説明

宅配便用物品梱包具

【課題】 依頼者側が、修理依頼の物品を梱包する手数をなくす。
【解決手段】マット1と外層シート2と緩衝体4との組み合わせである。マット1は、気密性を有する方形のシートであり、気密に封止され、外層シート2に積層一体化され、梱包領域Waを構成する。梱包領域Waは、物品Mをはさんで2つ折に折り重ねる部分であり、その延長部分に形成された外層シート2のフラップ5は、マット1の折り曲げ部分の隙間を塞ぐカバー形成領域Caとなる。緩衝体4は、マット1内の空気が抜き取られて袋体の容積が減少したときに、マット1に梱包された物品の形状になじんで充填密度が増大し、物品Mの表面に密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の梱包具、特に修理依頼物品の宅配に好適な物品梱包具に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を輸送する際には、輸送中に受けるかもしれない衝撃や振動などから物品を有効に保護するため、通常は緩衝性を有する紙やプラスチックシートその他の緩衝材を用いて梱包し、更に、必要に応じて物品が動かないよう詰め物をして梱包される。
【0003】
最近、宅配業務において、ノートパソコン、デジタルカメラといった電子機器類をメーカーや量販店の修理センターに配送する依頼が急増している。ノートパソコン、デジタルカメラといった製品は、量販店、小売店から購入する際には、専用の包装箱内に梱包されているのが通例であり、その箱を廃棄せずに残しておけば、修理依頼の時にも利用できるが、現実にはほとんどが製品の購入直後に廃棄されるので、修理依頼の場合には有り合わせの箱を利用される。
【0004】
もっとも、宅配業者においては、種々の大きさの箱を用意して顧客の要求に対応してはいるものの、製品の大きさ、形状は多種多様であって、宅配業者が用意する箱ですべてに対応することは難しい。
【0005】
包装とは、日本工業規格(JIS Z 101)によれば、「物品の輸送、保管などにあたって、価値及び状態を保護するために適切な材料、容器などを物品に施す技術及び施した状態をいい、これを個装、内装及び外装の3種に分ける。」とあり、製品の販売時には、「個装」つまり、物品個々を包装し、物品の商品価値を高めるため、又は物品を保護するために適切な材料容器などを物品に施すことが必要であるが、修理のために、製品の運送を宅配業者に依頼するようなときには、製品販売時のような「個装」は必要ではなく、要するに輸送中に受けるかもしれない衝撃や外力から製品を有効に保護できればよいのであって、必ずしも、包装箱を使用しなければならないということではない。
【0006】
したがって、物品をメーカーや量販店の修理センターに配送する場合には、その物品を袋に入れてそのまま運送できれば便利である。とはいえ、単なる紙袋やビニール袋では安全が確保できない。袋を使用するときには、衝撃から製品を守るための特別の工夫が必要である。たとえば、特許文献1には、物品を収納する袋状の物品収納部と、この周辺部の少なくとも1部に連接され、緩衝剤を封入して物品収納部に対する外部からの衝撃を和らげる袋状の緩衝部とからなる包装体が記載されている。
【0007】
また、物品運送用の袋ではないが、買い物袋などとして使用することを目的とした保温袋として、特許文献2には、発泡粒状体の断熱効果を利用した袋が記載されている。この保温袋は、相互間に粒状体収容部を形成して自在に変形可能な内側袋部及び外側袋部を有する2重袋で、保温物を収納可能に形成され、かつ前記両袋部の内の少なくとも外側袋部が非通気性をなす袋本体と、前記粒状体収容部に収容されこの収容部が脱気されるにつれて互いに密着状態に集合して固化状態となる無数の発泡粒状体と、前記粒状体収容部に連通して前記袋本体に設けられ、前期粒状体収容部が脱気した状態を保持する開閉弁を有する給排気口とを具備したことを特徴とする保温袋である。
【0008】
特許文献2に記載された保温袋によれば、粒状体収容部内に収容されている無数の発泡粒状体を被保温物の形状に沿うように固化状態とすることによって、袋本体内で被保温物の周囲の空気の対流による熱損失をなくすとともに、発泡粒状体群で断熱ができるから、被保温物の温度変化を長時間にわたり抑制できるとともに、前記固化状態の発泡粒状体で被保温物を袋本体内で動かないように位置決めすることによって、被保温物が動くことに基づく被保温物の品質劣化を防止できるという効果が強調されている。
