説明

安定なラクチド粒子

本発明は、安定なラクチド粒子に向けられ、より特には、室温で貯蔵及び輸送されるのに十分安定であり且つポリ乳酸のための出発物質としての使用にとって十分高い品質を有するラクチド粒子に向けられる。該ラクチド粒子は、3000m−1未満の表面/体積比を有する。好ましくは、該粒子中の該ラクチドは、少なくとも95%の光学純度を有する。該ラクチド粒子は、押出、造粒、噴射造粒、錠剤化又はフレーク化を含む成形工程にラクチドを付すことにより調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラクチド粒子、より特には室温で貯蔵及び輸送されるのに十分安定であり且つポリ乳酸のための出発物質としての使用の為に十分高い品質を有するラクチド粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め立てスペースの継続的な枯渇及び廃棄物の焼却に関する問題は、パッケージング、ペーパーコーティング及び他の非医療的産業適用(本明細書以下においてバルク適用といわれる)において、非生分解性又は部分的に生分解性の石油化学ベースのポリマーの代替物として利用されるべき真に生分解性のポリマーの開発のニーズをもたらした。生分解性ポリマーを製造する為の乳酸及びラクチドの使用は、医療産業においてよく知られている。Nieuwenhuisらにより開示されたとおり(米国特許第5,053,485号明細書)、そのようなポリマーは生分解性の縫合糸、クランプ、骨プレート及び生物学的に活性な徐放デバイスを作る為に用いられてきた。医療産業において利用されるべきポリマーの製造のために開発された方法は、最終ポリマー製品における高い純度及び生体適合性についてのニーズに応える技術を具体化してきたことが理解されるであろう。さらに、該方法は、製造原価及び収率についての軽視を伴い、少量の高ドル価値製品を製造する為に設計された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乳酸は縮合反応を受けて、脱水するとポリ乳酸を形成することが知られている。Doroughは、該得られたポリ乳酸が、乳酸の環状ダイマー(ラクチド)が生成される競合する脱重合反応に起因して、物理的特性に基づく限られた価値の低分子量ポリマーに限定されることに気づきそして米国特許第1,995,970号明細書において開示した。該ポリ乳酸鎖が長くなるにつれて、その重合反応速度は、それが脱重合反応の速度に達するまで減速し、これは該得られるポリマーの分子量を有効に制限する。
【0004】
それ故に、ほとんどの刊行物において、乳酸から最初にプレポリマーが調製され、該プレポリマーが触媒により脱重合されて粗ラクチドを形成し(すなわち閉環反応)、該粗ラクチドが次に精製され、そして、開環重合によるポリ乳酸の調製の為の出発物質としてラクチドが用いられる、ポリ乳酸の製造の為の方法が記載される。本説明の為に、語「ポリ乳酸」及び「ポリラクチド」は交換可能に用いられる。乳酸は、光学対掌体である2つの形態で存在することがよく知られており、D−乳酸及びL−乳酸として示される。D−乳酸、L−乳酸又はそれらの混合物のいずれかが重合されて中間的分子量のポリ乳酸を形成し得、これは、閉環反応後に、より前に開示されたようにラクチドを生成する。該ラクチド(ときどきジラクチドともいわれる)、又は乳酸の環状ダイマーは、それが、ダイマーを形成する為に結合される2つのL−乳酸分子、2つのD−乳酸分子又は1つのL−乳酸分子及び1つのD−乳酸分子から成るかどうかに依存して、3種類の光学活性のうち1つを有しうる。これらの3つのダイマーは、L−ラクチド、D−ラクチド及びメソ−ラクチド、とそれぞれ呼ばれる。加えて、約126℃の融点を有する、L−ラクチド及びD−ラクチドの50/50混合物はしばしば、D,L−ラクチドと文献中でいわれる。光学的不活性における平衡に向かう傾向を有する、等量のD及びLエナンチオマーが存在するところの或る条件下で、乳酸又はラクチドの光学的活性は変化すると知られている。該出発物質中のD及びLエナンチオマーの相対濃度、不純物又は触媒の存在、各種温度での時間、及び圧力が、そのようなラセミ化の速度に影響すると知られている。該乳酸又は該ラクチドの光学純度は、該ラクチドの開環重合の際に得られる該ポリ乳酸の立体化学に決定的である。ポリ乳酸に関して、立体化学、及び分子量は、ポリマー品質にとっての重要なパラメーターである。
