説明

学習システム

【課題】学習内容の記載と音声や映像等のデータとの同期が可能で、容易に複製可能な教材を作成することができる学習システムを提供すること。
【解決手段】教材に付された識別子を読み出すことにより音声データ及び映像データのうち少なくとも一方を出力して学習を行う学習システムにおいて、生徒の成績や学習の進捗度などのデータが記憶された学習管理データベースと、教材のデータ及び前記教材に記載された内容に対応づけた識別子のデータが記憶された識別子データベースと、識別子データベースのデータを紙に印刷して教材を作成する印刷手段と、学習管理データベースに記憶された内容に基づいて、適当な教材のデータ及び識別子のデータを印刷手段に送信する制御手段と、識別子を読み取り可能な読み取り手段と、読み取り手段から受信した識別子のデータを出力する出力手段と、を少なくとも具備してなることを特徴とする、学習システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は学習システムに関し、より詳しくは紙の教材に音声や映像などのデータを取り出すことが可能な識別子を付し、生徒の学習進捗度にあわせた教材を適宜出力して提供する学習システムに関する。
【背景技術】
【0002】
英語をはじめとする第二言語の学習の必要性は高まるばかりである。特に、言語学習においては幼少期から学習させることが早期習得の近道ともいわれ、幼児や小中学生向けの学習教材及び学習環境の充実が求められている。
【0003】
近年は、いわゆるオープン教室と呼ばれる、生徒一人一人のレベルに合わせて個別学習が可能な学習方法が注目されている。本方法によれば、生徒は自己のレベルに合わせた教育を受けることができるため、非常に効率よく学習を進めることができる。
【0004】
一方で、従来の一般的な学習は、多数の生徒がいる教室においてビデオやCDを連続的に流し、ヒアリングを学習させることが多い。
このような学習スタイルは、ビデオやCDから流れる音声が一方的に流れるのみで生徒にとっては学習態度が自ずと受動的になり、学習に対する積極的な姿勢を維持することが難しい。
また、ある特定のフレーズのみを繰り替えし聞きたくても自分の思うように再生できないなどの、テキストと音声の不同期は避けられず、非効率的な学習となっていた。
【0005】
特許文献1には、カードにICタグを配設し、当該ICタグをリーダ部で読み取ることにより、カードに描かれた絵に相当する英単語をDVDプレーヤーあるいはCDプレイヤーから音声を出力する学習システムが開示されている。
【特許文献1】特開2004−233411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の学習システムでは以下の問題があった。
<1>ICタグを含めた状態での学習教材の複製がコピー機などによってできないため、取り扱いが面倒で学習しづらい。
【0007】
<2>ICタグを付した学習教材を購入すると在庫の管理が必要となる。
【0008】
<3>ICタグのコストが未だ安易に使用できるまでに至っておらず、学習教材一式を購入する場合にコスト高となる。
【0009】
<4>学習教材の作成に、印刷工程とタグの取り付け工程の2つが必要となり、効率が悪い。
【0010】
従って、本発明の目的は、テキストと音声データ及び映像データの同期が可能で、容易に複製可能な教材を作成することができる学習システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、教材に付された識別子を読み出すことにより音声データ及び映像データのうち、少なくとも一方を出力して学習を行う学習システムにおいて、生徒の成績や学習の進捗度などのデータが記憶された学習管理データベースと、教材のデータ及び前記教材に記載された内容に対応づけた識別子のデータが記憶された識別子データベースと、識別子データベースのデータを紙に印刷して教材を作成する印刷手段と、学習管理データベースに記憶された内容に基づいて、適当な教材のデータ及び識別子のデータを印刷手段に送信する制御手段と、識別子を読み取り可能な読み取り手段と、読み取り手段から受信した識別子のデータを出力する出力手段と、を少なくとも具備してなることを特徴とする、学習システムを提供するものである。
【0012】
