説明

安定な保存用中間体を使用した生物製剤の製造方法

本発明は、生物反応器プロセスからタンパク質を単離および精製する方法に関する。本発明は、安定な保存用中間体として、タンパク質製造精製プロセス中に固体、半固体または懸濁液の形態のタンパク質生成物を単離または精製するための、タンパク質相分離法の使用に関する。この手法は、単離されたタンパク質生成物(精製または部分的に精製されている)が、さらなるタンパク質精製段階の前に長期間にわたり保存され得るように設計される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
何年もの間、多くの治療薬剤は、化学的に合成された小分子である。しかしながら、生物化学、遺伝学および分子生物学における最近の発達により、潜在的タンパク質系薬物の同定がより頻繁となった。これらには、例えば、サイトカイン、ホルモン、凝固因子、増殖因子、抗体およびワクチンの抗原ペプチドが含まれる。さらに、抗体およびFc融合タンパク質等のより新しいタンパク質治療薬のいくつかは、より高い用量を必要とし、またワクチンおよび増殖因子等の以前からのタンパク質治療薬のいくつかよりも、より大きな患者集団を処置するために使用され得る。非特許文献1。これらの変化により、タンパク質治療薬に対する需要が増加した。しかしながら、増加した需要を満たすために、タンパク質生成および精製のための日常的な実験室レベルの手法を単に拡大するのは、技術的に実現不可能である。同上。したがって、現在、工業規模のタンパク質生成および精製プロセスを改善する必要がある。
【0002】
タンパク質製剤の製造は、多段階プロセスとして考えることができる。第1の段階は、バルク原薬(BDS)製造であり、典型的には大規模タンパク質生成、続いてタンパク質精製を含む。BDSは、一般に、品質特性、強度、純度、識別および安全性評価を含む特定の出荷規格を満たさなければならない。次の段階は、治療用途のために包装され医者および患者に供給され得る最終的な医薬製剤へのバルク原薬の変換である、薬剤生成物(DP)製造である。DP製造段階は、「フィル−フィニッシュ(fill−finish)」作業と呼ばれる場合がある。
【0003】
より多くのタンパク質製剤に対する需要は、プロセスの個々の段階のそれぞれにおいて、多くの革新をもたらした。しかしながら、プロセスの1つの段階の効率を増加させる革新は、多くの場合、プロセス全体のボトルネックを防止するために下流側の段階のそれぞれの効率も同等に増加させることを必要とする。例えば、タンパク質生成の段階は、しばしば、生物反応器内で多数の組み換え細胞を増殖させることにより行うことができ、過去数年にわたる進展により、生物反応器の容量は20,000リットルの大きさまで増加した。非特許文献2。しかしながら、これらの進展が製造プロセスの全体的な有効性を増加させるためには、下流側の精製段階の有効性の増加と整合しなければならず、さもなくばタンパク質生成とタンパク質精製との間のボトルネックが生じることになる。精製を改善するための方法は進行中であり、精製プロセスの有効性はまもなく現在のタンパク質生成の規模に整合するだろうと一部で予測されている。同上を参照。しかしながら、選ばれた精製段階のみの有効性の増加は、単純にプロセスのさらに下流のボトルネックにつながる可能性がある。
【0004】
典型的には、生物学的治療薬の製造プロセスは、生物反応器手順(bioreactor train)の開始から精製を経てBDSの形成に至るまで途切れのない様式で行われる。BDS段階は、多くの場合、この一連の活動の第1の真のホールドポイントである。これらの途切れのない作業は、上述のボトルネックの形成に寄与する。作業の連続的フローを実行することにより、後続の段階における同様の増幅と整合しない1つの作業における効率の増幅は、ボトルネックを生成する。これは、作業を分断し作業負荷をそれぞれの容量に調整することを可能とする、中間的なホールドポイントを生成することにより回避することができる。低温(例えば−20℃から−80℃)での中間体の保存は、実験室規模での典型的な手順であり、関与する生成物量および体積が十分小さい場合に限り大規模製造に移行することができる。しかしながら、高生産量のプロセスにおいては、必要とされる大量の凍結材料の保存は高額で不便となり得る。さらに、薬物処理のために大量の凍結中間体を他の場所に運搬することもまた課題となる。
【0005】
生物製剤製造プロセスにおける中間体の保存および運搬に関連した問題に加えて、異なる特性を有する生物製剤を精製するために使用される精製技術の多様性もまた、全体的な製造プロセスの効率を低下し得る。例えば、特定のタンパク質を生成するために、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む数々の精製技術を使用することができ、したがって、任意の1つのタンパク質治療薬のBDSは、別のタンパク質治療薬のBDSと実質的に異なり得る。例えば、BDS生成物は、物理的状態、純度、溶解度、不純物の種類、存在する緩衝剤等が異なる可能性があり、これらの特性のそれぞれは、薬剤生成物製造(すなわち、バルク薬剤生成物の医薬的に許容し得る生成物への変換)に必要な段階を変更させる可能性がある。結果として、薬剤生成物製造に関与する段階は、多くの場合、最終バルクタンパク質生成物の具体的特性に依存して、それぞれの個々のタンパク質精製プロセスに特定的に設計される。したがって、薬剤生成物製造に使用され得る形態へのBDSの変換がまた、全体的なタンパク質医薬製剤スキームにおけるボトルネックとなり得る。
【0006】
本発明は、これらの潜在的ボトルネックを克服することを目的とする。これは特に、低減された体積、実用的な温度、および均一な保存形態での保存を可能とする、安定な保存用中間体の使用を介して達成することができる。本発明は、安定で取扱いが容易な保存用中間体を提供することにより、生物製剤製造に柔軟性を与える。また、安定な保存用中間体の形成によって、生物製剤製造の間の上流側および下流側のプロセスの分断もまた達成され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shukla et al.Journal of Chromatography B 848:28−39(2007)
【非特許文献2】Kelley,B.Biotechnol.Prog.23:995−1008(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生物製剤を製造するプロセスに関する。プロセスは、生物製剤を生成する細胞を培養する段階と、細胞培養から生物製剤を採取する段階と、安定な保存用中間体を形成し、中間体を保存する段階と、中間体をさらに精製または処理する段階とを含み得る。いくつかの実施形態において、さらに処理または精製する段階は、クロマトグラフィー、濾過、ウイルス不活性化または凍結乾燥を含む。プロセスは、バルク原薬を形成する段階をさらに含み得る。加えて、プロセスは、バルク原薬から薬剤生成物を形成する段階をさらに含み得る。プロセスはまた、薬剤生成物を、それを必要とする患者に投与する段階をさらに含み得る。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、保存は少なくとも10日間および約−50℃を超える温度である。他の実施形態において、保存は少なくとも3週間であり、さらに他の実施形態において、保存は75日間である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体の形成は、少なくとも10倍の体積低減を提供する。別の実施形態において、安定な保存用中間体の形成は、少なくとも20倍の体積低減を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも約500リットルから形成される。別の実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも約1,000リットルから形成される。本発明のいくつかの実施形態において、細胞は、特定の体積で、例えば少なくとも約1,000リットル、または少なくとも約10,000リットルの体積で培養される。
【0011】
いくつかの実施形態において、細胞は、生物反応器内で培養される。いくつかの実施形態において、採取する段階は、遠心分離により達成される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、固体、半固体または懸濁液である。いくつかの実施形態において、固体、半固体または懸濁液は、液体、凍結液体、結晶、沈殿物、フリーズドライ製剤、凍結乾燥製剤、粉末、ベシクルまたはミクロスフェアである。
【0013】
本発明の一実施形態において、安定な保存用中間体は、相分離により形成される。本発明の具体的な一実施形態において、安定な保存用中間体は、沈殿により形成される。例えば、安定な保存用中間体は、PEGによる沈殿またはPEGおよび亜鉛による沈殿により形成される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体の内容物の約95%未満が生物製剤である。別の実施形態において、安定な保存用中間体の内容物の約50〜95%が生物製剤である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、低い塩濃度を有する。本発明の別の実施形態において、安定な保存用中間体は、高濃度のタンパク質を含む。さらに別の実施形態において、安定な保存用中間体は、生物製剤の凝集を防止する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、生物製剤の安定性および/または寿命を増加させる。本発明の一実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも30日間安定である。本発明の別の実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも75日間安定である。さらに別の実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも3ヶ月間安定である。さらに別の実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも4ヶ月間安定である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、2〜8℃で安定である。本発明の他の実施形態において、安定な保存用中間体は、−20℃で安定である。
【0018】
本発明によれば、生物製剤は、タンパク質、代謝産物またはポリヌクレオチドであり得る。いくつかの具体的実施形態において、生物製剤は抗体である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、薬剤生成物の形成は、無菌濾過、クロマトグラフィーおよび/または限外濾過/膜分離を使用して生成物を形成する段階と、生成物を容器に充填する段階と、任意選択で生成物を凍結乾燥する段階とを含む。具体的な一実施形態において、容器はバイアル、シリンジまたは自動注射器である。
【0020】
さらに、本発明はまた、生物反応器プロセスから生成物を採取するための手段と、採取された生成物から安定な保存用中間体を形成するための手段と、を備える、生物製剤製造プロセスに関し、安定な保存用中間体の形成は、上流側の生物反応器プロセスを、下流側の精製および/または薬物製造プロセスから分断する。
【0021】
本発明は、安定な保存用中間体を上流側の生物反応器プロセスから直接生成することによる(例えば、採取後またはタンパク質A後)、上流側の生物反応器プロセスの下流側の精製段階からの分断に関する。この中間体は、都合の良い時に保存することができ、または処理量および容量がより均等に整合し得る場合は、様々な量の固定された処理量および容量の下流側プロセスに供給される。本発明により、下流側の精製プロセスは、生物反応器の生産量が変更されるたびに再設計される必要はない。さらに、本発明はまた、最終薬剤生成物製剤の前の、安定な保存用中間体の下流側の精製段階からの直接生成を提供する。
【0022】
本発明によれば、上流側および下流側のプロセスの分断は、柔軟な製造を可能とする。分断は、対象となる生成物を含有するプロセス中間体を保存する手段を提供することにより達成され得る。次いで、そのような中間体を限外濾過または膜分離等の精製段階に供し、生成物を精製することができる。本発明により精製された生成物は、対象となる精製された生成物を適切な保存用中間体として保存する手段を提供することによって製剤化することもできる。
【0023】
安定な保存用中間体を生成するための適切な手段は、例えば、結晶、沈殿物、フリーズドライ、およびミクロスフェアを含む。本発明によれば、そのような手段は、上流側の生物反応器プロセスにより、または下流側の精製段階により生成された他の成分からの、タンパク質または精製されたタンパク質生成物の相分離をもたらす。本発明によれば、安定な保存用中間体は、従来の精製法、例えば遠心分離またはクロマトグラフィーにより得られる生成物の体積と比較して、タンパク質または精製されたタンパク質生成物の保存のための生成物体積の低減を可能とする。本発明によれば、安定な保存用中間体はまた、タンパク質または精製されたタンパク質生成物の安定性または寿命を向上させる。
【0024】
本発明のある特定の実施形態において、タンパク質を含有する保存用中間体を生成するための手段として、微小粒子形成が使用される。いくつかのある特定の実施形態において、90%を超えるミクロスフェア含有量を有するタンパク質ミクロスフェアの狭い分布(1〜4um)が生成される。
【0025】
別の実施形態において、保存用中間体を生成するための手段として、結晶が使用される。さらに別の実施形態において、安定な保存用中間体を生成するための手段として、沈殿が使用される。さらなる実施形態において、安定な保存用中間体を生成するための手段として、フリーズドライが使用される。他のある特定の実施形態において、安定な保存用中間体を生成するための手段として、凍結乾燥が使用される。
【0026】
本発明のさらなる実施形態において、安定な保存用中間体は、相分離により形成される。
【0027】
さらなる態様において、本発明の方法は、安定な保存用中間体から薬剤生成物を製造する段階をさらに含む。ある特定の実施形態において、この製造段階は、(1)無菌濾過、クロマトグラフィーおよび/または限外濾過/膜分離を使用して生成物をさらに精製する段階と、(2)生成物を容器に充填する段階と、(3)任意選択で生成物を凍結乾燥する段階とを含む。
【0028】
本発明のさらなる態様において、方法は、無菌濾過、クロマトグラフィーおよび/または限外濾過/膜分離を使用して生成物をさらに精製する段階の後に、第2の安定な保存用中間体を形成する段階を含む。
【0029】
さらなる実施形態において、ミクロスフェアは微小粒子である。他のある特定の実施形態において、微小粒子は、水溶性ポリマーを使用して生成物を安定な保存用中間体として共沈させることにより作製される。
【0030】
本発明のさらなる実施形態において、安定な保存用中間体の内容物の少なくとも90%が生成物である。
【0031】
本発明によれば、安定な保存用中間体は、生成物の凝集を防止し、生成物の溶液粘度の増加を防止し、単離された生成物の体積を低減し、ならびに/または生成物の安定性および/もしくは寿命を増加させる。
【0032】
さらなる実施形態において、安定な保存用中間体は、2〜8℃で少なくとも3ヶ月間安定である。
【0033】
また、本発明は、生物反応器プロセスから細胞を採取するための手段と、採取された細胞から安定な保存用中間体を形成するための手段と、を備える、生成物製剤開発プロセスを提供し、安定な保存用中間体の形成は、上流側の生物反応器プロセスを、下流側の精製および/または薬物製造プロセスから分断する。さらなる実施形態において、生成物製剤開発プロセスは、無菌濾過、クロマトグラフィーおよび/または限外濾過/膜分離を使用して生成物をさらに精製するための手段と、無菌濾過、クロマトグラフィーおよび/または限外濾過/膜分離を使用して生成物をさらに精製する段階の後に、第2の安定な保存用中間体を形成するための手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】生物製剤を製造するためのプロセスの例を示し、(1)バルク原薬(BDS)製造および(2)薬剤生成物(DP)製造において行われる段階を示す図である。
【図2】生物製剤を製造するためのプロセスの例を示し、分断が有用となり得る段階を強調している図である。点線で囲まれたものは、安定な保存用中間体の形成による分断が有用となり得る段階を示す。
