説明

安定なIgG4抗体

本発明は、安定化されたIgG4抗体、そのような抗体を産生する方法、およびそのような抗体の薬剤としての用途に関する。主な局面において、本発明は、重鎖が、(409)位でArg残基、(405)位でPhe残基、または(370)位でLys残基の置換を有するヒトIgG4定常領域を含む、重鎖と軽鎖とを含む安定化IgG4抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において引用された全ての特許、特許出願、および他の刊行物は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規の安定化されたIgG4抗体、そのような抗体を産生する方法、およびそのような抗体の薬剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗体は、癌および自己免疫疾患が含まれる多数の疾患および障害のための治療物質として用いられている。抗体は、特異的抗原を認識し、リガンド-受容体相互作用の阻害、受容体活性化の阻害、受容体インターナリゼーションの媒介、ならびに補体依存的細胞障害性(CDC)および抗体依存的細胞障害性(ADCC)などのエフェクター機能の活性化が含まれるいくつかの機構を通してその効果を媒介する免疫グロブリンである。免疫グロブリンには5つのクラスがある:IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgE。IgGクラスはサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4にさらに分割される。
【0004】
ヒトIgG4分子は不均一であり、ヒンジ領域に位置する重鎖間ジスルフィド結合の有無によって異なる、様々な分子型で存在する。このように、IgG4分子は、両方の重鎖間ジスルフィド結合が形成された型、または全く形成されていない型で存在し、これは平衡時のプロセスである(非特許文献1/Schuurman et al. (2001) Mol Immunol 38: 1;非特許文献2/Bloom et al (1997) Protein Sci 6:407)。重鎖間ジスルフィド結合を欠損する型は、1つの重鎖と1つの軽鎖からなり、本明細書において「半分子」または「Fabアーム」と呼ばれる。IgG4の不均一性は、IgG1およびIgG2の場合のようなCys-Pro-Pro-Cysの代わりに、より柔軟な構造であると考えられるCys-Pro-Ser-CysからなるIgG4ヒンジ領域のコア配列に関連すると考えられている。IgG4のこの不均一性におけるコアヒンジ配列の役割を支持するデータは、 Angal et al. (1993) Mol Immunol 30: 105(非特許文献3)によって報告されている。本試験において、ヒンジ領域におけるSer残基をPro残基に置き換えることによって、このようにコアヒンジ配列をCys-Pro-Pro-Cys(IgG1およびIgG2の配列と同一である)に変化させることによって、IgG4半分子の存在が消失することが示された。
【0005】
IgG4抗体は、他のIgGサブクラスとは異なり、抗原との相互作用において一価の分子のように挙動することが数年前から知られている。血清由来ヒトIgG4は、クロスリンクできないことから、精製抗原を沈殿させることができないことが見いだされた。そのような血清由来IgG4は、機能的に一価であるが(非特許文献4/Aalberse et al. (1983) J Immunol 130:722;非特許文献5/van der Zee et al. (1986) J Immunol 137:3566)、対照的に組み換えによって産生された単離IgG4は、抗原との相互作用において二価のように挙動する(非特許文献6/Schuurman et al (1999) Immunology 97:693)。さらに、二重特異性反応性を有するIgG4抗体は、異なる2つの抗原に対するIgG4抗体を大量に発現するアレルギー患者の血清に存在することが示された(非特許文献6/Schuurman et al (1999) Immunology 97:693;非特許文献7/Aalberse and Schuurman (2002) Immunology 105:9;非特許文献8/Aalberse et al (1999) Int Arch Allergy Immunol 118: 187)。これらの知見に基づいて、IgG4抗体は、本明細書においてFabアーム交換と呼ばれる活性である、「半分子」を交換することができるという仮説が立てられた。
【0006】
ヒトIgG4にはいくつかの異なるアロタイプが存在することが見いだされている。これらのアロタイプの1つは、309位でLeu残基および409位でLys残基を含有するが、他のアロタイプではArg残基である(非特許文献9/Brusco et al (1998) Eur J Immunogen 25:349)。WO2006/033386(特許文献1)において、先に言及したコア配列のCys-Pro-Pro-Cysへの変異が含まれるヒンジ領域の変異を同様に含有する抗体のコンテクストに409位でArgからLysへの変異を導入することによって、IgG4抗体を低いpHでより安定にすることができることが示されている。
【0007】
IgG4抗体は、C1qおよびFc受容体に対する親和性が低いために、補体および細胞活性化の誘導能が低い。これによってIgG4は、宿主エフェクター機能の動員が望ましくない免疫療法の開発にとって好ましいアイソタイプとなる。
【0008】
しかし、抗体のいかなる治療的使用に関しても、抗体の高い程度のインビボ安定性が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2006/033386
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Schuurman et al. (2001) Mol Immunol 38: 1
【非特許文献2】Bloom et al (1997) Protein Sci 6:407
【非特許文献3】Angal et al. (1993) Mol Immunol 30: 105
【非特許文献4】Aalberse et al. (1983) J Immunol 130:722
【非特許文献5】van der Zee et al. (1986) J Immunol 137:3566
【非特許文献6】Schuurman et al (1999) Immunology 97:693
【非特許文献7】Aalberse and Schuurman (2002) Immunology 105:9
【非特許文献8】Aalberse et al (1999) Int Arch Allergy Immunol 118: 187
【非特許文献9】Brusco et al (1998) Eur J Immunogen 25:349
【発明の概要】
【0011】
本特許出願において、異なる抗原結合特異性を有する2つの組み換え型モノクローナル抗体IgG4抗体をマウスに投与すると、二重特異性抗体がインビボで形成されることが証明されている。この現象は、IgG4抗体を細胞と共にインキュベートすることによって、または還元条件下でインビトロで再現することができる。異なる抗原結合特異性を有するIgG4抗体は、推計学的であり、その中で全てのIgG4分子が関与しているように思われるFabアーム交換に関係していることが示された。このように、IgG4抗体は、凝集体を同時に形成することなく、二重特異性抗体を形成する。
【0012】
ゆえにIgG4抗体は、インビボで望ましくない異常な特性を有する:IgG4抗体は、Fabアーム交換に関係する不安定な動的分子である。投与された治療的IgG4抗体は、望ましくない特異性を有する内因性のIgG4抗体と交換する可能性がある。このプロセスのランダムな性質は、ヒト免疫療法にとって非常に望ましくない予測不可能性を導入する。
【0013】
本発明は、Fabアーム交換を受ける能力が低減されたIgG4抗体の安定化型に関する。意外にも、ヒトIgG4における409位でのArg残基または405位でのPhe残基の置換は、Fabアーム交換を防止することができ、このようにコアヒンジ領域配列のCys-Pro-Pro-Cysへの変異がない場合においてもIgG4を安定化することが見いだされている。コアヒンジ配列のCys-Pro-Pro-Cysへの変化によってヒンジ領域の柔軟性を消失させることが、半分子交換の防止にとっての必要条件であると考えられたことから、このことは予想外であった。
【0014】
したがって、主な局面において、本発明は、重鎖が409位でArg残基、405位でPhe残基、または370位でLys残基の置換を有するヒトIgG4定常領域を含み、抗体が、409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基を有する場合、抗体はヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まないことを条件として、抗体が任意で1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含む、重鎖と軽鎖とを含む、薬剤として用いるための安定化されたIgG4抗体に関する。
【0015】
409、405、および370位での置換は、個々に、または任意の組み合わせで存在しうる。
【0016】
主な態様において、本発明は、重鎖が、409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基、および/または405位に対応する位置でAla、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、ならびに抗体が任意で、1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含むが、ヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない、重鎖および軽鎖を含む、薬剤として用いるための単離された安定化IgG4抗体に関する。
【0017】
いくつかの態様において、本発明において用いられる抗体は、それらが天然に存在するIgG4と比較して定常領域において最小数の配列変化を含有するという長所を有する。このことは、抗体をヒトの治療のために用いる場合の免疫原性のリスクを低減させる。
【0018】
1つの特定の態様において、本発明の安定化IgG4抗体の定常領域は、Brusco et al. (1998) Eur J Immunogen 25:349によって記述された先に言及したLys409アロタイプの定常領域と同一でさえある。このように、その特定の態様において、抗体の定常領域は、ヒトにおいて天然に見いだされる抗体と同一である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】精製組み換え型IgG1およびIgG4のSDS-PAGE分析。精製後、Betv1およびFeld1、IgG1およびIgG4抗体を非還元SDS-PAGEにおいて分析した。
【図2】異なる時点でのnu/nu Balb/cマウスにおける二重特異性IgGレベル。異種クロスリンクアッセイにおいて決定された二重特異性IgGの量を、Bet v 1結合試験において決定されたBet v 1特異的IgGの量に対してプロットした。IgG1およびIgG4含有血漿試料からのデータをそれぞれ、白い記号および黒い記号で表す。破線は、IgG半分子の交換がランダムで完全である場合の二重特異性IgGの計算量を表す。
【図3】二重特異性ヒトIgG4分子はインビボで生成される。(A)SCIDマウスの群(n=5)にキメラ抗体混合物:IgG-Betv1 100μg/IgG1-Feld1 100μg(■)、IgG4-Betv1 100 μg/IgG4-Feld1 100 μg(●)、または3)IgG4-Betv1 100 μg/IgG4-Feld1 100 μg+無関係な組み換え型IgG4 2,000μg(IgG4-EGFR;▲)を注入した。血漿中のBet v 1またはFel d 1に対する二重特異性活性を査定することによって、二重特異性抗体の生成を経時的に追跡した。総IgG-Bet v 1濃度に対する二重特異性IgGの分画を百分率として表記した。星印のついた矢印は、過剰量の無関係なIgG4(4%)の存在下でIgG4-Betv1/IgG4-Feld1を投与されたマウスにおいて予想される二重特異性反応性レベルを指示し、星印のない矢印は、IgG4-Betv1/IgG4-Feld1混合物(50%)を投与されたマウスにおいて予想されるレベルを指示する。誤差のバーはSEMを表す。(B)単特異的クロスリンク活性を、マウス血漿における放射標識Fel d 1対Fel d 1連結セファロースのクロスリンクを査定することによって試験した。単特異的反応性は、IgGのクリアランスを修正するためにクロスリンクによって結合された放射標識Fel d 1の量と総IgG-Feld1の比として表記した。誤差のバーはSEMを表す。
【図4】マウス血漿における二重特異性活性のSEC分析。IgG4ミックスを投与されたマウスからt=24時間で採取した血漿(10μl)をSuperdex200カラムにおいて分画した。マウスに、Bet v 1結合IgG4 300μgとFel d 1結合IgG4 300μgとを含有するミックスを投与した。分画において、Fel d 1特異性IgG(■)の濃度を、抗原結合試験において測定し、二重特異性IgG Bet v 1-Fel d 1(●)の濃度を、Bet v 1-Fel d 1クロスリンクアッセイにおいて決定した。IVIgを用いたこのカラムの較正により、単量体、二量体、および凝集したIgGはそれぞれ、12.9、11.0、および8.4 mlで溶出することが判明した(データは示していない)。
【図5】全血液成分におけるIgGのFabアーム交換。全血、血球、血漿および血清においてキメラIgG混合物を37℃で24時間インキュベートすることによって、IgG4およびIgG1の交換を評価した後、異種クロスリンクアッセイ(Fel d 1-Bet v 1)において二重特異性活性を測定した。血液は2人のドナーから得た:ドナーA(黒い棒グラフ)およびドナーB(灰色の棒グラフ)。二重特異性活性を、キメラIgG4(パネルA)、キメラIgG1(パネルB)を補足した混合物、またはIgGを加えない(パネルC)混合物において決定した。提示されるデータは全て、37℃で24時間インキュベートした後に測定された。
【図6】ヒト血球によるIgGのFabアーム交換。IgG4(黒い棒グラフ)およびIgG1(灰色の棒グラフ)のFabアーム交換を、キメラIgG混合物を単核球(MNC)、血小板(Thr)、および赤血球(Ery)と共に37℃で48時間インキュベートすることによって評価した後、異種クロスリンクアッセイ(Fel d 1-Bet v 1)において二重特異性活性を測定した。対照として、抗体混合物を無血清培養培地(SFC)においてもインキュベートした。二重特異性は、加えた量に対する結合した125I-Bet v 1の百分率として表記される。
【図7】HEKおよびネズミ細胞株によるIgG4のFabアーム交換。IgG4半分子のFabアーム交換を、キメラIgG4混合物をHEK細胞、ネズミB細胞(J558)、またはハイブリドーマ細胞と共に37℃でインキュベートすることによって評価した。異種クロスリンクアッセイ(Feld1-Bet v 1)における二重特異性活性を、t=0時間(灰色の棒グラフ)およびt=24時間(黒色の棒グラフ)で採取した試料1μlにおいて測定した。二重特異性は、加えた量に対する結合した125I-Bet v 1の百分率として表記される。
