説明

子宮内避妊器具

キャリア本体と活性金属合金とを含み、前記活性金属合金が下記一般式で表される子宮内避妊器具;ZnCuMnAu(I)、又はZnCuMnAg(II)、ここで、x+y+z+k=100重量%、xは約18から30重量%の範囲、zは約0.5から3重量%の範囲、kは約3から12重量%の範囲、yは残りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア本体及び亜鉛、銅、マンガン、金及び/又は銀を含む活性金属合金を含む子宮内避妊器具(IUD)に関する。
【背景技術】
【0002】
活性金属として銅を含む子宮内器具の使用は1970年代から知られている。米国特許第4198966号明細書及び米国特許第4353363号明細書は一つの側面にアームを備え及び反対の側面に活性成分として銅を含む糸を備えた支持体を含む子宮内避妊器具を説明する。銅でできたワイヤは支持体上部にらせん形態で巻きつけられる。銅は精子に対する殺精子剤機能を有する。3から5年にわたって信頼性がある否認効果を得るには200mm超の銅の使用が必要であることも知られている。
【0003】
米国特許第4562835号明細書は、避妊のためにも使用される、そのアーム上に銅のスリーブを有し、らせん状に曲がった銅ワイヤを有するT型の子宮内器具を開示する。
【0004】
従来技術の子宮内避妊器具の一つの既知の欠点は、通常経血が10から35mL増加し、通常より2から4日長く続くことである。他の既知の欠点は感染のリスクの増加であり、特に生殖器の感染又は伝染されたバクテリアによって起こる感染の増加である。
【0005】
活性成分としての亜鉛及び銅の組み合わせは、子宮内器具の避妊効果を増大することも知られている。MendelはJ.Gynaecol Obstet、14、494−498(1976)において30mmの銅及び47mmの亜鉛を有する器具は、単に200mm以上の銅のみを含む器具と比較して高い避妊効果を提供することを説明している。器具内部で、亜鉛及び銅ワイヤは、二つの金属が接触することなく、キャリア本体上部に巻きつけられる。しかしながら、そのような器具の寿命は、生体内で使用される場合、15ヶ月使用後の不規則な組織学的所見に起因して2、3ヶ月に低減される。したがって、この器具の現実的な実用性は明らかにできなかった。さらに、Mendelは試験された器具間で記録された出血及び痛みの除去の割合において有意の差異はなかったことを報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4198966号明細書
【特許文献2】米国特許第4353363号明細書
【特許文献3】米国特許第4562835号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Gynaecol Obstet、14、494−498(1976)
【非特許文献2】Sneed−Maynard−Brasted:Comprehensive Inorganic Chemistry.Copper,Silver and Gold.D.,Van Nostrand Comp.,Inc.,Toronto,New York,London,1945
【非特許文献3】Die oligodynamische Wirkung der Metalle und Metallsalze,Berlin,Springer,1924;Umschau:55,192(1955);Sci.Pharm.24,171(1956)
【非特許文献4】Pearl R.,Contraception and fertility in 2,000 women,Human Biology 1932,4:363−407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、避妊効果が増大し、同時に従来技術で知られる子宮内避妊器具と比較して短くかつ軽い月経を起こす子宮内器具を提供することである。本発明のさらなる目的は、腹部領域の感染のリスクを最小限に減らす子宮内避妊器具を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
双方の問題は、キャリア本体及び活性金属合金を含む子宮内避妊器具によって解決され、前記活性金属合金は以下の化学式を有する。
ZnCuMnAu (I)、又は
ZnCuMnAg (II)
ここで、x+y+z+k=100重量%であり、xは約18から30重量%の範囲であり、zは約0.5から3重量%の範囲であり、kは約3から12重量%の範囲であり、yは残りである。
【0010】
化学式(I)及び(II)は、金及び銀が組み合わされて存在する合金も含む。そのとき、金及び銀の重量パーセントの合計は、約3から12重量%である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、活性金属合金はワイヤ形状をしている。これによって、特に子宮内避妊器具の完成までの、活性金属合金の容易かつ問題ない取り扱いが可能になる。
【0012】
活性金属合金は、少なくとも亜鉛、銅、マンガン、金又は銀又は金及び銀、を含む合金を形成するのに適切な任意の方法で調製することができる。好ましくは、活性金属合金は、溶融及びメルトスピニング後ワイヤを形成し、従来技術で当業者に知られる方法を用いて曲げることによって調製される。そのような方法は、例えば、Sneed−Maynard−Brasted:Comprehensive Inorganic Chemistry.Copper,Silver and Gold.D.,Van Nostrand Comp.,Inc.,Toronto,New York,London,1945内部に/によって説明される。
