媒質の音波処理
例えばイムノアッセイにおける媒質の音波処理は、変換器から媒質が保持されている容器へ、変換器と容器との間に連結されるソノトロードにより音波を適用することによって提供される。ソノトロードは、スリットによって分離され、かつ、くぼみの周りに配置されるソノトロードの多数の突出部分の接面によって形成され、容器が保持されるくぼみを有する。ソノトロードは、間に任意の連結層無く、容器との乾燥した接触面によって、容器に連結される。そのようなソノトロードの使用は、比較的低いエネルギー損失および低い温度上昇を伴う有効な音波処理を可能にする利点を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、小型のインビトロ診断用実験機器、例えば、イムノアッセイ分析器または臨床化学分析器における、媒質の音波処置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の以下において、「音」という用語は、可聴音および超可聴音双方を指すために使用されるであろう。音波処理は、音波の応用である。反応を行う目的のために媒質を音波処理することが公知である。通常、音波処理は、凝集物を解離させるために使用される。音波処理が使用される特に関心対象の分野は、試料中に存在する可能性がある被分析物を検出することが可能である試薬に、試料が添加されるアッセイにおいてである。アッセイの一般的なタイプは、イムノアッセイである。イムノアッセイにおける音波処理の使用の例は、混合の目的のため、または、例えば粒子補助アッセイにおけるように、凝集物の産生を増強するためである。最も実用的な応用において、超音波周波数(少なくとも20kHz)が使用され、その場合は超音波処理という用語が使用されてもよい。
【0003】
最もよく使用される音波処理器は、音波処理される媒質中に適用されるマイクロチップ音波処理器プローブである。または、大きな音波処理槽もまた、利用可能である。音波処理は通常、単に、ロッド(rod)が液体に囲まれているときに有効であると考えられている。これは、任意の音響接触媒質(couplant)材料が無い、変換器と反応容器との間の固体接触が、反応容器内の液体媒質へ音波を有効に伝達しないと一般に考えられていることに基づく。
【0004】
音波は基本的に機械的振動であるため、媒質は、波が伝わり、または伝播することが必要とされる。音源の表面上の振動が、媒質中へ音響エネルギーを伝達する。媒質を音響的に特徴付けるために、最も重要なパラメーターは音響インピーダンスZである。無損失の媒質については、Z=ρcであり、ここで、ρは媒質の密度、および、cは媒質における音速である。入射音が反射面に垂直であるとき、すなわち、入射の角度が0であるとき、通過出力(passed power)P2および入射出力P1の分数は、次の公式によって与えられる:
P2/P1=(4Z1Z2)/(Z1+Z2)2
水および大抵の液体のような非弾性の媒質においては、音の振幅が比較的低い限り、連続的移行が存在する。しかしながら、振幅が増加するにつれて、希薄化の領域における陰圧の大きさ(magnitude)が、最終的に、陰圧のために液体に破断を引き起こすのに十分となる。これが、キャビテーションとして公知である現象をもたらす。一般に、100 kHzより下では、蒸気性キャビテーションを発生させるために必要な強度は、周波数とはほぼ独立している。それより上では、蒸気性キャビテーションのために必要とされる強度は、周波数の関数として増加する。
【0005】
入手可能な先行技術文書は、例えば以下のように、様々な目的のために様々な技術を用いて応用された音波処理を開示する。
【0006】
US-4,523,122(特許文献1)は、超音波変換器、および、超音波放射表面上に形成された音響インピーダンス整合層の一つまたは二つの層構造を開示する。
【0007】
US-4,571,087(特許文献2)は、免疫学、微生物学、および臨床化学における使用のための音波処理装置に関する。該特許は、音波処理エネルギーが、エネルギー伝達媒質を通して、定義された伝播路に沿って方向付けられる、マイクロタイタートレイのウェルにおける試料の急速、自動音波処理のための装置を提供する。
【0008】
US-5,160,870(特許文献3)はまた、それぞれが電気信号を発生させる多数の圧電性変換器を有する、微小機械化された(micro-machinated)超音波検出アレイに加えて、変換器要素の基礎となる振動板として働く混合層を開示する。
【0009】
US-5,853,994(特許文献4)は、それぞれのクラスが予め決定された狭い範囲の粒子直径を有する、精密に分類されたポリスチレン粒子の少なくとも一つのクラスを活用することによって、一つまたは複数のタイプの被分析物を決定するための、改良された粒子凝集アッセイシステムに関する。粒子と存在する被分析物との間に抱合体が産生された後に、混合物は、超音波のバースト(burst)で照射されるが、試料アッセイの部位へ超音波を伝達する方法は記述されていない。
【0010】
US-6,368,553(特許文献5)およびUS-6,086,821(特許文献6)(US-2002/0112541(特許文献7))は、超音波変換器が、超音波が伝導媒質を通して伝達される反応容器の外側に位置するか、または、反応容器の液体に沈むように位置するかいずれかである場所での、超音波力の使用を開示する。特許ファミリーは、マイクロタイターウェルまたは顕微鏡スライドの厚い壁を通して伝達されたときの超音波の極度の減衰を開示する。
【0011】
US-4,615,984(特許文献8)は、固相アッセイにおいて使用されてもよい、リガンドを分離するための、固体支持体上に支持されたリガンド‐結合剤複合体への超音波の適用を開示する。超音波溶接において一般に使用されるタイプの音響ホーン(ソノトロード)が、変換器から、固体支持体上に支持されたリガンド‐結合剤複合体を含む媒質へ超音波を伝達するために使用される。文献はまた、試験管の壁を通して失われるエネルギーを減少させるため、ならびに、それによって超音波の時間および強度を減少させるために、固体支持体へ直接的に超音波を適用することを示唆する。
【0012】
上記で議論された先行技術からの開示は、任意の音響接触媒質材料を伴わない変換器は、産生された音エネルギーを反応容器内の液体媒質中へ有効に伝達しない、ということである。通常、液体またはゲル様材料のような、独立した音響接触媒質材料が、この目的のために使用される。従って、該応用は、変換器および音波処理器プローブと、音波処理される材料との間の効率的な音響結合を要求する。ゴム様材料もまた、非破壊検査(NDT)の分野のために特に開発されてきた。R/D Tech由来のAqualene(商標)は、NDTの目的のために特に適する弾性接触媒質の一つの例である。医学的応用は、人体への変換器の音響結合のために、非常に高い水分含有量を有するゲル様化合物を主として使用する。
【0013】
変換器が容器と固定された連結を有する、公知の大きな音波処理槽がまた、存在する。接触媒質材料が使用されてもよい。この目的のためには、エポキシまたはアクリル接着剤が、しばしば使用される。WO-88/06927(特許文献9)は、静かな動作のために設定され、および、変換器の円錐形部分が槽容器に連結されるような大きな音波処理槽を開示する。
【0014】
US-2003/0066915(特許文献10)は、ドーム形の壁の凸状容器において細胞またはウイルスを保持することによってそれらを破砕するための音波処理装置を開示する。壁は、ソノトロードからの振動に応答してたわみを許容するために十分に弾性である。変換器に連結されたソノトロードは、壁に圧力を加えるのに十分なプリロード力(preload force)の下で、壁と接触する。壁の弾性定数およびプリロード力は、壁の固有周波数を変換器の動作周波数と同等に調節するように、選択される。
【0015】
US-4,198,461(特許文献11)は、音波処理装置における溶液からの沈殿によるポリマー繊維および塊体の調製を開示する。溶液は、80Hz〜2000Hzの周波数でシェーカーヘッド(shakerhead)により駆動されるシャフト上に搭載されたホルダー内の容器において保持される。
【0016】
US-6,686,195(特許文献12)およびEP-1,466,966(特許文献13)は、試料内の細胞を破砕するために生物学的試料を音波処理するための音波処理装置を開示する。試料は、円形末端を有する試験管において保持される。ソノトロードは、変換器と試験管との間に連結される。ソノトロードは、試験管がソノトロードのチップ上に配置される装置よりも広い領域の試験管を接触させることによって効率を改善するために、試験管の円形末端に適合するように形作られた凹状容器を有する。
【0017】
公知の音波処理装置のいくつかは媒質の音波処理において有効であるが、低いエネルギー損失および低い温度上昇を伴う媒質の音波処理を実施することが望ましいままである。
【0018】
【特許文献1】US-4,523,122
【特許文献2】US-4,571,087
【特許文献3】US-5,160,870
【特許文献4】US-5,853,994
【特許文献5】US-6,368,553
【特許文献6】US-6,086,821
【特許文献7】US-2002/0112541
【特許文献8】US-4,615,984
【特許文献9】WO-88/06927
【特許文献10】US-2003/0066915
【特許文献11】US-4,198,461
【特許文献12】US-6,686,195
【特許文献13】EP-1,466,966
【発明の開示】
【0019】
本発明の第一の局面によると、
媒質を保持するための容器;
音波を発生させるために動作可能な変換器;および
容器を機械的に保持するように配置された、スリットによって分離された多数の突出部分を含む、変換器に連結されたソノトロード
を含む、媒質を音波処理するための装置が提供される。
【0020】
本発明の第二の局面によると、そのような装置を用いて媒質を音波処理する方法が提供される。
【0021】
このように、媒質の音波処理は、変換器と容器との間に連結されたソノトロードを介して、変換器から容器へ音波を適用することによって提供される。ソノトロードの特別な設計は、比較的エネルギー損失および比較的低い温度上昇を伴って媒質を音波処理するのに有効であることが見出されている。これは、以下のように達成されることが理解される。ソノトロードは、容器を保持する、スリットによって分離された多数の突出部分を有する。例えば、最も単純な設計において、単一のスリットによって分離された二つの突出部分が存在する。この設計において、各突出部分は、屈曲様式において振動し、および、音叉の振動に酷似して、容器へ振動を伝達する。このように、ソノトロードの設計は、容器へ振動を伝達するのに有効である。例えば、容器およびソノトロードの組み合わせは、共鳴するようにされてもよい。結果として、振動は、容器全体を大きな屈曲の振幅で振動させ、それによって容器における媒質へ振動を伝達するのに有効である。これは、接触領域のみからエネルギー伝達領域を増加すると考えられてもよい。
【0022】
ソノトロードの設計は、媒質のキャビテーションが望ましい場所での音波処理の適用において使用されるとき、特別な利点を有する。この場合において、ソノトロードの設計は、キャビテーションレベルが容易に制御されることを可能にする。
【0023】
更に、本発明は、比較的安価に適用されることが可能であり、それによって広い応用を可能にする。応用の一つの分野は、小型のインビトロ診断用実験機器、例えば、イムノアッセイ分析器または臨床化学分析器においてである。この場合において、媒質は典型的に、被分析物を検出することが可能であるアッセイ試薬を含む。既存の分析器技術、または将来の技術と組み合わせて、例えば、試験容器内の熱発生を乱すことなく超音波の使用およびリアルタイム動態測定を可能にする、将来の低価格インビトロ診断用プラットホームのために、本発明を利用することが可能である。
【0024】
従って、本発明の音波処理装置は、試料材料を崩壊させるため(例えば、凝集物の間の結合を遮断するため、および、細胞破砕、溶血、均質化のため)、試料材料を特定の分析のために必要な他の試薬と混合するため、および、反応動態を増強するために、免疫学的または臨床化学的分析器の統合された基本的部分として利用され得る。本音波処理装置は、分析システムの統合された部分(例えば、オプティカルブロック)であるとき、正確な動態測定が為されるのを可能にする。加えて、変換器から測定容器またはキュベット内の液体への音響エネルギー輸送における効率のために、本システムは、電池式装置に適するようにする非常に低い電力消費を可能にする。
【0025】
同様に、本発明は、ポイントオブケア(POC)およびポイントオブユース(POU)タイプの応用として、インビトロ診断用試験に適する。更に、音波処理システムにおける任意の音響接触媒質の無い試験容器の挿入および除去は、容易かつ再現可能であり、ならびに、本音波処理システムのために特に設計されたメカニクスおよびエレクトロニクスに直接的に連結され得る。