【0009】
特許文献2に記載の保温袋は、被保温物の形状に沿うように固化状態として発泡粒状体群の断熱効果を被保温物の保温に利用したものであるが、前記固化状態の発泡粒状体で被保温物を袋本体内で動かないように位置決めできることは、固化状態とした発泡粒状体群は断熱効果だけでなく、緩衝効果を期待でき、また、物品を定位置に安定に保持できることは、宅配便として輸送される物品を梱包する上にも大きな効果が期待できる。
【0010】
ただ、特許文献2に記載の保温袋は買い物袋としての使用が想定されたものであって、特許文献2に記載された袋のままでも一応宅配便用物品収納袋として利用できないわけではないが、このままでは単なる袋であって、顧客が宅配便のためにこの袋を所持しているわけに行かず、逆に梱包宅配業者が顧客に提供するとしても、製品の種類に応じて各種の大きさのものを準備しておくことは難しく、使い切りの袋としてはコスト高となって現実的ではない。さらに、問題なのは従来の物品の宅配を宅配業者に依頼するときには、依頼者が物品を梱包して業者に配送を依頼するという構想であったということである。
【特許文献1】特開2008−74451
【特許文献2】特開2001−321217
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、依頼者が物品を梱包して業者に配送を依頼するという構想から脱却して依頼者側において、修理依頼の物品を梱包する必要をなくすことができないかという点、その解決策として特許文献2に記載されたような袋のままでも宅配便用の物品梱包袋として使用できないわけではないが、買い物用の袋のままでは梱包宅配業者が顧客から預かった物品を集荷時に梱包して輸送に供するには必ずしも十分ではなく、宅配便として運送を依頼された物品の梱包により好ましい使用形態があるはずであるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、外層シートと、マットと、マット内に充填された緩衝体との組み合わせからなる宅配便用物品梱包具である。外層シートは、マットの表面保護カバーであり、マットは、外層シートと一体に積層されている。このマットを広げた状態でその一部に物品を搭載し、残部を物品上に折り重ねた状態で、両側縁を封止し、マット内を脱気することによってマットを固化させ、さらに梱包具に付設されたフラップをマットの上に折り重ねてマットの端縁開口を塞いで物品を梱包することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による梱包具によれば、宅配業者が依頼先に持参した梱包具を広げた状態でその一部に宅配便として預かる物品を置き、梱包具のマットを物品上に折り重ね、両側縁をファスナーで封止するとともに手持ちのポンプでマット内を脱気することによって、マットを物品に密着させ、マット内の固化した緩衝体に表面各部が保護された状態で梱包され、そのまま車両に積み込んで運送することができる。
【0014】
また、配送先では、給排気栓を開くだけで梱包具を物品から取り外すことができ、その脱着は容易である。本発明の梱包具は、物品を包み込んで物品に密着させるものであるため、2以上の物品であっても互いに定位置に保持した状態で梱包することができる。
本発明によれば、宅配業者が所持し、依頼先に持参し、配送先から回収して繰返し使用する梱包具として活用することができ、使い切りの梱包箱のように使用後廃棄物を出さないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ノートパソコンその他の物品の修理を補修センターに依頼する際に依頼者側において、修理依頼の物品を梱包する必要をなくすという目的をマット内に緩衝体が充填された梱包具を用い、そのマットで物品を包み、マット内を脱気し、緩衝体を固化させ、マットを物品表面に定着させることによって実現した。
【実施例1】
【0016】