【図8】IgG4の赤血球媒介Fabアーム交換。IgG4-Betv1/IgG4-Feld1混合物を新しく精製した赤血球(ery、黒い記号)と共にインキュベートすると、二重特異性抗体が生成されたが、IgG1アイソタイプの混合物に関しては二重特異性は観察されなかった。対照として、赤血球を有しないPBSにおいて抗体混合物をインキュベートした(白い記号)。矢印は、二重特異性IgGの最大予想百分率(50%)を指示する。誤差のバーは、1試料あたり2個ずつの測定の範囲を表す。
【図9】PBSにおけるIgG4のFabアーム交換の非存在。過剰量の無関係なIgG4の存在下でのPBSにおけるIgG1(白色の棒グラフ)、IgG4(灰色の棒グラフ)、およびIgG4(黒い棒グラフ)のFabアーム交換を、二重特異性活性(パネルA)、二価性、および抗原結合を測定することによって評価した。パネルAにおけるIgG Fabアームの交換は、二重特異性IgGの濃度(異種クロスリンクアッセイにおいて決定した)、およびIgG半分子の交換がランダムで完全である場合の二重特異性IgGの最大予想濃度から計算した。Fabアーム交換は、100%である最大交換の百分率として表記した。パネルBにおいて、同種クロスリンクアッセイにおいて測定された、経時的なFel d 1の二価性を描写した。t=0での二価IgGの濃度を100%と設定することによって、二価IgGの濃度を標準化した。
【図10】赤血球溶解物によるIgG4のFabアーム交換。IgG4のFabアーム交換を、キメラIgG4混合物を37℃で赤血球溶解物においてインキュベートすることによって評価した。IgG4を希釈倍数を増加させた溶解物と共にインキュベートした。異種クロスリンクアッセイ(Bet v 1-Fel d 1)における二重特異性活性を、指示される時点で採取した試料において測定した。二重特異性は、加えた量に対する結合した125I-Bet v 1の百分率として表記される。
【図11】赤血球溶解物によって誘導された二重特異性活性のSEC分析。IgG4を新しく調製した赤血球溶解物と共に37℃で24時間インキュベートした後、Superdex200カラムにおいてAKTA HPLCユニット(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)において0.5 ml/分で流して分画した。分画において、Bet v 1特異的IgG(■)の濃度を抗原結合試験において測定して、二重特異性IgG Fel d 1-Bet v 1(●)の濃度をBet v 1-Fel d 1クロスリンクアッセイにおいて決定した。このカラムの較正により、単量体、二量体、および凝集したIgGはそれぞれ、12.1、10.3および8.3 mlで溶出することが判明した(データは示していない)。
【図12】IgG4のGSH媒介Fabアーム交換。IgG4をPBS/アジド中でGSHの増加濃度の存在下でインキュベートすることによって、IgG4 FabアームのGSH媒介交換を評価した。指示される時点で試料を採取して、抗原結合および二重特異性活性を測定した。IgG4 Fabアームの交換を、二重特異性IgGの測定濃度(異種クロスリンクアッセイにおいて決定されるように)、およびIgG4 Fabアームの交換がランダムで完全である場合の二重特異性IgG4の最大予想濃度から計算した。交換は、100%として設定された最大交換の百分率として表記した。
【図13】IgG4半分子のGSH媒介Fabアーム交換のSEC。IgG4をGSH(0.5 mM)と共にインキュベートした後、Superdex200カラムにおいてAKTA HPLCユニット(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)において0.5 ml/分で流して分画した。分画において、Bet v 1特異的IgG(■)の濃度を抗原結合試験において測定して、二重特異性IgG Fel d 1-Bet v 1(●)の濃度をBet v 1-Fel d 1クロスリンクアッセイにおいて決定した。このカラムの較正により、単量体、二量体、および凝集したIgGはそれぞれ、12.1、10.3および8.3 mlで溶出することが判明した(データは示していない)。
【図14】IgG4のGSH媒介Fabアーム交換の温度依存性。IgG4-Betv1およびIgG4-Feld1混合物を、PBSにおいてGSHと共に指示される温度でインキュベートした。t=0時間(灰色の棒グラフ)およびt=24時間(黒色の棒グラフ)において、二重特異性IgG4の濃度を査定した。これらのデータから、IgG4 Betv1濃度に対する二重特異性IgGの分画を計算して、百分率として表記した。誤差のバーは1試料あたり2個ずつの測定の範囲を表す。
【図15】還元剤のパネルによって媒介されるIgG4 Fabアーム交換。IgG4-Betv1およびIgG4-Feld1をPBSにおいて異なる物質(GSSGを除き、全て還元剤)の存在下で37℃で24時間インキュベートした。Bet v 1特異的IgGの濃度をBet v 1結合アッセイにおいて測定して、二重特異性IgGの濃度を異種クロスリンクアッセイ(Fel d 1-Bet v 1)において測定した。IgG-Betv1濃度に対する二重特異性IgGの百分率を計算した。標準誤差のバーは、3回の測定から計算されたSEMを表す。
【図16】GSHを用いた完全なヒトIgG4抗体のFabアーム交換。(A)IgG4-CD20/IgG4-EGFrまたはIgG1-CD20/IgG1-EGFr混合物を、0.5 mM GSHの存在下または非存在下で37℃でインキュベートした。試料を指示される時点で採取した。二重特異性抗体の形成をサンドイッチELISAにおいて測定した。Y-軸は、二重特異性CD20/EGFR抗体の形成の測定としての405 nmでの吸光度を指示する。(B)IgG4のGSH用量依存的Fabアーム交換。IgG4-CD20およびIgG4-EGFrの混合物を、指示されるGSHの濃度と共に37℃で24時間インキュベートした。二重特異性抗体の形成をサンドイッチELISAにおいて測定した。405 nmでの吸光度を、二重特異性CD20/EGFR抗体の形成の測定としてY-軸においてプロットする。(C)IgG4 FabアームのGSH媒介交換は、反応において用いられる成分によって影響を受けて、より低いGSH濃度で培養培地(Freestyle 293)において起こる。(D)IgG4のGSH媒介Fabアーム交換は、0.5 mM GSHでは5 mM GSHより高い。(E/F)ESI-TOF質量分析によるIgG4-EGFRおよびIgG4-CD20のあいだのFabアーム交換の検出。IgG4混合物を、0.5 mM GSHの(E)非存在下または(F)存在下で24時間インキュベートした後、抗体をPNGアーゼFによって脱グリコシル化して、得られた抗体の分子量をESI-TOF質量分析によって決定した。デコンボリューションしたESI-TOFスペクトルを示す。データは2つの実験の代表である。
【図17】アカゲザルIVIgは組み換え型ヒトIgG4抗体のFabアーム交換に関与する。2つの組み換え型ヒトIgG4抗体の混合物(IgG4-CD20およびIgG4-EGFr)を、アカゲザルまたはヒトIVIgの存在下または非存在下でGSHと共に37℃で24時間インキュベートした。Fabアーム交換を通しての二重特異性抗体の形成をサンドイッチELISAにおいて測定した。
【図18】IgG1変異体のGSH媒介Fabアーム交換。異なるIgG1変異体からのFabアーム交換に及ぼすGSH濃度の効果を、0、0.1、1、および10 mM GSHを用いて試験した。Fabアーム交換は以下の混合物を用いて試験した:−IgG4抗feld1 wtとIgG4抗betv1 wt(図においてIgG4 wtとして指示される)−IgG1抗feld1 wtとIgG4抗betv1 wt(IgG1 wtとして指示)−IgG1抗feld1 CPSCとIgG1抗betv1 CPSC(IgG1-CPSCとして指示)−IgG1抗feld1 CH3(IgG4)とIgG1抗betv1 CH3(IgG4)(IgG1-CH3(IgG4)として指示)−IgG1抗feld1 CPSC/CH3(IgG4)と抗betv1 IgG1 CPSC/CH3(IgG4)(IgG1-CPSC-CH3(IgG4)として指示)
【図19】コアヒンジおよび/またはCH3ドメインにおいて変異を含有するIgG1およびIgG4に関する構築物の概略図。
【図20】IgG1およびIgG4ヒンジ領域またはCH3ドメイン変異体のFabアーム交換。
【図21】無ヒンジIgG4抗体2F8-HGおよびCH3変異体2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409A、および2F8-HG-R409KのEGFrに対する結合。結合を、ポリクローナルヒトIgG(IVIG)の存在下および非存在下でEGFR ELISAにおいて試験した。
【図22】IgG1、IgG4および(部分的)IgG3骨格における抗EGFr抗体2F8の配列アラインメント。Kabatに従うおよびEU-インデックスに従うアミノ酸番号を描写する(いずれも、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において記述される)。
【図23】ヒトIgG4抗体のCH3ドメイン変異体のFabアーム交換。2つの組み換え型ヒトIgG4抗体の混合物(IgG4-CD20およびIgG4-EGFr)およびそのCH3ドメイン変異体を0.5 mM GSHと共に37℃で24時間インキュベートした。Fabアーム交換を通しての二重特異性抗体の形成を、サンドイッチELISAにおいて測定した。
【図24】DNA構築物の調製のために用いられるプライマーの位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
定義
「免疫グロブリン」という用語は、ポリペプチド鎖の2つの対、すなわち4つ全てがジスルフィド結合によって相互接続されている、低分子量の軽(L)鎖1対と重(H)鎖1対からなる構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けされている。例として、Fundamental Immunology Ch.7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N. Y. (1989))を参照されたい。簡単に説明すると、それぞれの重鎖は典型的に、重鎖可変領域(本明細書においてVHまたはVHとして省略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は典型的に3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。それぞれの軽鎖は典型的に、軽鎖可変領域(本明細書においてVLまたはVLとして省略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は典型的に1つのドメインCLを含む。VHおよびVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれて、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域のあいだに介在する、超可変領域(または配列が超可変性であるおよび/または構造的に定義されたループの形であってもよい超可変領域)に細分されてもよい。それぞれのVHおよびVLは典型的に、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で整列する:FR1、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(同様にChothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917 (1987)も参照されたい)。
【0021】
しばしば、アミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において記述される方法によって行われる。この番号付けシステムを用いて、実際に直線状のペプチドのアミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮型に対応する、または挿入に対応するより少ないまたは追加のアミノ酸を含有してもよい。たとえば、重鎖可変ドメインには、VH CDR2の残基52の後に単一のアミノ酸インサート(Kabatに従って残基52a)が含まれてもよく、重鎖FR残基82の後に挿入残基(例として、Kabatに従って残基82a、82b、および82c)が含まれてもよい。残基のKabat番号付けは、抗体の配列の相同性領域で「標準的な」Kabat番号配列とのアラインメントによって所定の抗体に関して決定されてもよい。
【0022】
または、アミノ酸残基の番号付けは、同様にKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において記述されるEU-インデックスによって行われる。この番号付けは、ヒト免疫グロブリンG分子のFc部分を扱う文献においてしばしば用いられ、同様に本出願を通しても用いられる。
【0023】
図22は、番号付け法の概要を与え、抗EGFR抗体2F8に基づく異なる抗体アイソタイプのアラインメントを示す。
【0024】
本発明の文脈における「抗体(Ab)」という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指し、それらは少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間もしくはそれより長く、約48時間もしくはそれより長く、約3、4、5、6、7日もしくはそれより多い日数、または他の任意の意味のある機能的に定義された期間(抗原に対する抗体の結合に関連する生理的応答を誘導、促進、増強、および/または調整するために十分な時間、および/または抗体がFc媒介エフェクター活性を動員するために十分な時間などの)などの有意な期間の半減期で、典型的な生理的条件下で抗原に対する特異的結合能を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体(Ab)の定常領域は、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞などの)および古典的補体活性化経路における第一成分であるC1qなどの補体系の成分が含まれる宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介する可能性がある。先に指示したように、本明細書において記述される抗体という用語には、特にそうでないことを述べている、または明らかに文脈と矛盾する場合を除き、変異型または野生型のコアヒンジ領域を含み、抗原に対する特異的結合能を保持する抗体の断片が含まれる。
【0025】
抗体の抗原結合機能は、完全長の抗体の断片によって行われる可能性があることが示されている。そのような断片は、一般的に抗体の意味の中に含まれるが、それらは集合的におよびそれぞれ独立して本発明の独自の特色であり、異なる生物学的特性および有用性を示す。同様に、それ以外であると明記されている場合を除き、抗体という用語にはまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組み換え技術などの任意の公知の技術によって提供される抗原(抗原結合断片)に対して特異的結合能を保持する抗体断片も含まれると理解すべきである。
【0026】
本明細書において用いられるように、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体が含まれると意図される。本発明のヒト抗体には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基が含まれてもよい(たとえば、インビトロにおけるランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボにおいて体細胞変異によって導入された変異)。しかし、本明細書において用いられる「ヒト抗体」という用語は、マウスなどのもう1つの哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体が含まれないと意図される。
