説明

子供用電動乗用玩具

【課題】 車体の外周を滑らかにして障害物に当たっても障害物や車体を傷めにくくし、また車体を大型化することなく低年齢の子供でも安定した着座姿勢で楽に安定して走行できるようにする。
【解決手段】 1個の操向前輪38と左右一対の後輪80とを備える子供用電動乗用玩具において、前輪38および後輪80を覆い上面が上方へ凸で外周が平面視滑らかな曲面形状である車体10と、この車体10の前部を上下方向に貫通して左右へ回動可能に保持されると共に下部に保持した前輪38を回転駆動する駆動装置36を内蔵する動力ユニット30と、この動力ユニット30の上端に取付けられた操向ハンドル58と、車体10の後部上面から上向きに突出しその上面を着座面とした着座シート12と、動力ユニット30の左右両側方に位置し車体10の上面を下方に陥没させて形成した左右一対の足載台28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、子供あるいは幼児が乗って自分で操縦しながら走行する極めて小型かつ簡易な子供用電動乗用玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
子供あるいは幼児が乗って自分で操縦しながら低速で走行できるようにした子供用電動乗用玩具が公知である。例えば公園や広場、空き地などで子供を遊ばせるために用いるものであり、充電可能な電池と電気モータにより低速で自走可能にしたものである。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3106309号
【特許文献2】実用新案登録第3087339号
【0004】
特許文献1、2には自動車型の車体の上面を着座シートとし、後輪を駆動輪とすると共に前輪を車体前部中央付近に操舵可能に保持したものが示されている。ここに前輪は遊転可能であり、2個の前輪を車体幅方向に近接させて共通車軸上に保持している。また車体の前部の左右側面には、地面から僅かに浮いた飾り用の(ダミーの)前輪が取付けられている。
【0005】
従来のものはこれら飾り用の前輪と後輪との間に車体側面から側方へ突出する左右一対の足載台を設けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のものは足載台が車体から側方に突出しているため、車体の外周形状に平面視で複雑な凹凸ができることになる。この種の乗用玩具は狭い場所で使うことが多いため、車体の外周に凹凸が多いと障害物に当たり易く、障害物や車体を傷め易いばかりでなく走りにくいという問題がある。
【0007】
また足載台の場所は飾り用前輪と後輪の間に制限されることになるため、子供の良好な着座姿勢を確保する必要から着座シートの位置をこの足載台より後方まで長くのばすことが必要になる。このために車体が大きくなる、という問題もある。
【0008】
さらに、乗車した子供は着座シートに跨って着座するため、両足の膝を左右に大きく開く必要が生じる。このため左右のバランスがとりにくく、走行姿勢が不安定になり易く、特に低年齢の子供や幼児には乗りにくいという問題があった。
【0009】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、車体の外周を滑らかにして障害物に当たっても障害物や車体を傷めにくくし、また車体を大型化することなく低年齢の子供でも安定した着座姿勢で楽に安定して走行できるようにした子供用電動乗用玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によればこの目的は、1個の操向前輪と左右一対の後輪とを備える子供用電動乗用玩具において、前輪および後輪を覆い上面が上方へ凸で外周が平面視滑らかな曲面形状である車体と、この車体の前部を上下方向に貫通して左右へ回動可能に保持されると共に下部に保持した前輪を回転駆動する駆動装置を内蔵する動力ユニットと、この動力ユニットの上端に取付けられた操向ハンドルと、車体の後部上面から上向きに突出しその上面を着座面とした着座シートと、動力ユニットの左右両側方に位置し車体の上面を下方に陥没させて形成した左右一対の足載台と、を備えることを特徴とする子供用電動乗用玩具、により達成される。
【発明の効果】
【0011】
車体の上面を上方へ凸で外周が平面視滑らかな曲面形状とし、足載台は動力ユニットの左右側方にあって車体上面を下方に陥没させて形成したから、車体外周から足載台が外側へ突出せず、車体外周を滑らかな曲面のままにすることができる。このため車体外周に障害物が当たっても車体外周の曲面で滑ることにより衝撃を緩和でき、障害物や車体を傷めにくくなる。
