説明

孔版印刷装置

【課題】切替部材によって用紙が排紙搬送経路に案内されるときに、切替部材が汚れる不具合等が生じにくい、孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】版胴10を有する印刷部と、印刷部で印刷された用紙Pを排紙部に向けて搬送する排紙搬送経路K1と、印刷部で片面に印刷された用紙を反転させて再び印刷部に向けて搬送する両面搬送経路K2、K2´と、印刷された用紙Pが排紙搬送経路K1と両面搬送経路K2、K2´とのいずれかの経路に案内されるように切り替える切替部材20と、が設置されている。そして、切替部材20は、排紙搬送経路K1に向かって搬送される用紙Pの対向面に向けて気体を噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、版胴を有する印刷部にて用紙に所望の画像を印刷する孔版印刷装置に関し、特に、用紙への両面印刷が可能な孔版印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、孔版印刷装置において、用紙の表裏面への両面印刷が可能なものが広く知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
詳しくは、印刷部で片面(オモテ面)への印刷がされた用紙は、爪形状の切替部材(切換部材)によって、両面搬送経路へと搬送経路が切り替えられる。そして、用紙は、両面搬送経路にて、反転された状態で再び印刷部へ搬送されて、印刷部で両面(ウラ面)への印刷がされる。その後、表裏面への印刷がされた用紙は、切替部材によって、排紙搬送経路へと搬送経路が切り替えられて、排紙搬送経路を経て排紙部に排出される。
【0003】
一方、特許文献2には、切替部材によって両面反搬送経路に案内される用紙の搬送性を向上させることを目的として、両面反搬送経路に案内される用紙に向けて切替部材から空気を吐出する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の孔版印刷装置は、切替部材によって用紙が排紙搬送経路に案内されるときに、用紙が自重によって切替部材に摺接しながら搬送されてしまい、切替部材や用紙が汚れてしまったり磨耗してしまったりする可能性があった。
特に、両面印刷時において、両面印刷された後の用紙が切替部材によって排紙搬送経路に案内されるときには、用紙のオモテ面に印刷された画像の一部が切替部材に付着してしまい、切替部材がインクで汚れてしまう不具合や、用紙の画像の一部が欠損してしまう不具合が顕著になっていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、切替部材によって用紙が排紙搬送経路に案内されるときに、切替部材が汚れる不具合等が生じにくい、孔版印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1記載の発明にかかる孔版印刷装置は、版胴を有する印刷部と、前記印刷部で印刷された用紙を排紙部に向けて搬送する排紙搬送経路と、前記印刷部で片面に印刷された用紙を反転させて当該用紙を再び前記印刷部に向けて搬送する両面搬送経路と、前記印刷部で印刷された用紙が前記排紙搬送経路と前記両面搬送経路とのいずれかの経路に案内されるように、その姿勢を可変して用紙が案内される経路を切り替える切替部材と、を備え、前記切替部材は、前記排紙搬送経路に向かって搬送される用紙の対向面に向けて気体を噴出できるように形成されたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明にかかる孔版印刷装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記切替部材は、前記両面搬送経路を経由して前記印刷部で両面に印刷された後の用紙が前記排紙搬送経路に向かって搬送されるときに、当該用紙の対向面に向けて気体を噴出するものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明にかかる孔版印刷装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記切替部材の先端部を用紙の先端が通過した後に、当該用紙の対向面に向けての前記切替部材のよる気体の噴出を開始するものである。
【0009】
また、請求項4記載の発明にかかる孔版印刷装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量を可変できるように形成され、搬送される用紙の厚さが厚いときに、搬送される用紙の厚さが薄いときに比べて、前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量が大きくように制御されるものである。
【0010】
また、請求項5記載の発明にかかる孔版印刷装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量を可変できるように形成され、搬送される用紙の表裏面に印刷される画像比率の総和が大きいときに、搬送される用紙の表裏面に印刷される画像比率の総和が小さいときに比べて、前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量が大きくように制御されるものである。