【0027】
「キメラ抗体」という用語は、1つの抗体からの1つまたは複数の領域と、1つまたは複数の他の抗体からの1つまたは複数の領域とを含有する抗体を指す。「キメラ抗体」という用語には、二価および多価抗体が含まれる。キメラ抗体は、当技術分野において周知の組み換えプロセスによって産生される(例として、

を参照されたい)。
【0028】
「ヒト化抗体」は、フレームワークならびに重鎖および軽鎖の定常ドメインにおける一定のアミノ酸が、ヒトにおける免疫応答を回避するまたは排除するように変異している、非ヒト種に由来する抗体である。非ヒト(例としてネズミ)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。たいていの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見いだされない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに精密化するためになされる。一般的に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列の領域である、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体はまた、典型的に免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含むであろう。さらなる詳細に関しては、Jones et al., Nature 321, 522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature 332, 323-329 (1988)、およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596 (1992)を参照されたい。
【0029】
本明細書において用いられるように、「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すと意図される。しかし、特定のヒト標的抗原のエピトープ、イソ型、または変種に対して特異的に結合する単離抗体は、他の関連する抗原、例として他の種(種相同体などの)からの抗原に対して交叉反応性を有してもよい。その上、単離抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0030】
本明細書において用いられるように、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに関する単一の結合特異性および親和性を表示する。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する、単一の結合特異性を表示する抗体を指す。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、ヒト重鎖トランスジーンと軽鎖トランスジーンとを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスなどのトランスジェニックまたはトランスクロモゾーマル非ヒト動物から得られたB細胞が含まれるハイブリドーマによって生成されてもよい。
【0031】
本明細書において用いられるように、既定の抗原に対する抗体の結合のコンテクストにおける「結合する」という用語は典型的に、例としてBIA core 3000機器においてリガンドとして抗原を用いて検体として抗体を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した場合に、約10-8 Mもしくはそれ未満などの、約10-9 Mもしくはそれ未満、約10-10 Mもしくはそれ未満、または約10-11 Mもしくはそれ未満などの、約10-7 Mもしくはそれ未満のKDに対応する親和性での結合であり、既定の抗原もしくは近縁の抗原以外の非特異的抗原(たとえば、BSA、カゼイン)に対する結合のその親和性より、少なくとも100倍低い、例として少なくとも1000倍低いなどの、少なくとも10,000倍低い、例として少なくとも100,000倍低いなどの、少なくとも10倍低いKDに対応する親和性で、既定の抗原に結合する。親和性がより低い量は抗体のKDに依存し、そのため抗体のKDが非常に低い場合に(すなわち、抗体が非常に特異的である場合)、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性より低い量は、少なくとも10,000倍であってもよい。
【0032】
本明細書において用いられる「kd」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値はまた、koff値とも呼ばれる。
【0033】
本明細書において用いられる「ka」(M-1×sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0034】
本明細書において用いられる「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0035】
本明細書において用いられる「KA」(M-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、kaをkdによって除することによって得られる。
【0036】
本明細書において用いられるように、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリン(サブ)クラス、例として、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgMを指す。
【0037】
本明細書において用いられるように、ヒト抗体は、抗体が、ヒト免疫グロブリン配列を用いて、例としてヒト免疫グロブリン遺伝子を持つトランスジェニックマウスを免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることによって、システムから得られる場合、特定の生殖系列配列に「由来」し、選択されたヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも95%、例として少なくとも96%などの、少なくとも97%、例として少なくとも98%などの、または少なくとも99%などの、少なくとも90%同一である。典型的に、重鎖CDR3の外部では、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、わずかアミノ酸20個の差、たとえばわずかアミノ酸5個、例としてわずか4、3、2、または1個の差などの、わずかアミノ酸10個の差を表示するであろう。
【0038】
「二重特異性抗体」という用語は、異なる2つの結合特異性を有する、すなわち抗体が、同じ標的抗原上に、またはより一般的に異なる標的抗原上に位置してもよい2つの異なるエピトープに結合する、任意の抗体が含まれると意図される。
【0039】
本明細書において用いられるように、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識および活性化相に対して、免疫応答のエフェクター相に関係する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞には、骨髄またはリンパ起源の細胞、例としてリンパ球(B細胞および細胞障害性T細胞(CTL)が含まれるT細胞などの)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、顆粒球、肥満細胞および好塩基球などの多形核球が含まれる。いくつかのエフェクター細胞は、特異的Fc受容体を発現して、特異的免疫機能を実行する。いくつかの態様において、エフェクター細胞は、ADCCを誘導することができるナチュラルキラー細胞のように、抗体依存的細胞障害性(ADCC)を誘導することができる。たとえば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的殺細胞、および免疫系の他の成分に対する抗原の提示、または抗原を提示する細胞に対する結合に関係している。いくつかの態様において、エフェクター細胞は、標的抗原または標的細胞を貪食してもよい。エフェクター細胞上での特定のFcRの発現は、サイトカインなどの液性因子によって調節されてもよい。たとえば、FcγRIの発現は、インターフェロンγ(IFN-γ)および/またはG-CSFによってアップレギュレートされることが見いだされている。この増強された発現は、FcγRIを担う細胞の標的に対する細胞障害活性を増加させる。エフェクター細胞は、標的抗原または標的細胞を貪食または溶解することができる。
【0040】
「処置」は、症状または疾患状態を緩和する、改善する、停止させる、または根絶する(治癒する)目的で、本発明の治療的に活性な化合物の有効量を投与することを指す。
【0041】
「有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な用量および期間で有効な量を指す。抗体の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに抗体の個体における所望の応答の誘発能などの要因に応じて多様となる可能性がある。治療的有効量はまた、抗体または抗体部分のいかなる毒性または有害な効果よりも治療的に有益な効果が上回る量である。
【0042】
「半分子交換」および「Fabアーム交換」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、IgG4重鎖および付着した軽鎖(半分子)がもう1つのIgG4分子からの重鎖-軽鎖対と取り替えられている、ヒトIgG4に関するタンパク質改変のタイプを指す。このように、IgG4分子は、2つの別個の抗原を認識する2つの別個のFabを獲得する可能性があるが(それによって二重特異性分子が得られる)、そのFcドメイン構造は不変のままである。本明細書において示されるように、Fabアーム交換はインビボで天然に起こり、精製された血球、または還元グルタチオンなどの還元剤によってインビトロで誘導されうる。
【0043】
本発明のさらなる局面および態様
先に記述したように、第一の主な局面において、本発明は、重鎖が409位でArg残基、405位でPhe残基、または370位でLys残基の置換を有するヒトIgG4定常領域を含み、抗体が409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、MetおよびLeuからなる群より選択される残基を有する場合、抗体はヒンジ領域でCys-Pro-Pro-Cys配列を含まないことを条件として、抗体が任意で1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含む、重鎖および軽鎖を含む、薬剤として用いるための安定化IgG4抗体に関する。
【0044】
1つの態様において、抗体は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、MetおよびLeuからなる群より選択される残基、および/または405位に対応する位置でAla、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、ならびに抗体は任意で1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含むが、ヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない。
【0045】
番号405および409はそれぞれ、EUインデックスに従う番号付けを用いた405位および409位でのPheおよびLys残基を指し、同様に実施例38および図22を参照されたい。
【0046】
さらに主な局面において、本発明は、重鎖および軽鎖を含む単離された安定なIgG4抗体に関し、該重鎖は409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、MetおよびLeuからなる群より選択される残基、および/または405位に対応する位置でAla、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、ならびに該抗体は任意でさらなる置換、欠失、および/または挿入を含むが、ヒンジ領域でCys-Pro-Pro-Cys配列を含まず、409位でLysおよび309位でLeuのいずれも含まない。
【0047】
1つの態様において、抗体は、409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、Met、またはLeu残基を含む。
【0048】
もう1つの態様において、抗体は、409位に対応する位置でLys、Thr、Met、またはLeu残基を含む。
【0049】
さらなる態様において、抗体は、409位に対応する位置でLys、Met、またはLeu残基を含む。
【0050】
なお他の態様において、抗体のCH3領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域に置き換えられている。
【0051】
本発明の安定化IgG4抗体のさらなる態様において、抗体は、405位に対応する位置でPheより分子量が小さい(Daで)残基を有する。
【0052】
さらなる態様において、抗体は、405位に対応する位置で、Ala、Val、Gly、Ile、またはLeu残基を含む。
【0053】
なおさらなる態様において、抗体は、405位に対応する位置でAlaまたはLeu残基を含む。
【0054】
本発明の安定化IgG4抗体のさらなる態様において、抗体は、370位に対応する位置でThr残基を有する。
【0055】
なおさらなる態様において、本発明の安定化IgG4抗体は、235位に対応する位置のLeu残基のGluによる置換を含まない。
【0056】
しかし、もう1つの態様において、抗体は、235位に対応する位置でのLeu残基のGluによる置換を含む。
【0057】
さらなる態様において、本発明の抗体は、エフェクター機能をさらに低減させるようにさらに改変されていてもよい。
【0058】
したがって、1つの態様において、本発明の抗体は、以下の置換:234位でAla、236位でAla、237位でAla、297位でAla、318位でAlaまたはVal、320位でAla、322位でAlaまたはGlnの1つまたは複数を含む。
【0059】
もう1つの態様において、本発明の安定化IgG4抗体はヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない。
【0060】
1つの態様において、本発明の安定化IgG4抗体は、ヒンジ領域において、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸でありうるCXPCまたはCPXC配列を含む。
【0061】
さらなる態様において、本発明の抗体は、コアヒンジ領域においてCPRC配列を含まず、図22において述べられた伸長したヒンジ領域(IgG3における228位と229位のあいだの位置)などの伸長したIgG3様ヒンジ領域を含まない。
【0062】
1つの態様において、本発明の安定化IgG4抗体は、ヒンジ領域においてCPSC配列を含む。
【0063】