【0026】
更に、本システムは、該容器内の液体の異なる体積、および、物理化学(例えば、密度、温度、浮遊物、分散物、物理的環境変化)特性に順応し得る。同時の混合、崩壊、分離および濃縮機能、ならびに、容器内でおきる反応および温度変化のリアルタイム光学的追跡調査を可能にすることによって、光学キュベットチャンバー構造の部分であり得る。リアルタイム混合および温度を制御することは、分析器の測定容器キュベット内の動態反応の非常に正確なタイミングを可能にする。この種の音波処理後および前の正確な動態タイミングは、例えば、粒子補助イムノアッセイにおけるように、市場で入手可能な分析器では以前に可能ではなかった。
【0027】
一般に、音波処理は、試料および試薬の加工処理;解離;蒸気性キャビテーション;物質移動;崩壊;混合;反応増強;試薬または被分析物の濃縮または分離;タイミングでの反応制御;温度での反応制御;動態エネルギーでの反応制御;および、音響化学に典型的な反応での反応制御を含むが、それらに限定されない任意の目的を有してもよい。音波処理の一つの特に有利な応用は、"Measurement Of Binding Rate Of A Binding Substance And An Analyte"という題名の、本出願と同時に提出された、および、英国特許出願第0509419.8号の優先権を主張する国際特許出願において開示される技術にある。本発明の更なる恩典は、結合物および凝集物の破砕、ならびに、結合反応の初速度の測定を可能にするそれらの混合を達成するために、多数のイムノアッセイ成分、および、同種のアッセイをもたらす試料の統合を可能にすることである。
【0028】
応用に依存して、媒質は任意のタイプであってよい。いくつかの例が次に示されるが、これらは限定的ではない。媒質は、例えば、流体において粒子、リガンド、または抗リガンドを含む、溶液または懸濁液であってもよい。方法は、単一または多数の被分析物、およびそれらの動態を測定するために使用されてもよい。アッセイにおいて使用される粒子は、異なるサイズおよび組成物を有してもよい(ポリマー材料、シリカ、コロイド状金および磁性物質などとして)。更に、リポソーム、細胞、微生物などもまた、使用され得る。加えて、説明される発明は、例えば、光度測定、蛍光測定、および磁気測定手段を使用するいくつかの被分析物の同時測定に適し、ここで、凝集物の各個々の群のサイズが、該凝集物の形成に関与する粒子のサイズおよび特性によって識別可能である。
【0029】
臨床的、および衛生学的試料のような非臨床的試料双方が、本発明を利用して分析され得る。全血、血清、血漿、髄液、腹水液、尿、唾液、精液のような異なる体液由来の試料、および、食物、ミルク、表面由来の無菌制御スワイプ(swipe)、または水のような衛生モニタリングのための試料が使用され得る。
【0030】
通常、被分析物は、任意の追加的な加工処理無く試料より決定されるが、必要な場合は、試料は、アッセイに先立って前処理、例えば、遠心分離、溶血、または濃縮されてもよい。
【0031】
容器は、任意のタイプ、例えば、試験管、キュベット、またはバイアルであってもよい。媒質の取扱いおよび装置の再使用に有利である容器は、除去可能であり得る。代替案は、容器がソノトロードに固定されることである。
【0032】
音波処理の目的に従って、任意の音波処理周波数、振幅、および時間が使用されてもよい。
【0033】
周波数は、通常少なくとも1kHzであるが、より典型的には、周波数が超音波処理と称されてもよい場合において少なくとも20kHzである。特定の利点は、周波数が少なくとも35kHzである場合に達成される。通常、周波数は多くても10MHz、より典型的には多くても1000kHz、または多くても100kHz、または多くても50kHzであるが、周波数はそれらに限定されない。典型的な応用のためには、共鳴周波数は、20kHz〜100kHzの範囲であろう。
【0034】
方法および装置は、例えば、媒質8に供給される音波の出力が10Wもしくはより低い、8Wもしくはより低い、または、5Wもしくはより低い、比較的低いエネルギーに特に適するが、出力はそれらに限定されず、および、10Wより大きくあり得る。これらの出力は、例えば、0.1ml〜2mlの媒質8の体積に適用する。他の体積については、出力は比例して調節されてもよい。
【0035】
媒質における振動の振幅は、吸収された音波のエネルギーに依存する。方法および装置は、多くても100μm、多くても75μmもしくはより少ない、または、多くても50μmの媒質における振動の振幅に特に適する。典型的には、媒質における振動の振幅は、少なくとも10μm、少なくとも25μm、または、少なくとも50μmであろう。
【0036】
同様に、音波は、音波処理の目的のために適切に形成されてもよい。例えば、音波は、連続的であってもよいし、または、一つまたは複数のパルスにおいて提供されてもよい。音波処理は、意図される目的を実行するのに十分長い期間適用され、これは典型的には秒のオーダーである。
【0037】
好ましくは、ソノトロードの設計および音波の周波数は、音波がソノトロードおよび容器の組み合わせを共鳴させるようにお互いに依存して選択される。そのような共鳴は、音波の媒質への効率的な適用を援助する。このように、効率的な音波処理のために、音波処理周波数が変更されるとき、ソノトロードの設計および機械的寸法が変更され得る。
【0038】
更に、接触面は乾燥し、および、ソノトロードと容器との間の音響接触媒質として作用する特別の伝導媒質が存在しないように、任意の連結層が無くてもよい。
【0039】
よりよい理解を可能にするために、本発明の態様が、添付の図面に関連した非限定的な例として、次に説明される。
【0040】
音波処理装置15の機械的構造が、図1〜3に示される。
【0041】
音波処理装置15は、音波を発生させるために動作可能な圧電性変換器1を有する。変換器1は、単一の材料部品、好ましくは、費用効率が高く、かつ、製造しやすいアルミニウムで形成されるソノトロード2に直接的に連結される。このように、変換器1によって産生される音波は、ソノトロード2を通して伝達される。
【0042】
ソノトロード2は、音叉に類似した一般配置を伴う構造を有する。特に、ソノトロード2は、変換器1に連結され、および、二つの突出部分4が、変換器2より反対側に、一般に使用時に最高位側に突き出す、基底部分3を含む。突出部分4は、スリット5によって分離される。本設計における突出部分は同一であり、および、こうして同一の振動様式を有する。突出部分4は、突出部分4の材料に伝播するような通常の動作において、変換器1により産生される音波の波長の四分の一のオーダー、またはより好ましくは同等である長さを有する。結果として、突出部分4の振動は、駆動される音波に近い周波数で共鳴する。
【0043】
ソノトロード2は、突出部分4の間にキュベット6(図2および3において点付きの輪郭で示されている)を保持する。これは、突出部分4の間に形成されるくぼみ7、すなわち、各突出部分4の接面によって形成されるくぼみ7を有する突出部分4により達成される。くぼみ7は、キュベット6と一致するように形作られる。この場合において、キュベット6は円形の断面を有し、そのために、くぼみ7もまた円形の断面を有するが、一般に、キュベット6およびくぼみ7は、各突出部分4の接面によって形成されるくぼみ7が対応して異なる形を有するように、異なる形を有し得る。このように、くぼみ7は、摩擦によりキュベット6を機械的に保持する。
【0044】
摩擦力を増加するために、くぼみ7は、キュベット6の外形寸法よりわずかに小さい寸法で設計されてもよい。この場合において、突出部分4は、キュベット6のくぼみ7への挿入の間、外側へ押し出され、その後、解放されてもよい。
【0045】
この例において、ソノトロード2は、摩擦によりキュベット6を機械的に保持するが、他のタイプの機械的連結器、例えばねじ込み継手(screw fitting)が、同等に提供され得る。
【0046】
ソノトロード2とキュベット6との間の接触は、乾燥しており、および、音響接触媒質として作用する任意の連結層または他の媒質が無い。原理的にはそのような接触媒質が使用され得るが、接触媒質を回避する能力は、装置1の特別な利点である。
【0047】
キュベット6は、ソノトロード2の基本的な、かつ交換可能な部分である。使用において、キュベット6およびソノトロード2は、組み合わせの共鳴周波数で一緒に振動する。キュベット6およびソノトロード2は、音波処理の所望の応用のために適する共鳴周波数を有するように設計される。例えば、測定がされた実際の音波処理装置15は、40kHzの共鳴周波数を有し、および、37kHzで駆動される。または、音波処理装置は、例えば60kHzのより高い共鳴周波数を有するように配置されてもよい。より高い共鳴周波数の使用は、ノイズを減少させ、かつ、より小さい機械的寸法を提供する利点を有する。
【0048】
動作において、変換器2より産生される音波は、ソノトロード2によってキュベット6へ伝達される。使用において、キュベット6は媒質8を保持し、および、音波はキュベット6を通して媒質8へ伝達される。例えば、図4は、音波処理装置15におけるソノトロード2およびキュベット6の動作のコンピューターシミュレーション(ANSYS)を示す。キュベット6が、ソノトロード2との組み合わせの基本的共鳴部分として作用することが明らかである。44kHzの超音波エネルギーは、ソノトロード2から、キュベット6を通して、かつ沿って、キュベット6内の媒質8へと移動し、それによって、媒質8の音波処理をもたらす。
【0049】
突出部分4の間にスリット5を有するソノトロード2の形は、ソノトロード2の共鳴振動を確立し、および制御することにおいて、ならびに、こうしてキュベット6へ音波を伝達することにおいて有利である。これを促進するために、くぼみ7は、キュベット6が単に突出部分4によって保持されるように、スリット5よりも浅い深さに及ぶが、これは不可欠ではなく、および、くぼみ7がスリット5よりも深い深さに及ぶ場合も同様の効果が達成され得る。。
【0050】
スリット5はまた、キュベット6内で反応を光学的にモニターすることが望ましい、多くの適用において有用である光の通過を可能にする利点を有する。
【0051】
ソノトロード2の外形はまた、他の有用な音響様式を可能にする。
【0052】
ソノトロード2の設計は、二つの突出部分4を使用するが、一般に、ソノトロードは、くぼみ7の周りに配置された任意の複数の突出部分4を使用し得、および、動作の原理は同一であろう。
【0053】
音波処理装置15は、以下のように搭載配置を有する。変換器1は、バッキングマス9によって支持される。バッキングマス9は、変換器1によって産生される音波へ反応を提供し、および、アルミニウムのような材料のブロックとして単純に形成されるが、一般に、より複雑な構造を有し得る。ソノトロード2とバッキングマス9との間のボルト11は、音波の有効な伝達のために、ソノトロード2に対する変換器1の圧縮を提供する。
【0054】
バッキングマス9は、設置される表面からの変換器1の隔離のために、ダンパー10によって支持される。ダンパー10は、ゴムのような材料のブロックとして単純に形成されてもよいが、やはり、より複雑な構造を有し得る。
【0055】
キュベット6をソノトロード2上に機械的に保持するために、異なる配置を使用する音波処理装置15についてのいくつかの代替構造が次に説明される。
【0056】
音波処理装置15についての第一代替構造が、図3と同様の断面図である図5に示される。この代替構造において、音波処理装置15は、キュベット6をソノトロード2に接して搭載する搭載配置40を追加的に提供することによって改変される。特に、搭載配置40は、移動可能なプレート42、ならびに、プレート42をハウジング41から離れて偏向させるスプリング43を収納する、ハウジング41を含む。搭載配置40は、キュベット6の上端とかみ合うプレート42、および、音波処理装置15の残りに相関して固定されたハウジングで、この例においては、ハウジング41からダンパー10、または音波処理装置15の別の部分まで及ぶ多数のアーム44(そのうち一つが示される)によって装備される。アーム44の代わりに、搭載配置40は、任意の他の様式において、例えば、音波処理装置15および搭載配置40を、閉じたときにそれらを一緒に保持する箱に配置することによって、音波処理装置15に相関して保持され得る。
【0057】
このように、バイアススプリング43の作用は、キュベット6をソノトロード2に接して搭載する。搭載配置40は、それらの任意の振動を最小化するように、および、特に、キュベット6と共鳴しないように配置される。
【0058】
搭載装置40の利点は、ソノトロード2からキュベット6への振動の伝達を改善することである。また、例えば、くぼみ7によりゆるい適合を提供することを要求し、ソノトロード2とキュベット6との間に直接的に適用される必要がある結合力を減少させる。
【0059】