【0013】
活性金属合金のワイヤの平均直径は、約0.25〜0.4mmの範囲、好ましくは約0.3〜0.4mm、最も好ましくは約0.3mmである。
【0014】
本発明の活性金属合金に存在するマンガンは、一方では亜鉛含量18重量%以上の合金を形成するのに必要であり、他方では月経に対する改良効果を強化すると考えられる。
【0015】
生殖器の機能を調整するホルモンの重要な成分である、及び血液の凝固における重要な支配成分であるビタミンKの共因子でもあるマンガンの存在に起因して、活性成分として単に銅を含む子宮内避妊器具を使用する間起こる出血と比較して、本発明の子宮内避妊器具を使用する間、経血は2から4日短く、20から60%弱い。
【0016】
マンガンの他の効果は、もしも銅、亜鉛、金又は銀又は金及び銀を含む合金の製造工程の間マンガンが存在しない場合、単に亜鉛が最大17重量%の合金が調製され得ることである。亜鉛含量が17重量%以下の合金は避妊効果の増大、及び同時に短くかつ軽い月経の誘起に対して、匹敵する効果をもたらさない。これらの効果を得るには最低18重量%の亜鉛が必要である。マンガンの存在下で活性金属合金の亜鉛含量は約30重量%まで増加され得る。一方で、マンガンは月経に対する改良効果を強める。
【0017】
特定の理論に拘束されることを望まないが、月経期間及び精子に対する活性成分の殺精子機能は以下のように説明される:現在の活性金属合金内部の銅及び亜鉛は避妊効果成分として働く。器具が子宮内に配置されるとき、金属合金は子宮内に存在する液体と接触させられる。結果的に、多数のガルバニ電池は増大される。これらの電池のアノードが合金のより電気陰性度が高い成分、銅及び亜鉛を含有する一方で、金又は銀又は金及び銀がカソードになる。ガルバニ効果に起因して、アノードの金属はイオンを形成することによって溶解される。そのようにして、銅及び亜鉛は避妊効果を発現させる。しかしながら、カソードは実際的に変化しないままである。本発明によるアノードの金属の電気化学的な溶解は、活性成分として単に銅を含む器具内部で起こる自発的な銅の溶解と比較して、より強いわけではない。それにも関わらず、銅、亜鉛、マンガン、及び金又は銀、又は金及び銀の存在は、活性成分として単に銅を備えた従来技術の子宮内避妊器具と比較して、一方で、避妊効果を強め、他方では短く及び軽い月経を起こすという相乗的な効果をもたらす。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、x+yは約93重量%、より好ましくはxは約24重量%、yは約69重量%である。
【0019】
本発明の器具の内部の亜鉛及び銅の1日あたりの放出は、亜鉛イオン約48から72μg、及び銅イオン約200から280μgの範囲である。本発明の好ましい実施形態では、亜鉛イオンの一日あたりの放出は約60μgであり、銅イオンは約240μgである。
【0020】
上述の性質に起因して、本発明の子宮内避妊器具が高い信頼度で妊娠を防ぐ期間は5年まで延びた。
【0021】
本発明の器具内の金又は銀又は金及び銀の存在によって起こる上述の相乗的効果の他に、金及び銀は殺菌性及び殺真菌性を有する。金及び銀の殺菌性及び殺真菌性は、それらの微量なオリゴダイナミカル溶解に基づく。用語「オリゴダイナミカル溶解」は、金属が微量溶解することを意味する。例えば、金及び銀の場合、オリゴダイナミカル溶解は0.04〜1μg/mlである(Die oligodynamische Wirkung der Metalle und Metallsalze,Berlin,Springer,1924;Umschau:55,192(1955);Sci.Pharm.24,171(1956))。
【0022】
感染の危険、特に生殖器の感染又は伝染されたバクテリアによって起こる感染の増加、を最小限に低減するために、金又は銀又は金及び銀の混合物は、約3〜12重量%の範囲で、好ましくは約6重量%存在しなくてはならない。
【0023】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、活性金属合金の組成物は以下のようなものである。
亜鉛 24重量%
銅 69重量%
マンガン 1重量%
金又は銀 6重量%
【0024】
前述の段落に記載されたような子宮内避妊器具の避妊効果は99.5%よりも高く、Pearl指数0.5と同等である。Pearl指数 Rは、一般に認められた避妊効果の測定値である。これは100女性年の使用あたりの妊娠率を表し、Pearlの公式R=P×1200/Mに従って計算され、ここで分子は偶発的な妊娠数に1200を掛けた数であり、分母は調査に含まれる全ての夫婦によって寄与される全ての月数の総計である(Pearl R.,Contraception and fertility in 2,000 women,Human Biology 1932,4:363−407)。
【0025】
本発明の器具のキャリア本体は一側にアームを、及びボディの反対の側には標識糸(indicator thread)を備える。本発明によれば、活性金属合金はアームと標識糸との間に配置されたキャリア本体の一部の周囲に配置される。
【0026】
好ましい実施形態において、活性金属合金はワイヤ型であり、ヘリカル形態のキャリア本体上部に配置される。これは、銅及び亜鉛イオンの放出が定常的に及び均一な様式で起こるという有利な点を有する。ヘリカル形態は実施が容易であり、合金に最大の表面を提供し、さらに、この場合それは精子をトラップするためのギャップを含む。