図1(a)〜(c)は、本発明による梱包用梱包具の1実施例を示す展開図である。梱包用梱包具は、マット1と、外層シート2と、マット1内に充填された緩衝体4との組み合わせからなっている。図1において、外層シート2は、マット1の表面保護カバーであり、この実施例は、マットを外層シート2と内層シート3間に形成するものである。すなわち、梱包具1は、それぞれ柔軟性、気密性を有する方形の外層シート2と内層シート3との2層のシートと、両シート間に形成されるマット1に充填した緩衝体4との組み合わせからなるものである。
【0017】
外層シート2および内層シート3は、横長(縦置きにしたときには縦長)の方形のシートであり、外層シート2は、内層シート3より長く、内層シート3と外層シート2とは、各々の一端をそろえて上下に重ね合わされ、両シート2,3の重ね合わせ部分は、物品の梱包領域Waとなり、梱包領域Waを形成する内層シート3の全周は、一定の幅で外層シート2に気密に封止されてマット1を構成し、外層シート2の延長部分は、フラップ5としてマット1の折り曲げによって形成される開口を塞ぐカバー形成領域Caとなる。
【0018】
緩衝体4は、マット1の袋体内の空気が抜き取られて袋体の容積が減少したときに、マット1に梱包された物品の形状になじんで充填密度が増大し、マット1を物品の表面に密着させ、外部から受ける衝撃を緩和させる機能を有するものである。このような機能を有するものは、例えば合成樹脂発泡体のビーズであり、両シート2、3の物品の梱包領域に形成されたマット1内に充填されている。なお、マット1には、給排気用のバルブ6を有し、梱包領域Waの外層シート2のシート面の一部、特に外層シート2の端縁付近には、給排気用のバルブ6の給排気口を位置させる。
【0019】
バルブ6は、マット1内を脱気したときに外気からの給気を阻止する逆止弁であり、両シート2、3間内に空気を送り込むときには、図示は略すが、手動操作によって、バルブ6を強制的に開弁する機構を有するものである。
【0020】
梱包領域Waは、その全長の中間部位O−O(図1(a)参照)を基点として2つ折に折り曲げられて底部Bと表部Cとを形成し、物品の梱包領域Waを形成する両シート2、3の両側縁には、中間部位O−Oを基点として梱包領域Waを2つ折に折り曲げたときにその両側に形成される隙間を開閉するファスナー7を取り付けている。
【0021】
さらに、カバー形成領域Waを形成する外層シート2の内端縁と、梱包領域Waの表部Cを形成する外層シート2のシート面の対応する箇所とには、梱包領域Waを2つ折に折り曲げたときの底部Bと表部C間を閉じる面ファスナー8をそれぞれ取り付けている。なお、カバー形成領域Caであるフラップ5の外面一部には、宅配用の伝票ホルダー9を取り付ける。伝票ホルダー9は、内部に収容した伝票の文字を透視させる透明シートを有するポケットである。
【0022】
この実施例において、内層シート3には熱可塑性ポリウレタンシート又は塩化ビニルシートを用い、外層シート2には熱可塑性ポリウレタンシート、塩化ビニルシート、柔軟性があるメタロセン系ポリエチレンとEVOH/ポリエチレンのラミフィルムまたは、メタロセン系ポリエチレンとガスバリアナイロンのラミフィルム、ナイロン6、ナイロン66基布/熱可塑性ウレタンターポリン、ナイロン6、ナイロン66基布/塩化ビニルターポリン又はポリエステル基布/熱可塑性ウレタンターポリン、ポリエステル基布/塩化ビニルターポリンを用いている。この実施例において、マット1は、内外シート2,3間に形成するため、内外シート2,3には、気密シートを用い、また、両シートの縁は気密に封止しなければならない。
【0023】
緩衝体4にビーズを用いたときには、マット1内で部分的な偏りが生じないように充填することが必要である。この実施例においては、多数のビーズを全面に渡って偏りがないように、ポリエステルスパンボンド不織布又はナイロンスパンボンド不織布を用いた通気性を有する袋をいくつかの細長い袋状に区画し、各区画内には、それぞれ同量ずつ定量のビーズを充填し、これを内外層シート2、3間に差し込んで外観を平坦なマットに仕上げることもできる。
【0024】
ビーズは、発泡ポリエチレンあるいは発泡ポリスチレンの粒状体であり、その粒径の大きさは問わないが、粒径が小さいほど物品の形状によくなじませることができる。
【0025】
次に本発明による梱包用マット1の使用例について説明する。たとえば、ノートパソコンが故障し、その使用者が修理をメーカーの修理センターに依頼する場合を考える。通常ノートパソコン(以下物品Mと略称する)の修理依頼のための運送は宅配業者に依頼される。依頼者は、自らはノートパソコンの輸送のための梱包は不要である。依頼者(宅配業者の顧客)が宅配業者に物品Mの運送を依頼すると、宅配業者は、本発明による梱包マットと脱気用ポンプとを持参して依頼者の指定する場所(自宅、事務所など)を訪問し、依頼者から物品Mを受け取る。