先に説明したように、本発明の抗体はさらなる改変を含有してもよい。1つの態様において、本発明の安定化IgG4抗体は、SEQ ID NO:39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と比較して、10個未満、たとえば9、8、7、6、5、4、3、もしくは2個未満などの、25個未満の置換、欠失、および/または挿入を有する該アミノ酸配列の変種を含む重鎖定常領域を含む。
【0064】
典型的に、本発明の安定化IgG4抗体は、IgG1およびIgG3と比較してエフェクター機能の活性化能がより低い。このように、1つの態様において、抗体は、同じ可変領域を有する対応するIgG1またはIgG3抗体よりCDCおよび/またはADCCの媒介効率が低い。CDCまたはADCC活性を測定するためのアッセイは、当技術分野において周知である。
【0065】
1つの態様において、本発明の安定化IgG4抗体は、SEQ ID NO:40において述べられるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0066】
本発明の1つの態様において、安定化IgG4抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびキメラ抗体からなる群より選択される。
【0067】
1つのさらなる態様において、本発明の抗体は、ヒトカッパ軽鎖を含む。もう1つの態様において、抗体はヒトラムダ軽鎖を含む。
【0068】
典型的に、本発明の安定化IgG4抗体は二価の抗体であり、たとえば実施例38において説明されるように無関係な抗体の過剰量の存在下であっても二価である抗体である。さらに、本発明の安定化IgG4抗体は好ましくは完全長の抗体であり、すなわち断片ではない。
【0069】
抗体の産生法は、当技術分野において周知である。好ましい態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、たとえば、Kohler et al., Nature 256, 495 (1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法によって産生されてもよく、または組み換えDNA法によって産生されてもよい。モノクローナル抗体はまた、たとえばClackson et al., Nature 352, 624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222, 581-597 (1991)において記述される技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。モノクローナル抗体は、任意の適した起源から得てもよい。このようにたとえば、モノクローナル抗体は、関心対象抗原によって免疫したマウスから得られたネズミ脾臓B細胞から調製されたハイブリドーマから、例として表面上に抗原を発現する細胞の形で、または関心対象抗原をコードする核酸の形で得てもよい。モノクローナル抗体はまた、免疫したヒト、またはラット、イヌ、霊長類等などの非ヒト哺乳動物の抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得てもよい。
【0070】
当技術分野において周知の標準的な組み換えDNA技術を用いて、先に記述したようなアミノ酸置換、欠失、または挿入などのさらなる改変を行ってもよい。
【0071】
1つの態様において、本発明の抗体はヒト抗体である。ヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりむしろヒト免疫系の一部を持つトランスジェニックまたはトランスクロモゾーマルマウスを用いて生成されてもよい。そのようなトランスジェニックおよびトランスクロモソミックマウスにはそれぞれ、本明細書においてHuMabマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスが含まれ、本明細書において集合的に「トランスジェニックマウス」と呼ばれる。
【0072】
HuMAbマウスは、内因性のμおよびκ鎖座を不活化する標的化変異と共に、非再配列ヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ座を含有する(Lonberg, N. et al., Nature 368, 856-859 (1994))。したがって、マウスはマウスIgMまたはκの発現の低減を示し、免疫に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランスジーンは、クラススイッチおよび体細胞変異を受けて、高親和性のヒトIgG、κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg, N. et al. (1994)、上記:Lonberg, N. Handbook of Experimental Pharmacology 113, 49-101 (1994)において論評、Lonberg, N. and Huszar, D., Intern. Rev. Immunol. Vol. 13 65-93 (1995)、およびHarding, F. and Lonberg, N. Ann. N. Y. Acad. Sci 764 536-546 (1995))。HuMabマウスの調製は、Taylor, L. et al., Nucleic Acids Research 20, 6287-6295 (1992)、Chen, J. et al., International Immunology 5, 647-656 (1993)、Tuaillon et al., J. Immunol. 152, 2912-2920 (1994)、Taylor, L. et al., International Immunology 6, 579-591 (1994)、Fishwild, D. et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において詳細に記述されている。同様にUS 5,545,806、US 5,569,825、US 5,625,126、US 5,633,425、US 5,789,650、US 5,877,397、US 5,661,016、US 5,814,318、US 5,874,299、US 5,770,429、US 5,545,807、WO 98/24884、WO 94/25585、WO 93/1227、WO 92/22645、WO 92/03918、およびWO 01/09187を参照されたい。
【0073】
HCo7マウスは、その内因性の軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J. 12, 821-830 (1993)において記述されるように)、その内因性の重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO 01/14424の実施例1において記述されるように)、KCo5ヒトκ軽鎖トランスジーン(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において記述されるように)、およびHCo7ヒト重鎖トランスジーン(US 5,770,429において記述されるように)を有する。
【0074】
HCo12マウスは、その内因性の軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J. 12, 821-830 (1993)において記述されるように)、その内因性の重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO 01/14424の実施例1において記述されるように)、KCo5ヒトκ軽鎖トランスジーン(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において記述されるように)、およびHCo12ヒト重鎖トランスジーン(WO 01/14424の実施例2において記述されるように)を有する。
【0075】
KMマウス系統において、内因性のマウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al., EMBO J. 12, 811-820 (1993)において記述されるようにホモ接合的に破壊されており、内因性のマウス重鎖遺伝子はWO 01/09187の実施例1において記述されるようにホモ接合的に破壊されている。このマウス系統は、Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において記述されるように、ヒトκ軽鎖トランスジーン、KCo5を持つ。このマウス系統はまた、WO 02/43478において記述されるように、第14染色体断片hCF(SC20)で構成されるヒト重鎖トランスクロモゾームを持つ。
【0076】
これらのトランスジェニックマウスの脾細胞を用いて、周知の技術に従ってヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成してもよい。そのようなトランスジェニック非ヒト動物、本発明において用いられる抗体の発現をコードする操作可能な核酸配列を含む非ヒト動物、1つまたは複数の標的コード核酸配列を安定にトランスフェクトした非ヒト動物等は、本発明の追加の特色である。
【0077】
本発明において用いられるヒトモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、または他の種を起源とする本発明において用いられる抗体はまた、関心対象の免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列に関してトランスジェニックであるもう1つの非ヒト哺乳動物または植物を生成することを通して、およびそこから回収可能な形で抗体を産生することを通してトランスジェニックに生成されてもよい。哺乳動物におけるトランスジェニック産生に関連して、抗体は、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物の乳汁において産生されてもよく、およびそこから回収されてもよい。例としてUS 5,827,690、US 5,756,687、US 5,750,172、およびUS 5,741,957を参照されたい。
【0078】
さらに、本発明において用いられるヒトまたは他の抗体は、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイが含まれるがこれらに限定されるわけではないディスプレイ型の技術、および当技術分野において周知の技術を用いる他の技術を通して生成されてもよく、得られた分子を、アフィニティ成熟などの追加の変異に供してもよく、そのような技術は当技術分野において周知である(例としてHoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227, 381 (1991)(ファージディスプレイ)、Vaughan et al., Nature Biotech 14, 309 (1996)(ファージディスプレイ)、Hanes and Pluckthun, PNAS USA 94, 4937-4942 (1997)(リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith, Gene 73, 305-318 (1988)(ファージディスプレイ)、Scott TIBS 17, 241-245 (1992)、Cwirla et al., PNAS USA 87, 6378-6382 (1990)、Russel et al., Nucl. Acids Research 21, 1081-1085 (1993), Hoogenboom et al., Immunol. Reviews 130, 43-68 (1992)、Chiswell and McCafferty TIBTECH 10, 80-84 (1992)、およびUS 5,733,743を参照されたい)。ディスプレイ技術を利用してヒトではない抗体を産生する場合、そのような抗体をヒト化してもよい。
【0079】
さらなる主な局面において、本発明は、本発明の安定化されたIgG4抗体を産生するための方法に関し、方法は、宿主細胞において抗体をコードする核酸構築物を発現させる段階、および任意で抗体を精製する段階を含む。この方法の1つの態様において、安定化IgG4抗体は、409位でのLysと309位でのLeuをいずれも含まない。
【0080】
1つの態様において、本発明の抗体は、細胞障害剤;放射性同位元素;プロドラッグまたはタキサンなどの薬物;サイトカイン;およびケモカインからなる群より選択される化合物に連接される。そのような化合物を抗体に連接(共役)させる方法は当技術分野において周知である。適した方法に対する参照は、WO 2004/056847(Genmab)において与えられている。
【0081】
さらなる主な局面において、本発明は、本明細書において先に定義された安定化IgG4抗体を含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、Remington : The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995において開示されている技術などの従来の技術に従って、薬学的に許容される担体または希釈剤と共に任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤と共に製剤化されてもよい。
【0082】
薬学的に許容される担体または希釈剤と共に他の任意の公知のアジュバントおよび賦形剤は、本発明の選ばれた化合物および選ばれた投与様式にとって適しているべきである。担体および薬学的組成物の他の成分が適しているか否かは、本発明の選ばれた化合物または薬学的組成物の所望の生物学的特性に対して有意な負の衝撃を与えないことに基づいて決定される(たとえば、抗原結合に対して実質的な衝撃より少ない(10%またはそれより少ない相対的阻害、5%またはそれより少ない相対的阻害等)。
【0083】
本発明の薬学的組成物にはまた、希釈剤、増量剤、塩、緩衝剤、洗浄剤(たとえば、Tween-80などの非イオン性洗浄剤)、安定化剤、安定化剤(たとえば、糖またはタンパク質を含まないアミノ酸)、保存剤、組織固定剤、溶解剤、および/または薬学的組成物に含めるために適した他の材料が含まれてもよい。
【0084】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性でなく、特定の患者、組成物、および投与様式に関して所望の治療的応答を達成するために有効である活性成分の量を得るために多様であってもよい。選択された用量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、処置の期間、使用される特定の組成物と併用して用いられる他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康状態、および既往、ならびに医学の技術分野において周知である同様の要因が含まれる多様な薬物動態因子に依存するであろう。
【0085】
当業者である医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要な用量より低いレベルで薬学的組成物において用いられる本発明の化合物の用量を開始して、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加することができるであろう。一般的に、本発明の組成物の適した1日量は、治療効果を産生するために有効な最低量である化合物の量であろう。そのような有効量は一般的に、先に記述した要因に依存するであろう。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、または皮下であることが好ましい。望ましければ、治療的組成物の有効な1日量を、1日を通して適当な間隔で個別に投与される2、3、4、5、6、またはそれより多い小用量として、任意で単位投与剤形で投与してもよい。
