説明

安定な酸化殺生物剤の製造方法

本発明は、クロラミンの製造方法に関する。この方法は、濃縮された塩素源、及び濃縮されたアミン源、並びに製造中に撹拌を用いることにより、安定なクロラミンの製造を可能にする。本方法は、少なくとも5のpH、最も好適には少なくとも7以上のクロラミンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、引用によりその全体が本出願に組み込まれる、米国特許出願第11/618,227号の部分継続出願である。
【0002】
本特許文書の一部分は、著作権により保護された構成要素を包含するか、又は包含し得る。この著作権の所有者は、いかなる者による、本特許文書の複写による再製に対して、又は米国特許商標局の出願書類若しくは記録に表されるものと完全に一致する、特許開示に対しても、異議を申し立てないが、それ以外に関しては、いかなる場合においても著作権を留保する。
【0003】
本発明は、殺生物剤組成物として用いられる安定なクロラミンの製造に関する。本発明はクロラミンの製造、貯蔵、及び運送を可能とする、安定な形態でのクロラミンの製造方法を示す。本発明は、安定で、及び有効なクロラミンの製造方法を実証し、これにより水処理システム、及び多様な他の処理システム中で、急速に分解することのない殺生物剤組成物としてのクロラミンの使用が可能になる。
【背景技術】
【0004】
本願に記載される本発明は、生物付着制御剤の製造に関する。本発明の基礎は、反応剤の組成物、及び2つの液体溶液を、それらの自然の化学的形態から、殺生物的性質を持つ、別の形態の変換するための、濃縮された反応剤を用いる条件である。
【0005】
世界中で、多くの異なる種類の工業的な水システムが存在する。工業用水システムは、必要な化学物質、機械的及び生物学的プロセスが所望の結果に達することができるように存在する。現在利用可能な最良の水処理プログラムにより処理された工業用水システムにおいても付着が発生し得る。本特許出願の目的のために「付着」とは、「表面上への任意の有機物又は無機物の堆積」と定義される。
【0006】
もしこれらの工業用水システムが、微生物付着制御により処理されないと、それらは大量に付着する。付着は、工業用水システムに対して負の影響を与える。例えば、重篤な無機物のスケール(無機物質)は、水との接触面に積み重なり、スケールのあるいかなる場所も微生物の生育にとって理想的な環境となる。
【0007】
付着は、浮遊、水中、及び水により生成される汚染物質の堆積、水の淀み、プロセスの漏れ、並びに他の因子を含む、多様なメカニズムにより生じる。もし成長が許されると、そのシステムは、稼動効率の低下、早期の機器故障、生成物の品質の損失、及び微生物付着に付随する健康関連の危険性の増大を蒙る可能性がある。
【0008】
付着は、微生物による汚染に起因することもあり得る。工業用水システム中の微生物汚染の源は非常に多く、限定はされないが、浮遊汚濁、水の性質、プロセスの漏れ、及び不適切に洗浄された機器を含み得る。これらの微生物は、水システムの濡れている、又は半ば濡れている表面上に急速に微生物の群落を確立し得る。水中に存在する微生物の99%を超える個体数がバルク水中に存在する場合、それらは表面上に生物膜の形態で存在する。
【0009】
微生物群落が表面で成長するにつれて、微生物から分泌されるエキソポリマー性(exopolymeric)物質は生物膜形成に役立つ。これらの生物膜は、栄養を濃縮し、及び成長のための保護を与える手段を確立する複雑な生態系(ecosystem)である。生物膜は、スケール、腐食及び他の付着プロセスを加速する。生物膜は、システム効率の低下に寄与するだけではなく、病原性微生物を含み得る微生物の増殖のための優れた環境を提供する。従って、プロセス効率を最大化し、及び水媒介性病原菌からの健康関連の危険性を最小化するために、生物膜及び他の付着プロセスを可能な限り最大限低下させることが重要である。
【0010】
生物学的付着の問題にはいくつかの因子が寄与し、及びその程度を決定する。水温、水のpH、有機及び無機栄養素、好気性、若しくは嫌気性、並びにある場合には、日光の存在又は不在などの成長条件などが、重要な役割を果たす。これらの因子は、水システムにどのような種類の微生物が存在し得るかを決定するのに役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、生物学的付着は、望まないプロセスの妨害を引き起こすために、従って制御されなければならない。工業的プロセスにおける生物学的付着の制御のためには多くの異なるアプローチが用いられている。もっとも一般的に用いられる方法は、プロセス水への殺生物性化合物の適用である。用いられる殺生物剤は、性質において酸化性又は非酸化性であってよい。経済性や環境的な懸念などのいくつかの異なる因子に起因して、酸化殺生物剤が好適である。塩素ガス、次亜塩素酸、臭素から誘導された殺生物剤、酸化殺生物剤及び他の酸化殺生物剤が、工業用水システムの処理に広く用いられている。
【0012】
酸化殺生物剤の効率を確立する一つの因子は、「塩素要求量」(chlorine demand)又は酸化殺生物剤要求を構成する、水マトリックス中の成分の存在である。「塩素要求量」とは、水中の物質により、還元されるか、さもなければ不活性な塩素の形態に変換される、塩素量として定義される。塩素消費物質としては、限定はされないが、微生物、有機分子、アンモニア及びアンモニア誘導体、硫化物、シアン化物、酸化され得る陽イオン、パルプ・リグニン、デンプン、糖類、油、スケール阻害剤、及び腐食阻害剤などの水添加物などが挙げられる。水中及び生物膜中での微生物の成長は、処理されるべきシステムの塩素要求量に寄与する。従来の酸化殺生物剤は、高い塩素要求量を有する、濃いヘドロを含む水には無効であることが見出されている。このような水には通常、非酸化殺生物剤が推奨される。
【0013】
クロラミンは、通常は、塩素などの酸化殺生物剤に対する高い要求が存在する条件、又は「酸化」殺生物剤の持続が有益である条件において、効果的であり、典型的に用いられる。家庭用水システムは、ますますクロラミンにより処理されるようになっている。通常、クロラミンは、遊離の塩素が水中に存在又は添加されたアンモニアと反応するときに形成される。クロラミン製造のための多くの異なる方法が文書化されている。塩素源及び窒素源との間の反応の、特定の主要なパラメータが、生成される殺生物性化合物の安定性、及び有効性を決定する。以前に記載された方法は、クロラミン溶液の製造のために、反応剤の希釈溶液の事前調製に続く、それらの混合の両方に依存している。反応剤はアンモニウム塩(硫化物、臭化物若しくは塩化物)の形態のアミン源、及び気体の形態、又はアルカリ土類金属(Na若しくはCa)と結合した形態のCl(塩素)供与体である。さらに、前記の記載された方法は、高いpHでの反応剤の添加による反応混合物のpHの制御、又は苛性物溶液の別個の添加に依存している。このように製造される殺菌剤は、急速に分解されるために、処理されるシステムに直ちに添加されなければならない。処理されるシステムの外部でこの殺菌剤溶液は生成され、次いで処理のための水性システム中に供給される。以前に記載された生物学的付着を制御するための液体の処理剤の製造法では、殺生物剤の活性成分が化学的に不安定であり、及び急速に分解してpHの早い低下を引き起こすという、顕著な問題が発生した。この殺生物剤成分の急速な劣化は、効率の低下をもたらした。また、活性な殺生物剤の成分のpHが、殺生物剤の急速な分解に起因して、8.0を超えることがないことも観察された(米国特許第5976386号を参照されたい)。クロラミンがヒドラジン製造における前駆体として製造された更に他の方法では、初期の反応混合物中の水酸イオンの存在に起因して、約3.5%を超える濃度が達成されることはなかった(米国特許第3254952号を参照されたい)。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は以下の主要な態様を記載している:
1.「より安定な」殺菌剤溶液の製造のための反応剤の組成物、
2.殺生物剤成分の「より安定な」形態を製造するための条件、及び
3.前記殺菌剤の製造のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、安定なクロラミンを製造するための方法に関し、pH5を超える安定なクロラミンを製造するために、濃縮された塩素源が、濃縮されたアミン源と混合され、及び撹拌される。本発明の塩素源は、アルカリ土類金属水酸化物を含み、好適な塩素源は次亜塩素酸ナトリウム及び次亜塩素酸カルシウムであり、及び好適にはアミン源は硫酸アンモニウム(NHSO又は水酸化アンモニウムNHOHである。
【0016】
本発明の方法は、クロラミンを生成するための、塩素源及びアミン源が反応する反応媒体を含む。この反応媒体は、好適には水である液体である。本発明の生成物は安定なクロラミンである。
【0017】
本発明は、pH7以上の安定なクロラミンを製造するための、濃縮された塩素源を濃縮されたアミン源及び反応媒体と混合し、それらを撹拌する安定なクロラミンを製造する方法を詳述する。
【実施例】
【0018】
上述したことは、以下の、本発明を遂行するための方法を説明することを意図し、本発明を制限することを意図しない実施例を参照することにより、よりよく理解することができる。
【0019】
<実施例1>
製造されるクロラミン溶液の製造及び安定性を理解するための実験では、クロラミンの製造のために、新鮮な次亜塩素酸塩溶液、(NHSO及びNHOHが調製され使用される。調製された次亜塩素酸塩溶液は、別個に試験され、その希釈から予期されたように、遊離のClとして〜110ppmを含むことが見いだされた。製造されたクロラミンの量は、生成物の遊離のCl、及び合計のClを測定することにより評価された。実験からの結果は、クロラミン(合計のCl)へ100%の変換されたことを示した。加えて、(NHSO又はNHOHにより製造された生成物のpHは7を超える値にとどまった。
【0020】
この製造されたクロラミン溶液は、暗所に保存され、1日後に再分析された。製造され、50mLの試験管の閉鎖空間に保存された、クロラミン溶液の安定性を知るために、遊離のCl、及び合計のClを再度測定した。このデータは製造時のものと比較し、及び合計のClレベルにおける損失は、溶液からのクロラミンの測定値とした。(NHSO又はNHOHから誘導されたアミンから製造されたクロラミン生成物は、1日後に、それぞれ7.7%及び5.9%と、わずかな分解を示した。観察としては、臭化アンモニウム(NHBr)から誘導されたアミンから製造されたクロラミン溶液は、1日後に90%を超える損失/分解を示した。
【0021】
当業者には、本明細書に現在記載された好適な実施形態に対する、さまざまな変更及び修正が自明であることを理解されたい。かかる変更及び修正は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、及びその意図された利点を損なうことなく可能である。従って、かかる変更及び修正も添付された請求範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続流中の安定なクロラミンを製造するための方法であって、pH7〜10.5のクロラミンを製造するために、室温の濃縮された塩素源を、室温の濃縮されたアミン源と混合して、及びそれらを撹拌する、方法。
【請求項2】
前記塩素源が、アルカリ土類金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミン源が硫酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アミン源が水酸化アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アミン源に対する塩素源のモル比が、1:0.755〜1:6及びより好適には1:0.755〜1:2である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アミン源に対する塩素源のモル比が、1:0.755〜1:2である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応媒体が液体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水酸化物の濃度が増加される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記安定クロラミンが8〜10のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記塩素源が、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
安定なクロラミンを製造する方法であって、濃縮された塩素源を濃縮されたアミン源及び反応媒体と混合し、並びにpH7〜10.5のクロラミンを製造するために、それらを撹拌する、方法。
【請求項12】
前記塩素源が、アルカリ土類金属水酸化物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記塩素源が、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アミン源が硫酸アンモニウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アミン源が水酸化アンモニウムである、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2013−502377(P2013−502377A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526846(P2012−526846)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/045960
【国際公開番号】WO2011/028423
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】