説明

媒体鑑別装置

【課題】互いに異なる波長の光を発生する複数の光源から光を媒体に照射し、両方の光による画像に出現する特徴を統合してフィルタ処理を施すことによって、真正媒体と偽造媒体とを貼り合わせた特徴を抽出することができ、貼り合わせ券を確実に判別することができるようにする。
【解決手段】複数の光源から互いに異なる波長の光を照射して媒体の画像を取得する画像取得部と、取得した各画像における貼り合わせの特徴を解析する画像解析部と、複数の貼り合わせの特徴を統合した画像を作成する特徴統合部と、特徴統合部が作成した画像にフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、フィルタ処理を施した画像から貼り合わせの特徴を抽出する貼り合わせ特徴抽出部と、抽出した貼り合わせの特徴に基づいて媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体鑑別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行、信用金庫、郵便局、消費者金融会社等の金融機関の支店等に配設されたATM(Automatic Teller Machine:現金自動預払機)、CD(Cash Dispenser:現金自動支払機)等の自動取引装置や両替機、また、商店や路上に配設された自動販売機等には、紙幣等の有価証券の真偽を判別したり、媒体の種別を判別するための媒体鑑別装置が配設されている。該媒体鑑別装置が紙幣等の媒体の真偽を判別することによって、偽造紙幣等の不正な媒体を排除することができる。
【0003】
近年では、本物の媒体の一部を切り取って部分的に偽物の券を貼(は)り合わせた偽造紙幣、すなわち、貼り合わせ券の流通が増加している。そこで、媒体の厚みを検出したり、テープ等の付着物を検出することによって、多様な媒体の真偽を判別することができる媒体鑑別装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2006−226859号公報
【特許文献2】特開2002−303679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の媒体鑑別装置においては、メカ的な方法で媒体の厚みを検出するようになっているので、海外紙幣のように、印刷の凹凸が大きい媒体や、セキュリティスレッドが厚い媒体を鑑別の対象にした場合、貼り合わせ券を確実に判別することは困難である。
【0005】
本発明は、前記従来の媒体鑑別装置の問題点を解決して、互いに異なる波長の光を発生する複数の光源から光を媒体に照射し、両方の光による画像に出現する特徴を統合してフィルタ処理を施すことによって、真正媒体と偽造媒体とを貼り合わせた特徴を抽出することができ、貼り合わせ券を確実に判別することができる媒体鑑別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明の媒体鑑別装置においては、複数の光源から互いに異なる波長の光を照射して媒体の画像を取得する画像取得部と、取得した各画像における貼り合わせの特徴を解析する画像解析部と、複数の貼り合わせの特徴を統合した画像を作成する特徴統合部と、該特徴統合部が作成した画像にフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、フィルタ処理を施した画像から貼り合わせの特徴を抽出する貼り合わせ特徴抽出部と、抽出した貼り合わせの特徴に基づいて前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0007】
本発明の他の媒体鑑別装置においては、複数の光源から互いに異なる波長の光を照射して媒体の画像を取得する画像取得部と、取得した各画像にフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、フィルタ処理を施した画像を統合した画像を作成する特徴統合部と、統合した画像から貼り合わせの特徴を抽出する貼り合わせ特徴抽出部と、抽出した貼り合わせの特徴に基づいて前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0008】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、媒体の画像を取得する画像取得部と、取得した画像にフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、フィルタ処理を施した画像を統合し、真正な特徴を抽出する特徴抽出部と、抽出した特徴を出力して辞書データを作成する辞書作成部とを有する。
【0009】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、フィルタ処理を施した画像を統合した画像と前記辞書データとを演算して前記真正な特徴をマスクする貼り合わせ特徴抽出部と、抽出した特徴に基づいて前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを更に有する。
【0010】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、画像をM×N(M、Nは整数) に分割する分割領域データを備え、該分割領域データを画像に重ね合わせて分割した領域毎に特徴を抽出する分割領域特徴解析部と、前記領域毎に前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを更に有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体鑑別装置においては、互いに異なる波長の光を発生する複数の光源から光を媒体に照射し、両方の光による画像に出現する特徴を統合してフィルタ処理を施すようになっている。これにより、真正媒体と偽造媒体とを貼り合わせた特徴を抽出することができ、貼り合わせ券を確実に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図2は本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
図において、10は本実施の形態における媒体鑑別装置であり、ATM、CD等の自動取引装置、自動販売機、両替機、ゲーム機等の装置に配設され、媒体13の真偽を判別するために使用される。ここで、該媒体13は、例えば、紙幣であるが、ビール券、ギフト券、商品券等の金券、トラベラーズチェック、小切手、株券等の有価証券、入場券等の施設利用券、切符、帳票、カード、通帳等であってもよく、いかなる種類のものであってもよい。
【0015】
ここでは、説明の都合上、前記媒体13が紙幣である場合について説明する。この場合、前記媒体鑑別装置10は、真正媒体と偽造媒体とを貼り合わせた部位を特定することによって、媒体13が貼り合わせ券であるか否かを判別するものであるが、媒体13の大きさ、形状、姿勢等を認識することができるものであってもよいし、さらに、認識した媒体13の大きさ等に基づいて、該媒体13の種類を判別することができるものであってもよい。例えば、該媒体13が我が国の紙幣である場合、千円札、二千円札、五千円札及び一万円札の4種類の金種の紙幣について、種類を判別することができることが望ましい。
【0016】
