安定なポリペプチド製剤
本発明は、6.0未満のpHを有する緩衝液、約5から200mMの間の二価の陽イオン、糖又はポリオールを含む賦形剤及び治療用ポリペプチドの有効量を含む製剤を提供する。ポリペプチドを安定化させる方法も提供される。本方法は、6.0未満のpHを有する緩衝液及び糖又はポリオールを含む賦形剤中の、約5から150mMの間の二価の陽イオンのある濃度と治療的ポリペプチドを接触させることを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に、疾病を治療するための医薬に関し、より具体的には、ポリペプチド治療薬用の一貫して安定な製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えDNA技術の登場とともに、タンパク質をベースとする治療薬が、癌から自己免疫疾患にわたる幅広い疾病を治療するために医療従事者が利用できる薬物のレパートリーにおいて、継続的に、ますます一般的地位を占めるようになっている。組換えタンパク質の製造において起こった科学的及び技術的な進歩に加え、タンパク質治療薬の成功の別な理由は、標的に対する高い特異性及び小分子治療薬と比較した場合により優れた安全特性を示す能力である。疾病の治療における医薬として生物分子を使用できることにより、過去四半世紀にわたって、医療及び生活の質が著しく向上した。
【0003】
現在では、インビボで様々な薬理学的作用を示すことが知られているタンパク質を、様々な医薬用途のために、大量に製造することが可能である。治療用タンパク質の長期安定性は、安全で、一貫した、有効な治療のための特に有益な基準である。調製物内の治療薬の機能の喪失は、ある投与に対するその有効濃度を減少させる。同様に、治療薬の望ましくない修飾は、調製物の活性及び/又は安全性に影響を与え、効力の喪失及び有害な副作用のリスクをもたらし得る。
【0004】
タンパク質は、特徴付けされた一次、二次、三次構造を有し、幾つかの事例では四次構造を有する複雑な分子であり、これらの構造は全て、特異的な生物機能を付与する上で役割を果たしている。タンパク質などの生物学的医薬の構造は複雑であるために、構造的及び機能的な不安定性並びに安全性の喪失をもたらす様々なプロセスに対して影響を受けやすい。これらの不安定性プロセス又は分解経路に関して、タンパク質は、溶液中で、様々な共有及び非共有反応又は修飾を経験し得る。例えば、一般に、タンパク質分解経路は、(i)物理的分解又は非共有的経路及び(ii)化学的又は共有的分解経路という2つの主要なカテゴリーに分類することができる。
【0005】
タンパク質薬は、不可逆的な凝集という物理的分解プロセスに対して感受性を有する。タンパク質凝集は、薬物の効力に影響を与え、患者中に重大な免疫学的反応又は抗原性反応を惹起することもできる減弱した生物活性をしばしばもたらすので、ポリペプチドの作製において特に興味深い。例えば、化学的修飾による化学構造の分解を含むタンパク質治療薬の化学的分解は、その免疫原性の可能性も増加させると推測されている。従って、安定なタンパク質製剤は、薬物の物理的及び化学的な両分解経路を最小化されることを必要とする。
【0006】
タンパク質は、例えば、界面の吸着及び凝集などの物理的プロセスを介して分解することができる。吸着は、タンパク質薬物の効力及び安定性に著しく影響を与え得る。吸着は、低濃度剤形の効力に大幅な低下を引き起こし得る。別の帰結は、折り畳み解除によって媒介される界面での吸着が、しばしば溶液中での不可逆的な凝集を開始させる工程であり得るということである。これに関して、タンパク質は、液体−固体、液体−気体及び液体−液体界面において吸着する傾向がある。疎水性表面でのタンパク質のコアの十分な曝露は、撹拌、温度又はpHによって誘導されるストレスの結果、吸着をもたらし得る。さらに、タンパク質は、例えば、pH、イオン強度、熱的ストレス、剪断及び界面応力に対しても感受性を有し、これらの全てが凝集を引き起こし、不安定性をもたらし得る。凝集の別の帰結は粒子の形成であり、液体の及び凍結乾燥されたタンパク質医薬における重要な検討事項である。
【0007】
タンパク質は、脱アミド化、異性化、加水分解、ジスルフィドスクランブリング、β脱離、酸化及び付加物の形成などの様々な化学的修飾及び/又は分解反応にも供される。分解の主な加水分解的機序には、ペプチド結合加水分解、アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化、アスパラギン酸の異性化及びピログルタミン酸をもたらすグルタミン酸の環化が含まれる。加水分解的分解経路の一般的な特徴は、反応の速度に関する1つの重要な製剤変数が溶液のpHであることである。
【0008】
例えば、ペプチド結合の加水分解は、酸又は塩基によって触媒され得る。アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化も、約4のpH未満で酸によって触媒される。中性pHでのアスパラギンの脱アミド化は、塩基によって触媒されるスクシンイミジル中間体を通じて起こる。アスパラギン酸残基の異性化及びラセミ化は、弱酸性から中性pH(pH4から8)において迅速であり得る。一般化されたpH効果の他に、緩衝液の塩及び他の賦形剤が加水分解反応の速度に影響を与えることができる。
【0009】
他の典型的な分解経路には、アルカリpH条件下で起こり、ある種のアミノ酸に対して、ラセミ化又は側鎖の一部の喪失をもたらし得るβ脱離反応が含まれる。メチオニン、システイン、ヒスチジン、チロシン及びトリプトファン残基の酸化は、タンパク質に対する典型的な共有的分解経路である。
【0010】
タンパク質の不安定性をもたらし得る様々な反応の数及び多様性の故に、製剤中の成分の組成がタンパク質分解の程度に対して著しい影響を与え、その結果、治療薬の安定性及び効力に対して影響を与え得る。ポリペプチドの形成は、投与の容易さ及び頻度並びに注射時の痛みに対しても影響を与え得る。例えば、免疫原性反応は、タンパク質凝集物を原因とするのみならず、製剤中に含有される不活性成分と治療的タンパク質との混合された凝集物をも原因とする(Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1:457−62(2002);Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22:1997−2006(2005))。
【0011】
しかしながら、治療的処置でのタンパク質の使用において達成された進歩及びタンパク質が経験し得る不安定化プロセスの知見にも関わらず、強化された長期安定性特性を有する製剤の開発に対するニーズがなお存在している。様々な条件下で長期安定性を保持する製剤は、ポリペプチドの有効及び安全量を送達する効果的な手段を提供する。製剤中での長期安定性の保持は、製造及び治療コストも低下させる。このような一貫して安定な製剤は、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質に有益であり得、これにより、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質が、より有効な臨床的結果を与えることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1:457−62(2002)
【非特許文献2】Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22:1997−2006(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、様々な異なる製造及び保存条件下で長期安定性を保持する製剤に対する要望が存在する。本発明はこの要望を満たし、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、6.0未満のpHを有する緩衝液、約5から200mMの間の二価の陽イオン、糖又はポリオールを含む賦形剤及び治療用ポリペプチドの有効量を含む製剤を提供する。ポリペプチドを安定化させる方法も提供される。この方法は、6.0未満のpHを有する緩衝液中の約5から150mMの間の二価の陽イオンのある濃度及び糖又はポリオールを含む賦形剤と治療的ポリペプチドを接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、最長2ヶ月間、37℃で保存された抗体製剤のpH安定性に対するSE−HPLCの結果を示している。測定された各pHに対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);1週(1w);2週(2w);1ヶ月(1m)及び2ヶ月(2m)の保存期間に対応する。各時点に対して、pH値は、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0及び7.5に対応した。
【図2】図2は、最長2ヶ月間、37℃での保存後における、様々なpHで調合された抗体の陽イオン交換クロマトグラフィーの結果を示している。保存条件は、保存なし(0、ひし形);1週(1w、四角);2週(2w、三角);1ヶ月(1m、X)及び2ヶ月(2m、星)に対応する。
【図3】図3は、4℃で15分間、渦巻き撹拌した後における、様々なpHで調合された抗体の粒子数を示している。表記されているそれぞれの粒径に対するヒストグラムの組は、左から右へ、5μm(5);7.5μm(7.5);10μm(10);20μm(20)及び25μm(25)に対応する。
【図4】図4は、最長4ヶ月間、37℃での保存後における、様々な製剤中の抗体のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);2週(2w);1ヶ月(1m)、2ヶ月(2m)、3ヶ月(3m)及び4ヶ月(4m)の保存期間に対応する。
【図5】図5は、最長6ヶ月間、29℃での保存後における、様々な製剤中の抗体の陽イオン交換クロマトグラフィーの結果を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);2週(2w);1ヶ月(1m)、2ヶ月(2m)、3ヶ月(3m)及び6ヶ月(6m)の保存期間に対応する。
【図6】図6は、6ヶ月間、4℃での保存後における、様々な製剤中の抗体の肉眼で見えないHIAC粒子数の結果を示している。表記されているそれぞれの粒径に対するヒストグラムの組は、左から右へ、2μm(2);5μm(5);7.5μm(7.5);10μm(10);20μm(20)及び25μm(25)に対応する。
【図7】図7は、異なる賦形剤を含有する様々な製剤から得られた抗体単量体含量のサイズ交換クロマトグラフィー(SEC)−HPLC測定を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);2週(2w);1ヶ月(1m)、2ヶ月(2m)、3ヶ月(3m)、6ヶ月(6m)及び1年(1y)の保存期間に対応する。
【図8】図8は、1年間、4℃で保存された様々な抗体製剤の10μmより大きな、肉眼で見ることができない粒子のHIAC測定を示している。表記されているそれぞれの粒径に対するヒストグラムの組は、左から右へ、10μm(10);20μm(20)及び25μm(25)に対応する。
【図9】図9は、5.0から7.0までの範囲のpHを有し、異なる賦形剤を含有する様々な製剤中で、最長3ヶ月間−30℃で保存した後の抗体単量体含量のSE−HPLC測定を示す。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(C5);6週(6w)及び3ヶ月(3m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図10】図10は、5.0から6.0までの範囲のpHを有し、異なる安定化剤を含有する様々な製剤中で、酢酸塩又はリン酸塩緩衝液中において、最長1年間−30℃で保存した後の抗体単量体含量のSE−HPLC測定を示す。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(C5);3ヶ月(3m);6ヶ月(6m)及び12ヶ月(12m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図11】図11は、ステンレス鋼又はポリプロピレン容器の何れかの中で、最長1年間、−30℃で保存した後の様々な製剤の抗体単量体含量のSE−HPLC測定を示す。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(C5);1ヶ月(1m);3ヶ月(3m);6ヶ月(6m)及び12ヶ月(12m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図12】図12は、様々な抗体製剤の粒子形成に対する、−30℃での凍結/融解及び保存の効果を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(t=0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(t=c5);1ヶ月(t=1m)及び3ヶ月(t=3m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図13】図13は、イソアスパラギン酸への異性化を介したアスパラギン及びアスルチル残基のスクシンイミド媒介性分解経路を示す模式図である。
【図14】図14は、pH5.0の緩衝液中での分解後における、還元された及びアルキル化された抗体の逆相クロマトグラムによる抗体軽鎖中のイソアスパルチルの定量を示す。
【図15】図15は、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、37℃での温置時間の関数としての、抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。
【図16A】図16Aは、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、4℃、(図16A)での温置時間の関数としての、異性化に対して感受性を有するアスパラギン酸残基を含有する抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。各期間に対するヒストグラムの組は、左から右に、A5G、A5G25CA、A5G50CA、A5G75CA、A5G100CA及びA5G150CAに対応する。
【図16B】図16Bは、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、29℃(図16B)での温置時間の関数としての、異性化に対して感受性を有するアスパラギン酸残基を含有する抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。各期間に対するヒストグラムの組は、左から右に、A5G、A5G25CA、A5G50CA、A5G75CA、A5G100CA及びA5G150CAに対応する。
【図16C】図16Cは、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、37℃(図16C)での温置時間の関数としての、異性化に対して感受性を有するアスパラギン酸残基を含有する抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。各期間に対するヒストグラムの組は、左から右に、A5G、A5G25CA、A5G50CA、A5G75CA、A5G100CA及びA5G150CAに対応する。
【図17】図17は、CaCl2の異なる濃度を用いて抗体効力の細胞増殖アッセイ測定を使用する、抗体効力の喪失に対するCaCl2の効果を示す。
【図18A】図18Aは、4℃(図18A)で4ヶ月間の保存後における0から150mMCaCl2中に調合された抗体のSE−HPLCプロファイルを示す。
【図18B】図18Bは、29℃(図18B)で4ヶ月間の保存後における0から150mMCaCl2中に調合された抗体のSE−HPLCプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、水性及び他の液体ポリペプチド溶液並びに凍結乾燥された製剤を安定化させることができる製剤に関する。本発明の製剤は、イソアスパラギン酸形成の割合又は程度(extend)を抑制する又は低下させるので、アスパラギン酸(Asp又はD)又はアスパラギン(Asn又はN)の異性化に対して感受性を有するポリペプチドに対して有用である。溶媒によって促進される加水分解又は脱アミノ化反応を介して、スクシンイミド中間体を形成する傾向があり、及び不安定なイソアスパルチル残基を形成する傾向があるので、感受性を有するポリペプチドには、溶媒に曝露されたAsp又はAsnを有するものが含まれる。イソアスパラギン酸形成の割合又は程度の減少は、ポリペプチド及び/又は他の製剤成分とともに、1つ若しくはそれ以上の二価の陽イオン又はその塩形態を含めることによって達成される。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、本発明の製剤によって安定化されるポリペプチドは、溶媒に曝露されたアスパラギン酸又はアスパラギンを含有する抗体である。この特定の実施形態において、加水分解又は脱アミノ化反応の速度論は、約10から150mMの間のCaCl2の添加によって遅くすることができる。このような抗体には、抗体の重鎖又は軽鎖可変領域の1つ又はそれ以上のCDR(相補性決定領域)中にAsp又はAsn残基を有するものが含まれる。CDR領域中のイソアスパルチル形成は抗体の結合活性及び/又は効力に影響を及ぼし得るので、本発明の二価陽イオン安定化製剤は、抗体のこのような種類に特に有用である。本発明の製剤中に可溶化された又は含まれた治療用ポリペプチドは、長期間安定性を示し、抗体又は他のポリペプチドなどの治療用ポリペプチドの安全量及び有効量の投与を可能とする。
【0018】
さらなる特定の実施形態において、本発明の製剤は、異性化を低下させることによって、治療用ポリペプチドの安定性を向上させるために、約1から150mg/mLの範囲の濃度の治療用ポリペプチド(抗体など)、pH4.0超及び6.0未満の5mMから50mM酢酸ナトリウムなどの緩衝液、約1から3%グリセロール又は他の賦形剤、約0.004から0.1%ポリソルベート80又は他の界面活性剤及び約10から150mMCaCl2を含むことができる。他の特定の実施形態において、特に有用な緩衝液pHは、緩衝液のpHがポリペプチドのpI値に近づいたときに、金属イオン又は塩によって引き起こされ得るポリペプチドの沈殿を低下させ、又は抑制するために、治療用ポリペプチドのpIより低い。
【0019】
さらなる特定の実施形態において、ポリペプチドの最適な安定化能を示す他のポリペプチド製剤中に、二価の陽イオンを含めることができる。二価陽イオン又は本発明の二価陽イオン含有製剤とともに使用することができるこのような他の製剤には、例えば、約4.0から7.5の間のpH値を有するアセタート、グルタマート、スクシナート若しくはプロピオナート塩緩衝系又は6.0未満のpHを有するこのような緩衝系を含有する製剤が含まれる。
【0020】
生物医薬とは、ポリペプチド、核酸、炭水化物若しくは脂質又はこれらの構築ブロックなど、医薬として使用することが予定される高分子又はバイオポリマーを表す。生物医薬製剤とは、生物医薬と適合的であり、ヒトに投与された場合に、安全で無毒である医薬として許容される溶媒を表す。
【0021】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、重鎖及び軽鎖から構成され、特異的な分子標的又は抗原と結合することができるポリペプチドの免疫グロブリンクラスに属するB細胞のポリペプチド産物を意味するものとする。「モノクローナル抗体」という用語は、単一の細胞クローン又はハイブリドーマの産物である抗体を表す。この用語は、単一分子の免疫グロブリン種を産生するために、免疫グロブリン遺伝子をコードする重鎖及び軽鎖から、組換え法によって作製された抗体も表すものとする。モノクローナル抗体調製物内の抗体に対するアミノ酸配列は実質的に均一であり、このような調製物内の抗体の結合活性は実質的に同一の抗原結合活性を示す。以下でさらに記載されているように、抗体及びモノクローナル抗体の特徴は、本分野において周知である。
【0022】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換え、ファージディスプレー技術及びコンビナトリアル抗体ライブラリー法又はこれらの組み合わせの使用など、本分野で公知の多様な技術を用いて調製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、本分野において公知であり、例えば、「Harlow and Lane.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−CeIl Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981);Harlow et al.,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999),and Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,W.H. Freeman and Co.,Publishers,New York,pp.103−120(1991)に教示されているものなど、ハイブリドーマ技術を用いて作製することが可能である。組換え法、ファージディスプレイ法及び免疫化された動物及び未処置動物から得られたライブラリーを含むコンビナトリアル抗体ライブラリーによってモノクローナル抗体を作製するための公知の方法の例は、上記「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K. Borrebaeck,Ed.」に記載されているのを見出すことができる。本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて産生された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核、原核又はファージクローンなど、単一クローンに由来する抗体を表し、産生方法によらない。
【0023】
抗体に関して使用される場合、本明細書において使用される「機能的断片」という用語は、抗体の特異的抗原結合活性の一部又は全部をなお保持している抗体の部分を意味するものとする。このような機能的断片には、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及びミニボディなどの抗体機能的断片が含まれ得る。他の機能的断片には、例えば、重(H)又は軽(L)鎖ポリペプチド、可変重(VH)鎖領域及び可変軽(VL)鎖領域ポリペプチド、相補性決定領域(CDR)ポリペプチド、単一ドメイン抗体並びにその特異的結合活性を保持するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが含まれ得る。このような抗体結合断片は、例えば、Harlow and Lane,上記;Molec.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,R.A.(ed.),NewYork:VCH Publisher,Inc.);Huston et al.,Cell Biophysics,22:189−224(1993);Pluckthun and Skerra,Meth.Enzymol,178:497−515(1989)及びDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,Second Ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,NY(1990)に記載されているのを見出すことができる。
【0024】
抗体及びその機能的断片に関して、様々な形態、改変及び修飾が本分野において周知である。本発明のモノクローナル抗体は、このような様々なモノクローナル抗体の形態、改変及び修飾の何れをも含むことができる。本分野において公知であるこのような様々な形態及び用語の例は、以下に記載されている。
【0025】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片を表し、F(ab’)2断片は、ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であり、Fd断片はVH及びCH1ドメインからなり、Fv断片は抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなり、dAb断片(Ward et al.,Nature341:544−546(1989))はVHドメインからなる。
【0026】
抗体は、1つ又はそれ以上の結合部位を有し得る。2以上の結合部位が存在する場合には、結合部位は互いに同一であり得、又は異なり得る。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、一本鎖抗体又はFab断片は1つの結合部位を有するのに対して、「二重特異的」又は「二機能性」抗体は2つの異なる結語部位を有する。
【0027】
一本鎖抗体(scFv)は、VL及びVH領域がリンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介して連結されて、連続するポリペプチド鎖を形成する抗体を表し、このリンカーは、タンパク質鎖が自身の上に折り返しのために及び一価の抗原結合部位を形成するのに十分に長い(例えば、Bird et al.,Science242:423−26(1988)及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−83(1988)を参照。)。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体を表し、各ポリペプチド鎖は、同一鎖上にある2つのドメイン間での対合を可能とするには短すぎ、従って、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対合できるようにするリンカーによって連結されたVH及びVLドメインを含む(例えば、Holliger,P.,et al.Proc.Natl.Acad.Sd.USA90:6444−48(1993);及びPoljak et alStructure2:1121−23(1994)を参照)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合には、それらの対合から得られるダイアボディは2つの同じ抗原結合部位を有する。2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製するために、異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用することができる。同様に、トリボディ及びテトラボディは、それぞれ3つ及び4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ、同一又は別異であり得る3つ及び4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
【0028】
CDRは、免疫グロブリン(Ig又は抗体)VHβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(H1、H2又はH3)の1つを含有する領域又は抗体VLβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(L1、L2又はL3)の1つを含有する領域を表す。従って、CDRは、フレーム領域配列内に散在された可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、抗体可変(V)ドメイン内の最も大きな超可変性の領域として、例えば、Kabatによって定義されている(Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609−6616(1977);Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1−75(1978))。CDR領域配列は、保存されたβ−シートフレームワークの一部でなく、従って、異なる立体構造を採ることができる残基としてもChothiaによって構造的に定義されている(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。両用語ともに、本分野において周知である。多数の構造の比較によって、標準的抗体可変ドメイン内のCDRの位置が決定されている(Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927−948(1997);Morea et al.,Methods20:267−279(2000))。異なる抗体中において、ループ内の残基の数は変動するので、標準的な位置に対する追加のループ残基には、標準的な可変ドメイン付番スキーム中の残基番号の隣に、慣用的にa、b、cなどが付番される(Al−Lazikani et al.,上記(1997))。このような命名法は、同様に、当業者に周知である。例えば、Kabat(超可変的)又はChothia(構造的)表記の何れかに従って定義されるCDRは、以下の表に記載されている。
【0029】
【表1】
【0030】
キメラ抗体とは、ある抗体由来の1つ又はそれ以上の領域と及び1つ又はそれ以上の別の抗体由来の1つ又はそれ以上の領域とを含有する抗体を表す。1つの具体例において、CDRの1つ又はそれ以上がEGFRに対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。別の具体例において、CDRの全てがEGFRに対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。さらに別の具体例において、2以上の非ヒトEGFR特異的抗体由来のCDRが、キメラ抗体中で混合され、対合される。例えば、キメラ抗体は、第一の非ヒトEGFR特異的抗体の軽鎖由来のCDR1、第二の非ヒトEGFR特異的抗体の軽鎖由来のCDR2及びCDR3並びに第三のEGFR特異的抗体由来の重鎖由来のCDRを含むことができる。さらに、フレームワーク領域は、同一のものの1つから由来することができ、又は1つもしくはそれ以上の異なるヒト抗体若しくはヒト化抗体に由来することができる。ドナー及びレシピエント抗体の両者がヒトであるキメラ抗体を作製することができる。
【0031】
ヒト化抗体又は移植された抗体は、ヒト対象に投与された場合に、非ヒト種の抗体と比べて、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性がより少なくなるように、及び/又はより軽い免疫応答を誘導するように、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加だけ、非ヒト種抗体配列と異なる配列を有する。一つの具体例において、ヒト化抗体を作製するために、非ヒト種抗体の重鎖及び/又は軽鎖のフレームワーク及び定常ドメイン中のある種のアミノ酸が変化を受ける。別の具体例において、ヒト抗体由来の定常ドメインが非ヒト種の可変ドメインに融合される。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号及び同第5,877,293号に見出され得る。ヒト化抗体には、抗体再表面化法などを用いて作製された抗体も含まれる。
【0032】
ヒト抗体とは、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ又はそれ以上の可変領域及び定常領域を有する抗体を表す。例えば、完全なヒト抗体には、可変及び定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体が含まれる。ヒト抗体は、本分野で公知の様々な方法を用いて調製することが可能である。ヒト抗体の具体例は、米国特許第6,235,883号に記載されているヒト抗EGFR抗体の主題であるパニツムマブである。パニツムマブは、本分野において、VectibixTM(Amgen,ThousandOaks,California)としても知られており、例えば、転移性結腸直腸癌などの病理的症状を治療するのに有用である。
【0033】
分子をイムノアドヘシンにするために、共有的に又は非共有的に分子中に1つ又はそれ以上のCDRを取り込ませることも可能である。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを取り込むことができ、別のポリペプチド鎖にCDRを共有結合させることができ、又は非共有的にCDRを取り込むことができる。CDRは、イムノアドヘシンが対象の特定抗原へ特異的に結合できるようにする。
【0034】
本発明の製剤化された抗体に関して使用される場合の中和抗体又は阻害抗体は、受容体のリガンドへの結合を阻害する抗体を表す。EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、阻害抗体とは、EGFR特異的抗体の過剰がEGFRに結合されたEGFの量を低下させるときに、EGFRのEGFへの結合を阻害するモノクローナル抗体を表す。結合阻害は、少なくとも10%、特に、少なくとも約20%生じ得る。様々な具体例において、モノクローナル抗体は、EGFRに結合されるEGFの量を、例えば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%及び99.9%低下させることができる。結合の低下は、例えば、インビトロ競合結合アッセイにおいて測定されるように、当業者に公知の何れかの手段によって測定され得る。
【0035】
「拮抗性」抗体は、その抗原の活性応答を阻害する抗体を表す。EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、拮抗性抗体は、EGFRを発現する細胞、組織又は生物に添加されたときに、EGFRの活性を阻害する抗体を表す。活性の減弱は、EGFのみの存在下でのEGFR活性のレベルと比べて、少なくとも約5%、特に少なくとも約10%、より具体的には少なくとも約15%又はそれ以上であり得る。様々な具体例において、本発明のEGFR特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%だけ、EGFR活性を阻害することができる。
【0036】
作動薬抗体は、その抗原の活性応答を活性化する抗体を表す。EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、作動薬抗体は、EGFRを発現する細胞、組織又は生物に添加されたときに、少なくとも約5%、特に、少なくとも約10%、より具体的には、少なくとも約15%、EGFRを活性化する抗体を表し、ここで、「100%の活性化」とは、EGFの同じモル量によって、生理的条件下で達成される活性化のレベルである。様々な具体例において、本発明のKGFR特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、750%又は1000%、EGFR活性を活性化することができる。
【0037】
エピトープとは、抗体の抗原結合部位内の1つ又はそれ以上の抗体に特異的に結合する分子の一部、例えば、ポリペプチドの一部を表す。エピトープ決定基は、抗体に結合する分子の連続する又は連続していない領域を含み得る。エピトープ決定基は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基も含むことができ、特異的な三次元構造的特徴及び/又は特異的な電荷特徴を有することができる。
【0038】
モノクローナル抗体結合活性に関して使用される場合、本明細書において使用される「特異的」という用語は、参照されるモノクローナル抗体が、他の類似の抗原と比べて、その抗原に対して優先的な結合を示すことを意味するものとする。
【0039】
EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、特異的結合活性とは、参照されているEGFRモノクローナル抗体が、上皮成長因子に関連する他の受容体と比べて、EGFRに対する優先的な結合を示すことを意味するものとする。優先的な結合には、EGFRへの検出可能な結合を示すのに対して、別の関連する成長因子受容体には検出可能な結合を殆ど又は全く示さない本発明のモノクローナル抗体が含まれる。
【0040】
本明細書において使用される「上皮成長因子受容体」又は「EGFR」という用語は、上皮細胞の表面上に発現されるのを見出すことができ、上皮成長因子(EGF)及び/又はトランスフォーミング成長因子α(TGFα)に結合する本分野の受容体を意味するものとする。この受容体は、本分野において周知であり、例えば、「Yarden,Y.,and Sliwkowski,M.X.,Nat Rev Mol Cell Biol.2,127−37(2001)」及び「Mendelsohn,J.and Baselga,J.,J Clin Oncol21,2787−99(2003)」に記載されているのを見出すことができる。EGFRは、米国特許第6,235,883号の主題であるパニツムマブヒト抗体に対する抗原でもある。
【0041】
本明細書において使用される「二価の陽イオン」という用語は、+2の価数を有する正に帯電した元素、原子又は分子を意味するものとする。この用語には、Ca+2、Zn+2、Mn+2、Mg+2、Fe+2、Co+2、Ni+2及び/又はCu+2などの金属イオンが含まれる。本発明の二価の陽イオンには、イオンの塩形態も含まれる。二価の塩形態の具体例には、CaCl2、ZnCl2、MnSO4、MnCl2及びMgCl2並びに塩の形態の上記典型的二価の陽イオンの、例えば、塩化物イオン(Cl)、サルファート、アセタート(Ac)及び/又はフォスファート(P)との他の組み合わせが含まれる。上に例示されているもの以外の二価の陽イオン及び塩形態が本分野において周知であり、本明細書において使用される本用語の意味に含まれる。
【0042】
本明細書において使用される「緩衝液」という用語は、液体のpH(その酸性又はアルカリ性の何れか)を安定化させる物質を意味するものする。本明細書において使用されるこの用語は、その共役塩基と平衡状態にある酸等の緩衝物質を有する溶液を表すものとする。本発明の製剤において有用な典型的緩衝液には、酢酸若しくは酢酸塩緩衝液、グルタミン酸若しくはグルタミン酸塩緩衝液、コハク酸若しくはコハク酸塩緩衝液又はプロピオン酸若しくはプロピオン酸塩緩衝液が含まれる。これらの緩衝液(この用語は、本明細書中で例示及び使用されている。)は、そのそれぞれの共役塩基と平衡状態にある酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸を含有する緩衝液を表す。これらの緩衝液の各々は、それらのpKaの領域内で最適な緩衝能を与えることができ、緩衝能は、溶液に添加された酸又は塩基の何れかで擾乱されたときのpHの変化に対する抵抗を表す。
【0043】
酢酸は、式CH3COOH、16.7℃の融点及び118.0℃の沸点を有する酸を表す。酢酸のpKa4.75である。グルタミン酸は、式C5H9NO4を有する酸性アミノ酸を表し、このアミノ酸のL型及びD型の両方を含む。グルタミン酸側鎖のpKaは4.07であるのに対して、コハク酸のpKaは、その2つのカルボン酸部分に対して4.19及び5.57である。コハク酸は、式C4H6O4、185℃の融点及び235℃の沸点を有する二カルボン酸を表す。プロピオン酸は、式CH3CH2COOH、−21℃の融点及び141℃の沸点を有する液体の酸を表す。本発明の酢酸緩衝液の酢酸形態は、例えば、酢酸、酢酸イオン及び/又は酢酸塩形態を含むアセタートを含み得る。同様に、本発明のグルタミン酸緩衝液のグルタミン酸の形態は、例えば、グルタミン酸、グルタミン酸イオン及び/又はグルタミン酸塩形態を含むグルタマートを含み得る。本発明のコハク酸緩衝液のコハク酸の形態は、例えば、コハク酸、コハク酸イオン及び/又はコハク酸塩形態を含むスクシナートを含み得る。さらに、本発明のプロピオン酸緩衝液のプロピオン酸の形態は、例えば、プロピオン酸、式C2H5CO2−を有するプロピオン酸イオン及び/又はプロピオン酸塩形態を含むプロピオナートを含み得る。
【0044】
本発明の緩衝液中に含めることができる緩衝液の典型的な塩形態には、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、有機アミノ又はマグネシウム塩が含まれる。酢酸、酢酸緩衝液、グルタミン酸、グルタミン酸緩衝液、コハク酸、コハク酸緩衝液、プロピオン酸及びプロピオン酸緩衝液は、当業者に周知である。本明細書において使用される「緩衝液」という用語は、当業者に周知であり、及び治療用ポリペプチドなどの生物医薬との使用に適用することが可能な、上に例示されているもの以外の全ての緩衝液を含むものとする。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、治療用ポリペプチドの安定性を維持又は強化するために、アセタート、グルタマート及び/又はスクシナート以外の緩衝液を本発明の製剤中で等しく置換できることを理解する。
【0045】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、治療的に不活性な物質を意味するものとする。賦形剤は、例えば、希釈剤、ビヒクル、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤などとして、多様な目的のために、製剤中に含めることができる。賦形剤には、例えば、ソルビトール又はマニトールなどのポリオール;スクロース、ラクトース又はデキストロースなどの糖;ポリエチレングリコールなどのポリマー,NaCl、KCl又はリン酸カルシウムなどの塩、グリシン、メチオニン又はグルタミン酸などのアミノ酸、界面活性剤、金属イオン、プロピオン酸塩、酢酸塩又はコハク酸塩などの緩衝塩、防腐剤及びヒト血清アルブミンなどのポリペプチド並びに生理的食塩水及び水が含まれる。本発明の特に有用な賦形剤には、糖アルコール、還元糖、非還元糖及び糖酸を含む糖が含まれる。賦形剤は本分野において周知であり、例えば、「WangW.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「WangW.,Int.J.Pharm.203−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0046】
簡潔に述べれば、糖アルコール(ポリオール、多価アルコール又はポリアルコールとしても知られる。)は、一級又は二級ヒドロキシル基に還元されたカルボニル基を有する炭水化物の水素添加された形態である。ポリオールは、液体中及び凍結乾燥された製剤中の両者で、安定化賦形剤及び/又は等張化剤として使用することができる。ポリオールは、物理的及び化学的分解経路の両方からポリペプチドを保護することができる。優先的に排除された共溶媒は、タンパク質界面における溶媒の有効表面張力を増加させ、エネルギー的に最も好ましい立体構造は最も小さな面積を有する立体構造である。糖アルコールの具体例には、ソルビトール、グリセロール、マニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール及びスレイトールが含まれる。
【0047】
還元糖は、例えば、ケトン又はアルデヒド基を有する糖を含み、糖が還元剤として作用できるようにする反応性ヘミアセタール基を含有する。還元糖の具体例には、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びマルトースが含まれる。
【0048】
非還元糖は、アセタールであるアノマー性炭素を含有し、アミノ酸又はポリペプチドと実質的に反応せず、メイラード反応を開始させない。フェーリング溶液又はトーレン試薬を還元する糖も、還元糖として知られている。非還元糖の具体例には、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース、メレジトース及びラフィノースが含まれる。
【0049】
糖酸には、例えば、サッカリン酸(saccharic acid)、グルコナート及び他のポリヒドロキシ糖及びこれらの塩が含まれる。
【0050】
緩衝賦形剤は、製品の保存寿命を通じて、液体製剤のpHを維持し、例えば、凍結乾燥プロセスの間に、及び再構成の際に、凍結乾燥された製剤のpHを維持する。
【0051】
液体製剤中に含まれる等張化剤及び/又は安定化剤は、製剤が投与に適するように、例えば、等張性、低張性又は高張性を製剤に付与するために使用することができる。このような賦形剤は、例えば、ポリペプチドの構造の維持を促進するために、及び/又は、静電的な溶液タンパク質−タンパク質相互作用を最小化するために使用することもできる。等張化剤及び/又は安定化剤の具体例には、ポリオール、塩及び/又はアミノ酸が含まれる。凍結乾燥された製剤中に含まれる等張化剤及び/又は安定化剤は、例えば、ポリペプチドを凍結ストレスから保護するための凍結保護剤として、又は凍結乾燥された状態のポリペプチドを安定化させるための凍結乾燥保護剤として使用することができる。このような凍結保護剤及び凍結乾燥保護剤の具体例には、ポリオール、糖及びポリマーが含まれる。
【0052】
充填剤又はケーキ剤は、例えば、製品の上品さを増強させ、噴出を抑制するために、凍結乾燥された製剤において有用である。充填剤は、凍結乾燥ケーキに構造的強度を付与し、例えば、マニトール及びグリシンが含まれる。
【0053】
抗酸化剤は、タンパク質の酸化を調節するために液体製剤において有用であり、酸化反応を遅延させるために、凍結乾燥された製剤中で使用することも可能である。
【0054】
金属イオンは、例えば、補因子として、液体製剤中に含めることができ、カルシウム、亜鉛、マンガン及びマグネシウムなどの二価陽イオンは、例えば、本明細書に記載されているようにイソアスパラギン酸形成に対する安定化剤として、懸濁製剤中において使用することができる。液体製剤中に含められるキレート剤は、例えば、金属イオンによって触媒される反応を阻害するために使用することができる。凍結乾燥された製剤に関して、例えば、金属イオンは、本明細書に記載されているように、補因子として又はイソアスパラギン酸形成に対する安定化剤として含めることもできる。一般に、キレート剤は凍結乾燥された製剤からは省略されるが、凍結乾燥プロセスの間の及び再構成の際の触媒反応を抑制するために、所望に応じて、キレート剤を含めることも可能である。
【0055】
液体及び/又は凍結乾燥された製剤中に含まれる防腐剤は、例えば、微生物の成長に対して保護するために使用することが可能であり、特に、複数投薬製剤において有益である。凍結乾燥された製剤において、再構成希釈液中には、一般に、防腐剤が含められる。ベンジルアルコールは、本発明の製剤において有用な防腐剤の具体例である。
【0056】
本明細書において使用される「界面活性剤」という用語は、その中に溶解される液体の表面張力を低下させるように機能する物質を意味するものする。例えば、液体製剤中の凝集、粒子形成及び/又は表面吸着を抑制若しくは調節するために、又は凍結乾燥された製剤中の凍結乾燥及び/又は再構成プロセスの間に、これらの現象を抑制若しくは調節するためなど、様々な目的のために、界面活性剤を製剤中に含めることができる。界面活性剤には、例えば、有機溶媒及び水溶液中の両方で、部分的な溶解度を示す両親媒性有機化合物が含まれる。界面活性剤の一般的な特徴には、水の表面張力を低下させる能力、油と水の間の界面張力を低下させる能力及びミセルを形成する能力も含まれる。本発明の界面活性剤には、非イオン性及びイオン性界面活性剤が含まれる。界面活性剤は本分野において周知であり、例えば、「RandolphT.W.and JonesL.S.,Surfactant−protein interactions.Pharm Biotechnol.13:159−75(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0057】
簡潔に述べれば、非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド、セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA及びコカミドTEAが含まれる。非イオン性界面活性剤の具体例には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85などのポリソルベート;例えばポロキサマー188(ポロキサルコール又はポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)としても知られる。)、ポロキサマー407を含むポロキサマー又はポリエチレン−ポリプロピレングリコールなど及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ポリソルベート20は、TWEEN20、ソルビタンモノラウラート及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートと同義である。
【0058】
イオン性界面活性剤には、例えば、陰イオン性、陽イオン性及び双性イオン性界面活性剤が含まれる。陰イオン性界面活性剤には、例えば、石鹸など、スルホナートをベースとする又はカルボキシラートをベースとする界面活性剤、脂肪酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム及び他のアルキル硫酸塩が含まれる。陽イオン性界面活性剤には、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウムクロリド、ポリエトキシル化された獣脂アミン(POEA)及び塩化ベンゾアルコニウムなどの四級アンモニウムをベースとする界面活性剤が含まれる。双性又は両性界面活性剤には、例えば、ドデシルベテイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベテイン及びココアムフォグリシナートが含まれる。
【0059】
本明細書において使用される「治療的」という用語は、本発明の抗体を含む本発明のポリペプチドに関して使用される場合、当該ポリペプチドがヒト又は他の動物中の疾病の治癒、軽減、治療又は予防において使用することが予定されていることを意味するものとする。従って、治療的ポリペプチドは医薬の具体的種類であり、単一のポリペプチド又は2つ若しくはそれ以上のポリペプチドサブユニットを含むことができる。治療的ポリペプチドには、抗体、その機能的抗体断片、そのペプチボディ又は機能的断片、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが含まれる。多岐にわたる治療的ポリペプチドが本分野において周知であり、これらの全てが、本明細書において使用される前記用語の意味の中に含まれる。本発明の製剤中で使用することができる典型的な治療的ポリペプチドには、例えば、パニツムマブ(VectibixTM)及びEpratuzumab(R)(Emab)並びに多様な抗原に対する機能的断片、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びTNFRリガンド、サイクリン及びエリスロポエチンなどの抗体が含まれる。
【0060】
治療用ポリペプチドなどの治療用巨大分子に関して使用される場合、本明細書において使用される「有効量」という用語は、標的とされる疾病又は生理的状態と関連する少なくとも1つの症候を軽減するのに十分な治療的分子の量を意味するものとする。
【0061】
本発明は、6.0未満のpHを有する緩衝液、約5から150mMの間の二価の陽イオン、糖又はポリオールを含む賦形剤及び治療用ポリペプチドの有効量を含む製剤を提供する。治療用ポリペプチドは、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)に対して特異的な結合活性を有する抗体を含む治療用抗体であり得る。
【0062】
一実施形態において、アスパラギン酸(Asp又はD)及び/又はアスパラギン(Asn又はN)を含有するポリペプチド中のイソアスパラギン酸形成の割合又は程度を阻害又は低下する本発明の製剤が提供される。図13は、スクシンイミド中間体を通じた、Asp又はAsnのイソアスパラギン酸への異性化の経路の模式図である。イソアスパラギン酸の形成は、ポリペプチドの切断及び不安定性並びに生物学的活性の低下をもたらすことができる。
【0063】
Asp又はAsnを含有するポリペプチドは、例えば、これらのアミノ酸の側鎖が溶媒に曝露されたときに、さらに異性化を受けやすくなり、又は異性化に対して感受性を有する。異性化に対して感受性を有するポリペプチドの他の特徴には、例えば、グルタミン酸(GIu又はE)、ヒスチジン(His又はH)、リジン(Lys又はK)、セリン(Ser又はS)又はスレオニン(Thr又はT)などの別の帯電したアミノ酸側鎖又は極性アミノ酸側鎖に近接したAsp又はAsnが含まれる。スクシンイミド中間体を通じた異性化に対する感受性は、例えば、骨格に対する強化された柔軟性及び増加された溶媒曝露のために、グリシン(Gly又はG)などの中性アミノ酸が近接するときにも起こり得る。一般に、Asp残基が例えば溶媒により溶媒曝露され若しくは別の正に帯電した側鎖に近接するほど、その残基は異性化に対してより多くの感受性を有する。例えば、抗体のCDR中、免疫グロブリンドメイン含有ポリペプチドのβターン中又は不規則な構造を有する他の領域中のAsp又はAsnが溶媒に曝露され得る。イソアスパルギン酸へ異性化する、そのCDR中にAsp残基を有する抗体の具体例は、抗体パニツムマブである。さらに、例えば、1、2、3若しくは4又はそれ以上と近い正に帯電した残基は、イソアスパラギン酸形成へのポリペプチドの異性化及び感受性を促進することができる。同様に、例えば、Aspへの近接において、又はポリペプチドの三次元構造内への近接において上に例示されているような残基も、イソアスパラギン酸の形成を促進することができる。
【0064】
本発明の製剤中に二価の陽イオンを含めることは、1つ又はそれ以上のAsp又はAsn残基を含有するポリペプチドの異性化に対する感受性及びイソアスパラギン酸の形成を低下させる。同様に、本発明の製剤中に二価の陽イオンを含めることは、異性化に対して感受性を有するポリペプチド中のイソアスパラギン酸の形成を低下させる。例えば、1つ又はそれ以上のAsp又はAsn残基が、本明細書に記載されている異性化に対して感受性を有し得る複合体構造を有するより大きなポリペプチドでは、二価の陽イオンを含めることが特に有用である。従って、本発明の製剤を安定化させる二価の陽イオンは、10から数百にわたる又はそれ以上のアミノ酸残基のポリペプチドとともに使用することができる。従って、本発明の二価の陽イオン製剤は、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、750若しくは1000又はそれ以上のアミノ酸残基を有するポリペプチドとともに使用することができる。これらの典型的な数字の間にあるポリペプチドの全てのサイズも、本発明の二価陽イオン含有製剤において使用される。
【0065】
本発明の二価陽イオン製剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又はそれ以上のAsp及び/又はAsn残基を有するポリペプチドの異性化を安定化させ、低下させるのに有用である。同様に、本発明の二価陽イオン製剤は、例えば、Glu、His、Lys,Ser、Thr及び/又はGlyに近接している1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又はそれ以上のAsp及び/又はAsn残基を有するポリペプチドの異性化を安定化させ、低下させるのにも特に有用である。このような残基は、典型的なモチーフ(DD、DE、DH、DK、DS、DT又はDG(又はND、NN、NE、NH、NKなど)のように、例えば、互いに隣接して存在することができ、又は上に例示されているように、例えば、2、3若しくは4若しくはそれ以上の残基を隔てることができる。同様に、複数の残基が、モチーフDDD、DDE、DED、DXD又はDXE(Xは、任意のアミノ酸を表す。)などと隣接して又は近接して存在することができる。さらに、上に例示されているモチーフの全ての組み合わせ及び順列も、Asp又はAsn異性化に対する感受性を引き起こし得る。上に例示されているモチーフの1つを有するポリペプチドの具体例は、イソアスパラギン酸へ異性化することができるCDR3中のAsp92へ隣接するHisを含有する抗体パニツムマブである。本発明の二価陽イオン製剤は、これらのモチーフ、組み合わせ及び/又は順列の何れかを含有するポリペプチドを安定化させるのに有用である。
【0066】
Asp又はAsnを含有するポリペプチド中のイソアスパラギン酸形成の割合又は程度を阻害又は低下する本発明の製剤は、異性化及びイソアスパラギン酸の形成を低下させるのに十分な二価陽イオンの量を含む。異性化及びイソアスパラギン酸形成を低下させるのに十分な二価陽イオンの量を含有する本発明の製剤は、上に例示されたAsp又はAsn含有モチーフを有するポリペプチドなど、異性化に対して感受性を有するAsp又はAsn含有ポリペプチドとともに使用するのに特に有用である。例えば、二価の陽イオンは、例えば、ポリペプチド骨格のカルボニルが二次構造形成に関与しておらず、従って、二価陽イオンとの相互作用に利用可能なアミノ酸残基に結合することができる。本発明の製剤中に二価陽イオンを含めることによって、例えば、Asnの脱アミド化及び/又はAspの加水分解を低下させることよりポリペプチド構造を安定化させることもできる。例えば、アスパルチル及びグルタミル残基の側鎖は、例えば、スクシンイミド中間体の形成を防ぐために、二価陽イオンと結合することもできる。
【0067】
異性化及びイソアスパラギン酸形成に対する感受性を阻害又は低下するのに十分な二価陽イオン又はその塩形態の量には、約5から200mMの量が含まれ得る。特に、ポリペプチド安定性の保持及びAsp又はAsn異性化の割合又は程度の低下は、約10−175mM、15−150mM、20−125mM、25−100mM、30−80mM、35−60mM又は40−50mMの間の濃度で二価の陽イオンを含むことによって達成され得る。特に有用な二価陽イオン又はその塩形態の濃度には、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150mMが含まれる。これらの典型的な二価陽イオンの濃度より上、下又は間の全ての濃度も、異性化の割合又は程度を阻害又は低下させるために、本発明の製剤において使用することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、ポリペプチド異性化を阻害又は低下させ、従って、水性製剤又は他の液体製剤中のポリペプチドの安定性を増加させるために、特定の二価の陽イオン又はその塩形態の濃度をどのように選択するかが当業者には明らかである。
【0068】
様々な二価の陽イオン又はその塩形態の何れもが、本発明の製剤において使用され得る。典型的な二価の陽イオンには、例えば、Ca+2、Zn+2、Mn+2、Mg+2、Fe+2、Co+2、Ni+2及び/又はCu+2などの先に例示した金属イオンが含まれる。他の二価の陽イオンには、例えば、Sc+2、Ti+2、V+2、Cr+2、Fe+2、Co+2、Ni+2、Cu+2、Ga+2、Ge+2及び/又はSe+2が含まれる。これらの典型的な二価の陽イオンの塩形態には、例えばCaCl2、ZnCl2、MnSO4、MnCl2及びMgCl2並びに塩形態の上記典型的な二価陽イオンの、例えば塩化物イオン(Cl)、サルファート(SO4)、アセタート及び/又はホスファートとの他の組み合わせが含まれる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、何れの二価陽イオンが治療用製剤に有用であるか、及び何れを、例えば、診断又は研究用途のために使用できるかが当業者に明らかである。あるいは、画像化操作、他の診断操作においてポリペプチドを安定化させるために、及び/又は前臨床研究において使用されるポリペプチドの操作又は保存のために、例えば、治療目的に対してより有用性が低い可能性がある二価の陽イオンを使用することができる。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明の製剤は、製剤中に含まれている1つ又は複数のポリペプチドの等電点(pI)未満のpHを有するように緩衝化される。含まれているポリペプチドのpIより低いpHを有する製剤は、溶液からのポリペプチド沈殿を防止又は低下するのに特に有用である。より低いpHの緩衝液は、凝集及び以下でさらに記載されている他のポリペプチド分解経路を抑制又は低下することによって、ポリペプチドの安定性をさらに促進させるので、酸性pH(含まれているポリペプチドのpIを下回る酸性pHを含む。)も特に有用である。例えば、以下でさらに記載されているように、本発明の幾つかの実施形態において、含まれるポリペプチドのpIに関わらず、6.0未満のpHを有する安定なポリペプチド製剤が使用される。これらの特定の実施形態において、pHは、約pH4.0と5.9の間であり得る。特に有用なpH範囲には、例えば、5.8未満のpH及び約4.8から5.2の間のpHが含まれる。
【0070】
含まれるポリペプチドのpIより低いpHを有する製剤は、約4.0から8.0の範囲であり得る。以下でさらに記載されているように、ポリペプチドのpIより下のpH範囲を含む特に有用なpH範囲には、約4.0から6.0未満が含まれる。一つの典型的な実施形態において、ポリペプチドは、6.63の計算されたpIを有するパニツムマブである。この特異的な実施形態において、約6.6未満のpHを有する緩衝液は、パニツムマブのpIより下であり、本発明の二価陽イオン含有製剤中でのこのポリペプチドの沈殿を抑制又は低下する。さらなる実施形態において、製剤化されたポリペプチドのpIは、例えば、6.0、6.5、7.0又はそれ以上であり得、最終製剤のpHは、例えば、6.0、6.5又は7.0未満であり得る。別の実施形態において、本発明の製剤中のポリペプチドのpIは、例えば、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4又は8.5であり得、これらの典型的なpI値の何れかより小さな本発明の製剤のpHを使用することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、ポリペプチドの沈殿の抑制又は低下を促進するために、本発明の二価陽イオン含有製剤中に含められるポリペプチドのpIより小さなpH値をどのようにして選択するかは当業者に明らかである。沈殿を低下させるために、ポリペプチドのpIより小さなpH値を有するこのような実施形態が必要とされ得、又は必要とされ得ないこと、及びこのようなより低いpH製剤が所望されるかどうかを決定するために、様々なpH値でポリペプチドを調合することが当業者の技術範囲に十分属することも当業者に理解される。
【0071】
治療用ポリペプチドに適した、及び保存、取り扱い又は医薬としての個体への投与に適したあらゆる所望の溶液、緩衝液又は製剤中に、二価陽イオン又はその塩形態を含めることができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、ポリペプチド溶液中の二価の陽イオンを含めることが、Asp又はAsnの異性化、スクシンイミド中間体及び/又はイソアスパラギン酸の形成の割合又は程度を抑制又は低下させることが当業者に理解される。治療用ポリペプチドの保存、取り扱い又は投与のために有用である、ポリペプチド安定性を付与する様々なポリペプチド製剤が以下に例示されている。約5から200mMの間の濃度で、これらの典型的な製剤中に二価の陽イオンを含めることは、異性化の割合又は程度を抑制又は低下させることによって、ポリペプチドの安定性をさらに強化することができる。Asp又はAsn異性化の割合又は程度を抑制又は低下させることによって、ポリペプチドの安定性をさらに増強させるために、二価の陽イオンまたはその塩形態と一緒に、以下に例示されているもの以外の様々な製剤を使用できることも、当業者に理解される。
【0072】
例えば、本発明の1つの典型的な製剤は、抗体を含むポリペプチドの投与、保存及び操作に対して最適な特性を示す。本発明の製剤中で使用するための特に有用なポリペプチドは、パニツムマブである。操作には、例えば、凍結乾燥、再構成、希釈、滴定などが含まれる。本発明の製剤の緩衝成分は、本分野で周知の方法を用いて調製するのに効率的であり、本分野で周知の様々な方法の何れかを用いて、所望のポリペプチドと容易に組み合わせることができ、手間がかかり、時には長い調製及び/又は中間工程を回避できる。さらに、水性緩衝成分は、ポリペプチドの安定性を促進する多様な賦形剤及び界面活性剤と相溶性であるように選択される。本明細書に記載されている本発明の製剤のこれら及び他の属性は、生物活性分子の安定な製剤を調製し、12から18ヶ月を超える又はそれ以上の期間にわたって維持することを可能にする。
【0073】
本発明の液体製剤を含む本発明の製剤の安定性は、製剤内のポリペプチドの構造及び/又は機能の保持を表す。本発明の製剤中のポリペプチドは、安定性又は機能に影響を与える、変化又は崩壊に対する耐性などの属性を呈し、従って、一貫した機能的特徴を長期にわたって維持する。本発明の二価陽イオン又はその塩形態中のポリペプチドは、Asp及び/又はAsnのイソアスパラギン酸への異性化の阻害又は低下も示す。従って、本発明の製剤は、例えば、容量又は活性単位当りの活性に関して信頼性及び安全性を示す。
【0074】
一態様において、本発明の二価陽イオン含有製剤内のポリペプチドの安定性は、イソアスパラギン酸へのAsp又はAsn異性化の抑制又は低減を示し、従って、その後の分解の割合又は程度を低下させる。異性化の割合又は程度の低下には、例えば、二価陽イオンの不存在下に比べて、二価陽イオンの存在下で、イソアスパラギン酸形成の約20から100%、40から95%、50から90%、60から85%又は70から80%の間の阻害が含まれる。従って、本発明の二価陽イオン含有製剤内のポリペプチドの安定性には、二価陽イオンの不存在下と比べて、99.5%超、少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%又は80%、二価陽イオンの存在下でイソアスパラギン酸形成を阻害することが含まれる。阻害の程度は、本分野において周知の、及び以下でさらに記載されている様々な方法によって測定することができる。このような測定の具体例は、実施例2に例示されている。
【0075】
別の実施形態において、本発明の製剤内のポリペプチドの安定性には、例えば、物理的及び/又は化学的安定性の保持が含まれる。ポリペプチドの安定性は、例えば、その構造の化学的修飾を含む、以前に記載されたものなどの物理的分解及び/又は化学的分解経路にポリペプチドが供されたかどうかを測定することによって評価することができる。本発明の製剤中のポリペプチドの安定性の保持には、例えば、最初の時点でのポリペプチドの安定性と比べて、約80から100%、85から99%、90から98%、92から96%又は94から95%の間の物理的又は化学的安定性の保持が含まれる。従って、本発明の製剤中のポリペプチドの安定性には、最初の時点でのポリペプチドの安定性と比べて、99.5%超の安定性、少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%又は80%の安定性の保持が含まれる。
【0076】
さらなる実施形態において、本発明の製剤内のポリペプチドの安定性には、例えば、活性の保持が含まれる。ポリペプチド活性は、例えば、ポリペプチドの機能の指標となるインビトロ、インビボ及び/又はインシチュのアッセイを用いて評価することができる。本発明の製剤中のポリペプチドの安定性の保持には、アッセイの変動性に応じて、例えば、約50から100%の間又はそれ以上の活性の保持が含まれる。例えば、安定性の保持には、最初の時点におけるポリペプチドの活性に比べて、約60から90%の間又は70から80%の間の活性の保持が含まれ得る。従って、本発明の製剤中のポリペプチドの安定性には、最初の時点でのポリペプチドの活性と比べて、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の活性の保持が含まれ、105%、110%、115%、120%、125%若しくは150%又はそれ以上など、100%を超える活性測定が含まれ得る。一般に、最初の時点は、ポリペプチドが最初に本発明の製剤中で調製される時点、又は品質に関して最初に調べられる時点であるように選択される(すなわち、放出規格を満たす。)。最初の時点には、ポリペプチドが本発明の製剤中に再調合される時点も含まれ得る。再調合は、例えば、最初の調製のより高い濃度、より低い濃度又は同じ濃度であり得る。
【0077】
本発明の製剤は、基準溶液又は液体(すなわち、血清)と等張であるように調製することができる。等張溶液は、浸透圧的に安定であるように、周囲の物と比べて、その中に溶解された溶質の実質的に同等の量を有する。特定の溶液又は液体と明示的に比較されている場合を除き、本明細書において、等張又は等張性は、ヒト血清に対する参照によって、典型的に使用される(例えば、300mOsmol/kg)。従って、本発明の等張製剤は、ヒトの血液と実質的に同様の溶質の濃度を含有し、又はヒトの血液と実質的に同様の浸透圧を示す。一般に、等張溶液は、ヒト及び他の多くの哺乳動物に対する正常な生理的食塩水と概ね同じ溶質の濃度(水溶液中の約0.9重量%の塩(例えば、0.009g/mLNaCl)。)を含有する。本発明の製剤には、低張又は高張溶液調製物も含まれ得る。
【0078】
本発明の製剤は、本分野において周知の様々な方法の何れでも調製することができる。本発明の製剤は、約5から200mMの範囲の濃度で1つ若しくはそれ以上の二価陽イオン又はその塩形態と、所望のpHを有する緩衝成分と、少なくとも1つの賦形剤と及びポリペプチドの有効量とを含有する。本発明の製剤の緩衝能は、それぞれ、その共役塩基又は酸との平衡状態にある弱酸又は塩基によって供給される。緩衝成分は、それらの各pKaの約1pH単位内であるpH範囲で強い緩衝能を示す。酸性pHが所望される本発明の特定の実施形態において、酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸は、例えば、パニツムマブなどの抗体を含む多くの生物分子に対して最適であるpKaを有する。これらの典型的な緩衝液は、例えば、4.0から6.0の間のpH範囲で強い緩衝能を示し、6.0より下のpHを有する製剤に対して特に有用である。
【0079】
本分野において周知の様々な緩衝成分の何れをも、本発明の製剤中で使用することができる。このような緩衝成分には、例えば、酢酸、グルタミン酸、コハク酸、プロピオン酸、マレイン酸、グルコナート、ヒスチジン又は他のアミノ酸、シトラート、ホスファート又はこれらの塩形態が含まれる。例えば、他の有機酸を含む他の多様な緩衝液が本分野において周知であり、本発明の製剤の緩衝成分として同様に使用することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられ、製剤及び賦形剤が製剤中に含まれる場合、それらの所望されるpHが与えられれば、上記緩衝成分の何れか又は本分野で周知の他の緩衝成分を選択し、本発明の製剤中において使用できることが当業者に明らかである。
【0080】
緩衝成分は、様々な異なる形態で緩衝系に供給することができる。このような緩衝液及びその形態は、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸含有緩衝液を参照しながら、例示の目的で、本明細書中に例示されている。酢酸、グルタミン酸及びコハク酸緩衝液は、当業者に周知である。先述されているように、本分野において周知の他の様々な緩衝液の何れをも、以下で例示されている、例示されている酢酸、グルタミン酸及び/又はコハク酸緩衝液に対して等しく置き換え得ることが当業者に理解される。ある種の特定の実施形態において、所望のpHでさらに有用な緩衝特性を有する緩衝液の代わりに、ヒスチジン、クエン酸及び/又はホスファート又はこれらの塩を使用する緩衝液は選択されない。
【0081】
例えば、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸成分は、これらの酸、酸塩又は入手可能な、若しくは化学合成を用いて作製することができる他のあらゆる形態として供給され得る。これらの酸の酸塩形態(アセタート、グルタマート又はスクシナート)は、高度に精製された形態で市販されているので、製剤の緩衝系を製造するのに特に有用である。アセタート、グルタマート及びスクシナート塩には、例えば、以前に記載されているもの及び本分野で公知のその他のものが含まれる。製剤成分の高度に精製された形態は、安全及び無毒であるように汚染物質を欠如するように、ヒトへ投与するのに十分に純粋である薬学等級の純度レベルを表す。
【0082】
本発明の製剤は、例えば、選択された温度で製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する本発明の酸又は酸塩の濃度を含有する。酸又は塩(すなわち、酢酸若しくは酢酸塩、グルタミン酸若しくはグルタミン酸塩又はコハク酸若しくはコハク酸塩)の有用な濃度には、例えば、約1から150mMの間及び200mM又はそれ以上が含まれる。例えば、幾つかの事例では、本発明の高張製剤を作製するために、最大1Mの酸又は酸塩を含むことが望ましいことがあり得る。このような高張溶液は、所望であれば、使用前に、等張製剤を作製するために希釈することができる。例示として、本発明の酸又は酸塩緩衝剤の有用な濃度には、例えば、約1から200mM、5から175mM、10から150mM、15から125mM、20から100mM、25から80mM、30から75mM、35から70mM、40から65mM及び45から60mMの間が含まれる。酸又は酸塩の他の有用な濃度には、例えば、約1から50mM、2から30mM、3から20mM、4から10mM及び5から8mMの間が含まれる。従って、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20mM又はそれ以上の酸又は酸塩の濃度も有用である。これらの典型的な濃度を上回る及び下回る全ての値も、製剤において使用することができる。従って、本発明の製剤は、1mM未満の酸若しくは酸塩、又は、例えば、21、22、23、24、25、30、35、40、45若しくは50mM若しくはそれ以上などの20mM超の酸若しくは酸塩を有することができる。様々な製剤は、以下の実施例中に例示されており、図1から13に示されている。
【0083】
先述されているように、酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸緩衝液は、ポリペプチドの安定性を維持するのに最適であり得る約pH4.0から7.0の間、特に、約4.0から6.0の間に強い緩衝能を有するので、本発明の製剤中の酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸緩衝液のpKaは、ポリペプチドとともに使用するのに特に適している。本発明の製剤の緩衝成分は、約4.0から7.0の間のpH範囲内で何らかの効果的な緩衝能を示すように調製することができる。緩衝液及び/又は、例えば、酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸緩衝液を含む最終製剤の典型的なpH範囲は、約3.5から6.5の間、約4.0から6.0の間、約4.5から5.5の間、約4.8から5.2の間又は約5.0のpH範囲を含むことができる。従って、緩衝液及び/又は最終製剤は、約3.0又はそれ未満のpH、約3.5、4.0、4.5、4.8、5.0、5.2、5.5、6.0、6.5若しくは約7.0又はそれ以上のpHを有するように調製することができる。これらの典型的な値より上、下及び間の全てのpH値も、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の緩衝液及び/又は最終製剤中で用いることができる。従って、例えば、緩衝成分及び/又は本発明の最終製剤は、3.5未満、6.5超及びこれらの範囲内の全ての値のpHを有するように調製することができる。緩衝液の緩衝能の強度の大部分が、そのpKaの約1pH単位より外側で減少すること、並びに本明細書において提供される教示及び指針が与えられれば、約3.5のpHより下又は約6.5のpHより上で、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の緩衝液を含めることが本発明の製剤において有効であるかどうかを決定できることが当業者に理解される。
【0084】
他の実施態様において、本発明の製剤の有用なpH範囲は、酸性pH値を含む。酸性pH値を有する製剤は、上記及び下記に記載及び例示されている二価陽イオンの存在下において、含められたポリペプチドの安定化の増加、ポリペプチドの沈殿の減少など、重要な特性を製剤に付与する。典型的な酸性pH値は、上記及び前記の値を含み、並びに6.0未満のpHを有する製剤を含む。酸性pHを有するこのような製剤は、例えば、5.9若しくはそれ未満、5.8若しくはそれ未満、5.7若しくはそれ未満、5.5若しくはそれ未満、5.4若しくはそれ未満、5.3若しくはそれ未満、5.2若しくはそれ未満、5.1若しくはそれ未満、5.0若しくはそれ未満、4.9若しくはそれ未満、4.8若しくはそれ未満、4.7若しくはそれ未満、4.6若しくはそれ未満、4.5若しくはそれ未満、4.4若しくはそれ未満、4.3若しくはそれ未満、4.2若しくはそれ未満、4.1若しくはそれ未満又は4.0のpHも含む。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、上で例示されているpH値の何れか又は製剤に対して所望されるその他のpHに本発明の製剤を維持するために、例えば、そのpKaに基づいて適切な緩衝成分を選択できることを理解する。
【0085】
本発明の製剤の緩衝成分は、1つ又はそれ以上の賦形剤を含むことができる。前述されているように、含められる賦形剤の1つの役割は、製造、搬送及び保存の間に起こり得るストレスに対してポリペプチドの安定化を提供することである。この役割を達成するために、少なくとも1つの賦形剤は、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤として機能することができる。さらに、少なくとも1つの賦形剤は、希釈剤及び/又はビヒクルとして機能し、又は製剤の送達を可能とし、及び/又は患者の利便性を強化するために、高濃度製剤での粘度を低下させるために使用することができる。
【0086】
同様に、少なくとも1つの賦形剤は、上記機能の2以上を本発明の製剤に対してさらに付与することができる。あるいは、上記機能又は他の機能の2以上を実施するために、2つ又はそれ以上の賦形剤を本発明の製剤中に含めることができる。例えば、製剤のオスモル濃度を変化させ、調整し、又は最適化することにより、等張化剤として作用させるために、本発明の製剤中の成分として、賦形剤を含めることができる。同様に、等張化剤及び界面活性剤は何れも、オスモル濃度を調整し、且つ凝集を調整するために、本発明の製剤中に含めることができる。賦形剤、それらの使用、製剤及び特徴は本分野において周知であり、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「Wang W.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0087】
一般に、賦形剤は、様々な化学的及び物理的ストレスに対してタンパク質を安定化させる機序に基づいて選択することができる。本明細書に記載されているように、ある種の賦形剤は、特定のストレスの効果を軽減するために、又は特定のポリペプチドの特定の感受性を制御するために含めるのに有益である。他の賦形剤は、タンパク質の物理的及び共有的安定性に対してより一般的な効果を有するので、含めるのが有益である。特に有用な賦形剤には、製剤の安定性特性を最適化するために、化学的に及び機能的に無害であるもの又は水性緩衝溶液及びポリペプチドと適合的であるものが含まれる。様々なこのような賦形剤は、本発明の水性製剤との化学的適合性及びこのような製剤中に含まれるポリペプチドとの機能的適合性を示す典型的な賦形剤として本明細書に記載されている。例示されている賦形剤に関して本明細書中に提供されている教示及び指針は、本分野で周知の幅広い他の賦形剤の使用に対しても等しく適用できることを、当業者は理解する。
【0088】
例えば、製剤内のポリペプチドの安定性を強化又は付与するために選択される最適な賦形剤には、ポリペプチド上の官能基と実質的に反応しないものが含まれる。この点に関して、還元糖及び非還元糖の両方を本発明の製剤中の賦形剤として使用することができる。しかしながら、還元糖はそれらが反応することができるヘミアセタール基を含有し、ポリペプチドのアミノ酸側鎖上のアミノ基との付加物又は他の修飾を形成する(すなわち、グリコシル化)。同様に、シトラート、スクシナート又はヒスチジンなどの賦形剤も、アミノ酸側鎖と付加物を形成することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、非還元糖を選択することによって、還元糖に比べて、又は上に例示されているような他のアミノ酸反応性賦形剤に比べて、あるポリペプチドに対する安定性のより大きな保持を達成できることが当業者に明らかである。
【0089】
最適な賦形剤は、本発明の水性製剤に対する投与様式に関して安定化を強化し、又は提供するためにも選択される。例えば、静脈内(IV)、皮下(SC)又は筋肉内(IM)投与の非経口経路は、製剤の全ての成分が、製造、保存及び投与の間に、物理的及び化学的安定性を維持する場合により安全で、効果的であり得る。当業者は、例えば、特定の製造若しくは保存条件又は特定の投与様式が与えられれば、ポリペプチドの活性形態の最大の安定性を維持する1つ又はそれ以上の賦形剤を使用することを知っている。製剤中での使用に関して本明細書に例示されている賦形剤は、これら及び他の特徴を示す。
【0090】
本発明の製剤中で使用するための賦形剤の量又は濃度は、例えば、製剤中に含まれるポリペプチドの量、所望の製剤中に含まれる他の賦形剤の量、希釈剤が望まれる若しくは必要とされるかどうか、製剤の他の成分の量若しくは容量、製剤中の成分の総量、ポリペプチドの比活性及び達成されるべき所望の浸透圧又は重量オスモル濃度に応じて変動する。賦形剤濃度に対する具体例は、以下でさらに例示されている。さらに、賦形剤の異なる種類を単一の製剤中に組み合わせることができる。従って、本発明の製剤は、単一の賦形剤、賦形剤の2つ、3つ若しくは4つ若しくはそれ以上の異なる種類を含有することができる。賦形剤の組み合わせは、2つ又はそれ以上の異なるポリペプチドを含有する製剤と組み合わせると特に有用であり得る。賦形剤は、類似の又は異なる化学的特性を示すことができる。
【0091】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、ポリペプチドの安定性の保持を促進する本発明の製剤を達成するために、賦形剤のどのような量又は範囲をある製剤中に含めることができるか分かる。例えば、本発明の薬剤製剤中に含められるべき塩の量及び種類は、最終溶液の所望される重量オスモル濃度(すなわち、等張、低張又は高張)並びに製剤中に含められるべき他の成分の量及び重量オスモル濃度に基づいて選択することができる。同様に、製剤中に含められるポリオール又は糖の種類に関する例示によって、このような賦形剤の量はその重量オスモル濃度に依存する。約5%のソルビトールを含めることによって、等張性を達成することができるのに対して、等張性を達成するために、スクロース賦形剤の約9%が必要とされる。本発明の製剤内に含めることができる1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度の量又は範囲の選択は、塩、ポリオール及び糖に対する参照によって、上に例示されている。しかしながら、当業者は、本明細書に記載されており、及び特定の賦形剤への参照によってさらに例示されている濃度は、例えば、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定化剤、充填剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び/又は防腐剤を含む賦形剤の全ての種類及び組み合わせに対して等しく適用され得ることを理解する。
【0092】
賦形剤は、一般に、約1から40%(w/v)、約5から35%(w/v)の間、約10から30%(w/v)の間、約15から25%(w/v)の間又は約20%(w/v)の濃度範囲で、本発明の製剤中に含めることができる。ある種の事例では、約45%(w/v)、50%(w/v)又は50%(w/v)を上回る高い濃度を、本発明の製剤において使用することも可能である。例えば、幾つかの事例では、本発明の高張製剤を作製するために、最大60%(w/v)又は75%(w/v)の濃度を含むことが望ましい場合があり得る。このような高張溶液は、所望であれば、等張製剤を作製するために、使用前に希釈することができる。他の有用な濃度範囲には、約1から20%、特に約2から18%(w/v)、より具体的には約4から16%(w/v)、さらにより具体的には約6から14%(w/v)又は約8から12%(w/v)又は約10%(w/v)が含まれる。これらの範囲より下、上又はこれらの範囲の間の賦形剤濃度及び/又は量も、本発明の製剤において使用することができる。例えば、約1%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の賦形剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約40%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の賦形剤の実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。約10.0%の賦形剤を有するポリペプチドの製剤に対する例が、以下に提供されている。
【0093】
本発明の製剤において有用な様々な賦形剤が、先述されている。実施例に記載されている特定の製剤において、例示される賦形剤には、安定化剤として使用される、グリセロール、スクロース、トレハロース及び/又はソルビトールが含まれる。実施例に記載されている製剤において例示されている別の賦形剤は、保存用バルク製剤と比べて液体製剤中で使用されるポリソルベート80である。本発明の液体製剤又は凍結乾燥された製剤の何れかにおいて有用な他の賦形剤には、例えば、フコース、セロビオース、マルトトリオース、メリビオース、オクチュロース、リボース、キシリトール、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、リジン、イミダゾール、グリシルグリシン、マンノシルグリセラート、TritonX−100、PluronicF−127、セルロース、シクロデキストリン、デキストラン(10、40及び/又は70kD)、ポリデキストロース、マルトデキストリン、フィコール、ゼラチン、ヒロドキシプロピルメス、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ZnCl2、亜鉛、酸化亜鉛、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、トロメタミン、銅、フィブロネクチン、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、プロタミン、グリセリン、グリセロール、EDTA、メタクレゾール、ベンジルアルコール及びフェノールが含まれる。これらなどの賦形剤及び本分野において公知の他の賦形剤は、例えば、「WangW.,上記、(1999)」及び「WangW.,(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0094】
本発明の製剤の緩衝成分は、1つ又はそれ以上の界面活性剤を賦形剤として含むこともできる。先述されているように、本発明の製剤中での界面活性剤の1つの役割は、表面によって誘導される分解などの凝集及び/又は吸着を抑制又は最小化することである。十分な濃度で、一般には、概ね界面活性剤の臨界ミセル濃度で、界面活性剤分子の表面層は、タンパク質分子が界面に吸着するのを防ぐ役割を果たす。これにより、表面によって誘導される分解は最小化される。界面活性剤、それらの使用、製剤及び製剤に対する特徴は本分野において周知であり、例えば、「Randolph及びJones、上記、(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0095】
本発明の製剤中に含めるのに最適な界面活性剤は、例えば、凝集及び/又は吸着を抑制又は低下させることによって、ポリペプチドの安定性の保持を強化又は促進するために選択され得る。例えば、ポリソルベートなどのソルビタン脂肪酸エステルは、多岐にわたる親水性及び乳化特性を示す界面活性剤である。これらは、安定化の必要性の広い範囲をカバーするために、個別に又は他の界面活性剤と組み合わせて使用することができる。ポリペプチドの疎水性及び親水性特性の幅広い範囲をカバーするように特別に調製することができるので、このような特性は、ポリペプチドともに使用するのに特に適している。界面活性剤を選択するための考慮事項には、賦形剤に関して一般的に前述されているもの並びに界面活性剤の疎水性特性及び臨界ミセル濃度が含まれる。本明細書に例示されている界面活性剤及び本分野において周知の他の多くの界面活性剤を、本発明の製剤中で使用することができる。
【0096】
本発明の製剤に対する界面活性剤の濃度範囲には、賦形剤に関して一般的に先述されているものが含まれ、特に有用な濃度は約1%(w/v)未満である。この点に関して、界面活性剤濃度は、約0.001から0.10%(w/v)、特に約0.002から0.05%(w/v)の間、より具体的には約0.003から0.01%(w/v)の間、さらにより具体的には約0.004から0.008%(w/v)の間又は約0.005から0.006%(w/v)の間の範囲で、一般に使用することができる。これらの範囲より下、上又はこれらの範囲の間の界面活性剤濃度及び/又は量も、本発明の製剤において使用することができる。例えば、約0.001%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の界面活性剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約0.10%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09若しくは0.10%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の界面活性剤の実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。
【0097】
本発明の製剤における賦形剤として有用な様々な界面活性剤が、先述されている。本発明の液体製剤又は凍結乾燥された製剤において有用な他の界面活性剤には、例えば、ラウリン酸(C12)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)エステル、マクロゴールセトステアリルエーテル、マクロゴールラウリルエーテル、マクロゴールオレイルエーテル、マクロゴールオレアート、マクゴロールステアラート、マクロゴールグリセロールリシノレアート、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートなどの糖エステル;オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド;セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、並びにコカミドMEA、DEA、TEAなどのコカミド、他の非イオン性界面活性剤及び他のイオン性界面活性剤が含まれる。
【0098】
従って、本発明は、約4.5から約7.0のpHを有する約1から100mMの間の酢酸、グルタミン酸又はコハク酸、約1から20%の間のポリオール又は糖、約0.001から0.010%の間のポリソルベート80及び治療用抗体の有効量を有する水溶液を含む製剤を提供する。この製剤は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンも含むことができる。本発明の製剤は、約5.0のpHを有する酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の約10mM、約2.6%グリセロール及び約0.004%ポリソルベート80を含むこともできる。様々な他の製剤成分、成分の組み合わせ及びこれらの濃度も、本発明の製剤中に含めることが可能である。
【0099】
製剤のポリペプチド成分として治療的ポリペプチドを有する製剤がさらに提供される。この製剤は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含むことができる。治療的ポリペプチドには、抗体、抗体の機能的抗体断片、ペプチボディ、ホルモン、成長因子又は細胞シグナル伝達分子が含まれる。特定の実施形態において、抗体はヒト抗体である。別の特定の実施形態において、抗体はEGFRに対して特異的である。さらに別の特定の実施形態において、抗体はパニツムマブである。
【0100】
本発明の製剤中には、多様な治療的分子も含まれる。本発明の治療的分子には、病的状態の診断、治療若しくは予防において又は医薬の成分として使用することができる、例えば、活性医薬成分として使用されるポリペプチド、核酸、脂質、炭水化物又はこれらの構築ブロックなどの巨大分子又はバイオポリマーが含まれる。例えば、本発明の製剤は、ヒトを含む哺乳動物の生理系に内在する、ポリペプチド、グリコポリペプチド、ペプチドグリカン、ゲノムDNA、cDNAなどのDNA、mRNA、RNAi、SNRPSなdのRNA、単糖、多糖、N結合型糖、O結合型糖、レプチンなどを含み得る、活性医薬成分として想定される炭水化物、リン脂質、糖脂質、脂肪酸などの脂質、ポリアミン、イソプレノイド、アミノ酸、ヌクレオチド、神経伝達物質及び補因子並びに多くの他の巨大分子、生物ポリマー及びその構築ブロックに対して適用可能であり、これらに対する安定性の保持を促進する。これら及び他の生物医薬は当業者に周知であり、病的状態の診断、治療又は予防において使用するために、又は医薬の成分として本発明の製剤中に含めることができる。
【0101】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、本発明の製剤は、上に例示されているもの及び本分野において周知のその他のものを含む治療的分子の全ての種類に対して等しく適用可能であることが当業者に理解される。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、1つ又はそれ以上の賦形剤、界面活性剤及び/又は場合によって使用される成分の、例えば種類又は及び/又は量の選択は、製剤化されるべき治療的分子との化学的及び機能的適合性及び/又は投与様式並びに本分野において周知の他の化学的、機能的、生理的及び/又は医学的要素に基づいて行い得ることも当業者に理解される。例えば、先述のように、非還元糖は、還元糖と比べて、ポリペプチド治療薬とともに使用した場合に、好ましい賦形剤特性を示す。従って、本発明の製剤は、ポリペプチド治療薬に関して、さらに以下で例示されている。しかしながら、適用可能性の範囲、化学的及び物理的特性、ポリペプチド治療薬に対して適用される考慮事項及び方法は、ポリペプチド治療薬以外の治療的分子に対しても同様に適用できる。
【0102】
本発明の製剤中で使用するために適用可能なポリペプチドの典型的な種類には、例えば、ポリペプチドの免疫グロブリンスーパーファミリー、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンなどの治療的ポリペプチドの全ての種類が含まれる。本発明の製剤中での使用に適用可能な典型的ポリペプチドには、例えば、抗体及びその機能的断片、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びFhmを含むTNFRリガンド、サイクリン、エリスロポエチン、神経成長因子(NGF)、発達に応じて制御される神経成長因子VGF、栄養因子、栄養因子NNT−1、Eph受容体、Eph受容体リガンド;Eph様受容体、Eph様受容体リガンド、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、Thy−1特異的タンパク質、Hekリガンド(hek−L)、Elk受容体及びElk受容体リガンド、STAT、コラーゲナーゼ阻害剤、オステオプロテジェリン(OPG)、APRIL/G70、AGP−3/BLYS、BCMA、TACI、Her−2/neu、アポリポタンパク質ポリペプチド、インテグリン、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤、C3b/C4b補体受容体、SHC結合タンパク質、DKRポリペプチド、細胞外マトリックスポリペプチド、上記治療的ポリペプチドに対する抗体及びその抗体機能的断片、上記治療的ポリペプチドに対する受容体に対する抗体及びその抗体機能的断片、これらの機能的ポリペプチド断片、融合ポリペプチド、キメラポリペプチドなどの全ての治療的ポリペプチドが含まれる。
【0103】
本発明の製剤中での使用に適用可能な市販の医薬の具体例には、例えば、ENBREL(Etanercept;CHOによって発現される二量体融合タンパク質((Amgen,Inc.));EPOGEN(Epoetinα;哺乳動物細胞によって発現される糖タンパク質(Amgen,Inc.));INFERGEN(R)(インターフェロンアルファコン−1;イー・コリによって発現される組換えタンパク質(Amgen,Inc.));KINERET(R)(アナキンラ;イー・コリによって発現される、ヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)の組換え非グリコシル化形態(Amgen,Inc.));ARANESP(ダルベポエチンα;CHOによって発現された、組換えヒト造血刺激タンパク質(Amgen,Inc.));NEULASTA(ペグフィルグラスチム;組換えメチオニルヒトG−CSFと20kDPEGの共有連結体(Amgen,Inc.));NEUPOGEN(Filgrastim;イー・コリによって発現されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(Amgen,Inc.))及びSTEMGEN(Ancestim、幹細胞因子;イー・コリによって発現された組換えヒトタンパク質(Amgen,Inc.))が含まれる。これら及び全ての他の市販の医薬は、例えば、製造の時点で、使用の前に及び/又は短期若しくは長期保存の前に、本発明の製剤中に再調合することが可能である。
【0104】
抗体、特に、本発明の製剤中の治療的抗体としての使用に適用可能なEGFRに対して特異的な抗体の具体例には、例えば、パニツムマブ(Amgen,Inc.);セツキシマブ(ErbituxTm;Imclone Systems,New York City);IMC−11F8(Imclone Systems);Humax−EGFR(Genmab,Copenhagen,Denmark);マツズマブ(EMD−7200;Merck KGaA,Darmstadt,Germany)及びニモツズマブ(TheraCIM hR3;YM Biosciences,Mississauga,Ontario,Canada)が含まれる。上記抗体の全てが、本分野において周知である。例えば、パニツムマブはAmgenから市販されており、米国特許第6,235,883号に記載されているヒト抗EGFR抗体の主題である。IMC−11F8は米国特許第7,060,808号の主題であり、Humax−EGFRは米国特許公開第20030091561号及び20030194403号の主題である。
【0105】
治療的分子の範囲のさらなる例示によって、以下でさらに記載されている本発明の適用可能性は、本発明の製剤中での治療的ポリペプチドとして使用することができる抗体及びその機能的断片の典型的な種類である。先述されているように、抗体及びその機能的断片に対して適用可能な化学的及び物理的特性、製剤化の検討事項及び方法は、他のポリペプチド生物医薬を含む生物医薬に対しても同様に適用することができる。
【0106】
本発明のポリペプチドとして使用するための標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片は、様々な抗体形態の何れかで作製することが可能であり、及び/又は先述されている様々な様式の何れかで、それらの特異的標的結合活性を維持しながら改変若しくは修飾することが可能である。標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片のこのような抗体形態、改変又は修飾(これらの組み合わせを含む。)の何れもが、ポリペプチドとして、本発明の中に含まれる。本発明のポリペプチド又はその機能的断片として使用するための標的特異的モノクローナル抗体のこのような様々な抗体形態、改変又は修飾の何れもが、本明細書に記載されているように、本発明の方法、組成物及び/又は製品において同様に使用され得る。例えば、本発明の標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片には、標的特異的な、移植化された、ヒト化された、Fd、Fv、FabF(ab)2、scFv及びペプチボディモノクローナル抗体並びに先述されている全ての他の形態、改変及び/又は修飾が含まれ、当業者に周知の他の形態が含まれる。
【0107】
ハイブリドーマを作製する方法及びハイブリドーマ技術を用いて標的特異的モノクローナル抗体をスクリーニングする方法は一般的なものであり、本分野において周知である。例えば、ポリペプチドなどの標的分子でマウスを免疫化することができ、一旦、免疫応答が検出されたら、例えば、標的分子に対して特異的な抗体がマウス血清中に検出されたら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次いで、周知の方法によって、何れかの適切な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞に、脾細胞を融合させる。限界希釈によって、ハイブリドーマを選択し、クローニングする。次いで、標的分子を結合することができる抗体を分泌する細胞に関して、本分野で公知の方法によって、ハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫化することによって、抗体の高いレベルを一般に含有する腹水液が生成され得る。
【0108】
さらに、標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、原核生物又は真核生物宿主中での組換え発現を使用することができる。単一の標的特異的モノクローナル抗体種又はその機能的断片を作製するために、組換え発現を使用することができる。あるいは、重鎖及び軽鎖又は可変重鎖及び可変軽鎖の組み合わせのの多様なライブラリーを作製するために、組換え発現を使用すること可能であり、次いで、標的分子への特異的結合活性を示すモノクローナル抗体又はその機能的断片に対してスクリーニングすることができる。例えば、重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はその機能的断片は、特異的モノクローナル抗体種を作製するために、本分野で周知の方法を用いて、標的特異的モノクローナル抗体をコードする核酸から同時発現させ得る。重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はこれらの機能的断片をコードする核酸の同時発現された集団から、本分野で周知の方法を用いて、ライブラリーを作製し、標的特異的モノクローナル抗体の同定のために、標的分子への親和性結合によってスクリーニングすることができる。このような方法は、例えば、Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,上記;Huse et al.,Science246:1275−81(1989);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7978−82(1991);Kang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:4363−66(1991);Pluckthun and Skerra,上記;Felici et al.,J.Mol.Biol.222:301−310(1991);Lerner et al.,Science258:1313−14(1992)及び米国特許第5,427,908号に記載されているのを見出すことができる。
【0109】
コード核酸のクローニングは、当業者に周知の方法を用いて達成することができる。同様に、VH及び/又はVLコード核酸を含むコード核酸の重鎖及び/又は軽鎖レパートリーのクローニングも、当業者に周知の方法によって達成することができる。このような方法には、例えば、発現クローニング、相補的プローブを用いたハイブリッド形成スクリーニング、プライマーの相補対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は相補的プライマーを用いるリガーゼ連鎖反応(LCR)、逆転写酵素PCR(RT−PCR)などが含まれる。このような方法は、例えば、「Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,ThirdEd.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001)」及び「Ansubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)」中に記載されているのを見出すことができる。
【0110】
コード核酸は、National Institutes of Health(NIH)のNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって運営されているものなどの完全なゲノムデータベースを含む様々な公共的データベースの何れかから取得することも可能である。プライマーは入手可能であり、又は抗体の可変若しくは定常領域部分の保存された位置を用いて容易に設計できるので、重鎖及び/又は軽鎖又はこれらの機能的断片に対する単一のコード核酸又はコード核酸のレパートリーの何れかを単離する特に有用な方法は、コード領域部分の具体的な知識なしに達成することができる。例えば、コード核酸のレパートリーは、PCRと一緒にこのような領域に対する縮重プライマーの複数を用いてクローニングすることができる。このような方法は本分野において周知であり、例えば、Huse他、上記及び「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.、上記」に記載されているのを見出すことができる。本発明のポリペプチドとして使用するための標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、上記方法の何れも及び本分野で公知の他の方法(これらの組み合わせを含む。)を使用することができる。
【0111】
従って、本発明は、抗体、抗体の機能的断片を治療的ポリペプチドとして有する製剤を提供する。この製剤は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンも含むことができる。治療的ポリペプチドには、モノクローナル抗体、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ又はペプチボディが含まれ得る。
【0112】
本発明の製剤中に含めるべきポリペプチドの濃度は、例えば、ポリペプチドの活性、治療されるべき適応症、投与の様式、治療計画及び製剤が液体又は凍結保存された形態の何れかで長期保存が予定されているかどうかに応じて変動する。これらの周知の検討事項及び薬科学の技術水準が与えられれば、どの濃度を使用するかが当業者には明らかである。例えば、医学的適応症、投与の様式及び治療計画の幅広い範囲に対して、米国内での治療的使用に対して承認されている80超のポリペプチドが存在する。これらの承認されたポリペプチドは、本発明の製剤において使用することができるポリペプチド濃度の範囲の典型である。
【0113】
一般に、例えば、治療的ポリペプチドを含むポリペプチドは、約1から200mg/mL、約10から200mg/mL、約20から180mg/mL、特に約30から160mg/mL、より具体的には約40から120mg/mL、より具体的には約50から100mg/mL又は約60から80mg/mLの間の濃度で、本発明の製剤中に含められる。これらの範囲より下、上又はこれらの範囲の間のポリペプチド濃度及び/又は量も、本発明の製剤において使用することができる。例えば、約1.0mg/mL未満を占める1つ又はそれ以上のポリペプチドを製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、特に保存用に製剤化される場合、約200mg/mLを上回る1つ又はそれ以上の濃度を含有することができる。従って、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190若しくは200mg/mL若しくはそれ以上などの、1つ又はそれ以上のポリペプチドの実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。以下の実施例に例示されているのは、約10mg/mLの濃度を有する治療的ポリペプチドに対する製剤である。
【0114】
本発明の製剤は、製剤中のポリペプチドの組み合わせを含むこともできる。例えば、本発明の製剤は、1つ又はそれ以上の症状の治療用の単一のポリペプチドを含むことができる。本発明の製剤は、2つ又はそれ以上の異なるポリペプチドを含むこともできる。本発明の製剤中での複数のポリペプチドの使用は、例えば、同一又は別異の適応症に向けられ得る。同様に、例えば、病的状態及び一次的治療によって引き起こされた1つ又はそれ以上の副作用の両方を治療するために、本発明の製剤中で複数のポリペプチドを使用することができる。複数のポリペプチドは、例えば、病的状態の進行の同時治療及びモニタリングなどの様々な医学的目的を達成するために、本発明の製剤中に含めることもできる。一部又は全部の示唆される治療及び/又は診断に対して単一の製剤が十分であり得るので、上に例示されているもの及び本分野において周知の他の組み合わせなどの複数の同時療法は、患者の服薬遵守のために特に有用である。当業者は、組み合わせ療法の幅広い範囲のために混合できるポリペプチドを知悉する。同様に、本発明の製剤は、小分子医薬及び1つ又はそれ以上の小分子医薬との1つ又はそれ以上のポリペプチドの組み合わせとともに使用することも可能である。従って、本発明は、1、2、3、4、5若しくは6又はそれ以上の異なるポリペプチドを含有する本発明の製剤及び1つ又はそれ以上の小分子医薬と組み合わされた1つ又はそれ以上のポリペプチドを含有する本発明の製剤を提供する。
【0115】
本発明の製剤は、本分野で周知の1つ又はそれ以上の防腐剤及び/又は添加物を含むこともできる。同様に、本発明の製剤は、様々な公知の送達製剤の何れにもさらに製剤化することができる。例えば、本発明の製剤は、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルなどの防腐剤、甘味剤及び着香剤を含むことができる。このような場合によって使用される成分、それらの化学的及び機能的特徴は、本分野において周知である。投与後におけるポリペプチドの迅速な放出、持続的放出又は遅延した放出を促進する製剤も、同様に、本分野において周知である。本発明の製剤は、本分野で周知のこれらの又はその他の製剤成分を含むように作製することができる。
【0116】
本発明の製剤は、例えば、例えば水性液体以外の状態で作製することもできる。例えば、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含有する製剤を含む本発明の製剤は、凍結乾燥された製剤として調製することができる。凍結乾燥された製剤は、バルク剤又はケーキ剤及び非晶質の安定化剤を一般に含有する。
【0117】
一旦、本発明の製剤が本明細書中に記載されているとおりに調製されたら、製剤中に含有される1つ又はそれ以上のポリペプチドの安定性は、本分野で周知の方法を用いて評価することができる。このような方法の幾つかが実施例中で以下にさらに例示されており、サイズ排除クロマトグラフィー及び粒子の計数が含まれる。例えば、結合活性、他の生化学的活性及び/又は生理的活性を含む様々な機能的アッセイの何れも、本発明の緩衝化された製剤中でのポリペプチドの安定性を決定するために、2つ又はそれ以上の異なる時点で評価することができる。
【0118】
本発明の製剤は、一般に、医薬の標準に従って、及び医薬等級の試薬を用いて調製される。同様に、本発明の製剤は、一般に、無菌製造環境中で又は無菌化された以下の調製物中で無菌試薬を用いて調製される。無菌注射可能溶液は、例えば、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又は組み合わせとともに、本発明の酢酸、グルタミン酸若しくはコハク酸緩衝液又は賦形剤中に、必要とされる量の1つ又はそれ以上のポリペプチドを取り込ませた後に、滅菌精密ろ過を行うことなど、本分野で周知の操作を用いて調製することができる。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の具体的実施形態において、調製の特に有用な方法には、例えば、先述されているように、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)が含まれる。このような乾燥法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から、何れかのさらなる所望の成分と一緒に、1つ又はそれ以上のポリペプチドの粉末を与える。
【0119】
投与及び投薬治療計画は、最適な治療応答に対する有効量を与えるように調整することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができ、複数の分割された用量を経時的に投与することができ、又は、治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少若しくは増加させ得る。1つ又はそれ以上のポリペプチドの有効量を投与する上で、投与の容易さ及び投薬量の均一さのために、単位投薬形態での静脈内、非経口又は皮下注射用の本発明の製剤を製剤化することが特に有用であり得る。単位投薬とは、治療されるべき対象に対する単一投薬として適合された医薬の物理的に分離された量を表し、各単位は、所望される治療効果を生じるように計算された活性ポリペプチドの所定量を含有する。
【0120】
さらなる例示のために、治療用抗体、特にパニツムマブなどのポリペプチドの有効量は、例えば、ある期間にわたって、計画された間隔を置いて、2回以上投与することができる。ある種の実施形態において、治療用抗体は、少なくとも一ヶ月又はそれ以上の期間にわたって、例えば一ヶ月、二ヶ月若しくは三ヶ月又はそれ以上にわたって投与される。慢性症状の治療に関しては、長期の持続的治療が一般に最も効果的である。例えば1週から6週を含む急性症状を治療する場合には、投与のより短い期間が十分であり得る。一般に、選択された一又は複数の指標に関して、患者がベースラインを上回る改善の医学的に妥当な程度を呈するまで、治療用抗体又は他のポリペプチドが投与される。
【0121】
選択されたポリペプチド及び治療されるべき適応症に応じて、治療的有効寮は、標的とされる病的状態の少なくとも1つの症候を、治療されていない対象と比べて、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%若しくは60%又はそれ以上低下させるのに十分である。症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、ヒトにおいて標的とされる症状に対する効力を予測する動物モデル系で評価することができる。あるいは、症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、インビボでの治療活性の指標となる製剤のインビトロ機能又は活性を調べることによって評価することができる。
【0122】
本発明の製剤中の1つ又はそれ以上のポリペプチドの実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、製剤及び投与様式に対する所望の治療的応答を達成するのに有効である活性ポリペプチドの量を得るために変動させることができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症候の重度並びに選択されたポリペプチド及び/又は投与経路などの因子に基づいて、投与される量を測定することができる。選択された投薬量レベルは、例えば、使用されるポリペプチドの活性、投与の経路、投与の時間、排泄の速度、治療の期間、使用される具体的な組成物と組み合わされて使用される他の薬物、化合物及び/又は物質、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び以前の病歴並びに医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存し得る。本発明の特定の実施形態は、1日当り対象のkg体重当り抗体約1ng(「1ng/kg/日」)から約10mg/kg/日、より具体的には、約500ng/kg/日から約5mg/kg/日、より具体的には約5μg/kg/日から約2mg/kg/日の投薬量で、本発明の製剤中の抗体又はその機能的断片などの治療用ポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0123】
本分野の技術を有する医師又は獣医師は、必要とされる医薬製剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、望ましい治療効果を達成するために必要とされるレベルより低いレベルで本発明の製剤の投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。一般に、本発明の製剤の適切な一日投薬量は、治療効果をもたらすのに効果的な最低用量であるポリペプチドの量である。このような有効量は、一般に、先述されている要因に依存する。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であることが特に有用である。所望であれば、製剤の有効量を達成するための有効一日用量は、場合により単位投薬量で、一日を通じて、適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6又はそれ以上の副投薬として投与することができる。
【0124】
本発明の製剤は、例えば、本分野で公知の医療用具を用いて投与することができる。例えば、特に有用な実施形態において、本発明の製剤は、米国特許第5,399,163号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,064,413号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,790,824号;又は米国特許第4,596,556号に記載されている用具など、無針皮下注射装置を用いて投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で医薬を分配するためのインプラント可能な微少注入ポンプを記載する米国特許第4,487,603号;皮膚を通じて医薬を投与するための治療用具を記載する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを記載する米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための変動流量インプラント可能注入装置を記載する米国特許第4,447.224号;マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,439,196号及び浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,475,196号が含まれる。このような他の多くのインプラント、送達システム及びモジュールは、当業者に公知である。
【0125】
ある種の特定の実施形態において、本発明の製剤において使用するためのポリペプチドは、インビボでの選択的な分布を促進するようにさらに製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。血液脳関門の通過を促進するために、所望であれば、製剤は、例えば、1つ又はそれ以上のポリペプチドをカプセル封入するためのリポソームをさらに含むことができる。リポソームを製造する方法に関しては、例えば、米国特許第4,522,811号;米国特許第5,374,548号及び米国特許第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器中に選択的に輸送され、従って、選択されたポリペプチドの標的誘導された送達を強化する1つ又はそれ以上の部分をさらに含有し得る(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照)。典型的な標的誘導部分には、フォラート又はビオチン(例えば、Low他に対する米国特許第5,416,016号);マンノシド(Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloeman et al.(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.(1995)Antimicrob.AgentsChemother.39:180)又は界面活性プロテインA受容体(Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134)が含まれる。
【0126】
従って、本発明は、製剤を調製する方法をさらに提供する。この方法は、約4.0から約7.0までのpHを有する緩衝液及び糖又はポリオールから選択される賦形剤を有する水溶液を、例えば、EGFR特異的抗体を含む治療用ポリペプチドの有効量と組み合わせることを含む。この方法は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで製剤化された1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含むこともできる。緩衝成分は、酢酸、グルタミン酸、コハク酸若しくはプロピオン酸又はこれらの塩を含み得る。EGFR特異的抗体は、例えば、パニツムマブであり得る。本発明の製剤の幅広い範囲を作製するために、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又はそれ以上を、ポリペプチドの1つ又はそれ以上の有効量と組み合わせることができる。
【0127】
本発明は、ポリペプチドを安定化させる方法をさらに提供する。この方法は、6.0未満のpHを有する緩衝液中の約5から150mMの間の二価陽イオンの濃度及び糖又はポリオールを含む賦形剤と治療用ポリペプチドを接触させることを含む。
【0128】
異性化及びイソアスパラギン酸形成の割合又は程度を低下させることにより、そのペプチドの安定性を維持又は強化させるために、1つ若しくはそれ以上の二価陽イオン又はその塩形態を、Asp又はAsnを含有するポリペプチドに添加することができる。Asp含有又はAsn含有ポリペプチドを安定化させるために有用な1つ若しくはそれ以上の二価陽イオン又はその塩形態には、先に例示された全て並びに本分野において公知の他の二価陽イオンが含まれる。同様に、前記製剤及び本発明の製剤を調製する方法のように、Asp又はAsnの異性化の割合又は程度を低下させるために、二価陽イオンの組み合わせを含めることもできる。例えば、例えばCa+2、Zn+2、Mn+2及び/又はMg+2の2つ、3つ又はそれ以上の組み合わせは、Asp含有ポリペプチド、Asn含有ポリペプチド、Asp及びAsn含有ポリペプチド、又はイソアスパラギン酸形成に対してポリペプチドを感受性にする前記モチーフ若しくは構造の何れかを含有するポリペプチドを安定化させるため使用することができる。約5から200mMの間の濃度において、1つ又はそれ以上の二価陽イオンを含めることは、Asp又はAsnの異性化を抑制し又は遅らせる。他の有用な二価陽イオン濃度には、先に例示された濃度が含まれる。先に記載され又は本明細書中に例示されている構成要素、成分又はpH値の何れかの組み合わせを含有する製剤中のポリペプチドを、約5から200mM間の1つ又はそれ以上の二価陽イオンと接触させることにより、ポリペプチドを安定化させる方法において、同様に、1つ又はそれ以上の二価陽イオンを使用することが可能である。
【0129】
約4.0から約7.0のpHを有する、約1から10mMの間の酢酸、グルタミン酸、コハク酸又は他の緩衝液、約1から10%の間のグリセロール又はソルビトール、約0.001から0.010%の間のポリソルベート80及び例えば、EGFR特異的抗体又はパニツムマブなどの治療用抗体の有効量を有する水溶液を含む製剤を含有する容器がさらに提供される。容器は、上記成分及び5から200mMの間の濃度で及び/又は6.0未満のpHになるように調合された1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含有する製剤も含むことができる。簡潔に述べれば、本発明の組成物、キット及び/又は医薬に関して、本発明の製剤中の1つ又はそれ以上のポリペプチドの組み合わされた有効量は、単一の容器若しくは容器手段の中に含めることができ、又は異なる容器若しくは容器手段の中に含めることができる。画像化成分を場合によって含めることが可能であり、パッケージは製剤を使用するための指示文書又はインタネットにアクセス可能な指示を含むこともできる。容器又は容器手段は、例えば、容器、瓶、注射器又は複数分配パッケージングのための本分野で周知の様々な規格の何れをも含む。
【0130】
本発明の様々な実施形態の作用に対して実質的に影響を与えない修飾も、本明細書に提供されている本発明の定義内に含まれることが理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例示することを目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【0131】
本発明の様々な実施形態の作用に対して実質的に影響を与えない修飾も、本明細書に提供されている本発明の定義内に含まれることが理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例示することを目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0132】
緩衝化された溶液中でのポリペプチド安定性の特徴
この実施例は、パニツムマブの安定性に対する様々な製剤の特徴を記載する。パニツムマブのバルク調製物の長期安定性に対する様々な製剤の特徴も記載する。
【0133】
モノクローナルIgG2抗体パニツムマブを安定化する様々な製剤条件が、以下に記載されている。これらの製剤条件は、治療用ポリペプチドの投与のために適用可能な製剤条件及び治療用ポリペプチドの保存、維持及びロットの調製のために適用可能な製造条件が含まれる。以下に例示されている本発明の製剤条件は、凝集、化学的分解及び粒子形成に対して特に有用なパニツムマブの安定性を付与する。これらの条件は、粒子形成を抑制する上で特に効果的であることが示され、これにより、静脈内投与のためのライン中フィルターに対する必要性を一切なくすことができる。
【0134】
簡潔に述べれば、パニツムマブは約5.0から7.0の範囲のpHにおいて安定であることが見出された。凝集及び粒子形成に関して、最適な安定性は5.0のpHで観察された。
【0135】
5.0のpHを有する製剤は、最も清澄な(すなわち、最も透明な)液体溶液(より少ない凝集を示す。)でもあった。特に有用な緩衝系は、酢酸、L−グルタミン酸及びコハク酸を含んでいた。これらの緩衝系の3つ全ては、約5.0のpH(例えば、約4.8から約5.2)の付近で良好に機能した。これらの緩衝系のうち、L−グルタミン酸は、パニツムマブの安定性に関して、酢酸と同等に効果的であり、又は酢酸より効果的であることが観察された。パニツムマブに対して特に有用な賦形剤には、グリセロール、スクロース、トレハロース及びソルビトールが含まれた。全て、凝集及び/又は粒子形成に関して、効果的な安定化特性を示した。最適な賦形剤には、グリセロール及びスクロースが含まれた。
【0136】
以下に示されている結果は、パニツムマブの安定性を維持し、増強し、又は最適化する様々な製剤を示している。ある種の特定の製剤において、パニツムマブに対する特に有用な液体製剤は、10mM酢酸、2.6%グリセロール、0.004%ポリソルベート80、pH5.0及び10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロール、0.004%ポリソルベート80、pH5.0を含んだ。他の特定の製剤において、例えば、凍結保存、維持及び/又はバルク物質調製などのロット調製のための特に有用な長期製剤は、パニツムマブ製剤が−30℃又はそれ以下に維持される場合、10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0及び10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロール、pH5.0を含んだ。さらに、グリセロール、スクロース及びトレハロースは、凍結融解によって誘導された凝集及び粒子形成からパニツムマブを保護する特に有用な賦形剤であることが見出された。
【0137】
本明細書に記載されている研究は、パニツムマブの安定性の保持を増強する製剤の性質決定及び選択に向けられた。予備的分析に基づいて、パニツムマブに対する安定な液体製剤及び凍結製剤を特定するために、3つの緩衝系を選択した。これらの緩衝系は、酢酸、グルタミン酸及びコハク酸であった。これらの緩衝液から得られた製剤の特徴が、以下に例示されている。
【0138】
1つの最初の特徴は、様々な酢酸緩衝製剤中におけるパニツムマブの視覚的外観であった。簡潔に述べれば、以下に列記されている7つの製剤を異なるpH値で評価した。
【0139】
1.pH5.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.0
2.pH5.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.5
3.pH6.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.0
4.pH6.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.5
5.pH7.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.0
6.pH7.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.5
7.A58N:20mg/mLパニツムマブ、50mMアセタート、100mMNaCl、pH5.8(対照)
【0140】
5.0から7.5の範囲の上記pH値で製剤化されたパニツムマブの視覚的外観を示している。結果は、より低いpH値で、タンパク質溶液がより清澄で、より透明であることを示していた。比較すると、製剤は、より高いpH値において、より濁った状態となった。
【0141】
異なるpH条件下でのパニツムマブの安定性を特定するために、加速安定性試験を行った。簡潔に述べれば、加速安定性試験は、ガラス容器中で、特定のpH、例えば、37℃で行った。検査されるべき、及び無菌容器中へ無菌ろ過されるべきそれぞれの製剤中に、試料を透析した。それぞれの調合された試料の約2mLの量を、無菌フード中で無菌の3mLガラス容器中に配置し、栓をした。凍結と表記された試料を、無菌のポリプロピレンエッペンドルフチューブの中に入れた。全ての容器にラベルを付け、圧着を行った後、−80℃、2から8℃及び37℃の条件での保存のために、指定された箱の中に配置した。表記の時点で、試料を取り出し、分析した。分析法の1つとして、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用した。100mMリン酸(pH7)、150mMNaClからなる移動相を用いた分析を実施するために、直列のTosoHaasG3000SWx1二重カラムを使用した。
【0142】
試料の異なる形態は、それらの水力学的容積に基づいて、定量的に評価し、分離することができる。典型的な結果が図1に示されており、最長2ヶ月間、37℃で保存されたパニツムマブのパーセント単量体を示している。より高いpH条件では、より高い単量体の喪失が観察された。各時点で図1に例示されている製剤は、視覚的外観に関して上で研究されている製剤と同じであり、図中に以下のように標識される。
【0143】
1.EGF 20pH5.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.0
2.EGF 20pH5.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.5
3.EGF 20pH6.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.0
4.EGF 20pH6.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.5
5.EGF 20pH7.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.0
6.EGF 20pH7.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.5
7.EGF 20pHA58N:20mg/mLパニツムマブ、50mMアセタート、100mMNaCl、pH5.8(対照)
【0144】
最長2ヶ月間保存された上記試料に対する陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって、上記7つのタンパク質溶液の電荷変動の変化も測定した。簡潔に述べれば、パニツムマブは、本分野において公知の陽イオン交換操作を用いて評価した。この方法は、pH6.2での線形塩勾配を用いるタンパク質表面電荷の差及びDionex弱陽イオン交換カラム(WCX−10;Sunnyvale,CA)及び脱アミド化によって代表される幾つかのアミノ酸の酸性修飾に基づいて、主要なC末端リジンイソフォームを分離した。
【0145】
異なるpH条件を有し、37℃で最長2ヶ月間保存された上記7つの製剤に対するCEXデータが、図2に示されている(例えば、EGF 20pH5.0−7.5及びA58N)。結果は、酸性pH(5.0及び5.5)において、酸変形物(ピーク0によって表され、脱アミド化産物を示す。)のパーセントが最低であることを示している。
【0146】
モノクローナル抗体及び他のポリペプチドに関連する1つの特徴は、肉眼で観察できない不溶性粒子の出現である。この点に関して、ポリペプチド粒子は、例えば、ポリペプチドの断片又は凝集物を表し、可溶性及び/又は不溶性であり得る。さらに、粒子は、外来物質(すなわち、ガラスの破片、糸くず、ゴム栓の小片の)から構成されることも可能であり、必ずしもポリペプチドから構成されない。可溶性凝集物/粒子は、例えば、SECなどの方法を用いて評価することができる。不溶性である粒子は、液体粒子の計数又は例えば、HIACなどの光掩蔽アプローチなどの方法を用いて評価することができる。粗い粒子は、1.0μmより大きなサイズを有する粒子として一般に分類され、微細な粒子と考えられる粒子のサイズはこれより小さい。HIAC装置(Geneva,Switzerland)を備えたLD−400レーザーシステムを用いて、2と400μmの間の粒子サイズを測定することができる。
【0147】
液体粒子計数を用いて、異なるpH条件を評価する7つの上記典型的な製剤に対して、不溶性粒子の形成を評価した。参照のために、図3に表記されているこれらの製剤は、以下のとおりであった。
【0148】
1.pH5.0:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.0中の20mg/mLパニツムマブ
2.pH5.5:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.5中の20mg/mLパニツムマブ
3.pH6.0:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.0中の20mg/mLパニツムマブ
4.pH6.5:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.5中の20mg/mLパニツムマブ
5.pH7.0:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.0中の20mg/mLパニツムマブ
6.pH7.5:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.5中の20mg/mLパニツムマブ
7.A58N:50mMアセタート、100mMNaCl、pH5.8(対照)中の20mg/mLパニツムマブ
【0149】
HIAC粒子カウンター装置には、所定のEmab試料中に存在する10μm及び25μm粒子を測定するために必要とされるPharmSpecソフトウェアバージョン1.4が搭載された。使用した方法は、粒子評価及び品質の米国薬局方の要件に準拠する操作に従った。1.0mL容量を用い、ステンレス鋼チューブを通じて、ろ過された水(0.22ミクロン)を引き込み、試料測定の間に、約10回流した。装置の適切な較正を確認するために、DukescientificEZY−CAL液体粒子10μmサイズ標準を使用した。試料及び標準の測定の何れも、0.2mLの容量が採取され、4回吸引し、最初の実行を廃棄し、最後の2つ又は3つを平均した。溶液の均一な混合を確保するために、測定前に、各試料に対して僅かな渦を与えながら、試料を元の容器から吸引した。測定前に、標準を激しく振盪した。
【0150】
4℃で15分間、渦巻き撹拌した後における、様々なpHで調合されたパニツムマブのHIAC粒子計数の結果が、図3に示されている。5μmから25μmのサイズ範囲の粒子を計数した。結果は、5.0から7.0のpHで調合された全ての試料がpH7.5で調合されたものより低い粒子数を示すことを示している。塩化ナトリウムを含有する緩衝液中で調合された粒子数(A58N)は、ソルビトール緩衝液中で調合された粒子数より著しく高かった。
【0151】
上記典型的な結果に基づいて、以下に記載されているようなさらなる製剤の性質決定のために、5.0のpHを選択した。
【0152】
酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液又はグルタミン酸緩衝液中で調合され、その後、最長4ヶ月間、37℃で保存したパニツムマブの安定性を評価するために、サイズ排除クロマトグラフィーを上述されているようにして使用した。製剤は、以下に記載されている。
【0153】
1.A 2.6%グリセロール pH5 T80:10mM酢酸、2.6%グリセロールpH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
2.コハク酸 2.6%グリセロール pH5 T80:10mMコハク酸、2.6%グリセロール、pH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
3.グルタミン酸 2.6%グリセロール pH5 T80:10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロール、pH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
【0154】
本研究の結果は、図4に示されている。簡潔に述べると、全ての緩衝系に対して、同様の単量体含量が観察された。コハク酸を含有する製剤は若干低い単量体含量を示し、グルタミン酸含有製剤は、37℃で4ヶ月の保存後に、最も多い単量体の量を示した。
【0155】
上に及び図4に示されているpH5.0の、3つの酢酸、グルタミン酸又はコハク酸緩衝液のうちの何れかにおけるパニツムマブ製剤の安定性も、以下に記載されているように、より長期間にわたって、及び異なる温度に対しても評価した(例えば、A 2.6%グリセロール pH5 T80、Succ2.6%グリセロール pH5 T80及びGluta 2.6グリセロール pH5 T80)。簡潔に述べれば、最長6ヶ月間の29℃での温置後に、これらの緩衝系中でのパニツムマブの安定性を評価するために、先述されているような陽イオン交換クロマトグラフィーを使用した。
【0156】
結果は図5に示されており、全ての製剤において、酸変形物(ピーク0によって表され、脱アミド化産物を示す。)のパーセントが同等であることを示している。グルタミン酸緩衝系を用いると、最小限の変形物の形成が観察された。
【0157】
酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の何れかにおけるパニツムマブの粒子形成も、先述されているようなHIAC粒子分析を用いて評価した。簡潔に述べれば、以下に記載されているようにパニツムマブを製剤化し、6ヶ月間4℃で温置した。
【0158】
1.Ace2.6グリセロールT80pH5.0:10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
2.Succ2.6グリセロールT80pH5.0:10mMコハク酸、2.6%グリセロールpH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
3.Gluta2.6グリセロールT80pH5.0:10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロールpH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
【0159】
結果が図6に示されており、全ての製剤において許容可能な粒子数を示している。米国薬局方の指針によって判断すると、10μm超及び25μm超の粒子は極めて少なかったが、酢酸緩衝液中における2μm超のサイズの粒子数は、グルタミン酸又はコハク酸緩衝液中のものより高いことが観察された。
【0160】
図8は、異なる賦形剤を含有する様々な等張製剤のSECHPLCによって測定された単量体含量を示している。SECHPLCは、前述のように行った。性質決定された異なる賦形剤には、ソルビトール(S)、グリセロール(GLY)、アルギニン(ARG)、スクロース(SUC)及びポリソルベート80(T80)が含まれた。4℃で最長2年間保存された試料に対する、完全な製剤が以下に示されている。結果は、ソルビトール、グリセロール、スクロース及びポリソルベート80中において、パニツムマブが安定であることを示す。アルギニン(argine)に関しては、より低い安定性が観察された。
【0161】
【表2】
【0162】
図8は、先述されているようなHIAC法を用いて、10μm超の粒子サイズに対する異なる賦形剤を有する上記10の製剤に対する粒子数測定を示している。図8に対する製剤及び鍵は、図7に対して上に示されているものと同じであるが、GLY5及び2.6GLY5並びにGLY5T及び2.6GLY5T80は、それぞれ、図7及び8の間で同じ緩衝液を表す。結果は、4℃で1年間保存された時に、ポリソルベートの存在下又は不存在下の何れかで、ソルビトール、グリセロール、スクロース及び塩を含有する様々な製剤中で、パニツムマブが安定であることを示している。
【0163】
上記製剤の他に、多数のさらなる成分及び製剤が、長期保存条件下で、及び凍結融解サイクルに関して、パニツムマブの安定性に対して性質決定された。これらの特徴は、以下でさらに記載されている。全てのアッセイ法は、先述のように行った。
【0164】
簡潔に述べれば、図9は、5.0から7.0の範囲のpHで、様々な製剤中において、SE−HPLCによって分析されたパニツムマブの単量体百分率を示している。各製剤に対して、以下に記載されているように、異なる賦形剤を含めた。−30℃で最長3ヶ月間、パニツムマブ試料を保存した。凍結された製剤又は凍結された薬物物質又はバルク物質溶液の開発に関連して、これらの製剤を研究した。
【0165】
1.EGF p5グリセロール2.6:10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
2.EGF p5グリセロール10:10mM酢酸、10%グリセロール、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
3.EGF p5suc9.3:10mM酢酸、9.3%スクロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
4.EGF p5suc20:10mM酢酸、20%スクロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
5.EGF p5tre9.3:10mM酢酸、9.3%トレハロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
6.EGF p5tre20:10mM酢酸、20%トレハロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
7.EGF p5arg2.5:10mM酢酸、2.5%アルギニン、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
8.EGF p5arg10:10mM酢酸、10%アルギニン、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
9.EGF p6グリセロール2.6:10mMリン酸カリウム、2.6%グリセロール、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
10.EGF p6グリセロール10:10mMリン酸カリウム、10%グリセロール、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
11.EGF p6suc9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%グリセロール、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
12.EGF p6suc20:10mMリン酸カリウム、20%スクロース、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
13.EGF p6tre9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%トレハロース、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
14.EGF p6tre20:10mMリン酸カリウム、20%トレハロースpH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
15.EGF p6arg2.5:10mMリン酸カリウム、2.5%アルギニン、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
16.EGF p6arg10:10mMリン酸カリウム、10%アルギニン、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
17.EGF p7グリセロール2.6:10mMリン酸カリウム、2.6%グリセロール、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
18.EGF p7グリセロール10:10mMリン酸カリウム、10%グリセロール、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
19.EGF p7suc9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%スクロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
20.EGF p7suc20:10mMリン酸カリウム、20%スクロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
21.EGF p7tre9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%トレハロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
22.EGF p7tre20:10mMリン酸カリウム、20%トレハロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
23.EGF p7arg2.5:10mMリン酸カリウム、2.5%アルギニン、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
24.EGF p7arg10:10mMリン酸カリウム、10%アルギニン、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
25.EGF A58N:50mM酢酸、100mM塩化ナトリウム、pH5.8(対照)
26.EGF A5S:10mM酢酸、5%ソルビトール、pH5.0(対照)
27.EGF H58Suc:50mMヒスチジン、1%スクロース、pH5.8(対照)
【0166】
図10は、pH(5から6)及び酢酸又はリン酸緩衝液中の様々な安定化剤の関数として、SE−HPLCによって分析されたパニツムマブのパーセント単量体を示している。結果は、パニツムマブが−30℃で最長1年間保存された場合に、単量体含量が著しく変化しないことを示している。以下の製剤を性質決定した。
【0167】
1.EGF p5gly2.6:10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0
2.EGF p5gly10:10mM酢酸、10%グリセロール、pH5.0
3.EGF p5suc9:10mM酢酸、9.3%スクロース、pH5.0
4.EGF p5suc20:10mM酢酸、20%スクロースpH5.0
5.EGF p5arg2.5:10mM酢酸、2.5%アルギニンpH5.0
6.EGF p5A5S:10mM酢酸、5%ソルビトールpH5.0
7.EGF p55gly2.6:10mM酢酸、2.6%グリセロールpH5.5
8.EGF p55gly10:10mM酢酸、10%グリセロールpH5.5
9.EGF p55suc9.3:10mM酢酸、9.3%スクロースpH5.5
10.EGF p55suc20:10mM酢酸、20%スクロースpH5.5
11.EGF p55arg2.5:10mM酢酸、2.5%アルギニンpH5.5
12.EGF p55A5S:10mM酢酸、5%ソルビトールpH5.5
13.EGF p6gly2.6:10mMリン酸カリウム、2.6%グリセロールpH6.0
14.EGF p6gly10:10mMリン酸カリウム、10%グリセロールpH6.0
15.EGF p6suc9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%スクロースpH6.0
16.EGF p6suc20:10mMリン酸カリウム、20%スクロースpH6.0
17.EGF p6arg2.5:10mMリン酸カリウム、2.5%アルギニンpH6.0
18.EGF p6A5S:10mMリン酸カリウム、5%ソルビトールpH6.0
【0168】
図11は、SE−HPLCによって分析されたパニツムマブの単量体のパーセントを示している。この性質決定のために、40mg/mLでパニツムマブを含め、以下に列記されている様々な製剤中に、最長1年間、−30℃で保存した。
【0169】
【表3】
【0170】
結果は、12ヶ月間より長く、−30℃で保存しても、上記製剤の何れの間にも有意な差をもたらさなかったことを示している。本研究では、図11に示されているように、ステンレス鋼容器(S)中での保存の効果をポリプロピレン(P)瓶中での保存とも比較した。これら2つの容器の間には観察可能な差は測定できなかった。
【0171】
図12は、図11に対して上記されている製剤中でのパニツムマブの粒子形成に対する、−30℃での凍結/融解サイクル及び保存の効果を示している。性質決定された製剤が、以下に記載されている。結果は、研究された製剤のそれぞれに関して、許容可能な粒子数を示している。
【実施例2】
【0172】
イソアスパラギン酸形成を低下させる安定な液体製剤
本実施例は、液体製剤中のパニツムマブの安定性を増加させるための、二価陽イオンの塩化カルシウム(CaCl2)の使用を記載する。
【0173】
抗EGFR抗体パニツムマブのCDR3中のアスパラギン酸残基は柔軟で、溶媒露出されたβターン中にあり、アスパラギン酸異性化の二価陽イオンの阻害を実証するための例示的なポリペプチドとして使用した。このアスパラギン酸残基は他の二次構造とのネットワーク中には存在せず、溶媒及び二価金属イオンとの相互作用のために利用可能であると思われる。更に下記に記載されているように、ポリペプチド製剤中にCaCl2などの二価金属を含めることは、スクシンイミド中間体の速度論を遅らせ、ポリペプチド構造を安定化させた。ポリペプチドの安定性に対する、二価陽イオンのあらゆる効果を評価するため使用される基本製剤は、10mM酢酸ナトリウム、2.6%グリセロール、0.004%ポリソルベート80、20mg/mLポリペプチドにてpH5.0及び以下に示されているような二価陽イオンの変動する量(例えば、0、25、50、75、100、150mM)であった。
【0174】
イソアスパラギン酸分解のレベルに対する二価陽イオンの効果を評価するために、抗EGFR抗体パニツムマブをCaCl2の様々な濃度の中で熟成した。軽鎖のイソアスパラギン酸92の分解は、還元及びアルキル化された抗体の逆相(RP)HPLC/UVによって定量化された。
【0175】
パニツムマブ、抗EGFRIgG2κモノクローナル抗体は、本分野で周知の標準的な手順に従って、産生及び精製された。前記抗体は、29℃及び37℃の両温度にて、最長3ヶ月間にわたり、CaCl2の0から150mM濃度を含有するpH5.0の緩衝液中で熟成した。
【0176】
更なる分析的性質決定のための遊離の重鎖及び軽鎖を産生するために、温置後、変性条件下において、抗体を用いて、還元及びアルキル化を実施した。簡潔に述べると、抗体を7.5M塩酸グアニジン(カタログ番号7716、Mallinckrodt、Phillpsburg,NJ、USA)、0.1Mトリス−HCl(カタログ番号93363、Sigma、St.Louis,MO、USA)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA、カタログ番号6281−92−6、Sigma)を含む緩衝液pH7.5で、2mg/mLまで希釈して、0.5mLの容量にした。5mMDTT濃度を得るために、0.5Mジチオトレイトール(DTT、カタログ番号D5545、Sigma)の原溶液の分取試料5mLを添加し、反応混合物を37℃に30分間配置した。
【0177】
次いで、ポリペプチド溶液を室温に冷却し、0.5Mヨードアセトアミド(IAM、カタログ番号111149、Sigma)原液の分取試料13μLを添加して、13mMIAMに達した。光から保護しながら、アルキル化は室温で40分間実行した。タンパク質の1mg/mLの最終濃度になるように、還元及びアルキル化されたタンパク質の緩衝液0.5mLを、10mM酢酸ナトリウム(カタログ番号9526−03、J.T.Baker、Philipsburg,NJ、USA)溶液1mL、pH5.0と交換した。緩衝液交換は、製造者の指示に従って、SephadexG26溶媒(Amersham Pharmacia Biotech,Orasay,France)が充填されたNAP−5ゲル濾過カラムを使用して行った。
【0178】
還元及びアルキル化に続いて、RPHPLC/UVクロマトグラフィーを行った。pH5.0の緩衝液中における抗体の還元及びアルキル化は、上記のとおりに行った。還元及びアルキル化された抗体の逆相HPLC/MSは、UV検出器、自動サンプラー、NanoFlowセル及び温度制御されたカラムコンパートメント(Aglent、Palo Alto,CA、USA)が装備されたAgilent1100CapillaryHPLCシステムにおいて実行した。移動相は、溶媒A中の0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(TFA、J.T.Baker、Phillipsburg,NJ、USA)、及び溶媒B中の80%N−プロパノール(Burdick&Jackson,Muskegon,MI、USA)、10%アセトニトリル(ACN;J.T.Baker)、0.1%TFAを加えた9.9%水が含まれた。3.5μm粒径、300Å孔径、50×1mmを有するAgilentZorbaxSB300CNカラムを、HPLC/MS分析のために使用した。前記カラムを75℃及び50μL/分の流速で操作した。UV検出器によってカラム溶出液を分析し、次いでオンライン質量分析計に誘導した。1mL/分にて、150×4.6mm形式のAorbaxカラムの同じタイプは、UV検出器のみに対して使用した。軽鎖及び重鎖並びにそれらの変異体の分離のために、Bを18%から26%に増大する線形勾配を利用した。
【0179】
図14の逆相クロマトグラムには、上記分解分析の結果が示されている。青色は、−70℃で凍結させた対照試料である。残りのクロマトグラフの軌跡は、1ヶ月(赤色)、2ヶ月(緑色)、3ヶ月(薄紫色)及び4ヶ月(茶色)の間、37℃で熟成させた試料から得たものである。分解は、時間とともに増加する軽鎖の異性化(IsoLC)、及び時間とともに減少する重鎖のN末端におけるピログルタミン酸(pE−HC)の形成として同定された。LCは、抗体の軽鎖ピークに対応するのに対して、Q−HCは抗体の重鎖ピークに対応する。
【0180】
位置92におけるイソアスパラギン酸の異性化された軽鎖のパーセント間の相互も、CaCl2の様々な濃度を有する溶液中で、pH5.0、37℃にて、温置時間の関数として評価した。パニツムマブの軽鎖のCDR3領域中のアスパラギン酸92の異性化を阻害するために、CaCl2の様々な濃度を熟成溶液に導入した。IsoLCの形成は上記のように評価した。
【0181】
上記の分解時間経過の結果が図15に示されており、37℃で3ヶ月間、150mMCaCl2を含有する熟成された試料が、10%のIsoLCの減少を有することを明らかにした。カルシウムイオンなしのこれらの条件下で温置することにより、喪失は19%まで増大した(図16Cを参照のこと)。これらの結果は、pH5.0で、CaCl2の存在下において、抗体の安定性及びアスパラギン酸残基92の異性化による効力の喪失が顕著に遅れることを示している。
【0182】
図16AからCは、pH5.0において、CaCl2の様々な濃度を有する溶液中の温置時間、続いて様々な温度での温置の関数として、IsoLC形成のパーセント間の相関を評価する更なる分解時間経過である。上記に記載されているとおり、アスパラギン酸92の異性化を阻害するために、CaCl2の様々な濃度を成熟溶液中に導入し、試料を4℃、29℃又は37℃の何れかで、最長3ヶ月間温置した。結果は、より高い温度において、試料に直接添加されたCaCl2の量の添加が、IsoLC形成の喪失と相関し、ポリペプチドの安定性を強化させることを示している。
【0183】
抗体活性のあらゆる効果を評価するために、CaCl2の変動する濃度の存在下における抗体の効力の細胞増殖アッセイを実行した。簡潔に述べれば、完全長ヒトEGFRを発現させるために、マウスのインターロイキン(mIL−3)依存性細胞株32Dクローン3(ATCCCRL−11346)を修飾した。細胞は、GlutaMAXTM及びHEPES(Invitrogen)、10%熱不活化ウシ胎児血清(HyClone)、ジェネテシン(Invitrogen)及び5ng/mLの組換えmIL−3(Amgen)を用いたRPMI1640中で増殖させた。アッセイ培地は、GlutaMAXTM及びHEPES及び10%熱不活化ウシ胎児血清が補充されたRPMI1640であった。アッセイのために、リン酸塩緩衝化食塩水で細胞を洗浄し、Falcon96ウェルの透明プレートへ、20,000細胞/ウェルにて分配した。0.85ng/mLのEGF、対照及び変動する濃度の抗EGFR抗体の熟成された試料を添加し、37℃で約24時間温置した。AlmarBlueTM(Accumed International)の、生細胞に反応して蛍光を発する酸化還元色素を添加し、温置を更に24時間継続した。FusionTMα(Perkin Elmer)プレートリーダーを使用し、530mnの励起、590nmの発光にて、相対的蛍光度を測定した。4−パラメーターロジスティク曲線フィッティングプログラムを用いて、抗体試料の阻害濃度50(IC50)を測定した。報告されたインビトロの効力(%)は、基準ロット(100%の効力を割り振った。)のIC50に対するものであった。
【0184】
結果は、図17に示されており、二価陽イオンのないものと比べて、CaCl2の存在下における抗体の効力の喪失の著しい保護を示している。29℃又は37℃の何れかの温度において、2ヶ月間にわたり、活性化の低下がほとんど観察されなかったので、これらの結果は、抗体の活性実質的に全て又は殆どを十分に維持するために二価陽イオンを使用できることをさらに示している。
【0185】
二価の陽イオンの存在がポリペプチド凝集又は二量体形成に対して影響を有するかどうかを特定するために、SE−HPLCを用いて、CaCl2の存在下での還元抗体分解のさらなる評価を行った。抗体試料は、0から150mMの範囲の様々なCaCl2濃度中で製剤化し、4ヶ月間、4℃及び29℃で保存した。
【0186】
図18A及びBは、上記の条件下での温置後における抗体のSE−HPLCパターンを示している。4℃での4ヶ月の温置後の結果は、CaCl2の濃度の増加とともに、ポリペプチドの凝集の検出可能な増加又は二量体形成が存在しないことを示した。凝集は、0.05%に保たれた(図18A)。29℃で行った4ヶ月間の温置後、凝集は、75mMCaCl2溶液中で0.33%まで、150mMCaCl2溶液中で1%まで僅かに増加した(図18B)。
【0187】
アスパラギン酸D92の異性化及び凝集に関するデータを総合すると、75mMCaCl2は、ポリペプチド凝集の僅かなレベルを29℃でもたらしたに過ぎないので、異性化を阻止又は低下させ、及びポリペプチドの生物活性を維持するための特に有効な二価陽イオン濃度であることが示唆される。イソアスパラギン酸に関して、上記の結果は、25から150mMの範囲内を含むCaCl2濃度がアスパラギン酸の異性化を顕著に遅らせることを示している。二価塩含有製剤中での凝集又は粒子形成をさらに制御するために、ポリソルベート20又は80などの界面活性剤を含めることが可能である。
【0188】
本願を通じて、様々な刊行物が括弧内に引用されている。本発明が属する分野の技術水準をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示内容全体が、参照により、本願に組み込まれる。
【0189】
開示されている実施形態を参照しながら、本発明を記載してきたが、当業者は、上に詳述されている具体例及び研究が本発明の例示に過ぎないことを容易に理解する。本発明の精神を逸脱することなく、様々な修飾を施し得ることを理解すべきである。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲のみによって限定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に、疾病を治療するための医薬に関し、より具体的には、ポリペプチド治療薬用の一貫して安定な製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えDNA技術の登場とともに、タンパク質をベースとする治療薬が、癌から自己免疫疾患にわたる幅広い疾病を治療するために医療従事者が利用できる薬物のレパートリーにおいて、継続的に、ますます一般的地位を占めるようになっている。組換えタンパク質の製造において起こった科学的及び技術的な進歩に加え、タンパク質治療薬の成功の別な理由は、標的に対する高い特異性及び小分子治療薬と比較した場合により優れた安全特性を示す能力である。疾病の治療における医薬として生物分子を使用できることにより、過去四半世紀にわたって、医療及び生活の質が著しく向上した。
【0003】
現在では、インビボで様々な薬理学的作用を示すことが知られているタンパク質を、様々な医薬用途のために、大量に製造することが可能である。治療用タンパク質の長期安定性は、安全で、一貫した、有効な治療のための特に有益な基準である。調製物内の治療薬の機能の喪失は、ある投与に対するその有効濃度を減少させる。同様に、治療薬の望ましくない修飾は、調製物の活性及び/又は安全性に影響を与え、効力の喪失及び有害な副作用のリスクをもたらし得る。
【0004】
タンパク質は、特徴付けされた一次、二次、三次構造を有し、幾つかの事例では四次構造を有する複雑な分子であり、これらの構造は全て、特異的な生物機能を付与する上で役割を果たしている。タンパク質などの生物学的医薬の構造は複雑であるために、構造的及び機能的な不安定性並びに安全性の喪失をもたらす様々なプロセスに対して影響を受けやすい。これらの不安定性プロセス又は分解経路に関して、タンパク質は、溶液中で、様々な共有及び非共有反応又は修飾を経験し得る。例えば、一般に、タンパク質分解経路は、(i)物理的分解又は非共有的経路及び(ii)化学的又は共有的分解経路という2つの主要なカテゴリーに分類することができる。
【0005】
タンパク質薬は、不可逆的な凝集という物理的分解プロセスに対して感受性を有する。タンパク質凝集は、薬物の効力に影響を与え、患者中に重大な免疫学的反応又は抗原性反応を惹起することもできる減弱した生物活性をしばしばもたらすので、ポリペプチドの作製において特に興味深い。例えば、化学的修飾による化学構造の分解を含むタンパク質治療薬の化学的分解は、その免疫原性の可能性も増加させると推測されている。従って、安定なタンパク質製剤は、薬物の物理的及び化学的な両分解経路を最小化されることを必要とする。
【0006】
タンパク質は、例えば、界面の吸着及び凝集などの物理的プロセスを介して分解することができる。吸着は、タンパク質薬物の効力及び安定性に著しく影響を与え得る。吸着は、低濃度剤形の効力に大幅な低下を引き起こし得る。別の帰結は、折り畳み解除によって媒介される界面での吸着が、しばしば溶液中での不可逆的な凝集を開始させる工程であり得るということである。これに関して、タンパク質は、液体−固体、液体−気体及び液体−液体界面において吸着する傾向がある。疎水性表面でのタンパク質のコアの十分な曝露は、撹拌、温度又はpHによって誘導されるストレスの結果、吸着をもたらし得る。さらに、タンパク質は、例えば、pH、イオン強度、熱的ストレス、剪断及び界面応力に対しても感受性を有し、これらの全てが凝集を引き起こし、不安定性をもたらし得る。凝集の別の帰結は粒子の形成であり、液体の及び凍結乾燥されたタンパク質医薬における重要な検討事項である。
【0007】
タンパク質は、脱アミド化、異性化、加水分解、ジスルフィドスクランブリング、β脱離、酸化及び付加物の形成などの様々な化学的修飾及び/又は分解反応にも供される。分解の主な加水分解的機序には、ペプチド結合加水分解、アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化、アスパラギン酸の異性化及びピログルタミン酸をもたらすグルタミン酸の環化が含まれる。加水分解的分解経路の一般的な特徴は、反応の速度に関する1つの重要な製剤変数が溶液のpHであることである。
【0008】
例えば、ペプチド結合の加水分解は、酸又は塩基によって触媒され得る。アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化も、約4のpH未満で酸によって触媒される。中性pHでのアスパラギンの脱アミド化は、塩基によって触媒されるスクシンイミジル中間体を通じて起こる。アスパラギン酸残基の異性化及びラセミ化は、弱酸性から中性pH(pH4から8)において迅速であり得る。一般化されたpH効果の他に、緩衝液の塩及び他の賦形剤が加水分解反応の速度に影響を与えることができる。
【0009】
他の典型的な分解経路には、アルカリpH条件下で起こり、ある種のアミノ酸に対して、ラセミ化又は側鎖の一部の喪失をもたらし得るβ脱離反応が含まれる。メチオニン、システイン、ヒスチジン、チロシン及びトリプトファン残基の酸化は、タンパク質に対する典型的な共有的分解経路である。
【0010】
タンパク質の不安定性をもたらし得る様々な反応の数及び多様性の故に、製剤中の成分の組成がタンパク質分解の程度に対して著しい影響を与え、その結果、治療薬の安定性及び効力に対して影響を与え得る。ポリペプチドの形成は、投与の容易さ及び頻度並びに注射時の痛みに対しても影響を与え得る。例えば、免疫原性反応は、タンパク質凝集物を原因とするのみならず、製剤中に含有される不活性成分と治療的タンパク質との混合された凝集物をも原因とする(Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1:457−62(2002);Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22:1997−2006(2005))。
【0011】
しかしながら、治療的処置でのタンパク質の使用において達成された進歩及びタンパク質が経験し得る不安定化プロセスの知見にも関わらず、強化された長期安定性特性を有する製剤の開発に対するニーズがなお存在している。様々な条件下で長期安定性を保持する製剤は、ポリペプチドの有効及び安全量を送達する効果的な手段を提供する。製剤中での長期安定性の保持は、製造及び治療コストも低下させる。このような一貫して安定な製剤は、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質に有益であり得、これにより、多数の組み換えタンパク質又は天然のタンパク質が、より有効な臨床的結果を与えることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Schellekens,H.,Nat.Rev.DrugDiscov.1:457−62(2002)
【非特許文献2】Hesmeling,et al.,Pharm.Res.22:1997−2006(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、様々な異なる製造及び保存条件下で長期安定性を保持する製剤に対する要望が存在する。本発明はこの要望を満たし、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、6.0未満のpHを有する緩衝液、約5から200mMの間の二価の陽イオン、糖又はポリオールを含む賦形剤及び治療用ポリペプチドの有効量を含む製剤を提供する。ポリペプチドを安定化させる方法も提供される。この方法は、6.0未満のpHを有する緩衝液中の約5から150mMの間の二価の陽イオンのある濃度及び糖又はポリオールを含む賦形剤と治療的ポリペプチドを接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、最長2ヶ月間、37℃で保存された抗体製剤のpH安定性に対するSE−HPLCの結果を示している。測定された各pHに対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);1週(1w);2週(2w);1ヶ月(1m)及び2ヶ月(2m)の保存期間に対応する。各時点に対して、pH値は、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0及び7.5に対応した。
【図2】図2は、最長2ヶ月間、37℃での保存後における、様々なpHで調合された抗体の陽イオン交換クロマトグラフィーの結果を示している。保存条件は、保存なし(0、ひし形);1週(1w、四角);2週(2w、三角);1ヶ月(1m、X)及び2ヶ月(2m、星)に対応する。
【図3】図3は、4℃で15分間、渦巻き撹拌した後における、様々なpHで調合された抗体の粒子数を示している。表記されているそれぞれの粒径に対するヒストグラムの組は、左から右へ、5μm(5);7.5μm(7.5);10μm(10);20μm(20)及び25μm(25)に対応する。
【図4】図4は、最長4ヶ月間、37℃での保存後における、様々な製剤中の抗体のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);2週(2w);1ヶ月(1m)、2ヶ月(2m)、3ヶ月(3m)及び4ヶ月(4m)の保存期間に対応する。
【図5】図5は、最長6ヶ月間、29℃での保存後における、様々な製剤中の抗体の陽イオン交換クロマトグラフィーの結果を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);2週(2w);1ヶ月(1m)、2ヶ月(2m)、3ヶ月(3m)及び6ヶ月(6m)の保存期間に対応する。
【図6】図6は、6ヶ月間、4℃での保存後における、様々な製剤中の抗体の肉眼で見えないHIAC粒子数の結果を示している。表記されているそれぞれの粒径に対するヒストグラムの組は、左から右へ、2μm(2);5μm(5);7.5μm(7.5);10μm(10);20μm(20)及び25μm(25)に対応する。
【図7】図7は、異なる賦形剤を含有する様々な製剤から得られた抗体単量体含量のサイズ交換クロマトグラフィー(SEC)−HPLC測定を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);2週(2w);1ヶ月(1m)、2ヶ月(2m)、3ヶ月(3m)、6ヶ月(6m)及び1年(1y)の保存期間に対応する。
【図8】図8は、1年間、4℃で保存された様々な抗体製剤の10μmより大きな、肉眼で見ることができない粒子のHIAC測定を示している。表記されているそれぞれの粒径に対するヒストグラムの組は、左から右へ、10μm(10);20μm(20)及び25μm(25)に対応する。
【図9】図9は、5.0から7.0までの範囲のpHを有し、異なる賦形剤を含有する様々な製剤中で、最長3ヶ月間−30℃で保存した後の抗体単量体含量のSE−HPLC測定を示す。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(C5);6週(6w)及び3ヶ月(3m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図10】図10は、5.0から6.0までの範囲のpHを有し、異なる安定化剤を含有する様々な製剤中で、酢酸塩又はリン酸塩緩衝液中において、最長1年間−30℃で保存した後の抗体単量体含量のSE−HPLC測定を示す。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(C5);3ヶ月(3m);6ヶ月(6m)及び12ヶ月(12m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図11】図11は、ステンレス鋼又はポリプロピレン容器の何れかの中で、最長1年間、−30℃で保存した後の様々な製剤の抗体単量体含量のSE−HPLC測定を示す。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(C5);1ヶ月(1m);3ヶ月(3m);6ヶ月(6m)及び12ヶ月(12m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図12】図12は、様々な抗体製剤の粒子形成に対する、−30℃での凍結/融解及び保存の効果を示している。各製剤に対するヒストグラムの組は、左から右へ、保存なし(t=0);−30℃の保存なしに5回凍結融解(t=c5);1ヶ月(t=1m)及び3ヶ月(t=3m)のストレス条件及び保存期間に対応する。
【図13】図13は、イソアスパラギン酸への異性化を介したアスパラギン及びアスルチル残基のスクシンイミド媒介性分解経路を示す模式図である。
【図14】図14は、pH5.0の緩衝液中での分解後における、還元された及びアルキル化された抗体の逆相クロマトグラムによる抗体軽鎖中のイソアスパルチルの定量を示す。
【図15】図15は、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、37℃での温置時間の関数としての、抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。
【図16A】図16Aは、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、4℃、(図16A)での温置時間の関数としての、異性化に対して感受性を有するアスパラギン酸残基を含有する抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。各期間に対するヒストグラムの組は、左から右に、A5G、A5G25CA、A5G50CA、A5G75CA、A5G100CA及びA5G150CAに対応する。
【図16B】図16Bは、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、29℃(図16B)での温置時間の関数としての、異性化に対して感受性を有するアスパラギン酸残基を含有する抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。各期間に対するヒストグラムの組は、左から右に、A5G、A5G25CA、A5G50CA、A5G75CA、A5G100CA及びA5G150CAに対応する。
【図16C】図16Cは、pH5.0で、塩化カルシウム(CaCl2)の異なる濃度を有する溶液中における、37℃(図16C)での温置時間の関数としての、異性化に対して感受性を有するアスパラギン酸残基を含有する抗体の異性化された軽鎖(イソLC)のパーセント間での相関を示す。各期間に対するヒストグラムの組は、左から右に、A5G、A5G25CA、A5G50CA、A5G75CA、A5G100CA及びA5G150CAに対応する。
【図17】図17は、CaCl2の異なる濃度を用いて抗体効力の細胞増殖アッセイ測定を使用する、抗体効力の喪失に対するCaCl2の効果を示す。
【図18A】図18Aは、4℃(図18A)で4ヶ月間の保存後における0から150mMCaCl2中に調合された抗体のSE−HPLCプロファイルを示す。
【図18B】図18Bは、29℃(図18B)で4ヶ月間の保存後における0から150mMCaCl2中に調合された抗体のSE−HPLCプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、水性及び他の液体ポリペプチド溶液並びに凍結乾燥された製剤を安定化させることができる製剤に関する。本発明の製剤は、イソアスパラギン酸形成の割合又は程度(extend)を抑制する又は低下させるので、アスパラギン酸(Asp又はD)又はアスパラギン(Asn又はN)の異性化に対して感受性を有するポリペプチドに対して有用である。溶媒によって促進される加水分解又は脱アミノ化反応を介して、スクシンイミド中間体を形成する傾向があり、及び不安定なイソアスパルチル残基を形成する傾向があるので、感受性を有するポリペプチドには、溶媒に曝露されたAsp又はAsnを有するものが含まれる。イソアスパラギン酸形成の割合又は程度の減少は、ポリペプチド及び/又は他の製剤成分とともに、1つ若しくはそれ以上の二価の陽イオン又はその塩形態を含めることによって達成される。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、本発明の製剤によって安定化されるポリペプチドは、溶媒に曝露されたアスパラギン酸又はアスパラギンを含有する抗体である。この特定の実施形態において、加水分解又は脱アミノ化反応の速度論は、約10から150mMの間のCaCl2の添加によって遅くすることができる。このような抗体には、抗体の重鎖又は軽鎖可変領域の1つ又はそれ以上のCDR(相補性決定領域)中にAsp又はAsn残基を有するものが含まれる。CDR領域中のイソアスパルチル形成は抗体の結合活性及び/又は効力に影響を及ぼし得るので、本発明の二価陽イオン安定化製剤は、抗体のこのような種類に特に有用である。本発明の製剤中に可溶化された又は含まれた治療用ポリペプチドは、長期間安定性を示し、抗体又は他のポリペプチドなどの治療用ポリペプチドの安全量及び有効量の投与を可能とする。
【0018】
さらなる特定の実施形態において、本発明の製剤は、異性化を低下させることによって、治療用ポリペプチドの安定性を向上させるために、約1から150mg/mLの範囲の濃度の治療用ポリペプチド(抗体など)、pH4.0超及び6.0未満の5mMから50mM酢酸ナトリウムなどの緩衝液、約1から3%グリセロール又は他の賦形剤、約0.004から0.1%ポリソルベート80又は他の界面活性剤及び約10から150mMCaCl2を含むことができる。他の特定の実施形態において、特に有用な緩衝液pHは、緩衝液のpHがポリペプチドのpI値に近づいたときに、金属イオン又は塩によって引き起こされ得るポリペプチドの沈殿を低下させ、又は抑制するために、治療用ポリペプチドのpIより低い。
【0019】
さらなる特定の実施形態において、ポリペプチドの最適な安定化能を示す他のポリペプチド製剤中に、二価の陽イオンを含めることができる。二価陽イオン又は本発明の二価陽イオン含有製剤とともに使用することができるこのような他の製剤には、例えば、約4.0から7.5の間のpH値を有するアセタート、グルタマート、スクシナート若しくはプロピオナート塩緩衝系又は6.0未満のpHを有するこのような緩衝系を含有する製剤が含まれる。
【0020】
生物医薬とは、ポリペプチド、核酸、炭水化物若しくは脂質又はこれらの構築ブロックなど、医薬として使用することが予定される高分子又はバイオポリマーを表す。生物医薬製剤とは、生物医薬と適合的であり、ヒトに投与された場合に、安全で無毒である医薬として許容される溶媒を表す。
【0021】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、重鎖及び軽鎖から構成され、特異的な分子標的又は抗原と結合することができるポリペプチドの免疫グロブリンクラスに属するB細胞のポリペプチド産物を意味するものとする。「モノクローナル抗体」という用語は、単一の細胞クローン又はハイブリドーマの産物である抗体を表す。この用語は、単一分子の免疫グロブリン種を産生するために、免疫グロブリン遺伝子をコードする重鎖及び軽鎖から、組換え法によって作製された抗体も表すものとする。モノクローナル抗体調製物内の抗体に対するアミノ酸配列は実質的に均一であり、このような調製物内の抗体の結合活性は実質的に同一の抗原結合活性を示す。以下でさらに記載されているように、抗体及びモノクローナル抗体の特徴は、本分野において周知である。
【0022】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換え、ファージディスプレー技術及びコンビナトリアル抗体ライブラリー法又はこれらの組み合わせの使用など、本分野で公知の多様な技術を用いて調製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、本分野において公知であり、例えば、「Harlow and Lane.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−CeIl Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981);Harlow et al.,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999),and Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,W.H. Freeman and Co.,Publishers,New York,pp.103−120(1991)に教示されているものなど、ハイブリドーマ技術を用いて作製することが可能である。組換え法、ファージディスプレイ法及び免疫化された動物及び未処置動物から得られたライブラリーを含むコンビナトリアル抗体ライブラリーによってモノクローナル抗体を作製するための公知の方法の例は、上記「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K. Borrebaeck,Ed.」に記載されているのを見出すことができる。本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて産生された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核、原核又はファージクローンなど、単一クローンに由来する抗体を表し、産生方法によらない。
【0023】
抗体に関して使用される場合、本明細書において使用される「機能的断片」という用語は、抗体の特異的抗原結合活性の一部又は全部をなお保持している抗体の部分を意味するものとする。このような機能的断片には、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及びミニボディなどの抗体機能的断片が含まれ得る。他の機能的断片には、例えば、重(H)又は軽(L)鎖ポリペプチド、可変重(VH)鎖領域及び可変軽(VL)鎖領域ポリペプチド、相補性決定領域(CDR)ポリペプチド、単一ドメイン抗体並びにその特異的結合活性を保持するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが含まれ得る。このような抗体結合断片は、例えば、Harlow and Lane,上記;Molec.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,R.A.(ed.),NewYork:VCH Publisher,Inc.);Huston et al.,Cell Biophysics,22:189−224(1993);Pluckthun and Skerra,Meth.Enzymol,178:497−515(1989)及びDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,Second Ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,NY(1990)に記載されているのを見出すことができる。
【0024】
抗体及びその機能的断片に関して、様々な形態、改変及び修飾が本分野において周知である。本発明のモノクローナル抗体は、このような様々なモノクローナル抗体の形態、改変及び修飾の何れをも含むことができる。本分野において公知であるこのような様々な形態及び用語の例は、以下に記載されている。
【0025】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片を表し、F(ab’)2断片は、ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であり、Fd断片はVH及びCH1ドメインからなり、Fv断片は抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなり、dAb断片(Ward et al.,Nature341:544−546(1989))はVHドメインからなる。
【0026】
抗体は、1つ又はそれ以上の結合部位を有し得る。2以上の結合部位が存在する場合には、結合部位は互いに同一であり得、又は異なり得る。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、一本鎖抗体又はFab断片は1つの結合部位を有するのに対して、「二重特異的」又は「二機能性」抗体は2つの異なる結語部位を有する。
【0027】
一本鎖抗体(scFv)は、VL及びVH領域がリンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介して連結されて、連続するポリペプチド鎖を形成する抗体を表し、このリンカーは、タンパク質鎖が自身の上に折り返しのために及び一価の抗原結合部位を形成するのに十分に長い(例えば、Bird et al.,Science242:423−26(1988)及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−83(1988)を参照。)。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体を表し、各ポリペプチド鎖は、同一鎖上にある2つのドメイン間での対合を可能とするには短すぎ、従って、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対合できるようにするリンカーによって連結されたVH及びVLドメインを含む(例えば、Holliger,P.,et al.Proc.Natl.Acad.Sd.USA90:6444−48(1993);及びPoljak et alStructure2:1121−23(1994)を参照)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合には、それらの対合から得られるダイアボディは2つの同じ抗原結合部位を有する。2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製するために、異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用することができる。同様に、トリボディ及びテトラボディは、それぞれ3つ及び4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ、同一又は別異であり得る3つ及び4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
【0028】
CDRは、免疫グロブリン(Ig又は抗体)VHβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(H1、H2又はH3)の1つを含有する領域又は抗体VLβ−シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変ループ(L1、L2又はL3)の1つを含有する領域を表す。従って、CDRは、フレーム領域配列内に散在された可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、抗体可変(V)ドメイン内の最も大きな超可変性の領域として、例えば、Kabatによって定義されている(Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609−6616(1977);Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1−75(1978))。CDR領域配列は、保存されたβ−シートフレームワークの一部でなく、従って、異なる立体構造を採ることができる残基としてもChothiaによって構造的に定義されている(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。両用語ともに、本分野において周知である。多数の構造の比較によって、標準的抗体可変ドメイン内のCDRの位置が決定されている(Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927−948(1997);Morea et al.,Methods20:267−279(2000))。異なる抗体中において、ループ内の残基の数は変動するので、標準的な位置に対する追加のループ残基には、標準的な可変ドメイン付番スキーム中の残基番号の隣に、慣用的にa、b、cなどが付番される(Al−Lazikani et al.,上記(1997))。このような命名法は、同様に、当業者に周知である。例えば、Kabat(超可変的)又はChothia(構造的)表記の何れかに従って定義されるCDRは、以下の表に記載されている。
【0029】
【表1】
【0030】
キメラ抗体とは、ある抗体由来の1つ又はそれ以上の領域と及び1つ又はそれ以上の別の抗体由来の1つ又はそれ以上の領域とを含有する抗体を表す。1つの具体例において、CDRの1つ又はそれ以上がEGFRに対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。別の具体例において、CDRの全てがEGFRに対して特異的な活性を有する非ヒトドナー抗体に由来し、可変領域フレームワークがヒトレシピエント抗体に由来する。さらに別の具体例において、2以上の非ヒトEGFR特異的抗体由来のCDRが、キメラ抗体中で混合され、対合される。例えば、キメラ抗体は、第一の非ヒトEGFR特異的抗体の軽鎖由来のCDR1、第二の非ヒトEGFR特異的抗体の軽鎖由来のCDR2及びCDR3並びに第三のEGFR特異的抗体由来の重鎖由来のCDRを含むことができる。さらに、フレームワーク領域は、同一のものの1つから由来することができ、又は1つもしくはそれ以上の異なるヒト抗体若しくはヒト化抗体に由来することができる。ドナー及びレシピエント抗体の両者がヒトであるキメラ抗体を作製することができる。
【0031】
ヒト化抗体又は移植された抗体は、ヒト対象に投与された場合に、非ヒト種の抗体と比べて、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性がより少なくなるように、及び/又はより軽い免疫応答を誘導するように、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加だけ、非ヒト種抗体配列と異なる配列を有する。一つの具体例において、ヒト化抗体を作製するために、非ヒト種抗体の重鎖及び/又は軽鎖のフレームワーク及び定常ドメイン中のある種のアミノ酸が変化を受ける。別の具体例において、ヒト抗体由来の定常ドメインが非ヒト種の可変ドメインに融合される。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号及び同第5,877,293号に見出され得る。ヒト化抗体には、抗体再表面化法などを用いて作製された抗体も含まれる。
【0032】
ヒト抗体とは、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ又はそれ以上の可変領域及び定常領域を有する抗体を表す。例えば、完全なヒト抗体には、可変及び定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体が含まれる。ヒト抗体は、本分野で公知の様々な方法を用いて調製することが可能である。ヒト抗体の具体例は、米国特許第6,235,883号に記載されているヒト抗EGFR抗体の主題であるパニツムマブである。パニツムマブは、本分野において、VectibixTM(Amgen,ThousandOaks,California)としても知られており、例えば、転移性結腸直腸癌などの病理的症状を治療するのに有用である。
【0033】
分子をイムノアドヘシンにするために、共有的に又は非共有的に分子中に1つ又はそれ以上のCDRを取り込ませることも可能である。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを取り込むことができ、別のポリペプチド鎖にCDRを共有結合させることができ、又は非共有的にCDRを取り込むことができる。CDRは、イムノアドヘシンが対象の特定抗原へ特異的に結合できるようにする。
【0034】
本発明の製剤化された抗体に関して使用される場合の中和抗体又は阻害抗体は、受容体のリガンドへの結合を阻害する抗体を表す。EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、阻害抗体とは、EGFR特異的抗体の過剰がEGFRに結合されたEGFの量を低下させるときに、EGFRのEGFへの結合を阻害するモノクローナル抗体を表す。結合阻害は、少なくとも10%、特に、少なくとも約20%生じ得る。様々な具体例において、モノクローナル抗体は、EGFRに結合されるEGFの量を、例えば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%及び99.9%低下させることができる。結合の低下は、例えば、インビトロ競合結合アッセイにおいて測定されるように、当業者に公知の何れかの手段によって測定され得る。
【0035】
「拮抗性」抗体は、その抗原の活性応答を阻害する抗体を表す。EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、拮抗性抗体は、EGFRを発現する細胞、組織又は生物に添加されたときに、EGFRの活性を阻害する抗体を表す。活性の減弱は、EGFのみの存在下でのEGFR活性のレベルと比べて、少なくとも約5%、特に少なくとも約10%、より具体的には少なくとも約15%又はそれ以上であり得る。様々な具体例において、本発明のEGFR特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%だけ、EGFR活性を阻害することができる。
【0036】
作動薬抗体は、その抗原の活性応答を活性化する抗体を表す。EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、作動薬抗体は、EGFRを発現する細胞、組織又は生物に添加されたときに、少なくとも約5%、特に、少なくとも約10%、より具体的には、少なくとも約15%、EGFRを活性化する抗体を表し、ここで、「100%の活性化」とは、EGFの同じモル量によって、生理的条件下で達成される活性化のレベルである。様々な具体例において、本発明のKGFR特異的モノクローナル抗体は、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、750%又は1000%、EGFR活性を活性化することができる。
【0037】
エピトープとは、抗体の抗原結合部位内の1つ又はそれ以上の抗体に特異的に結合する分子の一部、例えば、ポリペプチドの一部を表す。エピトープ決定基は、抗体に結合する分子の連続する又は連続していない領域を含み得る。エピトープ決定基は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基も含むことができ、特異的な三次元構造的特徴及び/又は特異的な電荷特徴を有することができる。
【0038】
モノクローナル抗体結合活性に関して使用される場合、本明細書において使用される「特異的」という用語は、参照されるモノクローナル抗体が、他の類似の抗原と比べて、その抗原に対して優先的な結合を示すことを意味するものとする。
【0039】
EGFR特異的モノクローナル抗体の具体例において、特異的結合活性とは、参照されているEGFRモノクローナル抗体が、上皮成長因子に関連する他の受容体と比べて、EGFRに対する優先的な結合を示すことを意味するものとする。優先的な結合には、EGFRへの検出可能な結合を示すのに対して、別の関連する成長因子受容体には検出可能な結合を殆ど又は全く示さない本発明のモノクローナル抗体が含まれる。
【0040】
本明細書において使用される「上皮成長因子受容体」又は「EGFR」という用語は、上皮細胞の表面上に発現されるのを見出すことができ、上皮成長因子(EGF)及び/又はトランスフォーミング成長因子α(TGFα)に結合する本分野の受容体を意味するものとする。この受容体は、本分野において周知であり、例えば、「Yarden,Y.,and Sliwkowski,M.X.,Nat Rev Mol Cell Biol.2,127−37(2001)」及び「Mendelsohn,J.and Baselga,J.,J Clin Oncol21,2787−99(2003)」に記載されているのを見出すことができる。EGFRは、米国特許第6,235,883号の主題であるパニツムマブヒト抗体に対する抗原でもある。
【0041】
本明細書において使用される「二価の陽イオン」という用語は、+2の価数を有する正に帯電した元素、原子又は分子を意味するものとする。この用語には、Ca+2、Zn+2、Mn+2、Mg+2、Fe+2、Co+2、Ni+2及び/又はCu+2などの金属イオンが含まれる。本発明の二価の陽イオンには、イオンの塩形態も含まれる。二価の塩形態の具体例には、CaCl2、ZnCl2、MnSO4、MnCl2及びMgCl2並びに塩の形態の上記典型的二価の陽イオンの、例えば、塩化物イオン(Cl)、サルファート、アセタート(Ac)及び/又はフォスファート(P)との他の組み合わせが含まれる。上に例示されているもの以外の二価の陽イオン及び塩形態が本分野において周知であり、本明細書において使用される本用語の意味に含まれる。
【0042】
本明細書において使用される「緩衝液」という用語は、液体のpH(その酸性又はアルカリ性の何れか)を安定化させる物質を意味するものする。本明細書において使用されるこの用語は、その共役塩基と平衡状態にある酸等の緩衝物質を有する溶液を表すものとする。本発明の製剤において有用な典型的緩衝液には、酢酸若しくは酢酸塩緩衝液、グルタミン酸若しくはグルタミン酸塩緩衝液、コハク酸若しくはコハク酸塩緩衝液又はプロピオン酸若しくはプロピオン酸塩緩衝液が含まれる。これらの緩衝液(この用語は、本明細書中で例示及び使用されている。)は、そのそれぞれの共役塩基と平衡状態にある酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸を含有する緩衝液を表す。これらの緩衝液の各々は、それらのpKaの領域内で最適な緩衝能を与えることができ、緩衝能は、溶液に添加された酸又は塩基の何れかで擾乱されたときのpHの変化に対する抵抗を表す。
【0043】
酢酸は、式CH3COOH、16.7℃の融点及び118.0℃の沸点を有する酸を表す。酢酸のpKa4.75である。グルタミン酸は、式C5H9NO4を有する酸性アミノ酸を表し、このアミノ酸のL型及びD型の両方を含む。グルタミン酸側鎖のpKaは4.07であるのに対して、コハク酸のpKaは、その2つのカルボン酸部分に対して4.19及び5.57である。コハク酸は、式C4H6O4、185℃の融点及び235℃の沸点を有する二カルボン酸を表す。プロピオン酸は、式CH3CH2COOH、−21℃の融点及び141℃の沸点を有する液体の酸を表す。本発明の酢酸緩衝液の酢酸形態は、例えば、酢酸、酢酸イオン及び/又は酢酸塩形態を含むアセタートを含み得る。同様に、本発明のグルタミン酸緩衝液のグルタミン酸の形態は、例えば、グルタミン酸、グルタミン酸イオン及び/又はグルタミン酸塩形態を含むグルタマートを含み得る。本発明のコハク酸緩衝液のコハク酸の形態は、例えば、コハク酸、コハク酸イオン及び/又はコハク酸塩形態を含むスクシナートを含み得る。さらに、本発明のプロピオン酸緩衝液のプロピオン酸の形態は、例えば、プロピオン酸、式C2H5CO2−を有するプロピオン酸イオン及び/又はプロピオン酸塩形態を含むプロピオナートを含み得る。
【0044】
本発明の緩衝液中に含めることができる緩衝液の典型的な塩形態には、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、有機アミノ又はマグネシウム塩が含まれる。酢酸、酢酸緩衝液、グルタミン酸、グルタミン酸緩衝液、コハク酸、コハク酸緩衝液、プロピオン酸及びプロピオン酸緩衝液は、当業者に周知である。本明細書において使用される「緩衝液」という用語は、当業者に周知であり、及び治療用ポリペプチドなどの生物医薬との使用に適用することが可能な、上に例示されているもの以外の全ての緩衝液を含むものとする。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、治療用ポリペプチドの安定性を維持又は強化するために、アセタート、グルタマート及び/又はスクシナート以外の緩衝液を本発明の製剤中で等しく置換できることを理解する。
【0045】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、治療的に不活性な物質を意味するものとする。賦形剤は、例えば、希釈剤、ビヒクル、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤などとして、多様な目的のために、製剤中に含めることができる。賦形剤には、例えば、ソルビトール又はマニトールなどのポリオール;スクロース、ラクトース又はデキストロースなどの糖;ポリエチレングリコールなどのポリマー,NaCl、KCl又はリン酸カルシウムなどの塩、グリシン、メチオニン又はグルタミン酸などのアミノ酸、界面活性剤、金属イオン、プロピオン酸塩、酢酸塩又はコハク酸塩などの緩衝塩、防腐剤及びヒト血清アルブミンなどのポリペプチド並びに生理的食塩水及び水が含まれる。本発明の特に有用な賦形剤には、糖アルコール、還元糖、非還元糖及び糖酸を含む糖が含まれる。賦形剤は本分野において周知であり、例えば、「WangW.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「WangW.,Int.J.Pharm.203−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0046】
簡潔に述べれば、糖アルコール(ポリオール、多価アルコール又はポリアルコールとしても知られる。)は、一級又は二級ヒドロキシル基に還元されたカルボニル基を有する炭水化物の水素添加された形態である。ポリオールは、液体中及び凍結乾燥された製剤中の両者で、安定化賦形剤及び/又は等張化剤として使用することができる。ポリオールは、物理的及び化学的分解経路の両方からポリペプチドを保護することができる。優先的に排除された共溶媒は、タンパク質界面における溶媒の有効表面張力を増加させ、エネルギー的に最も好ましい立体構造は最も小さな面積を有する立体構造である。糖アルコールの具体例には、ソルビトール、グリセロール、マニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール及びスレイトールが含まれる。
【0047】
還元糖は、例えば、ケトン又はアルデヒド基を有する糖を含み、糖が還元剤として作用できるようにする反応性ヘミアセタール基を含有する。還元糖の具体例には、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びマルトースが含まれる。
【0048】
非還元糖は、アセタールであるアノマー性炭素を含有し、アミノ酸又はポリペプチドと実質的に反応せず、メイラード反応を開始させない。フェーリング溶液又はトーレン試薬を還元する糖も、還元糖として知られている。非還元糖の具体例には、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース、メレジトース及びラフィノースが含まれる。
【0049】
糖酸には、例えば、サッカリン酸(saccharic acid)、グルコナート及び他のポリヒドロキシ糖及びこれらの塩が含まれる。
【0050】
緩衝賦形剤は、製品の保存寿命を通じて、液体製剤のpHを維持し、例えば、凍結乾燥プロセスの間に、及び再構成の際に、凍結乾燥された製剤のpHを維持する。
【0051】
液体製剤中に含まれる等張化剤及び/又は安定化剤は、製剤が投与に適するように、例えば、等張性、低張性又は高張性を製剤に付与するために使用することができる。このような賦形剤は、例えば、ポリペプチドの構造の維持を促進するために、及び/又は、静電的な溶液タンパク質−タンパク質相互作用を最小化するために使用することもできる。等張化剤及び/又は安定化剤の具体例には、ポリオール、塩及び/又はアミノ酸が含まれる。凍結乾燥された製剤中に含まれる等張化剤及び/又は安定化剤は、例えば、ポリペプチドを凍結ストレスから保護するための凍結保護剤として、又は凍結乾燥された状態のポリペプチドを安定化させるための凍結乾燥保護剤として使用することができる。このような凍結保護剤及び凍結乾燥保護剤の具体例には、ポリオール、糖及びポリマーが含まれる。
【0052】
充填剤又はケーキ剤は、例えば、製品の上品さを増強させ、噴出を抑制するために、凍結乾燥された製剤において有用である。充填剤は、凍結乾燥ケーキに構造的強度を付与し、例えば、マニトール及びグリシンが含まれる。
【0053】
抗酸化剤は、タンパク質の酸化を調節するために液体製剤において有用であり、酸化反応を遅延させるために、凍結乾燥された製剤中で使用することも可能である。
【0054】
金属イオンは、例えば、補因子として、液体製剤中に含めることができ、カルシウム、亜鉛、マンガン及びマグネシウムなどの二価陽イオンは、例えば、本明細書に記載されているようにイソアスパラギン酸形成に対する安定化剤として、懸濁製剤中において使用することができる。液体製剤中に含められるキレート剤は、例えば、金属イオンによって触媒される反応を阻害するために使用することができる。凍結乾燥された製剤に関して、例えば、金属イオンは、本明細書に記載されているように、補因子として又はイソアスパラギン酸形成に対する安定化剤として含めることもできる。一般に、キレート剤は凍結乾燥された製剤からは省略されるが、凍結乾燥プロセスの間の及び再構成の際の触媒反応を抑制するために、所望に応じて、キレート剤を含めることも可能である。
【0055】
液体及び/又は凍結乾燥された製剤中に含まれる防腐剤は、例えば、微生物の成長に対して保護するために使用することが可能であり、特に、複数投薬製剤において有益である。凍結乾燥された製剤において、再構成希釈液中には、一般に、防腐剤が含められる。ベンジルアルコールは、本発明の製剤において有用な防腐剤の具体例である。
【0056】
本明細書において使用される「界面活性剤」という用語は、その中に溶解される液体の表面張力を低下させるように機能する物質を意味するものする。例えば、液体製剤中の凝集、粒子形成及び/又は表面吸着を抑制若しくは調節するために、又は凍結乾燥された製剤中の凍結乾燥及び/又は再構成プロセスの間に、これらの現象を抑制若しくは調節するためなど、様々な目的のために、界面活性剤を製剤中に含めることができる。界面活性剤には、例えば、有機溶媒及び水溶液中の両方で、部分的な溶解度を示す両親媒性有機化合物が含まれる。界面活性剤の一般的な特徴には、水の表面張力を低下させる能力、油と水の間の界面張力を低下させる能力及びミセルを形成する能力も含まれる。本発明の界面活性剤には、非イオン性及びイオン性界面活性剤が含まれる。界面活性剤は本分野において周知であり、例えば、「RandolphT.W.and JonesL.S.,Surfactant−protein interactions.Pharm Biotechnol.13:159−75(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0057】
簡潔に述べれば、非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド、セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA及びコカミドTEAが含まれる。非イオン性界面活性剤の具体例には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85などのポリソルベート;例えばポロキサマー188(ポロキサルコール又はポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)としても知られる。)、ポロキサマー407を含むポロキサマー又はポリエチレン−ポリプロピレングリコールなど及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ポリソルベート20は、TWEEN20、ソルビタンモノラウラート及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートと同義である。
【0058】
イオン性界面活性剤には、例えば、陰イオン性、陽イオン性及び双性イオン性界面活性剤が含まれる。陰イオン性界面活性剤には、例えば、石鹸など、スルホナートをベースとする又はカルボキシラートをベースとする界面活性剤、脂肪酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム及び他のアルキル硫酸塩が含まれる。陽イオン性界面活性剤には、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウムクロリド、ポリエトキシル化された獣脂アミン(POEA)及び塩化ベンゾアルコニウムなどの四級アンモニウムをベースとする界面活性剤が含まれる。双性又は両性界面活性剤には、例えば、ドデシルベテイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベテイン及びココアムフォグリシナートが含まれる。
【0059】
本明細書において使用される「治療的」という用語は、本発明の抗体を含む本発明のポリペプチドに関して使用される場合、当該ポリペプチドがヒト又は他の動物中の疾病の治癒、軽減、治療又は予防において使用することが予定されていることを意味するものとする。従って、治療的ポリペプチドは医薬の具体的種類であり、単一のポリペプチド又は2つ若しくはそれ以上のポリペプチドサブユニットを含むことができる。治療的ポリペプチドには、抗体、その機能的抗体断片、そのペプチボディ又は機能的断片、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが含まれる。多岐にわたる治療的ポリペプチドが本分野において周知であり、これらの全てが、本明細書において使用される前記用語の意味の中に含まれる。本発明の製剤中で使用することができる典型的な治療的ポリペプチドには、例えば、パニツムマブ(VectibixTM)及びEpratuzumab(R)(Emab)並びに多様な抗原に対する機能的断片、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びTNFRリガンド、サイクリン及びエリスロポエチンなどの抗体が含まれる。
【0060】
治療用ポリペプチドなどの治療用巨大分子に関して使用される場合、本明細書において使用される「有効量」という用語は、標的とされる疾病又は生理的状態と関連する少なくとも1つの症候を軽減するのに十分な治療的分子の量を意味するものとする。
【0061】
本発明は、6.0未満のpHを有する緩衝液、約5から150mMの間の二価の陽イオン、糖又はポリオールを含む賦形剤及び治療用ポリペプチドの有効量を含む製剤を提供する。治療用ポリペプチドは、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)に対して特異的な結合活性を有する抗体を含む治療用抗体であり得る。
【0062】
一実施形態において、アスパラギン酸(Asp又はD)及び/又はアスパラギン(Asn又はN)を含有するポリペプチド中のイソアスパラギン酸形成の割合又は程度を阻害又は低下する本発明の製剤が提供される。図13は、スクシンイミド中間体を通じた、Asp又はAsnのイソアスパラギン酸への異性化の経路の模式図である。イソアスパラギン酸の形成は、ポリペプチドの切断及び不安定性並びに生物学的活性の低下をもたらすことができる。
【0063】
Asp又はAsnを含有するポリペプチドは、例えば、これらのアミノ酸の側鎖が溶媒に曝露されたときに、さらに異性化を受けやすくなり、又は異性化に対して感受性を有する。異性化に対して感受性を有するポリペプチドの他の特徴には、例えば、グルタミン酸(GIu又はE)、ヒスチジン(His又はH)、リジン(Lys又はK)、セリン(Ser又はS)又はスレオニン(Thr又はT)などの別の帯電したアミノ酸側鎖又は極性アミノ酸側鎖に近接したAsp又はAsnが含まれる。スクシンイミド中間体を通じた異性化に対する感受性は、例えば、骨格に対する強化された柔軟性及び増加された溶媒曝露のために、グリシン(Gly又はG)などの中性アミノ酸が近接するときにも起こり得る。一般に、Asp残基が例えば溶媒により溶媒曝露され若しくは別の正に帯電した側鎖に近接するほど、その残基は異性化に対してより多くの感受性を有する。例えば、抗体のCDR中、免疫グロブリンドメイン含有ポリペプチドのβターン中又は不規則な構造を有する他の領域中のAsp又はAsnが溶媒に曝露され得る。イソアスパルギン酸へ異性化する、そのCDR中にAsp残基を有する抗体の具体例は、抗体パニツムマブである。さらに、例えば、1、2、3若しくは4又はそれ以上と近い正に帯電した残基は、イソアスパラギン酸形成へのポリペプチドの異性化及び感受性を促進することができる。同様に、例えば、Aspへの近接において、又はポリペプチドの三次元構造内への近接において上に例示されているような残基も、イソアスパラギン酸の形成を促進することができる。
【0064】
本発明の製剤中に二価の陽イオンを含めることは、1つ又はそれ以上のAsp又はAsn残基を含有するポリペプチドの異性化に対する感受性及びイソアスパラギン酸の形成を低下させる。同様に、本発明の製剤中に二価の陽イオンを含めることは、異性化に対して感受性を有するポリペプチド中のイソアスパラギン酸の形成を低下させる。例えば、1つ又はそれ以上のAsp又はAsn残基が、本明細書に記載されている異性化に対して感受性を有し得る複合体構造を有するより大きなポリペプチドでは、二価の陽イオンを含めることが特に有用である。従って、本発明の製剤を安定化させる二価の陽イオンは、10から数百にわたる又はそれ以上のアミノ酸残基のポリペプチドとともに使用することができる。従って、本発明の二価の陽イオン製剤は、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、750若しくは1000又はそれ以上のアミノ酸残基を有するポリペプチドとともに使用することができる。これらの典型的な数字の間にあるポリペプチドの全てのサイズも、本発明の二価陽イオン含有製剤において使用される。
【0065】
本発明の二価陽イオン製剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又はそれ以上のAsp及び/又はAsn残基を有するポリペプチドの異性化を安定化させ、低下させるのに有用である。同様に、本発明の二価陽イオン製剤は、例えば、Glu、His、Lys,Ser、Thr及び/又はGlyに近接している1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又はそれ以上のAsp及び/又はAsn残基を有するポリペプチドの異性化を安定化させ、低下させるのにも特に有用である。このような残基は、典型的なモチーフ(DD、DE、DH、DK、DS、DT又はDG(又はND、NN、NE、NH、NKなど)のように、例えば、互いに隣接して存在することができ、又は上に例示されているように、例えば、2、3若しくは4若しくはそれ以上の残基を隔てることができる。同様に、複数の残基が、モチーフDDD、DDE、DED、DXD又はDXE(Xは、任意のアミノ酸を表す。)などと隣接して又は近接して存在することができる。さらに、上に例示されているモチーフの全ての組み合わせ及び順列も、Asp又はAsn異性化に対する感受性を引き起こし得る。上に例示されているモチーフの1つを有するポリペプチドの具体例は、イソアスパラギン酸へ異性化することができるCDR3中のAsp92へ隣接するHisを含有する抗体パニツムマブである。本発明の二価陽イオン製剤は、これらのモチーフ、組み合わせ及び/又は順列の何れかを含有するポリペプチドを安定化させるのに有用である。
【0066】
Asp又はAsnを含有するポリペプチド中のイソアスパラギン酸形成の割合又は程度を阻害又は低下する本発明の製剤は、異性化及びイソアスパラギン酸の形成を低下させるのに十分な二価陽イオンの量を含む。異性化及びイソアスパラギン酸形成を低下させるのに十分な二価陽イオンの量を含有する本発明の製剤は、上に例示されたAsp又はAsn含有モチーフを有するポリペプチドなど、異性化に対して感受性を有するAsp又はAsn含有ポリペプチドとともに使用するのに特に有用である。例えば、二価の陽イオンは、例えば、ポリペプチド骨格のカルボニルが二次構造形成に関与しておらず、従って、二価陽イオンとの相互作用に利用可能なアミノ酸残基に結合することができる。本発明の製剤中に二価陽イオンを含めることによって、例えば、Asnの脱アミド化及び/又はAspの加水分解を低下させることよりポリペプチド構造を安定化させることもできる。例えば、アスパルチル及びグルタミル残基の側鎖は、例えば、スクシンイミド中間体の形成を防ぐために、二価陽イオンと結合することもできる。
【0067】
異性化及びイソアスパラギン酸形成に対する感受性を阻害又は低下するのに十分な二価陽イオン又はその塩形態の量には、約5から200mMの量が含まれ得る。特に、ポリペプチド安定性の保持及びAsp又はAsn異性化の割合又は程度の低下は、約10−175mM、15−150mM、20−125mM、25−100mM、30−80mM、35−60mM又は40−50mMの間の濃度で二価の陽イオンを含むことによって達成され得る。特に有用な二価陽イオン又はその塩形態の濃度には、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150mMが含まれる。これらの典型的な二価陽イオンの濃度より上、下又は間の全ての濃度も、異性化の割合又は程度を阻害又は低下させるために、本発明の製剤において使用することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、ポリペプチド異性化を阻害又は低下させ、従って、水性製剤又は他の液体製剤中のポリペプチドの安定性を増加させるために、特定の二価の陽イオン又はその塩形態の濃度をどのように選択するかが当業者には明らかである。
【0068】
様々な二価の陽イオン又はその塩形態の何れもが、本発明の製剤において使用され得る。典型的な二価の陽イオンには、例えば、Ca+2、Zn+2、Mn+2、Mg+2、Fe+2、Co+2、Ni+2及び/又はCu+2などの先に例示した金属イオンが含まれる。他の二価の陽イオンには、例えば、Sc+2、Ti+2、V+2、Cr+2、Fe+2、Co+2、Ni+2、Cu+2、Ga+2、Ge+2及び/又はSe+2が含まれる。これらの典型的な二価の陽イオンの塩形態には、例えばCaCl2、ZnCl2、MnSO4、MnCl2及びMgCl2並びに塩形態の上記典型的な二価陽イオンの、例えば塩化物イオン(Cl)、サルファート(SO4)、アセタート及び/又はホスファートとの他の組み合わせが含まれる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、何れの二価陽イオンが治療用製剤に有用であるか、及び何れを、例えば、診断又は研究用途のために使用できるかが当業者に明らかである。あるいは、画像化操作、他の診断操作においてポリペプチドを安定化させるために、及び/又は前臨床研究において使用されるポリペプチドの操作又は保存のために、例えば、治療目的に対してより有用性が低い可能性がある二価の陽イオンを使用することができる。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明の製剤は、製剤中に含まれている1つ又は複数のポリペプチドの等電点(pI)未満のpHを有するように緩衝化される。含まれているポリペプチドのpIより低いpHを有する製剤は、溶液からのポリペプチド沈殿を防止又は低下するのに特に有用である。より低いpHの緩衝液は、凝集及び以下でさらに記載されている他のポリペプチド分解経路を抑制又は低下することによって、ポリペプチドの安定性をさらに促進させるので、酸性pH(含まれているポリペプチドのpIを下回る酸性pHを含む。)も特に有用である。例えば、以下でさらに記載されているように、本発明の幾つかの実施形態において、含まれるポリペプチドのpIに関わらず、6.0未満のpHを有する安定なポリペプチド製剤が使用される。これらの特定の実施形態において、pHは、約pH4.0と5.9の間であり得る。特に有用なpH範囲には、例えば、5.8未満のpH及び約4.8から5.2の間のpHが含まれる。
【0070】
含まれるポリペプチドのpIより低いpHを有する製剤は、約4.0から8.0の範囲であり得る。以下でさらに記載されているように、ポリペプチドのpIより下のpH範囲を含む特に有用なpH範囲には、約4.0から6.0未満が含まれる。一つの典型的な実施形態において、ポリペプチドは、6.63の計算されたpIを有するパニツムマブである。この特異的な実施形態において、約6.6未満のpHを有する緩衝液は、パニツムマブのpIより下であり、本発明の二価陽イオン含有製剤中でのこのポリペプチドの沈殿を抑制又は低下する。さらなる実施形態において、製剤化されたポリペプチドのpIは、例えば、6.0、6.5、7.0又はそれ以上であり得、最終製剤のpHは、例えば、6.0、6.5又は7.0未満であり得る。別の実施形態において、本発明の製剤中のポリペプチドのpIは、例えば、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4又は8.5であり得、これらの典型的なpI値の何れかより小さな本発明の製剤のpHを使用することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、ポリペプチドの沈殿の抑制又は低下を促進するために、本発明の二価陽イオン含有製剤中に含められるポリペプチドのpIより小さなpH値をどのようにして選択するかは当業者に明らかである。沈殿を低下させるために、ポリペプチドのpIより小さなpH値を有するこのような実施形態が必要とされ得、又は必要とされ得ないこと、及びこのようなより低いpH製剤が所望されるかどうかを決定するために、様々なpH値でポリペプチドを調合することが当業者の技術範囲に十分属することも当業者に理解される。
【0071】
治療用ポリペプチドに適した、及び保存、取り扱い又は医薬としての個体への投与に適したあらゆる所望の溶液、緩衝液又は製剤中に、二価陽イオン又はその塩形態を含めることができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、ポリペプチド溶液中の二価の陽イオンを含めることが、Asp又はAsnの異性化、スクシンイミド中間体及び/又はイソアスパラギン酸の形成の割合又は程度を抑制又は低下させることが当業者に理解される。治療用ポリペプチドの保存、取り扱い又は投与のために有用である、ポリペプチド安定性を付与する様々なポリペプチド製剤が以下に例示されている。約5から200mMの間の濃度で、これらの典型的な製剤中に二価の陽イオンを含めることは、異性化の割合又は程度を抑制又は低下させることによって、ポリペプチドの安定性をさらに強化することができる。Asp又はAsn異性化の割合又は程度を抑制又は低下させることによって、ポリペプチドの安定性をさらに増強させるために、二価の陽イオンまたはその塩形態と一緒に、以下に例示されているもの以外の様々な製剤を使用できることも、当業者に理解される。
【0072】
例えば、本発明の1つの典型的な製剤は、抗体を含むポリペプチドの投与、保存及び操作に対して最適な特性を示す。本発明の製剤中で使用するための特に有用なポリペプチドは、パニツムマブである。操作には、例えば、凍結乾燥、再構成、希釈、滴定などが含まれる。本発明の製剤の緩衝成分は、本分野で周知の方法を用いて調製するのに効率的であり、本分野で周知の様々な方法の何れかを用いて、所望のポリペプチドと容易に組み合わせることができ、手間がかかり、時には長い調製及び/又は中間工程を回避できる。さらに、水性緩衝成分は、ポリペプチドの安定性を促進する多様な賦形剤及び界面活性剤と相溶性であるように選択される。本明細書に記載されている本発明の製剤のこれら及び他の属性は、生物活性分子の安定な製剤を調製し、12から18ヶ月を超える又はそれ以上の期間にわたって維持することを可能にする。
【0073】
本発明の液体製剤を含む本発明の製剤の安定性は、製剤内のポリペプチドの構造及び/又は機能の保持を表す。本発明の製剤中のポリペプチドは、安定性又は機能に影響を与える、変化又は崩壊に対する耐性などの属性を呈し、従って、一貫した機能的特徴を長期にわたって維持する。本発明の二価陽イオン又はその塩形態中のポリペプチドは、Asp及び/又はAsnのイソアスパラギン酸への異性化の阻害又は低下も示す。従って、本発明の製剤は、例えば、容量又は活性単位当りの活性に関して信頼性及び安全性を示す。
【0074】
一態様において、本発明の二価陽イオン含有製剤内のポリペプチドの安定性は、イソアスパラギン酸へのAsp又はAsn異性化の抑制又は低減を示し、従って、その後の分解の割合又は程度を低下させる。異性化の割合又は程度の低下には、例えば、二価陽イオンの不存在下に比べて、二価陽イオンの存在下で、イソアスパラギン酸形成の約20から100%、40から95%、50から90%、60から85%又は70から80%の間の阻害が含まれる。従って、本発明の二価陽イオン含有製剤内のポリペプチドの安定性には、二価陽イオンの不存在下と比べて、99.5%超、少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%又は80%、二価陽イオンの存在下でイソアスパラギン酸形成を阻害することが含まれる。阻害の程度は、本分野において周知の、及び以下でさらに記載されている様々な方法によって測定することができる。このような測定の具体例は、実施例2に例示されている。
【0075】
別の実施形態において、本発明の製剤内のポリペプチドの安定性には、例えば、物理的及び/又は化学的安定性の保持が含まれる。ポリペプチドの安定性は、例えば、その構造の化学的修飾を含む、以前に記載されたものなどの物理的分解及び/又は化学的分解経路にポリペプチドが供されたかどうかを測定することによって評価することができる。本発明の製剤中のポリペプチドの安定性の保持には、例えば、最初の時点でのポリペプチドの安定性と比べて、約80から100%、85から99%、90から98%、92から96%又は94から95%の間の物理的又は化学的安定性の保持が含まれる。従って、本発明の製剤中のポリペプチドの安定性には、最初の時点でのポリペプチドの安定性と比べて、99.5%超の安定性、少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%又は80%の安定性の保持が含まれる。
【0076】
さらなる実施形態において、本発明の製剤内のポリペプチドの安定性には、例えば、活性の保持が含まれる。ポリペプチド活性は、例えば、ポリペプチドの機能の指標となるインビトロ、インビボ及び/又はインシチュのアッセイを用いて評価することができる。本発明の製剤中のポリペプチドの安定性の保持には、アッセイの変動性に応じて、例えば、約50から100%の間又はそれ以上の活性の保持が含まれる。例えば、安定性の保持には、最初の時点におけるポリペプチドの活性に比べて、約60から90%の間又は70から80%の間の活性の保持が含まれ得る。従って、本発明の製剤中のポリペプチドの安定性には、最初の時点でのポリペプチドの活性と比べて、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の活性の保持が含まれ、105%、110%、115%、120%、125%若しくは150%又はそれ以上など、100%を超える活性測定が含まれ得る。一般に、最初の時点は、ポリペプチドが最初に本発明の製剤中で調製される時点、又は品質に関して最初に調べられる時点であるように選択される(すなわち、放出規格を満たす。)。最初の時点には、ポリペプチドが本発明の製剤中に再調合される時点も含まれ得る。再調合は、例えば、最初の調製のより高い濃度、より低い濃度又は同じ濃度であり得る。
【0077】
本発明の製剤は、基準溶液又は液体(すなわち、血清)と等張であるように調製することができる。等張溶液は、浸透圧的に安定であるように、周囲の物と比べて、その中に溶解された溶質の実質的に同等の量を有する。特定の溶液又は液体と明示的に比較されている場合を除き、本明細書において、等張又は等張性は、ヒト血清に対する参照によって、典型的に使用される(例えば、300mOsmol/kg)。従って、本発明の等張製剤は、ヒトの血液と実質的に同様の溶質の濃度を含有し、又はヒトの血液と実質的に同様の浸透圧を示す。一般に、等張溶液は、ヒト及び他の多くの哺乳動物に対する正常な生理的食塩水と概ね同じ溶質の濃度(水溶液中の約0.9重量%の塩(例えば、0.009g/mLNaCl)。)を含有する。本発明の製剤には、低張又は高張溶液調製物も含まれ得る。
【0078】
本発明の製剤は、本分野において周知の様々な方法の何れでも調製することができる。本発明の製剤は、約5から200mMの範囲の濃度で1つ若しくはそれ以上の二価陽イオン又はその塩形態と、所望のpHを有する緩衝成分と、少なくとも1つの賦形剤と及びポリペプチドの有効量とを含有する。本発明の製剤の緩衝能は、それぞれ、その共役塩基又は酸との平衡状態にある弱酸又は塩基によって供給される。緩衝成分は、それらの各pKaの約1pH単位内であるpH範囲で強い緩衝能を示す。酸性pHが所望される本発明の特定の実施形態において、酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸は、例えば、パニツムマブなどの抗体を含む多くの生物分子に対して最適であるpKaを有する。これらの典型的な緩衝液は、例えば、4.0から6.0の間のpH範囲で強い緩衝能を示し、6.0より下のpHを有する製剤に対して特に有用である。
【0079】
本分野において周知の様々な緩衝成分の何れをも、本発明の製剤中で使用することができる。このような緩衝成分には、例えば、酢酸、グルタミン酸、コハク酸、プロピオン酸、マレイン酸、グルコナート、ヒスチジン又は他のアミノ酸、シトラート、ホスファート又はこれらの塩形態が含まれる。例えば、他の有機酸を含む他の多様な緩衝液が本分野において周知であり、本発明の製剤の緩衝成分として同様に使用することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられ、製剤及び賦形剤が製剤中に含まれる場合、それらの所望されるpHが与えられれば、上記緩衝成分の何れか又は本分野で周知の他の緩衝成分を選択し、本発明の製剤中において使用できることが当業者に明らかである。
【0080】
緩衝成分は、様々な異なる形態で緩衝系に供給することができる。このような緩衝液及びその形態は、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸含有緩衝液を参照しながら、例示の目的で、本明細書中に例示されている。酢酸、グルタミン酸及びコハク酸緩衝液は、当業者に周知である。先述されているように、本分野において周知の他の様々な緩衝液の何れをも、以下で例示されている、例示されている酢酸、グルタミン酸及び/又はコハク酸緩衝液に対して等しく置き換え得ることが当業者に理解される。ある種の特定の実施形態において、所望のpHでさらに有用な緩衝特性を有する緩衝液の代わりに、ヒスチジン、クエン酸及び/又はホスファート又はこれらの塩を使用する緩衝液は選択されない。
【0081】
例えば、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸成分は、これらの酸、酸塩又は入手可能な、若しくは化学合成を用いて作製することができる他のあらゆる形態として供給され得る。これらの酸の酸塩形態(アセタート、グルタマート又はスクシナート)は、高度に精製された形態で市販されているので、製剤の緩衝系を製造するのに特に有用である。アセタート、グルタマート及びスクシナート塩には、例えば、以前に記載されているもの及び本分野で公知のその他のものが含まれる。製剤成分の高度に精製された形態は、安全及び無毒であるように汚染物質を欠如するように、ヒトへ投与するのに十分に純粋である薬学等級の純度レベルを表す。
【0082】
本発明の製剤は、例えば、選択された温度で製剤の選択されたpHを維持するのに十分な緩衝能を有する本発明の酸又は酸塩の濃度を含有する。酸又は塩(すなわち、酢酸若しくは酢酸塩、グルタミン酸若しくはグルタミン酸塩又はコハク酸若しくはコハク酸塩)の有用な濃度には、例えば、約1から150mMの間及び200mM又はそれ以上が含まれる。例えば、幾つかの事例では、本発明の高張製剤を作製するために、最大1Mの酸又は酸塩を含むことが望ましいことがあり得る。このような高張溶液は、所望であれば、使用前に、等張製剤を作製するために希釈することができる。例示として、本発明の酸又は酸塩緩衝剤の有用な濃度には、例えば、約1から200mM、5から175mM、10から150mM、15から125mM、20から100mM、25から80mM、30から75mM、35から70mM、40から65mM及び45から60mMの間が含まれる。酸又は酸塩の他の有用な濃度には、例えば、約1から50mM、2から30mM、3から20mM、4から10mM及び5から8mMの間が含まれる。従って、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20mM又はそれ以上の酸又は酸塩の濃度も有用である。これらの典型的な濃度を上回る及び下回る全ての値も、製剤において使用することができる。従って、本発明の製剤は、1mM未満の酸若しくは酸塩、又は、例えば、21、22、23、24、25、30、35、40、45若しくは50mM若しくはそれ以上などの20mM超の酸若しくは酸塩を有することができる。様々な製剤は、以下の実施例中に例示されており、図1から13に示されている。
【0083】
先述されているように、酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸緩衝液は、ポリペプチドの安定性を維持するのに最適であり得る約pH4.0から7.0の間、特に、約4.0から6.0の間に強い緩衝能を有するので、本発明の製剤中の酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸緩衝液のpKaは、ポリペプチドとともに使用するのに特に適している。本発明の製剤の緩衝成分は、約4.0から7.0の間のpH範囲内で何らかの効果的な緩衝能を示すように調製することができる。緩衝液及び/又は、例えば、酢酸、グルタミン酸、コハク酸又はプロピオン酸緩衝液を含む最終製剤の典型的なpH範囲は、約3.5から6.5の間、約4.0から6.0の間、約4.5から5.5の間、約4.8から5.2の間又は約5.0のpH範囲を含むことができる。従って、緩衝液及び/又は最終製剤は、約3.0又はそれ未満のpH、約3.5、4.0、4.5、4.8、5.0、5.2、5.5、6.0、6.5若しくは約7.0又はそれ以上のpHを有するように調製することができる。これらの典型的な値より上、下及び間の全てのpH値も、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の緩衝液及び/又は最終製剤中で用いることができる。従って、例えば、緩衝成分及び/又は本発明の最終製剤は、3.5未満、6.5超及びこれらの範囲内の全ての値のpHを有するように調製することができる。緩衝液の緩衝能の強度の大部分が、そのpKaの約1pH単位より外側で減少すること、並びに本明細書において提供される教示及び指針が与えられれば、約3.5のpHより下又は約6.5のpHより上で、酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の緩衝液を含めることが本発明の製剤において有効であるかどうかを決定できることが当業者に理解される。
【0084】
他の実施態様において、本発明の製剤の有用なpH範囲は、酸性pH値を含む。酸性pH値を有する製剤は、上記及び下記に記載及び例示されている二価陽イオンの存在下において、含められたポリペプチドの安定化の増加、ポリペプチドの沈殿の減少など、重要な特性を製剤に付与する。典型的な酸性pH値は、上記及び前記の値を含み、並びに6.0未満のpHを有する製剤を含む。酸性pHを有するこのような製剤は、例えば、5.9若しくはそれ未満、5.8若しくはそれ未満、5.7若しくはそれ未満、5.5若しくはそれ未満、5.4若しくはそれ未満、5.3若しくはそれ未満、5.2若しくはそれ未満、5.1若しくはそれ未満、5.0若しくはそれ未満、4.9若しくはそれ未満、4.8若しくはそれ未満、4.7若しくはそれ未満、4.6若しくはそれ未満、4.5若しくはそれ未満、4.4若しくはそれ未満、4.3若しくはそれ未満、4.2若しくはそれ未満、4.1若しくはそれ未満又は4.0のpHも含む。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、上で例示されているpH値の何れか又は製剤に対して所望されるその他のpHに本発明の製剤を維持するために、例えば、そのpKaに基づいて適切な緩衝成分を選択できることを理解する。
【0085】
本発明の製剤の緩衝成分は、1つ又はそれ以上の賦形剤を含むことができる。前述されているように、含められる賦形剤の1つの役割は、製造、搬送及び保存の間に起こり得るストレスに対してポリペプチドの安定化を提供することである。この役割を達成するために、少なくとも1つの賦形剤は、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン源、キレート剤及び/又は防腐剤として機能することができる。さらに、少なくとも1つの賦形剤は、希釈剤及び/又はビヒクルとして機能し、又は製剤の送達を可能とし、及び/又は患者の利便性を強化するために、高濃度製剤での粘度を低下させるために使用することができる。
【0086】
同様に、少なくとも1つの賦形剤は、上記機能の2以上を本発明の製剤に対してさらに付与することができる。あるいは、上記機能又は他の機能の2以上を実施するために、2つ又はそれ以上の賦形剤を本発明の製剤中に含めることができる。例えば、製剤のオスモル濃度を変化させ、調整し、又は最適化することにより、等張化剤として作用させるために、本発明の製剤中の成分として、賦形剤を含めることができる。同様に、等張化剤及び界面活性剤は何れも、オスモル濃度を調整し、且つ凝集を調整するために、本発明の製剤中に含めることができる。賦形剤、それらの使用、製剤及び特徴は本分野において周知であり、例えば、「Wang W.,Int.J.Pharm.185:129−88(1999)」及び「Wang W.,Int.J.Pharm.203:1−60(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0087】
一般に、賦形剤は、様々な化学的及び物理的ストレスに対してタンパク質を安定化させる機序に基づいて選択することができる。本明細書に記載されているように、ある種の賦形剤は、特定のストレスの効果を軽減するために、又は特定のポリペプチドの特定の感受性を制御するために含めるのに有益である。他の賦形剤は、タンパク質の物理的及び共有的安定性に対してより一般的な効果を有するので、含めるのが有益である。特に有用な賦形剤には、製剤の安定性特性を最適化するために、化学的に及び機能的に無害であるもの又は水性緩衝溶液及びポリペプチドと適合的であるものが含まれる。様々なこのような賦形剤は、本発明の水性製剤との化学的適合性及びこのような製剤中に含まれるポリペプチドとの機能的適合性を示す典型的な賦形剤として本明細書に記載されている。例示されている賦形剤に関して本明細書中に提供されている教示及び指針は、本分野で周知の幅広い他の賦形剤の使用に対しても等しく適用できることを、当業者は理解する。
【0088】
例えば、製剤内のポリペプチドの安定性を強化又は付与するために選択される最適な賦形剤には、ポリペプチド上の官能基と実質的に反応しないものが含まれる。この点に関して、還元糖及び非還元糖の両方を本発明の製剤中の賦形剤として使用することができる。しかしながら、還元糖はそれらが反応することができるヘミアセタール基を含有し、ポリペプチドのアミノ酸側鎖上のアミノ基との付加物又は他の修飾を形成する(すなわち、グリコシル化)。同様に、シトラート、スクシナート又はヒスチジンなどの賦形剤も、アミノ酸側鎖と付加物を形成することができる。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、非還元糖を選択することによって、還元糖に比べて、又は上に例示されているような他のアミノ酸反応性賦形剤に比べて、あるポリペプチドに対する安定性のより大きな保持を達成できることが当業者に明らかである。
【0089】
最適な賦形剤は、本発明の水性製剤に対する投与様式に関して安定化を強化し、又は提供するためにも選択される。例えば、静脈内(IV)、皮下(SC)又は筋肉内(IM)投与の非経口経路は、製剤の全ての成分が、製造、保存及び投与の間に、物理的及び化学的安定性を維持する場合により安全で、効果的であり得る。当業者は、例えば、特定の製造若しくは保存条件又は特定の投与様式が与えられれば、ポリペプチドの活性形態の最大の安定性を維持する1つ又はそれ以上の賦形剤を使用することを知っている。製剤中での使用に関して本明細書に例示されている賦形剤は、これら及び他の特徴を示す。
【0090】
本発明の製剤中で使用するための賦形剤の量又は濃度は、例えば、製剤中に含まれるポリペプチドの量、所望の製剤中に含まれる他の賦形剤の量、希釈剤が望まれる若しくは必要とされるかどうか、製剤の他の成分の量若しくは容量、製剤中の成分の総量、ポリペプチドの比活性及び達成されるべき所望の浸透圧又は重量オスモル濃度に応じて変動する。賦形剤濃度に対する具体例は、以下でさらに例示されている。さらに、賦形剤の異なる種類を単一の製剤中に組み合わせることができる。従って、本発明の製剤は、単一の賦形剤、賦形剤の2つ、3つ若しくは4つ若しくはそれ以上の異なる種類を含有することができる。賦形剤の組み合わせは、2つ又はそれ以上の異なるポリペプチドを含有する製剤と組み合わせると特に有用であり得る。賦形剤は、類似の又は異なる化学的特性を示すことができる。
【0091】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、当業者は、ポリペプチドの安定性の保持を促進する本発明の製剤を達成するために、賦形剤のどのような量又は範囲をある製剤中に含めることができるか分かる。例えば、本発明の薬剤製剤中に含められるべき塩の量及び種類は、最終溶液の所望される重量オスモル濃度(すなわち、等張、低張又は高張)並びに製剤中に含められるべき他の成分の量及び重量オスモル濃度に基づいて選択することができる。同様に、製剤中に含められるポリオール又は糖の種類に関する例示によって、このような賦形剤の量はその重量オスモル濃度に依存する。約5%のソルビトールを含めることによって、等張性を達成することができるのに対して、等張性を達成するために、スクロース賦形剤の約9%が必要とされる。本発明の製剤内に含めることができる1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度の量又は範囲の選択は、塩、ポリオール及び糖に対する参照によって、上に例示されている。しかしながら、当業者は、本明細書に記載されており、及び特定の賦形剤への参照によってさらに例示されている濃度は、例えば、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定化剤、充填剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び/又は防腐剤を含む賦形剤の全ての種類及び組み合わせに対して等しく適用され得ることを理解する。
【0092】
賦形剤は、一般に、約1から40%(w/v)、約5から35%(w/v)の間、約10から30%(w/v)の間、約15から25%(w/v)の間又は約20%(w/v)の濃度範囲で、本発明の製剤中に含めることができる。ある種の事例では、約45%(w/v)、50%(w/v)又は50%(w/v)を上回る高い濃度を、本発明の製剤において使用することも可能である。例えば、幾つかの事例では、本発明の高張製剤を作製するために、最大60%(w/v)又は75%(w/v)の濃度を含むことが望ましい場合があり得る。このような高張溶液は、所望であれば、等張製剤を作製するために、使用前に希釈することができる。他の有用な濃度範囲には、約1から20%、特に約2から18%(w/v)、より具体的には約4から16%(w/v)、さらにより具体的には約6から14%(w/v)又は約8から12%(w/v)又は約10%(w/v)が含まれる。これらの範囲より下、上又はこれらの範囲の間の賦形剤濃度及び/又は量も、本発明の製剤において使用することができる。例えば、約1%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の賦形剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約40%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の賦形剤の実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。約10.0%の賦形剤を有するポリペプチドの製剤に対する例が、以下に提供されている。
【0093】
本発明の製剤において有用な様々な賦形剤が、先述されている。実施例に記載されている特定の製剤において、例示される賦形剤には、安定化剤として使用される、グリセロール、スクロース、トレハロース及び/又はソルビトールが含まれる。実施例に記載されている製剤において例示されている別の賦形剤は、保存用バルク製剤と比べて液体製剤中で使用されるポリソルベート80である。本発明の液体製剤又は凍結乾燥された製剤の何れかにおいて有用な他の賦形剤には、例えば、フコース、セロビオース、マルトトリオース、メリビオース、オクチュロース、リボース、キシリトール、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、リジン、イミダゾール、グリシルグリシン、マンノシルグリセラート、TritonX−100、PluronicF−127、セルロース、シクロデキストリン、デキストラン(10、40及び/又は70kD)、ポリデキストロース、マルトデキストリン、フィコール、ゼラチン、ヒロドキシプロピルメス、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ZnCl2、亜鉛、酸化亜鉛、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、トロメタミン、銅、フィブロネクチン、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、プロタミン、グリセリン、グリセロール、EDTA、メタクレゾール、ベンジルアルコール及びフェノールが含まれる。これらなどの賦形剤及び本分野において公知の他の賦形剤は、例えば、「WangW.,上記、(1999)」及び「WangW.,(2000)」に記載されているのを見出すことができる。
【0094】
本発明の製剤の緩衝成分は、1つ又はそれ以上の界面活性剤を賦形剤として含むこともできる。先述されているように、本発明の製剤中での界面活性剤の1つの役割は、表面によって誘導される分解などの凝集及び/又は吸着を抑制又は最小化することである。十分な濃度で、一般には、概ね界面活性剤の臨界ミセル濃度で、界面活性剤分子の表面層は、タンパク質分子が界面に吸着するのを防ぐ役割を果たす。これにより、表面によって誘導される分解は最小化される。界面活性剤、それらの使用、製剤及び製剤に対する特徴は本分野において周知であり、例えば、「Randolph及びJones、上記、(2002)」に記載されているのを見出すことができる。
【0095】
本発明の製剤中に含めるのに最適な界面活性剤は、例えば、凝集及び/又は吸着を抑制又は低下させることによって、ポリペプチドの安定性の保持を強化又は促進するために選択され得る。例えば、ポリソルベートなどのソルビタン脂肪酸エステルは、多岐にわたる親水性及び乳化特性を示す界面活性剤である。これらは、安定化の必要性の広い範囲をカバーするために、個別に又は他の界面活性剤と組み合わせて使用することができる。ポリペプチドの疎水性及び親水性特性の幅広い範囲をカバーするように特別に調製することができるので、このような特性は、ポリペプチドともに使用するのに特に適している。界面活性剤を選択するための考慮事項には、賦形剤に関して一般的に前述されているもの並びに界面活性剤の疎水性特性及び臨界ミセル濃度が含まれる。本明細書に例示されている界面活性剤及び本分野において周知の他の多くの界面活性剤を、本発明の製剤中で使用することができる。
【0096】
本発明の製剤に対する界面活性剤の濃度範囲には、賦形剤に関して一般的に先述されているものが含まれ、特に有用な濃度は約1%(w/v)未満である。この点に関して、界面活性剤濃度は、約0.001から0.10%(w/v)、特に約0.002から0.05%(w/v)の間、より具体的には約0.003から0.01%(w/v)の間、さらにより具体的には約0.004から0.008%(w/v)の間又は約0.005から0.006%(w/v)の間の範囲で、一般に使用することができる。これらの範囲より下、上又はこれらの範囲の間の界面活性剤濃度及び/又は量も、本発明の製剤において使用することができる。例えば、約0.001%(w/v)未満を占める1つ又はそれ以上の界面活性剤を製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、約0.10%(w/v)を上回る1つ又はそれ以上の賦形剤の濃度を含有することができる。従って、例えば、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09若しくは0.10%(w/v)又はそれ以上などの、1つ又はそれ以上の界面活性剤の実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。
【0097】
本発明の製剤における賦形剤として有用な様々な界面活性剤が、先述されている。本発明の液体製剤又は凍結乾燥された製剤において有用な他の界面活性剤には、例えば、ラウリン酸(C12)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)エステル、マクロゴールセトステアリルエーテル、マクロゴールラウリルエーテル、マクロゴールオレイルエーテル、マクロゴールオレアート、マクゴロールステアラート、マクロゴールグリセロールリシノレアート、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートなどの糖エステル;オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド;セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、並びにコカミドMEA、DEA、TEAなどのコカミド、他の非イオン性界面活性剤及び他のイオン性界面活性剤が含まれる。
【0098】
従って、本発明は、約4.5から約7.0のpHを有する約1から100mMの間の酢酸、グルタミン酸又はコハク酸、約1から20%の間のポリオール又は糖、約0.001から0.010%の間のポリソルベート80及び治療用抗体の有効量を有する水溶液を含む製剤を提供する。この製剤は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンも含むことができる。本発明の製剤は、約5.0のpHを有する酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の約10mM、約2.6%グリセロール及び約0.004%ポリソルベート80を含むこともできる。様々な他の製剤成分、成分の組み合わせ及びこれらの濃度も、本発明の製剤中に含めることが可能である。
【0099】
製剤のポリペプチド成分として治療的ポリペプチドを有する製剤がさらに提供される。この製剤は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含むことができる。治療的ポリペプチドには、抗体、抗体の機能的抗体断片、ペプチボディ、ホルモン、成長因子又は細胞シグナル伝達分子が含まれる。特定の実施形態において、抗体はヒト抗体である。別の特定の実施形態において、抗体はEGFRに対して特異的である。さらに別の特定の実施形態において、抗体はパニツムマブである。
【0100】
本発明の製剤中には、多様な治療的分子も含まれる。本発明の治療的分子には、病的状態の診断、治療若しくは予防において又は医薬の成分として使用することができる、例えば、活性医薬成分として使用されるポリペプチド、核酸、脂質、炭水化物又はこれらの構築ブロックなどの巨大分子又はバイオポリマーが含まれる。例えば、本発明の製剤は、ヒトを含む哺乳動物の生理系に内在する、ポリペプチド、グリコポリペプチド、ペプチドグリカン、ゲノムDNA、cDNAなどのDNA、mRNA、RNAi、SNRPSなdのRNA、単糖、多糖、N結合型糖、O結合型糖、レプチンなどを含み得る、活性医薬成分として想定される炭水化物、リン脂質、糖脂質、脂肪酸などの脂質、ポリアミン、イソプレノイド、アミノ酸、ヌクレオチド、神経伝達物質及び補因子並びに多くの他の巨大分子、生物ポリマー及びその構築ブロックに対して適用可能であり、これらに対する安定性の保持を促進する。これら及び他の生物医薬は当業者に周知であり、病的状態の診断、治療又は予防において使用するために、又は医薬の成分として本発明の製剤中に含めることができる。
【0101】
本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、本発明の製剤は、上に例示されているもの及び本分野において周知のその他のものを含む治療的分子の全ての種類に対して等しく適用可能であることが当業者に理解される。本明細書に提供されている教示及び指針が与えられれば、1つ又はそれ以上の賦形剤、界面活性剤及び/又は場合によって使用される成分の、例えば種類又は及び/又は量の選択は、製剤化されるべき治療的分子との化学的及び機能的適合性及び/又は投与様式並びに本分野において周知の他の化学的、機能的、生理的及び/又は医学的要素に基づいて行い得ることも当業者に理解される。例えば、先述のように、非還元糖は、還元糖と比べて、ポリペプチド治療薬とともに使用した場合に、好ましい賦形剤特性を示す。従って、本発明の製剤は、ポリペプチド治療薬に関して、さらに以下で例示されている。しかしながら、適用可能性の範囲、化学的及び物理的特性、ポリペプチド治療薬に対して適用される考慮事項及び方法は、ポリペプチド治療薬以外の治療的分子に対しても同様に適用できる。
【0102】
本発明の製剤中で使用するために適用可能なポリペプチドの典型的な種類には、例えば、ポリペプチドの免疫グロブリンスーパーファミリー、成長因子、サイトカイン、細胞シグナル伝達分子及びホルモンなどの治療的ポリペプチドの全ての種類が含まれる。本発明の製剤中での使用に適用可能な典型的ポリペプチドには、例えば、抗体及びその機能的断片、インターロイキン、G−CSF、GM−CSF、キナーゼ、TNF及びFhmを含むTNFRリガンド、サイクリン、エリスロポエチン、神経成長因子(NGF)、発達に応じて制御される神経成長因子VGF、栄養因子、栄養因子NNT−1、Eph受容体、Eph受容体リガンド;Eph様受容体、Eph様受容体リガンド、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、Thy−1特異的タンパク質、Hekリガンド(hek−L)、Elk受容体及びElk受容体リガンド、STAT、コラーゲナーゼ阻害剤、オステオプロテジェリン(OPG)、APRIL/G70、AGP−3/BLYS、BCMA、TACI、Her−2/neu、アポリポタンパク質ポリペプチド、インテグリン、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤、C3b/C4b補体受容体、SHC結合タンパク質、DKRポリペプチド、細胞外マトリックスポリペプチド、上記治療的ポリペプチドに対する抗体及びその抗体機能的断片、上記治療的ポリペプチドに対する受容体に対する抗体及びその抗体機能的断片、これらの機能的ポリペプチド断片、融合ポリペプチド、キメラポリペプチドなどの全ての治療的ポリペプチドが含まれる。
【0103】
本発明の製剤中での使用に適用可能な市販の医薬の具体例には、例えば、ENBREL(Etanercept;CHOによって発現される二量体融合タンパク質((Amgen,Inc.));EPOGEN(Epoetinα;哺乳動物細胞によって発現される糖タンパク質(Amgen,Inc.));INFERGEN(R)(インターフェロンアルファコン−1;イー・コリによって発現される組換えタンパク質(Amgen,Inc.));KINERET(R)(アナキンラ;イー・コリによって発現される、ヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)の組換え非グリコシル化形態(Amgen,Inc.));ARANESP(ダルベポエチンα;CHOによって発現された、組換えヒト造血刺激タンパク質(Amgen,Inc.));NEULASTA(ペグフィルグラスチム;組換えメチオニルヒトG−CSFと20kDPEGの共有連結体(Amgen,Inc.));NEUPOGEN(Filgrastim;イー・コリによって発現されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(Amgen,Inc.))及びSTEMGEN(Ancestim、幹細胞因子;イー・コリによって発現された組換えヒトタンパク質(Amgen,Inc.))が含まれる。これら及び全ての他の市販の医薬は、例えば、製造の時点で、使用の前に及び/又は短期若しくは長期保存の前に、本発明の製剤中に再調合することが可能である。
【0104】
抗体、特に、本発明の製剤中の治療的抗体としての使用に適用可能なEGFRに対して特異的な抗体の具体例には、例えば、パニツムマブ(Amgen,Inc.);セツキシマブ(ErbituxTm;Imclone Systems,New York City);IMC−11F8(Imclone Systems);Humax−EGFR(Genmab,Copenhagen,Denmark);マツズマブ(EMD−7200;Merck KGaA,Darmstadt,Germany)及びニモツズマブ(TheraCIM hR3;YM Biosciences,Mississauga,Ontario,Canada)が含まれる。上記抗体の全てが、本分野において周知である。例えば、パニツムマブはAmgenから市販されており、米国特許第6,235,883号に記載されているヒト抗EGFR抗体の主題である。IMC−11F8は米国特許第7,060,808号の主題であり、Humax−EGFRは米国特許公開第20030091561号及び20030194403号の主題である。
【0105】
治療的分子の範囲のさらなる例示によって、以下でさらに記載されている本発明の適用可能性は、本発明の製剤中での治療的ポリペプチドとして使用することができる抗体及びその機能的断片の典型的な種類である。先述されているように、抗体及びその機能的断片に対して適用可能な化学的及び物理的特性、製剤化の検討事項及び方法は、他のポリペプチド生物医薬を含む生物医薬に対しても同様に適用することができる。
【0106】
本発明のポリペプチドとして使用するための標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片は、様々な抗体形態の何れかで作製することが可能であり、及び/又は先述されている様々な様式の何れかで、それらの特異的標的結合活性を維持しながら改変若しくは修飾することが可能である。標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片のこのような抗体形態、改変又は修飾(これらの組み合わせを含む。)の何れもが、ポリペプチドとして、本発明の中に含まれる。本発明のポリペプチド又はその機能的断片として使用するための標的特異的モノクローナル抗体のこのような様々な抗体形態、改変又は修飾の何れもが、本明細書に記載されているように、本発明の方法、組成物及び/又は製品において同様に使用され得る。例えば、本発明の標的特異的モノクローナル抗体又はその機能的断片には、標的特異的な、移植化された、ヒト化された、Fd、Fv、FabF(ab)2、scFv及びペプチボディモノクローナル抗体並びに先述されている全ての他の形態、改変及び/又は修飾が含まれ、当業者に周知の他の形態が含まれる。
【0107】
ハイブリドーマを作製する方法及びハイブリドーマ技術を用いて標的特異的モノクローナル抗体をスクリーニングする方法は一般的なものであり、本分野において周知である。例えば、ポリペプチドなどの標的分子でマウスを免疫化することができ、一旦、免疫応答が検出されたら、例えば、標的分子に対して特異的な抗体がマウス血清中に検出されたら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次いで、周知の方法によって、何れかの適切な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞に、脾細胞を融合させる。限界希釈によって、ハイブリドーマを選択し、クローニングする。次いで、標的分子を結合することができる抗体を分泌する細胞に関して、本分野で公知の方法によって、ハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫化することによって、抗体の高いレベルを一般に含有する腹水液が生成され得る。
【0108】
さらに、標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、原核生物又は真核生物宿主中での組換え発現を使用することができる。単一の標的特異的モノクローナル抗体種又はその機能的断片を作製するために、組換え発現を使用することができる。あるいは、重鎖及び軽鎖又は可変重鎖及び可変軽鎖の組み合わせのの多様なライブラリーを作製するために、組換え発現を使用すること可能であり、次いで、標的分子への特異的結合活性を示すモノクローナル抗体又はその機能的断片に対してスクリーニングすることができる。例えば、重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はその機能的断片は、特異的モノクローナル抗体種を作製するために、本分野で周知の方法を用いて、標的特異的モノクローナル抗体をコードする核酸から同時発現させ得る。重鎖及び軽鎖、可変重鎖及び軽鎖ドメイン又はこれらの機能的断片をコードする核酸の同時発現された集団から、本分野で周知の方法を用いて、ライブラリーを作製し、標的特異的モノクローナル抗体の同定のために、標的分子への親和性結合によってスクリーニングすることができる。このような方法は、例えば、Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,上記;Huse et al.,Science246:1275−81(1989);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7978−82(1991);Kang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:4363−66(1991);Pluckthun and Skerra,上記;Felici et al.,J.Mol.Biol.222:301−310(1991);Lerner et al.,Science258:1313−14(1992)及び米国特許第5,427,908号に記載されているのを見出すことができる。
【0109】
コード核酸のクローニングは、当業者に周知の方法を用いて達成することができる。同様に、VH及び/又はVLコード核酸を含むコード核酸の重鎖及び/又は軽鎖レパートリーのクローニングも、当業者に周知の方法によって達成することができる。このような方法には、例えば、発現クローニング、相補的プローブを用いたハイブリッド形成スクリーニング、プライマーの相補対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は相補的プライマーを用いるリガーゼ連鎖反応(LCR)、逆転写酵素PCR(RT−PCR)などが含まれる。このような方法は、例えば、「Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,ThirdEd.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001)」及び「Ansubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)」中に記載されているのを見出すことができる。
【0110】
コード核酸は、National Institutes of Health(NIH)のNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって運営されているものなどの完全なゲノムデータベースを含む様々な公共的データベースの何れかから取得することも可能である。プライマーは入手可能であり、又は抗体の可変若しくは定常領域部分の保存された位置を用いて容易に設計できるので、重鎖及び/又は軽鎖又はこれらの機能的断片に対する単一のコード核酸又はコード核酸のレパートリーの何れかを単離する特に有用な方法は、コード領域部分の具体的な知識なしに達成することができる。例えば、コード核酸のレパートリーは、PCRと一緒にこのような領域に対する縮重プライマーの複数を用いてクローニングすることができる。このような方法は本分野において周知であり、例えば、Huse他、上記及び「Antibody Engineering:A Practical Guide,C.A.K.Borrebaeck,Ed.、上記」に記載されているのを見出すことができる。本発明のポリペプチドとして使用するための標的特異的モノクローナル抗体を作製するために、上記方法の何れも及び本分野で公知の他の方法(これらの組み合わせを含む。)を使用することができる。
【0111】
従って、本発明は、抗体、抗体の機能的断片を治療的ポリペプチドとして有する製剤を提供する。この製剤は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンも含むことができる。治療的ポリペプチドには、モノクローナル抗体、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ又はペプチボディが含まれ得る。
【0112】
本発明の製剤中に含めるべきポリペプチドの濃度は、例えば、ポリペプチドの活性、治療されるべき適応症、投与の様式、治療計画及び製剤が液体又は凍結保存された形態の何れかで長期保存が予定されているかどうかに応じて変動する。これらの周知の検討事項及び薬科学の技術水準が与えられれば、どの濃度を使用するかが当業者には明らかである。例えば、医学的適応症、投与の様式及び治療計画の幅広い範囲に対して、米国内での治療的使用に対して承認されている80超のポリペプチドが存在する。これらの承認されたポリペプチドは、本発明の製剤において使用することができるポリペプチド濃度の範囲の典型である。
【0113】
一般に、例えば、治療的ポリペプチドを含むポリペプチドは、約1から200mg/mL、約10から200mg/mL、約20から180mg/mL、特に約30から160mg/mL、より具体的には約40から120mg/mL、より具体的には約50から100mg/mL又は約60から80mg/mLの間の濃度で、本発明の製剤中に含められる。これらの範囲より下、上又はこれらの範囲の間のポリペプチド濃度及び/又は量も、本発明の製剤において使用することができる。例えば、約1.0mg/mL未満を占める1つ又はそれ以上のポリペプチドを製剤中に含めることができる。同様に、製剤は、特に保存用に製剤化される場合、約200mg/mLを上回る1つ又はそれ以上の濃度を含有することができる。従って、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190若しくは200mg/mL若しくはそれ以上などの、1つ又はそれ以上のポリペプチドの実質的にあらゆる所望の濃度又は量を含有する本発明の製剤を作製することが可能である。以下の実施例に例示されているのは、約10mg/mLの濃度を有する治療的ポリペプチドに対する製剤である。
【0114】
本発明の製剤は、製剤中のポリペプチドの組み合わせを含むこともできる。例えば、本発明の製剤は、1つ又はそれ以上の症状の治療用の単一のポリペプチドを含むことができる。本発明の製剤は、2つ又はそれ以上の異なるポリペプチドを含むこともできる。本発明の製剤中での複数のポリペプチドの使用は、例えば、同一又は別異の適応症に向けられ得る。同様に、例えば、病的状態及び一次的治療によって引き起こされた1つ又はそれ以上の副作用の両方を治療するために、本発明の製剤中で複数のポリペプチドを使用することができる。複数のポリペプチドは、例えば、病的状態の進行の同時治療及びモニタリングなどの様々な医学的目的を達成するために、本発明の製剤中に含めることもできる。一部又は全部の示唆される治療及び/又は診断に対して単一の製剤が十分であり得るので、上に例示されているもの及び本分野において周知の他の組み合わせなどの複数の同時療法は、患者の服薬遵守のために特に有用である。当業者は、組み合わせ療法の幅広い範囲のために混合できるポリペプチドを知悉する。同様に、本発明の製剤は、小分子医薬及び1つ又はそれ以上の小分子医薬との1つ又はそれ以上のポリペプチドの組み合わせとともに使用することも可能である。従って、本発明は、1、2、3、4、5若しくは6又はそれ以上の異なるポリペプチドを含有する本発明の製剤及び1つ又はそれ以上の小分子医薬と組み合わされた1つ又はそれ以上のポリペプチドを含有する本発明の製剤を提供する。
【0115】
本発明の製剤は、本分野で周知の1つ又はそれ以上の防腐剤及び/又は添加物を含むこともできる。同様に、本発明の製剤は、様々な公知の送達製剤の何れにもさらに製剤化することができる。例えば、本発明の製剤は、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルなどの防腐剤、甘味剤及び着香剤を含むことができる。このような場合によって使用される成分、それらの化学的及び機能的特徴は、本分野において周知である。投与後におけるポリペプチドの迅速な放出、持続的放出又は遅延した放出を促進する製剤も、同様に、本分野において周知である。本発明の製剤は、本分野で周知のこれらの又はその他の製剤成分を含むように作製することができる。
【0116】
本発明の製剤は、例えば、例えば水性液体以外の状態で作製することもできる。例えば、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含有する製剤を含む本発明の製剤は、凍結乾燥された製剤として調製することができる。凍結乾燥された製剤は、バルク剤又はケーキ剤及び非晶質の安定化剤を一般に含有する。
【0117】
一旦、本発明の製剤が本明細書中に記載されているとおりに調製されたら、製剤中に含有される1つ又はそれ以上のポリペプチドの安定性は、本分野で周知の方法を用いて評価することができる。このような方法の幾つかが実施例中で以下にさらに例示されており、サイズ排除クロマトグラフィー及び粒子の計数が含まれる。例えば、結合活性、他の生化学的活性及び/又は生理的活性を含む様々な機能的アッセイの何れも、本発明の緩衝化された製剤中でのポリペプチドの安定性を決定するために、2つ又はそれ以上の異なる時点で評価することができる。
【0118】
本発明の製剤は、一般に、医薬の標準に従って、及び医薬等級の試薬を用いて調製される。同様に、本発明の製剤は、一般に、無菌製造環境中で又は無菌化された以下の調製物中で無菌試薬を用いて調製される。無菌注射可能溶液は、例えば、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又は組み合わせとともに、本発明の酢酸、グルタミン酸若しくはコハク酸緩衝液又は賦形剤中に、必要とされる量の1つ又はそれ以上のポリペプチドを取り込ませた後に、滅菌精密ろ過を行うことなど、本分野で周知の操作を用いて調製することができる。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の具体的実施形態において、調製の特に有用な方法には、例えば、先述されているように、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)が含まれる。このような乾燥法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から、何れかのさらなる所望の成分と一緒に、1つ又はそれ以上のポリペプチドの粉末を与える。
【0119】
投与及び投薬治療計画は、最適な治療応答に対する有効量を与えるように調整することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができ、複数の分割された用量を経時的に投与することができ、又は、治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少若しくは増加させ得る。1つ又はそれ以上のポリペプチドの有効量を投与する上で、投与の容易さ及び投薬量の均一さのために、単位投薬形態での静脈内、非経口又は皮下注射用の本発明の製剤を製剤化することが特に有用であり得る。単位投薬とは、治療されるべき対象に対する単一投薬として適合された医薬の物理的に分離された量を表し、各単位は、所望される治療効果を生じるように計算された活性ポリペプチドの所定量を含有する。
【0120】
さらなる例示のために、治療用抗体、特にパニツムマブなどのポリペプチドの有効量は、例えば、ある期間にわたって、計画された間隔を置いて、2回以上投与することができる。ある種の実施形態において、治療用抗体は、少なくとも一ヶ月又はそれ以上の期間にわたって、例えば一ヶ月、二ヶ月若しくは三ヶ月又はそれ以上にわたって投与される。慢性症状の治療に関しては、長期の持続的治療が一般に最も効果的である。例えば1週から6週を含む急性症状を治療する場合には、投与のより短い期間が十分であり得る。一般に、選択された一又は複数の指標に関して、患者がベースラインを上回る改善の医学的に妥当な程度を呈するまで、治療用抗体又は他のポリペプチドが投与される。
【0121】
選択されたポリペプチド及び治療されるべき適応症に応じて、治療的有効寮は、標的とされる病的状態の少なくとも1つの症候を、治療されていない対象と比べて、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%若しくは60%又はそれ以上低下させるのに十分である。症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、ヒトにおいて標的とされる症状に対する効力を予測する動物モデル系で評価することができる。あるいは、症候を抑制又は阻害する製剤の能力は、例えば、インビボでの治療活性の指標となる製剤のインビトロ機能又は活性を調べることによって評価することができる。
【0122】
本発明の製剤中の1つ又はそれ以上のポリペプチドの実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、製剤及び投与様式に対する所望の治療的応答を達成するのに有効である活性ポリペプチドの量を得るために変動させることができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症候の重度並びに選択されたポリペプチド及び/又は投与経路などの因子に基づいて、投与される量を測定することができる。選択された投薬量レベルは、例えば、使用されるポリペプチドの活性、投与の経路、投与の時間、排泄の速度、治療の期間、使用される具体的な組成物と組み合わされて使用される他の薬物、化合物及び/又は物質、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び以前の病歴並びに医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存し得る。本発明の特定の実施形態は、1日当り対象のkg体重当り抗体約1ng(「1ng/kg/日」)から約10mg/kg/日、より具体的には、約500ng/kg/日から約5mg/kg/日、より具体的には約5μg/kg/日から約2mg/kg/日の投薬量で、本発明の製剤中の抗体又はその機能的断片などの治療用ポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0123】
本分野の技術を有する医師又は獣医師は、必要とされる医薬製剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、望ましい治療効果を達成するために必要とされるレベルより低いレベルで本発明の製剤の投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。一般に、本発明の製剤の適切な一日投薬量は、治療効果をもたらすのに効果的な最低用量であるポリペプチドの量である。このような有効量は、一般に、先述されている要因に依存する。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であることが特に有用である。所望であれば、製剤の有効量を達成するための有効一日用量は、場合により単位投薬量で、一日を通じて、適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6又はそれ以上の副投薬として投与することができる。
【0124】
本発明の製剤は、例えば、本分野で公知の医療用具を用いて投与することができる。例えば、特に有用な実施形態において、本発明の製剤は、米国特許第5,399,163号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,064,413号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,790,824号;又は米国特許第4,596,556号に記載されている用具など、無針皮下注射装置を用いて投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で医薬を分配するためのインプラント可能な微少注入ポンプを記載する米国特許第4,487,603号;皮膚を通じて医薬を投与するための治療用具を記載する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを記載する米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための変動流量インプラント可能注入装置を記載する米国特許第4,447.224号;マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,439,196号及び浸透圧薬物送達システムを記載する米国特許第4,475,196号が含まれる。このような他の多くのインプラント、送達システム及びモジュールは、当業者に公知である。
【0125】
ある種の特定の実施形態において、本発明の製剤において使用するためのポリペプチドは、インビボでの選択的な分布を促進するようにさらに製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。血液脳関門の通過を促進するために、所望であれば、製剤は、例えば、1つ又はそれ以上のポリペプチドをカプセル封入するためのリポソームをさらに含むことができる。リポソームを製造する方法に関しては、例えば、米国特許第4,522,811号;米国特許第5,374,548号及び米国特許第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器中に選択的に輸送され、従って、選択されたポリペプチドの標的誘導された送達を強化する1つ又はそれ以上の部分をさらに含有し得る(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照)。典型的な標的誘導部分には、フォラート又はビオチン(例えば、Low他に対する米国特許第5,416,016号);マンノシド(Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloeman et al.(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.(1995)Antimicrob.AgentsChemother.39:180)又は界面活性プロテインA受容体(Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134)が含まれる。
【0126】
従って、本発明は、製剤を調製する方法をさらに提供する。この方法は、約4.0から約7.0までのpHを有する緩衝液及び糖又はポリオールから選択される賦形剤を有する水溶液を、例えば、EGFR特異的抗体を含む治療用ポリペプチドの有効量と組み合わせることを含む。この方法は、5から200mMの間の濃度及び/又は6.0未満のpHで製剤化された1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含むこともできる。緩衝成分は、酢酸、グルタミン酸、コハク酸若しくはプロピオン酸又はこれらの塩を含み得る。EGFR特異的抗体は、例えば、パニツムマブであり得る。本発明の製剤の幅広い範囲を作製するために、本明細書に記載されている製剤成分の1つ又はそれ以上を、ポリペプチドの1つ又はそれ以上の有効量と組み合わせることができる。
【0127】
本発明は、ポリペプチドを安定化させる方法をさらに提供する。この方法は、6.0未満のpHを有する緩衝液中の約5から150mMの間の二価陽イオンの濃度及び糖又はポリオールを含む賦形剤と治療用ポリペプチドを接触させることを含む。
【0128】
異性化及びイソアスパラギン酸形成の割合又は程度を低下させることにより、そのペプチドの安定性を維持又は強化させるために、1つ若しくはそれ以上の二価陽イオン又はその塩形態を、Asp又はAsnを含有するポリペプチドに添加することができる。Asp含有又はAsn含有ポリペプチドを安定化させるために有用な1つ若しくはそれ以上の二価陽イオン又はその塩形態には、先に例示された全て並びに本分野において公知の他の二価陽イオンが含まれる。同様に、前記製剤及び本発明の製剤を調製する方法のように、Asp又はAsnの異性化の割合又は程度を低下させるために、二価陽イオンの組み合わせを含めることもできる。例えば、例えばCa+2、Zn+2、Mn+2及び/又はMg+2の2つ、3つ又はそれ以上の組み合わせは、Asp含有ポリペプチド、Asn含有ポリペプチド、Asp及びAsn含有ポリペプチド、又はイソアスパラギン酸形成に対してポリペプチドを感受性にする前記モチーフ若しくは構造の何れかを含有するポリペプチドを安定化させるため使用することができる。約5から200mMの間の濃度において、1つ又はそれ以上の二価陽イオンを含めることは、Asp又はAsnの異性化を抑制し又は遅らせる。他の有用な二価陽イオン濃度には、先に例示された濃度が含まれる。先に記載され又は本明細書中に例示されている構成要素、成分又はpH値の何れかの組み合わせを含有する製剤中のポリペプチドを、約5から200mM間の1つ又はそれ以上の二価陽イオンと接触させることにより、ポリペプチドを安定化させる方法において、同様に、1つ又はそれ以上の二価陽イオンを使用することが可能である。
【0129】
約4.0から約7.0のpHを有する、約1から10mMの間の酢酸、グルタミン酸、コハク酸又は他の緩衝液、約1から10%の間のグリセロール又はソルビトール、約0.001から0.010%の間のポリソルベート80及び例えば、EGFR特異的抗体又はパニツムマブなどの治療用抗体の有効量を有する水溶液を含む製剤を含有する容器がさらに提供される。容器は、上記成分及び5から200mMの間の濃度で及び/又は6.0未満のpHになるように調合された1つ又はそれ以上の二価の陽イオンを含有する製剤も含むことができる。簡潔に述べれば、本発明の組成物、キット及び/又は医薬に関して、本発明の製剤中の1つ又はそれ以上のポリペプチドの組み合わされた有効量は、単一の容器若しくは容器手段の中に含めることができ、又は異なる容器若しくは容器手段の中に含めることができる。画像化成分を場合によって含めることが可能であり、パッケージは製剤を使用するための指示文書又はインタネットにアクセス可能な指示を含むこともできる。容器又は容器手段は、例えば、容器、瓶、注射器又は複数分配パッケージングのための本分野で周知の様々な規格の何れをも含む。
【0130】
本発明の様々な実施形態の作用に対して実質的に影響を与えない修飾も、本明細書に提供されている本発明の定義内に含まれることが理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例示することを目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【0131】
本発明の様々な実施形態の作用に対して実質的に影響を与えない修飾も、本明細書に提供されている本発明の定義内に含まれることが理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例示することを目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0132】
緩衝化された溶液中でのポリペプチド安定性の特徴
この実施例は、パニツムマブの安定性に対する様々な製剤の特徴を記載する。パニツムマブのバルク調製物の長期安定性に対する様々な製剤の特徴も記載する。
【0133】
モノクローナルIgG2抗体パニツムマブを安定化する様々な製剤条件が、以下に記載されている。これらの製剤条件は、治療用ポリペプチドの投与のために適用可能な製剤条件及び治療用ポリペプチドの保存、維持及びロットの調製のために適用可能な製造条件が含まれる。以下に例示されている本発明の製剤条件は、凝集、化学的分解及び粒子形成に対して特に有用なパニツムマブの安定性を付与する。これらの条件は、粒子形成を抑制する上で特に効果的であることが示され、これにより、静脈内投与のためのライン中フィルターに対する必要性を一切なくすことができる。
【0134】
簡潔に述べれば、パニツムマブは約5.0から7.0の範囲のpHにおいて安定であることが見出された。凝集及び粒子形成に関して、最適な安定性は5.0のpHで観察された。
【0135】
5.0のpHを有する製剤は、最も清澄な(すなわち、最も透明な)液体溶液(より少ない凝集を示す。)でもあった。特に有用な緩衝系は、酢酸、L−グルタミン酸及びコハク酸を含んでいた。これらの緩衝系の3つ全ては、約5.0のpH(例えば、約4.8から約5.2)の付近で良好に機能した。これらの緩衝系のうち、L−グルタミン酸は、パニツムマブの安定性に関して、酢酸と同等に効果的であり、又は酢酸より効果的であることが観察された。パニツムマブに対して特に有用な賦形剤には、グリセロール、スクロース、トレハロース及びソルビトールが含まれた。全て、凝集及び/又は粒子形成に関して、効果的な安定化特性を示した。最適な賦形剤には、グリセロール及びスクロースが含まれた。
【0136】
以下に示されている結果は、パニツムマブの安定性を維持し、増強し、又は最適化する様々な製剤を示している。ある種の特定の製剤において、パニツムマブに対する特に有用な液体製剤は、10mM酢酸、2.6%グリセロール、0.004%ポリソルベート80、pH5.0及び10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロール、0.004%ポリソルベート80、pH5.0を含んだ。他の特定の製剤において、例えば、凍結保存、維持及び/又はバルク物質調製などのロット調製のための特に有用な長期製剤は、パニツムマブ製剤が−30℃又はそれ以下に維持される場合、10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0及び10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロール、pH5.0を含んだ。さらに、グリセロール、スクロース及びトレハロースは、凍結融解によって誘導された凝集及び粒子形成からパニツムマブを保護する特に有用な賦形剤であることが見出された。
【0137】
本明細書に記載されている研究は、パニツムマブの安定性の保持を増強する製剤の性質決定及び選択に向けられた。予備的分析に基づいて、パニツムマブに対する安定な液体製剤及び凍結製剤を特定するために、3つの緩衝系を選択した。これらの緩衝系は、酢酸、グルタミン酸及びコハク酸であった。これらの緩衝液から得られた製剤の特徴が、以下に例示されている。
【0138】
1つの最初の特徴は、様々な酢酸緩衝製剤中におけるパニツムマブの視覚的外観であった。簡潔に述べれば、以下に列記されている7つの製剤を異なるpH値で評価した。
【0139】
1.pH5.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.0
2.pH5.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.5
3.pH6.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.0
4.pH6.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.5
5.pH7.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.0
6.pH7.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.5
7.A58N:20mg/mLパニツムマブ、50mMアセタート、100mMNaCl、pH5.8(対照)
【0140】
5.0から7.5の範囲の上記pH値で製剤化されたパニツムマブの視覚的外観を示している。結果は、より低いpH値で、タンパク質溶液がより清澄で、より透明であることを示していた。比較すると、製剤は、より高いpH値において、より濁った状態となった。
【0141】
異なるpH条件下でのパニツムマブの安定性を特定するために、加速安定性試験を行った。簡潔に述べれば、加速安定性試験は、ガラス容器中で、特定のpH、例えば、37℃で行った。検査されるべき、及び無菌容器中へ無菌ろ過されるべきそれぞれの製剤中に、試料を透析した。それぞれの調合された試料の約2mLの量を、無菌フード中で無菌の3mLガラス容器中に配置し、栓をした。凍結と表記された試料を、無菌のポリプロピレンエッペンドルフチューブの中に入れた。全ての容器にラベルを付け、圧着を行った後、−80℃、2から8℃及び37℃の条件での保存のために、指定された箱の中に配置した。表記の時点で、試料を取り出し、分析した。分析法の1つとして、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用した。100mMリン酸(pH7)、150mMNaClからなる移動相を用いた分析を実施するために、直列のTosoHaasG3000SWx1二重カラムを使用した。
【0142】
試料の異なる形態は、それらの水力学的容積に基づいて、定量的に評価し、分離することができる。典型的な結果が図1に示されており、最長2ヶ月間、37℃で保存されたパニツムマブのパーセント単量体を示している。より高いpH条件では、より高い単量体の喪失が観察された。各時点で図1に例示されている製剤は、視覚的外観に関して上で研究されている製剤と同じであり、図中に以下のように標識される。
【0143】
1.EGF 20pH5.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.0
2.EGF 20pH5.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.5
3.EGF 20pH6.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.0
4.EGF 20pH6.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.5
5.EGF 20pH7.0:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.0
6.EGF 20pH7.5:20mg/mLパニツムマブ、5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.5
7.EGF 20pHA58N:20mg/mLパニツムマブ、50mMアセタート、100mMNaCl、pH5.8(対照)
【0144】
最長2ヶ月間保存された上記試料に対する陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって、上記7つのタンパク質溶液の電荷変動の変化も測定した。簡潔に述べれば、パニツムマブは、本分野において公知の陽イオン交換操作を用いて評価した。この方法は、pH6.2での線形塩勾配を用いるタンパク質表面電荷の差及びDionex弱陽イオン交換カラム(WCX−10;Sunnyvale,CA)及び脱アミド化によって代表される幾つかのアミノ酸の酸性修飾に基づいて、主要なC末端リジンイソフォームを分離した。
【0145】
異なるpH条件を有し、37℃で最長2ヶ月間保存された上記7つの製剤に対するCEXデータが、図2に示されている(例えば、EGF 20pH5.0−7.5及びA58N)。結果は、酸性pH(5.0及び5.5)において、酸変形物(ピーク0によって表され、脱アミド化産物を示す。)のパーセントが最低であることを示している。
【0146】
モノクローナル抗体及び他のポリペプチドに関連する1つの特徴は、肉眼で観察できない不溶性粒子の出現である。この点に関して、ポリペプチド粒子は、例えば、ポリペプチドの断片又は凝集物を表し、可溶性及び/又は不溶性であり得る。さらに、粒子は、外来物質(すなわち、ガラスの破片、糸くず、ゴム栓の小片の)から構成されることも可能であり、必ずしもポリペプチドから構成されない。可溶性凝集物/粒子は、例えば、SECなどの方法を用いて評価することができる。不溶性である粒子は、液体粒子の計数又は例えば、HIACなどの光掩蔽アプローチなどの方法を用いて評価することができる。粗い粒子は、1.0μmより大きなサイズを有する粒子として一般に分類され、微細な粒子と考えられる粒子のサイズはこれより小さい。HIAC装置(Geneva,Switzerland)を備えたLD−400レーザーシステムを用いて、2と400μmの間の粒子サイズを測定することができる。
【0147】
液体粒子計数を用いて、異なるpH条件を評価する7つの上記典型的な製剤に対して、不溶性粒子の形成を評価した。参照のために、図3に表記されているこれらの製剤は、以下のとおりであった。
【0148】
1.pH5.0:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.0中の20mg/mLパニツムマブ
2.pH5.5:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH5.5中の20mg/mLパニツムマブ
3.pH6.0:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.0中の20mg/mLパニツムマブ
4.pH6.5:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH6.5中の20mg/mLパニツムマブ
5.pH7.0:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.0中の20mg/mLパニツムマブ
6.pH7.5:5mMアセタート、5mMホスファート、5%ソルビトール、pH7.5中の20mg/mLパニツムマブ
7.A58N:50mMアセタート、100mMNaCl、pH5.8(対照)中の20mg/mLパニツムマブ
【0149】
HIAC粒子カウンター装置には、所定のEmab試料中に存在する10μm及び25μm粒子を測定するために必要とされるPharmSpecソフトウェアバージョン1.4が搭載された。使用した方法は、粒子評価及び品質の米国薬局方の要件に準拠する操作に従った。1.0mL容量を用い、ステンレス鋼チューブを通じて、ろ過された水(0.22ミクロン)を引き込み、試料測定の間に、約10回流した。装置の適切な較正を確認するために、DukescientificEZY−CAL液体粒子10μmサイズ標準を使用した。試料及び標準の測定の何れも、0.2mLの容量が採取され、4回吸引し、最初の実行を廃棄し、最後の2つ又は3つを平均した。溶液の均一な混合を確保するために、測定前に、各試料に対して僅かな渦を与えながら、試料を元の容器から吸引した。測定前に、標準を激しく振盪した。
【0150】
4℃で15分間、渦巻き撹拌した後における、様々なpHで調合されたパニツムマブのHIAC粒子計数の結果が、図3に示されている。5μmから25μmのサイズ範囲の粒子を計数した。結果は、5.0から7.0のpHで調合された全ての試料がpH7.5で調合されたものより低い粒子数を示すことを示している。塩化ナトリウムを含有する緩衝液中で調合された粒子数(A58N)は、ソルビトール緩衝液中で調合された粒子数より著しく高かった。
【0151】
上記典型的な結果に基づいて、以下に記載されているようなさらなる製剤の性質決定のために、5.0のpHを選択した。
【0152】
酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液又はグルタミン酸緩衝液中で調合され、その後、最長4ヶ月間、37℃で保存したパニツムマブの安定性を評価するために、サイズ排除クロマトグラフィーを上述されているようにして使用した。製剤は、以下に記載されている。
【0153】
1.A 2.6%グリセロール pH5 T80:10mM酢酸、2.6%グリセロールpH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
2.コハク酸 2.6%グリセロール pH5 T80:10mMコハク酸、2.6%グリセロール、pH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
3.グルタミン酸 2.6%グリセロール pH5 T80:10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロール、pH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
【0154】
本研究の結果は、図4に示されている。簡潔に述べると、全ての緩衝系に対して、同様の単量体含量が観察された。コハク酸を含有する製剤は若干低い単量体含量を示し、グルタミン酸含有製剤は、37℃で4ヶ月の保存後に、最も多い単量体の量を示した。
【0155】
上に及び図4に示されているpH5.0の、3つの酢酸、グルタミン酸又はコハク酸緩衝液のうちの何れかにおけるパニツムマブ製剤の安定性も、以下に記載されているように、より長期間にわたって、及び異なる温度に対しても評価した(例えば、A 2.6%グリセロール pH5 T80、Succ2.6%グリセロール pH5 T80及びGluta 2.6グリセロール pH5 T80)。簡潔に述べれば、最長6ヶ月間の29℃での温置後に、これらの緩衝系中でのパニツムマブの安定性を評価するために、先述されているような陽イオン交換クロマトグラフィーを使用した。
【0156】
結果は図5に示されており、全ての製剤において、酸変形物(ピーク0によって表され、脱アミド化産物を示す。)のパーセントが同等であることを示している。グルタミン酸緩衝系を用いると、最小限の変形物の形成が観察された。
【0157】
酢酸、グルタミン酸又はコハク酸の何れかにおけるパニツムマブの粒子形成も、先述されているようなHIAC粒子分析を用いて評価した。簡潔に述べれば、以下に記載されているようにパニツムマブを製剤化し、6ヶ月間4℃で温置した。
【0158】
1.Ace2.6グリセロールT80pH5.0:10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
2.Succ2.6グリセロールT80pH5.0:10mMコハク酸、2.6%グリセロールpH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
3.Gluta2.6グリセロールT80pH5.0:10mML−グルタミン酸、2.6%グリセロールpH5.0、0.004%Tween80中の20mg/mLパニツムマブ。
【0159】
結果が図6に示されており、全ての製剤において許容可能な粒子数を示している。米国薬局方の指針によって判断すると、10μm超及び25μm超の粒子は極めて少なかったが、酢酸緩衝液中における2μm超のサイズの粒子数は、グルタミン酸又はコハク酸緩衝液中のものより高いことが観察された。
【0160】
図8は、異なる賦形剤を含有する様々な等張製剤のSECHPLCによって測定された単量体含量を示している。SECHPLCは、前述のように行った。性質決定された異なる賦形剤には、ソルビトール(S)、グリセロール(GLY)、アルギニン(ARG)、スクロース(SUC)及びポリソルベート80(T80)が含まれた。4℃で最長2年間保存された試料に対する、完全な製剤が以下に示されている。結果は、ソルビトール、グリセロール、スクロース及びポリソルベート80中において、パニツムマブが安定であることを示す。アルギニン(argine)に関しては、より低い安定性が観察された。
【0161】
【表2】
【0162】
図8は、先述されているようなHIAC法を用いて、10μm超の粒子サイズに対する異なる賦形剤を有する上記10の製剤に対する粒子数測定を示している。図8に対する製剤及び鍵は、図7に対して上に示されているものと同じであるが、GLY5及び2.6GLY5並びにGLY5T及び2.6GLY5T80は、それぞれ、図7及び8の間で同じ緩衝液を表す。結果は、4℃で1年間保存された時に、ポリソルベートの存在下又は不存在下の何れかで、ソルビトール、グリセロール、スクロース及び塩を含有する様々な製剤中で、パニツムマブが安定であることを示している。
【0163】
上記製剤の他に、多数のさらなる成分及び製剤が、長期保存条件下で、及び凍結融解サイクルに関して、パニツムマブの安定性に対して性質決定された。これらの特徴は、以下でさらに記載されている。全てのアッセイ法は、先述のように行った。
【0164】
簡潔に述べれば、図9は、5.0から7.0の範囲のpHで、様々な製剤中において、SE−HPLCによって分析されたパニツムマブの単量体百分率を示している。各製剤に対して、以下に記載されているように、異なる賦形剤を含めた。−30℃で最長3ヶ月間、パニツムマブ試料を保存した。凍結された製剤又は凍結された薬物物質又はバルク物質溶液の開発に関連して、これらの製剤を研究した。
【0165】
1.EGF p5グリセロール2.6:10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
2.EGF p5グリセロール10:10mM酢酸、10%グリセロール、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
3.EGF p5suc9.3:10mM酢酸、9.3%スクロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
4.EGF p5suc20:10mM酢酸、20%スクロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
5.EGF p5tre9.3:10mM酢酸、9.3%トレハロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
6.EGF p5tre20:10mM酢酸、20%トレハロース、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
7.EGF p5arg2.5:10mM酢酸、2.5%アルギニン、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
8.EGF p5arg10:10mM酢酸、10%アルギニン、pH5.0中の40mg/mLパニツムマブ。
9.EGF p6グリセロール2.6:10mMリン酸カリウム、2.6%グリセロール、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
10.EGF p6グリセロール10:10mMリン酸カリウム、10%グリセロール、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
11.EGF p6suc9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%グリセロール、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
12.EGF p6suc20:10mMリン酸カリウム、20%スクロース、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
13.EGF p6tre9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%トレハロース、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
14.EGF p6tre20:10mMリン酸カリウム、20%トレハロースpH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
15.EGF p6arg2.5:10mMリン酸カリウム、2.5%アルギニン、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
16.EGF p6arg10:10mMリン酸カリウム、10%アルギニン、pH6.0中の40mg/mLパニツムマブ。
17.EGF p7グリセロール2.6:10mMリン酸カリウム、2.6%グリセロール、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
18.EGF p7グリセロール10:10mMリン酸カリウム、10%グリセロール、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
19.EGF p7suc9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%スクロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
20.EGF p7suc20:10mMリン酸カリウム、20%スクロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
21.EGF p7tre9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%トレハロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
22.EGF p7tre20:10mMリン酸カリウム、20%トレハロース、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
23.EGF p7arg2.5:10mMリン酸カリウム、2.5%アルギニン、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
24.EGF p7arg10:10mMリン酸カリウム、10%アルギニン、pH7.0中の40mg/mLパニツムマブ。
25.EGF A58N:50mM酢酸、100mM塩化ナトリウム、pH5.8(対照)
26.EGF A5S:10mM酢酸、5%ソルビトール、pH5.0(対照)
27.EGF H58Suc:50mMヒスチジン、1%スクロース、pH5.8(対照)
【0166】
図10は、pH(5から6)及び酢酸又はリン酸緩衝液中の様々な安定化剤の関数として、SE−HPLCによって分析されたパニツムマブのパーセント単量体を示している。結果は、パニツムマブが−30℃で最長1年間保存された場合に、単量体含量が著しく変化しないことを示している。以下の製剤を性質決定した。
【0167】
1.EGF p5gly2.6:10mM酢酸、2.6%グリセロール、pH5.0
2.EGF p5gly10:10mM酢酸、10%グリセロール、pH5.0
3.EGF p5suc9:10mM酢酸、9.3%スクロース、pH5.0
4.EGF p5suc20:10mM酢酸、20%スクロースpH5.0
5.EGF p5arg2.5:10mM酢酸、2.5%アルギニンpH5.0
6.EGF p5A5S:10mM酢酸、5%ソルビトールpH5.0
7.EGF p55gly2.6:10mM酢酸、2.6%グリセロールpH5.5
8.EGF p55gly10:10mM酢酸、10%グリセロールpH5.5
9.EGF p55suc9.3:10mM酢酸、9.3%スクロースpH5.5
10.EGF p55suc20:10mM酢酸、20%スクロースpH5.5
11.EGF p55arg2.5:10mM酢酸、2.5%アルギニンpH5.5
12.EGF p55A5S:10mM酢酸、5%ソルビトールpH5.5
13.EGF p6gly2.6:10mMリン酸カリウム、2.6%グリセロールpH6.0
14.EGF p6gly10:10mMリン酸カリウム、10%グリセロールpH6.0
15.EGF p6suc9.3:10mMリン酸カリウム、9.3%スクロースpH6.0
16.EGF p6suc20:10mMリン酸カリウム、20%スクロースpH6.0
17.EGF p6arg2.5:10mMリン酸カリウム、2.5%アルギニンpH6.0
18.EGF p6A5S:10mMリン酸カリウム、5%ソルビトールpH6.0
【0168】
図11は、SE−HPLCによって分析されたパニツムマブの単量体のパーセントを示している。この性質決定のために、40mg/mLでパニツムマブを含め、以下に列記されている様々な製剤中に、最長1年間、−30℃で保存した。
【0169】
【表3】
【0170】
結果は、12ヶ月間より長く、−30℃で保存しても、上記製剤の何れの間にも有意な差をもたらさなかったことを示している。本研究では、図11に示されているように、ステンレス鋼容器(S)中での保存の効果をポリプロピレン(P)瓶中での保存とも比較した。これら2つの容器の間には観察可能な差は測定できなかった。
【0171】
図12は、図11に対して上記されている製剤中でのパニツムマブの粒子形成に対する、−30℃での凍結/融解サイクル及び保存の効果を示している。性質決定された製剤が、以下に記載されている。結果は、研究された製剤のそれぞれに関して、許容可能な粒子数を示している。
【実施例2】
【0172】
イソアスパラギン酸形成を低下させる安定な液体製剤
本実施例は、液体製剤中のパニツムマブの安定性を増加させるための、二価陽イオンの塩化カルシウム(CaCl2)の使用を記載する。
【0173】
抗EGFR抗体パニツムマブのCDR3中のアスパラギン酸残基は柔軟で、溶媒露出されたβターン中にあり、アスパラギン酸異性化の二価陽イオンの阻害を実証するための例示的なポリペプチドとして使用した。このアスパラギン酸残基は他の二次構造とのネットワーク中には存在せず、溶媒及び二価金属イオンとの相互作用のために利用可能であると思われる。更に下記に記載されているように、ポリペプチド製剤中にCaCl2などの二価金属を含めることは、スクシンイミド中間体の速度論を遅らせ、ポリペプチド構造を安定化させた。ポリペプチドの安定性に対する、二価陽イオンのあらゆる効果を評価するため使用される基本製剤は、10mM酢酸ナトリウム、2.6%グリセロール、0.004%ポリソルベート80、20mg/mLポリペプチドにてpH5.0及び以下に示されているような二価陽イオンの変動する量(例えば、0、25、50、75、100、150mM)であった。
【0174】
イソアスパラギン酸分解のレベルに対する二価陽イオンの効果を評価するために、抗EGFR抗体パニツムマブをCaCl2の様々な濃度の中で熟成した。軽鎖のイソアスパラギン酸92の分解は、還元及びアルキル化された抗体の逆相(RP)HPLC/UVによって定量化された。
【0175】
パニツムマブ、抗EGFRIgG2κモノクローナル抗体は、本分野で周知の標準的な手順に従って、産生及び精製された。前記抗体は、29℃及び37℃の両温度にて、最長3ヶ月間にわたり、CaCl2の0から150mM濃度を含有するpH5.0の緩衝液中で熟成した。
【0176】
更なる分析的性質決定のための遊離の重鎖及び軽鎖を産生するために、温置後、変性条件下において、抗体を用いて、還元及びアルキル化を実施した。簡潔に述べると、抗体を7.5M塩酸グアニジン(カタログ番号7716、Mallinckrodt、Phillpsburg,NJ、USA)、0.1Mトリス−HCl(カタログ番号93363、Sigma、St.Louis,MO、USA)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA、カタログ番号6281−92−6、Sigma)を含む緩衝液pH7.5で、2mg/mLまで希釈して、0.5mLの容量にした。5mMDTT濃度を得るために、0.5Mジチオトレイトール(DTT、カタログ番号D5545、Sigma)の原溶液の分取試料5mLを添加し、反応混合物を37℃に30分間配置した。
【0177】
次いで、ポリペプチド溶液を室温に冷却し、0.5Mヨードアセトアミド(IAM、カタログ番号111149、Sigma)原液の分取試料13μLを添加して、13mMIAMに達した。光から保護しながら、アルキル化は室温で40分間実行した。タンパク質の1mg/mLの最終濃度になるように、還元及びアルキル化されたタンパク質の緩衝液0.5mLを、10mM酢酸ナトリウム(カタログ番号9526−03、J.T.Baker、Philipsburg,NJ、USA)溶液1mL、pH5.0と交換した。緩衝液交換は、製造者の指示に従って、SephadexG26溶媒(Amersham Pharmacia Biotech,Orasay,France)が充填されたNAP−5ゲル濾過カラムを使用して行った。
【0178】
還元及びアルキル化に続いて、RPHPLC/UVクロマトグラフィーを行った。pH5.0の緩衝液中における抗体の還元及びアルキル化は、上記のとおりに行った。還元及びアルキル化された抗体の逆相HPLC/MSは、UV検出器、自動サンプラー、NanoFlowセル及び温度制御されたカラムコンパートメント(Aglent、Palo Alto,CA、USA)が装備されたAgilent1100CapillaryHPLCシステムにおいて実行した。移動相は、溶媒A中の0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(TFA、J.T.Baker、Phillipsburg,NJ、USA)、及び溶媒B中の80%N−プロパノール(Burdick&Jackson,Muskegon,MI、USA)、10%アセトニトリル(ACN;J.T.Baker)、0.1%TFAを加えた9.9%水が含まれた。3.5μm粒径、300Å孔径、50×1mmを有するAgilentZorbaxSB300CNカラムを、HPLC/MS分析のために使用した。前記カラムを75℃及び50μL/分の流速で操作した。UV検出器によってカラム溶出液を分析し、次いでオンライン質量分析計に誘導した。1mL/分にて、150×4.6mm形式のAorbaxカラムの同じタイプは、UV検出器のみに対して使用した。軽鎖及び重鎖並びにそれらの変異体の分離のために、Bを18%から26%に増大する線形勾配を利用した。
【0179】
図14の逆相クロマトグラムには、上記分解分析の結果が示されている。青色は、−70℃で凍結させた対照試料である。残りのクロマトグラフの軌跡は、1ヶ月(赤色)、2ヶ月(緑色)、3ヶ月(薄紫色)及び4ヶ月(茶色)の間、37℃で熟成させた試料から得たものである。分解は、時間とともに増加する軽鎖の異性化(IsoLC)、及び時間とともに減少する重鎖のN末端におけるピログルタミン酸(pE−HC)の形成として同定された。LCは、抗体の軽鎖ピークに対応するのに対して、Q−HCは抗体の重鎖ピークに対応する。
【0180】
位置92におけるイソアスパラギン酸の異性化された軽鎖のパーセント間の相互も、CaCl2の様々な濃度を有する溶液中で、pH5.0、37℃にて、温置時間の関数として評価した。パニツムマブの軽鎖のCDR3領域中のアスパラギン酸92の異性化を阻害するために、CaCl2の様々な濃度を熟成溶液に導入した。IsoLCの形成は上記のように評価した。
【0181】
上記の分解時間経過の結果が図15に示されており、37℃で3ヶ月間、150mMCaCl2を含有する熟成された試料が、10%のIsoLCの減少を有することを明らかにした。カルシウムイオンなしのこれらの条件下で温置することにより、喪失は19%まで増大した(図16Cを参照のこと)。これらの結果は、pH5.0で、CaCl2の存在下において、抗体の安定性及びアスパラギン酸残基92の異性化による効力の喪失が顕著に遅れることを示している。
【0182】
図16AからCは、pH5.0において、CaCl2の様々な濃度を有する溶液中の温置時間、続いて様々な温度での温置の関数として、IsoLC形成のパーセント間の相関を評価する更なる分解時間経過である。上記に記載されているとおり、アスパラギン酸92の異性化を阻害するために、CaCl2の様々な濃度を成熟溶液中に導入し、試料を4℃、29℃又は37℃の何れかで、最長3ヶ月間温置した。結果は、より高い温度において、試料に直接添加されたCaCl2の量の添加が、IsoLC形成の喪失と相関し、ポリペプチドの安定性を強化させることを示している。
【0183】
抗体活性のあらゆる効果を評価するために、CaCl2の変動する濃度の存在下における抗体の効力の細胞増殖アッセイを実行した。簡潔に述べれば、完全長ヒトEGFRを発現させるために、マウスのインターロイキン(mIL−3)依存性細胞株32Dクローン3(ATCCCRL−11346)を修飾した。細胞は、GlutaMAXTM及びHEPES(Invitrogen)、10%熱不活化ウシ胎児血清(HyClone)、ジェネテシン(Invitrogen)及び5ng/mLの組換えmIL−3(Amgen)を用いたRPMI1640中で増殖させた。アッセイ培地は、GlutaMAXTM及びHEPES及び10%熱不活化ウシ胎児血清が補充されたRPMI1640であった。アッセイのために、リン酸塩緩衝化食塩水で細胞を洗浄し、Falcon96ウェルの透明プレートへ、20,000細胞/ウェルにて分配した。0.85ng/mLのEGF、対照及び変動する濃度の抗EGFR抗体の熟成された試料を添加し、37℃で約24時間温置した。AlmarBlueTM(Accumed International)の、生細胞に反応して蛍光を発する酸化還元色素を添加し、温置を更に24時間継続した。FusionTMα(Perkin Elmer)プレートリーダーを使用し、530mnの励起、590nmの発光にて、相対的蛍光度を測定した。4−パラメーターロジスティク曲線フィッティングプログラムを用いて、抗体試料の阻害濃度50(IC50)を測定した。報告されたインビトロの効力(%)は、基準ロット(100%の効力を割り振った。)のIC50に対するものであった。
【0184】
結果は、図17に示されており、二価陽イオンのないものと比べて、CaCl2の存在下における抗体の効力の喪失の著しい保護を示している。29℃又は37℃の何れかの温度において、2ヶ月間にわたり、活性化の低下がほとんど観察されなかったので、これらの結果は、抗体の活性実質的に全て又は殆どを十分に維持するために二価陽イオンを使用できることをさらに示している。
【0185】
二価の陽イオンの存在がポリペプチド凝集又は二量体形成に対して影響を有するかどうかを特定するために、SE−HPLCを用いて、CaCl2の存在下での還元抗体分解のさらなる評価を行った。抗体試料は、0から150mMの範囲の様々なCaCl2濃度中で製剤化し、4ヶ月間、4℃及び29℃で保存した。
【0186】
図18A及びBは、上記の条件下での温置後における抗体のSE−HPLCパターンを示している。4℃での4ヶ月の温置後の結果は、CaCl2の濃度の増加とともに、ポリペプチドの凝集の検出可能な増加又は二量体形成が存在しないことを示した。凝集は、0.05%に保たれた(図18A)。29℃で行った4ヶ月間の温置後、凝集は、75mMCaCl2溶液中で0.33%まで、150mMCaCl2溶液中で1%まで僅かに増加した(図18B)。
【0187】
アスパラギン酸D92の異性化及び凝集に関するデータを総合すると、75mMCaCl2は、ポリペプチド凝集の僅かなレベルを29℃でもたらしたに過ぎないので、異性化を阻止又は低下させ、及びポリペプチドの生物活性を維持するための特に有効な二価陽イオン濃度であることが示唆される。イソアスパラギン酸に関して、上記の結果は、25から150mMの範囲内を含むCaCl2濃度がアスパラギン酸の異性化を顕著に遅らせることを示している。二価塩含有製剤中での凝集又は粒子形成をさらに制御するために、ポリソルベート20又は80などの界面活性剤を含めることが可能である。
【0188】
本願を通じて、様々な刊行物が括弧内に引用されている。本発明が属する分野の技術水準をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示内容全体が、参照により、本願に組み込まれる。
【0189】
開示されている実施形態を参照しながら、本発明を記載してきたが、当業者は、上に詳述されている具体例及び研究が本発明の例示に過ぎないことを容易に理解する。本発明の精神を逸脱することなく、様々な修飾を施し得ることを理解すべきである。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲のみによって限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約4.5から6.0未満のpHを有する緩衝液と、約5から150mMの間の二価の陽イオンと、及び、糖又はポリオールを含む賦形剤と及びヒト上皮成長因子受容体(EGFR)に対して特異的結合活性を有する治療用抗体の有効量とを含み、前記治療用抗体が溶液中で最長2ヶ月間、少なくとも約80%安定性を保持する、製剤。
【請求項2】
前記二価の陽イオンがCaCl2、ZnCl2、MnCl2又はMgCl2から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記二価の陽イオンがCaCl2である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記二価の陽イオン濃度が約25mM、50mM、75mM、100mM又は125mMから選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記CaCl2濃度が75mMである、請求項3に記載の製剤。
【請求項6】
前記pHが約4.8から5.2を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記緩衝液が酢酸、グルタミン酸若しくはコハク酸又はこれらの塩から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記緩衝液が約1から50mMの濃度を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記糖又はポリオールがグリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールから選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記グリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールが約1から20%の濃度を含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記グリセロールが約1から3%の間の濃度を含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項12】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記界面活性剤がポリソルベートを含む、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記界面活性剤が約0.001から0.10%(w/v)の濃度を含む、請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
第二の賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
前記第二の賦形剤が、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び防腐剤から選択される、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がイソアスパラギン酸への異性化に対して感受性を有するAsp又はAsn残基を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又はこれらの機能的断片を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
前記ヒト抗体がパニツムマブである、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記キメラ抗体がErbituxTM(セツキシマブ)である、請求項18に記載の製剤。
【請求項21】
前記ヒト抗体がIMC−11F8又はHUMAX−EGFRから選択される、請求項18に記載の製剤。
【請求項22】
前記ヒト化抗体がマツズマブ(EMD−7200)又はニモツズマブ(TheraCIMhR3)から選択される、請求項18に記載の製剤。
【請求項23】
前記これらの機能的断片が、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)又はキメラ抗体を含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項24】
前記治療用抗体が約10から200mg/mLの間から選択される濃度を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項25】
約4.0から6.0未満のpHを有する緩衝液及び糖又はポリオールを含む中の5から150mMの間の二価陽イオン賦形剤のある濃度と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)に対して特異的結合活性を有する治療用抗体を接触させることを含み、前記治療用抗体が溶液中で最長2ヶ月間、少なくとも約80%の安定性を保持する、ポリペプチドを安定化させる方法。
【請求項26】
前記二価の陽イオンがCaCl2、ZnCl2、MnCl2又はMgCl2から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記二価の陽イオンがCaCl2である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記二価の陽イオンの濃度が約25mM、50mM、75mM、100mM又は125mMから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記CaCl2濃度が75mMである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記pHが約4.8から5.2を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記緩衝液が酢酸、グルタミン酸若しくはコハク酸又はこれらの塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記緩衝液が約1から50mMの濃度を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記糖又はポリオールがグリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記グリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールが約1から20%の濃度を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記グリセロールが約1から3%の間の濃度を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
界面活性剤をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記界面活性剤がポリソルベートを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記界面活性剤が約0.001から0.10%(w/v)の濃度を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
第二の賦形剤をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記第二の賦形剤が、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び防腐剤から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がイソアスパラギン酸への異性化に対して感受性を有するAsp又はAsn残基を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又はこれらの機能的断片を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒト抗体がパニツムマブである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記キメラ抗体がErbituxTM(セツキシマブ)である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ヒト抗体がIMC−11F8又はHUMAX−EGFRから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ヒト化抗体がマツズマブ(EMD−7200)又はニモツズマブ(TheraCIMhR3)から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記これらの機能的断片が、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)又はキメラ抗体を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記治療用抗体が約10から200mg/mLの間から選択される濃度を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項1】
約4.5から6.0未満のpHを有する緩衝液と、約5から150mMの間の二価の陽イオンと、及び、糖又はポリオールを含む賦形剤と及びヒト上皮成長因子受容体(EGFR)に対して特異的結合活性を有する治療用抗体の有効量とを含み、前記治療用抗体が溶液中で最長2ヶ月間、少なくとも約80%安定性を保持する、製剤。
【請求項2】
前記二価の陽イオンがCaCl2、ZnCl2、MnCl2又はMgCl2から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記二価の陽イオンがCaCl2である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記二価の陽イオン濃度が約25mM、50mM、75mM、100mM又は125mMから選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記CaCl2濃度が75mMである、請求項3に記載の製剤。
【請求項6】
前記pHが約4.8から5.2を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記緩衝液が酢酸、グルタミン酸若しくはコハク酸又はこれらの塩から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記緩衝液が約1から50mMの濃度を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記糖又はポリオールがグリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールから選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記グリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールが約1から20%の濃度を含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記グリセロールが約1から3%の間の濃度を含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項12】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記界面活性剤がポリソルベートを含む、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記界面活性剤が約0.001から0.10%(w/v)の濃度を含む、請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
第二の賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
前記第二の賦形剤が、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び防腐剤から選択される、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がイソアスパラギン酸への異性化に対して感受性を有するAsp又はAsn残基を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又はこれらの機能的断片を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
前記ヒト抗体がパニツムマブである、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記キメラ抗体がErbituxTM(セツキシマブ)である、請求項18に記載の製剤。
【請求項21】
前記ヒト抗体がIMC−11F8又はHUMAX−EGFRから選択される、請求項18に記載の製剤。
【請求項22】
前記ヒト化抗体がマツズマブ(EMD−7200)又はニモツズマブ(TheraCIMhR3)から選択される、請求項18に記載の製剤。
【請求項23】
前記これらの機能的断片が、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)又はキメラ抗体を含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項24】
前記治療用抗体が約10から200mg/mLの間から選択される濃度を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項25】
約4.0から6.0未満のpHを有する緩衝液及び糖又はポリオールを含む中の5から150mMの間の二価陽イオン賦形剤のある濃度と、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)に対して特異的結合活性を有する治療用抗体を接触させることを含み、前記治療用抗体が溶液中で最長2ヶ月間、少なくとも約80%の安定性を保持する、ポリペプチドを安定化させる方法。
【請求項26】
前記二価の陽イオンがCaCl2、ZnCl2、MnCl2又はMgCl2から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記二価の陽イオンがCaCl2である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記二価の陽イオンの濃度が約25mM、50mM、75mM、100mM又は125mMから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記CaCl2濃度が75mMである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記pHが約4.8から5.2を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記緩衝液が酢酸、グルタミン酸若しくはコハク酸又はこれらの塩から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記緩衝液が約1から50mMの濃度を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記糖又はポリオールがグリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記グリセロール、スクロース、トレハロース又はソルビトールが約1から20%の濃度を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記グリセロールが約1から3%の間の濃度を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
界面活性剤をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記界面活性剤がポリソルベートを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記界面活性剤が約0.001から0.10%(w/v)の濃度を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
第二の賦形剤をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記第二の賦形剤が、緩衝液、安定化剤、等張化剤、充填剤、界面活性剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び防腐剤から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がイソアスパラギン酸への異性化に対して感受性を有するAsp又はAsn残基を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
ヒトEGFRに対して特異的結合活性を有する前記治療用抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又はこれらの機能的断片を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒト抗体がパニツムマブである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記キメラ抗体がErbituxTM(セツキシマブ)である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ヒト抗体がIMC−11F8又はHUMAX−EGFRから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ヒト化抗体がマツズマブ(EMD−7200)又はニモツズマブ(TheraCIMhR3)から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記これらの機能的断片が、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)2、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)又はキメラ抗体を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記治療用抗体が約10から200mg/mLの間から選択される濃度を含む、請求項25に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【公表番号】特表2010−506911(P2010−506911A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533310(P2009−533310)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/021475
【国際公開番号】WO2008/051363
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/021475
【国際公開番号】WO2008/051363
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】
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