【0005】
医療産業のためのポリ乳酸を調製する場合に、しばしば、結晶性粉末状ラクチドが、出発物質として用いられる。この適用は、例えば欧州特許出願公開第1 310 517号明細書に記載されている。今では30年超の間市販入手可能であるこれらの結晶は、非常に吸湿性であり及び不活性雰囲気下で湿気密及び気密なパッケージ中に詰められ及びフリーザー(12℃より低い温度)中で貯蔵される。ポリ乳酸がバルク適用のために用いられる場合に、これらの用心が採用され得ないことは、それが該製品を高価すぎるものにするだろうことから、明らかであろう。ラクチド粉又は結晶は通常、0.05〜約0.05mmの粒子サイズを有する。
【0006】
バルク適用についてのポリ乳酸の調製の為の方法を記載する刊行物では、該形成され及び精製されたラクチドは、その溶融した液体形態で重合反応器に直接的に送られてポリラクチドを形成する。例えば、欧州特許出願公開第0,623,153号明細書及び米国特許第6,875,839号明細書を参照されたい。該調製されたラクチドのポリ乳酸への該直接転化により、ラクチドの相対的不安定性の悪影響が、該反応器中の該ラクチドの滞留時間を制御することにより減じられうる。しかしながら、この方法は、該ラクチド製造及びポリ乳酸製造が組み合わされることを要求する。これは該方法をかなり柔軟でないものにし及び新たなポリ乳酸製造者にとっての参入障壁を形成する。なぜなら、該方法が設備における大きな投資を要求するからである。第二に、該ラクチドの品質は該ポリ乳酸において得られうる分子量及び立体化学にとって決定的であり並びに該閉環方法及び精製は温度、圧力及び滞留時間の厳密な制御を要求するので、それは、該ポリ乳酸製造方法の最も繊細な部分でもある。該方法のこの部分における失敗のリスクは、参入障壁をさらにより大きくする。もしバルク適用についての新規ポリ乳酸製造者が、安定な高品質ラクチドを簡単に与えられることができたならば、この重荷は彼らから減じられるだろうし及び石油化学に基づくポリマーのポリ乳酸による代替が実際に起こりうるだろう。ラクチドを、その溶融した形態(D−ラクチド及びL−ラクチドの融点は97℃である)で輸送することが提案されている。この種の輸送は高価であるという事実に加え、溶融したラクチドの該輸送及び貯蔵は、ラセミ化、加水分解及び酸化反応がこれらの温度で加速されるので、該ラクチドの品質に有害でもある。同じ問題が、該ラクチドの滞留時間が精密に制御されない場合に、該直接転化方法において生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の為に、本発明は、安定なラクチド粒子に向けられ、該粒子の表面/体積比は3000m−1より小さい。我々は、この要件を満たすラクチド粒子が室温での貯蔵及び輸送にとって十分安定であり且つバルク適用のための乳酸の製造の為の出発物質として容易に用いられうることを発見した。安定なラクチド粒子という言葉により、多くとも5meq/kgの当初遊離酸含有量を有する該ラクチド粒子を空気中において20℃で貯蔵した場合に、該遊離酸含有量が10週の貯蔵後になお2000より低いであろうことが意味される。医療産業について用いられる結晶性粉末状ラクチドは、時間が経つにつれて、安定でないとみえた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例6において20℃での空気中におけるラクチドの貯蔵後の遊離酸含有量を示すグラフである。
【図2】実施例6において40℃での空気中におけるラクチドの貯蔵後の遊離酸含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記で述べたとおり、該ラクチドの光学純度は、得られるポリ乳酸の立体化学にとって非常に重要である。それ故に、本発明に従う粒子に存在するラクチドが、95重量%超のD−又はL−ラクチド、好ましくは98.5重量%超のD−又はL−ラクチド、最も好ましくは99.5重量%超のD−又はL−ラクチドを含むことが好ましい。
【0010】
本発明に従うラクチド粒子は、(例えば溶融した形態又は結晶性粉末状の形態にある)ラクチドを成形プロセスに付すことにより調製されうる。適当な成形プロセスは押出、造粒(pastillation)、噴射造粒(prilling)、フレーク化等である。該成形プロセスにおいて形成される粒子はペレット、粒(pastille)、顆粒及び/又は凝集物であると考えられうる。これらの語は、関連する該成形プロセスにおいて一般に用いられる語から依存して、本説明を通じて用いられる。
【0011】
溶融したという後、により、該ラクチドの少なくとも一部が該ラクチドの融点の温度に又は融点より高い温度にあることが意味される。
【0012】
該成形プロセスの為に用いられる装置、又は該ラクチドと接触するであろう少なくともそれらの部品が、ステンレス鋼のような耐食性材料から調製される。さらに、該ラクチド粒子の水吸収を回避する為に、該成形プロセスは好ましくは、窒素又は乾燥空気下などの不活性ガス又は乾燥雰囲気下で実施される。
【0013】
1以上のダイを通じた押出により、シリンダー形状又はロッド様の粒子が得られうる。該ラクチド粒子の表面/体積比を見た場合、これらのシリンダー形状又はロッド形状の粒子が好ましい。この成形プロセスはさらに好ましく、なぜなら、ラクチドからのポリラクチドの調製の為の処理装置が、比較的均一な粒子サイズ及び形状の故に、この形状の粒子を容易に取り扱うことができるからである。該押出機は任意的に、該ラクチドの局所的過熱を回避する為に冷却される。プラスチック、金属粉、食物及びセラミック産業において慣用的に用いられる任意の押出機、例えばスクリュー押出機、例えば単軸及び二軸押出機及びラジアルスクリーン押出機(radial screen extruder)等が適当である。
【0014】
適当な造粒機(pastillation machine)は例えば、ディスク造粒機(GMF(商標)から)又はロートフォーマー(Sandvik(商標)から)である。本明細書において、該ラクチドは溶融されそして、制御された温度を有するディスク又はベルト上に滴が置かれる。我々は、造粒ロバスト(pastillation robust)により、均一に形作られたペレットがラクチドから作られうることを発見した。該得られた実質的に半球状のラクチド粒子の表面/体積比がシリンダー形状又はロッド形状の粒子についてのものよりもいくぶん高いけれど、半球状のラクチド粒子は好ましい。なぜなら、ラクチドからのポリラクチドの調製の為の処理装置は、比較的均一な粒子サイズ及び形状の故に、この形状の粒子を容易に取り扱うことができるからである。さらに、この成形方法により、事実上、ダスト発生(dusting)が起こらず、及び、該得られた粒は輸送又は任意の他の機械的取扱いの間に摩滅にほとんど影響を受けない。押出機により製造された粒子と比較して、粒は通常、ポリ乳酸反応器に、特には反応押出重合が用いられる場合に、より容易に配量されうる。語「比較的均一な」は、該粒の少なくとも90重量%が平均直径の±30%以内にあることを意味する。好ましくは、該粒子の少なくとも95重量%が、平均直径の±10%以内にある。語「実質的に半球状」は、該粒子の形態が基本的に半球状であるが、いくらか平たくされ、すなわち該粒子の高さがその直径の50〜30%であってもよいこと、を意味する。
【0015】
該成形方法の為にフレーク化を用いる場合に、任意的にふるいにかける工程が、輸送及びポリラクチドを形成する為のさらなる処理の間のダスト発生を回避する為に、該成形の後に実施される。
【0016】
噴射造粒化により、液浴中にラクチド滴が落下し、そして、すなわち球状の粒子が得られうる。もし該浴のために水が用いられるならば、該ラクチド粒子の徹底的な乾燥が必要である。