【0012】
また足載台の位置は前後輪による制約を受けることがないのでその配置自由度が大きくなる。このため着座シートを車体後部から上向きに突出させつつ足載台を動力ユニットの側方(従って車体の前部付近)に配置することにより、左右の足載台の間隔を小さくでき、両足を大きく開くことなく楽な姿勢で着座できる。すなわち車体を小型化しても乗車姿勢に大きな制約を与えることなく楽な姿勢での乗車が可能になる。特に着座シートは跨って着座する必要がなく、両足を広く開く必要もないので、左右のバランスが取り易く、乗車姿勢が安定する。さらに車体は上方へ凸な略球面状としたから、車体剛性の増大に適し、軽量化が図れる。
【0013】
さらにまた後輪は非駆動輪であるから小径化できる。このため左右の後輪を車体外周に接近させて配置することが可能になり、左右後輪の間隔(トレッド)を大きくして車体の走行安定性を向上させることができる。一方前輪は駆動輪であるため、大径化して接地面積を大きくし空転(スリップ)を防ぐのが望ましいが、この発明によれば前輪は車体中心を前後方向に通る前後中心線上に配置するので、大径化しても車体上面と干渉しにくく、大径化し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
前輪は実質的に1個であれば足り、2以上の車輪を同軸上に近接させて配置したものであっても実質的に1個と見なせるものであればよい。車体は上方に向かって凸な略球面状とし、外周を平面視略円形とするのがよい(請求項2)。
【0015】
着座シートは車体に上方から着脱可能とし、この着座シートの下に電池を収容すれば、電池の荷重を利用して車体の低重心化が図れる(請求項3)。着座シートの上面は、後縁および左右側縁から中央付近に向かって滑らかに下降するように陥没させれば、いわゆるバケット型シート形状に近くなり、左右の足載台の間隔を狭くできることから両足を大きく左右に広げることなく着座できる。このため着座時の腰の位置を安定させて乗車姿勢を安定させるのに適する(請求項4)。
【0016】
車体の下面には前輪の左右外側方であってかつ車体下面の外周縁付近に、左右一対の倒れ角規制部材を設けておけば、車体前部が左右に大きく倒れるのを防止できる(請求項5)。すなわち通常は1つの前輪と2個の後輪による3点で接地することになるため、前輪中心に左右に傾き易いという不都合があるが、この時の倒れ角を倒れ角規制部材を路面に接触させることによって制限するものである。この場合、倒れ角規制部材は前輪中心を通る車体幅方向の直線よりも前方に配置するのがよい(請求項6)。
【0017】
倒れ角規制部材は、下方に向かって凸な滑らかな曲面を持つものが望ましい(請求項7)。路面の凹凸に対して大きな衝撃を発生せずに通過できるからである。その表面を表面摩擦抵抗が小さい材料で作ったものが最適である。これらの倒れ角規制部材および左右一つの後輪は、できるだけ車体外周に接近させて配置するのが、車体の走行安定性を向上させるのに望ましい(請求項8)。
【0018】
また車体下面の中央後縁付近には、車体前部が上昇し前輪が路面から一定以上浮き上がった時の路面に接触する後方転倒防止用の補助車輪を取付けておくのが望ましい(請求項9)。この補助車輪を設ければ、車体前部を浮き上がらせても後輪と補助車輪とを接地させた状態を保って車体姿勢を維持することができるからである。この補助車輪は車体幅方向に離して左右一対設ければ、前輪を浮き上がらせても車体は左右方向に不安定にならず安定する。
【0019】
車体前部すなわち前輪の前方に車体の前傾を規制する前傾規制部材を設けておけば、子供が着座シートから腰を浮かせた時などに車体が前方に大きく傾くのを防ぐことができる。
【0020】
動力ユニットは、円筒部と、その下端に取付けた前輪保持部と、この前輪保持部に保持した前輪と、円筒部の上端に設けた操向ハンドル取付部と、駆動装置とを備え、円筒部を車体前部に下から上向きに貫通させて車体に左右へ回動自在にすることができる(請求項10)。駆動装置には前輪に伝えるモータの駆動力(トルク)を一定以下に保つトルクリミッタを設けるのがよい(請求項11)。例えば車体が障害物に当たった時にはこのトルクリミッタが作用してモータ負荷が過大になるのを防ぎ、モータ等を保護すると共に、このトルクリミッタが作動中にカチカチと音を発する場合には、運転中の子供に車体が障害物に当たっていることを容易に気付かせることができる。
【0021】