【0026】
宅配業者は、その訪問先で持参した梱包用マット1の内層シート3の面を上向きにして、図2(a)のように床あるいは卓上に広げ、梱包領域Waの底部B上に預かった物品Mを置き、次に、図2(b)のように梱包領域Waの表部Cを物品M上に折り重ね、さらに、図2(c)のように、ファスナー7によって表部Cと底部Bの両側縁を結合する。図2(c)は、2つ折にした物品Mの梱包領域Waの表部Cと底部Bの間に物品Mを挟み、その両側縁を閉じているが、端縁の隙間はいまだ開放された状態を示している。
【0027】
この状態で、図3(a)に示すようにバルブ6にポンプ10を取り付け、ポンプ10を操作して袋体内、すなわち内層シート3と外層シート2間の空気を抜き取る。内層シート3と外層シート2間が脱気されるにしたがって内層シート3のシート面が物品Mの表面に押し付けられ、内層シート3と外層シート2間の間隔が狭まり、この間に緩衝体4が互いに密に集合して自由な動きが阻止され、マット1は、図3(b)に示すように物品Mに密着し、これを定位置に保持した状態で固化状態となる。
【0028】
その後、図2(d)のように、フラップ5を物品Mの表面を覆う外層シート2の表部C上に折り返し、フラップ5と表部Cとの面ファスナー8を接着して表部Cと底部B間の隙間を閉止し、伝票ホルダー9に配送伝票を挿入し、宅配便として預かり、配送先であるパソコンの修理センターに宅配貨物として運送する。
【0029】
マット1の袋体内に空気が送入されない限り、マットは物品Mに密着して物品Mを安定に支え、袋体内に充填された多数のビーズその他の緩衝体の緩衝作用によって、外部から受けた衝撃、振動は緩和される。
【0030】
配送先で貨物を開梱するときには、マット1に取り付けられたバルブ6を開くど、マット1内にはおのずから外気が導入され、緩衝体の密着状態が解消されて、マット1は柔らかくなり、梱包の包みを自由に開くことができる。
【0031】
マット1を開梱して中から取り出だした物品Mを配送伝票とともにパソコンの修理センター側に引き渡し、梱包用マットは回収して次の物品の運送に備える。あるいは、マット1を回収センターに預け、物品の修理が終わったのち、顧客に返送するときにそのマット1で物品Mを梱包し、これを宅配便として預かり、顧客に返送後、マット1を引き取る形で回収することもできる。
【実施例2】
【0032】
以上実施例においては、外層シート2と内層シート3間にマット1を形成する例を示した。本実施例は、緩衝体4を充填したマット1は、単独の袋であり、このマット1を外層シート2に組み合わせたものである。図4(a)において、マット1は、長方形の表面シート1aと裏面シート1bとの周縁を封止した気密性を有する袋に、緩衝体4を充填したものであり、バルブ6は、マット1の表面シート1aの一部に取り付けられている。実施例2において、実施例1と同一の構成部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
この実施例においては、外層シート2は、マット1の一面を覆う単なるカバーであり、そのシート面の一部には、前記マットに取り付けたバルブ6を臨ませる小孔Hが開口されているほか、前記カバー形成領域Caを形成する外層シート2の内端縁と、梱包領域Waの表部を形成する外層シート2のシート面の対応する箇所とには、梱包領域Waを2つ折に折り曲げたときの底部Bと表部C間の隙間を開閉する面ファスナー8がそれぞれ取り付けられているのは先の実施例1と同じである。
【0034】
この実施例においては、図5(a)、(b)に示すように、外層シート2の裏側にマット1を重ねて一体化し、バルブ6を外層シート2の小孔Hから外側に引き出し、その給排気口6aにバルブカバー6bをはめ込んでバルブ6を外層シート2に定着させ、次いでマット1の周縁を外層シート2に縫製して両者を一体化する。本実施例においては、梱包領域Waの一側にのみ、中間部位O−O(図1(a)参照)を基点としてファスナー7を取り付けている。図6(a)は、外層シート2の裏面に縫製されたマット1の面を平坦に開いた状態である。
