説明

子宮活動の監視

子宮活動を検出するための装置と方法は、胎児および母体心拍数を得るために使用することができる電気生理学的信号を取得するために母体腹部上の皮膚電極を使用する。本装置は、皮膚電極から電気信号を受信するための第1の入力と、運動検出器から母体の運動を示す運動信号を受信するための第2の入力と、を含む。信号処理装置は、胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、運動信号を使用することにより筋電図から運動アーチファクトをフィルタで除去する。出力は、子宮筋電図信号からの子宮筋電図(EHG:electrohysterogram)データを提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、産前と分娩の両方の期間のヒト胎児と妊娠中の母親の健康の長期的監視および検出に好適な装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
聴診(人体の内部音響を聴く能力)は、何世紀にもわたって、鼓動するヒト心臓を検出するための周知の方法であった。胎児期を診断する技術の使用は、1816年の聴診器の発明と共にLaennecにより19世紀前半に最初に開発された。これは、胎児心拍数(FHR:fetal heart rate)を監視することにより胎児の健康状態(fetal wellbeing)を強調表示するその可能性が臨床的に認識されたので、聴診器聴診法のさらなる発展の時代の先駆けとなった。どの時点の助産介入が分娩時胎児死亡の事例を低減するのに役立ち得るかに関する指標を、FHRの変化が提供できることは明らかだった。1876年にPinardは彼のバージョンの胎児聴診(これは今日なお使用されている)と基準(この時前後に設定された)を導入した。正常FHRと言われるものは次の70年間実質的に変わらなかった。20世紀が始まるまでに、これは聴診によりFHRを監視するための慣例となった。
【0003】
母親の腹部に置かれた皮膚電極を使用した初期の腹部心電図技術は、母体のリズム(すなわち母体ECG)をうまく破棄することができなかった。この問題は胎児頭皮電極の導入により1960年に漸く回避された。この場合、頭皮クリップ電極が赤ん坊の頭に軽く取り付けられる。しかしながらこれは母親の膜組織が破れた場合だけに使用できる。
【0004】
さらなる進歩はドップラー効果の利用により1960年代になされた。ここでは波の周波数の変化(波の源に対して移動する観察者により感知される)がFHRの検出に適用された。4年後、ドップラー超音波法を使用した最初の電子式胎児監視装置(EFM:electronic fetal monitor)が導入された。
【0005】
ドップラー超音波技術は、2MHz(または他の同様な周波数)クリスタル変換器を母親の腹部上の胎児に当てることからなる。胎児から反射された信号は、胎児の心臓の鼓動による小さな周波数だけシフトされ(ドップラー・シフトとして知られる)、したがって適切な処理後、胎児心拍数(fHR:fetal heart rate)トレースが生成される。携帯型ドップラー・システムが存在するがすべての単一チャネル・ドップラー・システムと同様に、変換器は胎児の心臓を指すために定期的に再配置されなければならなく、これは臨床的に訓練されたスタッフの介入を必要とする。したがってこのようなシステムは短期間の病院環境内の使用に限定される。さらにドップラー超音波技術は平均化されたfHRだけを提供するが、心拍毎変動性(beat-to-beat variability)、胎児心電図(fECG:fetal electrocardiogram)合成物の形で含まれるような形態、子宮収縮、および長期間にわたるこれらパラメータの変化に関する情報を与えない。
【0006】
Shono et al''Fetal heart rate recorder for long-duration use in active full-term pregnant women'', Jnl of Obstetrics and Gynecology, 1994 83, 2には、胎児が子宮内のどこへ移動しても胎児の心臓を監視するように母親の腹部に配置された6つの超音波振動子からなる多チャンネル・ドップラー・システムについて記載されている。しかしながらこれは煩わしく、平均化された胎児心拍数変動性(fHRV:fetal heart rate variability)の長期的研究は可能であったが、その技術は侵襲的であり、胎児の連続的超音波照射については不安がある。
【0007】
FHR(胎児の頭皮ECGまたはドップラー超音波法のいずれかによる)の電子監視と胎児血液酸ベースの監視とを組み合わせることにより、FHR特異度の増加を可能にし、この結果1960年代末期までに連続的電子FHR監視の助産利用の急速な増加を直接もたらした。
【0008】
通常は携帯型ドップラー監視装置を手段としてPinard聴診器およびEFMを使用する断続的聴診が、出産前の期間中に胎児を監視するために利用される。しかしながら陣痛中は、正常妊娠に続く胎児の監視が断続的聴診を手段としていることが分かった。いくつか国々と地理的領域では、連続的EFMは、危険性が高いと考えられる妊娠に使用されることができ、一方他の国々ではこのような技術はルーチン的なものと考えられている。時には、胎児の頭皮電極を利用することにより、より正確なFHR形態を使用することが必要である。しかしながら、もちろんこれは分娩期(すなわち母親の膜組織が陣痛中に破れた場合)中だけに発生してよいが、伝染病に至る可能性がある。
【0009】
EFM2秒(および3.75秒)の平均胎児心拍数読み取り値の解釈は極めて主観的である。いくつか国々は、短期変動(STV:short term variation)(加速/減速の数等)を決定するためのあつらえのソフトウェアを利用する。他の国々はDawes and Redman(System 8002)のアルゴリズムを使用してきたおよび/または適応させてきた。この解析ソフトウェアは通常、出産前の期間中に配備され、したがって陣痛および分娩中は配備されない。ドップラー超音波法により取得された胎児心拍数データが3.75秒もの長いエポックにわたる平均値であるというまさにこの事実は、より高い周波数変動性が除かれることを意味する。したがって真の心拍毎変動性に関する知識は得られない。その結果、STV技術は胎児仮死の発現を評価する際に感度を欠く可能性がある。その結果、胎児採血(FBS:fetal blood sampling)は問題のある陣痛中にしばしば使用される。ここでは少量の血液が胎児の頭皮から取られる。試料中に存在する酸素のレベルが胎児の健康状態の評価を直接示す。しかしながら感染症が発生する可能性がある。
【0010】
しばしば、胎児血液試料に取り掛かる能力は母親が出産前の期間にあるという事実のために制限され、胎児にルーチン的に到達する能力は膜組織が破られないので可能ではない。さらに、連続的FHRの記録は、変換器の動きと超音波振動子の侵襲的性質とのために、ドップラー超音波法で取り掛かるのが困難である。したがって3.75秒(または2秒)STVの進展を、連続的臨床管理無しに追跡することができない。この問題は、心拍毎STV(ここでは真のSTV(TSTV:true STV)と呼ばれる)がドップラー胎児心拍陣痛図(Doppler cardiotocograph)により測定可能でないということにより悪化する。TSTVは、RMSSD(すなわち、RR期間の連続的差異の二乗平均平方根)、心拍毎データのスペクトル分析、および多スケール・エントロピー解析等の成人ECG等価物を使用することにより測定される。成人におけるこのようなパラメータは交感神経および副交感神経活動を反映する成人の神経機能の健康状態を示し、したがってこれを可能性として胎児の発育と胎児の健康状態上にマッピングすることができるであろう。
【0011】
これもまたルーチン的に監視されるさらに重要なパラメータは、子宮活動(UA:Uterine Activity)と単に呼ばれる母体子宮の活動または収縮である。母体腹部のUAを監視することにより、胎児が各収縮の影響に耐えることができるということを臨床医が評価できるようにする。収縮中、胎盤血供給は瞬間的に遮断される。ほとんどの胎児は血液供給のこの遮断に十分に対処するが、それが困難な胎児(すなわち、妊娠中に物理的に成熟していない胎児、または母親が子癇前症等を有する胎児)が存在する。このためUAは胎児の危険性したがって胎児の健康状態を測定する有効な方法である。
【0012】
UAは、子宮筋の収縮により引き起こされる母体の子宮内圧(IUP:Intrauterine Pressure)を監視することにより測定されることができる。このIUPは子宮の内部に内圧力変換器を置くことにより測定される。しかしながらこの技術は侵襲的であり、母親の膜組織が破れたときに一回だけ実行できる。
【0013】