一方の足載台には、モータ制御用に足で操作する操作子(足動式操作子)を設けておけば、操向ハンドルから手を離すことなく操作できるので、便利である(請求項12)。車体に衝撃センサを取付けておき、このセンサが車体に衝撃が加わった時に音(例えばチャイム音、メロディ音など)を発生する発音ユニット(チャイムユニット)を車体に取付けておいてもよい(請求項13)。
【0022】
衝撃センサは警告ユニット内に取付けておいてもよい。この場合は発音ユニットを電池を含めて独立したユニットとして構成し車体に着脱できるので組み立てが容易になる。衝撃センサは車体外周に巻付けたテープ状(帯状)の接触センサであってもよい(請求項14)。この場合、テープ状の接触センサは車体外周に取付けた緩衝材の中に埋め込んでおくのがよい。
【実施例】
【0023】
図1は本発明の一実施例の外観を示す斜視図、図2は同じく平面図、図3は図2におけるA−A線断面図、図4は同じくB−B線断面図、図5は同じくF−F線断面図である。
【0024】
図6はこの実施例の底面図、図7は図6におけるC−C線断面図、図8は同じくD−D線断面図、図9は同じくE−E線断面図である。
【0025】
図10は駆動装置を抜き出して示す正面図、図11はその縦断面図、図12は図10におけるG−G線断面図、図13は動力ユニットの平面図、図14は電気回路図である。
【車体構成】
【0026】
まず車体全体の配置構成を説明する。図1〜9において、符号10は合成樹脂製の車体である。この車体10はその上面が上方へ凸な略球面状に形成され、平面視で略円形である(図2,6)。また車体10は図3,5に示すように、側面視が長軸を前後方向とした楕円の上半分形状に類似した形状である。車体10の正面視形状は、図4,7,8,9などから明らかなように略半球状である。結局車体10の上面は略亀の甲羅形状となっている。
【0027】
12は着座シートである。この着座シート12は、車体10の上面後部から上向きに突出している。この着座シート12の上面12aは、後縁12bおよび左右側縁12c、12dから上面12aの中央付近に向かって滑らかに下降するように陥没している。このため着座面となる上面12aは、中央付近が最も深くなり、ここに着座した子供の腰をしっかりと保持することができる。
【0028】
着座シート12の下部には図3、7、8に示すように、下方に向かって開く箱状の支持部12eが突出し、この支持部12eは車体10側に形成した上方に向かって開くシート固定用の開口部14に上方から嵌入可能である。なお車体10の開口部14の底面には車体10と一体に電池収納箱16が形成され、この電池収納箱16の上面がこの開口部14の底面に開口している。この電池収納箱16には充電可能な二次電池18、例えば鉛電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池等が収容されている。
【0029】
着座シート12の支持部12eの中には、下方から着脱可能に充電アダプター20が収納されている。このアダプター20は、電池18の充電時に取出され、商用電源のコンセントに接続される一方、このアダプター20の出力端は、車体10の下面から、電池収納箱16の後面の取付けた接続端子22(図3,6,7)に接続される。
【0030】
車体10には、開口部14の左右側面を貫通して開口14内に水平に進入する方向に付勢されたロック部材24、24(図8)が水平に進退動可能に取付けられている。ロック部材24、24には下方へ突出するロックレバー26、26(図6、8)が一体形成され、これらレバー26、26を外側へ(互いに引き離す方向へ)押し開くことにより、ロック部材24、24を開口部14から退出させることができる。この状態で着座シート12の支持部12eを開口部14に挿入した後、ロック部材24、24を開口部14内に復帰させれば、このロック部材24、24を支持部12eに係合させて着座シート12を車体10の後部に固定することができる。
【0031】
なお着座シート12の下面には、後縁12bの下面と支持部12eの後面上部とをつなぐ複数の縦長のリブ27が一体成形されている。これらのリブ27は、着座シート12の後部の剛性を増大させると共に、開口部14と支持部12eとの隙間に衣服などを挟むのを防いでいる。
【0032】
また車体10の左右両側には、車体10の上面を下方へ陥没させた形状に左右一対の足載台28、28が形成されている。これらの足載台28、28は後記する動力ユニット30の左右両側方に位置し、左右方向および前方に開いている。なお足載台28、28の前縁には、障害物が足に当たるのを防ぐと共に足が車体10から前方に突出するのを防ぐためにガード板28a、28aが固定されている(図1、2、5)。