【0027】
本発明の子宮内避妊器具のキャリア本体はプラスチック、好ましくは柔軟性を有するプラスチックで出来ている。プラスチックは、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される。
【0028】
好ましい実施形態において、キャリア本体はポリエチレンで作られる。ポリエチレンは、子宮内に存在する液体に対して不活性であるという有利な点を有する。さらに、ポリエチレンで作られる本体は、ここで請求されるような子宮内避妊器具内部でキャリア本体として使用されるのに十分な柔軟性を提供する。
【0029】
本発明の子宮内避妊器具の標識糸は、本発明の用途に関連して任意の適切な材料であってよい。好ましくは、材料は合成材料から作られる。より好ましくは、ポリエステルからなる群から選択される柔軟な合成材料である。
【0030】
糸の直径は0.19から0.25mmの範囲であってよい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、モノフィラメントのポリエチレン糸が使用される。このモノフィラメントのポリエチレン糸は、好ましくは直径0.225mmである。
【0032】
一般的に、キャリア本体のアームは子宮内に配置されたとき子宮内避妊器具の不慮の損失を防ぐのに適した任意の形態、例えばT−又はV−形態、であってよい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、アームは卵管に向かって伸びる方向を向いて配置される。
【0034】
キャリア本体、各アーム、及び糸は本発明に適切な任意の寸法であってよい。一般的に、本発明の子宮内避妊器具のキャリア本体、そのアーム、及び糸等の正確な寸法は個々の子宮のサイズに適合させられる。
【0035】
本発明によれば、子宮内避妊器具は任意の挿入管及び押すためのスティックを用いて当業者に知られる任意の方法で子宮内部に挿入されてよい。
【0036】
図1は本発明による子宮内避妊器具の可能な実施形態を示す。キャリア本体1は一方にアーム2を、他方に標識糸3を備える。活性金属合金4は、好ましくはアームと標識糸との間に位置するキャリア本体1の一部上にヘリカル形態でワイヤのかたちで巻きつけられる。
【0037】
以下の表は、本発明のZnCuMnAu(I)−IUD、及び/又はZnCuMnAg(II)−IUDの有効性を、従来技術のCu−IUDと比較する。本発明のIUDは有利に低いPearl指数、すなわち従来技術のIUDと比較して、短縮された月経期間と共に増加した避妊効果、を与える。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明の他の目的は、下記一般式の金属合金を使用することである。
ZnCuMnAu (I)、又は
ZnCuMnAg (II)
ここで、x+y+z+k=100重量%であり、xは約18から30重量%の範囲であり、zは約0.5から3重量%の範囲であり、kは約3から12重量%の範囲であり、yは残りであり、子宮内器具内で精子に対する殺精子機能を有する。
【符号の説明】
【0040】
1 キャリア本体
2 アーム
3 標識糸
4 活性金属合金
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア本体と活性金属合金とを含み、
前記活性金属合金が下記一般式で表されることを特徴とする子宮内避妊器具;
ZnCuMnAu (I)、又は
ZnCuMnAg (II)
ここで、
x+y+z+k=100重量%、
xは約18から30重量%の範囲、
zは約0.5から3重量%の範囲、
kは約3から12重量%の範囲、
yは残りである。
【請求項2】
x+yが約93重量%である、請求項1に記載の子宮内避妊器具。
【請求項3】
前記キャリア本体が一方にアームを備え、前記本体の反対側に標識糸を備える、請求項1又は2に記載の子宮内避妊器具。
【請求項4】
前記キャリア本体はプラスチックで作られる、請求項1から3の何れか一項に記載の子宮内避妊器具。
【請求項5】
前記プラスチックがポリエチレンである、請求項4に記載の子宮内避妊器具。
【請求項6】
前記標識糸がモノフィラメントポリエステル糸である、請求項4又は5に記載の子宮内避妊器具。
【請求項7】
前記活性金属合金がワイヤ形状である、請求項1から6の何れか一項に記載の子宮内避妊器具。
【請求項8】
前記活性金属合金がヘリカル形態で前記キャリア本体上部に配置される、請求項7に記載の子宮内避妊器具。
【請求項9】
下記一般式を有する金属合金の使用;
ZnCuMnAu (I)、又は
ZnCuMnAg (II)
ここで、x+y+z+k=100重量%、xは約18から30重量%の範囲、zは約0.5から3重量%の範囲、kは約3から12重量%の範囲、yは残りであり、子宮内避妊器具内で精子に対する殺精子機能を有する。

【公表番号】特表2010−504296(P2010−504296A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528646(P2009−528646)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008202
【国際公開番号】WO2008/034619
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509079488)
【Fターム(参考)】