【0086】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物は非経口投与される。本明細書において用いられる「非経口投与」および「非経口投与される」という句は、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、通常注射を意味し、これには表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、および胸骨内注射および注入が含まれる。
【0087】
本発明の安定化IgG4抗体は、多くの疾患の処置および/または予防のために用いることができ、広く多様な適した標的分子から選択される抗原に向けることができる。本発明の1つの態様において、抗体は、エリスロポエチン、β-アミロイド、トロンボポエチン、インターフェロン-α(2aおよび2b)、インターフェロン-β(1b)、インターフェロン-γ、TNFR I(CD120a)、TNFR II(CD120b)、IL-1R 1型(CD121a)、IL-1R 2型(CD121b)、IL- 2、IL2R(CD25)、IL-2R-β(CD123)、IL-3、IL-4、IL-3R(CD123)、IL-4R(CD124)、IL-5R(CD125)、IL-6R-α(CD126)、-β(CD130)、IL-8、IL-10、IL-11、IL-15、IL-15BP、IL-15R、IL-20、IL-21、TCR可変鎖、RANK、RANK-L、CTLA4、CXCR4R、CCR5R、TGF-β1、-β2、-β3、G-CSF、GM-CSF、MIF-R(CD74)、M-CSF-R(CD115)、GM-CSFR(CD116)、可溶性FcRI、sFcRII、sFcRIII、FcRn、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、VEGF、VEGFxxxb、α-4インテグリン、Cd11a、CD18、CD20、CD38、CD25、CD74、FcαRI、FcεRI、アセチルコリン受容体、fas、fasL、TRAIL、肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのエンベロープE2、組織因子、組織因子と第VII因子の複合体、EGFr、CD4、CD28、VLA-1、2、3、または4、LFA-1、MAC-1、L-セレクチン、PSGL-1、ICAM-I、P-セレクチン、ペリオスチン、CD33(Siglec 3)、Siglec 8、TNF、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL13、CCL17、CCL18、CCL20、CCL22、CCL26、CCL27、CX3CL1、LIGHT、EGF、VEGF、TGFα、HGF、PDGF、NGF、C1q、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、MBL、B因子などの補体または補体関連成分、MMP1からMMP28のいずれかなどのマトリクスメタロプロテアーゼ、CD32b、CD200、CD200R、キラー免疫グロブリン様受容体(KIRs)、NKG2Dおよび関連分子、白血球関連免疫グロブリン様受容体(LAIRs)、ly49、PD-L2、CD26、BST-2、ML-IAP(アポトーシスタンパク質の黒色腫阻害剤)、カテプシンD、CD40、CD40R、CD86、B細胞受容体、CD79、PD-1、ならびにT細胞受容体からなる群より選択される抗原に結合する。
【0088】
本発明の1つの態様において、抗体は、α-4インテグリンに結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0089】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、VLA-1、2、3、または4に結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、COPD、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0090】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、LFA-1、MAC-1、L-セレクチンおよびPSGL-1からなる群より選択される分子に結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0091】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、LFA-1、MAC-1、L-セレクチン、およびPSGL-1からなる群より選択される分子に結合して、虚血-再灌流損傷、嚢胞性線維症、骨髄炎、糸球体腎炎、痛風、および敗血症からなる群より選択される疾患の処置において用いるためのものである。
【0092】
本発明のもう1つの態様において、抗体はCD18に結合し、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0093】
本発明のもう1つの態様において、抗体はCD11aに結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0094】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、ICAM-1に結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0095】
本発明のもう1つの態様において、抗体はP-セレクチンに結合して、心血管疾患、血栓後静脈壁線維症、虚血-再灌流損傷、炎症疾患、または敗血症の処置において用いるためのものである。
【0096】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、ペリオスチンに結合して、卵巣癌、子宮内膜癌、NSCLC、神経膠芽腫、脳関連腫瘍、乳癌、OSCC、結腸癌、膵臓癌、HNSCC、腎癌、胸腺腫、肺癌、皮膚癌、喉頭癌、肝臓癌、耳下腺腫瘍、胃癌、食道癌、前立腺癌、膀胱癌、および精巣の癌などの悪性疾患および/または転移性疾患の処置において用いるためのものである。
【0097】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CD33(Siglec 3)に結合して、任意で毒素、細胞障害剤、または細胞増殖抑制剤に連結され、CD33を発現する腫瘍または急性骨髄性白血病の処置において用いるためのものである。
【0098】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、Siglec 8に結合して、喘息、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症または自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0099】
本発明のもう1つの態様において、抗体はヌクレオリンに結合して、卵巣癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、NSCLC、神経膠芽腫、脳関連腫瘍、乳癌、OSCC、結腸癌、膵臓癌、HNSCC、腎癌、胸腺腫、肺癌、皮膚癌、喉頭癌、肝臓癌、耳下腺腫瘍、胃癌、食道癌、前立腺癌、膀胱癌、精巣の癌、およびリンパ腫などの悪性疾患および/または転移性疾患の処置において用いるためのものである。
【0100】
本発明のもう1つの態様において、抗体はTNFに結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、COPD、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0101】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL13、CCL17、CCL18、CCL20、CCL22、CCL26、CCL27、またはCX3CL1に結合して、アトピー性皮膚炎、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、COPD、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0102】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、PD-1に結合して、HIV-1感染症におけるT細胞機能の回復およびAIDSの治療において用いるためのものである。
【0103】
本発明のもう1つの態様において、抗体はLIGHTに結合して、肝炎、炎症性腸疾患、移植片対宿主病(GVHD)、および炎症からなる群より選択される疾患の処置において用いるためのものである。
【0104】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、EGF、VEGF、TGFα、またはHGFに結合して、固形癌などの悪性疾患の処置において用いるためのものである。
【0105】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、PDGFに結合して、アテローム性動脈硬化症、線維症、および悪性疾患などの異常な細胞増殖、細胞遊走、および/または血管新生が起こる疾患の処置において用いるためのものである。
【0106】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、NGFに結合して、神経疾患、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患、または前立腺癌などの癌の処置において用いるためのものである。
【0107】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、C1q、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、MBL、またはB因子などの補体または関連成分に結合し、臓器移植拒絶、多発性硬化症、ギヤン-バレー症候群、溶血性貧血、発作性夜間血色素尿症、卒中、心臓発作、火傷の損傷、加齢性黄斑変性、喘息、狼瘡、関節炎、重症筋無力症、抗リン脂質症候群、敗血症、および虚血-再灌流損傷などの、補体および関連成分が有害な役割を果たす疾患において用いるためのものである。
【0108】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、MMP1からMMP28のいずれかなどのマトリクスメタロプロテアーゼに結合して、炎症および自己免疫疾患、転移性癌が含まれる癌、関節炎、炎症、心血管疾患、卒中もしくは脳動脈瘤などの脳血管疾患、喘息などの肺疾患、角膜創傷治癒もしくは変性性遺伝性眼科疾患などの眼科疾患、炎症性腸疾患もしくは潰瘍などの消化管疾患、虫歯、口腔癌、もしくは歯周炎などの口腔疾患、虚血再灌流損傷、または敗血症の処置において用いるためのものである。
【0109】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CD32bに結合して、もう1つの治療抗体と併用して腫瘍抗原に対するT細胞応答およびマクロファージによるADCC/貪食の増強、ワクチン接種、B細胞リンパ腫の免疫療法、喘息、またはアレルギーにおいて用いるためのものである。
【0110】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CD200またはCD200Rに結合して、喘息、リウマチ性関節炎、GVHD、他の自己免疫疾患、または固形腫瘍もしくはリンパ腫などの癌の処置において用いるためのものである。
【0111】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、NKG2Dもしくは関連分子、白血球関連免疫グロブリン様受容体(LAIR)、またはly49に結合して、固形腫瘍もしくはリンパ腫などの癌、喘息、リウマチ性関節炎、GVHD、または自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0112】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、PD-L2に結合して、癌、喘息の処置において、またはワクチン強化において用いるためのものである。
【0113】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CD26に結合して、アテローム性動脈硬化症、GVHD、または自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0114】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、BST-2に結合して、喘息、アテローム性動脈硬化症、リウマチ性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、敗血症、または炎症の処置において用いるためのものである。
【0115】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、ML-IAP(アポトーシスタンパク質の黒色腫阻害剤)に結合して、黒色腫の処置において用いるためのものである。
【0116】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、カテプシンDに結合して、乳癌、卵巣癌、神経膠腫、NSCLC、膀胱癌、子宮内膜癌、肝臓癌、肉腫、胃癌、SCCHN、前立腺癌、または結腸直腸癌などの悪性疾患の処置において用いるためのものである。
【0117】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CD40またはCD40Rに結合して、癌、特にB細胞リンパ腫、B細胞関連または媒介疾患、乾癬性関節炎、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、乾癬、クローン病、または潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患の処置において用いるためのものである。
【0118】
本発明のもう1つの態様において、抗体はCD86に結合して、臓器移植に関連して用いるためのものである。
【0119】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、B細胞受容体に結合して、B細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症、またはアレルギーなどのB-細胞関連または媒介疾患の処置において用いるためのものである。
【0120】
本発明のもう1つの態様において、抗体はCD79に結合して、B細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症、またはアレルギーなどのB細胞関連または媒介疾患の処置において用いるためのものである。
【0121】
本発明のもう1つの態様において、抗体はT細胞受容体に結合して、T細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症、またはアレルギーなどのT細胞関連または媒介疾患の処置において用いるためのものである。