【0017】
その形と関係なく、少なくとも3mmの平均直径を有する粒子が好ましい。なぜならすると、最適な表面/体積比が確保されるからである。より好ましくは、該粒子は3〜10mmの平均直径を有する。
【0018】
該ラクチドの含水量が、該ラクチド粒子の安定性にとって重要な要素である。水蒸気による汚染は、該ラクチドのラクトイル乳酸及び乳酸への転化を引き起こす環開裂をもたらす。もし該含水量が200ppmより低ければ、室温で、気密且つ蒸気密なパッケージ中で貯蔵された場合に該ラクチド粒子の安定性が数ヶ月間確保されることが分かった。好ましくは、該含水量は100ppmより低く、なぜならそれはさらに該ラクチドの安定性を増すからである。該ラクチドの含水量は、当業者に知られているだろうとおりの、Karl−Fisher滴定により測定されうる。該ラクチドの酸含有量(乳酸又はラクトイル乳酸)も、該ラクチドの安定性及び品質にとって重量である。最終重合段階への供給物における乳酸及び/又はラクトイル乳酸の存在は、限定された分子量のポリマーを結果するであろう。もし該遊離酸含有量が1kgラクチド当たり50ミリ当量(meq・kg−1)より低ければ、気密且つ蒸気密のパッケージ中で室温で貯蔵された場合に、該ラクチド粒子の安定性は数ヶ月間確保される。好ましくは、該酸含有量は、20meq・kg−1より低く、なぜなら、それはさらに、該ラクチドの安定性を増すからである。最も好ましくは、該酸含有量は0〜10meq・kg−1である。該酸含有量は、当業者に明白であろうとおり、例えばナトリウムメタノエート又はカリウムメタノエートを用いる滴定により測定されうる。
【0019】
該成形プロセスの為の出発物質として用いられるラクチドは、乳酸溶液からの水除去又はラクテートエステルの縮合反応、続く触媒の助けによるラクチド反応器中での閉環反応のような任意の慣用のラクチドプロセスにより調製されうる。任意的に、該粗ラクチドは、該成形プロセスに先立ち、例えば蒸留及び/又は晶析により、さらに精製される。
【0020】
該ラクチド反応器は、熱感受性材料について設計された任意の適当な種類のものであってよい。均一な膜厚を維持することができる反応器、例えば落下膜式蒸発器又は攪拌式薄膜蒸発器など、が最も好ましい。なぜなら、膜形成は、物質移動速度を増すからである。該物質移動速度が増大される場合、ラクチドは迅速に形成し及び蒸発し、そして、ラクチドが蒸発するにつれて、該ポリ乳酸/ラクチド平衡反応により決定されるように、より多くのラクチドが製造される。任意的に、これらのラクチド反応器は、例えば約1mmHg〜100mmHgのような減圧下で操作される。該ラクチド形成の温度は、150℃〜250℃に維持される。多くの適当な触媒、例えば金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属粉塵、及び、カルボン酸に由来する有機金属化合物、又はその同様物などが知られている。通常は、酸化スズ(II)又はオクチル酸スズ(tin(Oct)2)触媒が、ラクチド形成のために用いられる。
【0021】
安定剤もまた、ラクチド形成を促進する為に及び減成的乳酸及びラクチド反応を阻止する為に該ラクチド反応器に添加されうる。安定剤、例えば抗酸化剤などは、ポリ乳酸及びラクチド製造の方法の間に発生する変性反応の数を減少する為に用いられうる。安定剤は、このプロセスの間のラクチド形成の速度も減少しうる。それ故に、ラクチドの効率的製造は、最小限の熱的過酷さ、および触媒及びプロセス安定剤の任意の使用の間の適切なバランスのために適切な反応器設計を要求する。
【0022】
各種の安定剤が用いられうる。該安定剤は、一次的抗酸化剤及び/又は二次的抗酸化剤を包含しうる。一次的抗酸化剤は、フリーラジカル伝播反応を抑制するものであり、例えばアルキリデンビスフェノール、アルキルフェノール、芳香族アミン、芳香族ニトロ及びニトロソ化合物、並びにキノンなどである。フリーラジカルの形成を防ぐ為に、二次的(又は予防的)抗酸化剤がヒドロペルオキシドを破壊する。二次的抗酸化剤のいくつかの例は、ホスファイト、有機硫化物、チオエーテル、ジチオカルバメート、及びジチオホスフェートを包含する。抗酸化剤は、該ラクチド反応器に添加される場合、ラクチド製造の間のラセミ化の程度を減少しうる。この減少は、抗酸化剤の該添加が、光学純度を制御する為の追加的手段であることを示唆する。抗酸化剤は、トリアルキルホスファイト、混合されたアルキル/アリールホスファイト、アルキル化アリールホスファイト、立体障害されたアリールホスファイト、脂肪族スピロ環ホスファイト、立体障害されたフェニルスピロ環、立体障害されたビスホスフォナイト、ヒドロキシフェニルプロピオネート、ヒドロキシベンジル、アルキリデンビスフェノール、アルキルフェノール、芳香族アミン、チオエーテル、ヒンダードアミン、ヒロドキノン、及びそれらの混合物のような化合物を包含する。好ましくは、ホスファイト含有化合物、ヒンダードフェノール化合物、又は他のフェノール化合物が、プロセス安定化抗酸化剤として用いられる。最も好ましくは、ホスファイト含有化合物が用いられる。プロセス安定剤の量は、該得られるラクチドの所望の光学純度、用いられる触媒の量及び種類、並びに該ラクチド反応器の内側の条件に依存して変わりうる。通常は、0.01〜0.3重量%のプロセス安定剤の量が用いられうる。安定剤の次に、脱水剤又は抗加水分解剤が用いられうる。これらの脱水剤は、ラクチドの該形成に有利である。さらに、それらは、ポリ乳酸の為に並びに水による鎖切断を防ぐ為に該製造方法の後期の段階で用いられうる。パーオキシドに基づく化合物が、この目的の為に用いられうるが、カルボジイミド官能性を有する化合物が好ましい。該カルボジイミド化合物は、1分子中に1以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、及び、ポリカルボジイミド化合物をも包含する。該カルボジイミド化合物に包含されるモノカルボジイミド化合物として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミドなどが例示されうる。特には、産業上容易に入手可能な化合物、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド又は、RheinchemieによるStabaxol(商標)のような製品が用いられる。
【0023】
より後期の段階で、例えば該成形の前に及び/又は該成形工程の後などに、上記プロセス安定剤及び脱水剤を該ラクチドに添加することも可能である。もし該安定剤が、成形後に該ラクチドに添加されるならば、該安定剤は該ラクチド粒子にスプレーされ又はコートされる。
【0024】
もちろん、ラクチド以外の、該ラクチド粒子中に存在するプロセス安定剤などの物質をできる限り少なく有することが望ましい。それ故に、該ラクチド粒子は通常は、95重量%超のラクチド、好ましくは98.5重量%超のラクチド、最も好ましくは99.5重量%超のラクチドを含む。
【0025】
ラクチド調製及び/又は精製方法並びに成形方法の種類に依存して、該成形方法は、該調製及び/又は精製と組み合わされてよく又は組み合わされなくてもよい。例えば、該ラクチドが蒸留から得られるならば、該ラクチドはすでにその溶融した形態にあるので、蒸留カラムに造粒機を直接に取り付けることは意味がある。該ラクチドの最終精製工程が晶析を含むならば、押出機の使用がより適切である。該押出は、より後期の時点で行われてもよい。
【0026】
我々は、上記プロセス安定剤の存在が、貯蔵の間の該ラクチド粒子の安定性を増加することも発見した。
【0027】
本発明はさらに、以下の非限定的な実施例により説明される。
【0028】
[実施例1]
実験室規模のディスク造粒機を用いたL−ラクチドの造粒
【0029】
Purac(商標)からの新鮮なL−ラクチド(1meq/Kg未満の遊離乳酸)が、マイクロ波を用いて溶融され、そして次に、熱気流により連続的に加熱された二重壁金属容器中に注がれた。該ラクチドはこのようにして、その溶融した状態に維持され、そして金属プランジャーにより覆われた。該加熱された容器の底に、円筒状ダイ(D=1mm)を有するノズルが取り付けられた。わずかな圧力が、該ラクチド溶融物に適用されて、該ノズルの6〜7mm下に取り付けられたRVSディスク上に落ちる滴を結果した。該RVSディスク(D=400mm)はゆっくりと回転しており(1〜2rpm)、能動冷却を有さず及び15〜20℃の温度(RT)を有した。該ノズルから排出された該透明なラクチド溶融物は、該RVSディスク上で凝固し及び結晶化し、白い粒を生成した。該滴下速度及び該ディスク回転速度は、該ディスク上の粒の環状の配列を得る為に、マッチされた。粒の環状の配列がいっぱいになったらすぐに、該ディスク上の該ノズルの位置が、新たな配列を開始する為に適合され、このようにして、冷却ディスクが粒の同心的配列により最終的には覆われるようにした。粒は、該金属ディスクにくっつかず、そして、容易に集められることができた。均一な寸法の凝固したラクチド粒がこのようにして製造されることができた(1.6〜1.8mmの厚さを有し、平均粒子直径5.5〜6mm)。
【0030】
[実施例2]
押し出しにより製造された円筒形状L−ラクチドペレット
【0031】
Purac(商標)からの新鮮なL−ラクチド(1meq/Kg未満の遊離乳酸)が、Thermo Fisher Scientific CorporationのPrism Pharmalab 16シリーズの共回転二軸押出機のシングルキャピラリーダイを通じて押出された。スクリュー直径は16mmであり、処理長さL/Dは40であった。該押出機バレルの電気的に加熱された区画(#1〜11)の温度(℃)は、

であった。
【0032】
該押出機は、150rpmのスクリュー速度で操作され、そして、L−ラクチド粉が、容積計量供給機により1.8〜2.4Kg/hの固体速度で、水により冷却された区画1に計量供給された。該ダイから排出された白色ペーストの温度は88〜92℃であった。該得られたストランドは、それらが、RVSトレー上への該押出機からの排出に際し約20〜40cm落ちた場合に、自発的にちぎれた。結果として、数ミリメーターの不規則に分布した長さを有する円筒形状のペレットが得られた(該粒子直径は約3mmであった一方で、その長さは5〜15mmであった)。
【0033】
該白色ラクチドペレットは当初は4meq/Kgの遊離乳酸含有量を示した。
【0034】
[比較例3]
粉末状ラクチド粒子の安定性が試験された。粉末状ラクチドの表面/体積比は以下の表に与えられる:

【0035】
約1mmの直径を有する粉末状物質(6000m−1の表面/体積比)の安定性が、穴を有する気密且つ蒸気密バッグ(ポリエチレン内側バッグ及びアルミニウム外側バッグを含む)中での1年間の貯蔵後に測定された。該当初遊離乳酸含有量が0.080meq/Kgであった。4℃での1年後、該遊離酸含有量は0.09meq/Kgに増加され、及び、25℃での1年後、該遊離酸含有量は1131meq/Kgへ増加された。これは、粉末状材料が、室温での数ヶ月間の貯蔵にとって十分安定でないことを意味する。
【0036】
[比較例4]
約1mmの直径を有する粉末状物質の安定性が、単独のポリエチレンバッグ(蒸気密だが気密でない)中での1年間の貯蔵後に測定された。その当初遊離酸含有量は0.09meq/Kgであった。25℃での6月後、該遊離酸含有量は405meq/Kgに増加され、すなわちポリ乳酸の調製の為の出発物質としてもはや適当でなかった。
【0037】
[実施例5]
以下の表に、表面/体積比が、円筒形状及び半球形状のラクチド粒子について与えられる。


【0038】
[実施例6]