【0011】
また、請求項6記載の発明にかかる孔版印刷装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記切替部材は、用紙の対向面に向けて気体を噴出するための複数の噴出口が、用紙の搬送方向に対して直交する幅方向に並設されたものである。
【0012】
また、請求項7記載の発明にかかる孔版印刷装置は、前記請求項6に記載の発明において、前記複数の噴出口は、幅方向の中心を通る仮想線分に対して線対称になるように配設されるとともに、少なくともいくつかの噴出口が搬送可能な各サイズの用紙の幅方向両端に対応する位置から幅方向中央部側に所定距離だけ離れた位置に配設されたものである。
【0013】
また、請求項8記載の発明にかかる孔版印刷装置は、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記切替部材は、前記排紙搬送経路と前記両面搬送経路との分岐部に配設されるとともに、前記印刷部で印刷された用紙を前記両面搬送経路に案内するときには先端部が前記印刷部に近接するように揺動して、前記印刷部で印刷された用紙を前記排紙搬送経路に案内するときには先端部が前記印刷部から離間するように揺動するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、切替部材によって用紙が排紙搬送経路に案内されるときに、切替部材から用紙の対向面に向けて気体を噴出して、切替部材と用紙との摺接を軽減しているため、切替部材が汚れる不具合等が生じにくい、孔版印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態における孔版印刷装置を示す全体構成図である。
【図2】孔版印刷装置の切替部材の近傍を示す拡大図である。
【図3】切替部材を示す上面図である。
【図4】切替部材を示す断面図である。
【図5】両面印刷時における切替部材の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0017】
まず、図1にて、孔版印刷装置1の全体の構成・動作について説明する。
図1において、1はデジタル式の孔版印刷装置、2は原稿が載置される原稿台、3は原稿の画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、4は原稿読込部3で読み込んだ画像情報に基いて版(マスター)を製版する製版部、5は印刷前の用紙Pが積載された給紙部、6は使用済みの版(マスター)を版胴10から回収する排版部、7は印刷済みの用紙Pが排紙・積載される排紙部、10は版(マスター)が巻き付けられて用紙Pに印刷をおこなう印刷部として機能する版胴、を示す。
【0018】
図1を参照して、孔版印刷装置1における、片面印刷時の動作について説明する。
まず、作業者によって、原稿が原稿台2にセットされて操作パネル上にて所定の操作がされると、原稿読込部3にて原稿の画像情報が光学的に読み取られる。そして、原稿読込部3で読み取られた画像情報に基いて、製版部4でマスター(版)が作成され、そのマスターが版胴10(ドラム)に巻き付けられる。
【0019】
一方、給紙部5に積載された用紙Pは、最上方のものから順次、給紙ローラによって、給紙経路K0に向けて搬送(給送)される。給紙経路K0に搬送された用紙Pは、搬送ローラ13によって、版胴10を有する印刷部に向けて搬送される。そして、印刷部に搬送された用紙Pは、クランパ12によってマスターが位置決めされた状態の版胴10(印刷部)のニップ部(版胴10とプレスローラ15とが圧接する位置であって、図2の破線で囲んだ部分である。)にて、インクローラ11から版胴10及びマスターを介して押し出されたインクによる所望の印刷工程がおこなわれる。
その後、片面(オモテ面)への印刷が終了した用紙Pは、切替部材20によって排紙搬送経路K1に案内されて、搬送ベルト30(吸引ファン31による用紙Pの吸引がおこなわれている。)に搬送されながら排紙部7に排紙される。
【0020】
次に、両面印刷時の動作について説明する。
両面印刷時には、原稿台3にセットされたオモテ面用の原稿とウラ面用の原稿とに基いて製版部4でそれぞれの製版工程がおこなわれる。そして、製版部4で作製されたオモテ面用のマスターとウラ面用のマスターとが、それぞれ、版胴10上の周方向の異なる位置にセットされる。
【0021】
一方、給紙部5から給送された用紙Pは、片面印刷時と同様に、印刷部のニップ部にて印刷(オモテ面用のマスターに対応した印刷である。)がおこなわれる。その後、オモテ面への印刷が終了した用紙Pは、切替部材20によって両面搬送経路K2に案内されて、上ガイド板42と下ガイド板43との間を通過して反転トレイ40上に載置される。そして、反転トレイ40上に載置された用紙Pは、搬送方向が反転した状態で反転トレイ40に内設された搬送ベルト(吸引ファン41による用紙Pの吸引がおこなわれている。)によって、湾曲ガイド板44に案内されながらプレスローラ15の回転方向に沿って移動して再び印刷部(ニップ部)に搬送される。
【0022】