【0035】
この状態から、次に図6(b)のように梱包領域Waを2つ折に折り曲げ、ファスナー7が取り付けられていない側の一側縁を2つ折に折り曲げた状態で縫製による縫い目Sで封止する。これによって、2つ折に折り曲げられた梱包領域Waは、その端縁から片側の側縁にかけて開閉可能となる。
【0036】
この梱包マットの使用時には、梱包領域Waの端縁から一方の側縁にかけて開いた状態で梱包領域Waに物品(図示略)を挿込み、開放された梱包領域Waの一側縁をファスナー7で閉じ、図3(a)の要領で、マット1内の空気を排気して緩衝体4を固化させたのち、フラップ5を物品Mの表面を覆う外層シート2の表部C上に折り返し、フラップ5と表部Cとの面ファスナー8を接着して表部Cと底部B間の隙間を閉じて梱包を完了する点は実施例1と全く同じである。
【0037】
先の実施例1によれば、梱包領域を平面形状に開いて物品を包み込むことができるが、実際には、2つ折に折り曲げられた梱包領域は、その端縁から片側の側縁が開いていれば、実質的に物品の包装には支障はなく、実施例2のように、片側の側縁を縫製による縫い目Sによって閉じておけば、物品収納後、他方の側縁のファスナーを閉じるだけで済むために、梱包作業を短縮できる。
【実施例3】
【0038】
この実施例は、図7のようにマット1のシート面を一定面積の範囲にわたって接合(熱溶着)し、マット1の特定部分には、緩衝体が充填されていない無緩衝部分40を局部的に形成した例である。マット1のすべての面で均等に緩衝作用を得るには、マット1内に均等に緩衝体4を充填することが必要であるが、緩衝体4にビーズを使用するときに、マット内に均等にビーズを充填すると、ビーズの充填に偏りが生じ、マットの厚みが部分的に厚くなりすぎるといった問題が生じる虞がある。
【0039】
このような問題をなくすためには、マット1の表面シートと裏面シートとを適宜熱溶着して緩衝体がない無緩衝部分40を形成することが有効である。無緩衝部分40は、周辺が緩衝体4に支えられる特定部分のマットの上下のシート面一定面積の範囲にわたって接合することによって形成されたものである。
【0040】
具体的には、図7(a)は梱包領域の表部Cと対応する底部Bのそれぞれの中央領域の対応する4箇所に、円形の無緩衝部分40を形成した例である。この例によるときには、図7(b)のように2つ折にしたマット1間に物品を挟んだときに、無緩衝部分40を囲んでその周辺が、マット1に充填された緩衝体4で支えられ、緩衝面積の減少により、物品にかかる衝撃を緩和させることができる。無緩衝部分40は、分散して形成する必要はなく、図7(c)のように表部Cと底部Bのそれぞれの中央領域に、長方形をかたどって無緩衝部分4を形成してもよい。
【0041】
本発明において、緩衝体4は、要するにマット内に充填され、マット内の脱気によって密に圧接され、2つ折にしたマットの梱包領域に挟まれた物品表面を圧接するとともに、物品の横ずれを防止するに必要な摩擦抵抗が得られればよい。この点、ビーズのような粒状の単体は、マット内の脱気によって個々の互いに密着して一体化して物品を加圧し、物品の横ずれを防止しているのである。
【0042】
このような機能は、ビーズに限らず、図8に示すようなポリスチレン製の不定形の小片(ピース)4a(この小片は、通常荷物の梱包の際に物品とともに箱詰めする緩衝材料に用いられているものである。)でもよく、さらには、シート状あるいはネット状に加工されたものであってもよい。図9に、緩衝体として利用できる各種の素材の例を示す。
【0043】
図9(a)〜(d)は、シート面上に分散させて抜き穴を形成した発泡ポリエチレンの押出しシート14の例であり、(a)は同径の円形の抜き穴a、(b)は大小異径の抜き穴b、(c)は星形パターンの抜き穴c、(d)は、×印のパターンの抜き穴dをシート面に縦横方向に分散させて開口した例である。図9(e)は、桃、林檎、梨などの果物を入れる果物用ネット15である。この果物用ネットは、発泡ポリエチレンの紐を格子状に加工したもので1軸方向に伸縮可能である。さらに、図9(f)は、ポリエチレンのシート面に、気泡を封入した独立気泡の細かい突縁eを縦横に突出形成した気泡状緩衝シート16である。
【0044】
