説明

安全帯

【課題】フックの掛止位置を検出可能な安全帯を提供する。
【解決手段】安全帯は、作業者の回りに装着される胴ベルトと、一端と他端とを有し、一端が胴ベルトに結合された連結ベルトと、連結ベルトの他端に結合されたフック2とを備える。フック2は、鉤状のフック本体10と、フック本体10に回動自在に取り付けられフック本体10の開口部14を開閉する外れ止め装置20と、外れ止め装置20の回動を規制する安全装置25とを有する。フック2には、外れ止め装置20の開閉を検出する開閉スイッチ60と、フック2が被掛止物に掛けられている状態を検出する使用状況検出センサ50と、フック2の姿勢を検出する加速度センサ70とが取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業を行なう作業者の墜落を防止するための安全帯に関し、特に、安全帯の使用状況を把握するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電線工事などの高所作業において、作業者は、墜落防止の目的で安全帯を使用する。この安全帯は、作業者の腰回りに装着される胴ベルト(人体ベルト)、一端が胴ベルトに固定された連結体(命綱)、および連結体の他端に固定されたフックを備える。連結体は、胴ベルトとフックとを連結する。作業者は、胴ベルトを自らの胴体に巻き、親綱やタラップなど作業現場の所定箇所(被掛止物)にフックを掛止させる。作業者が誤って足を踏み外して落下したり、身体のバランスを損ねたような場合でも、作業者は安全帯によって吊り下げられ、墜落が防止される。
【0003】
死亡・重傷に繋がる墜落事故事例において、安全帯が使用されていなかった、または安全帯が不正に使用されていた事例がある。このような事例では、安全帯が正しく使用されていれば、死亡・重傷事故が避けられた可能性がある。つまり、高所での作業における墜落事故を防止するためには、確実に作業者に安全帯を正しく使用させることが重要である。従来、安全帯のフックの掛止状態を確認することにより、フックの止め忘れを確実に防止する技術が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開平11−267237号公報
【特許文献2】特開2007−44166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、安全帯先端のフックの掛止位置は、作業者の腰部よりも高い位置でなければならないと定められている。これは、フックが腰より低い位置に掛けられた状態で作業者が墜落した場合、墜落時の落下距離が長くなり、安全帯によって落下を止められた時に作業者に作用する衝撃荷重が大きくなり内臓破裂や内臓障害が発生するおそれがあることや、作業者が下方にある構築物と衝突するおそれがあることを考慮したためである。
【0005】
図15は、安全帯のフックを正しい高さに掛けた状態を示す模式図である。図16は、安全帯のフックを誤った高さに掛けた状態を示す模式図である。図15および図16を比較して、図15では、作業者は腰よりも高い位置に設けられた水平棒にフックを掛けている。これに対し、図16では、作業者は腰よりも低い位置にある水平棒にフックを掛けており、安全帯が正しく使用されていない状態である。
【0006】
特許文献1および2に記載の技術は、フックが掛止されていることを確実に確認でき、フックが掛止されていなければ安全帯不使用と判断することができるが、フックの掛止位置を検出することはできない。安全帯が正しく使用されているかを判別するためには、作業者の腰より高い位置にフックが掛止されているか否かを判断する必要があるが、従来、フックの掛止位置を検出するための技術は提案されていない。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、フックの掛止位置を検出可能な安全帯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る安全帯は、作業者の回りに装着されるベルトと、一端と他端とを有し、一端がベルトに結合された連結体と、連結体の他端に結合されたフックとを備える。フックは、鉤状のフック本体と、フック本体に回動自在に取り付けられフック本体の開口を開閉する外れ止め装置と、外れ止め装置の回動を規制する安全装置とを有する。フックには、外れ止め装置の開閉を検出する第一センサと、フックが被掛止物に掛けられている状態を検出する第二センサと、フックの姿勢を検出する第三センサとが取り付けられている。