【動力ユニット】
【0033】
車体10の前部には下方から垂直に動力ユニット30が貫通して左右へ回動可能に保持されている。この動力ユニット30の内部には電気モータ32や減速装置34などからなる駆動装置36が収容され、動力ユニット30の下部に保持した1個の前輪38が回転駆動される。
【0034】
動力ユニット30は円筒部40と、この円筒部40の下端に取付けられこの円筒部40より大径な略筒状の前輪保持部42と、円筒部40の上端に設けられた小径円筒状の操向ハンドル取付部44とを備える。円筒部40と前輪保持部42との間には円筒部40の外径方向へ環状に突出する段部46(図13)が形成されている。
【0035】
この段部46には4個の樹脂製のローラ48(図13)が半径方向を中心にして回転自在に装着されている。車体10側に設けた円形の動力ユニット装着孔50の下縁には環状の軸受部52(図3、4)が取付けられている。動力ユニット30はこれらローラ48を軸受部52の下面に転接させることによって車体10に回動可能に保持される。
【0036】
なお円筒部40の下部付近には環状の溝54(図3、4)が形成され、ここに車体10側(動力ユニット装着孔50側)に設けたロック部材56(図6)を係入させることによって動力ユニット30が下方へ抜け落ちるのを防いでいる。動力ユニット30の円筒部40の上部は車体10から突出し、ハンドル取付部44には円形の操向ハンドル58が着脱可能に取付けられている。
【0037】
すなわちハンドル取付部44には半径方向外側に向かって突出するように付勢されたロックピン60、60(図4)が装填され、操向ハンドル58の下部をこのハンドル取付部44に上方から下向きに嵌合した時にこれらのロックピン60、60が操向ハンドル58に係合し、操向ハンドル58が抜けるのを規制する。なお操向ハンドル58を抜く時には、ロックピン60、60を半径方向内側へ押し込んでロックを解除すればよい。
【0038】
前輪保持部42は底面から見て(図6)、縦向きの円筒の左右両縁を垂直に切り取った形状であり、左右両縁は前輪38の車軸支持壁62、62となっている。すなわち前輪38の車軸64の両端はこれら車軸支持壁62、62に軸受で回転自在に保持される。
【0039】
駆動装置36の減速装置34は、図4、10、11、12に示すように、前輪保持部42内に取付けられ、電気モータ32は前輪38の上方に位置する。モータ32の出力軸の回転は、減速装置34の減速歯車群により減速されて車軸64に伝えられる。前輪38はこの車軸64にスプライン結合され、車軸64と一体に回転する。
【0040】
なお減速歯車群の中の1つの歯車には、車軸64に加わるモータ駆動力の大きさを一定以下に規制するトルクリミッタ66が取付けられている(図11)。またモータ32の出力軸は減速装置34の反対側にも突出し、ここに送風用のファン68が取付けられている。従ってモータ32の回転により、ファン68は動力ユニット30の円筒部40に設けたスリット状小孔70(図3参照)から動力ユニット30内に外気を導き、駆動装置36を冷却する。
【0041】
前輪保持部42の車軸支持壁62、62の下縁には、前輪38の左右両側へ所定寸法離れかつ前輪38の下縁より所定寸法高い位置に延出したシュー72、72が固定されている。これらシュー72、72は、前輪38が路面上の溝などに落下した時に接地して、前輪38が溝に深く沈み込むのを防止し、悪路での走行性を向上させるものである。
【車輪配置】
【0042】
動力ユニット30は図1、2、3、5、6などから明らかなように、車体10の中心より前方に位置する。80、80は空転する左右一対の後輪であり、図6に示すように、前輪38と後輪80、80の接地点が底面視で略正三角形を形成する。ここに後輪80、80は前輪38よりも十分に小径であり、車体10の縁に最大限接近させて配置されている。
【0043】
82、82は左右一対の倒れ角規制部材であり、前輪38の左右外側方であって、かつ車体10の外周縁に接近して配置される。これら倒れ角規制部材82、82は、前輪38および後輪80、80を接地させた状態で路面Aから所定寸法離れている(図3、5、9)。この倒れ角規制部材82、82は車体10が斜め前方向に傾いた時に一方の部材82が路面に接地して、車体10がそれ以上大きく傾くのを防ぐ。
【0044】