そして、印刷部に再搬送された用紙Pは、クランパ12によってウラ面用のマスターが位置決めされた状態の版胴10(印刷部)のニップ部にて、インクローラ11から版胴10及びマスターを介して押し出されたインクによるウラ面への印刷工程がおこなわれる。
その後、両面(ウラ面)への印刷が終了した用紙Pは、切替部材20によって排紙搬送経路K1に案内されて、搬送ベルト30に搬送されながら排紙部7に排紙される。
【0023】
ここで、図2を参照して、切替部材20は、排紙搬送経路K1と両面搬送経路K2との分岐部に配設された爪状部材であって、不図示の駆動モータによって回転支軸20aを中心にして揺動(回動)するように構成されている。
そして、切替部材20は、印刷部Pで印刷された用紙を排紙搬送経路K1に案内するときには、先端部が印刷部から離間するように揺動する(図2の実線で示す切替部材20の状態である。)。これに対して、切替部材20は、印刷部で印刷された用紙Pを両面搬送経路K2に案内するときには、先端部が印刷部に近接するように揺動する(図2の破線で示す切替部材20の状態である。)。このような切替部材20の姿勢を可変する動作によって、用紙Pが案内される経路の切り替え(図1で説明した片面印刷時や両面印刷時における搬送経路の切り替えである。)をおこなっている。
【0024】
次に、図2〜図5にて、本実施の形態における孔版印刷装置1において特徴的な構成・動作について詳述する。
本実施の形態における孔版印刷装置1には、先に図2等を用いて説明したように、印刷部(ニップ部)で印刷された後の用紙Pを排紙搬送経路K1と両面搬送経路K2とのいずれかの選択された経路に案内するように切り替える切替部材20が設置されている。
ここで、本実施の形態における切替部材20は、排紙搬送経路K1に向かって搬送される用紙Pの対向面(下面である。)に向けて気体としての空気を噴出できるように形成されている。
【0025】
詳しくは、図3と図4(図3中のX−X断面を示す断面図である。)とを参照して、切替部材20には、排紙搬送経路K1に導かれる用紙Pの対向面に向けて空気(気体)を噴出するための複数の噴出口20cが、幅方向(用紙の搬送方向に対して直交する方向であって、図3の上下方向である。)に並設されている。具体的に、本実施の形態では、搬送方向に2つ配列された噴出口20cが幅方向に11組(合計して22個の噴出口20cである。)配設されている。これらの噴出口20cは、いずれも、重力方向上方に向けて開口していて、ここから排紙搬送経路K1に導かれる用紙Pの対向面に向けて空気(気体)が噴出される。
さらに詳しくは、切替部材20の回転支軸20aは、中空構造になっていて、その中空部が空気の主流路20a1となっている。また、その主流路20a1には複数の分岐流路20bが分岐するように形成されていて、それぞれの分岐流路20bに2つの噴出口20cが形成されている。また、主流路20a1の一端側端部20a10には、ホース27を介して、空気噴出量を制御する制御手段としての流量調整弁26と、空気を発生させる手段としてのポンプ25と、が接続されている。
【0026】
そして、このような構成により、不図示の制御部による制御によりポンプ25が駆動されると、ポンプ25から送出された空気が制御部によって制御された流量調整弁26によって風量調整されて、主流量20a1、分岐流路20bを経て、それぞれの噴出口20cから用紙Pに向けて適量の空気が所定のタイミングで吐出されることになる。これにより、切替部材20によって印刷工程後の用紙Pが排紙搬送経路K1に案内されるときに、用紙Pが切替部材20に強く摺接する不具合が軽減されることになる。
なお、本実施の形態では、切替部材20内に向けて空気を発生させる手段としてポンプ25を用いたが、ポンプ25の代わりに送風ファン等を用いることもできる。さらに、切替部材20内に向けて空気を発生させる手段として、搬送経路K1、K2に設置された吸引ファン31、41で吸引した空気をダクトを介して切替部材20に向けて送る機構を用いることもできる。その場合には、装置の低コスト化を達成することができる。
また、本実施の形態では、噴出口20cにおける空気噴出量を制御する制御手段として流量調整弁26を用いたが、ポンプ25の代わりに送風ファンを設置して、その送風ファンの回転数を可変することで噴出口20cにおける空気噴出量を制御することもできる。
【0027】
ここで、本実施の形態では、切替部材20から用紙Pに向けての空気噴出は、両面搬送経路を経由して印刷部(版胴10のニップ部)で両面(ウラ面)に印刷された後の用紙Pが排紙搬送経路K1に向かって搬送されるときにおこなわれる。具体的に、切替部材20の先端部(回転支軸20aから離れた側であって印刷部に近い側の先端部である。)を用紙Pの先端が通過した後(直後のタイミングである。)に、用紙Pの対向面に向けての切替部材20のよる空気の噴出が開始されるように、ポンプ25や流量調整弁26の駆動が制御される。
【0028】
以下、図5(A)〜(C)にて、両面印刷時における切替部材20の動作について詳述する。
図5(A)に示すように、オモテ面への印刷(1回目の印刷)が終了した用紙Pが両面搬送経路K2に搬送されるとき、切替部材20はその先端部が版胴10(印刷部)に近接するように回転支軸20aを中心にして回動する。そして、用紙Pは、切替部材20によって両面搬送経路K2に案内されることになる。このとき、切替部材20からの空気噴出はおこなわれない。
【0029】