【0009】
好ましくは、フック本体には、フックが被掛止物に掛けられたとき被掛止物により押圧されて移動するスイッチが取り付けられている。第二センサは、スイッチの移動を検出することによりフックが被掛止物に掛けられている状態を検出する。
【0010】
好ましくは、第三センサは、加速度センサである。鉛直方向に対する加速度センサの傾きの変化を出力することにより、フックの姿勢を検出する。
【0011】
好ましくは、フックが被掛止物に掛けられる時間帯の加速度センサの出力に基づいて、フックの姿勢を検出する。
【0012】
好ましくは、フック本体は、連結体が結合される連結孔が形成された基部を有する。加速度センサは、フック本体の基部に取り付けられている。
【0013】
本発明に係る安全帯の使用状況確認方法は、上記のいずれかの局面の安全帯のフックを被掛止物に掛ける工程を備える。また、フックが被掛止物に掛けられる時間帯のフックの姿勢を検出し、検出されたフックの姿勢に基づいて、作業者の腰部よりも上に位置する被掛止物にフックが掛けられていることを判別する工程を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の安全帯によると、フックの姿勢を検出することにより、フックが掛止される被掛止物の位置を判別できるので、作業者の腰より高い位置にフックが掛止された正しい状態で安全帯が使用されていることを判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0016】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る安全帯の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、安全帯1は、人体ベルトとしての胴ベルト103と、フック2と、連結ベルト107とを備えている。連結ベルト107は、一端107aと他端107bとを有する。連結ベルト107の一端107aは胴ベルト103と結合しており、他端107bはフック2と結合している。換言すれば、連結ベルト107を介在させて胴ベルト103とフック2とが連結されている。連結ベルト107は、胴ベルト103とフック2とを連結する連結体としての機能を有している。
【0018】
胴ベルト103は、本体109と、この本体109の端部に位置するバックル111とを備えている。胴ベルト103はまた、Dリング113とDリング止め115とを備えている。この胴ベルト103は、安全帯1を装着する作業者の胴体回りに巻かれて、作業者に装着される。胴ベルト103に代えて、または胴ベルト103とともに、作業者の肩、腿、胸などに巻かれる人体ベルトが用意され、これと連結ベルト107とが結合されてもよい。
【0019】
連結ベルト107の一端107a側には、第一縫合部117が設けられている。この第一縫合部117は、連結ベルト107がDリング113に通されて折り返され、重ねられて縫合されることで形成されている。Dリング113および第一縫合部117により、胴ベルト103と連結ベルト107とが結合されている。第一縫合部117の表面は、熱収縮チューブ119によって覆われている。連結ベルト107の一端107aに図示されないフック(図1中のフック2と同等の機構のもの)が設けられ、このフックによって胴ベルト103と連結ベルト107とが結合されてもよい。
【0020】
連結ベルト107の他端107b側には、第二縫合部121が設けられている。この第二縫合部121は、フック2に形成された連結孔19に連結ベルト107が通されて折り返され、重ねられて縫合されることで形成されている。第二縫合部121により、フック2と連結ベルト107とが結合されている。第二縫合部121の表面も、熱収縮チューブ119によって覆われている。
【0021】
図2は、フックの構成を示す模式図である。図3は、フックの下側面図である。図2および図3を参照して、フック2の詳細について説明する。なお図3は、図2に示すフック2を図下側から図上側に向かって見た場合を図示している。
【0022】
図2および図3に示すように、フック2は、フック本体10と、外れ止め装置20と、安全装置25とを含んで構成される。フック本体10は、鉤状に曲げられて形成されている。フック本体10は、連結ベルト107が結合される基部17と、基部17から直線状に延びる背部15と、弧状に湾曲した湾曲部11と、先端の先端部13とを有し、略U字型に曲げられた鉤形状に形成されている。基部17には連結ベルト107が挿通される連結孔19が形成されており、連結孔19の周囲には円環形状のリング18が形成されている。U字状のフック本体10は、先端部13と背部15との間に、開口部14を形成する。背部15から基部17にかけて、フック本体10の表面が窪んだ溝部12が形成されている。溝部12の内部には、後述する使用状況検出センサ50へ接続されている配線が配置される。
【0023】
外れ止め装置20は、開口部14に架け渡されて形成されている。外れ止め装置20は、小板21を介在させて、締結部材としてのボルト99によってフック本体10に回動自在に取り付けられている。外れ止め装置20は、断面形状コの字状に形成されており、そのコの字状の凹部内にフック本体10および安全装置25が配置されている。また、外れ止め装置20の端部は、フック本体10の先端部13と係合している。先端部13は外れ止め装置20の可動範囲を規定している。
【0024】
外れ止め装置20は、図示しない付勢手段によって開口部14から先端部13に向かう方向に付勢されている。外れ止め装置20がフック本体10の先端部13に押圧される向きに、外れ止め装置20は付勢されている。外れ止め装置20は、ボルト99を軸線として図2に示す時計回り方向に付勢されており、先端部13と当接することによりその可動範囲が規制されている。つまり、外れ止め装置20の可動範囲は、開口部14の内側に制限されている。
【0025】
外れ止め装置20は、開口部14の内側を揺動することにより、開口部14を開閉する。外れ止め装置20は、U字型のフック本体10に形成された開口である開口部14を、内側から開閉する。外れ止め装置20は開口部14の先端に支持されており、外れ止め装置20の揺動によりU字型の開口部14が開閉可能になる。
【0026】
安全装置25は、ボルト96によって、回動可能にフック本体10に取り付けられている。安全装置25は、断面形状コの字状に形成されており、そのコの字状の凹部内にフック本体10が配置されている。安全装置25は、図示しない付勢手段によって、ボルト96を軸線として図2に示す時計回り方向に付勢されている。安全装置25は、フック本体10から離れる方向に付勢されている。外れ止め装置20と安全装置25とは、いずれもフック本体10の背部15から離れる方向に付勢されている。そのため外れ止め装置20は、フック本体10のU字状の開口部14を跨ぐように配置されて、フック本体10の先端部13と係合している。
【0027】
図4は、安全装置の部品図である。図4に示すように、安全装置25には、丸孔26と長孔27とが形成されている。丸孔26にボルト96が挿通されることにより、安全装置25はフック本体10に取り付けられている。外れ止め装置20は、長孔27に挿通されたボルト97によって、安全装置25に組み付けられている。ボルト97が長孔27内をスライド移動することにより、外れ止め装置20は、安全装置25と連動してボルト99回りの回転運動を行なう。
【0028】
図2には、上記付勢手段による付勢力以外の外力が安全装置25に作用していないときの、安全装置25の配置が示されている。安全装置25が図2に示す位置にある状態では、ボルト97は図4に示す窪み部27aの内部にあり、長孔27内のボルト97の自由なスライド移動が制限されている。そのため外れ止め装置20は、図2に示す状態から自由に回動できない。図2には、安全装置25によって外れ止め装置20の回動が規制されている状態が図示されている。
【0029】
フック本体10にはまた、使用不使用スイッチ30が取り付けられている。図5は、使用不使用スイッチの部品図である。図5に示すように使用不使用スイッチ30には、丸孔32,33と、長孔34,35,36と、ばね孔37とが形成されている。使用不使用スイッチ30は、弧状に湾曲された湾曲部31を有する。この湾曲部31の内周縁31aが、フック本体10の湾曲部11の内周縁11a(図2参照)と略同一の形状を含むように、使用不使用スイッチ30を形成することができる。たとえば、内周縁11aおよび内周縁31aを、同一の曲率を有する円弧形状を含む形状に形成することができる。
【0030】
フック本体10にはさらに、連結部材40が取り付けられている。図6は、連結部材の部品図である。図6に示すように連結部材40には、丸孔42,44,45,46と、ばね孔47が形成されている。また連結部材40には、丸孔に対して大径の貫通孔48が形成されている。貫通孔48が溝部12の端部付近に形成されるように連結部材40は配置される。使用状態検出センサ50へ接続される配線は、貫通孔48を貫通する。
【0031】
使用不使用スイッチ30と連結部材40とは、図2に示すボルト82,84,85,86によって結合されている。ボルト82は、使用不使用スイッチ30に形成された丸孔32および連結部材40に形成された丸孔42を貫通している。使用不使用スイッチ30は、ボルト82を軸線としてフック本体10に対し相対的に回動自在に、フック本体10に取り付けられている。ボルト86は連結部材40の丸孔46を貫通している。ボルト82,86によって連結部材40はフック本体10に固定されており、連結部材40はフック本体10に対して移動しないが、使用不使用スイッチ30は連結部材40に対して相対的に回動する。
【0032】
ボルト84は、丸孔44において連結部材40に締結されており、使用不使用スイッチ30の長孔34内に挿通されている。ボルト84は、丸孔45において連結部材40に締結されており、使用不使用スイッチ30の長孔35内に挿通されている。ボルト86は、使用不使用スイッチ30の長孔36を貫通し、さらにフック本体10を貫通して、丸孔46において連結部材40に締結されている。
【0033】
使用不使用スイッチ30は、ボルト82を軸線として、連結部材40に対して相対的に回動する。使用不使用スイッチ30に形成された長孔34,35,36は、使用不使用スイッチ30がボルト82回りに回動するときに使用不使用スイッチ30を案内し、また、使用不使用スイッチ30の可動範囲を規定する機能を有している。
【0034】
使用不使用スイッチ30に形成されたばね孔37と、連結部材40に形成されたばね孔47とには、弾性部材としてのばね87の両端が係合している。ばね87の一端はばね孔37に掛合されており、ばね87の他端はばね孔47に掛合されている。ばね87の弾性力によって、ばね孔37とばね孔47とが互いに近接する方向に、使用不使用スイッチ30が付勢されている。ばね87は、使用不使用スイッチ30を図2に示すボルト82回りの時計回り方向に付勢する。つまり、使用不使用スイッチ30の湾曲部31の内周縁31aが、フック本体10の湾曲部11の内周縁11aに対して開口部14側に移動し、外れ止め装置20により近接する方向に、使用不使用スイッチ30は付勢されている。
【0035】
フック本体10の基部17には、外れ止め装置20の開閉を検出する第一センサとしての開閉スイッチ60が配置されている。外れ止め装置20には押圧バー62が固定されており、押圧バー62は外れ止め装置20とともにボルト99回りを回動する。
【0036】
図2に示す状態では、押圧バー62が開閉スイッチ60に近接しており、押圧バー62が開閉スイッチ60の接触レバー61を押圧している。このとき開閉スイッチ60は、接触レバー61が接触していることを検出することにより、外れ止め装置20がフック本体10の先端部13と当接している閉状態にあることを出力する。開閉スイッチ60には、周知のリミットスイッチを用いることができる。
【0037】
使用不使用スイッチ30と連結部材40との間の隙間には、フック2が被掛止物に掛けられている状態を検出する、第二センサとしての使用状態検出センサ50が配置されている。図2に示すように、使用不使用スイッチ30には、丸孔33(図5参照)を貫通して締結されている、ボルト83が固定されている。ボルト83は、使用不使用スイッチ30とともにボルト82回りを回動する。
【0038】
図2に示す状態では、ボルト83が使用状態検出センサ50に近接しており、ボルト83が使用状態検出センサ50の接触レバー51を押圧している。このとき使用状態検出センサ50は、接触レバー51が接触していることを検出することにより、フック2が被掛止物に掛けられていない、不使用状態にあることを出力する。不使用状態では、使用不使用スイッチ30の内周縁31aがフック本体10の内周縁11aに対して開口部14側にあるように、使用不使用スイッチ30は配置されている、使用状態検出センサ50には、周知のリミットスイッチを用いることができる。
【0039】
フック本体の基部17には、基板71が取り付けられている。基板71には、フック2の姿勢を検出する第三センサとしての加速度センサ70が載置されている。基部17にはまた、基板76が取り付けられており、基板76には傾きセンサ75が載置されている。
【0040】
開閉スイッチ60および加速度センサ70は、フック本体10の基部17に取り付けられている。使用不使用スイッチ30はフック本体10の湾曲部11から背部15に亘って配置されており、使用状態検出センサ50は使用不使用スイッチ30の背部15側の端部近傍に取り付けられている。このように各センサおよびスイッチを配置することにより、作業者がフック2を掛けようとする動作に対し、各センサおよびスイッチ類が干渉することを防止できる。つまり、本実施の形態の安全帯1のフック2では、従来の安全帯のフックと同等の操作性が確保されている。
【0041】
以上の構成を備える安全帯1の、フック2を被掛止物に掛けるときの、フック2の各部の動作について説明する。図7は、被掛止物に掛けられる前のフックを示す模式図である。図8は、外れ止め装置が回転移動した開状態のフックを示す模式図である。図9は、フック本体に被掛止物が係合する前の不使用状態のフックを示す模式図である。図10は、フック本体に被掛止物が係合した使用状態のフックを示す模式図である。
【0042】
フック2を親綱やタラップなどの固定物である被掛止物に掛ける際には、作業者はまず、フック2を把持して、安全装置25をボルト96回りに回転させ、フック本体10に安全装置25を近接させる。この安全装置25の移動によって、ボルト97が長孔27の窪み部27a(図4参照)から外れ、外れ止め装置20が安全装置25によって規制されず回転自在な、ロック解除状態となる。
【0043】
続いて、開口部14の内側へ外れ止め装置20を移動させる。ボルト97が長孔27内をスライド移動することにより、外れ止め装置20はボルト99回りに回転し、フック本体10の先端部13と外れ止め装置20との間に隙間24が生じる。この隙間24を経由させて、被掛止物を鉤状のフック本体10の内側に進入させる。上記外れ止め装置20の移動は、作業者がフック2を把持することにより行なわれてもよく、係合対象である被掛止物を外れ止め装置20に外側(図8中右側)から押し付けることにより行なわれてもよい。
【0044】
上述したように、外れ止め装置20には押圧バー62が取り付けられている。外れ止め装置20の回転に伴って、押圧バー62は、開閉スイッチ60から離れる側へ移動する。このとき、押圧バー62から接触レバー61に対して作用していた押圧力が解除され、接触レバー61が開閉スイッチ60から離れる。この接触レバー61の移動を検出して、開閉スイッチ60は、フック2が開状態にあることを出力する。開状態にあるフック2では、外れ止め装置20がフック本体10の先端部13から離れ、先端部13と外れ止め装置20との間に隙間24が形成されている。つまり、開閉スイッチ60は、外れ止め装置20の回転移動を検出することにより、フック2が開いた状態にあることを検出する。
【0045】
被掛止物がフック本体10のU字の内部に完全に収容された後、作業者がフック2の把持をやめると、外れ止め装置20はボルト99回りに逆回転して元の位置へ戻り、先端部13と外れ止め装置20との間に生じた隙間24は再び閉じられる。作業者が安全装置25に加えていた荷重が解放されると、ボルト97が長孔27の窪み部27aへ移動して、安全装置25は外れ止め装置20の回動を規制する。つまり、外れ止め装置20が移動して隙間24を生じさせることがないように安全装置25が作用するので、被掛止物がフック本体10のU字の内部から外へ飛び出すことを防止でき、作業者の意図しないフック2の開閉が行なわれない構成とされている。
【0046】
続いて、図9および図10に示すように、被掛止物Hをフック本体10の湾曲部11に係合させる。このとき被掛止物Hは、使用不使用スイッチ30の内周縁31aに当接し、使用不使用スイッチ30を押圧して、使用不使用スイッチ30をボルト82回りに回転移動させる。フック2が被掛止物Hに掛けられたとき、使用不使用スイッチ30が被掛止物Hと当接し、被掛止物Hにより押圧されて回転移動することにより、使用不使用スイッチ30は、フック本体10の湾曲部11と重なるように移動する。
【0047】
上述したように、使用不使用スイッチ30にはボルト83が固定されており、使用不使用スイッチ30の回転に伴って、ボルト83は、使用状態検出センサ50から離れる側へ移動する。このとき、ボルト83から接触レバー51に対して作用していた押圧力が解除され、接触レバー51が使用状態検出センサ50から離れる。この接触レバー51の移動を検出して、使用状態検出センサ50は、フック2が被掛止物Hに掛けられた使用状態にあることを出力する。つまり、使用状態検出センサ50は、使用不使用スイッチ30の回転移動を検出することにより、フック2が被掛止物Hに掛けられている使用状態にあることを検出する。
【0048】
次に、加速度センサ70によるフック2の姿勢の検出について説明する。フック2を作業者の腰より低い位置にある被掛止物に掛けようとした場合と、腰より高い位置にある被掛止物に掛けようとした場合とでは、作業者がフック2を掛ける動作中のフック2の姿勢や、フック2が掛かったときにフック2に加わる力の向きが異なる。そこで、フック2に加速度センサ70を取り付け、加速度センサ70の出力を用いてフック2の姿勢を推定することにより、推定されたフック2の姿勢に基づいてフック2が掛けられた被掛止物の高さを判断することができる。
【0049】
ここで、フック2の姿勢とは、基準となる所定の軸(たとえば水平軸や鉛直軸)に対してフック2が相対的に傾斜している、フック2の傾斜の角度をいう。
【0050】
図11は、フックの姿勢と加速度センサの出力との関係を示すための模式図である。ここでは、フック2が掛けられる被掛止物は水平な棒であることを想定している。フック2を回し掛けせず水平な棒に直接掛けする場合、フック2が作業者の腰よりも高い位置に掛けられたことを判別するには、水平方向に沿う一軸回りのフック2の姿勢の検出が重要であると考えられる。そこで、加速度センサ70の上記一軸(これをX軸と称する)の値を抽出することで、フック2の掛け方の正誤を検出することができる。
【0051】
図11(a)では、フック本体10の湾曲部11と基部17とがほぼ水平になり、外れ止め装置20が下側、安全装置25が上側になるように、フック2は配置されている。水平に配置された基板71に対して加速度センサ70は基板71の上面に載置されている。このときの加速度センサ70のX軸方向の出力を、X=512とする。
【0052】
図11(b)では、フック本体10の湾曲部11と基部17とがほぼ垂直になり、湾曲部11が下側、基部17が上側になるように、フック2は配置されている。垂直面となるように配置された基板71に加速度センサ70が載置されている。このときの加速度センサ70のX軸方向の出力を、X=256とする。
【0053】
図11(c)では、フック本体10の湾曲部11と基部17とがほぼ垂直になり、基部17が下側、湾曲部11が上側になるように、フック2は配置されている。垂直面となるように配置された基板71に加速度センサ70が載置されている。このときの加速度センサ70のX軸方向の出力を、X=768とする。
【0054】
図11(d)では、フック本体10の湾曲部11と基部17とがほぼ水平になり、外れ止め装置20が上側、安全装置25が下側になるように、フック2は配置されている。水平に配置された基板71に対して加速度センサ70は基板71の下面に載置されている。このときの加速度センサ70のX軸方向の出力を、X=512とする。
【0055】
図11(a)〜(d)では、基準となるX軸に対するフック2の傾きが変化している。X軸に対するフック2の傾きの変化に伴って、加速度センサ70の鉛直方向に対する傾きも変化する。加速度センサ70のX軸の値を用い、重力加速度のみを検出している場合、加速度センサ70の傾きが変化するときの鉛直方向に対する加速度センサ70の傾きの変化を出力することによって、フック2の姿勢を検出することができる。つまり、加速度センサ70を用いて、フック2を被掛止物に掛けるときのフック2の姿勢を検出することができる。
【0056】
このような加速度センサ70を有するフック2を備えた安全帯1を、実際に作業者に装着して、被掛止物である水平に架けられたパイプに作業者がフック2を掛ける動作中の、加速度センサ70の出力値を収集した結果を、図12および図13に示す。図12は、フックを誤った高さに掛けた場合の加速度センサの出力の一例を示すグラフである。図13は、フックを正しい高さに掛けた場合の加速度センサの出力の一例を示すグラフである。
【0057】
図12および図13の縦軸は、図11に基づいて説明した加速度センサ70の出力値を示す。図12および図13の横軸は、経過時間を示し、フック2が開いた時点を基準としている。すなわち、図12および図13の横軸の値が0になる時刻は、フック2が開状態となったことを開閉スイッチ60により検出した時刻である。図12および図13中に、縦軸と平行に引かれた左側の線は、フック2が開いたおよその時刻を示し、また右側の線は、フック2がパイプに掛けられ使用状態となったおよその時刻を示す。
【0058】
フック2を掛けるパイプの高さは、作業者の腰の高さを基準として7段階設定した。具体的には、誤った高さとして、(腰の高さ−250,500,750)mmの3段階の高さを設定した。また正しい高さとして、(腰の高さ+0,250,500,750)mmの4段階の高さを設定した。
【0059】
図12に示すように、腰より低い位置にフック2を掛けた場合は、フック2がパイプに掛けられる時間帯の加速度センサ70の出力が相対的に低くなっている。一方図13に示すように、腰より高い位置にフック2を掛けた場合は、フック2がパイプに掛けられる時間帯の加速度センサ70の出力が相対的に高くなっている。つまり、図12および図13を比較して、フック2を掛けた高さの違いによって、加速度センサ70の出力には明確に差が生じている。つまり、加速度センサ70により検出されたフック2の姿勢に基づいてフック2が掛けられた被掛止物の位置を判別することができ、作業者の腰部よりも上に位置する被掛止物にフック2が掛けられている正しい状態で安全帯1が使用されていることを判別することができることがわかる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態の安全帯1において、フック2には、外れ止め装置20の開閉を検出する開閉スイッチ60と、フック2が被掛止物Hに掛けられている状態を検出する使用状況検出センサ50と、フック2の姿勢を検出する加速度センサ70とが取り付けられている。
【0061】
このようにすれば、開閉スイッチ60を用いてフック2が開状態になった時刻を検出し、また使用状況検出センサ60を用いてフック2が使用状態になった時刻を検出できる。これら2つの時刻の間、すなわちフック2が被掛止物Hに掛けられる時間帯の、フック2の姿勢を、加速度センサ70を用いて検出できる。フック2の姿勢を検出することにより、フック2が掛止された被掛止物Hの位置を判別できるので、作業者の腰より高い位置にフック2が掛止された正しい状態で安全帯1が使用されていることを判別することができる。
【0062】
次に、以上説明した安全帯の使用状況監視方法について説明する。図14は、安全帯の使用状況の監視方法を示す流れ図である。安全帯1を装着している作業員がフック2を被掛止物に掛けようとする場合、図14に示すように、まず工程(S10)において、作業員がフック2を把持する。
【0063】
続いて工程(S20)において、作業員に把持されたフック2では、安全装置25が解除されて外れ止め装置20がボルト99回りに回転することにより、外れ止め装置20が開状態となる。続いて工程(S30)において、フック本体10の先端部13と外れ止め装置20との間の隙間24を通過させて、被掛止物をU字状のフック本体10の内部へ移動させる。続いて工程(S40)において、被掛止物が使用不使用スイッチ30を押圧して、フック本体10の湾曲部11に重なるように使用不使用スイッチ30を移動させ、被掛止物を湾曲部11の内周縁11aに当接させて、フック2が被掛止物に掛けられた使用状態にする。続いて工程(S50)において、外れ止め装置20をボルト99回りに逆回転させて、外れ止め装置20を閉状態にする。工程(S20)〜(S50)は、「安全帯1のフック2を被掛止物に掛ける工程」に含まれる。
【0064】
続いて、工程(S60)において、フック2が被掛止物に掛けられる時間帯(すなわち、工程(S20)〜(S50)の間)における、フック2の姿勢を、加速度センサ70を用いて検出する。続いて工程(S70)において、検出されたフック2の姿勢に基づいて、作業者の腰部よりも上に位置する被掛止物にフック2が掛けられていることを判別する。被掛止物の高さが作業員の腰部より上の高さにあると判別されれば、安全帯使用状況は良好である(S80)。
【0065】
一方、被掛止物の高さが作業員の腰部より下の高さにあると判別されれば、安全帯使用状況は不良とされる(S90)。そして工程(S100)において、警告を発信し、作業者自身に安全帯の使用状況が不良であることを知らせる。同時に、周囲の作業者および監督者にも作業者が装着している安全帯の使用状況が不良であることを知らせることも可能である。
【0066】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態に係る安全帯の概略構成を示す模式図である。
【図2】フックの構成を示す平面図である。
【図3】フックの下側面図である。
【図4】安全装置の部品図である。
【図5】使用不使用スイッチの部品図である。
【図6】連結部材の部品図である。
【図7】被掛止物に掛けられる前のフックを示す模式図である。
【図8】外れ止め装置が回転移動した開状態のフックを示す模式図である。
【図9】フック本体に被掛止物が係合する前の不使用状態のフックを示す模式図である。
【図10】フック本体に被掛止物が係合した使用状態のフックを示す模式図である。
【図11】フックの姿勢と加速度センサの出力との関係を示すための模式図である。
【図12】フックを誤った高さに掛けた場合の加速度センサの出力の一例を示すグラフである。
【図13】フックを正しい高さに掛けた場合の加速度センサの出力の一例を示すグラフである。
【図14】安全帯の使用状況の監視方法を示す流れ図である。
【図15】安全帯のフックを正しい高さに掛けた状態を示す模式図である。
【図16】安全帯のフックを誤った高さに掛けた状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0068】
1 安全帯、2 フック、10 フック本体、11 湾曲部、11a 内周縁、13 先端部、14 開口部、17 基部、20 外れ止め装置、24 隙間、25 安全装置、30 使用不使用スイッチ、31 湾曲部、31a 内周縁、40 連結部材、50 使用状態検出センサ、51 接触レバー、60 開閉スイッチ、61 接触レバー、62 押圧バー、70 加速度センサ、71 基板、83 ボルト、87 ばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の回りに装着されるベルトと、
一端と他端とを有し、前記一端が前記ベルトに結合された連結体と、
前記連結体の前記他端に結合されたフックとを備え、
前記フックは、鉤状のフック本体と、前記フック本体に回動自在に取り付けられ前記フック本体の開口を開閉する外れ止め装置と、前記外れ止め装置の回動を規制する安全装置とを有し、
前記フックには、前記外れ止め装置の開閉を検出する第一センサと、前記フックが被掛止物に掛けられている状態を検出する第二センサと、前記フックの姿勢を検出する第三センサとが取り付けられている、安全帯。
【請求項2】
前記フック本体には、前記フックが前記被掛止物に掛けられたとき前記被掛止物により押圧されて移動するスイッチが取り付けられており、
前記第二センサは、前記スイッチの移動を検出することにより前記フックが前記被掛止物に掛けられている状態を検出する、請求項1に記載の安全帯。
【請求項3】
前記第三センサは、加速度センサであって、
鉛直方向に対する前記加速度センサの傾きの変化を出力することにより、前記フックの姿勢を検出する、請求項1または請求項2に記載の安全帯。
【請求項4】
前記フックが前記被掛止物に掛けられる時間帯の前記加速度センサの出力に基づいて、前記フックの姿勢を検出する、請求項3に記載の安全帯。
【請求項5】
前記フック本体は、前記連結体が結合される連結孔が形成された基部を有し、
前記加速度センサは、前記フック本体の前記基部に取り付けられている、請求項3または請求項4に記載の安全帯。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の安全帯のフックを被掛止物に掛ける工程と、
前記フックが前記被掛止物に掛けられる時間帯の前記フックの姿勢を検出し、検出された前記フックの姿勢に基づいて、作業者の腰部よりも上に位置する前記被掛止物に前記フックが掛けられていることを判別する工程とを備える、安全帯の使用状況監視方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−46325(P2010−46325A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213804(P2008−213804)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(595078091)株式会社システムワット (1)
【Fターム(参考)】