ここに倒れ角規制部材82、82は、前輪38の中心を通る車幅方向の直線B(図2、6)よりも前方に位置する。車体10が斜め前方に倒れるのを効率良く防ぐことができるからである。倒れ角規制部材82、82は、その下面を下方に向かって凸な滑らかな曲面とし、路面の凹凸に対して滑らかに乗り越えられるようにする。
【0045】
車体10の中央後輪付近には、接地面Aから一定寸法離れて後方転倒防止用の補助車輪84が取付けられている。補助車輪84は、走行中に着座した子供が重心を後方に移動した時などに、前輪38が路面から一定以上浮き上がるのを防止する。この補助車輪84は、左右一対設け互いに結合して一体に回転するようにしておくことにより、車体10の前部が浮き上がった時に、車体10が左右に振れにくくなり、車体10の安定性が向上する。
【0046】
車体10の中央前端、すなわち前輪38の前方には、車体10の前傾を規制する前傾規制部材86が取付けられている。この部材86は前記倒れ角規制部材82と同様に表面が滑らかで摩擦抵抗が小さい樹脂製である。
【制御回路】
【0047】
次に制御回路を図14に基づいて説明する。この制御回路を組込んだ制御部90は、車体10の中央下面(図3)に取付けられている。すなわち着座シート12の前端部下方付近に車体10の下面から固定されている。この制御部90の前方に隣接してメインスイッチ92が取付けられている。すなわちこのメインスイッチ92は、動力ユニット30と着座シート12の間から操作可能である(図3、5)。右側の足載台28には、足で踏んでオン・オフ操作する足動式操作子であるフートスイッチ94が取付けられている。
【0048】
これらスイッチ92、94は、モータ32や電池18と共に制御部90に接続されている。なお図3、6において、96、98は、電池18およびフットスイッチ94を制御部90に接続する配線コードを通すためのコードガイドである。またモータ32は永久磁石式直流モータである。制御部90とモータ32とは、動力ユニット30の円筒部40の外周に設けたスリップリング(図示せず)を介して電気的に接続されている。
【0049】
この制御回路は図14に示すように、スイッチ92、94のオンによってソフトスタート回路100がモータ電流を漸増し一定時間後にリレー102がオンとなってモータ32を電池18に直結する。
【0050】
ソフトスタート回路100は、オペアンプ(演算増幅器)104を持ち、このオペアンプ104の−入力端には、電池電圧をダイオードD2を介して抵抗R6とコンデンサC2で分圧した分圧電圧V6が導かれている。従ってこの−入力端の電圧V6は、コンデンサ108の充電により時間経過に伴って次第に上昇する。オペアンプ104の+入力端にはコンデンサC3の充電電圧V7が導かれている。このコンデンサC3には、モータ32の駆動電圧(電機子逆起電圧)を抵抗R8、R7で分圧した分圧電圧V7が導かれている。従ってこの電圧V7はモータ回転速度の増加に伴って上昇する。
【0051】
スイッチ92および94の少なくとも一方がオフの状態から共にオンになると、コンデンサC2の充電が始まり、電圧V6は0から次第に上昇する。一方モータ電流が流れ始める前は、コンデンサC3の電圧V7も0である。
【0052】
オペアンプ104はV6>V7の時に出力端に負の電圧V1を出力する。この電圧V1はダーリントン接続されたPNPトランジスタQ1、Q2の駆動側トランジスタQ1をオンとし、さらに出力側トランジスタQ2をオンとする。出力側トランジスタQ2は電池18とモータ32の間に介在し、このトランジスタQ2のオンによりモータ電流が流れる。このためコンデンサC3が充電されV7が上昇する。
【0053】
V6≦V7になるとオペアンプ104の出力端電圧V1は正電圧に変化し、トランジスタQ1、Q2はオフとなる。このためモータ電流は遮断される。すると、コンデンサC3は抵抗R7を通して放電されV7は下降する。再びV6>V7になるとモータ電流が流れる。このようにして結局モータ電流はオン・オフする。このためモータ32は静かに起動する。
【0054】
一方オペアンプ104の−入力端電圧V6は、コンデンサC2の充電に伴って徐々に上昇しているから、V6>V7となる時間比率、すなわちモータ電流がオン・オフとなる時間比率(デューティ比)は時間経過に伴って上昇し、モータ32の出力が増大する。
【0055】
コンデンサC2の充電電圧V6は、リレー102を切り換えるためのオペアンプ106の+入力端に導かれる。このオペアンプ106の−入力端には電池電圧を抵抗R1、R2で分圧した分圧電圧V4が導かれている。この電圧V4は一定である一方、電圧V6は前記の通り時間経過に伴って上昇する。オペアンプ106の出力端電圧V2は、始動開始直後からV4>V6の間は正電圧となり、所定時間経過後にV4≦V6になると負電圧になる。出力電圧V2が負電圧になるとリレー102の駆動コイル102aに直列接続されたNPNトランジスタQ3がオンとなり、リレー102が励起される。このためリレー102はトランジスタQ2を短絡し、モータ32と電池18を直列接続する。