その後、図5(B)に示すように、用紙Pは、搬送方向が反転された後に、湾曲した両面搬送経路K2´を経てニップ部(版胴10とプレスローラ15とが接触する部分である。)に向けて搬送されることになる。このとき、切替部材20は、その位置に用紙Pが達するまでに、その先端部が版胴10(印刷部)から離間するように回転支軸20aを中心にして回動する(先端部がプレスローラ15に近接するような回動であって、図5(B)の状態である。)。また、用紙Pの先端が切替部材20に差し掛かるまで、切替部材20からの空気噴出はおこなわれない。これにより、切替部材20によって用紙Pがプレスローラ15に巻き付く不具合を防止する機能が確実に発揮されるとともに、切替部材20からの空気噴出によって印刷工程終了直後の用紙Pが版胴10に密着してしまう不具合を防止することができる。
その後、図5(C)に示すように、用紙Pの先端が切替部材20の先端部を通過した直後のタイミングで、用紙Pの対向面(1回目の印刷がされたオモテ面である。)に向けて空気が噴出される。そして、用紙Pは、切替部材20からの空気を受けながら、切替部材20から離間した状態で排紙搬送経路K1に導かれることになる。
【0030】
このように、両面印刷時において、両面印刷された後の用紙Pが切替部材20によって排紙搬送経路K1に案内されるときに用紙Pの対向面に向けて空気を噴出することで、用紙Pのオモテ面に印刷された画像の一部が切替部材20に付着してしまい、切替部材20がインクで汚れてしまう不具合や、用紙Pの画像の一部が欠損してしまう不具合を軽減することができる。
なお、本実施の形態では、両面印刷時において排紙搬送経路K1に案内される用紙Pの対向面に向けて切替部材20から空気を噴出するように制御したが、片面印刷時において排紙搬送経路に案内される用紙Pの対向面に向けて切替部材20から空気を噴出するように制御することもできる。その場合、切替部材20によって用紙Pが排紙搬送経路K1に案内されるときに、用紙Pが切替部材20に摺接しにくくなるため、切替部材20や用紙Pが磨耗したり紙粉等で汚れてしまったりする不具合が軽減される。
【0031】
ここで、先に図3等を用いて説明したように、本実施の形態における孔版印刷装置1には、切替部材20から用紙Pの対向面に向けて噴出する空気の風量(単位時間当りの風量である。)を可変できるように、流量調整弁26が設置されている。
このような流量調整弁26(空気噴出量制御手段)を用いて、搬送される用紙Pの厚さが厚いときに、搬送される用紙Pの厚さが薄いときに比べて、切替部材20から用紙Pの対向面に向けて噴出する空気の風量が大きくように制御することができる。具体的に、印刷対象となる用紙Pの紙厚を直接的又は間接的に検知する紙厚検知手段によって、用紙Pの紙厚が紙厚が所定値以上であると検知された場合には噴出する空気の風量が大きくなるように調整したり、検知された用紙Pの紙厚に応じて比例的に空気の風量が増加するように調整したりすることができる。これにより、用紙Pが厚さに比例して重くて重力によって切替部材20に摺接しやすい場合であっても、上述した本実施の形態における効果を確実に発揮することができる。なお、紙厚検知手段としては、用紙Pの紙厚を光学的に検知する紙厚センサを用いることもできるし、作業者が装置の操作パネル等に入力した用紙Pの情報に基いて間接的に検知する手段を用いることもできる。
【0032】
また、流量調整弁26(空気噴出量制御手段)を用いて、搬送される用紙Pの表裏面に印刷される画像比率の総和(オモテ面に印刷される画像比率とウラ面に印刷される画像比率との総和である。)が大きいときに、搬送される用紙Pの表裏面に印刷される画像比率の総和が小さいときに比べて、切替部材20から用紙Pの対向面に向けて噴出する空気の風量が大きくように制御することもできる。具体的に、表裏面に印刷される画像情報か(例えば、画像読込部3で取得した画像情報である。)ら表裏面に印刷される画像比率を求めて、印刷により使用されるインク量の大小とともに、両面印刷後の用紙Pの重さを推定する。そして、用紙Pに印刷される画像比率の総和が所定値以上であって印刷後の用紙Pの重さが所定値以上になるものと判別された場合に噴出する空気の風量が大きくなるように調整したり、用紙Pに印刷される画像比率の総和に基づく印刷後の用紙Pの重さに応じて比例的に空気の風量が増加するように調整したりすることができる。これにより、用紙Pが大きな画像比率により重くて重力によって切替部材20に摺接しやすい場合であっても、上述した本実施の形態における効果を確実に発揮することができる。また、このような制御を、上述した用紙Pの厚さに基く制御とともにおこなうことで、より確実に上述した効果を達成することができる。
【0033】
また、本実施の形態における切替部材20は、図3を参照して、複数の噴出口20cが、幅方向の中心を通る仮想線分Mに対して線対称になるように配設されている。さらに、複数の噴出口20cのうち、少なくともいくつかの噴出口20cが、搬送可能な各サイズの用紙P(本実施の形態では、A3、B4、A4、B5の各サイズの用紙である。)の幅方向両端に対応する位置から幅方向中央部側に所定距離Lだけ離れた位置に配設されている。
