説明

孔間透気試験方法及びグラウト効果判定方法

【課題】より広範囲の岩盤の透気性を効率良く調べることが可能な孔間透気試験方法及びグラウト効果判定方法を提供すること。
【解決手段】岩盤Bに設けられた複数のボーリング孔h1,h2を用い、第1のボーリング孔h1内にガスが送入される送信区間Sを形成し、第2のボーリング孔h2内に複数の受信区間T1〜T5を形成し、受信区間T1〜T5の圧力を検出する。岩盤B内において送信区間Sから受信区間T1〜T5に通じるガス道が存在する場合には、送信区間Sにガスを送入すると、受信区間T1〜T5の圧力が変動するため、受信区間T1〜T5の圧力応答を観測することで、送信区間Sと受信区間T1〜T5との間のガス道を調査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のボーリング孔を用いて岩盤の物性を把握する孔間透気試験方法及びグラウト効果判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、岩盤の物性を把握する技術として、下記の特許文献1に示すようなものがある。例えば、特許文献1に記載の真空透気試験では、一つのボーリング孔内にパッカー(閉塞部材)によって閉塞された試験区間(受信区間)を設け、この試験区間内の空気を真空ポンプによって排除し、定常状態に達したときの流量及び圧力、真空ポンプ停止後における圧力回復曲線を取得する。そして、これらの流量、圧力、圧力曲線回復曲線に基いて岩盤の透気係数を求めることで岩盤の物性を把握している。
【0003】
また、二つのボーリング孔を用いて岩盤の物性を把握する技術として、特許文献1の「従来の技術」に記載の透気試験が知られている。この透気試験では、送信区間に高圧のトレーサーガスを送気し、受信区間内の気体を採取してトレーサーガスの割合を求めている。これにより、送信区間から漏れ出しボーリング孔間の岩盤を通過したトレーサーガスの漏気量に基いて岩盤の透気係数を求め、岩盤の緩み領域を把握している。
【特許文献1】特開平7−300844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年にあっては、岩盤における広範囲の透気性を効率良く調べること、岩盤内を通過する気体の通り道(以下「ガス道」という。)の有無を把握することが求められている。しかしながら、上記特許文献1に記載の真空透気試験方法では、一つのボーリング孔を用いて測定を行うため、ボーリング孔に極めて近い位置の測定しか行えず、より広い範囲の岩盤の透気性を調べることができないと共に、ガス道を把握することができないという問題があった。
【0005】
また、上記特許文献1の「従来の技術」に記載の透気試験では、送信区間にトレーサーガスを高圧で送入するための高圧ガス供給設備を設置する必要があり、時間やコストが掛るといった問題や、トレーサーガスを昇圧するために多大な電力と時間を必要とするという問題があった。また、送信区間を区切るためのパッカーは、高圧に耐えるため深さ方向に長くなってしまい取扱いが不便であり、作業時間が長くなるといった問題がある。また、送信区間に高圧のトレーサーガスを送入するため、周囲の岩盤を破壊する虞がある。また、受信区間から採取した気体に含まれるトレーサーガスの割合を求めるための分析が必要であり、コストや時間が掛かるという問題がある。また、トレーサーガスが送信区間と受信区間との間を通過する時間が長く、作業時間が長くなるといった問題がある。また、受信区間は一つしか設定されていないため、広範囲の岩盤の物性を把握するには、受信区間の位置を変えて試験を複数回実施する必要があり、作業時間が長くなるという問題がある。
【0006】
更に、二つのボーリング孔を用いて岩盤の物性を把握する技術として、弾性波トモグラフィー、比抵抗トモグラフィー、電磁波トモグラフィー、及び孔間透水試験等が知られている。これらの試験ではボーリング孔間の弾性波速度分布、比抵抗分布、電磁波速度分布、及び透水性分布を知ることで岩盤の物性を把握している。例えば、「特開2003−129782号公報」に記載の孔間透水試験では、一方のボーリング孔を送信孔として送信区間を設け、他方のボーリング孔を受信孔として受信区間を設けて、送信区間に水を送水し、受信区間における圧力を検知している。そして、送信区間および受信区間の位置の組合せを変えて測定を繰り返し、これらの測定結果を解析してボーリング孔間の透水性分布を求めている。
【0007】
この孔間透水試験は、岩盤における透水性を調査する試験であり、ガス道を把握する等、透気性を調査することができなかった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、従前に比して広範囲の岩盤の透気性を効率良く調べることが可能な孔間透気試験方法及びグラウト効果判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による孔間透気試験方法は、岩盤に設けられた第1のボーリング孔内に、閉塞部材によって区切られた送信区間を形成し、岩盤に設けられた第2のボーリング孔内に、閉塞部材によって区切られた受信区間を複数形成し、送信区間内に気体を送入し、受信区間内の圧力を検出して、送信区間と受信区間との間における気体の通過を把握することを特徴としている。
【0010】
このような孔間透気試験方法によれば、岩盤に設けられた複数のボーリング孔を用い、第1のボーリング孔内にガスが送入される送信区間を形成し、第2のボーリング孔内に受信区間を形成し、受信区間の圧力を検出する。岩盤内において送信区間から受信区間に通じるガス道が存在する場合には、送信区間にガスを送入すると、受信区間の圧力が変動するため、受信区間の圧力応答を観測することで、送信区間と受信区間との間のガス道を調査することができる。これにより、第1のボーリング孔と第2のボーリング孔との間(以下「孔間」という)の岩盤における透気性を把握することが可能となる。また、第2のボーリング孔内に受信区間が複数形成されているため、従来に比して広範囲の岩盤における透気性の分布を効率良く把握することができる。また、従前のように送信区間内の圧力を高くする必要がないため、岩盤を破壊する虞が低減される。また、送信区間に作用する圧力が低減されているため、例えば、閉塞部材としてのパッカーの長さ(ボーリング孔の深さ方向の長さ)を短くすることができ、作業性の向上及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0011】
また、第1のボーリング孔内に、送信区間に隣接し閉塞部材によって区切られた他の受信区間を形成し、他の受信区間内の圧力を検出することが好ましい。これにより、送信区間に隣接する他の受信区間の圧力と、第2のボーリング孔に形成された受信区間との圧力とを比較することで、孔間透気試験による試験結果を検証することができる。例えば、他の受信区間の圧力が第2のボーリング孔の受信区間の圧力より高い場合には、受信区間の圧力応答は送信区間と受信区間との間のガス道によるものと推測することができる。一方、他の受信区間の圧力が第2のボーリング孔の受信区間の圧力より低い場合には、受信区間の圧力応答は送信区間と受信区間との間のガス道によるものではなく、その他の要因によるものと推測することができる。このため、孔間透気試験による結果を検証することができ、孔間透気試験の信頼性の向上を図ることができる。更に、送信区間と他の受信区間との間のガス道を調査することができるため、第1のボーリング孔近傍の透気性を把握することが可能となる。
【0012】
また、第1のボーリング孔の深さ方向において送信区間と異なる位置に、閉塞部材によって区切られた送信区間を順次移動させて形成し、この移動した送信区間内に気体を送入し、受信区間内の圧力を検出して、移動した送信区間と前記受信区間との間における気体の通過を把握することが好ましい。これにより、より広範囲の岩盤の透気性分布を正確に把握することが可能となる。
【0013】
また、送信区間内に送入される気体は空気であることが好ましい。これにより、安全に作業することができると共に、低コスト化を一層図ることができる。
【0014】
また、第2のボーリング孔を複数箇所設定し、各第2のボーリング孔内に、受信区間を複数形成することが好ましい。これにより、広範囲の岩盤における透気性の分布を一層効率良く確実に把握することができる。
【0015】
また、本発明によるグラウト効果判定方法は、岩盤を補強するグラウトが施工されたグラウト施工域を挟んで、一方の側に第1のボーリング孔を設定し、他方の側に第2のボーリング孔を設定し、上記の孔間透気試験方法によって検出された受信区間の圧力に基いて、グラウト施工域におけるグラウトの効果を判定することを特徴としている。
【0016】
このようなグラウト効果判定方法によれば、岩盤におけるグラウト施工域を挟んで両側に配置された複数のボーリング孔を用い、一方の側に配置された第1のボーリング孔内にガスが送入される送信区間を形成し、他方の側に配置された第2のボーリング孔内に受信区間を形成し、受信区間の圧力を検出する。岩盤内において送信区間からグラウト施工域を通り受信区間に通じるガス道が存在する場合には、送信区間にガスを送入すると、受信区間の圧力が変動するため、受信区間の圧力応答を観測することで、送信区間と受信区間との間のガス道を調査することができる。これにより、第1のボーリング孔と第2のボーリング孔との間の岩盤におけるグラウト施工域の透気性を把握することが可能となる。これにより、グラウト施工域におけるグラウトの効果を判定することができる。また、第2のボーリング孔内に受信区間が複数形成されているため、従来に比して広範囲の岩盤における透気性の分布を効率良く把握することができる。また、送信区間内の圧力を高くする必要がないため、岩盤を破壊する虞が低減される。また、送信区間に作用する圧力が低減されているため、例えば、閉塞部材としてのパッカーの長さ(ボーリング孔の深さ方向の長さ)を短くすることができ、作業性の向上及び低コスト化を図ることが可能となる。なお、ここでいう「グラウト施工域を挟んで、一方の側に第1のボーリング孔を設定し、他方の側に第2のボーリング孔を設定し、」とは、第1のボーリング孔と第2のボーリング孔との間に、グラウト施工域が存在するように、第1のボーリング孔及び第2のボーリング孔を設定することを指す。例えば、第1のボーリング孔及び第2のボーリング孔の少なくとも一方を、グラウト施工域内に設定してもよい。
【0017】
また、グラウト施工前に受信区間の圧力を検出し、グラウト施工後に受信区間の圧力を検出し、グラウト施工前に検出された圧力と、グラウト施工後に検出された圧力とを比較してグラウト施工域におけるグラウトの効果を判定することが好ましい。これにより、グラウト施工域の効果の確認を一層確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の孔間透気試験方法によれば、従前に比して広範囲の岩盤の透気性を効率良く調査することができる。
【0019】
また、本発明のグラウト効果判定方法によれば、岩盤におけるグラウト施工域のグラウトの効果の判定を効率良く実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による孔間透気試験方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の第1実施形態に係る孔間透気試験装置を示す概略構成図である。
【0021】
孔間透気試験装置は、例えば、石油備蓄基地等の地下岩盤タンクを構成する岩盤の物性調査に適用され、岩盤に形成された複数(本実施形態では2本)のボーリング孔間における透気性分布の把握に利用されるものである。図1に示すように、岩盤Bには、2本のボーリング孔h1,h2が掘削されている。一方のボーリング孔(第1のボーリング孔;以下「送信孔」という)h1には、気体が送入される送信区間Sが形成され、他方のボーリング孔(第2のボーリング孔;以下「受信孔」という)h2には、複数の受信区間T1〜T5が形成され、更に、送信孔h1内には、送信区間Sに隣接して受信区間(他の受信区間)T0が形成される。送信孔h1と受信孔h2との距離は、数mから数十mが望ましく、本実施形態では約10mとされている。
【0022】
孔間透気試験装置1は、送信区間S、受信区間T0〜T5を区切るためのパッカー(閉塞部材)P1〜P8と、これらのパッカーP1〜P3が装着され送信孔h1に挿入されるロッド2と、パッカーP4〜P8が装着され受信孔h2に挿入されるロッド3と、送信区間Sに空気を送入する空気供給部4と、受信区間T0〜T5の圧力を測定する測定部5とを具備している。
【0023】
パッカーP1〜P8は、パッカー用コンプレッサー6によって空気が供給されて拡張し、送信孔h1、受信孔h2を閉塞させるものである。パッカーP1〜P8とパッカー用コンプレッサー6との間には、パッカー用圧力調整器7が設けられ、パッカーP1〜P8の拡張圧を調整することができる。本実施形態では、パッカーの拡張圧を約0.7〜0.8MPaとしている。
【0024】