【0056】
このようにしてスイッチ92、94がオンになるとモータ電流はオン・オフ制御され、時間経過と共にそのデューティ比が増大してモータ電流が増えていく。そしてコンデンサC2の充電電圧V6が一定以上(V6≧V4)になると、リレー102がオンとなり、モータ32は電池18と直結される。
【0057】
なおこの図14の回路図で、コンデンサC1およびダイオードD1はノイズ吸収用であり、回路を保護する。またこの実施例においては他の電子回路も設けている。まず操向ハンドル58の中央には、ホーンユニット108が取付けられている。このホーンユニット108は上面のプッシュスイッチを押下することによりチャイム音などメロディを奏でる音色を発生させる。動力ユニット30の前方には車体10に上方から発音ユニットとしてのチャイムユニット110が埋め込まれている。このチャイムユニット110は例えば車体に衝撃が加わった時に、様々に変化する興趣に富む音色を発生し、発光素子を発光させる。またこのチャイムユニット110には、車体10が壁などの障害物に当たった時の衝撃を感知する衝撃センサ(110A(図3)を設け、衝撃を感知した時に警告音やチャイム音、メロディ音などを発生するようにしてもよい。衝撃を検出するセンサは、車体10の外周縁に設けてもよい。この場合のセンサは、テープ状の接触センサ110B(スイッチ)を、車体外周縁に沿って取付けた緩衝材112の中に取付けたものでもよい(図3)。衝撃が加わる場所や衝撃の大きさによって、発生する音の音色やメロディを変えたり、音の大きさを変えてもよい。
【走行動作】
【0058】
この車に乗る子供は、着座シート12に着座し、両足を足載台28、28に置き、メインスイッチ92をオンにする。そして右足でフートスイッチ94を踏めば、モータ32に電流が流れ始め、ソフトスタート回路100の作用によりモータ電流は0から次第に増大する。このため車体10は衝撃を生じることなく静かに発進する。右足をフートスイッチ94から浮かせてフートスイッチ94をオフにすればモータ電流が遮断される。従ってモータ32は停止する。
【0059】
走行中に車体10が壁などに当たると、その衝撃を検出してチャイムユニット110が音や光を発生する。またこの時に車体10の走行が障害物によって強制的に規制される場合には、駆動装置36のトルクリミッタ66がカチカチ音を発生し、注意を促すことができる。子供はこの時には操向ハンドル58を廻して前進方向を変化させることにより車体10を障害物から脱出させることができる。動力ユニット30はスリップリングで制御部90に接続されているから、360°回転可能である。このためモータ32を逆転させることなく、操向ハンドル58を回転するだけで車体10の方向を左右および後方へも変えることができ、電気回路を簡単にすることができる。
【0060】
走行中に車体10が左右に傾くと、傾いた側の倒れ角規制部材82が路面に接触し、車体10が過大に倒れるのを防止する。またこの倒れ角規制部材82の下面は滑らかで滑り易いので、路面上を滑らかに滑ることができる。このため安定して走行を続けることができる。また車体10の前部が浮き上がった時には車体後部に設けた補助車輪84が接地して過大な浮き上がりを防止する。車体10の後部が浮き上がった時には車体前部に設けた前傾規制部材86が接地して過大な浮き上がりを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施例の外観を示す斜視図
【図2】同じく平面図
【図3】図2におけるA−A線断面図
【図4】同じくB−B線断面図
【図5】同じくF−F線断面図
【図6】この実施例の底面図
【図7】図6におけるC−C線断面図
【図8】同じくD−D線断面図
【図9】同じくE−E線断面図
【図10】駆動装置を抜き出して示す正面図
【図11】その縦断面図
【図12】図10におけるG−G線断面図
【図13】動力ユニットの平面図
【図14】電気回路図
【符号の説明】
【0062】
10 車体
12 着座シート
12a 上面(着座面)
12b 後縁
12c、12d 側縁
18 電池
28 足載台
30 動力ユニット
32 電動モータ
34 減速装置
36 駆動装置
38 駆動前輪
40 円筒部
42 前輪保持部