バイアススプリング43の搭載力は、振動の適当な伝導を可能にする、ソノトロード2とキュベット6との間の結合の十分な程度を提供するように選択される。力は、典型的には1N〜40Nの範囲、例えば約20Nである。
【0060】
搭載配置40は、キュベット6の最小屈曲振動の点で、すなわち、振動の節点で、搭載力をキュベット6へ伝達するように有利に配置される。これは、キュベット6の長さ、および、キュベット6およびソノトロード2の組み合わせの共鳴周波数の相対値の設計によって達成されてもよい。キュベット6に沿って多数の最小屈曲振動の点が存在してもよく、または、搭載はそのような点の任意またはすべてで適用され得る。キュベット6の最小屈曲振動の点で搭載力をキュベット6へ伝達することは、キュベット6の振動に、最小の減衰効果を提供する利点を有する。
【0061】
搭載配置40は、キュベット6がソノトロード2に接していかに搭載され得るかの一つの例である。そのような搭載は、他の様式において達成されてもよい。また、キュベット6は、搭載が適用され得る突出部で提供されてもよい。搭載は、必ずしもキュベット6の末端表面に適用されず、または、キュベット6の側面表面に適用され得る。搭載は、1箇所より多い位置において適用されてもよい。搭載は、スプリング以外の技術によって適用され得る。いくつかの代替案の一つは、キュベット6をソノトロード2に接して搭載する、堅く適合するふたを有する箱において、音波処理装置15を配置することである。
【0062】
音波処理装置15についての第二代替構造が、図3および5と同様の断面図である図6に示される。この代替構造において、音波処理装置15は、第一代替構造と比較して以下のように改変される。ソノトロード2の突出部分4は、くぼみ7無しで形成される。代わりに、突出部分4は、その外端45で容器を機械的に保持するように配置される。外端45は、キュベット6の下部表面と一致するように形作られ、および、キュベット6は、搭載配置により外端45に接して搭載される。外端45は、キュベット6を突出部分4上の中心におくのに役立つような凹状形を有するが、または、外端45は、平面であり得る。
【0063】
更なる代替案として、図6の第二代替構造は、搭載配置を割愛し、代わりに、キュベット6を機械的結合により突出部分4の外端上に機械的に保持することによって、改変され得る。
【0064】
変換器1および音波処理装置15の電気素子の構造が、図7に示される。
【0065】
変換器1は、電極13と交互にある圧電性材料の二つの層12のスタックからなる通常のバイモルフベンダー構造を有する。一般に、変換器は、所望の音波を発生させることが可能である任意の構造を有してもよいが、典型的な例は、会社Ferropermによって製造された製品であろう。典型的には、圧電性材料の層12は、円盤形であろうし、ならびに、変換器は、直径30mmおよび厚さ2mmを有してもよい。圧電性材料は、PZTのようなセラミックであってもよく、例えば、PZT 26は、2.70E+07 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZを有する。
【0066】
駆動回路14は、変換器1を活性化するための駆動信号を供給する。駆動信号は、電極13に適用される。駆動信号の極性、および、圧電性材料の層12の極性は、圧電性材料の層12が、他方が収縮する間に一方が伸長するように、長さにおいて異なる変化をうけるように、選択される。この長さにおける異なる変化は、音波を発生させる変換器の湾曲をもたらす。変換器の他の形態が、同様の効果のために使用され得る。
【0067】
キュベット6およびソノトロード2の材料、ソノトロード2の全般的な設計は、変換器1から媒質8への音波の伝達の考慮に基づいて選択される。変換器1からキュベット6への効率的な狭帯域伝達を達成するために、ソノトロード2の音響インピーダンスZ2は、変換器1の音響インピーダンスZ1およびキュベット6の音響インピーダンスZ3の「幾何平均」(Z2=√(Z1Z3))に等しい、またはそれに近い(例えば幾何平均の50%以内)ことが望ましい。材料の一つの有利な組み合わせは、変換器1が、2.70E+07 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZ1を有するPZT 26で作製され、ソノトロード2が、1.70E+07 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZ2を有するアルミニウムで作製され、および、キュベット6が、1.65E+06 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZ3を有するTicona Topas 8007(登録商標)で作製されるものである。ちなみに、水は1.50E+06 kg/(m2/s)のZ値を有し、および、空気は4.10E+02 kg/(m2/s)のZ値を有する。
【0068】
もう一つの考慮は、ソノトロード2と媒質8との間の音響整合を提供する音響インピーダンスを有する材料からキュベット6を形成することである。上記で言及された材料の組み合わせはこの要求に合い、特に、最適整合の少なくとも0.4倍の整合を提供し、これは電池式装置に十分な整合である。このように、狭帯域において、キュベット6への効率的な音伝達が達成された。キュベット6について他の材料が考慮されたが、Ticona Topas 8007(登録商標)が、考慮される材料の最適音響インピーダンスおよび機械的特性を有した。従って、変換器1から媒質8への音波の極めて良好な伝達が存在する。
【0069】
更に、Ticona Topas 8007(登録商標)は、内部摩擦のために低いエネルギー損失を提供する利点を有する。キュベット6がソノトロード2との組み合わせで共鳴するため、これが、音波処理装置15の動作の効率を改善する。
【0070】
同様の利点は、Ticona Topas 8007(登録商標)が例である、他のアモルファス構造の熱可塑性オレフィンポリマーで達成されてもよい。例えば、キュベット6の材料は、環状オレフィンコポリマー(COC)であってもよい。そのようなポリマーは、エチレンおよび、典型的にはジシクロペンタジエン由来である、環状構造オレフィンのコポリマーである。組み入れられる環状構造は、そのサイズが、分子が結晶化するほど整然となることを妨げるが、COCに剛性を与える。これらのポリマーの性質は、完全にアモルファスであり、部分的に低い収縮および反りをもたらす。これらの特徴が、COC材料を、超音波使用、例えば、インビトロ診断用機器に使用される容器またはキュベットに特に適用可能にする。
【0071】
しかしながら、一般に、本発明において使用される材料として反応バイアルへの音エネルギーの伝達にとって適当、および効率的でない可能性があるが、キュベット6は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンのような他のプラスチック材料から作製され得、および、ポリスチレンもまた使用されてもよい。同様に、任意の他の材料、例えばプラスチック、ガラス、石英、ケイ素、および金属が、十分に良好な整合インピーダンスおよび共鳴器特性を提供する限り適する。
【0072】
駆動回路14が図8に示され、かつ、次に説明される。
【0073】
駆動回路14は、適度に単純であり、および、キュベット6における媒質8の体積にかかわらず、適当な動作周波数を見出す。駆動回路14は、電池20によって電力を供給され、および、3個の回路ブロック、すなわち以下からなる:
混合時間制御、振幅制御、位相調節回路、および検出回路を含み、ならびに、正確な形態で駆動信号を発生させる、制御ブロック21;
制御ブロック21からの駆動信号を増幅し、および、BNC連結器24を介して変換器へ供給する、増幅ブロック22;ならびに、
電池からの電圧のDC/DC変換を行い、ならびに、制御ブロック21および増幅ブロック22へ電力を供給する、DC電力ブロック。
【0074】
制御ブロック21は、以下のように、追跡電子機器、ならびに、音波処理時間および振幅制御機器を含む。
【0075】
検出増幅器25は、変換器1を通して流れる電流を測定する。
【0076】
振幅制御ブロック26は、検出増幅器25の出力に基づいて、音波処理出力に関連する振動振幅を制御する。振幅制御ブロック26は、振幅電位差計27によってセットされてもよい。
【0077】
タイミング回路28は、振幅制御ブロック26の出力を受領し、および、フィードバックループを閉鎖して、自由振動を可能にする。混合時間は、フィードバック回路を可能にするFETスイッチによって制御される。タイミング回路28のループ閉鎖時間は、タイマー電位差計29、または、混合時間調節連結器30からの入力によってセットされる。
【0078】
タイミング回路28の出力は、正確な利得をセットし、および、フィードバック信号を緩衝する増幅器31に供給される。
【0079】
増幅器31の出力は、フィードバック信号のために正確な位相をセットする位相調節回路32に供給される。
【0080】
変換器1の動作、および音波処理装置15の停止は、自由振動に基づく。自由振動において、バッキングマス9、変換器1、ソノトロード2、およびキュベット6の組み合わせが、システムの振動周波数を決定する「タンク回路」として使用される。
【0081】
増幅器ブロック22は、電力増幅器およびフェライトコア変圧器を用いて、高電圧を発生させる。電力増幅器からの最大出力電圧は、+10V〜-10Vであり、および、変圧器からの最大出力電圧は、400 Vpp(ピークトゥピーク)である。高電圧は変換器1へ駆動され、および、電流が測定される。検出増幅器25の出力電圧は、「タンク回路」を通して流れる電流に比例する。この電圧が、上記で説明されたような増幅器ブロック22の電力増幅器にフィードバックされる。フィードバック電圧および駆動電圧が同一の位相にあり、および、システムの開ループ利得が≧1である場合は、これらの境界条件が満たされる周波数において、回路が振動し始める。TP1〜TP2(タイミング回路28の入力および出力)で測定された開ループ応答が、図10に図示される。応答は、TP1へランダムノイズを伝達し、かつ、TP2からの応答を測定することによって、測定される。利得および位相は、自由振動境界条件を満たす。制御電子機器において、位相応答に適当な種類の形を達成するため、および帯域幅を限定するために、LCバンドパスフィルターが使用される。LCフィルターの中心周波数は、音波処理装置15の共鳴周波数とほぼ同一でなければならない。回路の電力は、例えば、調節可能なダイオードリミッターを用いて、検出増幅器25で検出振幅を限定することによって調節され得る。
【0082】
自由振動の代替案として、強制振動が使用され得る。この代替案においては、図9に図式的に示されるように、位相ロックループ(PLL)が、自動的に適当な動作周波数を見出すために使用される。特に、共鳴において、変換器1を超える動作AC電流の位相が変化する。PLLにおいて、動作電流の位相は、位相検出器33によって測定される。位相に関連する電圧は、増幅器35を介して変換器1へ供給される振動駆動信号を産生する、電圧制御発振器(VCO)34に方向付けられる。音波処理装置15の共鳴周波数が変化する場合、位相検出器33の出力電圧もまた変化する。この電圧が、位相検出器34出力電圧が予め決定された値に留まる様式において、VCO34の振動周波数を制御する。この様式において、周波数は新しい共鳴を追跡する。音波処理装置15の共鳴周波数が変化する場合、位相検出器33の出力電圧もまた変化する。
【0083】
任意の特徴は、アッセイのために選択されたキュベット6の材料にかかわらず、ソノトロード2からキュベット6へのエネルギーの効率的な移動を可能にする最適の振幅および位相を見出すための、手動的または自動的いずれかでの、音波処理装置15のチューニングである。
【0084】
音波処理器の追加的な選択肢は、手動的または自動的いずれかで、高エネルギー音波処理状態から低エネルギー音波処理状態へ転換する可能性である。異なる幾何学的要求を考慮に入れて、定常波タイプの音波処理を開発することもまた可能である。
【0085】
音波処理装置15は、約40 kHzの周波数での優れた超音波処理について、約20〜25 kHzの周波数を通常利用する使用可能な方法よりも、非常に低いエネルギー、熱、および可聴ノイズ発生を可能にする。これを説明するために、図11および12は、変換器1での、時間に伴う、電流および電圧それぞれにおける変化を示す。図11は、最低の位置、すなわち最大電力の〜70%における電力制御で、変換器1を通した電流の量が、100〜300 mAppであることを示す。図12は、音波処理過程の間の圧電要素を超える電圧の量が、120〜160 Vppであったことを示す。最低電力での混合器部分の瞬間電力消費は、このように約14W(平均7W)である。
【0086】
媒質8に供給される音波の出力は、1.0mlの媒質8で約4Wであると概算される。駆動回路14による電力消費は、約25Wであると概算される。これらの概算に基づいて、効率は約16%である。
【0087】