UAを記録するための一般的な非侵襲性方法は、陣痛中に臨床医が胎児仮死を検出するのを支援する目的の胎児心拍陣痛図(CTG:Cardiotocograph)の手段による。CTGは子宮収縮(toco)とFHR(cardio)の両方の記録を生成し、後者のパラメータは2秒または3.75秒平均値の形式である。FHRは母体腹部に置かれたドップラー超音波変換器を使用することにより検出される。UAは、母親の腹部に置かれた第2の外部変換器(陣痛計と呼ばれる歪みゲージ)を使用することにより測定される。しかしながら外部歪ゲージ陣痛計と超音波振動子の両方の使用は、母親にとって不快となる可能性があり、肥満女性の上で使用されると信頼性が低いことがしばしばある。
【0014】
要約として、胎児心拍数の記録は、外部腹圧変換器を使用することにより収縮も検出するドップラー超音波法CTGマシンにより通常行なわれる。超音波振動子から検出された心拍数は、2または3.75秒平均値の形式であり、真の心拍毎変動性を明らかにしない。さらにCTGは、伸縮性ベルトにより母親に取り付けられる2つの比較的大きな変換器を含むので母親にとって煩わしく不快である。
【0015】
妊娠中の腹部電気生理学
母体腹部に皮膚電極を置くことにより、極めて適切で、非侵襲的かつ目障りでない技術を妊娠中に使用することができる。これらの電極は正しく配置されると、子宮筋電図(EHG:Electrohysterogram)と呼ばれる信号だけでなく母体ECG(mECG:Maternal ECG)と胎児ECG(fECG:fetal ECG)も検出することができる。EHGは子宮の収縮の直接的な結果である。
【0016】
したがって単一対の腹部の電極においては、胎児心拍数、子宮活動および母体心拍数を検出し、これにより母親にとって携帯可能でかつ目障りでないCTG装置を提供することが可能である。
【0017】
実際にこれらの腹部電極により検出されるEHGは子宮筋電図(EMG:uterine electromyogram)信号を検出する。この信号は早くも1950年には検出された(Steer and Hertsch, Amer J Obst Gynec, 59, 25 (1950))。Gondryらは、EHGが妊娠の第18週から検出できることと、その振幅がその時点以降増加するということ、とを報告した(1993)。Devedeux et al, Am J Obstet Gynecol, 1993, ''Uterine Electromyography: A Critical Review''では、子宮内に置かれた内圧力変換器を使用することにより測定されるIUPの増加が間接的EHG測定と同期して発生するということを報告した。
【0018】
Marque et al''Uterine EHG Processing for Obstetrical Monitoring''IEEE Trans Biomed Eng, pp 1182-1186, Dec. 1986, vol. BME-33, No.12では、EHGが低速波と高速波の2つの信号を含むことを報告した。低速波は0.5mV〜15mVの振幅を有し0.01〜0.03Hzの範囲である。高速波は、それぞれ0.02mV〜0.5mVの振幅を有し0.2から3Hzまで変化する。IUPと同期するのは低速波であり、高速波は振幅変調された信号の形式で低速波上に重畳される。高速波の周波数はさらに、すべての収縮中に常に存在する低周波数帯(0.2Hz〜0.8Hz)と、効率的な出産収縮に関係する高周波帯域(0.8〜3Hz)とに分けられることができる。ここでの結論は、「高速波により変調された低速波に対応する周波数帯において腹部活動が観察されたときだけ本物の子宮EMG活動を実証する」と言えることであった。
【0019】
Nagel and Schaldach, ''Processing Of Abdominal Lead Ecg And Emg In Perinatal Monitoring'', Physics In Medicine And Biology, vol 5, iss 5, p 959, 1980では、母体および胎児ECGからの干渉の抑制が実現可能であると報告した。彼らは、通常はEHGの一部であると認められるものよりさらに高い周波数成分(150Hz〜250Hz)を利用する場合これが可能であると主張した。このようにして腹壁のEMGの成分を測定することができ、この領域の収縮がまたIUPの増加に寄与すると主張している。
【0020】
一般的には、いかなる測定技術がUAを記録するために利用されても、UAは単位時間当たりの収縮数により定量化される。陣痛の第1段階の初期では、理想的周波数は各10分間中2または3回の収縮であろう。この収縮速度は、第1段階の後期では同10分間中4または5回まで増加するだろう。あまり頻繁でない収縮は、より長い陣痛をもたらすことがしばしばある。この場合、胎児はさらに高い危険性に晒される。逆に、10分毎を上回る収縮速度は、胎児が収縮間に自身に再酸素負荷をかける能力に悪影響を及ぼすことがある。
【0021】
収縮の定量化測定はモンテビデオ(Montevideo)単位により定義されるものである。これはRoberto Barcia and Hermogenes Alvarez, from Montevideo, Uruguayにより1949年に作成された。この単位は、基線の上の子宮圧を測定し10分間中の収縮数を掛け算することにより計算される。この測定結果を得るために、子宮内圧カテーテルを介し子宮圧を測定しなければならない。例えば子宮圧が基線の上の50mmHgであり、10分の測定期間中に4回の収縮が発生する場合、モンテビデオ単位(MVU)の合計は200MVUである。一般的には200MVUを越える値が、段階2期間の適切な陣痛に必要であると考えられる。したがってこれらの単位は収縮数と収縮強度(mmHg)の両方を示す。
【0022】
収縮の効率を確かめることも重要である。収縮効率を評価する際の要素は収縮の期間である。当初、陣痛の第1段階では、収縮の期間は持続時間が30〜60秒かもしれない。これは、第1段階および第2段階の後期では90秒まで増加することがある。
【0023】
IUPセンサを利用することにより収縮強度を直接測定することだけが可能であるが、子宮トーンと基本トーン(basal tone)の手動評価(触診)は、オキシトシン注入中の評価と、疑わしい胎盤剥離がある場合の評価と、を支援するための重要な情報をもたらす可能性がある。収縮強度はまた、検出されたEMG電圧の最大振幅という意味での結果として生じるEHG信号の大きさの形で子宮筋電図から測定されることができる。
【0024】
IUPが30mmHgを越えた場合、胎盤血流は一時的に阻止され、これは胎児と母親間のガス交換の遮断を引き起こすことになる。このような遮断に続いて、胎児は、正常血液ガスを回復するのに60〜90秒間必要とする。陣痛ストレスを克服するための胎児の素質はしばしば、収縮中に発生する変化に対処する能力に等しい。陣痛の長さ(暗示的には胎児が時々の可能性として低酸素の瞬間に晒される時間の長さ)は分娩時低酸素症に密接に関係する1つの主要問題である。第2期では、母親が活発に押している時間の長さは、分娩時低酸素症の危険性を評価する際に常に考慮されなければならない。
【0025】
出産前の期間における長期的非ストレス試験
出産前の期間における胎児の健康を産科医が評価するためのいくつかの技術が利用可能である。これらは次のように要約される。
1.収縮ストレス試験
ここではFHRが収縮に応じて測定される。これらの収縮は通常、オキシトシンの静脈内投与または外部乳首刺激により人為的に発生される。酸素供給が不十分な胎児はFHRの低下を示す。
2.非ストレス試験
FHR変動性は人為的刺激により測定される。健康な胎児のFHRは、20〜40分間のデータ記録中のある段階で一時的増加(反応性トレースと呼ばれる)を経験しなければならない。NST試験時間を低減するために音響刺激を使用することができる。
3.胎動評価
胎動の不足は胎児仮死の可能な指標である。胎動を測定する技術は、母親により記録される胎動数、超音波画像診断、ドップラー超音波法、および胎児ECG形態学的変化等を含む。
4.生物物理学的プロフィール
これは、NST、胎児の呼吸運動、胎児の体と手足の運動、胎児の四肢の伸長、および羊水体積の測定値に基づき胎児の健康状態に割り当てられた「点数」である。
5.修正版生物物理的プロフィール
指標としての羊水体積の測定結果は4象限のそれぞれにおける流体体積の和に等しい。この測定結果は次にNST点数と組み合わせられる。
6.臍動脈ドップラー流速器
これは、臍帯中の血流を測定するためにドップラー超音波法撮像を使用する。この測定結果は、胎児に発生している酸素の投与レベルを示す。
【0026】
EHGおよび胎動と組み合わされた数時間にわたる長期的やり方でNST測定結果の自動取得を可能にすることが有利だろう。これにより時間の関数としての胎児配置の観察を可能にし、胎児の健康状態を連続的に再確認する。これは、それぞれが24時間離れた20分記録であることがしばしばある断続的技術であるので、ドップラー超音波法CTGでは可能ではない。これは厳しいアンダーサンプリングを意味し、したがってFHR反応性の悪化と低下のエポックを見逃す可能性がある。