また、本願の第2発明は、本願の第1発明に記載の学習システムにおいて、学習管理データベースと、識別子データベースと、制御手段とを少なくとも具備してメイン端末が構成され、読み取り手段と、出力手段とを少なくとも具備してサブ端末が構成され、メイン端末と印刷手段は少なくとも1台ずつ設け、サブ端末は生徒に1台ずつ付与して構成することを特徴とする、学習システムを提供するものである。
【0013】
また、本願の第3発明は、本願の第1発明又は第2発明に記載の学習システムにおいて、出力手段は、音声データ及び映像データのうち少なくとも一方を格納したデータベースを有し、識別子に埋め込まれたアドレスデータを基に当該データベースを参照してデータを取り出して再生することを特徴とする、学習システムを提供するものである。
【0014】
また、本願の第4発明は、本願の第1発明又は第2発明に記載の学習システムにおいて、出力手段は、識別子に埋め込まれたテキストデータを音声合成して再生することを特徴とする、学習システムを提供するものである。
【0015】
また、本願の第5発明は、本願の第1発明又は第2発明に記載の学習システムにおいて、出力手段は、識別子に埋め込まれたデータを直接再生することを特徴とする、学習システムを提供するものである。
【0016】
また、本願発明の学習システムは、英語などの言語学習に用いる言語学習システムとして利用してもよい。
【0017】
例えば、言語教材に付された識別子を読み出すことにより音声を出力して言語学習を行う言語学習システムにおいて、生徒の成績や学習の進捗度などのデータが記憶された学習管理データベースと、言語教材のデータ及び前記言語教材に記載された内容に対応づけた識別子のデータが記憶された識別子データベースと、識別子データベースのデータを紙に印刷して言語教材を作成する印刷手段と、学習管理データベースに記憶された内容に基づいて、適当な言語教材のデータ及び識別子のデータを印刷手段に送信する制御手段と、識別子を読み取り可能な読み取り手段と、読み取り手段から受信した識別子のデータを音声として出力する音声出力手段と、を少なくとも具備してなることを特徴とする、言語学習システムを提供することができる。
【0018】
また、前記言語学習システムにおいて、学習管理データベースと、識別子データベースと、制御手段とを少なくとも具備してメイン端末が構成され、読み取り手段と、音声出力手段とを少なくとも具備してサブ端末が構成され、メイン端末と印刷手段は少なくとも1台ずつ設け、サブ端末は生徒に1台ずつ付与して構成することを特徴とする、言語学習システムを提供することができる。
【0019】
また、前記言語学習システムにおいて、音声出力手段は、音声データを格納した音声データベースを有し、識別子に埋め込まれたアドレスデータを基に当該音声データベースを参照して音声データを取り出して再生することを特徴とする、言語学習システムを提供することができる。
【0020】
また、前記言語学習システムにおいて、音声出力手段は、識別子に埋め込まれたテキストデータを音声合成して再生することを特徴とする、言語学習システムを提供することができる。
【0021】
また、前記言語学習システムにおいて音声出力手段は、識別子に埋め込まれた音声データを直接再生することを特徴とする、言語学習システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>各生徒の学習進捗度に応じて制御手段から印刷手段を介して適当な教材を適宜出力することができるため、在庫の管理が不要となる。
<2>教材の内容と、内容に対応する識別子を紙に印刷するため、コピー機などによる複製が容易で学習教材として取り扱いやすい。
<3>教材の内容と識別子を印刷手段で同時に付与することができ、効率性が高い。
<4>識別子に直接テキストデータを埋め込んだり、直接音声データあるいは映像データを埋め込むことにより、出力手段内のデータベースを省略することができ、システムの簡易化、低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、本発明の学習システムを、英語などの言語学習システムに用いた場合の実施例を示す。
【0025】
<1>全体構成
図1に本発明の学習システムの実施例の構成図を示す。