音波処理装置15は、"Measurement Of Binding Rate Of A Binding Substance And An Analyte"という題名の、本出願と同時に提出された、および、英国特許出願第0509419.8号の優先権を主張する国際特許出願において開示される技術の一部として、媒質を音波処理するために開発されてきた。しかしながら、音波処理装置15は、上記で概要が示されたように、幅広い範囲の他の応用において、媒質8を音波処理するために同等に適用されてもよい。各場合において、音波処理される媒質8は、キュベット6において配置され、および、音波処理装置15は、上記で説明されたように動作される。音波処理装置15は、上記でまた概要が示されたように、幅広い範囲の周波数で動作してもよい。動作周波数の変化は、例えば、ソノトロード2の突出部分4の長さを変化させるため、または、使用される材料を変化させるために、音波処理装置15の設計における変化を必要としてもよいが、基本的な動作は同一のままである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】音波処理装置の上面図である。
【図2】図1における線II‐IIに沿った、音波処理装置の断面図である。
【図3】図1における線III‐IIIに沿った、音波処理装置の断面図である。
【図4】音波処理装置における共鳴現象のコンピューターシミュレーション(ANSYS)を示す。
【図5】図1における線II‐IIに沿った、第一代替構造を有する音波処置装置の断面図である。
【図6】図1における線II‐IIに沿った、第二代替構造を有する音波処置装置の断面図である。
【図7】音波処理装置の変換器および駆動回路の概略図である。
【図8】駆動回路の回路図である。
【図9】駆動回路における位相ロックループ(PLL)実現の概略図である。
【図10】音波処理装置のループ応答のグラフである。
【図11】変換器を通した電流のグラフである。
【図12】変換器を越えた電圧のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、小型のインビトロ診断用実験機器、例えば、イムノアッセイ分析器または臨床化学分析器における、媒質の音波処置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の以下において、「音」という用語は、可聴音および超可聴音双方を指すために使用されるであろう。音波処理は、音波の応用である。反応を行う目的のために媒質を音波処理することが公知である。通常、音波処理は、凝集物を解離させるために使用される。音波処理が使用される特に関心対象の分野は、試料中に存在する可能性がある被分析物を検出することが可能である試薬に、試料が添加されるアッセイにおいてである。アッセイの一般的なタイプは、イムノアッセイである。イムノアッセイにおける音波処理の使用の例は、混合の目的のため、または、例えば粒子補助アッセイにおけるように、凝集物の産生を増強するためである。最も実用的な応用において、超音波周波数(少なくとも20kHz)が使用され、その場合は超音波処理という用語が使用されてもよい。
【0003】
最もよく使用される音波処理器は、音波処理される媒質中に適用されるマイクロチップ音波処理器プローブである。または、大きな音波処理槽もまた、利用可能である。音波処理は通常、単に、ロッド(rod)が液体に囲まれているときに有効であると考えられている。これは、任意の音響接触媒質(couplant)材料が無い、変換器と反応容器との間の固体接触が、反応容器内の液体媒質へ音波を有効に伝達しないと一般に考えられていることに基づく。
【0004】
音波は基本的に機械的振動であるため、媒質は、波が伝わり、または伝播することが必要とされる。音源の表面上の振動が、媒質中へ音響エネルギーを伝達する。媒質を音響的に特徴付けるために、最も重要なパラメーターは音響インピーダンスZである。無損失の媒質については、Z=ρcであり、ここで、ρは媒質の密度、および、cは媒質における音速である。入射音が反射面に垂直であるとき、すなわち、入射の角度が0であるとき、通過出力(passed power)P2および入射出力P1の分数は、次の公式によって与えられる:
P2/P1=(4Z1Z2)/(Z1+Z2)2
水および大抵の液体のような非弾性の媒質においては、音の振幅が比較的低い限り、連続的移行が存在する。しかしながら、振幅が増加するにつれて、希薄化の領域における陰圧の大きさ(magnitude)が、最終的に、陰圧のために液体に破断を引き起こすのに十分となる。これが、キャビテーションとして公知である現象をもたらす。一般に、100 kHzより下では、蒸気性キャビテーションを発生させるために必要な強度は、周波数とはほぼ独立している。それより上では、蒸気性キャビテーションのために必要とされる強度は、周波数の関数として増加する。
【0005】
入手可能な先行技術文書は、例えば以下のように、様々な目的のために様々な技術を用いて応用された音波処理を開示する。
【0006】
US-4,523,122(特許文献1)は、超音波変換器、および、超音波放射表面上に形成された音響インピーダンス整合層の一つまたは二つの層構造を開示する。
【0007】
US-4,571,087(特許文献2)は、免疫学、微生物学、および臨床化学における使用のための音波処理装置に関する。該特許は、音波処理エネルギーが、エネルギー伝達媒質を通して、定義された伝播路に沿って方向付けられる、マイクロタイタートレイのウェルにおける試料の急速、自動音波処理のための装置を提供する。
【0008】
US-5,160,870(特許文献3)はまた、それぞれが電気信号を発生させる多数の圧電性変換器を有する、微小機械化された(micro-machinated)超音波検出アレイに加えて、変換器要素の基礎となる振動板として働く混合層を開示する。
【0009】
US-5,853,994(特許文献4)は、それぞれのクラスが予め決定された狭い範囲の粒子直径を有する、精密に分類されたポリスチレン粒子の少なくとも一つのクラスを活用することによって、一つまたは複数のタイプの被分析物を決定するための、改良された粒子凝集アッセイシステムに関する。粒子と存在する被分析物との間に抱合体が産生された後に、混合物は、超音波のバースト(burst)で照射されるが、試料アッセイの部位へ超音波を伝達する方法は記述されていない。
【0010】
US-6,368,553(特許文献5)およびUS-6,086,821(特許文献6)(US-2002/0112541(特許文献7))は、超音波変換器が、超音波が伝導媒質を通して伝達される反応容器の外側に位置するか、または、反応容器の液体に沈むように位置するかいずれかである場所での、超音波力の使用を開示する。特許ファミリーは、マイクロタイターウェルまたは顕微鏡スライドの厚い壁を通して伝達されたときの超音波の極度の減衰を開示する。
【0011】
US-4,615,984(特許文献8)は、固相アッセイにおいて使用されてもよい、リガンドを分離するための、固体支持体上に支持されたリガンド‐結合剤複合体への超音波の適用を開示する。超音波溶接において一般に使用されるタイプの音響ホーン(ソノトロード)が、変換器から、固体支持体上に支持されたリガンド‐結合剤複合体を含む媒質へ超音波を伝達するために使用される。文献はまた、試験管の壁を通して失われるエネルギーを減少させるため、ならびに、それによって超音波の時間および強度を減少させるために、固体支持体へ直接的に超音波を適用することを示唆する。
【0012】
上記で議論された先行技術からの開示は、任意の音響接触媒質材料を伴わない変換器は、産生された音エネルギーを反応容器内の液体媒質中へ有効に伝達しない、ということである。通常、液体またはゲル様材料のような、独立した音響接触媒質材料が、この目的のために使用される。従って、該応用は、変換器および音波処理器プローブと、音波処理される材料との間の効率的な音響結合を要求する。ゴム様材料もまた、非破壊検査(NDT)の分野のために特に開発されてきた。R/D Tech由来のAqualene(商標)は、NDTの目的のために特に適する弾性接触媒質の一つの例である。医学的応用は、人体への変換器の音響結合のために、非常に高い水分含有量を有するゲル様化合物を主として使用する。
【0013】
変換器が容器と固定された連結を有する、公知の大きな音波処理槽がまた、存在する。接触媒質材料が使用されてもよい。この目的のためには、エポキシまたはアクリル接着剤が、しばしば使用される。WO-88/06927(特許文献9)は、静かな動作のために設定され、および、変換器の円錐形部分が槽容器に連結されるような大きな音波処理槽を開示する。
【0014】
US-2003/0066915(特許文献10)は、ドーム形の壁の凸状容器において細胞またはウイルスを保持することによってそれらを破砕するための音波処理装置を開示する。壁は、ソノトロードからの振動に応答してたわみを許容するために十分に弾性である。変換器に連結されたソノトロードは、壁に圧力を加えるのに十分なプリロード力(preload force)の下で、壁と接触する。壁の弾性定数およびプリロード力は、壁の固有周波数を変換器の動作周波数と同等に調節するように、選択される。
【0015】
US-4,198,461(特許文献11)は、音波処理装置における溶液からの沈殿によるポリマー繊維および塊体の調製を開示する。溶液は、80Hz〜2000Hzの周波数でシェーカーヘッド(shakerhead)により駆動されるシャフト上に搭載されたホルダー内の容器において保持される。
【0016】
US-6,686,195(特許文献12)およびEP-1,466,966(特許文献13)は、試料内の細胞を破砕するために生物学的試料を音波処理するための音波処理装置を開示する。試料は、円形末端を有する試験管において保持される。ソノトロードは、変換器と試験管との間に連結される。ソノトロードは、試験管がソノトロードのチップ上に配置される装置よりも広い領域の試験管を接触させることによって効率を改善するために、試験管の円形末端に適合するように形作られた凹状容器を有する。
【0017】
公知の音波処理装置のいくつかは媒質の音波処理において有効であるが、低いエネルギー損失および低い温度上昇を伴う媒質の音波処理を実施することが望ましいままである。
【0018】
【特許文献1】US-4,523,122
【特許文献2】US-4,571,087
【特許文献3】US-5,160,870
【特許文献4】US-5,853,994
【特許文献5】US-6,368,553
【特許文献6】US-6,086,821
【特許文献7】US-2002/0112541
【特許文献8】US-4,615,984
【特許文献9】WO-88/06927
【特許文献10】US-2003/0066915
【特許文献11】US-4,198,461
【特許文献12】US-6,686,195
【特許文献13】EP-1,466,966
【発明の開示】
【0019】
本発明の第一の局面によると、
媒質を保持するための容器;
音波を発生させるために動作可能な変換器;および
容器を機械的に保持するように配置された、スリットによって分離された多数の突出部分を含む、変換器に連結されたソノトロード
を含む、媒質を音波処理するための装置が提供される。
【0020】
本発明の第二の局面によると、そのような装置を用いて媒質を音波処理する方法が提供される。
【0021】
このように、媒質の音波処理は、変換器と容器との間に連結されたソノトロードを介して、変換器から容器へ音波を適用することによって提供される。ソノトロードの特別な設計は、比較的エネルギー損失および比較的低い温度上昇を伴って媒質を音波処理するのに有効であることが見出されている。これは、以下のように達成されることが理解される。ソノトロードは、容器を保持する、スリットによって分離された多数の突出部分を有する。例えば、最も単純な設計において、単一のスリットによって分離された二つの突出部分が存在する。この設計において、各突出部分は、屈曲様式において振動し、および、音叉の振動に酷似して、容器へ振動を伝達する。このように、ソノトロードの設計は、容器へ振動を伝達するのに有効である。例えば、容器およびソノトロードの組み合わせは、共鳴するようにされてもよい。結果として、振動は、容器全体を大きな屈曲の振幅で振動させ、それによって容器における媒質へ振動を伝達するのに有効である。これは、接触領域のみからエネルギー伝達領域を増加すると考えられてもよい。
【0022】
ソノトロードの設計は、媒質のキャビテーションが望ましい場所での音波処理の適用において使用されるとき、特別な利点を有する。この場合において、ソノトロードの設計は、キャビテーションレベルが容易に制御されることを可能にする。
【0023】
更に、本発明は、比較的安価に適用されることが可能であり、それによって広い応用を可能にする。応用の一つの分野は、小型のインビトロ診断用実験機器、例えば、イムノアッセイ分析器または臨床化学分析器においてである。この場合において、媒質は典型的に、被分析物を検出することが可能であるアッセイ試薬を含む。既存の分析器技術、または将来の技術と組み合わせて、例えば、試験容器内の熱発生を乱すことなく超音波の使用およびリアルタイム動態測定を可能にする、将来の低価格インビトロ診断用プラットホームのために、本発明を利用することが可能である。