【0027】
母体腹部に置かれた皮膚電極を使用することにより胎児および母体心電図を検出する能力は、欧州特許第1220640号明細書と欧州特許第1680018号明細書に適切に記載されている。この技術により、2または3.75秒平均値を使用した長期的FHRおよびMHR測定が可能となる。したがってこの技術はNSTだけでなくこれらの悪化エポックを検出するための理想的な方法と装置を提供し、したがって長期的NSTを提供する。
【0028】
しかしながらこの技術は次の3つの重要な抽出パラメータを欠く。
1.短い記録と長い記録にわたるUA収縮が含まれない。
2.要約された胎児心拍数データ解析が無い。
3.RMSSD、エントロピー、スペクトル内容等の心拍毎RR測定結果が含まれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本願発明の目的は、子宮活動を監視するための改善された装置と方法を提供することである。発明の別の目的は、子宮活動の長期的自動監視に好適となり得る装置と方法を提供することである。これら目的のいくつかまたはすべては本明細書に記載の装置と方法により実現され得る。
【課題を解決するための手段】
【0030】
一態様によると、子宮活動を検出するための装置であって、
皮膚電極から電気信号を受信するように構成された第1の入力手段と、
運動検出器から母体の運動を示す運動信号を受信するように構成された第2の入力手段と、
電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、運動信号を使用することにより子宮筋電図信号から母体の運動アーチファクトをフィルタ処理するように構成された信号処理手段と、
子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提示するように構成された出力手段
と、を含む装置を提供する。
【0031】
別の態様によると、本発明は、子宮活動の検出方法であって、
母体腹部上に配置された皮膚電極から電気信号を生成する工程と、
母体の運動を示す運動信号を取得する工程と、
生成された電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、運動信号を使用することにより子宮筋電図信号から母体運動アーチファクトをフィルタ処理する工程と、
子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提供する工程と、を含む方法を提供する。
【0032】
別の態様によると、本願発明は子宮活動を検出するための装置であって、
皮膚電極から電気信号を受信するように構成された入力手段と、
電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、子宮筋電図から胎児運動アーチファクトをフィルタ処理するように構成された信号処理手段と、
子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提示するように構成された出力手段と、を含む装置を提供する。
【0033】
別の態様によると、本願発明は、子宮活動の検出方法であって、
母体腹部上に配置された皮膚電極から電気信号を生成する工程と、
生成された電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、子宮筋電図信号から胎児運動アーチファクトをフィルタ処理する工程と、
子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提供する工程と、を含む方法を提供する。
【0034】
別の態様によると、本願発明は、母体からの筋電図信号と母体の運動を示す運動信号とを生成するように構成された、母体腹部に取り付けられる一体化電極および運動センサであって、電極が、
腹部の皮膚との電気接点を設定するための電気接点部分と、
一体化電極および運動センサを人体に固定するための取り付け手段と、
母体の運動を示す運動信号を生成するように構成された変換器と、を含む、一体化電極および運動センサを提供する。
【0035】
別の態様によると、本願発明は胎児心拍数データと子宮活動データを収集するための装置であって、
妊娠中の母親の腹部上に配置されたセンサから胎児心拍数と子宮活動を示す電気信号を受信するための手段と、
少なくとも1つの胎児心拍数パラメータと少なくとも1つの子宮活動パラメータを得るように信号を処理するための手段と、
出力として、いくつかの時間フレーム間のグラフィックまたは表形式の少なくとも1つの胎児心拍数パラメータと少なくとも1子宮活動パラメータを供給するための手段と、を含む装置を提供する。
【0036】
次に実例として本願発明のいくつかの実施形態について添付図面を参照し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1a】約9時間の期間にわたって取られた、子宮筋電図(EHG)により測定された胎児心拍数(FHR)、母体心拍数(MHR)および子宮活動(UA)ならびに母体活動のチャートを示す。
【図1a−2】約9時間の期間にわたって取られた、子宮筋電図(EHG)により測定された胎児心拍数(FHR)、母体心拍数(MHR)および子宮活動(UA)ならびに母体活動のチャートを示す。
【図1b】約9時間の期間にわたって取られた、子宮筋電図(EHG)により測定された胎児心拍数(FHR)、母体心拍数(MHR)および子宮活動(UA)ならびに母体活動のチャートを示す。
【図1b−2】約9時間の期間にわたって取られた、子宮筋電図(EHG)により測定された胎児心拍数(FHR)、母体心拍数(MHR)および子宮活動(UA)ならびに母体活動のチャートを示す。
【図1c】約9時間の期間にわたって取られた、子宮筋電図(EHG)により測定された胎児心拍数(FHR)、母体心拍数(MHR)および子宮活動(UA)ならびに母体活動のチャートを示す。
【図1c−2】約9時間の期間にわたって取られた、子宮筋電図(EHG)により測定された胎児心拍数(FHR)、母体心拍数(MHR)および子宮活動(UA)ならびに母体活動のチャートを示す。
【図2】図1a−図1cに示されたデータ・セットから抽出されたデータの要約分析の表示を示す。
【図2−2】図1a−図1cに示されたデータ・セットから抽出されたデータの要約分析の表示を示す。
【図3】ヒト母体腹部上に位置する電極を示す写真である。
【図4】子宮筋電図データから子宮活動信号を確定するためのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図5a】図4に示す処理アルゴリズムの様々な段階における時間の関数としての子宮活動データのプロットである。
【図5b】図4に示す処理アルゴリズムの様々な段階における時間の関数としての子宮活動データのプロットである。
【図5c】図4に示す処理アルゴリズムの様々な段階における時間の関数としての子宮活動データのプロットである。
【図6】腹部から取られ加速度計センサ信号と比較された、時間の関数としての母体ECG QRS高さのプロットである。
【図7】母体が4つの異なる位置にある間の腹部から取られた時間の関数としての母体ECG QRS高さのプロットである。
【図8】EHGデータから確定された収縮信号と比較された、子宮内圧カテーテルを使用することにより測定された収縮信号を表す一連のグラフである。
【図9】妊娠中の母親と胎児の電気生理学的パラメータの長期監視に好適なハードウェアの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書に記載の装置は、短記録期間および長記録期間にわたる収縮の形式で子宮活動を確定し、要約された胎児心拍数データ解析を提供し、RMSSD、エントロピー、スペクトル内容等の心拍毎RR測定値を設定することができる。携帯装置による自動収集にこれらのパラメータを追加することが望ましい理由は2つある。
【0039】
第1に、非ストレス試験(NST:non-stress test)を行なうことは実際にはUAの何らかの指標の存在無しには可能ではない。これは、心拍数の加速または減速が胎児行動の指標であるからである。しかしながら胎児の行動は収縮に晒されると違った反応を示す。したがって収縮の有無の知識は心拍数変動を正しく解釈するために重要である。
【0040】
第2に、胎児心拍数、母体心拍数および子宮活動の連続24時間の記録を提供する能力は、臨床医に新たな課題を提示する。データ・セットの膨大さは、臨床医が胎児の全体的進展を効率的に理解することができず、データ・セットは主観的な解釈を受けやすいことである。
【0041】