実施例1において調製されたとおりのラクチド粒の安定性が、100マイクロメートルの平均粒子サイズを有する粉末状ラクチドと比較された。該粒の表面/体積比は1600m−1である一方、該粉末状ラクチドの表面/体積比は6000m−1であった。この目的の為に、5meq/Kgの当初遊離酸含有量を有するラクチド粒及びラクチド粉の両方が、20及び40℃での安定性試験に付された。該ラクチド試料は、ポリエチレンバッグ(蒸気密だが気密でない)中に維持された。該試料の遊離酸含有量が、貯蔵の色々な期間後に測定された。その結果が、図1及び2にまとめられる。図1は、20℃での貯蔵の結果を与える。これらの結果は、粉末状ラクチドの遊離酸含有量が、時間が経つにつれて、造粒されたラクチドよりもはるかに速く増加することを示す。実際に、粉末状ラクチドの遊離酸含有量は、10週間の貯蔵後に2000超に増加し、これは該粉末状ラクチドを、ポリ乳酸製造にとって不適当なものにした。図2は、40℃での貯蔵の結果を与える。これらの結果は、より高い温度で、該遊離酸含有量が、20℃での貯蔵によるよりも速く増加することを示す。ここでも、粉末状ラクチドの該遊離酸含有量が、時間が経つにつれて、造粒されたラクチドよりもはるかに速く増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の表面/体積比が3000m−1よりも小さい安定なラクチド粒子。
【請求項2】
該ラクチド粒子が、95重量%超のラクチド、好ましくは98.5重量%超のラクチド、最も好ましくは99.5重量%超のラクチドを含む、請求項1に記載の安定なラクチド粒子。
【請求項3】
該粒子に存在するラクチドが、95重量%超のD−ラクチド、好ましくは98.5重量%超のD−ラクチド、最も好ましくは99.5重量%超のD−ラクチドを含む、請求項1に記載の安定なラクチド粒子。
【請求項4】
該粒子中のラクチドが、95重量%超のL−ラクチド、好ましくは98.5重量%超のL−ラクチド、最も好ましくは99.5重量%超のL−ラクチドを含む、請求項1に記載の安定なラクチド粒子。
【請求項5】
実質的に半球状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安定なラクチド粒子。
【請求項6】
平均粒子直径が少なくとも3ミリメートルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の安定なラクチド粒子。
【請求項7】
含水量が200ppmより低い、好ましくは100ppmより低い、及び最も好ましくは50ppmより低い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の安定なラクチド粒子。
【請求項8】
遊離乳酸含有量が、1Kgラクチド当たり50ミリ当量(meq・Kg−1)より低い、好ましくは20meq・Kg−1より低い、及び最も好ましくは0〜10meq・Kg−1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の安定なラクチド粒子。
【請求項9】
ラクチドが成形プロセスに付されて、3000m−1未満の表面/体積比を有する粒子を形成する、ラクチド粒子の調製の為の方法。
【請求項10】
該成形方法が、押出、造粒、噴射造粒、錠剤化、又はフレーク化を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ラクチドが押出され又は圧縮されて、円筒形状の、立方形状の又はロッド形状の粒子を形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ラクチド溶融物が造粒されて、実質的に半球状の粒子を形成する、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511070(P2010−511070A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537661(P2009−537661)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062919
【国際公開番号】WO2008/065132
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(306003419)ピュラック バイオケム ビー.ブイ. (40)
【Fターム(参考)】