そして、前記媒体鑑別装置10は、自動取引装置のように媒体13としての紙幣を受領する装置における紙幣の搬送路や紙幣の取扱装置に配設され、受領した紙幣の真偽を判別する。なお、前記紙幣を受領する装置は、一般的には、銀行、信用金庫、郵便局、消費者金融会社等の金融機関の支店等の営業店や、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店の店舗に配設されているATM、CD等の自動取引装置であるが、紙幣を受領するための装置であれば、鉄道、バス等の交通機関の券売機、飲料、タバコ等の自動販売機、両替機、ゲーム機等いかなる装置であってもよい。そして、前記紙幣を受領する装置は、前記媒体鑑別装置10が判別した真偽に基づいて、貼り合わせ券等を不正な紙幣として排除する。
【0017】
本実施の形態において、前記媒体鑑別装置10は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、通信インターフェイス等を有する。さらに、前記媒体鑑別装置10は、画像取得部21、画像A格納部22、画像B格納部23、画像A解析部24、画像B解析部25、特徴統合部26、フィルタ処理部27、貼り合わせ特徴解析部28、判定部29、結果出力部30、画像A解析データ格納部31及び画像B解析データ格納部32を有する。
【0018】
ここで、画像取得部21は、複数の光源から互いに異なる波長の光を照射して媒体13の画像を取得する機能を有し、後述される第1の光源11、第2の光源12及び受光センサ14を備える画像取得装置が取得した画像を取得する。具体的には、媒体鑑別装置10に導入された媒体13に対して第1の光源11及び第2の光源12から照射された光による透過画像を、前記媒体13の画像として取得する。そして、画像A格納部22は、第1の光源11から照射された光による透過画像を前記媒体13の画像Aとして格納し、画像B格納部23は、第2の光源12から照射された光による透過画像を前記媒体13の画像Bとして格納する。
【0019】
また、画像A解析部24及び画像B解析部25は、取得した各画像における貼り合わせの特徴を解析する画像解析部として機能する。そして、画像A解析部24は、画像A格納部22に格納された画像Aの特徴を解析し、画像B解析部25は、画像B格納部23に格納された画像Bの特徴を解析する。さらに、画像A解析データ格納部31は、画像A解析部24による画像Aの解析結果を格納し、画像B解析データ格納部32は、画像B解析部25による画像Bの解析結果を格納する。
【0020】
そして、特徴統合部26は、複数の貼り合わせの特徴を統合した画像を作成する機能を有し、画像A解析部24及び画像B解析部25による画像Aの解析画像及び画像Bの解析画像を統合する。また、フィルタ処理部27は、特徴統合部26によって作成された解析画像にフィルタ処理としてのSobel(ゾーベル)フィルタ処理を施す。
【0021】
さらに、貼り合わせ特徴解析部28は、貼り合わせ特徴抽出部として機能し、フィルタ処理部27によってSobelフィルタ処理が施された画像から貼り合わせの特徴を抽出する。そして、判定部29は、抽出された貼り合わせの特徴に基づいて、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券であるか否かを判定する。また、結果出力部30は、判定部29の判定結果を受けて、該判定結果を媒体鑑別装置10が備える図示されない画面及びファイルに出力する。
【0022】
次に、前記構成の媒体鑑別装置10の動作について説明する。まず、画像取得装置としての第1の光源11、第2の光源12及び受光センサ14の動作について説明する。
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態における画像取得装置の構成を示す図、図3は本発明の第1の実施の形態における受光センサによるデータの取得タイミングを示す図である。
【0024】
図1に示されるように、第1の光源11及び第2の光源12は、図示されない搬送路を搬送される媒体13の一方の面に対向する側(図1における上側)に配設され、受光センサ14は、媒体13を挟んで第1の光源11及び第2の光源12と反対側(図1における下側)に配設される。そして、第1の光源11及び第2の光源12から照射された光は、媒体13を透過して、受光センサ14によって受光される。これにより、第1の光源11から照射された光による媒体13の透過画像と、第2の光源12から照射された光による媒体13の透過画像とを得ることができる。
【0025】
ここで、第1の光源11と第2の光源12とはタイミングをずらして交互に光を発生して照射するので、受光センサ14が取得するデータは、図3に示されるように、互いにタイミングがずれたものとなる。なお、図3(a)は第1の光源11からの光を受光することによって取得したデータを示し、図3(b)は第2の光源12からの光を受光することによって取得したデータを示している。これにより、第1の光源11から照射された光による媒体13の透過画像のデータと、第2の光源12から照射された光による媒体13の透過画像のデータとを容易に分離することができる。
【0026】
また、第1の光源11が発生する光の波長と第2の光源12が発生する光の波長とは、互いに異なるものであるが、真正な媒体13に照射した際には印刷パターンに対してほぼ同じ透過画像を得ることができる程度となるように選択される。
【0027】
次に、取得された画像を解析して統合する動作について説明する。
【0028】
図4は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Aを示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Bを示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Aの解析データを示す図、図8は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Bの解析データを示す図、図9は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を統合した画像を示す図である。
【0029】
ここで、媒体13は、図4に示されるように、真正媒体、すなわち、本物の一部である本物部16と偽造媒体、すなわち、偽物の一部である偽物部17とを粘着テープ等のテープによって貼り合わせた貼り合わせ券であるとする。図4に示される例においては、偽物部17の両側に本物部16が貼り合わされている。なお、偽物部17と本物部16との境界の一部に隙(すき)間18があるものとする。また、19は人物の肖像等の絵柄である。前記偽物部17は、例えば、カラープリンタで印刷された印刷物である。
【0030】
そして、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21は、媒体13を搬送させながら、第1の光源11と第2の光源12とを交互に発光させ、第1の光源11及び第2の光源12から照射された光を1つの受光センサ14で取得する。この場合、受光センサ14のデータ取得タイミングは、図3(a)及び(b)に示されるようになる。
【0031】