例示として図1a、図1bおよび図1cに、約9時間の期間にわたるFHR、MHR、EHG(UA)および母体運動を示す。トレース10(すなわち、すべてのプロット上の上部トレース)は、時間(x軸)の関数としての胎児心拍数(毎分心拍)(y軸)を表す。同様に、トレース11(すなわち、すべてのプロット上の次に低いトレース)は時間の関数としての母体心拍数(毎分心拍)を表す。トレース12(すなわち、x軸の近傍の2番目に低いトレース)はEHGデータから決定された子宮活動を表す。最後に、トレース13は、例えば装置内部にあるいは患者上に置かれた加速度計により決定された母体活動を表す。
【0042】
臨床医に対するこのデータの要約は、より単純でありそれほど主観的でないデータ解釈手段を提供する。図2は、チャート21および関連表22、23では30分フレームで表された、図1の同じデータを示す。これらの表およびチャートは、簡潔なやり方でFHRトレースを捕捉し、胎児の臨床状態の迅速な評価を可能にする。2組の表22、23を図2に示す。
【0043】
最初に図2の上部表22を考察する。左上にあるのは、解析されたフレーム(この場合はそれぞれ30分、これはユーザにより設定可能である)の数、平均FHR、加速および減速の数、平均短期変動性(STV:Short Term Variability)および平均分範囲(MMR:Mean Minute Range)等を与える全体データ記録の要約解析22aである。
【0044】
減速を含まないSTVは任意の分で定義される。このとき、有効分毎に、STVは隣接する2または3.75秒エポックの差異の平均として計算される。これらの減速はまた、ユーザにより表の上部22bに沿って定義されることができる(例えば、60秒にわたるFHRの10BPM低下)。
【0045】
MMRは次のように定義される。減速を含むいかなる分も最初に捨てられる。有効分毎に、その範囲は、基線FHRからの、最大の正のFHRから最大の負のFHRまでの変動として計算される。平均範囲値はフレーム毎に計算され、これはMMRを提供する。加速もまた、この表の上部22bに沿ってユーザにより定義される(例えば、15秒窓にわたるFHRの15bpmの増加)。これらの加速はさらに、小さい加速と大きな加速に分けられる。次に、ファイル全体が、設定されたフレーム長内でユーザにより解析され、表は各フレームにわたるこれらのFHRパラメータのそれぞれの値から生成される。
【0046】
図2の下側の組の表23は上側表の異なる表現である。再び、FHRパラメータは、フレーム毎の値の表だけでなくユーザにより設定されることができるが、記録中にこれらの値のチャート(すなわちグラフ)21を観察することも可能である。ここに示したチャートは基線FHRを例示するが、同様にこれらのチャートに加えて任意の他のパラメータ、例えば減速、加速の数等をプロットすることも可能であろう。2つのFHR変動性パラメータすなわちSDとRMSSDが導入された。SDは基線または平均心拍数と比較したFHRの標準偏差である。この場合のRMSSDは、このファイルが心拍毎データではなく平均データを加工しているので2または3.75秒平均FHRの連続差異の二乗平均平方根である。
【0047】
この形式の表とチャート・データ表示の利点は、以前の長期間(例えば、7時間から7日まで)にわたって臨床医がユーザ定義FHRパラメータ(STV、SD、RMSSD、MMR、加速等という形式)の要約を得られるようにし、これにより正常性を確立し、エイリアスを生じる短い記録の欠点を回避することである。
【0048】
このFHRデータを補完するために、本出願人らはまた、長期的収縮監視を追加することを提示する。これは、関連FHRデータに関する収縮の時間位置を示すことになる。したがってFHRの減速を収縮の有無と関係付けることができる。これにより、遅発性および早発性徐脈(late and early decelerations)(下記参照)が記録セッションにわたって記録され要約されるようにする。
【0049】
したがってユーザが「FHR監視」パラメータ(STV、SD、RMSSD、MMR、加速等)と「子宮活動監視」パラメータとの値を規定することができる子宮活動と組み合わされたFHRの解析ツールが提供される。例示的なUAパラメータは、収縮の持続時間、ピーク収縮の時間、収縮強度、単位時間当たりの収縮数、およびFHRに対する遅発性および早発性徐脈定量化等の任意のものを含むことができるであろう。したがってこの解析ツールは、臨床解釈の主観的な要素を除去するようにオフラインおよび実時間モードの両方における記録の時間にわたって要約されたFHRとUAパラメータを表示することができる。
【0050】
したがって一般的態様では、解析ツールは妊娠中の母親の腹部上に配置されたセンサから長期的な胎児心拍数データおよび子宮活動データを収集する。センサは、胎児心拍数と子宮活動を示す電気信号を取得する。解析ツールは、少なくとも1つ好ましくは2つ以上の胎児心拍数パラメータと少なくとも1つ好ましくは2つ以上の子宮活動パラメータとを得るように電気信号を処理する手段を含む。解析ツールは、出力として、時間フレームの少なくとも1つの胎児心拍数パラメータと少なくとも1つの子宮活動パラメータとのグラフィックまたは表形式を提供する手段を含む。胎児心拍数パラメータは、基線心拍数、心拍数変動性(例えばSTV、SD、RMSSD、MMR)、心拍間間隔(beat-to-beat time interval)、心拍期間のRMSSD、心拍加速の数および心拍減速の数のうち少なくとも1つを含むように選択されることが好ましい。FHRパラメータは、平均データおよび/または心拍毎データから導出されてもよい。子宮活動パラメータは、胎児一過性徐脈(fetal heart rate deceleration)に対して、収縮時間位置、収縮持続時間、収縮強度および発生時間のうち少なくとも1つを含むように選択されることが好ましい。解析ツールは、少なくとも30分の期間を有する時間フレームについての出力と、少なくとも1時間の期間にわたるパラメータの長期的集合および出力と、を与えるようにされることが好ましい。FHRおよびUA監視パラメータは、任意の適切なユーザー・インターフェースにより解析ツールのユーザにより選択可能か指定可能であることが好ましい。
【0051】
標準的なNSTは、ほとんどのNSTが平均FHRだけを生成することができるドップラーCTGの使用に基づくので2または3.75秒FHR移動平均を使用して行なわれる。FHRトレースに見られる明白な変動性の低下は、24時間の期間にわたる胎児のストレスを検出する際のSTV技術の感度を下げる。監視すべき好ましいパラメータは、例えばRMSSD等を使用して測定される真の短期変動性(TSTV:true short term variability)である。これは胎児と母親の両方に適用される。
【0052】
その結果、本出願人らは本明細書では、出産前の期間中の「iNSTant」(すなわち、一体化NST:integrated NST)と呼ばれる従来のNSTの変形を提示する。本明細書では、本出願人らは、以下の長期パラメータと短期パラメータを取得するために一対の電気生理学的電極を使用する:FHR、MHR、EHG、平均化されたFHRからの心拍数パラメータ(すなわち、STV、加速と減速の数、基線心拍数等)の抽出、真の心拍毎胎児および母体心拍数からの心拍数パラメータ(すなわち、RMSSD、スペクトル内容、エントロピー)の抽出、および胎児ECG形態構造と形態学的変化。
【0053】
これらのパラメータのすべてを受動的腹部皮膚電極を介した本出願人らの「iNSTant」NSTの形式で連続的に提示する能力は、次の点から臨床医に多大な利点を提供する。データ生成の信頼性、監視の非侵入性、患者の快適さ、長期監視を行なう能力、胎児の健康状態を連続的にマッピングする能力、ドップラーCTGと比較して臨床医または助産婦の設定時間の低減。
【0054】
半時間フレームのデータは通常、胎児の健康状態を示すのに十分である。しかしながら24時間にわたると、これは48フレームとなる。これらのフレームの連続記録により、従来のアンダー・サンプル式断続的ドップラーCTG装置より高い感度で早期胎児死を検出できるようになる。1つの装置内にFHRと子宮活動の両方を与えることで、減速を遅発性徐脈と早発性徐脈の点から分類できるようになる。遅発性徐脈は、FHRが収縮終了後に低下する場合のものである。一方、早発性徐脈は、胎児心拍数一過性徐脈(FHR deceleration)の最悪状態が収縮のピークと同時に発生する場合のものある。長期間にわたりこのようなパラメータを監視することで、これから生まれる子のアシドーシス状態をチャート化できる。
【0055】
従来技術の超音波技術から導出されるFHR値は通常、典型的には2または3.75秒窓にわたって測定された平均心拍数に基づく。本明細書に記載の装置は、胎児心臓時間間隔の心拍毎検出を行なうことができる。成人ECGにおいて使用される一般的な2つの心拍毎パラメータはRMSSDとエントロピーである。RMSSDは、時系列の心拍毎データの連続的差異の二乗平均平方根である。特定の平均化窓長にわたるRMSの測定により、時系列が真のSTVでプロットされるようにする。エントロピー解析技術は心拍間隔(beat-to-beat heart rate)データの統計に基づく。エントロピーは、心拍がその時間位置においてどれくらい予測不能かまたは意外かの測定結果である。各心拍が設定時間間隔で到達すれば、エントロピーは非常に低いものとして分類されるだろう。健康な心臓は比較的高いエントロピーを有する心臓である。しかしながら長い時系列が一連のより短い時系列に分解され、エントロピーが短い系列毎に測定され、エントロピー対時間のグラフとしてプロットされれば、多スケール・エントロピー・プロットが得られる。「健康」あるいはそうでなければ「健康な胎児」を示すのは、このプロットの形状とRMSSD時系列の形状である。前者は全体記録中の胎児の状態を示し、一方RMSSDは胎児の時間変動状態を示す。