【図3a】沈殿により生成され−20℃(a)および2〜8℃(b)で保存されたモノクローナル抗体の安定な保存用中間体に対するサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を示す図である。沈殿した保存用中間体を再懸濁し、0、1日、30日、75日および135日の時点で、モノマーのパーセント、高分子量1のパーセント1、高分子量2のパーセント、および低分子量のパーセントについて分析した。
【図3b】沈殿により生成され−20℃(a)および2〜8℃(b)で保存されたモノクローナル抗体の安定な保存用中間体に対するサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を示す図である。沈殿した保存用中間体を再懸濁し、0、1日、30日、75日および135日の時点で、モノマーのパーセント、高分子量1のパーセント1、高分子量2のパーセント、および低分子量のパーセントについて分析した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、安定で取扱いが容易な保存用中間体を提供することによる、生物製剤の工業規模製造の柔軟性の増加を目的とする。生物製剤を生成するための典型的な工業規模プロセスは、(1)細胞培養から生物製剤を精製してバルク原薬(BDS)を生成する段階、および(2)BDSを薬剤生成物(DP)に製造する段階の2つの主要な段階に分けることができる。(図1は、典型的な工業規模製造プロセスに関与し得る段階の例を示す。)細胞培養からのBDSの精製には、典型的には、数日の期間にわたり行われる一連の精製段階が必要である。しばしば、BDSは、この一連の途切れのない作業における第1の長期のホールドポイントである。BDSは、様々な物理的状態で、例えば凍結液体(−20℃から−70℃)として、冷蔵温度(例えば2〜8℃)で保存された液体として、または凍結乾燥された形態で生成される。この状態で様々な期間の保存が可能であり、時折、最終DPに変換される前に別の場所に運搬される。しかしながら、本発明によれば、BDS段階の前の工業規模プロセスの間の安定な保存用中間体の形成が、保存体積の低減、保存時の凍結の必要性の低減、均一な保存用中間体を提供する能力の増加、および必要に応じて製造段階の間で中断する能力の増加を含む、いくつかの利点を可能とする。
【0036】
安定な保存用中間体
本発明の安定な保存用中間体は、大規模製造プロセスの任意の段階で形成することができる。本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、バルク原薬の形成前に形成される。図2は、安定な保存用中間体が有用となり得る製造プロセスのいくつかの段階を強調している。本発明によれば、BDSの形成前の安定な保存用中間体の使用が、全体的な生物製剤製造プロセスの効率および柔軟性を改善し得る。安定な保存用中間体は、BDS製造内の段階のいずれの間、および/またはDP製造内の段階のいずれの間でも使用することができる。例えば、保存用安定中間体は、細胞培養から生物製剤を採取した直後に形成することができる。保存用安定中間体は、第1の精製段階、またはその後の精製段階の後に形成することができる。保存用安定中間体は、タンパク質A段階、クロマトグラフィー段階および/または濾過段階の後に形成することができる。保存用安定中間体は、限外濾過および/または膜分離段階の後に形成することができる。したがって、本発明によれば、安定な保存用中間体は、BDS製造の任意の段階間、BDS製造およびDP製造段階間、DP製造の任意の段階間、またはそのような段階の任意の組み合わせにおいて使用することができる。本発明の具体的な一実施形態において、安定な保存用中間体は、BDS製造中、すなわちBDSの形成前に形成することができる。
【0037】
本発明の保存用中間体は、安定であり、それによりプロセス内の所望の時点で延長された中断を可能とすることで製造プロセスにおける柔軟性の増加を可能とするため、特に有用である。本発明の具体的な実施形態において、中間体は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも30日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも75日間、または少なくとも135日間安定である。
【0038】
本発明の安定な保存用中間体はまた、−80℃または−50℃に維持される必要はないため、特に有用である。例えば、本発明の保存用安定中間体は、約−50℃、−40℃、−30℃、−20℃、−10℃、−5℃、0℃の温度で安定であり得る。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、約−50℃から−40℃、−40℃から−30℃、−30℃から−20℃、−20℃から−10℃、−10℃から−5℃、−5℃から0℃、または0℃から25℃の温度で安定である。いくつかの実施形態において、本発明の保存用安定中間体は、約−50℃から25℃、−40℃から25℃、−30℃から25℃、−20℃から25℃、−10℃から25℃、5℃から25℃または0℃から25℃の温度で安定であり得る。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、室温(25℃)で安定である。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも30日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも75日間、または少なくとも135日間室温で安定である。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、冷蔵温度(2〜8℃)で安定である。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも30日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも75日間、または少なくとも135日間、2〜8℃で安定である。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、−20℃で安定である。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも30日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも75日間、または少なくとも135日間、−20℃で安定である。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は空気中で安定であり、真空下で保存する必要はない。しかしながら、安定な保存用中間体は、任意選択で真空下で保存することができる。本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体の安定性は、真空下で保存されると増加する。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、少なくとも50%、40%、30%、20%、10%、または5%の相対湿度から、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも30日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも75日間、または少なくとも135日間安定である。
【0040】
本発明の安定な保存用中間体は、固体、半固体または懸濁液であり得る。固体、半固体または懸濁液は、液体、凍結液体、結晶、沈殿物、フリーズドライ粒子またはミクロスフェア、凍結乾燥製剤(凍結乾燥品)、粉末、ビシクルまたは微小粒子(例えばミクロスフェア)であり得る。具体的な一実施形態において、安定な保存用中間体は、粉末の形態である。別の具体的な一実施形態において、安定な保存用中間体は、沈殿物の形態である。
【0041】
本発明のさらなる実施形態において、安定な保存用中間体は、保存体積の低減をもたらす。例えば、体積は、安定な中間体の形成前の体積から、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1,000倍、または少なくとも約10,000倍低減され得る。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、低い塩濃度を有する。低い塩濃度を有する安定な保存用中間体は、下流側のプロセスが塩感受性である製造プロセスにおいて特に有用である。生物製剤製造プロセスの特定の場合において、高い塩濃度を有する中間体は、下流側の処理段階の効率を低下し得る。例えば、イオン交換クロマトグラフィーは、イオン交換体の容量が導入溶液のイオン強度と逆の相関関係があるため、生成物の導入中低い塩濃度が必要であることが知られている。本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体の低い塩濃度は、保存後に行われる精製作業における柔軟な選択を可能とする。いくつかの具体的な実施形態において、安定な保存用中間体の塩濃度は、約5M、2.5M、1M、500mM、400mM、300mM、200mM、100mM、50mM、25mM、10mMまたは5mM未満である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、特定の純度を有する。例えば、製造プロセスにおいて異なる段階で形成された安定な保存用中間体は、異なるレベルの生成物純度および異なる特性を有することが予測される。例えば、採取後に生成された安定な保存用中間体は、30〜50%の生成物純度を有し得、一方精製(すなわちタンパク質Aカラム精製)後の安定な保存用中間体は、90%の生成物純度を有し得、UF/DF後の安定な保存用中間体は、約、または少なくとも99%の生成物純度を有し得る。したがって、本発明の一実施形態によれば、安定な保存用中間体は、約20〜90%、20〜80%、20〜70%、20〜60%または20〜50%の純度の生物製剤を含有する。別の実施形態において、安定な保存用中間体は、30〜90%、30〜80%、30〜70%、30〜60%または30〜50%の純度の生物製剤を含有する。さらに別の実施形態において、安定な保存用中間体は、40〜90%、40〜80%、40〜70%、40〜60%または40〜50%の純度の生物製剤を含有する。いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、約99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%または50%未満の純度である。さらに別の実施形態において、生物製剤は、約70〜99%、75〜99%、80〜99%、85〜99%、90〜99%、70〜95%、75〜95%、80〜95%、85〜95%、90〜95%、70〜90%、75〜90%、80〜90%、85〜90%、70〜85%、75〜85%または80〜85%の純度である。一実施形態において、安定な保存用中間体は、約90%の純度の生物製剤を含有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、特定の濃度の不純物、例えば塩、ポリマー、他の宿主細胞タンパク質等を含有する。例えば、安定な保存用中間体は、約25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%または0.05%以下の特定の不純物を含有し得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、安定な保存用中間体の選択は、所望の最終薬剤生成物の種類により決定され得る。例えば、液体または凍結液体の安定な保存用中間体は、液体である最終薬剤生成物の生成に有用となり得る。また、凍結液体の安定な保存用中間体は、凍結液体最終薬剤生成物用に凍結乾燥された最終薬剤生成物の形成に有用となり得る。特に、安定な保存用中間体および最終薬剤生成物の保存、安定性、寿命および外観に対する、安定な保存用中間体の種類および最終薬剤生成物の種類の影響が考慮されるべきである。
【0046】
本発明のある特定の安定な保存用中間体は、5kDまでのペプチド、低分子量タンパク質(例えば10〜30kDのタンパク質)、高分子量タンパク質(例えば50〜150kD)、例えばモノクローナル抗体および結合タンパク質を含むがこれらに限定されない、様々な種類の生成物と適合し得る。本発明のタンパク質またはポリペプチドは、サイトカイン、ホルモン、凝固因子、増殖因子、抗体、ワクチンの抗原ペプチド、そのようなポリペプチドの断片または誘導体等であり得る。本発明の他の実施形態において、本発明の安定な保存用中間体は、アンチセンス、オリゴヌクレオチド、siRNA、DNA、または小分子を含む核酸に適合し得る。
【0047】
本発明のある特定の安定な保存用中間体は、製造における上流側および下流側のプロセスの分断に加え、様々な利点を提供する。例えば、いくつかの保存用安定中間体は、例えば、運搬の能力、またはバルク原薬等の寿命を改善し得る中間体の長期の保存を可能とする。本発明のいくつかの具体的な安定な保存用中間体は、高濃度タンパク質保存を可能とする。本発明のある特定の安定な保存用中間体は、製造の柔軟性および/または効率を増加する。さらに、本発明の安定な保存用中間体は、タンパク質精製段階の有効性を増加し得る。さらに、本発明のいくつかの実施形態の安定な保存用中間体は、生成物またはタンパク質、特に高濃度のタンパク質の凝集を防止する。また、ある特定の安定な保存用中間体は、単離されたBDSおよび/またはDPの溶液粘度の増加を防止する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体の形態は、最終薬物製剤生成物において使用されるのと同じまたは類似した形態であってもよい。例えば、採取後のタンパク質は、最終製剤においても使用される保存形式の中間体として、例えば高濃度タンパク質ミクロスフェアまたはタンパク質結晶懸濁液として保存され得る。
【0049】
安定な保存用中間体の形成
安定な保存用中間体を生成するための適切な手段は、例えば、相分離技術、例えば沈殿、結晶化、凍結乾燥、フリーズドライおよび微小粒子形成等を含む。
【0050】
一実施形態において、保存用中間体を生成するための手段として沈殿が使用される。したがって、沈殿を使用して、対象となる可溶性生物製剤を溶液から除去して固相(沈殿物)とし、安定な保存用中間体を形成することができる。沈殿技術は、本技術分野では周知である。沈殿は、例えば、塩濃度を変える、有機溶媒を添加もしくは除去する、pHを変化させる、多価金属イオンを添加する、非イオン性ポリマーを添加する、または温度をシフトさせることにより達成することができる。本発明によれば、増加した安定性、寿命および/または低減された保存体積を有する安定な保存用中間体をもたらす任意のタンパク質沈殿手段を使用することができる。
【0051】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、安定な保存用中間体を形成するために塩を用いた沈殿が使用される。塩は、例えば、クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、硝酸塩またはチオシアン酸塩を含有し得る。いくつかの実施形態において、硫酸アンモニウムを使用して沈殿物を形成する。
【0052】
いくつかの具体的な実施形態において、安定な保存用中間体を形成するためにpHの調節による沈殿が使用される。例えば、安定な保存用中間体を形成するために、pHは約7に調節され得るか、または対象となる生物製剤の等電点に調節され得る。いくつかの実施形態において、pHは、約5.5〜8.5、6〜8、6.5〜7.5、6.5〜7.0または7.0〜7.5に調節される。いくつかの実施形態において、pHは約7.2に調節される。
【0053】
pHはまた、様々な手段により調節され得る。いくつかの実施形態において、pHは、酸の添加により低下される。適切な酸は、過塩素酸(HClO)、ヨウ化水素酸(HI)、臭化水素酸(HBr)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(二塩基)(HSO)等の強酸、もしくは酢酸(CHCOOH)(例えば氷酢酸)、クエン酸(C)、ギ酸(HCOOH)、シアン化水素酸(HCN)、硫化水素イオン(HSO)等の弱酸、または上記酸の任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、pHは、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝剤(例えばリン酸ナトリウムおよびカリウム)、重炭酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、トロメタミン緩衝剤、HEPES緩衝剤およびこれらの組み合わせ等の使用により調節することができる。一実施形態において、pHは、トリス塩基を使用して調節される。
【0054】
いくつかの具体的な実施形態において、保存用安定中間体を形成するために金属イオンの添加による沈殿が使用される。例えば、Mn2+、Fe2+、Ca2+、Mg2+またはAgを使用して生物製剤を沈殿させることができる。いくつかの具体的な実施形態において、安定な保存用中間体を形成するために有機溶媒の添加による沈殿が使用される。例えば、エタノールを使用して生物製剤を沈殿させることができる。
【0055】
いくつかの具体的な実施形態において、保存用安定中間体を形成するためにポリマーおよび/または高分子電解質の使用による沈殿が使用され得る。例えば、PEG(ポリエチレングリコール)、デキストラン、その他の水溶性ポリマー、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースまたはポリエチレンイミンを使用して生物製剤を沈殿させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、沈殿に使用されるPEGの濃度は、約20%、15%、10%、5%、4%、3%または2%PEG(重量比)となり得る。また、沈殿に使用されるPEG溶液は、約0.05〜20%、0.05〜15%、0.05〜10%、0.05〜5%、0.05〜4%、0.05〜3%または0.05〜2%PEG(重量比)となり得る。また、沈殿に使用されるPEG溶液は、約0.10〜20%、0.10〜15%、0.10〜10%、0.10〜5%、0.10〜4%、0.10〜3%または0.10〜2%PEG(重量比)となり得る。また、沈殿に使用されるPEG溶液は、約0.50〜20%、0.50〜15%、0.50〜10%、0.50〜5%、0.50〜4%、0.50〜3%または0.50〜2%PEG(重量比)となり得る。また、沈殿に使用されるPEG溶液は、約1〜20%、1〜15%、1〜10%、1〜5%、1〜4%、1〜3%または1〜2%PEG(重量比)となり得る。一実施形態において、沈殿に使用されるPEG溶液は、約5〜10%PEG(重量比)となり得る。一実施形態において、沈殿に使用されるPEG溶液は、約1.5%PEG(重量比)となり得る。
【0057】
PEGは、約400〜35,000の分子量を有し得る。例えば、一実施形態において、PEGは、少なくとも約500の分子量を有する。別の実施形態において、PEGは、約20,000または10,000未満の分子量を有する。別の実施形態において、PEGは、約400から2,000、2,000から5,000、5,000から10,000、または10,000から35,000の分子量を有する。別の実施形態において、PEGは、約1000〜10,000、2,000から8,000、3,000から6,000、または3,000から5,000の分子量を有する。さらに別の実施形態において、PEGは、3,000から4,000、2,000から6,000、または1,000から7,000の分子量を有する。具体的な一実施形態において、PEGは、少なくとも約3350の分子量を有する。
【0058】
本発明の別の具体的な実施形態において、生物製剤を沈殿させ安定な保存用中間体を形成するために亜鉛の添加が使用される。亜鉛の濃度は、約100mM、75mM、50mM、25mM、20mM、15mM、10mM、5mM、4mMまたは3mMまでとなり得る。また、亜鉛の濃度は、約0.5〜100mM、0.5〜75mM、0.5〜50mM、0.5〜25mM、0.5〜20mM、0.5〜15mM、0.5〜10mM、0.5〜5mM、0.5〜4mMまたは0.5〜3mMとなり得る。また、亜鉛の濃度は、約1〜10mM、1〜7.5mM、1〜5.0mM、1〜3mMまたは1〜2.5mMとなり得る。一実施形態において、亜鉛は約2.5mMである。
【0059】
いくつかの具体的な実施形態において、沈殿技術の組み合わせが使用される。例えば、沈殿は、塩の添加および温度の低下により行うことができ、または、pHの変化および有機溶媒の添加により行うことができる。具体的な一実施形態において、沈殿は、ポリマーおよびイオンの添加により行うことができる。さらに別の実施形態において、安定な保存用中間体を生成するための手段として、PEGおよび亜鉛溶液からの沈殿が使用される。いくつかの実施形態において、PEGおよび亜鉛溶液は、約1.5%のPEGおよび約2.5mMの亜鉛を含有する。
【0060】
一実施形態において、安定な保存用中間体を生成するための手段としてミクロスフェアの生成が使用される。本明細書で使用される場合、「ミクロスフェア」という用語は、概して微小粒子、ミクロスフェアおよびビーズを指す。ミクロスフェアは本技術分野において知られており、合成ポリマー、天然ポリマー、コポリマー、タンパク質および/または多糖類で作製され得る。それらは、タンパク質精製技術、薬物送達技術および診断用途を含む、様々な用途において使用されている。本発明によれば、それらはまた、安定な保存用中間体を生成するためにも使用することができる。本発明のミクロスフェアは、粉末の形態であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、高濃度のタンパク質を含有する保存用中間体のための手段を生成するためにミクロスフェアが使用される。ミクロスフェアのタンパク質含量は、ミクロスフェアの70重量%、80重量%、90重量%または95重量%を超えることができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、ミクロスフェアは、特定の粒度分布を有する。例えば、ミクロスフェアは、1〜5ミクロン、1〜50ミクロン、または1〜100ミクロンの直径を有するように製剤化され得る。いくつかの実施形態において、ミクロスフェアは、90%を超えるタンパク質の薬物であり、狭い粒度分布、例えば1〜50ミクロンの直径を有する。
【0063】
具体的な一実施形態において、本発明のミクロスフェアは、巨大分子およびポリマーを、巨大分子の等電点付近のpHで水溶液中で組み合わせ、微小粒子を形成するのに十分な時間溶液をエネルギー源に曝露することにより、生成することができる。例えば、一実施形態において、本発明の微小粒子は、PROMAXX(登録商標)ミクロスフェア技術を使用して生成される。PROMAXX(登録商標)技術は、徐放性医薬製剤を提供するために設計されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,554,730号、第5,578,709号、第5,981,719号、第6,090,925号、および第6,268,053号により詳細に記載されている。
【0064】
別の実施形態において、製造における上流側および下流側のプロセスを分断するために使用され得る保存用中間体を生成するための手段として、結晶が使用される。結晶形成技術は、本技術分野において知られている。例えば、タンパク質結晶を調製する方法は、Protein Crystallization:Techniques,Strategies,and Tips:A Laboratory Manual(Bergfors,Internat’l University Line(1999))に記載されている。タンパク質結晶化技術はまた、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,359,118号および第6,500,933号により詳しく記載されている。本発明によれば、増加した安定性、寿命および/または低減された保存体積を有する安定な保存用中間体をもたらす任意の結晶化手段を使用することができる。
【0065】
さらなる実施形態において、安定な保存用中間体を生成するための手段として、フリーズドライが使用される。別の実施形態において、安定な保存用中間体を生成するための手段として、凍結乾燥が使用される。タンパク質のフリーズドライおよび凍結乾燥技術は本技術分野において周知であり、例えば、Freeze−Drying/Lyophilization of Pharmaceutical and Biological Products(Rey and May,2nd edition,Informa Health Care(2004))に記載されている。本発明によれば、増加した安定性、寿命および/または低減された保存体積を有する安定な保存用中間体をもたらす任意のフリーズドライまたは凍結乾燥手段を使用することができる。
【0066】
生物製剤の製造プロセス
図1および2を参照すると、生物製剤を製造するためのプロセスは、生物反応器システム等の工業規模の培養システムを使用して生きた細胞が培養されるバルク原薬(BDS)製造段階を含む。培養された細胞の生成物は採取され、次いで精製されてBDSを形成し得る。「バルク原薬」または「BDS」は、生成物を含有する組成物、製剤、懸濁液または溶液を指し、生成物は工業規模のプロセスにおいて細胞培養により生成され、細胞から採取され、次いで少なくとも部分的に精製される。一般に、BDSは、品質特性、強度、純度、識別および安全性評価を含む特定の出荷規格を満たさなければならない。本発明のいくつかの実施形態において、安定な保存用中間体は、生物製剤の採取後、ただしBDSの形成前に形成される。
【0067】
BDSの形成後、次の活動はDP製造である。DP製造において、BDSは、例えば無菌濾過され得る。無菌濾過後、生成物は容器または包装内に充填され、最終生成物となる。任意選択で、生成物はまた、例えば充填段階後に凍結乾燥することができ、次いでこの凍結乾燥された生成物が最終生成物となることができる。
【0068】
図1および2は、生物製剤を製造するためのプロセスの例示的な概要を示すことを意図する。しかしながら、本発明の製造プロセスは、図1および2に記載されるような特定の段階に従うものに限定されない。例えば、本発明の製造プロセスは、必ずしも図に記載されるような段階のほとんどまたはすべてを含む必要があるわけではない。さらに、本発明の製造プロセスにおける段階は、図に示された順番とは異なる順番で行われてもよく、図に示されていない、または明細書中に明示的に記載されていないその他の段階を含み得る。
【0069】

生物製剤のための製造プロセスにおける安定な保存用中間体の使用
上述したように、本発明は、工業規模の生物製剤製造において使用される安定な保存用中間体に関し、安定な保存用中間体は、製造プロセスの任意の段階で形成され得る。安定な保存用中間体の使用は、上流側および下流側の製造活動を分断することにより、例えば上流側のバルク原薬(BDS)製造活動を下流側のBDS製造活動から分断することにより、製造プロセスに柔軟性を提供する。分断は、例えば、生物反応器プロセスから生成物を採取した後、採取された生成物の精製後、および/または濾過段階後に行うことができる。分断はまた、薬剤生成物形成中に行うことができる。
【0070】
「分断」は、生物製剤を製造するためのプロセス内の任意の段階で、安定な保存用中間体を提供することを指す。例えば、分断は、採取後または精製後等のバルク原薬製造中に行うことができる。また、分断は、例えばBDSのさらなる精製後(例えば限外濾過(UF)/膜分離(DF)後等)の、薬剤生成物(DP)製造活動中に行うこともできる。また、分断は、バルク原薬製造と薬剤生成物製造との間に行うこともできる。「分断」はまた、採取、精製、または調製されたバルク生成物が安定な保存用中間体として調製された安定な保存用中間体を提供することを指す。分断は、生物学的生成物を製造するプロセスに柔軟性を追加する安定な保存用中間体の形成により達成される。したがって、「分断手段」は、1つの活動の別の活動への結合を低減または排除するための手段、分離する、切り離す、切断するための手段、またはそれらと等価の手段を指す。分断手段は、例えば沈殿、結晶化およびフリーズドライを含む、上述の安定な保存用中間体を形成する任意の手段を含む。
【0071】
分断は、生物製剤製造プロセスにおける長期の中断または保存段階を可能とし得る。例えば、一旦安定な保存用中間体が形成されると、少なくとも約10日間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、または少なくとも約1年間保存することができる。保存は、−80℃である必要はない。例えば、本発明の安定な保存用中間体は、2〜8℃または−20℃で保存することができる。安定な保存用中間体は、約−40℃、−30℃、−20℃、−10℃、−5℃、0℃を超える温度で保存することができる。安定な保存用中間体は、約4℃または室温で保存することができる。「保存」という用語は、操作することなく比較的一定の状態である期間中間体を保持、維持、持続することを指す。保存された形態は場所間で移動させることができ、中間体が実質的に改質されないまたは処理されない限り、保存されているとみなされる。
【0072】
本発明によれば、安定な保存用中間体は、次いでバルク原薬を形成するために下流側の処理段階において使用される。安定な保存用中間体の形態および保存条件に依存して、中間体は、下流側の処理段階が開始し得る前に、解凍する、戻す、再懸濁させるおよび/または混合することが必要となり得る。安定な保存用中間体は、下流側の処理段階に適した任意の媒体または緩衝液内に戻すまたは再懸濁させることができ、安定な保存用中間体が形成された元の体積より小さい、それと等しい、またはそれより大きい体積で戻すまたは再懸濁させることができる。一実施形態において、安定な保存用中間体は、安定な保存用中間体が形成された元の体積の約2分の1、4分の1、または10分の1の体積で戻される。別の実施形態において、安定な保存用中間体は、安定な保存用中間体が形成された元の体積とほぼ等しい体積で戻される。さらに別の実施形態において、安定な保存用中間体は、安定な保存用中間体が形成された元の体積の約2倍、3倍、4倍、5倍または10倍の体積で戻される。
【0073】
一実施形態において、本発明は、生物製剤を生成する細胞を培養する段階と、細胞培養から生物製剤を採取する段階と、安定な保存用中間体を形成する段階とを含む、生物製剤を製造するプロセスに関する。安定な保存用中間体は、次いである期間保存することができ、−80℃で凍結する必要はない。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、本発明の生物製剤製造プロセスは、単離手段、調製手段および分断手段を備える。単離手段は、生物反応器プロセスからバルク生物学的物質を単離するための手段であり、調製手段は、バルク生物学的物質から精製された生成物を調製するための手段であり、分断手段は、バルク生物学的物質の単離を精製された生成物の調製から分断するための手段であり、分断手段は、バルク生物学的物質の安定な保存用中間体を調製するための手段を備える。
【0075】
「単離手段」という用語は、単離する、精製する、分離する、抽出する、分画化する、沈殿させるための手段、またはそれらと等価の手段を指す。バルク生物学的物質を単離するための手段は、以下でより詳細に説明される。「単離された」タンパク質または代謝産物とは、自然環境にないタンパク質または代謝産物が意図される。様々なレベルの精製が適用され得る。例えば、単離されたポリペプチドは、その天然または自然環境から除去することができる。宿主細胞内に発現した組み換えにより生成されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術により分離された、分画化された、または部分的にもしくは実質的に精製された天然または組み替えポリペプチドと同様に、本発明の目的において単離されたとみなすことができる。
【0076】
「調製手段」という用語は、調製する、生成する、単離する、精製するための手段、またはそれらと等価の手段を指す。調製手段は、以下でより詳細に説明される。
【0077】
「分断手段」という用語は、上述のように、1つの活動の別の活動への結合を低減または排除するための手段、分離する、切り離す、切断するための手段、またはそれらと等価の手段を指す。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、生物製剤を製造するためのプロセスは、生物反応器プロセスを使用してバルク生物学的物質を単離するための手段と、バルク生物学的物質から精製された生成物を調製するための手段と、安定な保存用中間体の調製に基づき、バルク生物学的物質の単離を精製された生成物の調製から分断するための手段とを必要とする。
【0079】
生物製剤
本発明に従い製造される「生物製剤」は、工業規模の製造プロセスにおいて細胞により生成される。生物製剤は、例えば、生体高分子、タンパク質、代謝産物、ポリペプチドもしくはその断片、ポリヌクレオチドもしくはその断片、または小分子であり得る。
【0080】
「生物学的生体高分子」または「生体高分子」という用語は、本明細書で使用される場合、1kDaを超える分子量を有する分子を指し、生物から、または例えば真核(例えば哺乳類)細胞培養または原核(例えば細菌)細胞培養等の細胞培養から単離され得る。いくつかの実施形態において、この用語の使用は、ポリマー、例えば核酸(DNA、RNA等)、ポリペプチド(タンパク質等)、炭水化物および脂質等のバイオポリマーを指す。いくつかの実施形態において、「生体高分子」という用語は、タンパク質を指す。いくつかの実施形態において、「生体高分子」という用語は、組み換えタンパク質または融合タンパク質を指す。いくつかの実施形態において、タンパク質は可溶性である。いくつかの実施形態において、生体高分子は、抗体、例えばモノクローナル抗体である。商業的に重要な生体高分子は、例えばタンパク質および核酸、例えばDNAおよびRNAを含む。工業規模で頻繁に単離される生体高分子の2つの例は、モノクローナル抗体および融合タンパク質である。これらの抗体および融合タンパク質は、様々な診断および治療分野において有益であり、遺伝性または後天性免疫不全症および感染性疾患等の様々な疾患を処置するために使用されている。
【0081】
本発明の生物学的生成物は、例えば、サイトカイン、ホルモン、凝固または増殖因子、抗原ペプチド、抗体もしくはその断片、mRNA分子、ベクターまたはアンチセンスポリヌクレオチド分子であってもよい。タンパク質は、例えば、治療用タンパク質または所望の標的を認識するタンパク質であってもよい。タンパク質は抗体であってもよい。生成物または生物製剤は、5kDまでのペプチド、10〜30kDの範囲の低分子量タンパク質、または50〜150kDの範囲内の高分子量タンパク質を示し得る。生成物または生物製剤は、モノクローナル抗体およびポリペプチド結合タンパク質、ならびに、アンチセンス、オリゴヌクレオチド、siRNAおよびDNAを含む核酸を含み得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」だけでなく複数の「ポリペプチド」も包含することを意図し、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)により直線的に結合されたモノマー(アミノ酸)で構成された分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖(複数を含む)を指し、具体的な長さの生成物を示さない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つ以上のアミノ酸の鎖(複数を含む)を指すように使用される他の任意の用語が「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれと交換可能に使用され得る。「ポリペプチド」という用語はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク分解による切断、または非天然アミノ酸による修飾を制限なく含む、ポリペプチドの発現後の修飾生成物指すように意図される。ポリペプチドは、天然の生物源から得ることができ、または、組み換え技術により生成することができるが、特定の核酸配列から翻訳される必要はない。それは、化学合成を含む任意の様式で生成され得る。
【0083】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数の核酸だけでなく複数の核酸も包含することを意図し、単離された核酸分子またはコンストラクト、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合または非従来型の結合(例えばペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含み得る。「核酸」という用語は、ポリヌクレオチド内に存在する1つ以上の任意の核酸セグメント、例えばDNAまたはRNA断片を指す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えば、ベクター内に含有されたTNFα抗体をコード化する組み換えポリヌクレオチドは、本発明の目的において、単離されたとみなされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞内に維持された組み換えポリヌクレオチド、または溶液中の(部分的または実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたRNA分子は、本発明のポリヌクレオチドの生体内または生体外RNA転写産物を含む。本発明による単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成により生成されたそのような分子をさらに含む。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーター等の調節要素であってもよく、またはそれらを含み得る。
【0084】
代謝産物は、細胞の代謝作用により生成された物質、例えば小分子であってもよい。小分子は、5,000Da未満、または1,000Da未満の分子量を有し得る。代謝産物は、例えば、単糖類もしくは多糖類、脂質、核酸もしくはヌクレオチド、ペプチド(例えば低分子タンパク質)、毒素または抗生物質であってもよい。
【0085】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」は、単数の「タンパク質」だけでなく複数の「タンパク質」も包含することを意図する。したがって、本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「アミノ酸鎖」、またはアミノ酸の鎖(複数を含む)を指すように使用される他の任意の用語が「タンパク質」の定義に含まれ、「タンパク質」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれと交換可能に使用され得る。この用語はまた、翻訳後の修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク分解による切断、または非天然アミノ酸による修飾を受けたタンパク質をさらに含む。また、タンパク質は、多量体、例えば二量体、三量体等を形成するポリペプチドを含む。また、タンパク質という用語は、融合タンパク質、例えば、タンパク質(またはタンパク質の断片)が抗体(または抗体の断片)に結合する遺伝子融合プロセスを介して生成されるタンパク質を含む。本発明の融合タンパク質の例には、ヒトIgG1およびヒトIgE、ならびにリンフォトキシンβ受容体免疫グロブリンG1からの連結Fc領域を含むジスルフィド連結二官能性タンパク質が含まれる。
【0086】
抗体は本発明の生物製剤となり得る。「抗体」という用語は、ポリクローナル、モノクローナル、多特異的、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab発現ライブラリーから生成された断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id抗体)、および上述のいずれかのエピトープ結合断片を指す。いくつかの実施形態において、「抗体」という用語は、モノクローナル抗体を指す。また、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性タンパク質、すなわち抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子も指す。本発明の方法により精製され得る免疫グロブリン分子は、任意の型(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。本発明の抗体はまた、キメラ、単鎖、およびヒト化抗体を含む。本発明の抗体の例には、市販の抗体、例えばナタリズマブ(ヒト化抗a4インテグリンモノクローナル抗体)、ヒト化Anti−Alpha V Beta 6モノクローナル抗体、ヒト化抗VLA1 IgG1κモノクローナル抗体、huB3F6(ヒト化IgG1/κモノクローナル抗体)が含まれる。
【0087】
本発明に従い生成され使用される抗体は、鳥および哺乳動物を含むいかなる動物起源であってもよい。好ましくは、本発明の方法により精製される抗体は、ヒト、ネズミ(例えばマウスおよびラット)、ロバ、シップラビット(ship rabbit)、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。本明細書で使用される場合、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つ以上のヒト免疫グロブリンで遺伝子組み換えされた、内因性の免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号を参照されたい。いくつかの実施形態において、抗体は、例えばナタリズマブ(TYSBARI(登録商標)、Elan Pahrmaceuticals、San Diego、CA)等の市販の抗体を含む、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4抗体を含むが、これらに限定されない。
【0088】
本発明に従い生成および使用される抗体は、例えば、天然抗体、無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成された多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、抗体断片(例えば1つ以上の抗原に結合する、および/またはそれを認識する抗体断片)、ヒト化抗体、ヒト抗体(Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,591,669号および第5,545,807号)、抗体ファージライブラリから単離された抗体および抗体断片(McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990);Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991);Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.21:2265−2266(1993))を含む。本発明の方法により精製される抗体は、N末端またはC末端で異種ポリペプチドに組み換えにより融合されていてもよく、または、ポリペプチドもしくは他の組成物に化学的に共役(共有結合的および非共有結合的共役)されていてもよい。例えば、本発明の方法により精製される抗体は、検出アッセイにおける標識として有用な分子、および異種ポリペプチド、薬物、または毒素等のエフェクタ分子に組み替えにより融合または共役されていてもよい。例えば、PCT国際公開第WO92/08495号、第WO91/14438号、第WO89/12624号、米国特許第5,314,995号、および欧州特許第EP396,387号を参照されたい。
【0089】
いくつかの実施形態において、生物製剤は、可溶性タンパク質である。「可溶性」という用語は、例えば、細胞質、ペリプラズムまたは細胞外培地等の、細胞宿主の親水性または水性環境に実質的に局在するタンパク質の傾向を指す。したがって、細胞分画化の間、可溶性タンパク質は、一般に、宿主細胞の細胞質、ペリプラズムまたは細胞外成分により実質的に単離される。いくつかの実施形態において、可溶性タンパク質は洗剤の非存在下で水溶性である。ポリペプチドの細胞局在もタンパク質の細胞分画化も絶対的ではないことが、当業者には理解される。したがって、「実質的に局在する」という語句は、50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のタンパク質が特定の細胞部位、例えば細胞質、ペリプラズムまたは細胞外培地内に存在するタンパク質を指す。
【0090】
バルク原薬製造
細胞培養
本発明によれば、生成物または生物製剤は、例えば細胞培養内で増殖された生きた細胞により生成または発現され得る。「発現させる」または「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、それにより遺伝子が生化学的物質、例えばポリペプチドまたは生体高分子を生成するプロセスを指す。プロセスは、限定されることなく、遺伝子ノックダウンならびに一時的発現および安定発現の両方を含む、細胞内の遺伝子の機能的存在の任意の顕現を含む。これには、限定されることなく、遺伝のメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、およびそのようなmRNAのポリペプチド(複数を含む)への翻訳が含まれる。最終的な所望の生成物が生化学的物質である場合、発現は、その生化学的物質および任意の前駆体の形成を含む。遺伝子の発現は、「遺伝子産物」を生成する。本明細書で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば遺伝子の転写により生成されるメッセンジャーRNA、または転写産物から翻訳されるポリペプチドであり得る。本明細書に記載される遺伝子産物は、転写後の修飾、例えばポリアデニル化を受けた核酸、または翻訳後の修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質添加、他のサブユニットタンパク質との会合、タンパク分解的切断等を受けたポリペプチドをさらに含む。生物製剤はまた、細胞により生成され得、例えば細胞の代謝作用により生成される代謝産物、例えば小分子等である。「生成される」という用語は、上述のような「発現」、および細胞が対象となる生物製剤を形成するその他の方法の両方を含む。
【0091】
本発明の生物製剤は、増殖培地および様々な真核細胞、例えば哺乳動物細胞等を含む細胞培養から生成され得る。本発明の方法において使用される哺乳動物細胞を含め、本発明の哺乳動物細胞は、培養内で増殖し得る任意の哺乳動物細胞である。例示的な哺乳動物細胞は、例えば、CHO細胞(CHO−K1、CHO DUKX−B11、CHO DG44を含む)、VERO、BHK、HeLa、CV1(Cos、Cos−7を含む)、MDCK、293、3T3、C127、骨髄腫細胞株(特にネズミ)、PC12、HEK−293細胞(HEK−293TおよびHEK−293Eを含む)、PER C6、Sp2/0、NS0およびW138細胞を含む。上述の細胞のうちどの細胞から得られた哺乳動物細胞でも使用可能である。本発明の一実施形態において、生物製剤は、CHO細胞から生成される。
【0092】
本発明の生物製剤は、増殖培地および様々な原核細胞、例えば大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、およびシュードモナス属内の様々な種、例えば緑膿菌、酵母細胞、例えばサッカロミセス、ピチア、ハンゼヌラ、クリベロマイセス、シゾサッカロミセス、シュワニオミセスおよびヤロウイア、昆虫細胞、例えばキンウワバ、鱗翅類、ヨトウガ、ショウジョウバエおよびSf9、または植物細胞、例えばシロイヌナズナを含む細胞培養から生成され得る。当業者は、対象となる生物製剤およびプロセスの詳細に依存して適切な細胞株を選択することができる。いくつかの実施形態において、細胞株は植物細胞を含む。
【0093】
細胞培養は、本技術分野で知られた任意の方法に従い増殖または維持され得るが、一般に大規模細胞培養である。例えば、いくつかの実施形態において、細胞培養は、少なくとも500リットル、少なくとも750リットル、少なくとも1,000リットル、少なくとも1,250リットル、少なくとも1,500リットル、少なくとも2,000リットル、少なくとも5,000リットルまたは少なくとも10,000リットルである。
【0094】
本発明における「組成物」という用語は、本発明の生物製剤の1つ以上の分子および任意選択で少なくとも1つの不純物の混合物を指し、不純物および生物製剤は同じではない。いくつかの実施形態において、組成物は、生物製剤、細胞宿主生物(例えば、哺乳動物細胞)、および、宿主生物を繁殖させ、対象となる生物製剤を発現または生成させるのに十分な増殖培地を含む。
【0095】
増殖培地の選択および使用は当業者に知られている。いくつかの実施形態において、増殖培地は細胞培養培地である。細胞培養培地は、繁殖されている細胞培養の型により様々である。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は市販の培地である。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、無機塩、炭水化物(例えばグルコース、ガラクトース、マルトースまたはフラクトース等の糖類)、アミノ酸、ビタミン(例えばビタミンB群(例えばB12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミンおよびビオチン)、脂肪酸および脂質(例えばコレステロールおよびステロイド)、タンパク質およびペプチド(例えば、アルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチンおよびフェチュイン)、血清(例えばアルブミン、増殖因子および増殖阻害剤、例えばウシ胎仔血清、新生仔ウシ血清およびウマ血清)、微量元素(例えば亜鉛、銅、セレンおよびトリカルボン酸中間体)ならびにこれらの組み合わせを含む。増殖培地の例には、基本培地(例えばMEM、DMEM、GMEM)、複合培地(RPMI1640、Iscoves DMEM、Leibovitz L−15、Leibovitz L−15、TC100)、無血清培地(例えばCHO、Ham F10および誘導体、Ham F12、DMEM/F12)が含まれるが、これらに限定されない。増殖培地に見られる一般的な緩衝剤は、PBS、Hanks BSS、Earles塩、DPBS、HBSS、EBSSを含む。哺乳動物細胞の培養のための培地は、本技術分野において周知であり、例えば、Sigma−Aldrich Corporation (St.Louis、MO)、HyClone(Logan、UT)、Invitrogen Corporation(Carlsbad、CA)、Cambrex Corporation(E.Rutherford、NJ)、JRH Biosciences(Lenexa、KS)、Irvine Scientific(Santa Ana、CA)、およびその他から入手可能である。増殖培地に見られる他の成分は、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、システイン/シスチン、グルタミン、葉酸、グルタチオン、リノール酸、リノレン酸、リポ酸、オレイン酸、パルミチン酸、ピリドキサール/ピリドキシン、リボフラビン、セレン、チアミン、トランスフェリンを含み得る。本発明の範囲内に含まれる増殖培地への変更が存在することが、当業者には認識される。
【0096】
生物反応器
細胞培養は、生物反応器等のほぼ大規模製造用の大きさの容器内で増殖させることができる。「生物反応器」という用語は、生きた細胞(例えば国際公開第WO2006/071716号を参照)を培養するための特定のデバイスを指す。細胞は、所望の生成物、例えばタンパク質または代謝産物を生成または発現することができる。
【0097】
一般に、生物反応器は約1Lから10,000Lまたは20,000Lの量で細胞を培養し、細胞および微小担体、無菌酸素、培養用の各種培地等を導入するための適切な入口、細胞、微小担体および培地を除去するための出口、ならびに生物反応器内の培養培地を撹拌するための手段、例えばスピンフィルタ等を備える。例示的な培地は、本技術分野において開示されており、例えば、Freshney,Culture of Animal Cells−−A Manual of Basic Techniques,Wiley−Liss, Inc.New York,N.Y.,1994,pp.82−100を参照されたい。また、生物反応器は一般に、温度を制御するための手段、および好ましくは生物反応器の機能を電子的に監視および制御するための手段を有する。
【0098】
生物反応器は、例えば、撹拌槽生物反応器であってもよい。そのような生物反応器は、生きた細胞が懸濁された液体培地を保持する槽を含み得る。槽は、培地を添加または除去する、(例えば槽内に空気を供給する、または酸性もしくは塩基性溶液で培地のpHを調節するために)気体または液体を槽に添加するためのポート、およびセンサが槽内の空間のサンプリングを行えるようにするポートを含み得る。センサは、生物反応器内の状態、例えば温度、pH、または溶存酸素濃度等を測定することができる。ポートは、槽内の無菌状態を維持するように構成することができる。
【0099】
生物反応器は、酵母、昆虫、植物もしくは動物細胞等の真核細胞の培養、または細菌等の原核細胞の培養に使用することができる。動物細胞は、哺乳動物細胞を含むことができ、その一例はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの状況下では、例えば培養する細胞が支持体に接着した際に最も良好に増殖する場合、生物反応器は細胞接着のための支持体を有し得る。槽は、1L以下から10,000L以上まで、広範な容積容量を有し得る。
【0100】
国際公開第WO2006/071716号に記載のような例示的生物反応器システムは、撹拌器により撹拌され得る液体細胞培養を保持する容器を含む。容器内の状況は、複数のセンサにより監視される。センサは、コントローラへの入力として独立して測定値を提供することができる。次いでコントローラは、各入力を設定点と比較し、個々の出力を提供する。各出力は、アクチュエータの動作に影響する。一方、アクチュエータのそれぞれの動作は、センサにより監視されている状況に影響する。このように、センサ、入力、コントローラ、出力およびアクチュエータの制御システムは、容器内の監視されている状況をその設定点に維持するように機能する。センサは、液体培地またはヘッドスペースガスと接触してもよい。アクチュエータは、材料を容器に(例えば、液体培地のpHを変化させるために酸性または塩基性溶液に)送達することができ、または、生物反応器システムの他の機能(例えば加熱もしくは撹拌速度)を変更することができる。
【0101】
足場依存性培養および/または三次元細胞培養のための支持体等、他の生物反応器設計が本技術分野で知られている。生物反応器は、連続式またはバッチ式で動作するように構成することができる。ある特定の実施例では、細胞および培地の循環、ならびに細胞分離のための領域を提供するために、生物反応器上の入口および出口を接続した閉鎖型流体回路が提供される。細胞および培地は、培養プロセスが中断されないように、生物反応器から次いで生物反応器へと循環する。
【0102】
生物反応器は、培地を生物反応器に送り込み、また細胞および培地を流体回路を循環させるためのポンプと、生物反応器内の培養中の細胞を磁気的に標識化するための磁性粒子を生物反応器内に導入するための入口ポートとを備えることができる。細胞は、緩衝液中または非天然流体培地中ではなく、培養中に磁気的に標識化される。流体回路上に位置することができる磁気分離器は、磁気的に標識化された細胞を循環する培地から分離するための、制御可能な電磁石を備える。
【0103】
磁気分離器は、電磁石に応答するダイバータ、およびダイバータに取り付けられた採取チャンバをさらに備えることができ、標識化された細胞は、磁気標識化に基づき、好ましくは流体回路をポンプで循環中、および再度の特別な分離、再懸濁または洗浄段階なしに、標識化されていない細胞から分離される。
【0104】
分離器は、磁気分離器に連結された別個の光学検出器により始動することができ、光学検出器による光学信号の検出に応答して電磁石が制御される。光学検出器は、磁石および蛍光染料で二重に標識化された細胞からの蛍光を検出することができる。また、光学検出器は、他の特性のサイズまたは形状に基づいて始動されるように設定され得る。この光学検出器と併せて顕微鏡が使用されてもよく、生物反応器内の細胞を顕微鏡により検査することもできる。
【0105】
生物反応器は、培養細胞近傍の生物反応器表面の少なくとも一部と接触する電極をさらに備えてもよい。この電極は、特定の電気的活動を有する細胞、例えば筋肉細胞に細胞を適応させるように、事前に選択された電気パルスを細胞に送達するために使用することができる。同様に、細胞をある特定の型の分化に誘導するために、使用されるポンプは、拍出された血流の生理学的状態をシミュレートする脈動ポンプであってもよい。
【0106】
生物反応器は、ある特定の細胞培養および特定分化細胞の単離に適合され得、したがって、心臓血管グラフトにおいて使用される細胞等の特定の系統の細胞を得ることを意図した、細胞培養培地、幹細胞、ならびに増殖および分化因子を含有し得るキットとして提供され得る。分化細胞は、磁気的に単離され、回路を通過するたびに追加の細胞が得られる。
【0107】
本発明の生物反応器は、細胞がその上で増殖する支持基材として機能する三次元多孔質マトリックス内まで細胞が通過しそれに実質的に接着するように、細胞を含有する接種材料が濾過されるデバイスである。この支持基材はフィルタとしても機能することができる。生物反応器はまた、接種材料をそこから導入することができる、また細胞の栄養および維持のために流体培地をそこから導入することができるチャネルを含む。
【0108】
採取
一般に、細胞培養後、所望の生成物を細胞培養から採取する必要がある。採取は、生成物を生成する細胞からの所望の生成物の主要な回収を指す。採取は、細胞培養内の他の物質から所望の生成物を分離するための本技術分野で知られた任意の方法を使用して達成することができる。例えば、所望の生成物が細胞培養内の細胞により分泌される場合、採取は遠心分離により達成することができる。遠心分離後、培養培地および分泌生成物を含有する上清が、細胞体および残屑を含有するペレットから分離される。代替として、採取は、精密濾過により達成することができる。
【0109】
採取は、一般に、大きな体積減少をもたらすことはない。いくつかの実施形態において、採取は、少なくとも500リットル、少なくとも750リットル、少なくとも1,000リットル、少なくとも1,250リットル、少なくとも1,500リットル、少なくとも2,000リットル、少なくとも5,000リットル、少なくとも10,000リットル、または少なくとも18,000リットルである。採取後の生成物の純度は、使用される採取手順の種類によって様々である。いくつかの実施形態において、採取後の生成物の純度は、約30〜50%の間である。
【0110】
「採取フィード」という用語は、採取直前の細胞が存在する培地、または採取された細胞が採取直後に入れられ、細胞が再懸濁された培地を指す。採取フィードは、増殖培地、または採取された細胞もしくは細胞断片の再懸濁に適切なその他の培地中の材料のいずれも含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、採取培地は、水、緩衝剤、浸透物質、抗分解剤等を含有し得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、高細胞密度組成物(例えば採取フィード)から生体高分子を採取することが有益または望ましい。高細胞密度組成物は、通常の細胞密度組成物と比較して特有の問題を呈する。例えば、高細胞密度組成物は、組成物中に存在する不純物の量がより多くなり、それにより精製プロセス中に除去する必要がある不純物の量が増加する可能性がある。したがって、より高い細胞密度の組成物は、フィルタをより早く詰まらせ、それにより組成物の濾過が許容されない可能性がある。いくつかの実施形態において、高細胞密度組成物は、より多くのフィルタ、またはより大きな表面積のフィルタの使用を必要とする。これらの要件は両方とも、濾過および/または生成物の損失と関連してより高いコストをもたらし得る。したがって、本発明におけるいくつかの実施形態は、高細胞密度組成物中に存在する生体高分子を単離する方法に関する。「高細胞密度」という用語は、概して、1mLあたり約1×10から3.5×10個、約1.0×10から約1.0×10個、または約5.0×10から約9.0×10個の細胞の、哺乳動物細胞の採取フィードにおける細胞密度を指す。当然ながら、従来的に様々な細胞は異なる細胞密度で増殖することが、当業者には理解される。したがって、いくつかの実施形態において、「高細胞密度」細胞培養は、その細胞株に対して従来的に実践されている密度よりも高い密度で細胞を含有する細胞培養を指す。
【0112】
濾過中のフィルタを通した採取フィード等の組成物の移動は、膜抵抗に起因して膜間圧を生成する。膜表面が細胞物質で堆積される(または偏向される)と、一定の流速での膜の通過に対する抵抗が増加し、これにより駆動力または膜間圧が増加することになる。膜の表面近傍の細胞物質の量が低減される、または膜の偏向が低下すると、膜間圧は実質的に一定を維持する傾向がある。膜間電位を計算するための方法は当業者に知られており、圧力トランスデューサまたはゲージの使用を含む。本発明のいくつかの実施形態において、膜間圧は、フィードおよび保持物質流出口圧力と透過物質流圧力の平均値の間の差をとることにより計算することができる。
【0113】
本発明によれば、組成物のpHを低下させ、それによりいくつかの不純物を除去し、より高い細胞密度の組成物の精製を可能とすることができる。一般に、組成物の濾過中、例えばpH調節されていない採取フィードの間、組成物のより多くがフィルタに蓄積されるとフィルタの膜間圧が著しく増加する。例えば、いくつかの実施形態において、膜間圧は、フィルタの細孔が閉塞するため、濾過プロセスの開始(組成物の第1の量がフィルタに載せられた時)から濾過プロセスの終了(典型的には細胞物質の7〜10倍濃縮および3〜5倍の膜分離の後)までに5psi、7psi、10psi、15psiまたは20psi以上増加する。
【0114】
採取段階と下流側の精製段階とを分断するために、採取後に安定な保存用中間体を作製することができる。採取後の安定な保存用中間体の形成は、安定なタンパク質沈殿物の形成の成功および任意の不純物からの生成物の分別選択性をもたらすことができる。採取後のある特定の保存用中間体は、保存目的において有益な、採取された材料の体積の低減を提供する。さらに、安定な保存用中間体の形成は、(1)製造プロセスの上流側および下流側のプロセスが分断される、(2)精製段階の必要性が低減され得る、(3)下流側の精製能力が効果的に使用される、および(4)製造プロセスの柔軟性および効率が達成される、という他の利点を有する。
【0115】
バルク生物学的物質の精製および形成
また、バルク原薬の形成もまた、一般に精製プロセスを含み得る。精製は、本技術分野において知られた任意の手段を用いて達成することができ、生成物の純度は、最初の精製段階後に変動し得る。例えば、組み換え生体高分子等の生物学的高分子(すなわち生体高分子)は、多くの異なる方法、例えば、いくつか挙げると、濾過、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、および上記の組み合わせ等により精製することができる。精製方法は、一般に、組成物中に生体高分子と共存する1つ以上の不純物から生体高分子を差別化するその特性に基づいて選択される。膨大な数の生体高分子が商業的に重要であり、時宜を得た、および費用効率の良い様式で大量の生体高分子を精製する能力が望まれている。現在の精製技術および生体高分子を精製するための方法の効率を増加させるために、広範囲にわたる研究が行われている。多くの場合、小規模調製に適切な精製技術は、工業規模の精製には適していない。本発明のいくつかの実施形態において、採取後に濾過が行われ、続いて安定な保存用中間体が形成される。別の具体的実施形態において、採取後にタンパク質A精製が行われ、続いて安定な保存用中間体が形成される。
【0116】
多くの現行の生物学的製造プロセスにおいて、タンパク質A精製段階は、採取後に行われる。タンパク質A精製段階後(タンパク質A後)の生成物の純度は約90%となり得る。タンパク質A後の安定な保存用中間体の形成は、安定なタンパク質沈殿物の形成の成功および任意の不純物からの生成物の分別選択性をもたらすことができ、上述のように、安定性および体積の低減を提供する。タンパク質A精製の後、および/または薬剤生成物製造の前に行われる他の精製段階の後の安定な保存用中間体の形成は、上述のように、(1)上流側および下流側製造プロセスの分断、(2)下流側の精製能力の効果的な使用、ならびに(3)製造プロセスの柔軟性および効率を含む利点を有する。
【0117】
精製はまた、深層濾過により行うことができる。例えば、深層濾過は、細胞および他の残屑を除去するために、遠心分離後に一般に使用される。これは、残屑が後の精製段階を汚染するまたは閉塞することがないため、下流側の精製段階の効率に寄与し得る。いくつかの実施形態において、深層フィルタは帯電深層フィルタである。帯電深層フィルタは、サイズ排除および吸収の両方を使用して大量の汚染物質を保持するのに特に適切である。
【0118】
また、精製は、安定な保存用中間体の形成にも使用される上述の段階を含むことができる。例えば、精製段階は、pHの調整、塩の添加等を含むことができる。例えば、組成物への二価陽イオンの添加は、対象となる生体高分子の回収においても使用することができる。様々な二価陽イオンが存在し、当業者に知られており、例えば、カルシウム陽イオン(Ca2+)、マグネシウム陽イオン(Mg2+)、銅陽イオン(Cu2+)、コバルト陽イオン(Co2+)、マンガン陽イオン(Mn2+)、ニッケル陽イオン(Ni2+)、ベリリウム陽イオン(Be2+)、ストロンチウム陽イオン(Sr2+)、バリウム陽イオン(Ba2+)、ラジウム陽イオン(Ra2+)、亜鉛陽イオン(Zn2+)、カドミウム陽イオン(Cd2+)、銀陽イオン(Ag2+)、パラジウム陽イオン(Pd2+)、ロジウム陽イオン(Rh2+)、およびこれらの組み合わせを含む。
【0119】
陽イオンは塩形態で存在することができ、例えばCaCl等のカルシウム塩は水溶液に入れられるとカルシウム陽イオンを生成し得ることが、当業者には理解される。したがって、本明細書で使用される場合、「二価陽イオンを添加する」という語句は、その帯電した状態での陽イオンの添加だけでなく、本発明の組成物中に導入されると二価陽イオンを生成する塩またはその他の化合物の添加も包含する。いくつかの実施形態において、二価陽イオンは、Co2+もしくはNi2+、またはそれらの塩(例えばCoCl、NiCl、CaCl、MnCl、MgCl、およびCuCl)、またはこれらの陽イオンもしくは塩の1つ以上の組み合わせである。また、ある特定の二価陽イオンが、異なる生体高分子により適切となり得ることが推測される。しかしながら、当業者は、対象となる生体高分子の最大の回収率を達成する二価陽イオンを決定するために、多くの二価陽イオンを容易かつ迅速に試験することができる。
【0120】
組成物中様々な濃度の二価陽イオンが本発明における使用に適切である。少量の採取フィード中には通常様々な量の二価陽イオン(内因性二価陽イオン)が存在し、本発明に従い様々な量の二価陽イオン(外因性二価陽イオン)を採取フィードに添加し得ることが、当業者には理解される。いくつかの実施形態において、二価陽イオンの濃度は、外因性および内因性陽イオンの両方を含む。しかしながら、実用上の目的において、外因性二価陽イオンの量に比べ内因性の量は比較的少ないため、二価陽イオンの濃度は、単純に外因性二価陽イオンを考慮することにより計算することができる。いくつかの実施形態において、組成物中の二価陽イオンは、組成物中約0.01mMから約1Mの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、二価陽イオンは、組成物中約0.1mMから約500mM、または約0.5mMから約200mM、約1.0mMから約100mM、約2mMから約50mM、約5mMから約15mM、または約2mMから約20mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、二価陽イオンは、組成物中約10mMの濃度で存在する。様々な生体高分子に対し異なる濃度の陽イオンが必要となり得ることが、当業者には理解される。
【0121】
さらに、精製された抗体を生成するための従来の手法は、硫酸アンモニウム沈殿法、カプリル酸の使用に次ぐ遠心分離、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、DEAEまたはヒドロキシアパタイト)、免疫親和性精製(例えばタンパク質Aまたはタンパク質G)、および透析を含む。例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)を参照されたい。例えばエタノール分画法を用いた血漿からの抗体精製に次ぐイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはカプリル酸(CA)沈殿法等、上記方法の組み合わせの使用が一般的である。例えば、McKinney et al.,J.Immunol.Methods 96:271−278(1987)、米国特許第4,164,495号、第4,177,188号、再発行特許RE31,268、第4,939,176号、および第5,164,487号を参照されたい。さらに、抗体および組み替えタンパク質の回収および安定性を改善するために、発酵の酸性化が使用されている。例えば、Lydersen et al.,Annals New York Academy of Sciences 745:222−31(1994)を参照されたい。
【0122】
酸沈殿の適用を含む、抗体の単離および/または精製のための他の様々な方法が開発されている。例えば、米国特許第7,038,017号、第7,064,191号、第6,846,410号、第5,429,746号、第5,151,504号、第5,110,913号、第4,933,435号、第4,841,024号、および第4,801,687号を参照されたい。
【0123】
「単離する」および「単離」という用語は、組成物中に見られる少なくとも1つの他の望ましくない生物または不純物から生体高分子を分離することを指す。「単離する」という用語は、「精製する」および「浄化する」ことを含む。生体高分子の特定の単離レベルは必要ではないが、いくつかの実施形態において、不純物の少なくとも50%、70%、80%、90%、または95%(重量比)が生体高分子から分離される。例えば、いくつかの実施形態において、生体高分子の単離は、組成物中に元々存在するHCPの80%から生体高分子を分離することを含む。
【0124】
「浄化する」および「浄化」という用語は、組成物からの粗大粒子の除去を指す。例えば、細胞培養および増殖培地に適用される場合、「浄化する」という用語は、例えば原核および真核(例えば哺乳動物)細胞、脂質および/または核酸(例えば染色体およびプラスミドDNA)を細胞培地から除去することを指す。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、(a)組成物のpHを低下させ、不純物を組成物中で凝集させる段階と、(b)組成物に二価陽イオンを添加する段階と、(c)組成物中の不純物から生体高分子を分離する段階とを含む。生体高分子の特定の凝集レベルは必要ではないが、いくつかの実施形態において、不純物の少なくとも50%、70%、80%、90%、または95%(重量比)が凝集する。例えば、いくつかの実施形態において、生体高分子の浄化は、組成物中に存在する哺乳動物細胞の80%を凝集させることを含む。凝集は、濁度計等の分光光度法を含む、当業者に知られた方法により測定することができる。
【0125】
「精製する」および「精製」という用語は、不純物のサイズに関わらず、組成物中の不純物またはその他の汚染物質から本発明の生体高分子を分離することを指す。したがって、精製という用語は「浄化」を包含するが、浄化中に除去される不純物よりも小さいサイズの不純物、例えばタンパク質、脂質、核酸、およびその他の形態の細胞残屑、ウイルス残屑、汚染細菌残屑、培地成分等をさらに包含する。生体高分子の特定の精製レベルは必要ではないが、いくつかの実施形態において、不純物の少なくとも50%、70%、80%、90%、または95%(重量比)が生体高分子から精製される。例えば、いくつかの実施形態において、生体高分子の精製は、組成物中に元々存在するHCPの80%から生体高分子を分離することを含む。
【0126】
「不純物」という用語は、本発明の生体高分子とは異なる組成物の1つ以上の成分を指す。いくつかの実施形態において、不純物は、無傷哺乳動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)もしくはマウス骨髄腫細胞(NSO細胞))、または細胞の一部、例えば細胞残屑を含み得る。いくつかの実施形態において、不純物は、タンパク質(例えばHCP等の可溶性または不溶性タンパク質もしくはタンパク質断片)、脂質(例えば細胞壁物質)、核酸(例えば染色体もしくは染色体外DNA)、リボ核酸(t−RNAもしくはmRNA)、またはこれらの組み合わせ、あるいは対象となる生体高分子とは異なるその他の任意の細胞残屑を含む。いくつかの実施形態において、不純物は、対象となる生体高分子を生成または含有した宿主生物に由来し得る。例えば、不純物は、対象となるタンパク質を発現した原核または真核細胞の細胞成分(例えば細胞壁、細胞タンパク質、DNAもしくはRNA等)であり得る。いくつかの実施形態において、不純物は宿主生物に由来せず、例えば、不純物は、細胞培養培地もしくは増殖培地、緩衝剤、または培地添加剤に由来し得る。本明細書で使用される場合、不純物は、単一の望ましくない成分、またはいくつかの望ましくない成分の組み合わせを含み得る。
【0127】
1種以上の不純物から本発明の生体高分子を分離するために、様々な手段を使用することができる。不純物から生体高分子を分離する手段の例は、沈殿法、免疫沈降法、クロマトグラフィー、濾過、遠心分離、およびこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、不純物からの生体高分子の分離は、フィルタの使用により達成される。「濾過」または「濾過する」という用語は、組成物を特定の細孔サイズ径の1つ以上の半透膜(または媒体)を通過させることにより、組成物から懸濁した粒子を除去するプロセスを指す。濾過に言及する際の「透過物質流」という用語は、濾過中にフィルタ孔を通過する組成物の分画を指す。濾過に言及する際の「保持物質流」という用語は、濾過中にフィルタ上に残留する、またはフィルタ孔を通過しない組成物の分画を指す。いくつかの実施形態において、濾過後、本発明の生体高分子は、実質的に透過物質流に存在し(すなわちフィルタ孔を通過して回収される)、一方不純物(例えば細胞残屑、DNAおよび/またはHCP)は実質的に保持物質流に存在する。いくつかの実施形態において、濾過後、本発明の生体高分子は、実質的に保持物質流に存在し、一方不純物は実質的に透過物質流に存在する。いくつかの実施形態において、工業規模の濾過に適切な条件を予測するために「ベンチスケール」濾過を使用することができる。
【0128】
特定の生体高分子を精製するために適切なフィルタの種類、化学的性質、およびモジュール構成が当業者に知られており、様々な因子、例えば濾過される組成物の成分の量およびサイズ、濾過される組成物の体積、ならびに濾過される組成物の細胞密度および生存能力等に基づき選択することができる。いくつかの実施形態において、メンブレンフィルタ、プレートフィルタ、カートリッジフィルタ、バッグフィルタ、圧力リーフフィルタ(pressure leaf filter)、回転ドラムフィルタまたは真空フィルタ等のフィルタを使用することができる。いくつかの実施形態において、深層フィルタまたはクロスフィルタが使用される。本発明に適合するクロスフローフィルタモジュールの種類は、中空繊維、管状、平板(プレートおよびフレーム)、螺旋巻、または渦流(例えば回転)フィルタ構成を含む。いくつかの実施形態において、接線流フィルタ(tangential flow filter)が使用される。いくつかの実施形態において、接線流(クロスフロー)モードで中空繊維、管状、および平膜モジュールが利用された。使用可能な市販のフィルタは、Millipore Corporation(Billerica、MA)、Pall Corporation(East Hills、NY)、GE Healthcare Sciences (Piscataway、NJ)およびSartorius Corporation(Goettingen、Germany)等の様々な製造供給元に対し製造されている。
【0129】
本発明のフィルタの細孔径は、単離される生体高分子の種類および組成物中に存在する不純物の種類に従い様々となり得る。いくつかの実施形態において、フィルタ孔径は、0.1μmから1.0μm、0.2μmから0.8μm、または0.2μmから0.65μmの直径となり得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明は、組成物中の生体高分子を精製する方法に関し、該方法は、(a)組成物のpHを低下させる段階と、(b)組成物に二価陽イオンを添加する段階と、次いで(c)膜を通して組成物を濾過する段階とを含み、濾過は膜間圧をもたらし、膜間圧は濾過中実質的に一定を維持する。したがって、膜間圧に言及する場合、「実質的に一定」という用語は、濾過の間、4psi、3psi、または2psiを超えて増加しない膜間圧を指す。
【0131】
生体高分子を単離する際、いくつかの実施形態において、例えば商業的製造プロセス中に、大容量の組成物(例えば採取フィード)が存在し得る。大容量は、精製プロセスに対しいくつかの課題を提示する。例えば、フィルタを通る流速のわずかな変化が単離された生体高分子の回収に対し与える影響は、大容量が使用されると増幅される。同様に、大容量を使用する際、採取フィードにおける細胞密度の増加が生成物回収に対し与える影響もまた増幅される。したがって、大容量の組成物の使用は、より小容量の使用に比べ増幅されより大きな悪影響を有する特有の問題を呈する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、大容量の組成物中に存在する生体高分子を単離する方法に関する。「大容量」という用語は、商業的および/または工業的な生体高分子生成に関連した体積を指す。いくつかの実施形態において、「大容積」という用語は、10リットルから2000リットル、20リットルから1000リットル、または50リットルから500リットルを指す。
【0132】
ウイルス不活性化
BDS製造中、ウイルス不活性化段階もしばしば行われる。ウイルス不活性化は、例えば、低pHの使用により行うことができる。pHを変える方法は上述されており、当業者に知られている。また、溶媒または洗剤による処理、照射、高温への短期間の曝露、およびウイルス保持フィルタを使用して、ウイルス不活性化を達成することもできる。ウイルス不活性化の方法は当業者に知られており、当業者は、本発明に従うBDS製造中に使用されるウイルス不活性化方法を選択することができる。
【0133】
薬剤生成物製造
生物学的生成物製造段階は、生成および精製される生物製剤の種類、さらに生物製剤が使用される方法に大きく依存し得る。したがって、上流側のバルク原薬製造プロセスは、多くの場合、必要な下流側の薬剤生成物製造段階に適切な形態でバルク原薬を生成するように特定的に設計されなければならない。安定な保存用中間体の形成により、上流側のバルク原薬製造段階を薬剤生成物製造段階から分断することにより、本発明は、生物製剤を製造するための全体的なプロセスにおける増加した効率および柔軟性を可能とし、さらに取扱いが容易な中間体を形成する。
【0134】
さらに、保存用安定中間体の形成はまた、薬剤生成物製造プロセスにおける様々な段階の間で有用となり得る。当業者に知られているように、薬剤生成物製造において任意の数のプロセスを使用することができる。そのような技術は、沈殿、凍結、急速凍結、無菌濾過(例えば限外濾過または膜分離)、および凍結乾燥を含む。
【0135】
例えば、限外濾過/膜分離(UF/DF)段階は、薬剤生成物(DP)製造の間に行うことができる。UF/DFの後の(UF/DF後)生成物の純度は、一般に少なくとも99%である。UF/DF後の安定な保存用中間体の形成は、DP形状のための高濃度タンパク質形成をもたらし、2〜8℃または25℃で保存されたとしても、バルク原薬(BDS)の安定性および/または寿命を向上させる。さらに、この段階での安定な中間体の形成は、BDSおよびDPの寿命を分断する利点を有し、DPの寿命または薬物送達メカニズムをさらに向上させる。
【0136】
医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明の生体高分子または組成物は、医薬的に許容し得る。「医薬的に許容し得る」とは、健全な医学的判断の範囲内において、正当な利益/リスク比に相応する過度の毒性またはその他の合併症のない、人間および動物の組織との接触に適切な生体高分子または組成物を指す。
【0137】
本発明の方法は、最終DPの患者への投与をさらに提供する。DPの投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入または局所投与によるものであってもよい。非経口という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸内または膣内投与を含む。これらの投与形態のすべてが本発明の範囲内であることが明示的に企図されるが、注射、特に静脈または動脈注射または点滴に対しては、投与形態は溶液である。通常、注射に適切な医薬組成物は、緩衝剤(例えば酢酸塩、リン酸塩またはクエン酸塩緩衝剤)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、任意選択で安定剤(例えばヒトアルブミン)等を含み得る。しかしながら、本明細書における教示に適合するその他の方法において、本発明のDPは、有害な細胞集団の部位に直接送達され、それにより疾患組織の治療剤への曝露を増加させることができる。
【0138】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」は、治療的処置および予防または防止対策の両方を指し、物体は、望ましくない生理学的変化または疾患、例えば多発性硬化症の進行等を防止または減速(低下)させる。有益または望ましい臨床結果は、検出可能か検出不可能かを問わず、症状の軽減、疾患の範囲の縮小、疾患の安定化された(すなわち悪化しない)状態、疾患の進行の遅延または減速、病状の改善または緩和、および沈静(部分的か全体的かを問わない)を含むが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の推定される生存と比較した、生存の延長を意味し得る。処置を必要とする者には、すでに状態もしくは疾患を有する者だけでなく、状態もしくは疾患を有する傾向がある者、または状態もしくは疾患が予防される者が含まれる。
【0139】
「対象」または「個人」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後診断または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象は、人間、家畜、農業動物、および動物園、スポーツ、またはペット用動物、例えば犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、ネズミ、馬、牛、乳牛等を含む。
【0140】
本発明において使用されるDPを含有する医薬組成物は、例えばイオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清蛋白質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含む、医薬的に許容し得る担体を含む。
【0141】
非経口投与用の調製物は、無菌水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含む。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。水性担体は、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液を含む。主題の発明において、医薬的に許容し得る担体は、0.01〜0.1Mおよび好ましくは0.05Mのリン酸塩緩衝剤または0.8%生理食塩水を含むが、これらに限定されない。その他の一般的な非経口ビヒクルは、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース(Ringer’s dextrose)、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または不揮発性油を含む。静脈内投与用ビヒクルは、流体および栄養補給液、電解質補給液、例えばリンガーのデキストロースに基づくもの等を含む。保存剤およびその他の添加剤、例えば抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガス等もまた存在し得る。
【0142】
より具体的には、注射用途に適切な医薬組成物は、無菌注射溶液または分散液の即座の調製のための、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌粉末を含む。そのような場合、組成物は無菌でなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度に流動的であるべきである。これは製造および保管条件において安定であるべきであり、好ましくは細菌や菌等の微生物の汚染作用に対し保護される。担体は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、ならびにそれらの適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒であってもよい。例えばレシチン等のコーティングを使用することにより、分散の場合は必要な粒径を維持することにより、および界面活性剤の使用により、適正な流動性を維持することができる。本明細書に開示される治療方法における使用に適切な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,16th ed.(1980)に記載されている。
【0143】
無菌注射溶液は、必要な量の活性化合物(例えば、単独またはその他の活性物質と組み合わせた、TNFα抗体もしくは抗原結合断片、変異体、またはそれらの誘導体)を、必要に応じて本明細書に列挙された成分のうちの1つまたはそれらの組み合わせとともに適切な溶媒に導入し、続いて無菌濾過することにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上に列挙されたものからの必要なその他の成分を含有する無菌ビヒクルに、活性化合物を導入することにより調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥およびフリーズドライであり、これにより、活性成分と、以前に無菌濾過されたその溶液からの追加的な任意の所望の成分との粉末が得られる。本技術分野において知られた方法に従い、注射用調製物は処理され、アンプル、袋、瓶、注射器またはバイアル等の容器に充填され、無菌状態で封止される。さらに、調製物は、参照により本明細書に全内容が組み入れられる、同時継続の米国特許出願第09/259,337号(米国特許第2002/0102208 A1)に記載のもの等のキットの形態で包装および販売され得る。そのような製造品は、好ましくは、関連した組成物が、疾患または障害に罹患した、またはその傾向がある対象の処置に有効であることを示すラベルまたは添付文書を有する。
【0144】
非経口製剤は、単回ボーラス投与、注入、またはボーラス量投与に続く維持量投与であってもよい。これらの組成物は、特定の固定または可変間隔で、例えば1日1回または「必要に応じて」投与され得る。
【0145】
本発明において使用されるある特定の医薬組成物は、例えばカプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含む許容される剤形で経口投与され得る。ある特定の医薬組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入により投与され得る。そのような組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、および/またはその他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0146】
臨床上の投薬要件の増加および異なる好ましい投与経路(例えば皮下投与)に伴い、高濃度タンパク質製剤を有する必要性がより重要となってきている。従来の製剤化手法は、液体または凍結乾燥品として生成物またはタンパク質を製剤化するために使用することができる。例えば、ある特定の皮下製剤は、150mg/mLのタンパク質濃度でヒスチジン製剤を使用して開発された。しかしながら、そのような手法は、タンパク質濃度が150mg/mLを超えると物理的な限界に達し得る。限界は、タンパク質凝集の傾向および溶液粘度の上昇に起因する。
【0147】
例えば、製剤中のモノクローナル抗体濃度の増加は、粘度の上昇と相関することが示されている。さらに、モノクローナル抗体の濃度が150mg/mLより高く増加すると粘度が著しく増加し、これはさらにより速い速度で200mg/mLより高く上昇する。
【0148】
粘度の上昇は、患者がどれほど良好に生成物の自己投与(注射可能性(syringibility))に対応可能となり得るかに関連する。通常の手の圧力は、一般に7〜10lbsの範囲である。薬物を投与する看護師は、20〜50lbsに対応できることが予期される。生成物またはタンパク質製剤の濃度が増加(粘度の増加をもたらす)すると、例えば注射器によりそのような生成物またはタンパク質製剤が投与される際に益々多くの力を加える必要がある。例えば、95mg/mLのモノクローナル抗体(mAb)製剤は、約40.0lbsの力を必要とし、152mg/mLのmAb製剤は、40.0lbsを超える力を必要とし、205mg/mLのmAb製剤は、60lbsを超える力を必要とする。
【0149】
臨床的製造制御システム
米国およびヨーロッパにおいて最も広く適合した製造制御システムの標準は、それぞれ、ISA S88.01およびIEC 61512−01である(参照することによりその開示内容は本技術分野において広く知られているものとして本明細書に組み入れられる)。これらの標準は、機器モデルおよびレシピモデル等の様々なモデル、ならびに製造およびバッチ制御に関与する様々なモジュールおよびコンポーネントに言及している。以降で使用される技術用語および方法論は、そのような標準、特にISA S88.01(S88)に定義されているものに具体的に関連する。
【0150】
化学薬品、特に医薬品および生物製剤等の生成物のバッチ製造における実際のプロセスの多くは、S88標準に従い、自動化されたコンピュータによるプログラムを使用して実行および制御される。しかしながら、実際の設計、プラニングおよびフィードバックの品質管理は、コンピュータシステムの使用にもかかわらず、費用を要する手作業のコンポーネントおよび手作業のデータ入力を有する。
【0151】
製薬会社およびその他多くの産業における製造計画は、多くの場合年中無休体制で実行され、製造の適正なプロセス設計およびスケジューリングが経済的必要性であるが、従来のコンピュータツール(例えばスプレッドシート)が使用されるものは労働集約的であり、実行システムへの統合が良好ではない。結果として、1つの生成システムからの手作業による入力または計算された結果は、慎重に書き換え定期的に検証して、プロセスの異なる段階またはシステムにおいて値が変化していないことを確実としなければならない。
【0152】
化学薬品および特に医薬品生成には、実験室での発見および合成から大規模商業生成およびバッチプロセスへの拡張が関与する。他の生成物および商品のバッチ製造にも、同様の拡張およびプロセスが関与する。この拡張を達成するための一般的段階は、プロセスモデル(製造プロセスに関与する段階のシーケンス)、次いでプラントモデル(それに相関する製造段階を達成するために必要な能力を有するプラントサイトで利用可能な機器の特定)、最後にプラントモデルに対する制御パラメータおよび命令、すなわち動作パラメータによる制御モデルを設計する段階を含む。この後者の段階において、レシピ構成データが生成され、電子的作業指示および/または材料追跡および自動化もしくは手作業によるレシピ実行のためのプロセス制御システムに関連付けられる。イベントの生データ生成、アラームおよびすべてタイムスタンプを備えたユーザアクションに関するシステム性能を分析するためのインタフェースがある。また、報告およびプロセスノートの生成、ならびに(必要に応じて)イベントの調査の始動とともに、プロセス分析技術(PAT)および従来の機器のデータが収集される。上述したように、生成においては、共通の機器を使用した異なる生成物の促進された製造を網羅するとともに、原材料およびその他のリソースの利用可能性を考慮に入れるようにスケジューリングすることが必要となる。
【0153】
米国における典型的な医薬品生成タイムラインにおいては、研究所において通常開発される生成プロセスおよび基本パラメータとともに、新製品申請(NDA)がFDA(または、その他の国々または地域においては同等の規制当局)に提出される。次いでプロセスは、収率、純度、経済性、原料の利用可能性等に関する改善のためにさらに開発される。プロセスが開発されると、プロセスは拡張され、機器の必要性ならびに処理段階および関与する材料が定義される。次いで、他の生成物生成のプラントスケジュールに対して、プラニングおよびスケジューリングが計算される。キャンペーン前の準備において操作指示が作成され、これはDCS(分散制御システム)を備えることができる生成実行システム、または電子的作業指示(Electronic Work Instruction)、またはその他のプロセッサ、またはこれらのコンピュータベース実行システムの任意の組み合わせに対しレシピが策定される。次いで、溶媒もしくは水による実行または試験的実行(必要な場合)、あるいはその他のオフライン生成シミュレーション実行を行ってシステムを微調整し、キャンペーン(1つ以上のバッチのシーケンスを定義する)を実行する。逸脱の記録、変更および検討とともに、生成物のバッチ(活性医薬生成物またはAPI)をリリースする。逸脱はその源について調査され、許可されたら、APIによる薬剤生成物製造が開始する。次いで、同様の設計、プラニングおよび実行プロセスが薬剤生成物製造において行われる。品質、効率および安全性標準を維持するために、また改善を行うために、すべての製造情報の常時監視および分析が行われる。
【0154】
特定の生成物に対し、医薬製剤の製造がどのように行われるべきかを決定する上で、ある特定の因子が考慮されるべきである。例えば、生成物自体の種類、すなわち生成物が低分子量タンパク質か、高分子量タンパク質か、ペプチドか、または小分子かどうかが、製造プロセス中にその生成物をある特定の保存形態で保存、または優先的に保存することができるかに影響する。生成物の種類(例えばタンパク質または代謝産物)は、製造プロセスの異なる段階におけるその生成物に適切な保存用中間体の種類に従い分類することができる。生成物製剤分類スキームは以下の通りであり、生成物はクラスI、II、IIIまたはIVに区分される。
【0155】
【表1】

【0156】
クラスI生成物は、例えば、Tysabri、IDEC152、IDEC114、M200およびCripto等を含むある特定の高分子量タンパク質または抗体を含む。クラスII生成物は、例えば、PEG−インターフェロン(IFN)、Neublastin、IGF1R、AvB6およびGE2等の分子または酵素を含む。クラスIII生成物は、例えば、LTBR等のタンパク質を含む。クラスIVの生成物は、例えばCBE11を含む。
【0157】
生成物製剤に関してさらなる因子が考慮されるべきである。臨床前研究および開発段階、第I、IIおよびIII相臨床試験段階、ならびに生物製剤承認申請(BLA)段階を含むがこれらに限定されない生成物製造のすべての段階において、適切に設計された製造プロセスが関連する。製剤開発サイクルは、各種生成物製造段階で重複する。サイクル1は臨床前研究および開発段階の前に開始し、臨床試験の第II相に至る可能性がある。サイクル2は第I相の後、また通常は第II相の前に開始し、BLA段階に至る。
【0158】
製造のサイクル1の一般的な前提は以下の通りである。生物反応器プロセスは2〜3g/Lの滴定濃度での2000L細胞培養を含む。生物反応器プロセスから生成された、またはバッチごとのBDSは、約2〜3kgである。BDSのタンパク質濃度は、BDS約40〜60リットルにおいて、50mg/mLである。そのようなBDSの供給は、第I相を超えてもなお使用することができる。したがって、BDSを続いて後の生成物開発段階およびサイクルにおいて利用され得る形態に維持することができる安定な中間体の保存形態が、製造プロセスの柔軟性および効率を提供する上で重要である。
【0159】
本発明によれば、生物製剤を製造するためのプロセスは、一般的な寿命に関する製造要件に適合するべきである。適合性を確実とするため、上述の安定な保存用中間体等のマトリックス環境または製剤は、取扱い、保存安定性、および寿命を確実とする。
【0160】
本発明の実行は、別段の指定がない限り、本技術分野の範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組み換え生物学、細菌学、組み換えDNA、および免疫学の従来の技術を使用する。そのような技術は、文献中に十分説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:(1989);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,ed.,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1992),DNA Cloning,D.N.Glover ed.,Volumes IおよびII(1985);Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait ed.,(1984);Mullis et al.米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization,B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1984);Transcription And Translation,B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1984);Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,Alan R.Liss, Inc.,(1987);Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press,(1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);専門書、Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.,N.Y.、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,J.H.Miller and M.P.Calos eds.,Cold Spring Harbor Laboratory(1987);Methods In Enzymology,Vols.154および155(Wu et al.eds.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology,Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London(1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,(1986);Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)を参照されたい。
【0161】
免疫学の原理を記載した標準的な参考資料としては、Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,New York;Klein,J.,Immunology:The Science of Self−Nonself Discrimination,John Wiley&Sons,New York(1982);Kennett,R.,et al.,eds.,Monoclonal Antibodies,Hybridoma:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York(1980);Campbell,A.,“Monoclonal Antibody Technology” in Burden,R.,et al.,eds.,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol. 13,Elsevere,Amsterdam(1984),Kuby Immunnology 4th ed.Ed.Richard A.Goldsby,Thomas J.Kindt and Barbara A.Osborne,H.Freemand&Co.(2000);Roitt,I.,Brostoff,J.and Male D.,Immunology 6th ed.London:Mosby(2001);Abbas A.,Abul,A.and Lichtman,A.,Cellular and Molecular Immunology Ed.5,Elsevier Health Sciences Division(2005);Kontermann and Dubel,Antibody Engineering,Springer Verlan(2001);Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Press (2001);Lewin,Genes VIII,Prentice Hall (2003);Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988);Dieffenbach and Dveksler,PCR Primer Cold Spring Harbor Press(2003)が挙げられる。
【0162】
上に列挙したすべての参考文献、および本明細書に挙げたすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0163】
実施例1
異なる生成物クラスに関する受容性の程度を、安定性、薬剤生成物(DP)製造、DP形状、BDS保存、およびDP保存に関して評価した(「+」および「−」の印で示されている)。以下に示す結果は、生成物製造のサイクル1中の因子の評価を示す。
【0164】
【表2−1】

【0165】
生成物製造のサイクル2に対しては、以下のように上述の受容性の程度を評価した。
【0166】
【表3】

【0167】
実施例2
抗体または代謝産物の製剤を製造するためのプロセスの一部として、安定中間体保存形態を利用する。代謝産物は、細胞が抗体または代謝産物を発現する生物反応器プロセスを使用して生成する。細胞を採取し、次いでタンパク質A精製カラムを使用して精製する。バルク原薬(BDS)を製剤化するために、PROMAXX(登録商標)技術を使用しながら、水溶性ポリマーを用い、精製されたタンパク質をミクロスフェアとして共沈させる。あるいは、タンパク質は結晶化される。このBDSを、安定性、寿命およびタンパク質濃度について分析する。
【0168】
実施例3
保存形態を利用して、抗体の生成の完了後にIDEC152抗体を薬剤生成物(DP)に製剤化する。IDEC152抗体は、細胞がIDEC152タンパク質を発現する生物反応器プロセスを使用して生成する。細胞を採取し、次いでタンパク質A精製カラムを使用して精製する。精製されたタンパク質をバルク原薬(BDS)に製剤化する。このBDSは下流側の精製プロセスに供給され、そこでBDSは限外濾過/膜分離(UF/DF)によりさらに精製される。UF/DF後、PROMAXX(登録商標)技術を使用しながら、水溶性ポリマーを利用してIDEC152製剤をミクロスフェアとして共沈させる。
【0169】
このミクロスフェア内に含有されるIDEC152を、安定性およびタンパク質濃度について分析する。さらに、IDEC152を容器内、例えば注射器内に入れ、注射可能性について試験する。
【0170】
本発明の様々な修正がなされ得ることが、当業者には理解される。したがって、その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内である。
【0171】
実施例4
長期保存用中間体を、PEG沈殿法を使用して生成し、135日間にわたるその安定性を実証した。これらの実験において、モノクローナル抗体を生成するチャイニーズハムスター卵巣細胞を含む培養懸濁液100mLを、遠心分離、次いで深層濾過により採取した。得られた採取後細胞培養液(HCCF)を、2〜8℃において2Mトリス塩基でpH7.2に調節した。70%(重量比)ポリエチレングリコール(PEG)3350および250mM塩化亜鉛を含有する原液の単回ボーラスを、激しく撹拌しながら調節されたHCCFに添加し、試料の最終濃度を1.5%PEGおよび2.5mM塩化亜鉛とした。この材料を継続的に1時間混合し、得られた沈殿物を遠心分離した。得られた上清をデカンテーションし、得られたペレットを、1.5%(重量比)PEGおよび2.5mM ZnClを含有するpH7.2の溶液で洗浄してから混合した。得られた混合物を再び遠心分離し、得られた上清をデカンテーションした。得られた沈殿物を無菌状態で保存し、室温(25℃)、2〜8℃、または−20℃で保持した。様々な時点で、3つの温度のそれぞれで保存された沈殿物を含有する試料を100mM EDTA、60mMアセテート、pH5.0で振盪により再懸濁した。各試料を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および非還元ゲルチップ電気泳動法(non−reducing gel−chip electrophoresis)により純度について分析した。非還元ゲルチップ電気泳動法の結果を表2に示す。
【0172】
【表2−2】

【0173】
これらの結果は、−20℃または2〜8℃での保存が、無傷抗体の含量の点で、またはプロセス関連不純物の点で、少なくとも75日間は試料の組成を改変しないことを示している。
【0174】
同様に、サイズ排除クロマトグラフィーの結果は、抗体モノマーならびに低分子量(LMW)および高分子量(HMW)成分の一定の濃度により明らかなように、−20℃(図3a)および2〜8℃(図3b)での保存が、少なくとも135日間までの保存に適切であることを示している。
【0175】
実施例5
工業規模の製造プロセスを使用して、上述のようにPEG沈殿法を用い長期保存用中間体を生成する。具体的には、モノクローナル抗体を生成するチャイニーズハムスター卵巣細胞を含む15,000リットルの培養懸濁液を、生物反応器内で増殖させる。次いで懸濁液を遠心分離および濾過により採取する。得られる採取後細胞培養液(HCCF)は、約15,000リットルの体積を有する。HCCFを、2〜8℃において2Mトリス塩基でpH7.2に調節する。70%(重量比)ポリエチレングリコール(PEG)3350および250mM塩化亜鉛を含有する原液の単回ボーラスを、激しく撹拌しながら調節されたHCCFに添加し、試料の最終濃度を1.5%PEGおよび2.5mM塩化亜鉛とする。この材料を継続的に1時間混合し、得られる沈殿物を遠心分離する。得られた上清をデカンテーションし、得られるペレットを、1.5%(重量比)PEGおよび2.5mM ZnClを含有するpH7.2の溶液で洗浄してから混合する。得られる混合物を再び遠心分離し、得られた上清をデカンテーションする。得られる沈殿物を無菌状態で保存し、室温、2〜8℃、または−20℃で少なくとも10日間保持する。次いで沈殿物を戻し、さらに処理してバルク原薬を形成し、最後に薬剤生成物に変換する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物製剤を製造する方法であって、
(a)生物製剤を生成する細胞を培養する段階と、
(b)細胞培養から前記生物製剤を採取する段階と、
(c)安定な保存用中間体を形成し、前記中間体を保存する段階と、
(d)前記中間体をさらに精製または処理する段階と、を含む方法。
【請求項2】
(e)バルク原薬を形成する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保存が、少なくとも10日間および約−50℃を超える温度である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記保存が少なくとも3週間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記保存が75日間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記安定な保存用中間体の形成が、少なくとも10倍の体積低減を提供する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記安定な保存用中間体の形成が、少なくとも20倍の体積低減を提供する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記安定な保存用中間体が、少なくとも約500リットルから形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記安定な保存用中間体が、少なくとも約1,000リットルから形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、少なくとも約1,000リットルの体積で培養される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、少なくとも約10,000リットルの体積で培養される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、生物反応器内で培養される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記採取する段階が、遠心分離により達成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記安定な保存用中間体が、固体、半固体または懸濁液である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記固体、半固体または懸濁液が、液体、凍結液体、結晶、沈殿物、フリーズドライ製剤、凍結乾燥製剤、粉末、ベシクルまたはミクロスフェアである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記安定な保存用中間体が、相分離により形成される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記安定な保存用中間体が、沈殿により形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記安定な保存用中間体が、PEGによる沈殿により形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記安定な保存用中間体が、PEGおよび亜鉛による沈殿により形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記安定な保存用中間体の内容物の約95%未満が前記生物製剤である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記安定な保存用中間体の内容物約50〜95%が前記生物製剤である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記安定な保存用中間体が、低い塩濃度を有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記安定な保存用中間体が、高濃度のタンパク質を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記安定な保存用中間体が、前記生物製剤の凝集を防止する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記安定な保存用中間体が、前記生物製剤の安定性および/または寿命を増加させる、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記安定な保存用中間体が、少なくとも30日間安定である、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記安定な保存用中間体が、少なくとも約75日間安定である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記安定な保存用中間体が、少なくとも約3ヶ月間安定である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記安定な保存用中間体が、少なくとも約4ヶ月間安定である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記安定な保存用中間体が、2〜8℃で安定である、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記安定な保存用中間体が、−20℃で安定である、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記生物製剤が、タンパク質、代謝産物またはポリヌクレオチドである、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質が抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記さらに処理または精製する段階が、クロマトグラフィー、濾過、ウイルス不活性化または凍結乾燥を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、(f)前記バルク原薬から薬剤生成物を形成する段階をさらに含む、請求項2から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記(f)薬剤生成物を形成する段階が、
(1)無菌濾過、クロマトグラフィーおよび/または限外濾過/膜分離を使用して生成物を形成する段階と、
(2)前記生成物を容器に充填する段階と、
(3)任意選択で前記生成物を凍結乾燥する段階と、を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記容器がバイアル、シリンジまたは自動注射器である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(g)前記薬剤生成物を、それを必要とする患者に投与する段階をさらに含む、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
生物反応器プロセスから生成物を採取する手段と、
前記採取された生成物から安定な保存用中間体を形成するための手段と、
を備える、生物製剤製造プロセスであって、前記安定な保存用中間体の形成が、前記上流側の生物反応器プロセスを、下流側の精製および/または薬物製造プロセスから分断する、生物製剤製造プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2011−500054(P2011−500054A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529940(P2010−529940)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/011764
【国際公開番号】WO2009/051726
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】