【0024】
従って、本発明の音波処理装置は、試料材料を崩壊させるため(例えば、凝集物の間の結合を遮断するため、および、細胞破砕、溶血、均質化のため)、試料材料を特定の分析のために必要な他の試薬と混合するため、および、反応動態を増強するために、免疫学的または臨床化学的分析器の統合された基本的部分として利用され得る。本音波処理装置は、分析システムの統合された部分(例えば、オプティカルブロック)であるとき、正確な動態測定が為されるのを可能にする。加えて、変換器から測定容器またはキュベット内の液体への音響エネルギー輸送における効率のために、本システムは、電池式装置に適するようにする非常に低い電力消費を可能にする。
【0025】
同様に、本発明は、ポイントオブケア(POC)およびポイントオブユース(POU)タイプの応用として、インビトロ診断用試験に適する。更に、音波処理システムにおける任意の音響接触媒質の無い試験容器の挿入および除去は、容易かつ再現可能であり、ならびに、本音波処理システムのために特に設計されたメカニクスおよびエレクトロニクスに直接的に連結され得る。
【0026】
更に、本システムは、該容器内の液体の異なる体積、および、物理化学(例えば、密度、温度、浮遊物、分散物、物理的環境変化)特性に順応し得る。同時の混合、崩壊、分離および濃縮機能、ならびに、容器内でおきる反応および温度変化のリアルタイム光学的追跡調査を可能にすることによって、光学キュベットチャンバー構造の部分であり得る。リアルタイム混合および温度を制御することは、分析器の測定容器キュベット内の動態反応の非常に正確なタイミングを可能にする。この種の音波処理後および前の正確な動態タイミングは、例えば、粒子補助イムノアッセイにおけるように、市場で入手可能な分析器では以前に可能ではなかった。
【0027】
一般に、音波処理は、試料および試薬の加工処理;解離;蒸気性キャビテーション;物質移動;崩壊;混合;反応増強;試薬または被分析物の濃縮または分離;タイミングでの反応制御;温度での反応制御;動態エネルギーでの反応制御;および、音響化学に典型的な反応での反応制御を含むが、それらに限定されない任意の目的を有してもよい。音波処理の一つの特に有利な応用は、"Measurement Of Binding Rate Of A Binding Substance And An Analyte"という題名の、本出願と同時に提出された、および、英国特許出願第0509419.8号の優先権を主張する国際特許出願において開示される技術にある。本発明の更なる恩典は、結合物および凝集物の破砕、ならびに、結合反応の初速度の測定を可能にするそれらの混合を達成するために、多数のイムノアッセイ成分、および、同種のアッセイをもたらす試料の統合を可能にすることである。
【0028】
応用に依存して、媒質は任意のタイプであってよい。いくつかの例が次に示されるが、これらは限定的ではない。媒質は、例えば、流体において粒子、リガンド、または抗リガンドを含む、溶液または懸濁液であってもよい。方法は、単一または多数の被分析物、およびそれらの動態を測定するために使用されてもよい。アッセイにおいて使用される粒子は、異なるサイズおよび組成物を有してもよい(ポリマー材料、シリカ、コロイド状金および磁性物質などとして)。更に、リポソーム、細胞、微生物などもまた、使用され得る。加えて、説明される発明は、例えば、光度測定、蛍光測定、および磁気測定手段を使用するいくつかの被分析物の同時測定に適し、ここで、凝集物の各個々の群のサイズが、該凝集物の形成に関与する粒子のサイズおよび特性によって識別可能である。
【0029】
臨床的、および衛生学的試料のような非臨床的試料双方が、本発明を利用して分析され得る。全血、血清、血漿、髄液、腹水液、尿、唾液、精液のような異なる体液由来の試料、および、食物、ミルク、表面由来の無菌制御スワイプ(swipe)、または水のような衛生モニタリングのための試料が使用され得る。
【0030】
通常、被分析物は、任意の追加的な加工処理無く試料より決定されるが、必要な場合は、試料は、アッセイに先立って前処理、例えば、遠心分離、溶血、または濃縮されてもよい。
【0031】
容器は、任意のタイプ、例えば、試験管、キュベット、またはバイアルであってもよい。媒質の取扱いおよび装置の再使用に有利である容器は、除去可能であり得る。代替案は、容器がソノトロードに固定されることである。
【0032】
音波処理の目的に従って、任意の音波処理周波数、振幅、および時間が使用されてもよい。
【0033】
周波数は、通常少なくとも1kHzであるが、より典型的には、周波数が超音波処理と称されてもよい場合において少なくとも20kHzである。特定の利点は、周波数が少なくとも35kHzである場合に達成される。通常、周波数は多くても10MHz、より典型的には多くても1000kHz、または多くても100kHz、または多くても50kHzであるが、周波数はそれらに限定されない。典型的な応用のためには、共鳴周波数は、20kHz〜100kHzの範囲であろう。
【0034】
方法および装置は、例えば、媒質8に供給される音波の出力が10Wもしくはより低い、8Wもしくはより低い、または、5Wもしくはより低い、比較的低いエネルギーに特に適するが、出力はそれらに限定されず、および、10Wより大きくあり得る。これらの出力は、例えば、0.1ml〜2mlの媒質8の体積に適用する。他の体積については、出力は比例して調節されてもよい。
【0035】
媒質における振動の振幅は、吸収された音波のエネルギーに依存する。方法および装置は、多くても100μm、多くても75μmもしくはより少ない、または、多くても50μmの媒質における振動の振幅に特に適する。典型的には、媒質における振動の振幅は、少なくとも10μm、少なくとも25μm、または、少なくとも50μmであろう。
【0036】
同様に、音波は、音波処理の目的のために適切に形成されてもよい。例えば、音波は、連続的であってもよいし、または、一つまたは複数のパルスにおいて提供されてもよい。音波処理は、意図される目的を実行するのに十分長い期間適用され、これは典型的には秒のオーダーである。
【0037】
好ましくは、ソノトロードの設計および音波の周波数は、音波がソノトロードおよび容器の組み合わせを共鳴させるようにお互いに依存して選択される。そのような共鳴は、音波の媒質への効率的な適用を援助する。このように、効率的な音波処理のために、音波処理周波数が変更されるとき、ソノトロードの設計および機械的寸法が変更され得る。
【0038】
更に、接触面は乾燥し、および、ソノトロードと容器との間の音響接触媒質として作用する特別の伝導媒質が存在しないように、任意の連結層が無くてもよい。
【0039】
よりよい理解を可能にするために、本発明の態様が、添付の図面に関連した非限定的な例として、次に説明される。
【0040】
音波処理装置15の機械的構造が、図1〜3に示される。
【0041】
音波処理装置15は、音波を発生させるために動作可能な圧電性変換器1を有する。変換器1は、単一の材料部品、好ましくは、費用効率が高く、かつ、製造しやすいアルミニウムで形成されるソノトロード2に直接的に連結される。このように、変換器1によって産生される音波は、ソノトロード2を通して伝達される。
【0042】
ソノトロード2は、音叉に類似した一般配置を伴う構造を有する。特に、ソノトロード2は、変換器1に連結され、および、二つの突出部分4が、変換器2より反対側に、一般に使用時に最高位側に突き出す、基底部分3を含む。突出部分4は、スリット5によって分離される。本設計における突出部分は同一であり、および、こうして同一の振動様式を有する。突出部分4は、突出部分4の材料に伝播するような通常の動作において、変換器1により産生される音波の波長の四分の一のオーダー、またはより好ましくは同等である長さを有する。結果として、突出部分4の振動は、駆動される音波に近い周波数で共鳴する。
【0043】
ソノトロード2は、突出部分4の間にキュベット6(図2および3において点付きの輪郭で示されている)を保持する。これは、突出部分4の間に形成されるくぼみ7、すなわち、各突出部分4の接面によって形成されるくぼみ7を有する突出部分4により達成される。くぼみ7は、キュベット6と一致するように形作られる。この場合において、キュベット6は円形の断面を有し、そのために、くぼみ7もまた円形の断面を有するが、一般に、キュベット6およびくぼみ7は、各突出部分4の接面によって形成されるくぼみ7が対応して異なる形を有するように、異なる形を有し得る。このように、くぼみ7は、摩擦によりキュベット6を機械的に保持する。
【0044】
摩擦力を増加するために、くぼみ7は、キュベット6の外形寸法よりわずかに小さい寸法で設計されてもよい。この場合において、突出部分4は、キュベット6のくぼみ7への挿入の間、外側へ押し出され、その後、解放されてもよい。
【0045】
この例において、ソノトロード2は、摩擦によりキュベット6を機械的に保持するが、他のタイプの機械的連結器、例えばねじ込み継手(screw fitting)が、同等に提供され得る。
【0046】
ソノトロード2とキュベット6との間の接触は、乾燥しており、および、音響接触媒質として作用する任意の連結層または他の媒質が無い。原理的にはそのような接触媒質が使用され得るが、接触媒質を回避する能力は、装置1の特別な利点である。
【0047】
キュベット6は、ソノトロード2の基本的な、かつ交換可能な部分である。使用において、キュベット6およびソノトロード2は、組み合わせの共鳴周波数で一緒に振動する。キュベット6およびソノトロード2は、音波処理の所望の応用のために適する共鳴周波数を有するように設計される。例えば、測定がされた実際の音波処理装置15は、40kHzの共鳴周波数を有し、および、37kHzで駆動される。または、音波処理装置は、例えば60kHzのより高い共鳴周波数を有するように配置されてもよい。より高い共鳴周波数の使用は、ノイズを減少させ、かつ、より小さい機械的寸法を提供する利点を有する。
【0048】
動作において、変換器2より産生される音波は、ソノトロード2によってキュベット6へ伝達される。使用において、キュベット6は媒質8を保持し、および、音波はキュベット6を通して媒質8へ伝達される。例えば、図4は、音波処理装置15におけるソノトロード2およびキュベット6の動作のコンピューターシミュレーション(ANSYS)を示す。キュベット6が、ソノトロード2との組み合わせの基本的共鳴部分として作用することが明らかである。44kHzの超音波エネルギーは、ソノトロード2から、キュベット6を通して、かつ沿って、キュベット6内の媒質8へと移動し、それによって、媒質8の音波処理をもたらす。
【0049】
突出部分4の間にスリット5を有するソノトロード2の形は、ソノトロード2の共鳴振動を確立し、および制御することにおいて、ならびに、こうしてキュベット6へ音波を伝達することにおいて有利である。これを促進するために、くぼみ7は、キュベット6が単に突出部分4によって保持されるように、スリット5よりも浅い深さに及ぶが、これは不可欠ではなく、および、くぼみ7がスリット5よりも深い深さに及ぶ場合も同様の効果が達成され得る。。
【0050】
スリット5はまた、キュベット6内で反応を光学的にモニターすることが望ましい、多くの適用において有用である光の通過を可能にする利点を有する。
【0051】
ソノトロード2の外形はまた、他の有用な音響様式を可能にする。
【0052】
ソノトロード2の設計は、二つの突出部分4を使用するが、一般に、ソノトロードは、くぼみ7の周りに配置された任意の複数の突出部分4を使用し得、および、動作の原理は同一であろう。
【0053】
音波処理装置15は、以下のように搭載配置を有する。変換器1は、バッキングマス9によって支持される。バッキングマス9は、変換器1によって産生される音波へ反応を提供し、および、アルミニウムのような材料のブロックとして単純に形成されるが、一般に、より複雑な構造を有し得る。ソノトロード2とバッキングマス9との間のボルト11は、音波の有効な伝達のために、ソノトロード2に対する変換器1の圧縮を提供する。
【0054】
バッキングマス9は、設置される表面からの変換器1の隔離のために、ダンパー10によって支持される。ダンパー10は、ゴムのような材料のブロックとして単純に形成されてもよいが、やはり、より複雑な構造を有し得る。
【0055】
キュベット6をソノトロード2上に機械的に保持するために、異なる配置を使用する音波処理装置15についてのいくつかの代替構造が次に説明される。
【0056】