【0056】
FECG形態構造の検出は胎児の心臓の状態に関する情報を与え、QRS幅、PR間隔、ST上昇等のパラメータはすべて一定期間にわたって測定し記録されることができる。加えて、FECG形状変動はまた胎動の指標である。胎動の存在は、臨床医と母親の両方に対し再確認を与える胎児の健康状態の別の指標である。
【0057】
EHG検出アルゴリズム
次に母体の筋電図信号からのEHGの検出の実施について検討する。
【0058】
図3を参照すると、子宮活動を示す信号は母体の腹壁に置かれた多くの電極30〜33から得られる。少なくとも2つの電極が使用されることが好ましい。電極は、Ag/AgClとその下の腹部皮膚との間の発泡体中に吊された塩水ゲルを有する従来のAg/AgCl ECG電極である。第1の電極33は、恥骨結合領域に置かれ、第2の電極30、31または32は臍のレベル線と子宮底の線との間に置くことができる。あるいは、子宮底の下5cmの線と子宮底の線との間に第2の電極を置くことができる。3つの「第2の」電極30〜32はこの場合図3の子宮底上に示され配置されている。EHGを検出するためにこれらの3つの第2の電極の任意のものを使用することができる。好ましい実施形態では、第2の電極は母親の左横側にある。3つの第2の電極30、31、32の位置のそれぞれで測定されるすべての信号は恥骨結合に配置された第1の電極33に対している。別のまたは第5の電極(不図示)が、患者上で検知された雑音を積極的に低減する右脚駆動電極(right leg driver electrode)として使用されてもよい。このような電極は当該技術領域では知られており、例えば接着剤を使用して取り付けられてもよい。この別の電極は、大きさが同相入力雑音と等しいが180度逆相の信号を患者内にフィード・バックすることにより雑音低減を実現する。これは母親の腹部上に存在する同相雑音を著しく減衰する。
【0059】
また図9参照すると、恥骨結合電極33と対の子宮底電極30、31および32はそれぞれ1つのチャネル91、92、93、94を規定し、2つの入力を有する計測増幅器に供給するために使用される。各チャネルの計測増幅器は子宮活動検知器装置90のアナログ・フロント・エンド95の一部を形成する。各計測増幅器95は、両方の入力に共通の雑音を除去するためのアナログ差動増幅器として機能する。これと右脚駆動回路とを組み合わせることにより、高い同相除去比を有するシステムを得る。これにより、測定される胎児ECG、母体ECGおよび子宮収縮等の差動信号が可能になる。子宮収縮の場合、これらが腹部に波として伝わる。これらの子宮収縮は筋電図信号として現れ、特に子宮筋電図(EHG)と呼ばれる。EHGが恥骨結合(第1の)電極33ではなく1つの子宮底(第2の)電極30、31、32に現れる限り、第1と第2の電極間の差異信号を得ることができない。第1と第2の電極は十分に離されなければならない。最小分離距離は5cmであり、通常は15cmであってよい。但し、あまりにも大きな分離は、子宮の外部にある上部電極となり、したがって収縮を検出することができない。恥骨結合からの子宮底の分離は、裏付けられた測定に従い、そして妊娠期間の関数である。''Symphysis fundal height curve - a simple method for foetal growth assessment'',Rai et al, Journal of PG medicine, 1995,vol 41, issue 4, pp 93-94参照。
【0060】
EHGの低域カット・オフ周波数は、0.1Hz程度の低い周波数を有するFECGとMECGよりさらに低い。その結果、好ましくはEHGチャネルは通常のFHRチャネルより広い帯域幅を有しなければならない。好ましい実施形態では、アナログEHG検出器は約3,000の利得で約0.2Hz〜150Hzの帯域幅が配備される。このアナログ検出器(アナログ・フロント・エンド95内の計測増幅器)の第一段は110dBを越えた電源除去比と120dBより高い同相除去比(CMRR)を有する。
【0061】
次に、帯域制限された増幅アナログ信号は、通常は900Hzでサンプリングする23ビット(+1符合ビット)のアナログ/ディジタル変換器(ADC)96に送られ、ここでディジタル化され、次にデジタルシグナルプロセッサ97を使用して処理される。プロセッサ97により行なわれるEHGディジタル処理を図4に示す。
【0062】
子宮筋電図を生成するための電気生理学的信号の好ましいディジタル処理は以下の通りである。最初に、ADC96からデータが入力され(工程401)、間引きにより前処理される(工程402)。これは、3つのデータ・ポイントのうちの2つのデータ・ポイントを捨てることにより実現され、したがって分解能は19ビットに下がる。あるいは信号は、19ビットの分解能で300Hzにおいてサンプリングされることができる。他の同様の周波数とサンプリング分解能でも十分かもしれない。次に、データは、20Hzに設定された新しいサンプル・データ・セットを生成するために15のサンプリング点にわたって平均化される(工程403)。高周波雑音が増加した場合、工程403は、10Hzに設定された新しいサンプル・データを生成するために30のサンプリング点にわたってデータを平均化することにより修正されることができる。利用される平均化技術は好ましくは移動窓平均であるが、ブロック平均化等の他の平均化法を使用することができる。
【0063】
腹部の筋電図運動アーチファクトに起因する擬似EHG信号を回避するために運動検出器例えばセンサ98(図9)が使用される。母体または腹部の物理的運動(すなわち加速)の指標を与えることができる任意の装置を使用してもよいが、運動センサは加速度計であることが好ましい。好ましくは、3D(または1D)運動センサまたは加速度計98は携帯型子宮活動検知器装置90内に組み込まれる。代替案として、運動センサまたは加速度計98は腹部電極30〜33の1つまたは複数に組み込まれてもよいし、あるいは母体に別個に取り付けられることも可能であろう。
【0064】
好ましい実施形態では、運動センサは、それぞれが3つの直角座標軸の一軸における動作または運動を検出することができる3つの独立したセンサを有する3D加速度計である。各センサは、2g(「g」は地球の重力により決定される加速を指す)のフル・スケール感度を有する。3軸のセンサのそれぞれの瞬間的加速測定結果は組み合わせられ、以下の式による合成活動測定値Activity(i)となる。
Activity(i)=Absolute(Xt-Xt-1)+Absolute(Yt-Yt-1)+Absolute(Zt-Zt-1)
ここでXt、Yt、Ztは時点tにおける瞬間的加速であり、Xt-1、Yt-1およびZt-1は直前のサンプル時点t−1の瞬間的加速である。直前値から現在の加速度計値を減じることで、重力による加速度とフリッカー(1/f)雑音とを除去する高域通過フィルタを得る。
【0065】
2秒窓にわたる平均全体活動はすべてのActivity(i)値(i=1〜N)の和として次式のように計算される。
【数1】

ここで積分窓Nは、好ましい2秒平均を得るためには40Hzサンプリングの加速度計出力の80個のサンプルであることが好ましい。他の平均化窓はN=40、160、400、600等の値を取ることができる。しかしながら、あまりにも大きなNの値の使用は、測定された収縮を歪ませるかもしれず、時には収縮を抑制する可能性がある。ブロック窓または移動窓平均化処理のいずれかを使用することができる。次の2乗差分和を使用することが可能であるが、
Activity(i) '=[(Xt-Xt-1)2+(Yt-Yt-1)2+(Zt-Zt-1)2]0.5
この2乗作用はプロセッサ資源に莫大な要求がかかり、したがって絶対値処理が好ましい選択肢である。「平均Activity(N)」の値は、フル・スケールが2gの加速を表すので11ビット2進数として表される。次に「平均Activity(i)」値は4つの同一でない範囲に分割される。例えば、ビット数が6以下(すなわち、約6mgである6×2/211g)であれば、これは「活動レベル0」として分類される。ビット数が7〜50(すなわち7mg〜50mg)であれば、これは「活動レベル1」として分類される。ビット数が51〜2000(すなわち51mg〜200mg)であれば、これは「活動レベル2」として分類される。最後に、ビット数が201を越える(すなわち、>201mg)場合、これは「活動レベル3」として分類される。