面に分散させた穴あるいは突縁を有するシート又はネットは、図9(a)のように1段又は2段以上積層してマット内に充填される。そして、マット1を折り曲げて物品を包み、マット1内を脱気した時には、積層されたシートは互いに密着するとともに、物品の形状を象って固化し、物品の表面を覆い、緩衝材として物品を保護する。シートの面上に形成された穴あるいは突縁は、シートを折り曲げる時のガイドとなって、物品の形状に沿って正確に折り曲げることができ、マットは、内部の空気が抜き取られることによって折り曲げ形状を保持して固化する。これは、ネットを用いた時でも同じである。
【0045】
なお、シート緩衝体にシート又はネットのものを用いたときに、積層枚数によってその緩衝能力の大きさを管理することができる。緩衝体にシート又はネットを使用したときには、ビーズのようにマット内を移動して粗密になるようなことがないため安定した緩衝作用が得られる。またマットの緩衝性は、シートに形成する打ち抜き孔の形状、大きさ、数の設定によって調整できる。さらに、マットの一部に前述の無緩衝部分を形成することによって、梱包物品にかかる衝撃を緩和できる。
【0046】
本発明によれば、緩衝体を充填したマットを2つ折にしてその間に物品をはさみ、マットの袋体内の空気を抜き取るだけで、2つ折にされたマット間で物品を安定に保持させることができ、必ずしも2つ折りにしたマットの両側縁を閉じる必要がないが、宅配便としての信頼性を高めるためには、縫製あるいはファスナーによって封止することが望ましい。もっとも、本発明によるマットで梱包した物品を外箱内にさらに格納するときには、2つ折りにしたマットの両側縁を閉じないままで物品をマット間に保持させたままでも何ら問題は生じない。
【0047】
本発明の梱包用マットによって梱包する物品は、もちろんノートパソコンに限るものではなく、デジタルカメラその他の電子機器類の宅配運送用として、また、CDやDVDのような薄物の物品を2以上重ね合わせて梱包して運送するような場合にも活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明による梱包用マットは、顧客から修理センター間の物品の宅配に用いるだけに限らず、引越しや宅配便による商品の運送、デパート、小売店からの商品の配送、工場や事務所間の物品、書類の輸送に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)は本発明による宅配便用物品梱包具の実施例1の平面図、(b)は底面図、(c)は(b)のX−X線断面図である。
【図2】(a)〜(d)は実施例1の宅配便用物品梱包具を用いて物品を梱包する要領を示す図である。
【図3】(a)は実施例1の宅配便用物品梱包具内を脱気する前の状態を示す図、(b)は脱気後の状態を示す図である。
【図4】実施例2の宅配便用物品梱包具に用いるマットと、外層シートとの組み合わせを示す図である。
【図5】実施例2の宅配便用物品梱包具に用いるマットを外層シートに重ねて縫製した状態を示す図である。
【図6】(a)〜(d)は実施例1の宅配便用物品梱包具の組み立て要領を示す図である。
【図7】(a)は実施例3の宅配便用物品梱包具の展開図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【図8】緩衝体にポリスチレン製の不定形の小片を示す図である。
【図9】(a)〜(f)は、緩衝体として利用できる各種の素材の例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 マット
2 外層シート
3 内層シート
4 緩衝体
5 フラップ
6 バルブ
7 ファスナー
8 面ファスナー
9 伝票ホルダー
10 ポンプ
14 押出しシート
15 果物用ネット
16 気泡状緩衝シート
M 物品
B 底部
C 表部
Wa 梱包領域
Ca カバー形成領域
S 縫製
a,b,c,d 抜き穴
e 突縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層シートと、マットと、マット内に充填された緩衝体との組み合わせからなる宅配便用物品梱包具であって、
外層シートは、マットの表面保護カバーであり、
マットは、外層シートの一部に上下に重ね合わせて一体化され、その一部に排気あるいは送気のためのバルブを有し、重ね合わせ部分は、物品の梱包領域となり、
前記梱包領域は、前記物品をはさんで2つ折に折り重ねる部分であり、
