒体の欠陥セクタ管理情報とSMART情報とを有することを特徴とする付記1の媒体記憶装置。
【0077】
(付記5)前記装置固有情報の代替情報を格納する不揮発性メモリが、前記記憶媒体であることを特徴とする付記1の媒体記憶装置。
【0078】
(付記6)前記制御部は、前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報の代替情報を更新し、少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報の代替情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込むことを特徴とする付記5の媒体記憶装置。
【0079】
(付記7)前記制御部は、前記代替情報を前記メモリに展開した後、前記ホストからのライトデータを一時記憶メモリに格納し、前記ホストからのリード要求に対し、前記一時記憶メモリのデータを読み出し、前記ホストへ転送することを特徴とする付記1の媒体記憶装置。
【0080】
(付記8)前記制御部は、前記ホストからの要求が到来しない場合には、前記一時記憶メモリのライトデータを、前記ヘッドにより、前記記憶媒体にライトバックすることを特徴とする付記7の媒体記憶装置。
【0081】
(付記9)前記制御部は、前記代替情報を前記メモリに展開した後、装置ユーザに通知することを特徴とする付記1の媒体記憶装置。
【0082】
(付記10)前記記憶媒体が、磁気ディスクであることを特徴とする付記1の媒体記憶装置。
【0083】
(付記11)記憶媒体の所望のトラックに、ヘッドを位置付け、データのリード及びライトのいずれかを行う記憶媒体装置の装置固有情報の回復処理方法であって、電源投入時に、前記ヘッドを前記記憶媒体のシステム領域に位置付け、前記システム領域に格納された装置固有情報を前記メモリに読み出すステップと、前記読み出しエラーが生じたかを判定するステップと、前記読み出しエラーを検出した時は、不揮発性メモリに格納された前記装置固有情報の代替情報を読み出し、前記メモリに展開するステップとを有することを特徴とする媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0084】
(付記12)前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報を更新するステップと、少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込むステップとを有することを特徴とする付記11の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0085】
(付記13)前記装置固有情報及び前記代替情報は、少なくとも、前記記憶媒体の欠陥セクタ管理情報を有することを特徴とする付記11の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0086】
(付記14)前記装置固有情報及び前記代替情報は、少なくとも、前記記憶媒体の欠陥セクタ管理情報とSMART情報とを有することを特徴とする付記11の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0087】
(付記15)前記展開ステップは、装置固有情報の代替情報を格納する不揮発性メモリとしての前記記憶媒体から読み出すステップを有することを特徴とする付記11の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0088】
(付記16)前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報の代替情報を更新するステップと、少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報の代替情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込むステップとを更に有することを特徴とする付記15の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0089】
(付記17)前記代替情報を前記メモリに展開した後、前記ホストからのライトデータを一時記憶メモリに格納するステップと、前記ホストからのリード要求に対し、前記一時記憶メモリのデータを読み出し、前記ホストへ転送するステップとを更に有することを特徴とする付記11の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0090】
(付記18)前記ホストからの要求が到来しない場合には、前記一時記憶メモリのライトデータを、前記ヘッドにより、前記記憶媒体にライトバックするステップを更に有することを特徴とする付記17の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0091】
(付記19)前記代替情報を前記メモリに展開した後、装置ユーザに通知するステップを更に有することを特徴とする付記11の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【0092】
(付記20)前記読み出しステップは、前記記憶媒体としての磁気ディスクから読み出すステップを有することを特徴とする付記11の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【産業上の利用可能性】
【0093】
媒体記憶装置の電源投入後の装置固有情報読み出し処理で、エラーが発生した場合、代替データを展開して、パワーオンエラーを擬似的に回復するため、コマンド受領が可能となる。コマンドの受領および実行が可能になることにより、ホストシステムが立ち上がらなくなることを防ぐことができ、振動や温度変化が大きい環境で使用する媒体記憶装置に適用して、有効である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施の形態の媒体記憶装置の構成図である。
【図2】図1の媒体の領域の説明図である。
【図3】図2の装置固有情報の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態のパワーオンシーケンス処理フロー図である。
【図5】本発明の他の実施の形態のライトコマンド処理フロー図である。
【図6】本発明の他の実施の形態のリードコマンド処理フロー図である。
【図7】本発明の別の実施の形態のリードエラー処理フロー図である。
【符号の説明】
【0095】
10 媒体記憶装置(磁気デイスク装置)
11 MPU(処理ユニット)
12 ATAインターフェース制御回路
13 メモリ(RAM)
14 データバッファ
15 データバッファ制御回路
19 媒体(磁気デイスク)
19A 装置固有情報の代替データ保存領域
19B 装置固有情報保存領域
19C ユーザ領域
20 スピンドルモータ
22 アクチュエータ(VCM)
25 ヘッド(磁気ヘッド)
26 コントローラ(HDC)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体のデータのリード及びライトのいずれかを行うヘッドと、
前記記憶媒体の所望トラックに前記ヘッドを位置付けるアクチュエータと、
装置固有情報を格納するためのメモリと、
ホストからのコマンドを受け、前記メモリの装置固有情報を参照して、前記アクチュエータを制御し、前記ヘッドで、前記所望のトラックのデータのリード及びライトのいずれかを実行する制御部とを有し、
前記制御部は、電源投入時に、前記ヘッドを前記記憶媒体のシステム領域に位置付け、前記システム領域に格納された前記装置固有情報を読み出し、前記メモリに展開するとともに、
前記読み出しエラーを検出した時は、不揮発性メモリに格納された前記装置固有情報の代替情報を読み出し、前記メモリに展開する
ことを特徴とする媒体記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報を更新し、
少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込む
ことを特徴とする請求項1の媒体記憶装置。
【請求項3】
前記装置固有情報及び前記代替情報は、少なくとも、前記記憶媒体の欠陥セクタ管理情報を有する
ことを特徴とする請求項1の媒体記憶装置。
【請求項4】
記憶媒体の所望のトラックに、ヘッドを位置付け、データのリード及びライトのいずれかを行う記憶媒体装置の装置固有情報の回復処理方法であって、
電源投入時に、前記ヘッドを前記記憶媒体のシステム領域に位置付け、前記システム領域に格納された装置固有情報を前記メモリに読み出すステップと、
前記読み出しエラーが生じたかを判定するステップと、
前記読み出しエラーを検出した時は、不揮発性メモリに格納された前記装置固有情報の代替情報を読み出し、前記メモリに展開するステップとを有する
ことを特徴とする媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。
【請求項5】
前記リード/ライトの実行に伴い、前記メモリの装置固有情報を更新するステップと、
少なくとも、電源オフ時に、前記メモリの装置固有情報を前記ヘッドにより、前記記憶媒体の前記システム領域に書き込むステップとを有する
ことを特徴とする請求項4の媒体記憶装置の装置固有情報の回復処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−252649(P2006−252649A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66667(P2005−66667)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】