ロッド2,3は円筒状を成し、外周面にはパッカーP1〜P8が長手方向に所定間隔離間して装着されている。送信区間SはパッカーP1,P2によって区切られ、受信区間T0はパッカーP2,P3によって区切られ、受信区間T1はパッカーP4,P5によって区切られ、受信区間T2はパッカーP5,P6によって区切られ、受信区間T3はパッカーP6,P7によって区切られ、受信区間T4はパッカーP7,P8によって区切られ、受信区間T5はパッカーP6と受信孔h2の底面によって区切られる。なお、本実施形態では、送信区間S、受信区間T0〜T5の深さ方向の長さは約5mとされている。
【0025】
空気供給部4は、送信区間用コンプレッサー8を備えている。この送信区間用コンプレッサー8によって圧縮された空気は供給側レギュレーター9により圧力調整が行われて圧力チャンバー10に供給される。圧力チャンバー10に供給された空気は、流量制御用レギュレーター11により流量が調整されて、ロッド2内を通過して送信区間Sに供給される。また、圧力チャンバー10と流量制御用レギュレーター11との間には流量計12が接続され、流量計12からの出力値(送気量)は、流量測定用パソコン13に転送される。
【0026】
測定部5は、送信区間S内、受信区間T0〜T5内の圧力を各々測定する圧力計14を備えている。この圧力計14からの出力値は、データロガー15により収集されて圧力測定用パソコン16に転送される。なお、送信区間S内、受信区間T0〜T5内の圧力を検知する圧力センサー(不図示)は、送信区間S内、受信区間T0〜T5内に各々設置されている。また、流量測定用パソコン13と圧力測定用パソコン16とは、互いに接続されてデータの転送が可能な構成とされている。
【0027】
次に、このように構成された孔間透気試験装置1を用いて実行される孔間透気試験方法について説明する。先ず、パッカーP1〜P3が装着されたロッド2を送信孔h1に挿入してパッカーP1〜P3を所定の位置に配置し、パッカー(多連式パッカー)P4〜P8が装着されたロッド3を受信孔h2内に挿入してパッカーP4〜P8を所定の位置に配置する。次いで、圧力センサ、圧力計14、データロガー15、圧力測定用パソコン16の接続を行い、圧力センサからのデータ取得を可能とする。
【0028】
次に、パッカー用コンプレッサー6によって、空気を供給してパッカーP1〜P8を拡張させる。これにより、送信孔h1内に、パッカーP1〜P3によって区切られた送信区間S、受信区間T0が形成され、受信孔h2内に、パッカーP4〜P8、受信孔h2の底面によって区切られた受信区間T1〜T5が形成される。なお、パッカーP1〜P8の拡張時には、送信区間S内、受信区間T0〜T5内の圧力上昇を防止するために、送信区間S、受信区間T0〜T5に接続された圧力測定ライン17を開放する。
【0029】
次に、パッカーP1〜P8の拡張による圧力変動の影響が無くなるのを待ち、流量計12で送気量を計測しながら送信区間S内に空気を送入し、測定部5によって各受信区間T0〜T5の圧力測定を行う。図2は、送気圧と送気量との関係を示すグラフである。縦軸は、送信区間Sへ送入される空気の圧力(送気圧)を示し、横軸は、送信区間Sへ送入される空気の流量(送気量)を示している。本実施形態の孔間透気試験方法では、送信区間Sへの空気の送入は、5段階に分けて行う。図3は、送気量と時間との関係を示すグラフである。縦軸は、送気量を示し、横軸は、送気時間を示している。グラフL1は、第1段階、第5段階における送気量を示し、グラフL2は、第2段階、第4段階における送気量を示し、グラフL3は、第3段階における送気量を示している。各段階における送信区間の圧力は、第1段階では0.1MPa、第2段階では0.2MPa、第3段階では0.3MPa、第4段階では0.2MPa、第5段階では0.1MPaとするのが好ましく、1段階あたりの送気時間は1時間としている。そして、第5段階終了後は、送気による影響を排除するために例えは翌朝まで放置する。このように、送信区間内の圧力は、0、1〜0.3MPaとし低圧としているため、岩盤への悪影響を防止することができ、岩盤が破壊する虞が低減されている。
【0030】
送信区間Sへの空気の送入開始後、各受信区間T0〜T5内の圧力変動を連続的に計測する。そして、第5段階における計測終了後、送信区間Sへの送気を停止した状態で放置して、圧力変動の計測を継続しながら、回復するのを待つ。なお、回復に要する時間は岩盤Bの状態にも異なり、例えば、12時間以上放置するとよい。このような孔間透気試験方法により、送信区間Sへの送気圧力、送気量、各受信区間T0〜T5の圧力変動(圧力変化曲線)を取得することできる。
【0031】
次に、パッカーP1〜P3を減圧して収縮させ、送信区間Sの位置を深さ方向に移動させた後、再びパッカーP1〜P3を拡張して、異なる位置に送信区間(移動した送信区間)Sを形成し、上述したように測定を繰り返す。本実施形態では、送信区間Sを深さ方向の異なる位置に5箇所設定している。
【0032】
次に、上記孔間透気試験方法によって取得された測定データの整理方法について説明する。図4は、測定圧力と時間との関係を示すグラフである。縦軸は、圧力を示し、横軸は、時間を示している。グラフL4は、受信区間における圧力を示し、グラフL5は、送信区間Sにおける圧力を示している。なお、ここでは、一つの受信区間における圧力を一例に示し、その他の受信区間における圧力を示すグラフは、図示を省略している。また、0〜aまでが第1段階であり、a〜bまでが第2段階、b〜cまでが第3段階、c〜dまでが第4段階、d〜eまでが第5段階である。グラフL4のk点において、受信区間における圧力が最高になっている。これは、第3段階(b〜c)における送信側の圧力によるものと考えられ、これにより、送信区間と受信区間との間におけるガス道の存在を把握することができる。なお、孔間が10m以内の場合、1〜数時間程度で圧力応答を観測することができる。
【0033】
図5は、受信区間における圧力変動の最大値を示す表である。表の縦方向において、送信区間Sの深さ方向の位置を深度1〜深度5として示し、深度1から深度5になるにつれて、深い位置を示している。表の横方向において、各受信区間T1〜T5,T0における圧力変動の最大値(単位:kPa)を示している。
【0034】
図6は、図5に示す圧力変動の最大値に基づいて透気係数の分布を模式的に表したイメージ図である。図6において、上部に図示左右方向に延びる受信孔h2を表し、図示右側から受信区間T1〜T5を表している。また、受信孔h2の下方に、図示左右方向に延びる送信孔h1を表し、図示右側から深度1〜深度5における送信区間Sの位置を表している。また、深度5に送信区間Sが設定されたときの受信区間T0を深度6として表している。そして、受信孔h1と受信孔h2との間の線分が、送信区間Sと受信区間T1〜T5との間のガス道を表し、圧力変動の最大値を線分の太さを変えることで模式的に表している。また、深度1から深度2への矢印は、深度1に送信区間Sを設定したときの送信区間Sと隣接する受信区間T0との間のガス道を表している。同様に、深度2から深度3への矢印、深度3から深度4への矢印、深度4から深度5への矢印は、各深度に送信区間Sを設定したときの送信区間Sと受信区間T0との間のガス道を表している。図6のイメージ図により、深度5における送信区間Sと受信区間T2との間の圧力変動の最大値が大きいことが分かる。なお、各受信区間の測定圧力の減衰、圧力変動の到達時間などから透気係数を算出して、孔間の透気係数の分布を示すイメージ図を作成してもよい。
【0035】
このような孔間透気試験方法によれば、岩盤Bに設けられた2つのボーリング孔h1,h2を用い、送信孔h1内に空気が送入される送信区間Sを形成し、受信孔h2内に受信区間T1〜T5を形成し、受信区間T1〜T5の圧力を検出する。岩盤B内において送信区間Sから受信区間T1〜T5に通じるガス道が存在する場合には、送信区間Sに空気を送入すると、受信区間T1〜T5の圧力が変動するため、受信区間T1〜T5の圧力応答を観測することで、送信区間Sと受信区間T1〜T5との間のガス道を調査することができる。これにより、送信孔h1と受信孔h2との間の岩盤Bにおける透気性を把握することが可能となる。また、受信孔h2内に受信区間T1〜T5が複数形成されているため、従来に比して広範囲の岩盤Bにおける透気性の分布を効率良く把握することができる。また、従前のように送信区間S内の圧力を高くする必要がないため、岩盤Bを破壊する虞が低減されている。また、送信区間Sに作用する圧力が低減されているため、パッカーの長さを短くすることができ、低コスト化が図られている。
【0036】
また、送信区間Sを深さ方向に移動させて、送信区間Sを複数の異なる位置(深度1〜深度5)に設定して測定を実施するため、より広範囲の岩盤Bの透気性分布を正確に把握することができる。
【0037】