前記外層シートの延長部分は、フラップとしてマットの折り曲げ部分の隙間を塞ぐカバー形成領域であり、
梱包領域の外層シートのシート面の一部には、前記バルブが設けられ、
緩衝体は、マットの袋体内の空気が抜き取られてマットの容積が減少したときに、2つ折のマットに梱包された物品の形状になじんで充填密度が増大して物品の表面形状を象って固化し、外部から受ける衝撃を緩和させる機能を有するものであることを特徴とする宅配便用物品梱包具。
【請求項2】
それぞれ柔軟性、気密性を有する方形の外層シートと内層シートとの2層のシートを有し、
外層シートは、内層シートより長く、内層シートと外層シートとは、各々の一端をそろえて上下に重ね合わされ、両シートの重ね合わせ部分は、物品の梱包領域となり、梱包領域を形成する内層シートの全周は、一定の幅で外層シートに気密に封止されて前記マットを構成し、
緩衝体は、内外層シート間に形成されるマット内に充填されているものであることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。
【請求項3】
前記マットは、長方形の表面シートと裏面シートとの周縁を封止した気密性を有する袋に、緩衝体を充填したものであり、
バルブは、マットの表面シートの一部に取り付けられ、
外層シートは、マットの一面を覆う単なるカバーであり、シート面の一部には、前記マットに取り付けたバルブを臨ませる小孔が開口され、
外層シートの裏側に内袋を重ねて一体化され、バルブを外層シートの小孔から外側に引き出し、その給排気口にバルブカバーをはめ込んでバルブを外層シートに定着させたことを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。
【請求項4】
前記マットのシート面の一部には、緩衝体がない無緩衝部分を有し、
前記無緩衝部分は、周辺が緩衝体に支えられる特定部分マットの表裏のシート面一定面積の範囲にわたって接合することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。
【請求項5】
前記梱包領域は、その全長の中間部位を基点として2つ折に折り曲げられて底部と表部とを形成し、梱包領域を形成する外層シートの両側縁には、前記梱包領域を2つ折に折り曲げたときにその両側の隙間を開閉するファスナーが取り付けていることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。
【請求項6】
前記梱包領域は、その全長の中間部位を基点として2つ折に折り曲げられて底部と表部とを形成し、梱包領域を形成する外層シートの一方の側縁には、前記梱包領域を2つ折に折り曲げたときにその隙間を開閉するファスナーが取り付けられ、他方の側縁は、縫製されていることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。
【請求項7】
前記カバー形成領域を形成する外層シートの内端縁と、梱包領域の表部を形成する外層シートのシート面の対応する箇所とにはそれぞれ、梱包領域を2つ折に折り曲げたときの底部と表部間の隙間を開閉する面ファスナーが取り付けられるいることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。
【請求項8】
前記カバー形成領域であるフラップの外面一部には、宅配用の伝票ホルダーが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。
【請求項9】
前記緩衝体は、面上に分散して各種形態の穴もしくは突縁を有するシート又はネットを1段あるいは2段以上積層して前記梱包領域を形成するマット内に装てんされているものであることを特徴とする請求項1に記載の宅配便用物品梱包具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−70227(P2010−70227A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240637(P2008−240637)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(507022983)ヤマト包装技術研究所株式会社 (19)
【Fターム(参考)】