【0122】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、FcαRIに結合して、アレルギー性喘息、またはアレルギー性鼻炎、季節性/通年性アレルギー、枯草熱、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹(hives)、蕁麻疹(urticaria)、接触性アレルギー、アレルギー性結膜炎、眼のアレルギー、食物および薬物アレルギー、ラテックスアレルギー、もしくは昆虫アレルギーなどの他のアレルギー疾患、またはIgA天疱瘡などのIgA腎症から選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0123】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CD25に結合して、移植の拒絶、移植片対宿主病、炎症性の免疫または自己免疫疾患、炎症性または過増殖皮膚障害、リンパ系新生物、悪性疾患、血液障害、皮膚障害、肝臓-消化管障害、心障害、血管障害、腎障害、肺障害、神経障害、結合組織障害、内分泌障害、ウイルス感染症からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0124】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、IL-15またはIL-15受容体に結合して、関節炎、痛風、結合組織障害、神経障害、消化管障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、血管障害、感染障害、腎障害、心障害、循環器障害、代謝障害、骨障害および筋障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0125】
本発明のもう1つの態様において、抗体はIL-8に結合して、掌しょ膿疱性発疹(PPP)、乾癬、または他の皮膚疾患、炎症、自己免疫および免疫障害、アルコール性肝炎および急性膵炎、IL-8媒介血管新生を伴う疾患からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0126】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、CD20に結合して、リウマチ性関節炎、(自己)免疫および炎症障害、非ホジキンリンパ腫、B-CLL、リンパ系新生物、悪性疾患および血液障害、感染疾患および結合組織障害、神経障害、消化管障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、血管障害、感染障害、腎障害、心障害、循環器障害、代謝障害、骨および筋障害、ならびに免疫媒介血球減少症からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0127】
本発明のもう1つの態様において、抗体はCD38に結合して、腫瘍形成性の障害、CD38発現B細胞、プラズマ細胞、単球、およびT細胞が関係している免疫障害、急性呼吸窮迫症候群、および舞踏病網膜炎、リウマチ性関節炎、炎症、自己抗体および/または過剰なBおよびTリンパ球活性が優勢である免疫および/または自己免疫障害、皮膚障害、免疫媒介血球減少症、結合組織障害、関節炎、血液障害、内分泌障害、肝臓-消化管障害、腎症、神経障害、心肺障害、アレルギー障害、眼科障害、感染疾患、婦人科産科障害、男性生殖障害、移植由来障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0128】
本発明のもう1つの態様において、抗体はEGFrに結合して、EGFrを(過剰)発現する癌、および自己免疫疾患、乾癬、炎症性関節炎などの他のEGFr関連疾患からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0129】
本発明のもう1つの態様において、抗体はCD4に結合して、リウマチ性関節炎、(自己)免疫および炎症障害、皮膚T細胞リンパ腫、非皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、悪性疾患および血液障害、感染疾患、および結合組織障害、神経障害、消化管障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、血管障害、感染障害、腎障害、心障害、循環器障害、代謝障害、骨障害、筋障害、免疫媒介血球減少症、およびHIV感染症/AIDSからなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0130】
本発明のもう1つの態様において、抗体はCD28に結合して、炎症疾患、自己免疫疾患、および免疫障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0131】
本発明のもう1つの態様において、抗体は、組織因子または第VII因子と組織因子との複合体に結合して、心筋血管疾患、脳血管疾患、網膜症、および黄斑変性などの血管疾患、ならびに炎症障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いるためのものである。
【0132】
さらなる局面において、本発明は、標的抗原に関連して本明細書において先に言及したように疾患または障害を処置するための薬剤を調製するために、本明細書において先に言及した任意の抗原に結合する安定化IgG4抗体を用いることに関する。
【0133】
本発明は、さらに制限的に解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。
【0134】
実施例
実施例1:オリゴヌクレオチドプライマーおよびPCR増幅
オリゴヌクレオチドプライマーは、Isogen Bioscience(Maarssen, The Netherlands)によって合成および定量された。プライマーをH2Oにおいて100 pmol/μlとなるように溶解して-20℃で保存した。全てのPCRおよびシークエンシングプライマーの概要を以下に与える。PCRに関して、PfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を製造元の説明書に従って用いた。それぞれの反応ミックスは、PCR反応緩衝液(ポリメラーゼと共に供給される)において、全量20μl中に、200μM混合dNTP(Roche Diagnostics, Almere, The Netherlands)、フォワードおよびリバースプライマーを共に6.7 pmol、ゲノムDNA 100 ngまたはプラスミドDNA 1ng、およびPfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ1単位を含有した。PCR反応は、TGradient Thermocycler 96 (Whatman Biometra, Goettingen, Germany)によって32サイクルのプログラム:95℃で2分間の変性;95℃で30秒間、60〜70℃勾配(またはもう1つの特異的アニール温度)で30秒間、および72℃で3分間を30サイクル;72℃で10分間の最終伸長を用いて実行した。適当であれば、さらに分析または処理するまでPCR混合物を4℃で保存した。
【0135】
実施例2:アガロースゲル電気泳動
アガロースゲル電気泳動は、Sambrook(Sambrook, Russell et al. 2000 Molecular cloning. A laboratory manual (third edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従って、50 mlゲルを用いて1×トリス酢酸EDTA緩衝液において行った。ゲルにエチジウムブロミドを含めることによってDNAを可視化して、UV光の下で観察した。ゲルの画像をCCDカメラおよび画像分析システム(GeneGnome; Syngene, via Westburg B. V., Leusden, The Netherlands)によって記録した。
【0136】
実施例3:PCR産物および酵素消化物の分析および精製
所望のPCR断片の精製は、MinElute PCR精製キット(Qiagen, via Westburg, Leusden, The Netherlands;製品番号28006)を用いて、製造元の説明書に従って実行した。単離されたDNAをUV分光学によって定量して、質をアガロースゲル電気泳動によって査定した。
【0137】
またはPCRもしくは消化産物を、1%トリス酢酸EDTAアガロースゲルを用いるアガロースゲル電気泳動によって分離した(たとえば多数の断片が存在する場合)。所望の断片をゲルから切り出して、QIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen;製品番号20051)を用いて製造元の説明書に従って回収した。
【0138】
実施例4:UV分光学によるDNAの定量
核酸の吸光度をNanoDrop ND-1000分光光度計(Isogen Life Science, Maarssen, The Netherlands)を用いて製造元の説明書に従って決定した。DNA濃度を260 nmでの吸光度(OD)(OD260 nm 1単位=50μg/ml)の分析によって測定した。全ての試料に関して、核酸を溶解した緩衝液を参照として用いた。
【0139】
実施例5:制限酵素消化
制限酵素および補足物質は、New England Biolabs(Beverly, MA, USA)、またはFermetas(Vilnius, Lithuania)から得て、製造元の説明書に従って用いた。
【0140】
DNA(100 ng)を、適当な緩衝液において最終容積10μl(反応容積は適当に規模拡大することができる)で酵素5単位によって消化した。消化物を推奨される温度で少なくとも60分間インキュベートした。非適合性の緩衝液または温度の必要条件を伴う、制限酵素による2回消化を必要とする断片の場合、消化を連続的に行った。必要であれば、消化産物をアガロースゲル電気泳動およびゲル抽出によって精製した。
【0141】
実施例6:DNA断片のライゲーション
DNA断片のライゲーションは、Quickライゲーションキット(New England Biolabs)によって、製造元の説明書に従って行った。それぞれのライゲーションに関して、ベクターDNAをおよそ3倍モル過剰量のインサートDNAと混合した。
【0142】
実施例7:大腸菌の形質転換
プラスミドDNA(DNA溶液1〜5μl、典型的にDNAライゲーションミックス2μl)を、製造元の説明書に従って熱ショック法を用いて、One Shot DH5α-Tl(登録商標)またはMACH-1 T1(登録商標)コンピテント大腸菌(E. coli)細胞(Invitrogen, Breda, The Netherlands;製品番号12297-016)に形質転換した。次に、細胞を50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-Bertani(LB)寒天プレートに播種した。細菌コロニーが明白となるまで、プレートを37℃で16〜18時間インキュベートした。
【0143】
実施例8:PCRによる細菌コロニーのスクリーニング
細菌コロニーをHotStarTaqマスターミックスキット(Qiagen;製品番号203445)、ならびに適当なフォワードおよびリバースプライマーを用いて、コロニーPCRによって所望の配列を含有するベクターの有無に関してスクリーニングした。選択されたコロニーに20μlピペットの先端によって軽く触れて、小規模培養物に関してLB 2 mlにおいて短時間触れた後、PCRミックスに浮遊させた。PCRは、TGradient Thermocycler 96によって、35サイクルプログラム:95℃で15分間の変性;94℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で2分間を35サイクルの後に72℃で10分間の最終伸長段階を用いて行った。適当であれば、アガロースゲル電気泳動による分析までPCR混合物を4℃で保存した。
【0144】
実施例9:大腸菌培養物からのプラスミドDNAの単離
プラスミドDNAを、Qiagen (via Westburg, Leusden, The Netherlands)からの以下のキットを用いて、製造元の説明書に従って大腸菌培養物から単離した。大量のプラスミド調製物(培養物50〜150 ml)の場合、HiSpeed Plasmid Maxiキット(製品番号12663)またはHiSpeed Plasmid Midiキット(製品番号12643)のいずれかを用いた。小規模プラスミド調製物の場合(培養物±2 ml)、Qiaprep Spin Miniprepキット(製品番号27106)用いて、DNAを溶出緩衝液(キットと共に供給される)50μlに溶出した。
【0145】
実施例10:DNAのシークエンシング
プラスミドDNAを当技術分野において公知の標準的な技法を用いてシークエンシングした。配列をVector NTIソフトウェア(Informax, Oxford, UK)を用いて分析した。
【0146】
実施例11:HEK-293F細胞における一過性の発現
Freestyle(商標)293-F(浮遊培養生育および化学的に定義されたFreestyle培地、たとえばHEK-293Fに適合させたHEK-293サブクローン)細胞をInvitrogenから得て、293fectin(Invitrogen)を用いて製造元のプロトコールに従ってトランスフェクトした。
【0147】
実施例12:pTomG4の構築;ヒトIgG4の定常領域を有する可変重鎖領域の発現のためのベクター
ゲノムDNAをボランティアの血液試料から単離して、プライマーIGG4gene2fおよびIGG4gene2r(以下の表を参照されたい)によるPCRにおける鋳型として用いて、IgG4の重鎖の完全なゲノム定常領域を増幅して、哺乳動物発現ベクターpEE6.4(Lonza Biologics)にクローニングするために適した制限部位を導入した。PCR断片を精製してpEE6.4にクローニングした。このためにPCR産物をHindIIIおよびEcoRIによって消化した後、制限酵素を熱不活化した。pEE6.4ベクターをHindIIIおよびEcoRIによって消化した後、制限酵素を熱不活化して、エビアルカリホスファターゼによってベクター断片を脱リン酸化した後、ホスファターゼを熱不活化した。IgG4断片およびpEE6.4HindIII/EcoRI脱リン酸化ベクターをライゲーションして、コンピテントMACH1-T1(登録商標)細胞(Invitrogen)に形質転換した。クローン3個をLBにおいて生育させて、プラスミドDNAを小さい培養物(1.5 ml)から単離した。制限消化によってpEE6.4ベクターにおけるIgG4断片のクローニングに一貫するパターンが明らかとなった。2つのクローンからのプラスミドDNAをDH5α-T1(登録商標)大腸菌に形質転換して、プラスミドDNAを単離して、構築物をインサートの配列分析によってチェックしたところ、クローン1個が、イントロンにおける何らかの軽微な差を別として、GenbankデータベースからのゲノムIgG4クローンと同一であることが見いだされた。これらの差は、おそらくGenbank配列における多形または配列の誤りのいずれかである。プラスミドをpTomG4と名付けた。
【0148】
(表1)プライマーの配列

【0149】
実施例13:マウス抗Bet v 1および抗Feld1抗体の可変領域のクローニング