【0066】
1D加速度計の場合、再び現在の加速度計サンプルと直前のサンプル点との絶対差を使用することにより、単一軸出力が、平均活動値を決定するために使用されてもよい。
【0067】
さらに図4を参照すると、大きな活動(例えば、活動レベル2と3)が検出されると(工程406)、信号は、6の係数だけ(活動レベル2に対して)、あるいは9の係数だけ(活動レベル3に対して)のいずれかだけ減衰される(工程407)。工程7後の例示的な出力を図5aに示す。加速度計または運動センサ98は、収縮の周波数と持続時間の正確かつ信頼できる決定において大幅な改善を提供する。運動センサによる活動監視により、母親が活動的な場合の偽陽性収縮(false positive contraction)の抑制が可能になる。したがって一般的態様では、信号処理装置97は胎児の信号と母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、次に子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを生成するために運動センサ98または他の運動検出器からの運動信号を使用することにより子宮筋電図信号からの運動アーチファクトをフィルタ処理または減衰する。好ましくは筋電図信号からの運動アーチファクトのフィルタ処理または減衰は、運動信号の大きさの関数として、より好適には運動信号の大きさの非線形関数として実行される。真の子宮筋電図データは、母体および/または胎児運動アーチファクト等のアーチファクトの除去により子宮筋電図データから導出されると考えられる。
【0068】
筋電図信号が運動信号の関数として減衰される場合、低い信頼水準もまた、例えば通常は1分より長い期間の活動レベル>1である場合にEHGトレース上のディスプレイ上に灰色の背景を与えることにより出力表示上にユーザに対し示してよい。したがって偽陽性が実際に発生しても、ユーザ(母親から一定距離離れた場所、すなわち病院にいるかもしれない)はデータが低信頼度であることに気付く。
【0069】
次に、信号は例えば0.2Hz〜0.9Hzの256タップFIRフィルタを使用することにより帯域通過フィルタ処理される(工程408)。この信号のエンベロープを得るために、帯域通過フィルタ処理されたデータは通常、最初に2乗することにより整流される(工程409)。工程409後の例示的な出力を図5bに示す。しかしながら2乗はオーバーフローを生じる可能性があり、したがってデータはすべての負値が正値に変換されるように調整されてよい。例えば絶対値が取られてもよい(工程409)。好ましい配置では、図4に示さないが、2乗することによりあるいは絶対値をとることによりデータを整流する(工程409)前に、胎児運動アーチファクトが除去される。胎児運動アーチファクトは帯域幅0.2Hz〜0.9Hz内に結合する可能性がある。しかしながら1つの胎児運動アーチファクトの長さは短く、その振幅は大きい。胎児運動アーチファクトは、30秒窓内の正値の平均値よりN倍高い値を有する正の信号を30秒窓毎に捨てることによりおよび/または30秒窓内の負値の平均値よりN倍低い値を有する負信号を30秒窓毎に捨てることにより、除去することができる。Nの値は経験的に決定することができ、好ましくは2〜3の範囲である。代替案として、胎児運動アーチファクトは、最大の正および負振幅に対応する各30秒ブロックの20%を除去するクリッピング・アルゴリズムにより除去されてもよい。一般的態様では、胎児運動アーチファクトは、所定時間窓にわたり選択される正および負の方向のデータ内のピーク変位をデータの平均値に基づき選択的に除去する任意の適切なクリッピング・アルゴリズムにより除去されてもよい。一態様では、上に定義された処理を使用して母体運動アーチファクトを除去すること無しに子宮筋電図データから胎児運動アーチファクトを除去することが可能である。
【0070】
EHG信号のエンベロープを生成するために、整流されたデータはさらに、EHG信号のエンベロープを得るために0.0166Hz以下(すなわち、60秒を越える時定数)の遮断周波数を有する低域通過フィルタによりフィルタ処理される(工程410)。
【0071】
工程409と410では、エンベロップ・トレースを生成するために整流と低域通過フィルタ処理を実行する。いくつかの形式の整流と低域通過フィルタ動作を実行することができる。上記段落に記載されたものの代替は、工程408の出力の30秒幅移動RMS値を計算することである。このRMSは胎児運動アーチファクト除去後のデータ(クリップデータ:clipped data)から計算される。「二乗平均平方根処理」を経たこのクリップデータはさらに、「波形の絶対値の積分」を計算することによりあるいは工程410後に出力を生成する0.0166Hz以下のカット・オフを有する低域通過フィルタ(工程410)に移動することにより、低域通過フィルタ処理されてもよい。
【0072】
エンベロープは次に、例えば10ポイントをブロック平均化することにより2Hzまでダウン・サンプリングされてもよい(工程411)。移動窓平均が好ましいが、ブロック窓平均等の他の平均化技術が使用されてもよい。基線変動(すなわち、0.0166Hz未満)を回避するために適応基線フィルタが配備されてもよい(工程412)。基線は、直前「x」秒の最小値(ここで「x」は例えば30秒から4分まで)を見つけることによりポイント毎に計算される。この最小値は、次に元データから減じられる基線値を生成するために指数関数低域通過フィルタに送られる。この処理は記録中、リアル・タイムで繰り返される。このような処理により、このようなEHGデータ中に発生する基線変動の除去が可能となる。したがって一般的態様では、基線変動は、特定データ・ポイント毎に、「基線値」として働く一組の先行データ・ポイントから最小値を決定し、特定データ・ポイントからその基線値を減じる処理により除去されてもよい。好ましくは、使用される一組の先行データ・ポイントは上に検討したように特定データ・ポイント前の「x」秒の窓の中のものを含む。本処理に対し変更をなし得ることが理解されるだろう。例えば、基線値は特定データ・ポイント群に対して決定され適用されてもよい。別の処理では、第1の期間内の筋電図データの最小値から基線値を定期的に決定し、第1の期間および/または第1の期間に続く次の期間内の筋電図データからその基線値を減じることにより、基線変動を除去することができるかもしれない。
【0073】
データは最後に、非線形関数でスケーリングまたは標準化される(工程413)。工程413後の例示的な出力を図5cに示す。好ましい実施形態では、非線形関数は例えば4分の1周期(0〜π/2ラジアン)正弦関数、S字関数、圧縮または対数関数の1つまたは複数である。非線形関数はデータ・セットが0〜255の範囲に収まることを保証することが好ましい。処理負荷を低減するために、照合表が使用されることが好ましい。範囲値は随意的であるが、今日助産用途において最も商業的なCTGマシン上に見られる「Tocoコーディング」予約語を使用する標準「CTG系列50プロトコル」に適合するように選択されることが好ましい。この非線形工程の追加は、特に収縮周波数、収縮持続時間および収縮強度の点でIUPC判断基準とのよい相関を維持するために好ましい。したがって一般的態様では、信号処理は、収縮強度の測定結果を与えるために非線形関数でEHGデータをスケーリングする。好ましくは、スケーリング関数は、EHGデータが子宮内圧カテーテル測定結果と相関がとれることを保証するように特に適合化される。EHG信号の大きさは、母親の腹部上の電極分離および位置に著しく依存する。電極分離/位置の一設定は、英国特許出願第0810843.3号明細書と第0819887.1号明細書に規定されている。子宮内収縮強度によりEHG信号を校正するために、母親(約>25人)の統計的な割合が陣痛および分娩を通じて記録される。軸は、検出された最大EHGが100〜120mmHgの子宮内圧に対応するようにスケーリングされる。したがってこのとき、母親の統計数が陣痛および分娩中に記録され電極構成が子宮内圧に対して校正されることができる限り、いかなる電極構成も使用される。したがって一般的態様では、子宮内圧という意味でのEHG信号のスケーリングは、陣痛中の母親の統計的サンプルにより達成されてもよい。
【0074】
この技術により、単純な一対の電極(例えば、第1の電極30〜32の任意のものと第2の電極33)において収縮周波数、持続時間および強度が監視できるようにする。その結果、今日の使用時に侵襲的な「子宮内圧カテーテル」と余り信頼できないTocoに対する高度に魅力的な代替案が提供される。
【0075】
次に、図4のEHGルーチンは子宮活動データを保管(例えば、記憶装置99内に)する、あるいはブルートゥースまたはUSB等の適切な通信路100、101(図9)を介しそれを転送してもよい。アンダー・サンプルされた非線形データは、FHRデータ(例えば、平均と心拍毎)、MHRデータ(平均および心拍毎)および母体活動データと共に転送され、表示または保管されてよい。