このような構成によって、用紙Pの対向面に対して、切替部材20から幅方向にわたってバランスよく確実に空気を噴出することができるため、上述した本実施の形態における効果を確実に発揮することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態においては、切替部材20によって用紙Pが排紙搬送経路K1に案内されるときに、切替部材20から用紙Pの対向面に向けて空気(気体)を噴出して、切替部材20と用紙Pとの摺接を軽減しているため、切替部材20が汚れる不具合等を生じにくくすることができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、原稿台2にセットされた原稿に基いて製版をおこなう孔版印刷装置1に対して本発明を適用したが、パソコン等の外部装置から入力された画像情報に基いて製版をおこなう孔版印刷装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、その場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 孔版印刷装置、
5 給紙部、
7 排紙部
10 版胴(印刷部)、
20 切替部材、
20a 回転支軸、
20a1 主流路、
20b 分岐流路、
20c 噴出口、
K1 排紙搬送経路、
K2、K2´ 両面搬送経路、
P 用紙。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特許第4496011号公報
【特許文献2】特開2004−345823号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴を有する印刷部と、
前記印刷部で印刷された用紙を排紙部に向けて搬送する排紙搬送経路と、
前記印刷部で片面に印刷された用紙を反転させて当該用紙を再び前記印刷部に向けて搬送する両面搬送経路と、
前記印刷部で印刷された用紙が前記排紙搬送経路と前記両面搬送経路とのいずれかの経路に案内されるように、その姿勢を可変して用紙が案内される経路を切り替える切替部材と、
を備え、
前記切替部材は、前記排紙搬送経路に向かって搬送される用紙の対向面に向けて気体を噴出できるように形成されたことを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
前記切替部材は、前記両面搬送経路を経由して前記印刷部で両面に印刷された後の用紙が前記排紙搬送経路に向かって搬送されるときに、当該用紙の対向面に向けて気体を噴出することを特徴とする請求項1に記載の孔版印刷装置。
【請求項3】
前記切替部材の先端部を用紙の先端が通過した後に、当該用紙の対向面に向けての前記切替部材のよる気体の噴出を開始することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の孔版印刷装置。
【請求項4】
前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量を可変できるように形成され、
搬送される用紙の厚さが厚いときに、搬送される用紙の厚さが薄いときに比べて、前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量が大きくように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の孔版印刷装置。
【請求項5】
前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量を可変できるように形成され、
搬送される用紙の表裏面に印刷される画像比率の総和が大きいときに、搬送される用紙の表裏面に印刷される画像比率の総和が小さいときに比べて、前記切替部材から用紙の対向面に向けて噴出する気体の風量が大きくように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の孔版印刷装置。
【請求項6】
前記切替部材は、用紙の対向面に向けて気体を噴出するための複数の噴出口が、用紙の搬送方向に対して直交する幅方向に並設されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の孔版印刷装置。
【請求項7】
前記複数の噴出口は、幅方向の中心を通る仮想線分に対して線対称になるように配設されるとともに、少なくともいくつかの噴出口が搬送可能な各サイズの用紙の幅方向両端に対応する位置から幅方向中央部側に所定距離だけ離れた位置に配設されたことを特徴とする請求項6に記載の孔版印刷装置。
【請求項8】
前記切替部材は、前記排紙搬送経路と前記両面搬送経路との分岐部に配設されるとともに、前記印刷部で印刷された用紙を前記両面搬送経路に案内するときには先端部が前記印刷部に近接するように揺動して、前記印刷部で印刷された用紙を前記排紙搬送経路に案内するときには先端部が前記印刷部から離間するように揺動することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228815(P2012−228815A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98283(P2011−98283)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】