また、送信孔h1内に、送信区間Sに隣接しパッカーP2,P3によって区切られた受信区間T0を形成し、受信区間T0内の圧力を検出しているため、送信区間Sに隣接する受信区間T0の圧力と、受信孔h2に形成された受信区間T1〜T5との圧力とを比較することで、孔間透気試験による試験結果を検証することが可能となる。受信区間T0の圧力が受信孔h2の受信区間T1〜T5の圧力より高い場合には、受信区間T1〜T5の圧力応答は送信区間Sと受信区間T1〜T5との間のガス道によるものと推測することができる。一方、受信区間T0の圧力が受信孔h2の受信区間T1〜T5の圧力より低い場合には、受信区間T1〜T5の圧力応答は送信区間Sと受信区間T1〜T5との間のガス道によるものではなく、その他の要因によるものと推測することができる。このため、孔間透気試験における信頼性の向上が図られている。また、送信区間Sと受信区間T0との間のガス道を調査することができるため、送信孔h1近傍の透気性を把握することができる。
【0038】
また、送信孔h1内に送入される気体を空気としているため、作業の安全性の向上、及び低コスト化が図られている。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係るグラウト効果判定方法について、図7を参照しながら説明する。図7は、第2実施形態に係る送信孔、受信孔、及びグラウト施工域の配置を示す平面図である。この第2実施形態のグラウト効果判定方法は、上述したように孔間透気試験を行い、この試験結果に基づいて、岩盤Bに施工されたグラウトの効果の判定を行うものである。
【0040】
先ず、グラウトを施工するグラウト施工域(グラウト施工予定域)Gの中心に送信孔h1を設定し、グラウト施工域G外側において同心円上に複数(本実施形態では8箇所)の受信孔h2を設定する。なお、受信孔h2は少なくとも1つあればよい。次に、これらの送信孔h1及び受信孔h2を用いて、第1実施形態に記載の孔間透気試験をグラウト施工前に行う。
【0041】
次に、グラウトを施工する。ここでは、ボーリング孔h1を用いてグラウト材(例えば、モルタル)を注入する。その後、グラウト材がボーリング孔の周囲に形成された隙間を通じて流出して広がり、岩盤が補強される。
【0042】
そして、グラウト施工後に、再びグラウト施工前と同様に孔間透気試験を行う。これらのグラウト施工前後の試験結果に基いて、図2〜図6に示すようにデータ整理を行う。グラウト施工前の試験結果に基づくグラフとグラウト施工後の試験結果に基づくグラフとを比較することで、グラウトの効果の判定を行う。送気量の低下、受信区間の測定圧力の低下、受信区間における圧力応答の時間的な遅れが検出された場合には、グラウトの効果が有ると判定することができる。
【0043】
このようなグラウト効果判定方法によれば、岩盤Bにおけるグラウト施工域G内に配置された送信孔h1内にガスが送入される送信区間を形成し、グラウト施工域G外に配置された受信孔h2内に受信区間を形成し、受信区間の圧力を検出している。岩盤B内において送信区間からグラウト施工域Gを通り受信区間に通じるガス道が存在する場合には、送信区間にガスを送入すると、受信区間の圧力が変動するため、受信区間の圧力応答を観測することで、送信区間と受信区間との間のガス道を調査することができる。これにより、送信孔h1と受信孔h2との間の岩盤Bにおけるグラウト施工域Gの透気性を把握することができる。このため、グラウト施工域Gにおけるグラウトの効果を判定することができる。
【0044】
また、グラウト施工前に受信区間の圧力を検出し、グラウト施工後に受信区間の圧力を検出し、グラウト施工前に検出された圧力と、グラウト施工後に検出された圧力とを比較してグラウト施工域におけるグラウトの効果を判定するため、グラウト施工域の効果の確認を一層確実に行うことができる。
【0045】
また、受信孔h2を複数箇所設定しているため、広範囲の岩盤における透気性の分布を一層効率よく確実に把握することができる。
【0046】
なお、第2実施形態において、送信孔h1をグラウト施工域G内に配置し、受信孔h2をグラウト施工域G外に配置しているが、送信孔h1及び受信孔h2の位置は、これに限定されない。例えば、送信孔h1をグラウト施工域G外に配置して、受信孔h2をグラウト施工域G内に配置してもよい。また、図8に示すように、送信孔h1をグラウト施工域G外に配置して、グラウト施工域Gを挟んで反対側に、受信孔h2を配置してもよい。要は、送信孔h1と受信孔h2との間に、グラウト施工域Gが存在するように配置すればよい。