本発明の学習システムは、生徒の成績や学習の進捗度などのデータが記憶された学習管理データベース100と、教材のデータ及び前記教材に記載された内容に対応づけた識別子710のデータが記憶された識別子データベース200と、識別子データベースが有するデータを紙に印刷して教材700を作成する印刷手段300と、学習管理データベースに記憶された内容に基づいて、適当な教材のデータ及び識別子のデータを印刷手段300に送信する制御手段400と、識別子を読み取り可能な読み取り手段500と、読み取り手段500から受信した識別子のデータを出力する出力手段600と、を少なくとも具備して構成される。以下に上記システムの使用例を説明する。
【0026】
<2>学習管理データベース100
学習管理データベース100は、各生徒個別の成績や学習の進捗度などのデータが記憶されており、学習の進捗に応じて更新される。
学習時に生徒に与える教材は、後述する制御手段400がこの学習管理データベース100を参照することによって適宜決定する。
【0027】
<3>識別子データベース200
識別子データベース200は、教材のデータ及び前記教材に記載された内容に対応づけた識別子のデータが記憶されており、制御手段400が学習管理データベース100を参照して生徒に提供すべき学習教材のデータを識別子データベース200から取り出して、印刷手段300に送信する。
【0028】
<4>印刷手段300、制御手段400
制御手段400は、CPUなどに代表される演算処理を行う手段である。上述したように、制御手段400は学習管理データベース100及び識別子データベース200を参照して、各生徒に応じた学習教材のデータと識別子710のデータを印刷手段300に送信し、適宜紙に印刷して教材700を作成する。
【0029】
<5>読み取り手段500
読み取り手段500は、教材700に付される識別子710を読み取り可能な周知の読み取り機を用いる。
幼児や小学生などの低年齢を対象とする学習システムである場合には、軽量、小型なペン型で、筆記用具としても併用可能なコードリーダーを用いることが望ましい。
【0030】
<5>出力手段600
出力手段600は、識別子710に対応した音声データが記憶されたデータベースを有し、読み取り手段500から受信した識別子710のデータに対応するデータを前記データベースから取り出し可能に構成する。
取り出された音声は学習環境に応じて、スピーカやヘッドフォンなどに出力される。
【0031】
<6>教材700
図2に、教材の一例を示す。図2の欄aには「bike」の文字と、自転車の絵が付され、欄の右隅に識別子710が付されている。例えばこの識別子には「bike」の発音データを埋め込んでおく。
【0032】
識別子710の種類は、バーコードや2次元コードなど、多種多様なコードを使用することができる。各コードが有するデータの保有量はそれぞれ異なるため、コードに埋め込むデータ量に合わせたコードを適宜選択して使用する。
【0033】
識別子710に埋め込むデータ形式は様々な形式が考えられる。例えば、各データベースのアドレスデータを記憶しておいてもよいし、テキストデータ(文字データ)を直接埋め込んでおいて、出力手段に、テキストデータを音声データに合成する音声合成回路を備えて、当該ソフトウェアから生成された音声を出力してもよい。
また、識別子に、音声フォーマット形式のデータを直接埋めこんでおき、出力手段に、従来知られる音声再生回路を備えて音声を出力してもよい。
【0034】
<7>システムの使用例
次に、本発明に係る学習システムを、いわゆるオープン教室において適用する際の実施例について説明する。
【0035】
教室には、学習管理データベース100と、識別子データベース200と、制御手段とを少なくとも備えたメイン端末Aを備えておく。前記メイン端末Aは例えばPCによって構築される。
【0036】
印刷手段300はメイン端末Aに接続され、制御手段400からの印刷指令によって識別子データベース200が有するデータを紙に印刷して教材710を作成することができる。印刷手段300は周知のプリンタを用いる。
【0037】
生徒は読み取り手段500と、出力手段600とを少なくとも具備して構成されるサブ端末Bを用いて学習を行う。
前記サブ端末Bは、例えば携帯型のPCや、PDA、携帯音楽プレーヤなどの装置にコードリーダを接続して構成することができる。
【0038】
生徒は、前記印刷手段300から印刷された教材700と前記サブ端末Bを使用して学習する。
教材700に付された識別子710を読み取り手段500によって読み取った信号は出力手段600に送られる。出力手段600では、前記信号に対応する音声データを前記データベースから取得して、ヘッドフォンから音声を流すことにより、ヒアリング学習を行うものである。