音波処理装置15についての第一代替構造が、図3と同様の断面図である図5に示される。この代替構造において、音波処理装置15は、キュベット6をソノトロード2に接して搭載する搭載配置40を追加的に提供することによって改変される。特に、搭載配置40は、移動可能なプレート42、ならびに、プレート42をハウジング41から離れて偏向させるスプリング43を収納する、ハウジング41を含む。搭載配置40は、キュベット6の上端とかみ合うプレート42、および、音波処理装置15の残りに相関して固定されたハウジングで、この例においては、ハウジング41からダンパー10、または音波処理装置15の別の部分まで及ぶ多数のアーム44(そのうち一つが示される)によって装備される。アーム44の代わりに、搭載配置40は、任意の他の様式において、例えば、音波処理装置15および搭載配置40を、閉じたときにそれらを一緒に保持する箱に配置することによって、音波処理装置15に相関して保持され得る。
【0057】
このように、バイアススプリング43の作用は、キュベット6をソノトロード2に接して搭載する。搭載配置40は、それらの任意の振動を最小化するように、および、特に、キュベット6と共鳴しないように配置される。
【0058】
搭載装置40の利点は、ソノトロード2からキュベット6への振動の伝達を改善することである。また、例えば、くぼみ7によりゆるい適合を提供することを要求し、ソノトロード2とキュベット6との間に直接的に適用される必要がある結合力を減少させる。
【0059】
バイアススプリング43の搭載力は、振動の適当な伝導を可能にする、ソノトロード2とキュベット6との間の結合の十分な程度を提供するように選択される。力は、典型的には1N〜40Nの範囲、例えば約20Nである。
【0060】
搭載配置40は、キュベット6の最小屈曲振動の点で、すなわち、振動の節点で、搭載力をキュベット6へ伝達するように有利に配置される。これは、キュベット6の長さ、および、キュベット6およびソノトロード2の組み合わせの共鳴周波数の相対値の設計によって達成されてもよい。キュベット6に沿って多数の最小屈曲振動の点が存在してもよく、または、搭載はそのような点の任意またはすべてで適用され得る。キュベット6の最小屈曲振動の点で搭載力をキュベット6へ伝達することは、キュベット6の振動に、最小の減衰効果を提供する利点を有する。
【0061】
搭載配置40は、キュベット6がソノトロード2に接していかに搭載され得るかの一つの例である。そのような搭載は、他の様式において達成されてもよい。また、キュベット6は、搭載が適用され得る突出部で提供されてもよい。搭載は、必ずしもキュベット6の末端表面に適用されず、または、キュベット6の側面表面に適用され得る。搭載は、1箇所より多い位置において適用されてもよい。搭載は、スプリング以外の技術によって適用され得る。いくつかの代替案の一つは、キュベット6をソノトロード2に接して搭載する、堅く適合するふたを有する箱において、音波処理装置15を配置することである。
【0062】
音波処理装置15についての第二代替構造が、図3および5と同様の断面図である図6に示される。この代替構造において、音波処理装置15は、第一代替構造と比較して以下のように改変される。ソノトロード2の突出部分4は、くぼみ7無しで形成される。代わりに、突出部分4は、その外端45で容器を機械的に保持するように配置される。外端45は、キュベット6の下部表面と一致するように形作られ、および、キュベット6は、搭載配置により外端45に接して搭載される。外端45は、キュベット6を突出部分4上の中心におくのに役立つような凹状形を有するが、または、外端45は、平面であり得る。
【0063】
更なる代替案として、図6の第二代替構造は、搭載配置を割愛し、代わりに、キュベット6を機械的結合により突出部分4の外端上に機械的に保持することによって、改変され得る。
【0064】
変換器1および音波処理装置15の電気素子の構造が、図7に示される。
【0065】
変換器1は、電極13と交互にある圧電性材料の二つの層12のスタックからなる通常のバイモルフベンダー構造を有する。一般に、変換器は、所望の音波を発生させることが可能である任意の構造を有してもよいが、典型的な例は、会社Ferropermによって製造された製品であろう。典型的には、圧電性材料の層12は、円盤形であろうし、ならびに、変換器は、直径30mmおよび厚さ2mmを有してもよい。圧電性材料は、PZTのようなセラミックであってもよく、例えば、PZT 26は、2.70E+07 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZを有する。
【0066】
駆動回路14は、変換器1を活性化するための駆動信号を供給する。駆動信号は、電極13に適用される。駆動信号の極性、および、圧電性材料の層12の極性は、圧電性材料の層12が、他方が収縮する間に一方が伸長するように、長さにおいて異なる変化をうけるように、選択される。この長さにおける異なる変化は、音波を発生させる変換器の湾曲をもたらす。変換器の他の形態が、同様の効果のために使用され得る。
【0067】
キュベット6およびソノトロード2の材料、ソノトロード2の全般的な設計は、変換器1から媒質8への音波の伝達の考慮に基づいて選択される。変換器1からキュベット6への効率的な狭帯域伝達を達成するために、ソノトロード2の音響インピーダンスZ2は、変換器1の音響インピーダンスZ1およびキュベット6の音響インピーダンスZ3の「幾何平均」(Z2=√(Z1Z3))に等しい、またはそれに近い(例えば幾何平均の50%以内)ことが望ましい。材料の一つの有利な組み合わせは、変換器1が、2.70E+07 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZ1を有するPZT 26で作製され、ソノトロード2が、1.70E+07 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZ2を有するアルミニウムで作製され、および、キュベット6が、1.65E+06 kg/(m2/s)の音響インピーダンスZ3を有するTicona Topas 8007(登録商標)で作製されるものである。ちなみに、水は1.50E+06 kg/(m2/s)のZ値を有し、および、空気は4.10E+02 kg/(m2/s)のZ値を有する。
【0068】
もう一つの考慮は、ソノトロード2と媒質8との間の音響整合を提供する音響インピーダンスを有する材料からキュベット6を形成することである。上記で言及された材料の組み合わせはこの要求に合い、特に、最適整合の少なくとも0.4倍の整合を提供し、これは電池式装置に十分な整合である。このように、狭帯域において、キュベット6への効率的な音伝達が達成された。キュベット6について他の材料が考慮されたが、Ticona Topas 8007(登録商標)が、考慮される材料の最適音響インピーダンスおよび機械的特性を有した。従って、変換器1から媒質8への音波の極めて良好な伝達が存在する。
【0069】
更に、Ticona Topas 8007(登録商標)は、内部摩擦のために低いエネルギー損失を提供する利点を有する。キュベット6がソノトロード2との組み合わせで共鳴するため、これが、音波処理装置15の動作の効率を改善する。
【0070】
同様の利点は、Ticona Topas 8007(登録商標)が例である、他のアモルファス構造の熱可塑性オレフィンポリマーで達成されてもよい。例えば、キュベット6の材料は、環状オレフィンコポリマー(COC)であってもよい。そのようなポリマーは、エチレンおよび、典型的にはジシクロペンタジエン由来である、環状構造オレフィンのコポリマーである。組み入れられる環状構造は、そのサイズが、分子が結晶化するほど整然となることを妨げるが、COCに剛性を与える。これらのポリマーの性質は、完全にアモルファスであり、部分的に低い収縮および反りをもたらす。これらの特徴が、COC材料を、超音波使用、例えば、インビトロ診断用機器に使用される容器またはキュベットに特に適用可能にする。
【0071】
しかしながら、一般に、本発明において使用される材料として反応バイアルへの音エネルギーの伝達にとって適当、および効率的でない可能性があるが、キュベット6は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンのような他のプラスチック材料から作製され得、および、ポリスチレンもまた使用されてもよい。同様に、任意の他の材料、例えばプラスチック、ガラス、石英、ケイ素、および金属が、十分に良好な整合インピーダンスおよび共鳴器特性を提供する限り適する。
【0072】
駆動回路14が図8に示され、かつ、次に説明される。
【0073】
駆動回路14は、適度に単純であり、および、キュベット6における媒質8の体積にかかわらず、適当な動作周波数を見出す。駆動回路14は、電池20によって電力を供給され、および、3個の回路ブロック、すなわち以下からなる:
混合時間制御、振幅制御、位相調節回路、および検出回路を含み、ならびに、正確な形態で駆動信号を発生させる、制御ブロック21;
制御ブロック21からの駆動信号を増幅し、および、BNC連結器24を介して変換器へ供給する、増幅ブロック22;ならびに、
電池からの電圧のDC/DC変換を行い、ならびに、制御ブロック21および増幅ブロック22へ電力を供給する、DC電力ブロック。
【0074】
制御ブロック21は、以下のように、追跡電子機器、ならびに、音波処理時間および振幅制御機器を含む。
【0075】
検出増幅器25は、変換器1を通して流れる電流を測定する。
【0076】
振幅制御ブロック26は、検出増幅器25の出力に基づいて、音波処理出力に関連する振動振幅を制御する。振幅制御ブロック26は、振幅電位差計27によってセットされてもよい。
【0077】
タイミング回路28は、振幅制御ブロック26の出力を受領し、および、フィードバックループを閉鎖して、自由振動を可能にする。混合時間は、フィードバック回路を可能にするFETスイッチによって制御される。タイミング回路28のループ閉鎖時間は、タイマー電位差計29、または、混合時間調節連結器30からの入力によってセットされる。
【0078】
タイミング回路28の出力は、正確な利得をセットし、および、フィードバック信号を緩衝する増幅器31に供給される。
【0079】
増幅器31の出力は、フィードバック信号のために正確な位相をセットする位相調節回路32に供給される。
【0080】
変換器1の動作、および音波処理装置15の停止は、自由振動に基づく。自由振動において、バッキングマス9、変換器1、ソノトロード2、およびキュベット6の組み合わせが、システムの振動周波数を決定する「タンク回路」として使用される。
【0081】
増幅器ブロック22は、電力増幅器およびフェライトコア変圧器を用いて、高電圧を発生させる。電力増幅器からの最大出力電圧は、+10V〜-10Vであり、および、変圧器からの最大出力電圧は、400 Vpp(ピークトゥピーク)である。高電圧は変換器1へ駆動され、および、電流が測定される。検出増幅器25の出力電圧は、「タンク回路」を通して流れる電流に比例する。この電圧が、上記で説明されたような増幅器ブロック22の電力増幅器にフィードバックされる。フィードバック電圧および駆動電圧が同一の位相にあり、および、システムの開ループ利得が≧1である場合は、これらの境界条件が満たされる周波数において、回路が振動し始める。TP1〜TP2(タイミング回路28の入力および出力)で測定された開ループ応答が、図10に図示される。応答は、TP1へランダムノイズを伝達し、かつ、TP2からの応答を測定することによって、測定される。利得および位相は、自由振動境界条件を満たす。制御電子機器において、位相応答に適当な種類の形を達成するため、および帯域幅を限定するために、LCバンドパスフィルターが使用される。LCフィルターの中心周波数は、音波処理装置15の共鳴周波数とほぼ同一でなければならない。回路の電力は、例えば、調節可能なダイオードリミッターを用いて、検出増幅器25で検出振幅を限定することによって調節され得る。
【0082】
自由振動の代替案として、強制振動が使用され得る。この代替案においては、図9に図式的に示されるように、位相ロックループ(PLL)が、自動的に適当な動作周波数を見出すために使用される。特に、共鳴において、変換器1を超える動作AC電流の位相が変化する。PLLにおいて、動作電流の位相は、位相検出器33によって測定される。位相に関連する電圧は、増幅器35を介して変換器1へ供給される振動駆動信号を産生する、電圧制御発振器(VCO)34に方向付けられる。音波処理装置15の共鳴周波数が変化する場合、位相検出器33の出力電圧もまた変化する。この電圧が、位相検出器34出力電圧が予め決定された値に留まる様式において、VCO34の振動周波数を制御する。この様式において、周波数は新しい共鳴を追跡する。音波処理装置15の共鳴周波数が変化する場合、位相検出器33の出力電圧もまた変化する。
【0083】
任意の特徴は、アッセイのために選択されたキュベット6の材料にかかわらず、ソノトロード2からキュベット6へのエネルギーの効率的な移動を可能にする最適の振幅および位相を見出すための、手動的または自動的いずれかでの、音波処理装置15のチューニングである。
【0084】