44 操向ハンドル取付部
58 操向ハンドル
66 トルクリミッタ
80 後輪
82 倒れ角規制部材
84 補助車輪
86 前傾規制部材
90 制御部
92 メインスイッチ
94 フットスイッチ(足動式操作子)
100 ソフトスタート回路
110 チャイムユニット(発音ユニット)
110A 衝撃センサ
110B 接触センサ
112 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の操向前輪と左右一対の後輪とを備える子供用電動乗用玩具において、
前輪および後輪を覆い上面が上方へ凸で外周が平面視滑らかな曲面形状である車体と、
この車体の前部を上下方向に貫通して左右へ回動可能に保持されると共に下部に保持した前輪を回転駆動する駆動装置を内蔵する動力ユニットと、
この動力ユニットの上端に取付けられた操向ハンドルと、
車体の後部上面から上向きに突出しその上面を着座面とした着座シートと、
動力ユニットの左右両側方に位置し車体の上面を下方に陥没させて形成した左右一対の足載台と、
を備えることを特徴とする子供用電動乗用玩具。
【請求項2】
車体は上面が凸な略球面状であり外周が平面視略円形である請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項3】
着座シートは上方へ着脱可能であり、この着座シート下方の車体内に電池が装填されている請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項4】
着座シートの上面は後縁および左右側縁から上面の中央付近に向かって滑らかに下降するように陥没している請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項5】
前輪の左右外側方であってかつ車体下面の外周縁に近接する位置に、車体の左右方向の倒れ角を制限する左右一対の倒れ角規制部材を備える請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項6】
倒れ角規制部材は前輪の中心を車体幅方向に通る直線よりも前方に位置する請求項5の子供用電動乗用玩具。
【請求項7】
倒れ角規制部材は下方に向かって凸な滑らかな曲面を持っている請求項5の子供用電動乗用玩具。
【請求項8】
左右一対の倒れ角規制部材と左右一対の後輪とは、平面視で略円形の車体の外周付近に位置する請求項5の子供用電動乗用玩具。
【請求項9】
車体下面の中央後縁付近には、車体前部が上昇して前輪が路面から一定以上浮き上がった時に路面に接触する後方転倒防止用の補助車輪が取付けられている請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項10】
動力ユニットは円筒部と、この円筒部の下端に取付けられた前輪保持部と、この前輪保持部に保持された前輪と、円筒部の上端に設けられた操向ハンドル取付部と、電動モータによって前輪を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記円筒部が車体を下方から上向きに貫通して車体に回動自在に保持されている請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項11】
駆動装置は前輪に加わる電動モータによる駆動を一定以下に規制するトルクリミッタを備える請求項10の子供用電動乗用玩具。
【請求項12】
一方の足載台には、電動モータを制御するための足動式操作子が取付けられている請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項13】
車体には衝撃を検出する衝撃センサと、この衝撃センサが車体に加わる衝撃を検出すると音を発生する発音ユニットとを備える請求項1の子供用電動乗用玩具。
【請求項14】
衝撃センサは車体の外周に取付けた帯状の接触センサである請求項13の子供用電動乗用玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−82817(P2007−82817A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276233(P2005−276233)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(598139793)アイデス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】