マウスハイブリドーマ細胞(Betvlに関して:Akkerdaas, van Ree et al. 1995 Allergy 50(3), 215-220からのクローン2H8およびFeld1に関してde Groot et al. 1988 J. Allergy Clin. Immunol. 82, 778からのクローン4F7)0.3×105個(Betv1)または0.9×105個(Feld1)から、RNeasyキット(Qiagen, Westburg, Leusden, Netherlands)によって製造元のプロトコールに従って総RNAを調製した。
【0150】
RNAの5'-RACE-相補的DNA(cDNA)を、SMART RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech, Mountain View, CA, USA)を用いて製造元のプロトコールに従って総RNAおよそ100 ngから調製した。Betv1およびFeld1抗体のVLおよびVH領域をPCRによって増幅した。これに関してPfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ(Stratagene)を製造元の説明書に従って用いた。それぞれの反応ミックスは、PCR反応緩衝液(ポリメラーゼと共に供給される)において200 μM混合dNTP(Roche Diagnostics)、リバースプライマー(VH領域に関してRACEG1mm1およびVL領域に関してRACEKmm1)12 pmol、UPM-Mix(UPM-ミックス:2μM ShortUPMH3および0.4μM LongUPMH3オリゴヌクレオチド)7.2 pmol、先に記述した5'RACE cDNA鋳型0.6μl、およびPfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ1.5単位を全量30μl中に含有した。
【0151】
PCR反応は、TGradient Thermocycler 96(Whatman Biometra)によって35サイクルプログラム:95℃で2分間の変性;95℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で1.5分間を35サイクル;72℃で10分間の最終伸長を用いて実行した。反応産物を1%TAEアガロースゲルにおけるアガロースゲル電気泳動によって分離して、エチジウムブロミドによって染色した。正確なサイズのバンドをゲルから切り出して、QiaexIIゲル抽出キット(Qiagen)を用いてDNAをアガロースから単離した。
【0152】
ゲル単離PCR断片を、200μM dATPおよびAmplitaq(Perkin Elmer)2.5単位と共に72℃で10分間インキュベートすることによってAテールを付加して、微小溶出カラム(Qiagen)を用いて精製した。A-テール付加PCR断片をpGEMT easyベクターシステムIIキット(Promega)を用いて、製造元のプロトコールに従ってpGEMTeasyベクター(Promega)にクローニングした。ライゲーション混合物2μlをOneShot DH5αT1Rコンピテント大腸菌(Invitrogen)に形質転換して、LB/Amp/IPTG/Xgalプレートに播種した。VHおよびVL配列のそれぞれに関してインサートを含有する4つの白色コロニーを採取してインサートをシークエンシングした。Betv1のVHおよびVLの推定されるアミノ酸配列をSEQ ID NO:15および16に与え、Feld1の推定アミノ酸配列をSEQ ID NO:17および18に描写する。
【0153】
VH配列Bet v 1(SEQ ID NO:15):

【0154】
VL配列Bet v 1(SEQ ID NO:16):

【0155】
VH配列Feld1(SEQ ID NO:17):

【0156】
VL配列Feld1(SEQ ID NO:18):

【0157】
実施例14:pConG1fBetV1の構築:Betv1-IgG1の重鎖を産生するためのベクター
マウス抗Betv1抗体のVHコード領域を、プライマーVHexbetv1forおよびVHexbetv1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)からPCRによって増幅して、pConG1f0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。VH断片をゲル精製して、pConG1f0.4にクローニングした。このために、PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびApaIによって消化して精製した。VH断片およびpConG1f0.4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、正確な配列を確認した。このプラスミドをpConG1fBetv1と命名した。
【0158】
実施例15:pConKBetv1の構築:Betv1の軽鎖を産生するためのベクター
VLコード領域マウス抗Betv1抗体を、プライマーVLexbetv1forおよびVLexbetv1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)から増幅して、pConK0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびBsiWIによって消化して、精製した。VL断片およびpConKappa0.4HindIII-BsiWI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α T1(登録商標)大腸菌に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpConKBetv1と命名した。
【0159】
実施例16:pTomG4Betv1の構築:Betv1-IgG4の重鎖を産生するためのベクター
Betv1-IgG4を発現させるためのベクターを構築するために、BetV1のVH領域をpTomG4にクローニングした。このため、pTomG4およびpConG1fBetv1をHindIIIおよびApaIによって消化して、意味のある断片を単離した。Betv1 VH断片およびpTomG4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpTomG4Betv1と命名した。
【0160】
実施例17:pConG1fFeld1の構築:Feld1-IgG1の重鎖を産生するためのベクター
マウス抗Feld1抗体のVHコード領域を、プライマーVHexfeld1forおよびVHexfeld1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)からPCRによって増幅して、pConG1f0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。VH断片をゲル精製して、pConG1f0.4にクローニングした。このため、PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびApaIによって消化して精製した。VH断片およびpConGlf0.4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、正確な配列を確認した。このプラスミドをpConG1fFeld1と命名した。
【0161】
実施例18:pConKFeld1の構築:Feld1の軽鎖を産生するためのベクター
VLコード領域マウス抗Feld1抗体を、プライマーVLexfeld1forおよびVLexfeld1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)から増幅して、pConK0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびBsiWIによって消化して精製した。VL断片およびpConKappa0.4HindIII-BsiWI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)大腸菌に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpConKFeld1と命名した。
【0162】
実施例19:pTomG4Feld1の構築:Feld1-IgG4の重鎖を産生するためのベクター
Feld1-IgG4を発現させるためのベクターを構築するために、Feld1のVH領域をpTomG4にクローニングした。このため、pTomG4およびpConG1fFeld1をHindIIIおよびApaIによって消化して、意味のある断片を単離した。Feld1 VH断片およびpTomG4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpTomG4Feld1と命名した。
【0163】
実施例20:2F8-IgG4および7D8-IgG4を発現させるための抗体発現ベクターの構築
HuMab 2F8(IgGl-EGFR)およびHuMab 7D8(IgGl-CD20)を発現させるための発現ベクターを構築した。HuMab 2F8(WO 02/100348)およびHuMab 7D8(WO 04/035607)のVHおよびVLコード領域を、IgG1重鎖を産生するために発現ベクターpConGlf(Lonza Biologies)に、およびκ軽鎖を産生するためにpConKappaにクローニングして、ベクターpConG1f2F8、pConG1f7D8、pConKappa2F8、およびpConKappa7D8を生じた。pConG1f2F8およびpConG1f7D8のVH領域をこれらのベクターからHindIII/ApaI消化によって除去して、HindIII/ApaI消化pTomG4ベクターに挿入してそれぞれ、pTomG42F8およびpTomG47D8を得た。
【0164】
実施例21:HEK-293F細胞における一過性の発現によるBetv1-IgG1、Betv1-IgG4、Feld1 -IgG1およびFeld1-IgG4の産生
293fectinを用いて製造元の説明書に従って、意味のある重鎖および軽鎖ベクターをHEK-293F細胞に同時トランスフェクトすることによって、全ての構築物から抗体を産生した。Betv1-IgGlの場合、pConG1Betv1およびpConKBetv1を同時発現させた。Betv1-IgG4の場合、pTomG4Betv1およびpConKBetv1を同時発現させた。Feld1-IgG1の場合、pConG1Feld1およびpConKFeld1を同時発現させた。Feld1-IgG4に関して、pTomG4Feld1およびpConKFeld1を同時発現させた。IgG1-EGFrに関して、pConG1f2F8およびpConKappa2F8を同時発現させた。IgG4-EGFrに関して、pTomG42F8およびpConKappa2F8を同時発現させた。IgGl-CD20に関して、pConG1f7D8、およびpConKappa7D8を同時発現させた。IgG4-CD20に関して、pTomG47D8およびpConkappa7D8を同時発現させた。
【0165】
実施例22:IgG1およびIgG4抗体の精製
IgG1およびIgG4抗体をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。細胞培養上清を0.20μMデッドエンドフィルターによって濾過した後5 mlプロテインAカラム(rProtein A FF, GE Healthvcare)にローディングして、0.1 Mクエン酸-NaOH、pH 3によってIgGを溶出した。溶出液を2 MトリスHCl、pH 9によって直ちに中和して、12.6 mMリン酸ナトリウム、140 mM NaCl、pH 7.4(B. Braun, Oss, The Netherlands)に対して終夜透析した。透析後、試料を0.20μMデッドエンドフィルターによって濾過滅菌した。精製IgGの濃度を比濁法および280 nmでの吸光度によって決定した。精製タンパク質をSDS-PAGE、IEF、質量分析、および糖分析によって分析した。
【0166】
実施例23:精製IgGのSDS-PAGE分析
精製後、Betv1およびFeld1、IgG1およびIgG4抗体を非還元SDS-PAGEにおいて分析した。用いたビストリス電気泳動法は、Laemmli法(Laemmli 1970 Nature 227 (5259):680-5)の改変であり、試料を中性pHで泳動させた。SDS-PAGEゲルをクーマシーによって染色して、GeneGenius(Synoptics, Cambridge, UK)を用いてデジタル撮像した。
【0167】
図1において認められうるように、Betv1およびFeld1 IgG1は、完全長の4量体(2つの重鎖および2つの軽鎖)Feld1およびBetv1 IgG1分子を表す1つの主要なバンドを示した。Betv1およびFeld1 IgG4は、4量体IgG4分子を表す主要なバンドのほかに、実質的な量の半分子(すなわち、1つの重鎖バンドと1つの軽鎖)を有することを示した。
【0168】
実施例24:マウスにおけるIgG4 Fabアーム交換の評価
6〜8週齢のnu/nu Balb/cマウス5匹を用いて、IgG4半分子の交換を追跡した。マウスをCentral Laboratory Animal Facility(Utrecht, The Netherlands)のバリアユニットに収容して、食餌および水を自由に提供してフィルタートップケージにおいて維持した。実験は全て、Utrecht Universityの動物倫理委員会によって承認された。
【0169】
キメラ抗体を腹腔内に投与した。血液試料(75〜100μl)を投与後4.25時間、24時間、48時間、および72時間に採取した。血液をヘパリン含有バイアルに収集して、10,000 gで5分間遠心して細胞から血漿を分離した。血漿を抗原特異的抗体および二重特異性抗体レベルを決定するために-20℃で保存した。
【0170】
この実験において、キメラIgG4半分子(n=2)の交換をIgG1半分子(n=3)の交換と比較した。Bet v 1およびFel d 1特異的抗体(IgG1またはIgG4)の混合物を600μg(各抗原特異的抗体300μg)の用量で200μl/マウスでマウスに投与した。
【0171】
Bet v 1またはFel d 1結合抗体の血漿濃度を抗原結合試験において測定した。このため、血漿試料を、125I標識Bet v 1または125I標識Fel d 1の存在下で、PBS-IAT(1μg/ml IVIg、0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)750μlにおいてプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1またはFel d 1特異的IgGの濃度を精製Bet v 1特異的抗体またはFel d 1特異的抗体を標準として用いて計算した(比濁法によって測定した場合に、試験あたり0〜200 ngの範囲)。二重特異性IgGの濃度を異種クロスリンクアッセイの2つの変化型において測定した。第一のアッセイにおいて、血漿を、PBS-IATにおいて全量300μlでセファロース連結Bet v 1(0.5 mg)と共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I標識Fel d 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Bet v 1-Fel d 1)の濃度は、精製Fel d 1結合rIgGから得たFel d 1結合試験の検量線を用いて計算した。第二のアッセイにおいて、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性を、セファロース連結rFel d 1(0.5 mg)および125I標識Bet v 1を用いて類似の技法において測定した。二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を精製Bet v 1特異的rIgGを標準物質として用いて計算した(Bet v 1結合試験と同じ曲線)。