これにより、貼り合わせ券の画像A及びBとして、図5及び6に示されるように、第1の光源11から照射された光による媒体13の第1の透過画像15−1、及び、第2の光源12から照射された光による媒体13の第2の透過画像15−2を取得することができる。この場合、特徴としての隙間18は、第1の透過画像15−1にのみ存在し、第2の透過画像15−2には存在しない、という現象が起こる。
【0032】
そして、画像取得部21によって取得された第1の透過画像15−1及び第2の透過画像15−2は、画像A格納部22及び画像B格納部23に各々格納される。
【0033】
続いて、画像A解析部24は、前記画像A格納部22に格納されている第1の透過画像15−1に、偽物部17と本物部16との境界に発生した隙間18があるか否かを判定する。ここで、隙間18があるか否かの判定は、画素の輝度値が隙間18としてあらかじめ設定された閾(しきい)値を超えているか否かに基づいて行われる。図5に示される例においては、第1の透過画像15−1に前記隙間18が映し出されているので、画像A解析部24による解析の結果として、図7に示されるような第1の解析データ61−1が画像A解析データ格納部31に格納される。第1の解析データ61−1には、隙間18に対応する隙間解析データ62が含まれている。
【0034】
同様に、画像B解析部25は、前記画像B格納部23に格納されている第2の透過画像15−2に、偽物部17と本物部16との境界に発生した隙間18があるか否かを判定する。図6に示される例においては、第2の透過画像15−2に前記隙間18が映し出されていないので、画像B解析部25による解析の結果として、図8に示されるような第2の解析データ61−2が画像B解析データ格納部32に格納される。第2の解析データ61−2には、隙間18に対応する隙間解析データ62が含まれていない。
【0035】
続いて、特徴統合部26は、画像B格納部23に格納されている第2の透過画像15−2に対して、画像A解析データ格納部31に格納されている第1の解析データ61−1と、画像B解析データ格納部32に格納されている第2の解析データ61−2とを統合して、図9に示されるような統合画像63を作成する。
【0036】
次に、フィルタ処理を施して特徴を解析し、媒体13が貼り合わせ券であるか否かを判定する動作について説明する。
【0037】
図10は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を統合した画像にフィルタ処理を施した画像を示す図、図11は本発明の第1の実施の形態におけるSobelフィルタの例を示す図、図12は本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を解析する動作を示す図である。なお、図11において(a)は水平方向Sobelフィルタ、(b)は垂直方向Sobelフィルタであり、図12において(a)はフィルタ処理を施した画像、(b)は画像の特徴値の垂直方向累積値のグラフ、(c)は画像の特徴値の水平方向累積値のグラフである。
【0038】
フィルタ処理部27は、特徴統合部26によって作成された統合画像63に対して、Sobelフィルタによるフィルタ処理を施して、図10に示されるようなフィルタ処理後画像64を作成する。Sobelフィルタは、差分演算を行うことによって差分を検出する差分フィルタである。
【0039】
フィルタ処理においては、図11(a)に示されるような水平方向Sobelフィルタ66を統合画像63に含まれる画素に掛け、その値を合計する。この場合、ある注目画素を中心とした上下左右の9つの画素の画素値に対して、水平方向Sobelフィルタ66の9つの係数を各々乗算して結果を合計する。そして、合計値を特徴値とする。なお、水平方向Sobelフィルタ66における66aが、注目画素に乗算される係数である。
【0040】
同様に、図11(b)に示されるような垂直方向Sobelフィルタ67を統合画像63に含まれる画素に掛け、その値を合計する。この場合、ある注目画素を中心とした上下左右の9つの画素の画素値に対して、垂直方向Sobelフィルタ67の9つの係数を各々乗算して結果を合計する。そして、合計値を特徴値とする。なお、垂直方向Sobelフィルタ67における67aが、注目画素に乗算される係数である。
【0041】
そして、フィルタ処理後画像64には、前記隙間18に対応する特徴65が含まれる。この場合、前記絵柄19は、エッジの輝度差が小さいためにフィルタ処理後画像64に特徴として出現しないが、前記隙間18は周囲との輝度差が大きいためにフィルタ処理後画像64に特徴65として出現する。
【0042】
続いて、貼り合わせ特徴解析部28は、前記フィルタ処理後画像64について、図12(b)及び(c)に示されるように、特徴値の垂直方向累積値のグラフ及び特徴値の水平方向累積値のグラフを作成する。図12(b)における33は、図12(a)において矢印68で示されるように、フィルタ処理後画像64における特徴値を垂直方向に累積した値の変化を示す垂直方向特徴データであり、図12(c)における34は、図12(a)において矢印69で示されるように、フィルタ処理後画像64における特徴値を水平方向に累積した値の変化を示す水平方向特徴データである。そして、貼り合わせ特徴解析部28は、垂直方向特徴データ33における特徴ピーク点33a、及び、水平方向特徴データ34における特徴ピーク点34aを検出し、前記特徴ピーク点33aの値及び特徴ピーク点34aの値を判定部29に出力する。
【0043】
すると、該判定部29は、貼り合わせ特徴解析部28から入力された垂直方向の特徴ピーク点33aの値及び水平方向の特徴ピーク点34aの値を、あらかじめ設定されて図示されない記憶手段に格納されている垂直方向の判定閾値71及び水平方向の判定閾値72と比較する。この場合、垂直方向の特徴ピーク点33aの値は判定閾値71を超えていないが、水平方向の特徴ピーク点34aの値が判定閾値72を超えているので、判定部29は、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券である、と判定する。そして、結果出力部30は、判定部29の判定結果を出力する。
【0044】
このように、本実施の形態においては、互いに異なる波長の光を発生する2つの光源である第1の光源11及び第2の光源12から照射された光による媒体13の透過画像のいずれかのみに出現する隙間18、すなわち、特徴について、2つの透過画像の特徴を合成して、Sobelフィルタで特徴抽出を行うようになっている。これにより、貼り合わせ券の特徴65を抽出することができ、貼り合わせ券を適切に判定することができる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0046】
図13は本発明の第2の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【0047】
本実施の形態において、媒体鑑別装置10は、画像取得部21、画像A格納部22、画像B格納部23、特徴統合部26、貼り合わせ特徴解析部28、判定部29、結果出力部30、画像A解析データ格納部31、画像B解析データ格納部32、画像Aフィルタ処理部35及び画像Bフィルタ処理部36を有する。
【0048】
ここで、画像取得部21は、媒体鑑別装置10に導入された媒体13に対して第1の光源11及び第2の光源12から照射された光による透過画像を取得する。そして、画像A格納部22は、第1の光源11から照射された光による透過画像を前記媒体13の画像Aとして格納し、画像B格納部23は、第2の光源12から照射された光による透過画像を前記媒体13の画像Bとして格納する。
【0049】
また、画像Aフィルタ処理部35は、画像A格納部22に格納された画像Aにフィルタ処理を施し、画像Bフィルタ処理部36は、画像B格納部23に格納された画像Bにフィルタ処理を施す。さらに、画像A解析データ格納部31は、画像Aフィルタ処理部35によってフィルタ処理された画像Aを格納し、画像B解析データ格納部32は、画像Bフィルタ処理部36によってフィルタ処理された画像Bを格納する。
【0050】
そして、特徴統合部26は、画像Aフィルタ処理部35及び画像Bフィルタ処理部36によってフィルタ処理された画像A及び画像Bを統合する。
【0051】
さらに、貼り合わせ特徴解析部28は、特徴統合部26によって統合された画像から貼り合わせの特徴を抽出する。そして、判定部29は、抽出された貼り合わせの特徴に基づいて、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券であるか否かを判定する。また、結果出力部30は、判定部29の判定結果を受けて、該判定結果を媒体鑑別装置10が備える図示されない画面及びファイルに出力する。
【0052】
次に、本実施の形態における媒体鑑別装置10の動作について説明する。
【0053】
図14は本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図、図15は本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の画像Aを示す図、図16は本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の画像Bを示す図、図17は本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像Aを示す図、図18は本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像Bを示す図、図19は本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像を統合した画像を示す図、図20は本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を解析する動作を示す図である。なお、図20において(a)はフィルタ処理を施した画像、(b)は画像の特徴値の垂直方向累積値のグラフ、(c)は画像の特徴値の水平方向累積値のグラフである。
【0054】
図14に示されるように、媒体13は、前記第1の実施の形態と同様の貼り合わせ券であり、本物部16と偽物部17とを粘着テープ等のテープによって貼り合わせたものであるとする。なお、本実施の形態においては、偽物部17と本物部16との境界には、前記第1の実施の形態で説明したような隙間18がないものとする。
【0055】
そして、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21は、媒体13を搬送させながら、第1の光源11と第2の光源12とを交互に発光させ、第1の光源11及び第2の光源12から照射された光を1つの受光センサ14で取得する。この場合、受光センサ14のデータ取得タイミングは、図3(a)及び(b)に示されるようになる。
【0056】
これにより、貼り合わせ券の画像A及びBとして、図15及び16に示されるように、第1の光源11から照射された光による媒体13の第1の透過画像15−1、及び、第2の光源12から照射された光による媒体13の第2の透過画像15−2を取得することができる。
【0057】
この場合、第1の透過画像15−1においては、紙質の影響等によって偽物部17が本物部16よりも暗めに撮影されているために、本物部16と偽物部17との境界に輝度差が生じている。同様に、第2の透過画像15−2においても、本物部16と偽物部17との境界に輝度差が生じている。
【0058】
そして、画像取得部21によって取得された第1の透過画像15−1及び第2の透過画像15−2は、画像A格納部22及び画像B格納部23に各々格納される。
【0059】
続いて、画像Aフィルタ処理部35は、前記画像A格納部22に格納されている第1の透過画像15−1にフィルタ処理を施して、図17に示されるような第1のフィルタ処理後画像74−1を作成する。また、画像Bフィルタ処理部36は、前記画像B格納部23に格納されている第2の透過画像15−2にフィルタ処理を施して、図18に示されるような第2のフィルタ処理後画像74−2を作成する。そして、第1のフィルタ処理後画像74−1及び第2のフィルタ処理後画像74−2は、それぞれ、画像A解析データ格納部31及び画像B解析データ格納部32に格納される。
【0060】
なお、フィルタ処理においては、前記第1の実施の形態と同様に、図11(a)に示されるような水平方向Sobelフィルタ66を第1の透過画像15−1及び第2の透過画像15−2に含まれる画素に掛け、その値を合計する。この場合、ある注目画素を中心とした上下左右の9つの画素の画素値に対して、水平方向Sobelフィルタ66の9つの係数を各々乗算して結果を合計する。そして、合計値を特徴値とする。
【0061】
同様に、図11(b)に示されるような垂直方向Sobelフィルタ67を第1の透過画像15−1及び第2の透過画像15−2に含まれる画素に掛け、その値を合計する。この場合、ある注目画素を中心とした上下左右の9つの画素の画素値に対して、垂直方向Sobelフィルタ67の9つの係数を各々乗算して結果を合計する。そして、合計値を特徴値とする。
【0062】
フィルタ処理が施されることにより、第1のフィルタ処理後画像74−1においては、本物部16と偽物部17との境界に輝度差によって第1の特徴75−1が抽出される。同様に、第2のフィルタ処理後画像74−2においては、本物部16と偽物部17との境界に輝度差によって第2の特徴75−2が抽出される。
【0063】
続いて、特徴統合部26は、画像A解析データ格納部31に格納されている第1のフィルタ処理後画像74−1と、画像B解析データ格納部32に格納されている第2のフィルタ処理後画像74−2とを統合して、図19に示されるような特徴77を含む統合画像76を作成する。
【0064】
第1のフィルタ処理後画像74−1における第1の特徴75−1や第2のフィルタ処理後画像74−2における第2の特徴75−2は、貼り合わせ券の特徴として不明確な場合がある。そこで、本実施の形態においては、特徴統合部26が、画像の加算演算を行って第1のフィルタ処理後画像74−1と第2のフィルタ処理後画像74−2とを統合し、統合画像76における特徴77を抽出するようになっている。該特徴77は、第1の特徴75−1や第2の特徴75−2よりも明確になっている。
【0065】
続いて、貼り合わせ特徴解析部28は、前記統合画像76から貼り合わせの特徴を抽出する貼り合わせ特徴抽出部として機能し、前記統合画像76について、図20(b)及び(c)に示されるように、特徴値の垂直方向累積値のグラフ及び特徴値の水平方向累積値のグラフを作成する。図20(b)における37は、図20(a)において矢印81で示されるように、統合画像76における特徴値を垂直方向に累積した値の変化を示す垂直方向特徴データであり、図20(c)における38は、図20(a)において矢印82で示されるように、統合画像76における特徴値を水平方向に累積した値の変化を示す水平方向特徴データである。そして、貼り合わせ特徴解析部28は、水平方向特徴データ38における特徴ピーク点38aを検出し、該特徴ピーク点38aの値を判定部29に出力する。
【0066】
すると、該判定部29は、貼り合わせ特徴解析部28から入力された水平方向の特徴ピーク点38aの値を、あらかじめ設定されて図示されない記憶手段に格納されている水平方向の判定閾値84と比較する。この場合、水平方向の特徴ピーク点38aの値が判定閾値84を超えているので、判定部29は、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券である、と判定する。そして、結果出力部30は、判定部29の判定結果を出力する。
【0067】
このように、本実施の形態においては、互いに異なる波長の光を発生する2つの光源である第1の光源11及び第2の光源12から照射された光による媒体13の透過画像の各々では判定が困難な特徴について、Sobelフィルタで特徴抽出を行った後に統合するようになっている。これにより、貼り合わせ券の特徴を鮮明に抽出することができ、貼り合わせ券を適切に判定することができる。
【0068】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0069】
図21は本発明の第3の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【0070】
本実施の形態において、媒体鑑別装置10は、画像取得部21、貼り合わせ特徴解析部28、判定部29、結果出力部30、画像格納部41、画像フィルタ処理部42、解析画像格納部43、貼り合わせ特徴抽出部44、辞書部45及び後述される辞書作成部46を有する。
【0071】
ここで、画像取得部21は、媒体鑑別装置10に導入された媒体13の透過画像を取得する。そして、画像格納部41は、前記透過画像を媒体13の画像として格納する。
【0072】
また、画像フィルタ処理部42は、画像格納部41に格納された画像にフィルタ処理を施す。さらに、解析画像格納部43は、画像フィルタ処理部42によってフィルタ処理された画像を格納する。
【0073】
なお、辞書部45は、辞書作成部46が作成した後述される辞書データ47を格納する。そして、貼り合わせ特徴抽出部44は、辞書部45を参照して、フィルタ処理された画像から貼り合わせの特徴を抽出する。
【0074】
さらに、貼り合わせ特徴解析部28は、貼り合わせ特徴抽出部44によって抽出された貼り合わせの特徴を解析する。そして、判定部29は、解析された貼り合わせの特徴に基づいて、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券であるか否かを判定する。また、結果出力部30は、判定部29の判定結果を受けて、該判定結果を媒体鑑別装置10が備える図示されない画面及びファイルに出力する。
【0075】
次に、本実施の形態における媒体鑑別装置10の動作について説明する。まず、辞書部45に格納される辞書データ47を作成する動作について説明する。
【0076】
図22は本発明の第3の実施の形態における辞書を作成する構成を示す図、図23は本発明の第3の実施の形態における真正媒体の例を示す図、図24は本発明の第3の実施の形態における真正媒体のフィルタ処理を施した画像を示す図、図25は本発明の第3の実施の形態における辞書データとなる画像を示す図である。
【0077】
まず、真正な媒体13を複数枚用意する。なお、該媒体13は、図23に示されるように、絵柄として人物の絵柄19a及び建物の絵柄19bを含むものとする。そして、1枚の媒体13を媒体鑑別装置10に導入する。すると、画像取得部21は、前記媒体13の画像を取得して、画像格納部41に格納する。
【0078】
続いて、画像フィルタ処理部42は、前記画像格納部41に格納された画像にフィルタ処理を施して、図24に示されるようなフィルタ処理後画像50を作成する。該フィルタ処理後画像50には、建物の絵柄19bにフィルタ処理を施した結果である特徴51が含まれている。そして、前記フィルタ処理後画像50は、解析画像格納部43に格納される。なお、フィルタ処理においては、前記第1の実施の形態と同様に、図11(a)に示されるような水平方向Sobelフィルタ66を媒体13の画像に含まれる画素に掛け、その値を合計して、合計値を特徴値とする。同様に、図11(b)に示されるような垂直方向Sobelフィルタ67を媒体13の画像に含まれる画素に掛け、その値を合計して、合計値を特徴値とする。
【0079】
以上の動作を、用意した複数枚の媒体13のすべてに対して実行する。その結果、解析画像格納部43には、複数のフィルタ処理後画像50が格納されることになる。
【0080】
そして、辞書作成部46は、フィルタ処理を施した画像を統合し、真正な特徴を抽出する特徴抽出部としても機能し、さらに、抽出した特徴を出力して辞書データ47を作成する機能も発揮する。解析画像格納部43に格納された複数のフィルタ処理後画像50を入力データとして受け取り、平均データを作成する。これにより、図25に示されるような画像52が作成される。該画像52は、フィルタ処理後画像50が平均化された結果である。また、画像52に含まれる特徴53は、フィルタ処理後画像50に含まれる特徴51に膨張処理を施して膨張させたものである。そして、前記画像52は、辞書データ47として辞書部45に格納される。
【0081】
次に、媒体鑑別装置10に導入された媒体13を判定する動作について説明する。
【0082】
図26は本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図、図27は本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券の画像を示す図、図28は本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像を示す図、図29は本発明の第3の実施の形態における辞書データでマスクした画像を示す図、図30は本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を解析する動作を示す図である。なお、図30において(a)は辞書データでマスクした画像、(b)は画像の特徴値の垂直方向累積値のグラフ、(c)は画像の特徴値の水平方向累積値のグラフである。
【0083】
図26に示されるように、媒体13は、貼り合わせ券であり、本物部16と偽物部17とを粘着テープ等のテープによって貼り合わせたものであるとする。なお、本実施の形態においては、絵柄として人物の絵柄19a及び建物の絵柄19bを含むものとする。前記偽物部17は、例えば、カラープリンタで印刷された印刷物である。
【0084】
そして、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21は、前記媒体13の画像を取得して、画像格納部41に格納する。これにより、貼り合わせ券の画像として、図27に示されるような透過画像15を取得することができる。
【0085】