【0076】
このEHGアルゴリズムは、比較のために子宮頚部内に挿入された子宮内圧カテーテル(IUPC:intrauterine pressure catheter)と共に付着されたEHG電極を有する陣痛中の40人の患者に対し検証された。EHGアルゴリズムは、85.6%の陽性的中率を有するIUPCにより検出された800件の収縮のうち94.6%を検出した。EHGに対するIUPC比較の3人の異なる患者からの3つの例を図8に示す。同図はIUPC収縮強度、持続時間および周波数との優れた相関を示す。図8で、トレース80はIUPCにより記録された時間の関数としての子宮活動の圧力測定を表し、トレース81は運動センサに基づくフィルタ処理を使用した時間の関数として図4のアルゴリズムから計算された子宮筋電図出力を表す。
【0077】
偽陽性の除去を支援するために、上述の1Dまたは3D加速度計の代わりに任意の他の母体活動または運動指標を使用することができるかもしれないということに留意されたい。ジャイロ、慣性運動センサ、水銀スイッチ、腹部上のスマート材料(すなわち、その抵抗が例えば移動とともに変化するもの)等の様々な活動器具、センサまたは変換器が可能である。いかなる追加センサまたは変換器も必要としない母体運動を検出する追加の方法は、運動センサとしての電極自体により検出される母体ECGの大きさを使用することである。成人の心電図QRS信号の大きさは成人の呼吸数に応じて変化する。電極が母親の腹部上に置かれる場合、ECG高さは呼吸に応じて変化するだけでなく、母体運動に応じても変化する。呼吸の母体ECGへの影響をフィルタ除去することで、ECG QRS高さ変化は母体運動の関数となる。この特徴は非常に有用であり、偽陽性収縮の除去のための母体運動指標としてだけでなく一般的運動指標として配備されることができる。したがって運動アーチファクトのフィルタ処理に必要な母体の運動を示す運動信号自体は、皮膚電極から得られ、母体ECGデータから抽出されてよい。したがって一般的態様では、運動信号は時間の関数として母体ECGの振幅から導出されてもよく、信号処理手段は時間の関数として母体ECGを測定してそれから母体の運動を決定するようにされてもよい。
【0078】
図6は、腹部上の電極から記録された時間の関数としての、平均活動レベルとしての母体ECG QRS高さのトレース60を示す。活動レベルトレース61は加速度計により決定された活動を表す。いつ運動が検出されECG振幅が変化したかが分かる。図7はまた、患者が位置を変更するにつれて腹部上の電極から記録された時間の関数としてのECG QRS高さ(トレース70)を示す。
【0079】
トレース70は4つの領域、71、72、73、74に分割される。領域71は椅子に深く座った位置に対応し、領域72は前屈みに座った位置に対応し、領域73は両足を平行にして座った位置に対応し、領域74は横になった位置に対応する。
【0080】
UAとFHRは、妊娠中に商業的に記録された胎児の健康状態を示す2つの主要パラメータである。しかしながらこれらの市販された胎児心拍陣痛図監視装置は2つの別個の変換器を利用する。皮膚電極を使用することにより、これらパラメータの両方を同じ単一変換器(すなわち、皮膚電極)により検出し、これにより装置と方法を著しく簡単にすることができる。単一対の電極により、胎児および母体の心拍毎の情報と胎児ECG形態構造の監視が可能になる。機器および/または電極に加速度計を加えることにより、母体活動を監視でき、また子宮活動、胎児および母体心拍数、FECG形態構造の自動抽出中に大いに支援することができる。特に、すでに上に見たように、加速度計の活動レベルを使用することにより収縮存在に対する偽陽性を削除することができる。
【0081】
陣痛および早期陣痛中の監視
陣痛中の電気生理学的子宮活動検知器装置90の使用について以下に説明する。
【0082】
早期陣痛は、妊婦が予定期日前に陣痛に入る期間として定義される。基本的に非常に早い陣痛の到来はこれから生まれる胎児に脅威を与える。これらの脅威は、例えば肺等の重大な胎児の器官の不十分な発育である。胎児が子宮内に留まるのが長ければ長いほど、罹病率の低下、したがって任意の長期的病気の減少の可能性が高い。子宮収縮抑制療法は陣痛の開始を遅らせるために適用される。これは、胎児と母親の両方にとって潜在的に危険な状況と考えられる。EHGとFHRの両方の記録は、陣痛が遅れつつあるかどうかと胎児が良好状態にあるかどうかとを臨床医が評価するのを大いに助けるだろう。RMSSD、スペクトル反応、エントロピーなどを介し胎児の(および母親の)心拍毎の情報を監視することにより、2秒(または3.75秒)平均心拍数から導出されるSTVに先立って早期警報を与える。胎児ECGと同じ電極を使用することにより収縮数、それらの持続時間、およびEHGからそれらの強度をカウントすることができ、これにより陣痛の進行が容易に監視できるようになる。小さく携帯型の本装置は、ドップラー超音波法CTG機器では困難な長期監視に向いている。陣痛の開始を遅らせるこのような状況はしばしば、数日間発生する可能性があり、したがってこの長時間にわたって胎児心拍数、収縮および胎児の心拍毎のデータを連続的かつ非侵襲的に監視する能力は胎児と母親の健康状態にとってかけがえのないものである。
【0083】
自然分娩中、出産予定の母親には同様な状況が発生する。しかしながらここでは、分娩の進行は一定の速度で進む必要がある。陣痛の進行の測定は、経膣超音波により子宮頚部長を測定することにより、あるいは従来のディジタル膣内診により行なわれる。外来環境において収縮数、持続時間および強度を使用することにより初期陣痛における経過を監視することができる。
【0084】
電子ハードウェア装置
胎児と母親からの長期電気生理学的信号を検出するために必要とされる電子ハードウェアを概略ブロック図として図9に示す。チャネル91−94(恥骨結合電極33に対して1つの子宮底電極30、31または32として定義される)のそれぞれは2入力を有する計測増幅器を使用する。一入力は恥骨結合電極(「第1の」電極)に接続され、一方他入力は子宮底に平行な線上あるいは母親の臍を通過する水平線上にあってもよい3つの「第2の」電極の1つに接続される。アナログ・フロント・エンド95は、両方の入力に共通の雑音を除去するアナログ差動増幅器として働く計測増幅器である。これを右脚駆動回路(図9に示さず)と組み合わせることで、高い同相除去比を有するシステムを得る。ここでは4つのチャネルが示される。第4のチャネルはEHGの検出用のより広い帯域幅チャネルからなる。アナログ・フロント・エンドの出力は23ビット+1符合ビットの分解能を有するADC96に供給され、ディジタル化された出力データは実時間プロセッサ97に送られる。これと並行して、運動データは、処理信号(UA、FHR、MHR等)からの運動アーチファクトの識別を可能にするようにインタレースされる。データは、メモリー・カード99上にローカルに格納され、必要に応じブルートゥースまたは任意の他の無線技術等の無線リンク100を介し送信される。USB選択肢101はSDカード99上に格納されたデータのダウンロードが可能である。包括的電力管理システム102は電力レベルを監視し、使用していないときには個々のブロックを低電力スリープモードにする。全体システムは現在、携帯電話サイズのケースに収まる。しかしながらこのようなシステムは、電極30−33上に搭載されたハイブリッド基板上にあるいはカスタム集積回路形式の単一シリコン上に実装されることができる。
【0085】
運動センサが電極の1つに組み込まれる場合、母体腹部に取り付けられる一体化電極および運動センサが、母体からの筋電図信号と母体の運動を示す運動信号とを生成するために設けられる。一体化電極は、よく知られたやり方で腹部の皮膚との電気接点を確立するための電気接点部分と、人体に一体化電極および運動センサを固定する(例えば、よく知られたやり方で接着剤部を使用して)ための取り付け手段と、母体の運動を示す運動信号を生成するようにされた変換器またはセンサと、を含む。
【0086】
他の実施形態は添付の特許請求の範囲内であるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮活動を検出するための装置であって、
皮膚電極から電気信号を受信するように構成された第1の入力手段と、
運動検出器から母体の運動を示す運動信号を受信するように構成された第2の入力手段と、
前記電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、前記運動信号を使用することにより前記子宮筋電図から母体の運動アーチファクトをフィルタ処理するように構成された信号処理手段と、
前記子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提示するように構成された出力手段と、を含む装置。
【請求項2】