【0047】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、送信区間Sに隣接して受信区間T0を設けているが、受信区間T0を形成せずに孔間透気試験を実施してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、送信区間に送入するガスを空気としているが、窒素ガス等の不活性ガスであってもよく、その他のガスでもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、送信区間への空気の送入を5段階に分けて実施しているが、送信区間Sへの空気の送入は5段階に限定されず、例えば、4段階、6段階等であってもよく、1段階でもよい。また、その送気圧力も、0.1〜0.3MPaに限定されず、例えば、0.4MPa等、その他の圧力であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る孔間透気試験装置を示す概略構成図である。
【図2】送気圧と送気量との関係を示すグラフである。
【図3】送気量と時間との関係を示すグラフである。
【図4】測定圧力と時間との関係を示すグラフである。
【図5】受信区間における圧力変動の最大値を示す表である。
【図6】図5に示す圧力変動の最大値に基いて透気係数の分布を模式的に表したイメージ図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る送信孔、受信孔、及びグラウト施工域の配置を示す平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る送信孔、受信孔、及びグラウト施工域の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…孔間透気試験装置、B…岩盤、h1…送信孔(第1のボーリング孔)、h2…受信孔(第2のボーリング孔)、G…グラウト施工域、P1〜P8…パッカー(閉塞部材)、S…送信区間、T0…受信区間(他の受信区間)、T1〜T5…受信区間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤に設けられた第1のボーリング孔内に、閉塞部材によって区切られた送信区間を形成し、
岩盤に設けられた第2のボーリング孔内に、閉塞部材によって区切られた受信区間を複数形成し、
前記送信区間内に気体を送入し、
前記受信区間内の圧力を検出して、前記送信区間と前記受信区間との間における気体の通過を把握することを特徴とする孔間透気試験方法。
【請求項2】
前記第1のボーリング孔内に、前記送信区間に隣接し閉塞部材によって区切られた他の受信区間を形成し、
前記他の受信区間内の圧力を検出することを特徴とする請求項1記載の孔間透気試験方法。
【請求項3】
前記第1のボーリング孔の深さ方向において前記送信区間と異なる位置に、閉塞部材によって区切られた送信区間を順次移動させて形成し、
この移動した送信区間内に気体を送入し、
前記受信区間内の圧力を検出して、前記移動した送信区間と前記受信区間との間における気体の通過を把握することを特徴とする請求項1又は2記載の孔間透気試験方法。
【請求項4】
前記送信区間内に送入される気体は空気であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の孔間透気試験方法。
【請求項5】
前記第2のボーリング孔を複数箇所設定し、
各第2のボーリング孔内に、前記受信区間を複数形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の孔間透気試験方法。
【請求項6】
岩盤を補強するグラウトが施工されたグラウト施工域を挟んで、一方の側に前記第1のボーリング孔を設定し、他方の側に前記第2のボーリング孔を設定し、
前記請求項1〜5に記載の孔間透気試験方法によって検出された前記受信区間の圧力に基いて、前記グラウト施工域におけるグラウトの効果を判定することを特徴とするグラウト効果判定方法。
【請求項7】
グラウト施工前に前記受信区間の圧力を検出し、
グラウト施工後に前記受信区間の圧力を検出し、
グラウト施工前に検出された圧力と、グラウト施工後に検出された圧力とを比較して前記グラウト施工域におけるグラウトの効果を判定することを特徴とする請求項6記載のグラウト効果判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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