続いて、画像フィルタ処理部42は、前記画像格納部41に格納された透過画像15にフィルタ処理を施して、図28に示されるようなフィルタ処理後画像54を作成する。そして、該フィルタ処理後画像54は、解析画像格納部43に格納される。なお、フィルタ処理においては、前記第1の実施の形態と同様に、図11(a)に示されるような水平方向Sobelフィルタ66を媒体13の画像に含まれる画素に掛け、その値を合計して、合計値を特徴値とする。同様に、図11(b)に示されるような垂直方向Sobelフィルタ67を媒体13の画像に含まれる画素に掛け、その値を合計して、合計値を特徴値とする。
【0086】
フィルタ処理が施されることにより、フィルタ処理後画像54においては、建物の絵柄19bの輪郭から特徴55が抽出される。同様に、本物部16と偽物部17との境界に輝度差によって特徴56が抽出される。
【0087】
続いて、貼り合わせ特徴抽出部44は、解析画像格納部43に格納されているフィルタ処理後画像54について貼り合わせの特徴56を抽出する。
【0088】
ここで、フィルタ処理後画像54には、貼り合わせの特徴56だけでなく、建物の絵柄19bに対応する特徴55も含まれているので、該特徴55が媒体13が貼り合わせ券であるか否かの判定に影響を与えてしまう。例えば、貼り合わせ券でない真正な媒体13の画像にフィルタ処理を施すと、図24に示されるようなフィルタ処理後画像50を得ることができる。そして、該フィルタ処理後画像50について、特徴値の垂直方向累積値のグラフ及び特徴値の水平方向累積値のグラフ、すなわち、特徴データのヒストグラムを作成すると、建物の絵柄19bに対応する特徴51の影響で、真正な媒体13であるにも係わらず、貼り合わせ券であると判定されてしまう。そこで、本実施の形態においては、前記辞書データ47としての前記画像52を使用して、真正な媒体13が有する建物の絵柄19bに対応する真正な特徴51をマスクするようになっている。
【0089】
前記貼り合わせ特徴抽出部44は、フィルタ処理を施した画像を統合した画像と辞書データ47とを演算して真正な特徴55をマスクする機能を有し、辞書部45から辞書データ47を取得し、該辞書データ47としての画像52でフィルタ処理後画像54にマスクする。これにより、図29に示されるような画像57を得ることができる。該画像57には、真正な媒体13が有する建物の絵柄19bに対応する特徴55が含まれておらず、貼り合わせの特徴56のみが含まれている。
【0090】
続いて、貼り合わせ特徴解析部28は、前記画像57について、図30(b)及び(c)に示されるように、特徴値の垂直方向累積値のグラフ及び特徴値の水平方向累積値のグラフを作成する。図30(b)における85は、図30(a)において矢印58で示されるように、画像57における特徴値を垂直方向に累積した値の変化を示す垂直方向特徴データであり、図30(c)における86は、図30(a)において矢印59で示されるように、画像57における特徴値を水平方向に累積した値の変化を示す水平方向特徴データである。そして、貼り合わせ特徴解析部28は、垂直方向特徴データ85における特徴ピーク点85aを検出し、該特徴ピーク点85aの値を判定部29に出力する。
【0091】
すると、該判定部29は、貼り合わせ特徴解析部28から入力された垂直方向の特徴ピーク点85aの値を、あらかじめ設定されて図示されない記憶手段に格納されている垂直方向の判定閾値87と比較する。この場合、垂直方向の特徴ピーク点85aの値が判定閾値87を超えているので、判定部29は、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券である、と判定する。そして、結果出力部30は、判定部29の判定結果を出力する。
【0092】
このように、本実施の形態においては、真正な媒体13の画像に基づいて辞書データ47として、絵柄19bに対応する特徴53を含む画像52をあらかじめ作成しておき、該画像52でフィルタ処理後画像54にマスクするようになっている。これにより、真正な媒体13が有する絵柄19bに対応する特徴55がマスクされるので、貼り合わせの特徴56のみを抽出することができ、該特徴56に基づいて判定することができる。したがって、貼り合わせ券を高精度で適切に判定することができる。
【0093】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0094】
図31は本発明の第4の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【0095】
本実施の形態において、媒体鑑別装置10は、画像取得部21、判定部29、結果出力部30、画像格納部41、画像フィルタ処理部42、解析画像格納部43、貼り合わせ特徴抽出部44、辞書部45、図示されない辞書作成部46及び分割領域特徴解析部48を有する。
【0096】
ここで、画像取得部21は、媒体鑑別装置10に導入された媒体13の透過画像を取得する。そして、画像格納部41は、前記透過画像を媒体13の画像として格納する。
【0097】
また、画像フィルタ処理部42は、画像格納部41に格納された画像にフィルタ処理を施す。さらに、解析画像格納部43は、画像フィルタ処理部42によってフィルタ処理された画像を格納する。
【0098】
なお、辞書部45は、辞書作成部46が作成した辞書データ47を格納する。そして、貼り合わせ特徴抽出部44は、辞書部45を参照して、フィルタ処理された画像から貼り合わせの特徴を抽出する。
【0099】
さらに、分割領域特徴解析部48は、画像をM×N(M、Nは整数) に分割する後述される分割領域データ95を備え、画像をM×Nに分割し、分割された各領域において、前記分割領域データ95を画像に重ね合わせて貼り合わせ、分割した領域毎に特徴を抽出し、貼り合わせ特徴抽出部44によって抽出された貼り合わせの特徴を解析する。そして、判定部29は、領域毎に前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する機能を有し、解析された貼り合わせの特徴に基づいて、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券であるか否かを判定する。また、結果出力部30は、判定部29の判定結果を受けて、該判定結果を媒体鑑別装置10が備える図示されない画面及びファイルに出力する。
【0100】
次に、本実施の形態における媒体鑑別装置10の動作について説明する。なお、辞書部45の作成方法は、前記第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0101】
図32は本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図、図33は本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券の画像を示す図、図34は本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像を示す図、図35は本発明の第4の実施の形態における辞書データでマスクした画像を示す図、図36は本発明の第4の実施の形態における比較対象動作を示す図、図37は本発明の第4の実施の形態における分割領域データを示す図、図38は本発明の第4の実施の形態における分割領域データを重ね合わせた画像を示す図、図39は本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券の特徴値を示す図である。なお、図36において(a)は辞書データでマスクした画像、(b)は画像の特徴値の垂直方向累積値のグラフである。