音波処理器の追加的な選択肢は、手動的または自動的いずれかで、高エネルギー音波処理状態から低エネルギー音波処理状態へ転換する可能性である。異なる幾何学的要求を考慮に入れて、定常波タイプの音波処理を開発することもまた可能である。
【0085】
音波処理装置15は、約40 kHzの周波数での優れた超音波処理について、約20〜25 kHzの周波数を通常利用する使用可能な方法よりも、非常に低いエネルギー、熱、および可聴ノイズ発生を可能にする。これを説明するために、図11および12は、変換器1での、時間に伴う、電流および電圧それぞれにおける変化を示す。図11は、最低の位置、すなわち最大電力の〜70%における電力制御で、変換器1を通した電流の量が、100〜300 mAppであることを示す。図12は、音波処理過程の間の圧電要素を超える電圧の量が、120〜160 Vppであったことを示す。最低電力での混合器部分の瞬間電力消費は、このように約14W(平均7W)である。
【0086】
媒質8に供給される音波の出力は、1.0mlの媒質8で約4Wであると概算される。駆動回路14による電力消費は、約25Wであると概算される。これらの概算に基づいて、効率は約16%である。
【0087】
音波処理装置15は、"Measurement Of Binding Rate Of A Binding Substance And An Analyte"という題名の、本出願と同時に提出された、および、英国特許出願第0509419.8号の優先権を主張する国際特許出願において開示される技術の一部として、媒質を音波処理するために開発されてきた。しかしながら、音波処理装置15は、上記で概要が示されたように、幅広い範囲の他の応用において、媒質8を音波処理するために同等に適用されてもよい。各場合において、音波処理される媒質8は、キュベット6において配置され、および、音波処理装置15は、上記で説明されたように動作される。音波処理装置15は、上記でまた概要が示されたように、幅広い範囲の周波数で動作してもよい。動作周波数の変化は、例えば、ソノトロード2の突出部分4の長さを変化させるため、または、使用される材料を変化させるために、音波処理装置15の設計における変化を必要としてもよいが、基本的な動作は同一のままである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】音波処理装置の上面図である。
【図2】図1における線II‐IIに沿った、音波処理装置の断面図である。
【図3】図1における線III‐IIIに沿った、音波処理装置の断面図である。
【図4】音波処理装置における共鳴現象のコンピューターシミュレーション(ANSYS)を示す。
【図5】図1における線II‐IIに沿った、第一代替構造を有する音波処置装置の断面図である。
【図6】図1における線II‐IIに沿った、第二代替構造を有する音波処置装置の断面図である。
【図7】音波処理装置の変換器および駆動回路の概略図である。
【図8】駆動回路の回路図である。
【図9】駆動回路における位相ロックループ(PLL)実現の概略図である。
【図10】音波処理装置のループ応答のグラフである。
【図11】変換器を通した電流のグラフである。
【図12】変換器を越えた電圧のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質を保持するための容器;
音波を発生させるために動作可能な変換器;および
容器を機械的に保持するように配置された、スリットによって分離された多数の突出部分を含む、変換器に連結されたソノトロード
を含む、媒質を音波処理するための装置。
【請求項2】
多数の突出部分が、容器を機械的に保持するように形作られたくぼみを形成する接面を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
くぼみが、スリットより浅い深さまで及ぶ、請求項2記載の装置。
【請求項4】
くぼみが、容器の外面と一致するように形作られる、請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
くぼみが、摩擦により容器を機械的に保持する、請求項2〜4のいずれか一項記載の装置。
【請求項6】
ソノトロードの多数の突出部分が、外端上に容器を機械的に保持するように配置される、請求項1記載の装置。
【請求項7】
ソノトロードの外端が、容器と一致するように形作られる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
突出部分に接して容器を搭載するように配置された搭載配置を更に含む、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項9】
突出部分が、突出部分の材料において音波の波長の四分の一のオーダーの長さを有する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項10】
ソノトロードが、スリットによって分離された二つの突出部分を有する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項11】
突出部分が、同一である、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項12】
ソノトロードが、変換器に連結され、突出部分が突出する基底部分を更に有する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項13】
ソノトロードが、単一の材料部品から形成される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項14】
ソノトロードが、乾燥した接触面において容器を保持する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項15】
ソノトロードが、間に任意の連結層無く容器と接触して容器を保持する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項16】
容器が、ソノトロードによって交換可能に保持される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項17】
変換器が、反応を音波に提供するバッキングマスによって支持される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項18】
バッキングマスが、ダンパーによって支持される、請求項17記載の装置。
【請求項19】
容器が、ソノトロードと媒質との間の音響整合を提供する音響インピーダンスを有する材料で作製される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項20】
容器が、プラスチック材料、金属、ガラス、石英、またはケイ素で作製される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項21】
容器が、アモルファス構造の熱可塑性オレフィンポリマーで作製される、請求項1〜19のいずれか一項記載の装置。
【請求項22】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、少なくとも20kHzである、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項23】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、多くても100kHzである、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項24】
容器において保持され、かつ、被分析物を検出することが可能であるアッセイ試薬である媒質を更に含む、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項25】
変換器を動作させるための振動駆動信号を提供するように配置された駆動回路を更に含む、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項26】
駆動信号が、パルス駆動信号である、請求項25記載の装置。
【請求項27】
駆動信号が、ソノトロードおよび容器の組み合わせを共鳴するようにさせる周波数での振動である、請求項25または26記載の装置。
【請求項28】
駆動回路が、装置の振動をモニターするように配置された検出器を含み、および、駆動回路が、検出器の出力に応答して駆動信号の振動周波数を制御するように配置される、請求項25〜27のいずれか一項記載の装置。
【請求項29】
10Wまたはより小さい出力で音波を媒質へ伝達するように配置される、請求項25〜28のいずれか一項記載の装置。
【請求項30】
試料および試薬の加工処理のための、イムノアッセイ分析器または臨床化学分析器の部分を形成する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項31】
スリットによって分離された多数の突出部分を含む、変換器に連結されたソノトロードによって機械的に保持される容器において媒質を配置する段階であって、多数の突出部分が容器を機械的に保持する、段階;ならびに、
音波を発生させるために変換器を動作させ、および、ソノトロードによって変換器から容器へ音波を伝達する段階
を含む、媒質を音波処理する方法。
【請求項32】
多数の突出部分が、容器が機械的に保持されるくぼみを形成する接面を有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
くぼみが、スリットより浅い深さまで及ぶ、請求項32記載の方法。
【請求項34】
くぼみが、容器の外面と一致するように形作られる、請求項32または33記載の方法。
【請求項35】
くぼみが、摩擦により容器を機械的に保持する、請求項32〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
ソノトロードの多数の突出部分が、外端上に容器を機械的に保持する、請求項31記載の方法。
【請求項37】
ソノトロードの外端が、容器と一致するように形作られる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
多数の突出部分が、突出部分に接して搭載される容器で容器を機械的に保持する、請求項31〜37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
突出部分が、突出部分の材料において音波の波長の四分の一のオーダーの長さを有する、請求項31〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
ソノトロードが、スリットによって分離された二つの突出部分を有する、請求項31〜39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
突出部分が、同一である、請求項31〜40のいずれか一項記載の装置。
【請求項42】
突出部分が、基底部分から突出する、請求項31〜41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
ソノトロードが、単一の材料部品から形成される、請求項31〜42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
ソノトロードが、乾燥した接触面において容器を保持する、請求項31〜43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
ソノトロードが、間に任意の連結層無く容器と接触して容器を保持する、請求項31〜44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
変換器が、反応を音波に提供するバッキングマスによって支持される、請求項31〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
バッキングマスが、ダンパーによって支持される、請求項48記載の方法。
【請求項48】
容器が、ソノトロードと媒質との間の音響整合を提供する音響インピーダンスを有する材料で作製される、請求項31〜47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
容器が、プラスチック材料、金属、ガラス、石英、またはケイ素で作製される、請求項31〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
容器が、アモルファス構造の熱可塑性オレフィンポリマーで作製される、請求項31〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