前記信号処理手段は前記運動信号の大きさの関数として前記筋電図信号を減衰することにより前記筋電図信号から前記母体運動アーチファクトをフィルタ処理するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信号処理手段はデータの平均値に基づくデータ内のピーク変位の選択的な除去により前記筋電図信号から胎児運動アーチファクトをフィルタ処理するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記信号処理手段は前記運動信号の大きさの非線形関数として前記筋電図信号を減衰するまたはフィルタ処理するように構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記信号処理手段は約0.2Hz〜150Hzの帯域幅を有するEHG検出器を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項6】
前記EHG検出器は0.2Hz〜0.9Hzの帯域フィルタを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記信号処理手段は、特定データ・ポイント毎に、「基線値」として働く一組の先行データ・ポイントから最小値を決定し、前記特定データ・ポイントから前記基線値を減じることにより、基線変動を除去するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記信号処理手段は、収縮強度の測定結果を与える非線形関数を有するEHGデータをスケーリングするようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記非線形関数は子宮内圧測定結果と相関を有するEHGデータを戻すように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の入力手段に結合された、前記電気信号を提供するための一対の電極であって、母体の腹壁に取り付けられるように構成された電極をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電極の少なくとも1つは運動センサを組み込む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記運動センサは加速度計である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記運動センサは三次元の運動または加速を検出する、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記運動信号は時間の関数として母体ECGの振幅から導出され、
前記信号処理手段は、時間の関数として母体ECGを測定し、前記母体ECGから前記母体の運動を決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
子宮活動の検出方法であって、
母体腹部上に配置された皮膚電極から電気信号を生成する工程と、
前記母体の運動を示す運動信号を取得する工程と、
前記生成された電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、前記運動信号を使用することにより前記子宮筋電図信号から母体運動アーチファクトをフィルタ処理する工程と、
前記子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提供する工程と、を含む方法。
【請求項16】
前記母体腹部の恥骨結合領域に第1の電極を取り付ける工程と、
子宮底の線と前記子宮底の下5cmの線との間、あるいは臍のレベルの線と前記子宮底の線との間の前記母体腹部に第2の電極を取り付ける工程と、
前記第1および第2の電極から前記電気信号を生成する工程と、をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
運動変換器またはセンサから前記運動信号を取得する工程をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記皮膚電極により生成された前記電気信号から前記運動信号を取得する工程をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項19】
子宮活動を検出するための装置であって、
皮膚電極から電気信号を受信するように構成された入力手段と、
前記電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、前記子宮筋電図から胎児運動アーチファクトをフィルタ処理するように構成された信号処理手段と、
前記子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提示するように構成された出力手段と、を含む装置。
【請求項20】
前記信号処理手段はデータの平均値に基づくデータ内のピーク変位の選択的な除去により前記筋電図信号から胎児運動アーチファクトをフィルタ処理するように構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
子宮活動の検出方法であって、
母体腹部上に配置された皮膚電極から電気信号を生成する工程と、
前記生成された電気信号内の胎児および母体心拍数信号から子宮筋電図信号を分離し、子宮筋電図信号から胎児運動アーチファクトをフィルタ処理する工程と、
前記子宮筋電図信号から子宮筋電図(EHG)データを提供する工程と、を含む方法。
【請求項22】
前記胎児運動アーチファクトはデータの平均値に基づく前記データ内のピーク変位の選択的な除去により前記筋電図信号からフィルタ処理される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
母体からの筋電図信号と母体の運動を示す運動信号とを生成するように構成された、母体腹部に取り付けられる一体化電極および運動センサであって、前記電極は、
腹部の皮膚との電気接点を設定するための電気接点部分と、
一体化電極および運動センサを人体に固定するための取り付け手段と、
母体の運動を示す運動信号を生成するように構成された変換器と、を含む一体化電極および運動センサ。
【請求項24】
胎児心拍数データと子宮活動データを収集するための装置であって、
妊娠中の母親の腹部上に配置されたセンサから胎児心拍数と子宮活動を示す電気信号を受信するための手段と、
少なくとも1つの胎児心拍数パラメータと少なくとも1つの子宮活動パラメータを得るように前記信号を処理するための手段と、
出力として、いくつかの時間フレーム間のグラフィックまたは表形式の前記少なくとも1つの胎児心拍数パラメータと前記少なくとも1つの子宮活動パラメータを供給するための手段と、を含む装置。
【請求項25】
前記胎児心拍数パラメータは、基線心拍数、心拍数変動性、心拍毎の時間間隔、心拍時間間隔のRMSSD、心拍数加速の数および心拍数減速の数のうちの少なくとも1つを含むように選択され、
前記子宮活動パラメータは、胎児一過性徐脈から、収縮時間位置、収縮持続時間、収縮強度および発生時間のうちの少なくとも1つを含むように選択される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
少なくとも30分の期間を有する時間フレームについての前記出力と、少なくとも1時間の期間にわたる前記パラメータの長期の集合および出力と、を与えるように構成された請求項24に記載の装置。

【図1a】
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【図1a−2】
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【図1b】
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【図1b−2】
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【図1c】
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【図1c−2】
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【図2】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−505032(P2013−505032A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519048(P2012−519048)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001294
【国際公開番号】WO2011/004147
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512005612)モニカ ヘルスケア リミテッド (1)
【Fターム(参考)】