【0102】
図32に示されるように、媒体13は、貼り合わせ券であり、本物部16と偽物部17とを粘着テープ等のテープによって貼り合わせたものであるとする。なお、本実施の形態においては、絵柄として人物の絵柄19a及び建物の絵柄19bを含むものとする。前記偽物部17は、例えば、カラープリンタで印刷された印刷物である。
【0103】
そして、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21は、前記媒体13の画像を取得して、画像格納部41に格納する。これにより、貼り合わせ券の画像として、図33に示されるような透過画像15を取得することができる。
【0104】
続いて、画像フィルタ処理部42は、前記画像格納部41に格納された透過画像15にフィルタ処理を施して、図34に示されるようなフィルタ処理後画像54を作成する。そして、該フィルタ処理後画像54は、解析画像格納部43に格納される。なお、フィルタ処理においては、前記第1の実施の形態と同様に、図11(a)に示されるような水平方向Sobelフィルタ66を媒体13の画像に含まれる画素に掛け、その値を合計して、合計値を特徴値とする。同様に、図11(b)に示されるような垂直方向Sobelフィルタ67を媒体13の画像に含まれる画素に掛け、その値を合計して、合計値を特徴値とする。
【0105】
フィルタ処理が施されることにより、フィルタ処理後画像54においては、建物の絵柄19bの輪郭から特徴55が抽出される。同様に、本物部16と偽物部17との境界に輝度差によって特徴56が抽出される。
【0106】
続いて、貼り合わせ特徴抽出部44は、解析画像格納部43に格納されているフィルタ処理後画像54について貼り合わせの特徴56を抽出する。
【0107】
ここで、フィルタ処理後画像54には、貼り合わせの特徴56だけでなく、建物の絵柄19bに対応する特徴55も含まれているので、該特徴55が媒体13が貼り合わせ券であるか否かの判定に影響を与えてしまう。例えば、貼り合わせ券でない真正な媒体13の画像にフィルタ処理を施すと、図24に示されるようなフィルタ処理後画像50を得ることができる。そして、該フィルタ処理後画像50について、特徴値の垂直方向累積値のグラフ及び特徴値の水平方向累積値のグラフ、すなわち、特徴データのヒストグラムを作成すると、建物の絵柄19bに対応する特徴51の影響で、真正な媒体13であるにも係わらず、貼り合わせ券であると判定されてしまう。そこで、本実施の形態においては、前記辞書データ47としての前記画像52を使用して、真正な媒体13が有する建物の絵柄19bに対応する真正な特徴51をマスクするようになっている。
【0108】
前記貼り合わせ特徴抽出部44は、辞書部45から辞書データ47を取得し、該辞書データ47としての画像52でフィルタ処理後画像54にマスクする。これにより、図29に示されるような画像57を得ることができる。該画像57には、真正な媒体13が有する建物の絵柄19bに対応する特徴55が含まれておらず、貼り合わせの特徴56のみが含まれている。
【0109】
続いて、分割領域特徴解析部48は、前記画像57をM×Nに分割し、分割された各領域において、貼り合わせ特徴抽出部44によって抽出された貼り合わせの特徴を解析する。
【0110】
ここで、前記画像57について、図36に示されるように、特徴値の垂直方向累積値のグラフを作成しても、前記画像57に含まれる特徴56が画像57内の上方にのみ存在するので、垂直方向特徴データ93における特徴ピーク点93aの値が垂直方向の判定閾値94を超えず、貼り合わせ券と判定されなくなってしまう。そこで、本実施の形態においては、前記画像57を複数に分割するようになっている。
【0111】
前記分割領域特徴解析部48は、あらかじめ作成された図37に示されるような分割領域データ95を画像57に重ね合わせる。これにより、図38に示されるような画像96を得ることができる。該画像96は2×4、すなわち、8つの領域に分割されている。そして、前記分割領域特徴解析部48は、前記画像96における各領域の貼り合わせ特徴値を計算する。この場合、フィルタ処理を施して得られた特徴値を累積する。その結果、図39に示されるような分割領域特徴値98を得ることができる。
【0112】
そして、判定部29は、分割領域特徴値98における各領域の特徴値をあらかじめ設定された閾値と比較する。例えば、該閾値が100であるとすると、領域97の特徴値は、450であり閾値を超えている。そのため、判定部29は、媒体鑑別装置10に導入された媒体13が貼り合わせ券である、と判定する。そして、結果出力部30は、判定部29の判定結果を出力する。
【0113】
このように、本実施の形態においては、分割領域特徴解析部48が、画像57を複数に分割し、分割された各領域において、貼り合わせ特徴抽出部44によって抽出された貼り合わせの特徴を解析するようになっている。これにより、貼り合わせが媒体13の一部分にしかない場合であっても、分割された領域に貼り合わせの特徴56が顕著に出現するので、貼り合わせ券を高精度で適切に判定することができる。
【0114】
なお、前記第1の実施の形態においては、画像Bに対して特徴を統合する例について説明したが、画像Aに対して特徴を統合しても、同様の効果を得ることができる。
【0115】
また、前記第2の実施の形態においては、加算することによって特徴を統合する例について説明したが、乗算演算や二値化処理を実施した二値化画像を統合しても、同様の効果を得ることができる。
【0116】
さらに、前記第3及び第4の実施の形態においては、単色光源を使用して媒体13の画像を取得する例について説明したが、第1及び第2の実施の形態と同様に、複数の光源を使用して画像を取得しても、同様の効果を得ることができる。
【0117】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像取得装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における受光センサによるデータの取得タイミングを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Aを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Bを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Aの解析データを示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の画像Bの解析データを示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を統合した画像を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を統合した画像にフィルタ処理を施した画像を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態におけるSobelフィルタの例を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を解析する動作を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の画像Aを示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の画像Bを示す図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像Aを示す図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像Bを示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像を統合した画像を示す図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を解析する動作を示す図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態における辞書を作成する構成を示す図である。
【図23】本発明の第3の実施の形態における真正媒体の例を示す図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態における真正媒体のフィルタ処理を施した画像を示す図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態における辞書データとなる画像を示す図である。
【図26】本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図である。
【図27】本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券の画像を示す図である。
【図28】本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像を示す図である。
【図29】本発明の第3の実施の形態における辞書データでマスクした画像を示す図である。
【図30】本発明の第3の実施の形態における貼り合わせ券の特徴を解析する動作を示す図である。
【図31】本発明の第4の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【図32】本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券の例を示す図である。
【図33】本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券の画像を示す図である。
【図34】本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券のフィルタ処理を施した画像を示す図である。
【図35】本発明の第4の実施の形態における辞書データでマスクした画像を示す図である。
【図36】本発明の第4の実施の形態における比較対象動作を示す図である。
【図37】本発明の第4の実施の形態における分割領域データを示す図である。
【図38】本発明の第4の実施の形態における分割領域データを重ね合わせた画像を示す図である。
【図39】本発明の第4の実施の形態における貼り合わせ券の特徴値を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
10 媒体鑑別装置
11 第1の光源
12 第2の光源
13 媒体
15 透過画像
15−1 第1の透過画像
15−2 第2の透過画像
16 本物部
17 偽物部
18 隙間
21 画像取得部
24 画像A解析部
25 画像B解析部
26 特徴統合部
27 フィルタ処理部
28 貼り合わせ特徴解析部
29 判定部
42 画像フィルタ処理部
44 貼り合わせ特徴抽出部
46 辞書作成部
47 辞書データ
48 分割領域特徴解析部
50、54、64 フィルタ処理後画像
51、53、55、56、65、77 特徴
52、57、96 画像
63、76 統合画像
74−1 第1のフィルタ処理後画像
74−2 第2のフィルタ処理後画像
95 分割領域データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の光源から互いに異なる波長の光を照射して媒体の画像を取得する画像取得部と、
(b)取得した各画像における貼り合わせの特徴を解析する画像解析部と、
(c)複数の貼り合わせの特徴を統合した画像を作成する特徴統合部と、
(d)該特徴統合部が作成した画像にフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、
(e)フィルタ処理を施した画像から貼り合わせの特徴を抽出する貼り合わせ特徴抽出部と、
(f)抽出した貼り合わせの特徴に基づいて前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを有することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項2】
(a)複数の光源から互いに異なる波長の光を照射して媒体の画像を取得する画像取得部と、
(b)取得した各画像にフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、
(c)フィルタ処理を施した画像を統合した画像を作成する特徴統合部と、
(d)統合した画像から貼り合わせの特徴を抽出する貼り合わせ特徴抽出部と、
(e)抽出した貼り合わせの特徴に基づいて前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを有することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項3】
(a)媒体の画像を取得する画像取得部と、
(b)取得した画像にフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、
(c)フィルタ処理を施した画像を統合し、真正な特徴を抽出する特徴抽出部と、
(d)抽出した特徴を出力して辞書データを作成する辞書作成部とを有することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項4】
フィルタ処理を施した画像を統合した画像と前記辞書データとを演算して前記真正な特徴をマスクする貼り合わせ特徴抽出部と、
抽出した特徴に基づいて前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを更に有する請求項3に記載の媒体鑑別装置。
【請求項5】
画像をM×N(M、Nは整数) に分割する分割領域データを備え、該分割領域データを画像に重ね合わせて分割した領域毎に特徴を抽出する分割領域特徴解析部と、
前記領域毎に前記媒体が貼り合わせ券であるか否かを判定する判定部とを更に有する請求項3に記載の媒体鑑別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2008−299550(P2008−299550A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144352(P2007−144352)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】