音波が、ソノトロードおよび容器の組み合わせを共鳴するようにさせる、請求項31〜50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、少なくとも20kHzである、請求項31〜51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、多くても100kHzである、請求項31〜52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
媒質が、被分析物を検出することが可能であるアッセイ試薬を含む、請求項31〜53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
アッセイ手順の一部として行われる、請求項31〜54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
音波が、一つまたは複数のパルスにおいて提供される、請求項31〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
媒質に供給される出力が、10Wまたはより小さい、請求項31〜56のいずれか一項記載の方法。
【請求項1】
媒質を保持するための容器;
音波を発生させるために動作可能な変換器;および
容器を機械的に保持するように配置された、スリットによって分離された多数の突出部分を含む、変換器に連結されたソノトロード
を含む、媒質を音波処理するための装置。
【請求項2】
多数の突出部分が、容器を機械的に保持するように形作られたくぼみを形成する接面を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
くぼみが、スリットより浅い深さまで及ぶ、請求項2記載の装置。
【請求項4】
くぼみが、容器の外面と一致するように形作られる、請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
くぼみが、摩擦により容器を機械的に保持する、請求項2〜4のいずれか一項記載の装置。
【請求項6】
ソノトロードの多数の突出部分が、外端上に容器を機械的に保持するように配置される、請求項1記載の装置。
【請求項7】
ソノトロードの外端が、容器と一致するように形作られる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
突出部分に接して容器を搭載するように配置された搭載配置を更に含む、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項9】
突出部分が、突出部分の材料において音波の波長の四分の一のオーダーの長さを有する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項10】
ソノトロードが、スリットによって分離された二つの突出部分を有する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項11】
突出部分が、同一である、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項12】
ソノトロードが、変換器に連結され、突出部分が突出する基底部分を更に有する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項13】
ソノトロードが、単一の材料部品から形成される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項14】
ソノトロードが、乾燥した接触面において容器を保持する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項15】
ソノトロードが、間に任意の連結層無く容器と接触して容器を保持する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項16】
容器が、ソノトロードによって交換可能に保持される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項17】
変換器が、反応を音波に提供するバッキングマスによって支持される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項18】
バッキングマスが、ダンパーによって支持される、請求項17記載の装置。
【請求項19】
容器が、ソノトロードと媒質との間の音響整合を提供する音響インピーダンスを有する材料で作製される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項20】
容器が、プラスチック材料、金属、ガラス、石英、またはケイ素で作製される、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項21】
容器が、アモルファス構造の熱可塑性オレフィンポリマーで作製される、請求項1〜19のいずれか一項記載の装置。
【請求項22】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、少なくとも20kHzである、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項23】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、多くても100kHzである、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項24】
容器において保持され、かつ、被分析物を検出することが可能であるアッセイ試薬である媒質を更に含む、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項25】
変換器を動作させるための振動駆動信号を提供するように配置された駆動回路を更に含む、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項26】
駆動信号が、パルス駆動信号である、請求項25記載の装置。
【請求項27】
駆動信号が、ソノトロードおよび容器の組み合わせを共鳴するようにさせる周波数での振動である、請求項25または26記載の装置。
【請求項28】
駆動回路が、装置の振動をモニターするように配置された検出器を含み、および、駆動回路が、検出器の出力に応答して駆動信号の振動周波数を制御するように配置される、請求項25〜27のいずれか一項記載の装置。
【請求項29】
10Wまたはより小さい出力で音波を媒質へ伝達するように配置される、請求項25〜28のいずれか一項記載の装置。
【請求項30】
試料および試薬の加工処理のための、イムノアッセイ分析器または臨床化学分析器の部分を形成する、前記請求項のいずれか一項記載の装置。
【請求項31】
スリットによって分離された多数の突出部分を含む、変換器に連結されたソノトロードによって機械的に保持される容器において媒質を配置する段階であって、多数の突出部分が容器を機械的に保持する、段階;ならびに、
音波を発生させるために変換器を動作させ、および、ソノトロードによって変換器から容器へ音波を伝達する段階
を含む、媒質を音波処理する方法。
【請求項32】
多数の突出部分が、容器が機械的に保持されるくぼみを形成する接面を有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
くぼみが、スリットより浅い深さまで及ぶ、請求項32記載の方法。
【請求項34】
くぼみが、容器の外面と一致するように形作られる、請求項32または33記載の方法。
【請求項35】
くぼみが、摩擦により容器を機械的に保持する、請求項32〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
ソノトロードの多数の突出部分が、外端上に容器を機械的に保持する、請求項31記載の方法。
【請求項37】
ソノトロードの外端が、容器と一致するように形作られる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
多数の突出部分が、突出部分に接して搭載される容器で容器を機械的に保持する、請求項31〜37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
突出部分が、突出部分の材料において音波の波長の四分の一のオーダーの長さを有する、請求項31〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
ソノトロードが、スリットによって分離された二つの突出部分を有する、請求項31〜39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
突出部分が、同一である、請求項31〜40のいずれか一項記載の装置。
【請求項42】
突出部分が、基底部分から突出する、請求項31〜41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
ソノトロードが、単一の材料部品から形成される、請求項31〜42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
ソノトロードが、乾燥した接触面において容器を保持する、請求項31〜43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
ソノトロードが、間に任意の連結層無く容器と接触して容器を保持する、請求項31〜44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
変換器が、反応を音波に提供するバッキングマスによって支持される、請求項31〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
バッキングマスが、ダンパーによって支持される、請求項48記載の方法。
【請求項48】
容器が、ソノトロードと媒質との間の音響整合を提供する音響インピーダンスを有する材料で作製される、請求項31〜47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
容器が、プラスチック材料、金属、ガラス、石英、またはケイ素で作製される、請求項31〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
容器が、アモルファス構造の熱可塑性オレフィンポリマーで作製される、請求項31〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
音波が、ソノトロードおよび容器の組み合わせを共鳴するようにさせる、請求項31〜50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、少なくとも20kHzである、請求項31〜51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
ソノトロードおよび容器の組み合わせの共鳴周波数が、多くても100kHzである、請求項31〜52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
媒質が、被分析物を検出することが可能であるアッセイ試薬を含む、請求項31〜53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
アッセイ手順の一部として行われる、請求項31〜54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
音波が、一つまたは複数のパルスにおいて提供される、請求項31〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
媒質に供給される出力が、10Wまたはより小さい、請求項31〜56のいずれか一項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−541069(P2008−541069A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510467(P2008−510467)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004243
【国際公開番号】WO2006/119932
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506005237)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004243
【国際公開番号】WO2006/119932
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506005237)
【Fターム(参考)】
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