【0039】
本発明によれば、オープン教室などの個別学習の環境や自習の際において、生徒一人一人が、ヒアリング学習時の再生を自分でコントロールすることができ、生徒個人に応じた学習環境を提供することができる。
また紙の教材700に直接識別子710が付されているため、複製や再印刷が容易にでき、生徒は教材への書き込みや廃棄が気軽に行えるため、学習の効率性が非常に高まる。
【0040】
<8>本システムの構成の他の実施例
なお、本実施例においては、各手段が有する機能を振り分けてメイン端末A、サブ端末Bと区分けしたが、本発明に係る学習システムは、前記の構成に限定されるものではない。
例えば、本システムが有する全ての機能を内包した端末を生徒各自に提供しても良いし、各手段のインターフェースを無線で接続してワイヤレスの端末を使用してもよい。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明の学習システムを数学や理科などの教科において使用する場合の実施例を示す。
【0042】
このとき、データ出力手段600にて取り出すデータは、音声データ及び映像データのうち少なくとも一方のデータが挙げられ、各データに対応する周知の装置を用いるものとする。
たとえば、取り出すデータが音声データの場合には、ヘッドフォンやスピーカなどの音声出力装置を用い、映像データの場合には、液晶ディスプレイや、有機ELなどの映像表示装置を用いるものである。
【0043】
教材700に埋め込まれる教材補助データから映像を取り出して数学におけるグラフの軌跡を表示したり、理科の実験の様子を表示することで、視覚の面からも効率的に学習内容の理解が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の学習システムの概略構成図。
【図2】本発明の学習システムで出力される教材の一例を示す図。
【符号の説明】
【0045】
100・・・学習管理データベース
200・・・識別子データベース
300・・・印刷手段
400・・・制御手段
500・・・読み取り手段
600・・・出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
教材に付された識別子を読み出すことにより音声データ及び映像データのうち、少なくとも一方を出力して学習を行う学習システムにおいて、
生徒の成績や学習の進捗度などのデータが記憶された学習管理データベースと、
教材のデータ及び前記教材に記載された内容に対応づけた識別子のデータが記憶された識別子データベースと、
識別子データベースのデータを紙に印刷して教材を作成する印刷手段と、
学習管理データベースに記憶された内容に基づいて、適当な教材のデータ及び識別子のデータを印刷手段に送信する制御手段と、
識別子を読み取り可能な読み取り手段と、
読み取り手段から受信した識別子のデータを出力する出力手段と、を少なくとも具備してなることを特徴とする、
学習システム。
【請求項2】
請求項1に記載の学習システムにおいて、学習管理データベースと、識別子データベースと、制御手段とを少なくとも具備してメイン端末が構成され、読み取り手段と、出力手段とを少なくとも具備してサブ端末が構成され、メイン端末と印刷手段は少なくとも1台ずつ設け、サブ端末は生徒に1台ずつ付与して構成することを特徴とする、学習システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の学習システムにおいて、出力手段は、音声データ及び映像データのうち少なくとも一つを格納したデータベースを有し、識別子に埋め込まれたアドレスデータを基に当該データベースを参照してデータを取り出して再生することを特徴とする、学習システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の学習システムにおいて、出力手段は、識別子に埋め込まれたテキストデータを音声合成して再生することを特徴とする、学習システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の学習システムにおいて、出力手段は、識別子に埋め込まれたデータを直接再生することを特徴とする、学習システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate