説明

安全装置及びこれを用いた高温荷重装置

【課題】電源断等の異常事態が生じても構造体の破損を抑制しうる安全装置及びこれを用いた高温荷重装置を提供する。
【解決手段】安全装置40は、対向して配置される構造体支持体20a、20bと、構造体支持体20a、20bの間に設置された屈曲管100を加熱する加熱装置50と、構造体支持体20aに接続して屈曲管100に荷重を負荷する荷重負荷装置30と、を備え、構造体支持体20a、20bが双方の構造体支持体20a、20bを結ぶ直線方向にそれぞれ移動可能である高温荷重装置1の構造体支持体20bに接続される。安全装置40は構造体支持体20bの移動の規制及び許容を可能に構成され、安全装置40が構造体支持体20bの移動を規制するとともに、荷重負荷装置30によって屈曲管100に荷重が負荷され、加熱装置50及び/又は荷重負荷装置30に異常が生じた場合に、安全装置40は構造体支持体20bの移動を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全装置及びこれを用いた高温荷重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラ等の高温高圧下で用いられる配管等の信頼性を向上させ、保修コストなどを低減するためには、的確な配管余寿命を評価するとともに、この評価に基づいて適切なタイミングで交換等を行う必要がある。この評価を行うため、実機寸法の配管を用い、高温高圧下にて荷重を負荷して配管の余寿命等を評価するクリープ試験が行われている。
【0003】
直管状の配管を対象とするクリープ試験装置(例えば、特許文献1、特許文献2)は知られている。また、屈曲部を有する配管の強度等の評価に関しては、非特許文献1に挙げるFEM(Finite−Element Method)解析が知られている。非特許文献1の解析モデルでは、切り欠きを設けた屈曲管の両端部を保持して繰り返し荷重を加えた場合の、亀裂の伸展挙動をシミュレーションにより評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−170161号公報
【特許文献2】特開2009−109356号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高橋由紀夫、他2名、“配管エルボのクリープき裂解析”、[平成22年10月27日検索]インターネット<URL:http://www.lattice−inc.co.jp/contents/PAPERS_ABAQUS−98.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1では、屈曲管のFEM解析がなされているだけであり、実機の屈曲管のクリープ試験について開示されているものではない。また、特許文献1の解析モデル図(図2−1)に従い、クリープ試験装置を構築して配管エルボのクリープ試験を行ったとすれば、以下の問題が生じる。
【0007】
配管のクリープ試験は、およそ1年間程度と長期間に渡って行われる。長期に渡る試験中に停電による電源断等の異常事態が生じた場合、両端部を支持する支持体が固定されたまま放置されることになる。例えば、電気炉による加熱が停止した場合、屈曲管は熱膨張した状態から冷却され、収縮する。両端部が固定されたまま屈曲管が収縮すると、屈曲管には熱応力による反力、すなわち、引っ張り応力がかかり、配管エルボの破損につながる。
【0008】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電源断等の異常事態が生じても構造体の破損を抑制しうる安全装置及びこれを用いた高温荷重装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る安全装置は、
対向して配置される第1の構造体支持体及び第2の構造体支持体と、前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体の間に設置された構造体を加熱する加熱装置と、前記第1の構造体支持体に接続して前記構造体に荷重を負荷する荷重負荷装置と、を備え、前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体が前記第1の構造体支持体と前記第2の構造体支持体とを結ぶ直線方向にそれぞれ移動可能である高温荷重装置の前記第2の構造体支持体に接続される安全装置であって、
前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動の規制及び許容が可能であり、
前記安全装置が前記第2の構造体支持体の移動を規制するとともに、前記荷重負荷装置によって前記構造体に荷重が負荷され、
前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置に異常が生じた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、前記安全装置は電力供給を受けている状態では前記第2の構造体支持体の移動を規制し、電力供給を受けていない状態では前記第2の構造体支持体の移動を許容するよう構成されていてもよい。
【0011】
また、前記安全装置は、前記第2の構造体支持体に固定されたボールナットと、前記ボールナットに対し回転可能に挿入されたボールネジと、前記ボールネジの回転を規制及び許容する電磁クラッチと、を備え、
前記電磁クラッチが連結して前記ボールネジの回転を規制することで、前記第2の構造体支持体の移動を規制し、前記電磁クラッチが開放して前記ボールネジの回転を許容することで、前記第2の構造体支持体の移動を許容するよう構成されていてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る高温荷重装置は、
対向して配置される第1の構造体支持体及び第2の構造体支持体と、
前記第1の構造体支持体に接続される荷重負荷装置と、
前記第2の構造体支持体に接続される安全装置と、
前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体の間に設置された前記構造体を加熱する加熱装置と、を備え、
前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体は、前記第1の構造体支持体と前記第2の構造体支持体とを結ぶ直線方向に沿ってそれぞれ移動可能であり、
前記荷重負荷装置は前記第1の構造体支持体を介し、前記構造体に前記直線方向へ所定の荷重を負荷し、
前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動の規制及び許容を行い、
前記安全装置が前記第2の構造体支持体の移動を規制するとともに、前記荷重負荷装置により前記構造体に前記直線方向への所定の荷重が負荷され、
前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置に異常が生じた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする。
【0013】
また、前記安全装置に電力を供給する電力供給手段を備え、
前記安全装置は前記電力供給手段から電力供給を受けている状態で前記第2の構造体支持体の移動を規制し、電力供給を受けていない状態で前記第2の構造体支持体の移動を許容するよう構成されていてもよい。
【0014】
また、前記加熱装置は電気炉であり、
前記電力供給手段は前記電気炉及び前記安全装置の双方に電力を供給し、
前記電気炉及び前記安全装置への電力供給が断たれた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容するよう構成されていてもよい。
【0015】
また、前記荷重負荷装置は電動ジャッキであり、
前記電力供給手段は前記電動ジャッキ及び前記安全装置の双方に電力を供給し、
前記電動ジャッキ及び前記安全装置への電力供給が断たれた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容するよう構成されていてもよい。
【0016】
また、前記安全装置は、前記第2の構造体支持体に固定されたボールナットと、前記ボールナットに対し回転可能に挿入されたボールネジと、前記ボールネジの回転を規制及び許容する電磁クラッチを備え、
前記電磁クラッチが連結して前記ボールネジの回転を規制することで、前記第2の構造体支持体の移動を規制し、前記電磁クラッチが開放して前記ボールネジの回転を許容することで、前記第2の構造体支持体の移動を許容するよう構成されていてもよい。
【0017】
また、前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置の異常を検出する検出装置を備え、
前記検出装置が前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置の異常を検出した場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容するよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る安全装置は、間に構造体が設置される2つの構造体支持体のいずれかに接続され、構造体支持体の移動及び規制が可能である。構造体を加熱する加熱装置等に異常が生じた際には、構造体の伸縮に応じ、固定されていた構造体支持体の移動を許容する。例えば、加熱装置への電力供給の遮断が生じると、安全装置は構造体支持体の固定を解除し、移動を許容する。熱膨張した構造体が冷却されて収縮する動きに追従して構造体支持体が移動するので、構造体に過度な負荷が掛からず、構造体の破損が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】安全装置を備える屈曲管用の高温荷重装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】安全装置を備える屈曲管用の高温荷重装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】(A)、(B)は安全装置の動作を示す断面図である。
【図4】他の実施の形態に係る安全装置を備える屈曲管用の高温荷重装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】他の屈曲管を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照しつつ、構造体として屈曲管を用い、屈曲管のクリープ試験を例に取って、本実施の形態に係る安全装置、及び、安全装置を備える高温荷重装置について説明する。図1の側面図及び図2の平面図に示すように、高温荷重装置1は、屈曲管100の一の端部が接続される構造体支持体20aと、屈曲管100の他の端部が接続される構造体支持体20bと、構造体支持体20aに接続される荷重負荷装置30と、構造体支持体20bに接続される安全装置40と、荷重負荷装置30が接続される固定部材10aと、安全装置40が接続される固定部材10bと、屈曲管100を加熱する加熱装置50と、加熱装置50を制御する加熱制御装置70と、荷重を測定する荷重測定装置31と、荷重負荷装置30を制御する荷重制御装置71を備える。
【0021】
固定部材10a、10bは、地面や床等に固定され、装置全体を支持する部材である。固定部材10aには、荷重負荷装置30が設置されている。一方の固定部材10bには、安全装置40が設置されている。
【0022】
屈曲管100は、火力発電所で用いられる配管等である。屈曲管100は高クロムFe系合金鋼等の金属製であり、熱により膨張・収縮する管である。
【0023】
屈曲管100の両端には、鏡板101a、101bが溶接等により取り付けられ、内部は密閉されている。鏡板101a、101bは接続部材102a、102bに固定され、接続ピン22a、22bを介し、それぞれ構造体支持体20a、20bに接続されている。構造体支持体20a、20bは、それぞれベース21a、21bに設置されており、ベース21a、21bはスライドレール等により移動可能に構成されている。構造体支持体20a、20bは対向して配置され、その間に屈曲管100が設置されており、構造体支持体20aと構造体支持体20bとを結ぶ直線、即ち、接続箇所を結ぶ直線L(接続ピン22a、22bを結ぶ直線)に沿って移動可能である。
【0024】
荷重負荷装置30は、屈曲管100に、接続箇所を結ぶ直線Lの方向へ所定の圧縮応力、引張応力を加える装置である。本実施の形態では、荷重負荷装置30として、電力供給を受けて荷重を負荷する電動ジャッキが用いられている。
【0025】
荷重負荷装置30は、荷重測定装置31を介して構造体支持体20aに接続しており、荷重測定装置31は、屈曲管100に加えられる荷重を常時測定する。荷重測定装置31として、ロードセル等が用いられる。測定した荷重は荷重制御装置71に送信され、荷重制御装置71はこの測定値に基づき、屈曲管100に所定の荷重が加わるよう荷重負荷装置30を制御する。
【0026】
安全装置40は、構造体支持体20bの移動を規制及び許容可能に構成されており、試験中は構造体支持体20bが動かないように規制し、試験中に異常が生じた際には構造体支持体20bの移動を許容して屈曲管100に加わる負荷を解除する装置である。
【0027】
本実施の形態に係る安全装置40は、図3(A)、(B)の断面図に示すように、電磁クラッチ41、軸受42、ボールネジ43、及び、ボールナット44から構成されている。軸受42は固定部材10bに固定されるとともに、ボールネジ43が回転可能に軸支されている。また、ボールナット44は構造体支持体20bに固定されている。
【0028】
ボールナット44はナット44aとボール44bから構成され、ボールナット44にボールネジ43が螺入されている。ボールネジ43の周面には、ボール44bが摺動可能な螺旋状のボール溝43aが形成されている。このため、ボールネジ43は軸回りに回転可能であり、ボールネジ43が回転すると、ボールナット44は、ボールネジ43の長手方向に相対移動可能な構成である。また、ボールネジ43の電磁クラッチ41側は、電磁クラッチ41のロータ41aに固定されている。
【0029】
電磁クラッチ41は、ボールネジ43に固定されたロータ41aと、軸受42に固定された基底部41cと、基底部41cに内蔵されている電磁コイル41f、及び、戻しピン41eを備える。また、ロータ41a及び基底部41cの対向する面には、それぞれ歯41b、41dが噛合可能に設けられている。
【0030】
本実施の形態に係る電磁クラッチ41はいわゆる励磁作動型であり、電磁コイル41fに通電されていない場合、図3(A)に示すように、戻しピン41eに設けられたスプリングの弾性力で、基底部41cとロータ41aとが離間している。ロータ41a及び基底部41cのそれぞれに設けられた歯41b、41dは噛合せず、ロータ41aが回転可能な状態にある。
【0031】
一方、図3(B)に示すように、電磁コイル41fに通電されると、電磁コイル41fに発生する電磁力で、ロータ41aが基底部41cに引き付けられる。そして、ロータ41a及び基底部41cのそれぞれに設けられた歯41b、41dが噛合し、ロータ41aの回転が規制される。
【0032】
このようにして、ロータ41a及び基底部41cとの連結・切り離しが行われる。したがって、図3(A)に示すように、ロータ41aと基底部41cが切り離されている状態では、ロータ41a及びボールネジ43は回転が許容されるので、ボールナット44及びこれに固定されている構造体支持体20bは、ボールネジ43の長手方向(図1に示す直線Lの方向)に移動可能となる。
【0033】
一方、図3(B)に示すように、ロータ41aと基底部41cが連結している状態では、ロータ41a及びボールネジ43は回転不能であり、ボールナット44及びこれに固定されている構造体支持体20bの移動が規制される。
【0034】
加熱装置50は、屈曲管100を加熱する装置であり、本実施の形態に係る高温荷重装置1では、加熱装置50として、電気炉が用いられている。加熱装置50は、電力供給装置60から電力供給を受け、屈曲管100を加熱する。また、加熱装置50の駆動は加熱制御装置70により制御されている。
【0035】
電力供給装置60は電源等であり、荷重負荷装置30、安全装置40、及び、加熱装置50にそれぞれ電力を供給している。
【0036】
続いて、本実施の形態に係る高温荷重装置1の動作について説明する。
【0037】
まず、屈曲管100の両端に鏡板101a、101b及び接続部材102a、102bを溶接等により固定し、構造体支持体20a、20bに設置する。加熱装置50に通電して駆動させ、屈曲管100を加熱する。加熱装置50は、加熱制御装置70の制御により、屈曲管100の温度が所定温度になるよう加熱する。
【0038】
加熱により、屈曲管100が熱膨張し、構造体支持体20aと構造体支持体20bとの距離が広がるが、屈曲管100が拘束されないよう、以下のようにする。
【0039】
安全装置40の電磁クラッチ41を連結させ、構造体支持体20bの移動を規制しておく場合では、構造体支持体20aが屈曲管100の熱膨張によって移動し、荷重測定装置31が荷重を検出すれば、荷重負荷装置(電動ジャッキ)30を構造体支持体20aの移動方向に収縮させて、過大な荷重が屈曲管100に作用しないよう制御する。
【0040】
または、安全装置40の電磁クラッチ41を開放し、構造体支持体20bが移動可能な状態とし、屈曲管100の熱膨張に応じて構造体支持体20bが自由に移動するようにする。
【0041】
その後、不図示の給水配管を介して屈曲管100内に給水し、水の蒸発により屈曲管100内部の圧力を上昇させる。屈曲管100内部の圧力は、不図示の圧力センサからのフィードバックにより、所定の圧力になるよう制御される。
【0042】
屈曲管100が所定温度まで加熱されて膨張し、平衡状態に達した後、荷重制御装置71の制御により、荷重負荷装置30は屈曲管100に所定の負荷を加える。なお、事前に安全装置40の電磁クラッチ41を開放している場合では、電磁クラッチ41を連結させて構造体支持体20bの移動を規制した後、荷重負荷装置30が屈曲管100に所定の負荷を加えるよう制御する。
【0043】
このように屈曲管100を高温・高圧に維持し、且つ、所定の荷重が負荷された状態で、所定の期間クリープ試験が行われる。試験期間中は、加熱制御装置70により屈曲管100は一定の温度に保たれる。また、荷重制御装置71により屈曲管100に一定の荷重が負荷される。
【0044】
クリープ試験は長期間(約1年間)継続して行われ、この試験期間中に停電等、異常が生じると高温荷重装置1は以下のように動作する。
【0045】
停電等により、電力供給装置60からの電力供給が遮断された場合、加熱装置50の駆動が停止する。また、荷重負荷装置30が電動ジャッキ等のように電力供給を受けて駆動する場合、荷重負荷装置30の駆動も停止し、構造体支持体20aが固定されたままとなる。
【0046】
電磁クラッチ41の電磁コイル41fにも電力が供給されなくなるため、電磁力によるロータ41aと基底部41cとの吸着が解除されるとともに、戻しピン41eのスプリングの弾性力により、ロータ41aと基底部41cの連結が解除される。これにより、ロータ41a及びこれに連結固定しているボールネジ43が回転可能な状態となる。
【0047】
加熱装置50の駆動が停止するため、屈曲管100は冷却されて収縮し、屈曲管100には引っ張り応力が加わる。したがって、構造体支持体20bには、構造体支持体20aの方向へ力が加わる。構造体支持体20bに固定されているボールナット44にも同様の力が加わる。
【0048】
ボールネジ43は上記のように回転可能な状態にあるため、ボールナット44が引っ張られると、ボールナット44内のボール44bは、ボールネジ43周面に形成されている螺旋状のボール溝43aに沿って摺動するので、ボールネジ43が軸回りに回転することになる。ボールネジ43が回転することにより、ボールナット44及びボールナット44に固定されている構造体支持体20bの移動が許容される。これにより、屈曲管100の収縮に追従して構造体支持体20bが移動する。
【0049】
このように、構造体支持体20bの移動を規制していた安全装置40は、屈曲管100が停電等により冷却されて収縮した場合、構造体支持体20bの移動を許容するよう動作する。このため、屈曲管100が熱応力による反力によって破損することを防止できる。
【0050】
上記実施の形態では、一例として、電源断等の異常が生じた場合に有効な高温荷重装置1について説明したが、図4に示すように、加熱装置50や荷重負荷装置30が故障等によって制御不能になった場合など、それを検出する検出装置80が設置された高温荷重装置2であってもよい。検出装置80は、荷重負荷装置30、加熱装置50、加熱制御装置70、荷重制御装置71に接続しており、それぞれの故障等を検出すると、その検出結果に基づいて電磁クラッチ41が開放され、構造体支持体20bの移動を許容する。
【0051】
このような場合、励磁動作型の電磁クラッチのほか、無励磁動作型の電磁クラッチが用いられていてもよい。無励磁動作型の電磁クラッチとは、上述の励磁動作型の電磁クラッチとは逆に動作し、通電状態でクラッチが開放して、無通電状態でクラッチが連結する電磁クラッチである。検出装置80が荷重負荷装置30等の故障を検出し、電磁クラッチに通電して、クラッチが開放し構造体支持体20bの移動が許容される。
【0052】
また、上記では、電磁クラッチ41を用いた安全装置40について説明したが、屈曲管100の伸縮に応じて構造体支持体20bの移動を許容可能とするものであれば、これに限定されることはない。
【0053】
また、上記では、L字型の屈曲管100を例にとり説明したが、高温荷重装置1は、直線状の管体等、種々の形状の管体についても試験を行える。例えば、図5に示すように、分岐管を有する管体110についても試験を行える。構造体支持体20a、20bに管体110の端部110a、110cを直接或いは間接的に接続すればよい。また、構造体支持体20a、20bに管体110の端部110b、110cをそれぞれ接続して行ってもよい。
【0054】
また、構造体として屈曲管100等の管体を例にとって説明したが、構造体は管体に限られない。熱により膨張・収縮する素材から構成された構造体であれば、いずれについても適用可能であり、例えば、立方体、球体、多角形体等、種々の形状であってもよく、また、内部が中空状でない構造体でもよい。
【0055】
また、クリープ試験を例にとって説明したが、高温条件下にて構造体に荷重を負荷して保持する装置全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 高温荷重装置
2 高温荷重装置
10a、10b 固定部材
20a、20b 構造体支持体
21a、21b ベース
22a、22b 接続ピン
30 荷重負荷装置(電動ジャッキ)
31 荷重測定装置
40 安全装置
41 電磁クラッチ
41a ロータ
41b 歯
41c 基底部
41d 歯
41e 戻しピン
41f 電磁コイル
42 軸受
43 ボールネジ
43a ボール溝
44 ボールナット
44a ナット
44b ボール
50 加熱装置(電気炉)
60 電力供給装置(電源)
70 加熱制御装置
71 荷重制御装置
80 検出装置
100 屈曲管
101a、101b 鏡板
102a、102b 接続部材
110 管体
110a、110b、110c 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置される第1の構造体支持体及び第2の構造体支持体と、前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体の間に設置された構造体を加熱する加熱装置と、前記第1の構造体支持体に接続して前記構造体に荷重を負荷する荷重負荷装置と、を備え、前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体が前記第1の構造体支持体と前記第2の構造体支持体とを結ぶ直線方向にそれぞれ移動可能である高温荷重装置の前記第2の構造体支持体に接続される安全装置であって、
前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動の規制及び許容が可能であり、
前記安全装置が前記第2の構造体支持体の移動を規制するとともに、前記荷重負荷装置によって前記構造体に荷重が負荷され、
前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置に異常が生じた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする安全装置。
【請求項2】
前記安全装置は電力供給を受けている状態では前記第2の構造体支持体の移動を規制し、電力供給を受けていない状態では前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記安全装置は、前記第2の構造体支持体に固定されたボールナットと、前記ボールナットに対し回転可能に挿入されたボールネジと、前記ボールネジの回転を規制及び許容する電磁クラッチと、を備え、
前記電磁クラッチが連結して前記ボールネジの回転を規制することで、前記第2の構造体支持体の移動を規制し、前記電磁クラッチが開放して前記ボールネジの回転を許容することで、前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の安全装置。
【請求項4】
対向して配置される第1の構造体支持体及び第2の構造体支持体と、
前記第1の構造体支持体に接続される荷重負荷装置と、
前記第2の構造体支持体に接続される安全装置と、
前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体の間に設置された前記構造体を加熱する加熱装置と、を備え、
前記第1の構造体支持体及び前記第2の構造体支持体は、前記第1の構造体支持体と前記第2の構造体支持体とを結ぶ直線方向に沿ってそれぞれ移動可能であり、
前記荷重負荷装置は前記第1の構造体支持体を介し、前記構造体に前記直線方向へ所定の荷重を負荷し、
前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動の規制及び許容を行い、
前記安全装置が前記第2の構造体支持体の移動を規制するとともに、前記荷重負荷装置により前記構造体に前記直線方向への所定の荷重が負荷され、
前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置に異常が生じた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする高温荷重装置。
【請求項5】
前記安全装置に電力を供給する電力供給手段を備え、
前記安全装置は前記電力供給手段から電力供給を受けている状態で前記第2の構造体支持体の移動を規制し、電力供給を受けていない状態で前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする請求項4に記載の高温荷重装置。
【請求項6】
前記加熱装置は電気炉であり、
前記電力供給手段は前記電気炉及び前記安全装置の双方に電力を供給し、
前記電気炉及び前記安全装置への電力供給が断たれた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする請求項5に記載の高温荷重装置。
【請求項7】
前記荷重負荷装置は電動ジャッキであり、
前記電力供給手段は前記電動ジャッキ及び前記安全装置の双方に電力を供給し、
前記電動ジャッキ及び前記安全装置への電力供給が断たれた場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする請求項5に記載の高温荷重装置。
【請求項8】
前記安全装置は、前記第2の構造体支持体に固定されたボールナットと、前記ボールナットに対し回転可能に挿入されたボールネジと、前記ボールネジの回転を規制及び許容する電磁クラッチを備え、
前記電磁クラッチが連結して前記ボールネジの回転を規制することで、前記第2の構造体支持体の移動を規制し、前記電磁クラッチが開放して前記ボールネジの回転を許容することで、前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の高温荷重装置。
【請求項9】
前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置の異常を検出する検出装置を備え、
前記検出装置が前記加熱装置及び/又は前記荷重負荷装置の異常を検出した場合に、前記安全装置は前記第2の構造体支持体の移動を許容する、
ことを特徴とする請求項4に記載の高温荷重装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−132733(P2012−132733A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283960(P2010−283960)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】