【0172】
図2において、二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を異なる時点でBet v 1結合IgG濃度に対してプロットする。二重特異性IgGは、IgG4を投与されたマウスとは対照的にIgG1ミックスを投与したマウスでは観察されなかった。24時間後、二重特異性IgG4の生成は最大であり、100%の交換に対応した。
【0173】
図3Aにおいて、二重特異性IgG4の生成を経時的に追跡する。二重特異性抗体は、IgG1ではなくてIgG4の混合物を注射したマウスの血漿において経時的に出現し、二重特異性反応性は1〜2日インキュベートした後にほぼ50%の最大に達した(注意:IgG4-Betv1とIgG4-Feld1の等量が交換されれば、半抗体のランダムおよび完全な交換後に、IgG4-Betv1半抗体の最大の50%が二重特異性分画に組み入れられるであろう)。等量のIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1のあいだのランダムなFabアーム交換は、二重特異性を獲得するIgG4分子のおよそ半数と一貫するであろう。対照として、無関係な抗原に対して向けられる追加のIgG4(抗EGFr抗体2F8から生成されたIgG4)の20倍過剰量をIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1と共にマウスに注射した。過剰量の無関係なIgG4は、Betv1-Feld1-二重特異性IgG4の生成と競合した。
【0174】
もう1つの実験(図3B)において、同じネズミ血清試料を、放射標識可溶性Fel d 1をセファロース固定Fel d 1にクロスリンクさせることができるか否かに関して試験した。単特異的クロスリンク活性は、IgG4の等量混合物を投与されたマウスでは減少したが、IgG1を投与されたマウスでは減少しないことが見いだされ、単特異的クロスリンク活性が失われたことを示している。約1日後に〜50%の最大低減に達した。無関係なIgG4の追加の過剰量を投与したマウスにおいて、単特異的クロスリンク活性は、類似の速度論によってほぼ完全に消失した。
【0175】
IgG4を投与されたマウスにおいて観察された二重特異活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った(図4)。この目的のために、血漿試料(t=24時間で採取)をSuperdex200カラムにおいて分画した後、Fel d 1結合IgGおよびBet v 1-Fel d 1クロスリンクIgGを分画において測定した。Fel d 1結合抗体は、保持容量〜12.9 mlで1つのピークに溶出され、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Bet v 1-Fel d 1クロスリンクアッセイは、同じ分画において検出され、このことは二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している。rIgG1含有血漿において、Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性は分画の前に存在しなかった。同様に、溶出した分画において、異種クロスリンク活性は測定されなかった(データは示していない)。
【0176】
実施例25:全血(成分)によるFabアーム交換活性の評価
全血(成分)の交換活性を調べるために、キメラ抗体を、全血、血球、血漿、または血清と混合してその後インキュベートした。
【0177】
この実験において、IgG4の内因性の血漿レベルを比濁法によって測定した(それぞれ、346および554μg/ml)2人の健康な血液ドナーAおよびBからの全血においてIgG4半分子の交換を評価した。TFPI(Chiron Corporation, Emeryville, Californiaからの組織因子経路阻害剤)を最終濃度40μg/mlで補足した真空採血管において全血を得た。全血を遠心することによって、血球および血漿を得た。細胞分画をOptimem(Invitrogen, Breda, The Netherlands)によって3回洗浄した後、Optimemに浮遊させた。全血をガラス製の真空採血管において凝固活性化因子と共に37℃で30分間インキュベートして、その後凝固した血液を遠心することによって血清を得た。IgG4半分子の交換を評価して、IgG1半分子の交換と比較した。対照として、血液試料をまた、キメラ抗体の非存在下でもインキュベートした。以下の抗体混合物をPBSにおいて調製した。
1.Bet v 1特異的IgG4(10μg)とFel d 1特異的IgG4(10μg)
2.Bet v 1特異的IgG1(10μg)とFel d 1特異的IgG1(10μg)
【0178】
これらの抗体混合物を血液、血球、血漿、または血清と共に全量100μl(各抗体の最終濃度は0.1μg/ml)で水平オービタルシェーカー(125 rpm)において37℃でインキュベートした。全血および血球とのインキュベーション混合物における最終的なヘマトクリットは、おおよそ〜40%であった。24時間後、インキュベーション混合物をEppendorf遠心器において2800 rpmで1分間遠心した後、試料10μlをPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)500μlに採取した。必要であれば試料を4℃で保存した。
【0179】
二重特異活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlで、セファロース連結組み換え型Fel d 1 0.5 mgと共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートし、その後セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0180】
図5において、二重特異性活性を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した、結合した125I-標識Bet v 1の百分率として表した。二重特異性活性は、IgG4半分子の交換の測定であり、これは全血および全血の細胞分画において主に観察された(図5a)。細胞分画における二重特異性レベルは、全血よりさらに高かった。これは、細胞分画において、加えたキメラIgG4抗体と交換することができる内因性のIgG4がもはや存在しないという事実によって説明される可能性が最も高い。何らかの二重特異性活性はまた血漿および血清においても観察されたが、この活性は全血において観察された活性よりかなり低く、OptimemにおいてIgG4混合物をインキュベートすることによって得られた1.7%というバックグラウンドレベルよりごくわずかに高かったに過ぎない。IgG1を含有するインキュベーションではいずれにおいても二重特異性活性は観察されなかった(図5b)。同様に、キメラ抗体を有しない対照インキュベーションにおいても、二重特異性活性は観察されなかった(図5c)。IgG4ミックスにおいて観察された二重特異性活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。この目的のため、試料(t=24時間で採取)をSuperdex200カラムにおいて分画した後、Fel d 1結合IgGおよびBet v 1-Fel d 1クロスリンクIgGを分画において測定した。Fel d 1結合抗体は、保持容量〜12.9 mlで1つのピークに溶出し、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性は、同じ分画において検出され、二重特異性活性が単量体IgGに関連することを示している(データは示していない)。
【0181】
実施例26:血球媒介IgG4 Fabアーム交換活性の評価
IgG4交換活性を調べるために、キメラ抗体を3つの異なるタイプのヒト血球(すなわち、単核球(MNC)、赤血球、および血小板)と共に混合した後インキュベートした。
【0182】
匿名のドナーからの全血をヘパリン含有真空採血管に採取した後、Percoll(Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden)において遠心して、MNCを単離した。単離されたMNCを、使用前にOptimem無血清培養培地(Invitrogen, Breda, The Netherlands)に浮遊させた。新しく精製された赤血球および血小板(the Blood Cell Research Department of Sanquinによって提供)を異なる2人の匿名のドナーから得た。これらの細胞を3回洗浄した後Optimemに浮遊させた。加えて、血小板に10 mMグルコースを補足した。
【0183】
IgG4半分子の交換を評価して、IgG1半分子の交換と比較した。以下の抗体混合物をPBS中で調製した:
−Bet v 1特異的IgG4(10μg)とFel d 1特異的IgG4(10μg)
−Bet v 1特異的IgG1(10μg)とFel d 1特異的IgG1(10μg)
【0184】
これらの抗体混合物を、MNC 1.8×104個、赤血球4.0×108個、または血小板3.5×104個と共に、全量100μl(各抗体の最終濃度は0.1μg/mlであった)で水平オービタルシェーカー(125 rpm)において37℃でインキュベートした。48時間後、インキュベーション混合物をEppendorf遠心器において2800 rpmで1分間遠心した後、試料10μlを、PBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)500μlに採取した。必要であれば、試料を4℃で保存した。
【0185】
二重特異性活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を、異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlで、セファロース連結組み換え型Fel d 1 0.5 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0186】
図6において、二重特異性活性を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した結合した125I-標識Bet v 1の百分率として示す。3つの細胞タイプは全て、二重特異性活性を誘導することができた。Optimem無血清培地において何らかの二重特異性活性が同様に観察されたが、この活性は血球の存在下で観察された活性よりかなり低かった。試験した細胞はいずれもIgG1半分子を交換することができなかった。
【0187】
実施例27:ヒトおよびネズミ細胞株によるIgG4 Fabアーム交換の評価
IgG4交換活性を調べるために、キメラIgG4抗体を、異なる3つの細胞株(すなわちヒト胎児腎(HEK)細胞、ネズミB細胞、またはハイブリドーマ)と混合した後インキュベートした。
【0188】
細胞株J558(Antigen Presentation Research Group of Sanquinによって提供)をネズミB細胞原として選んだ。抗C1エステラーゼ阻害剤を産生するハイブリドーマをAutoimmune Research Group of Sanquinから得た。浮遊HEK(293F)細胞はInvitrogen, Breda, The Netherlandsから得た。細胞は全て、PBSによって3回洗浄後細胞をPBSにおいて浮遊させた。
【0189】
IgG4半分子の交換を、Bet v 1特異的IgG4(2μg)、およびFel d 1特異的IgG4(2μg)からなるIgG4抗体混合物を前述の細胞と共にインキュベートすることによって評価した。抗体混合物を、全量50μlで(各抗体の最終濃度は80μg/ml)水平のオービタルシェーカー(125 rpm)において、HEK細胞24×105個、ネズミB細胞25×105個、またはハイブリドーマ21×105個と共に37℃でインキュベートした。0時間および24時間後、インキュベーション混合物をEppendorf遠心管において2800 rpmで1分間遠心した後、試料をPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)に採取した。必要であれば、試料を4℃で保存した。
【0190】
二重特異性活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料の希釈液を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlでセファロース連結組み換え型Fel d 1 0.5 mgと共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0191】
図7において、二重特異性活性を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した結合した125I-標識Bet v 1の百分率として示す。3つ全ての細胞タイプがIgG4半分子を交換することができた。
【0192】
実施例28:赤血球によるIgG4 Fabアーム交換の評価
IgG4半分子の交換を調べるために、キメラ抗体をヒト赤血球と共に混合した後インキュベートした。赤血球を1人のドナーから精製して、SAGM(生理食塩液アデニングルコースマンニトール)緩衝液において4℃で保存した。使用前に細胞をPBSによって3回洗浄した。
【0193】
この実験において、IgG4半分子の交換をIgG1の交換と比較した。同様に、過剰量の無関係なIgG4の存在下でのIgG4の交換を評価した。以下の抗体混合物をPBSにおいて調製した:
− Bet v 1特異的IgG4(4μg)とFel d 1特異的IgG4(4μg)
− Bet v 1特異的IgG1(4μg)とFel d 1特異的IgG1(4μg)
− Bet v 1特異的IgG4(4μg)、Fel d 1特異的IgG4(4μg)、および抗原Xに対して特異的な無関係なIgG4(80 μg)
【0194】
これらの混合物を、0.05%(w/v)NaN3を補足したPBSにおいて全量100μl(最終ヘマトクリットはおおよそ〜40%)で赤血球と共にインキュベートした後、水平オービタルシェーカー(125 rpm)において37℃でインキュベートした。指示される時点で、Eppendorf遠心器において赤血球を2800 rpmで1分間遠心した後、試料10μlをPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)500μlに採取した。二重特異性活性、二価性、および抗原結合を測定するまで試料を4℃で保存した。対照として、同じ混合物を同様に赤血球を含まないPBSにおいてもインキュベートした。
【0195】
Bet v 1結合抗体のレベルを抗原結合試験において測定した。このため、試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)750 μlにおいて、125I標識Bet v 1の存在下でプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)によって洗浄し、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、精製Bet v 1特異的抗体を標準物質として(比濁計によって決定した場合に試験あたり0〜200 ngの範囲)用いて計算した。Fel d 1およびBet v 1特異的抗体を用いる実験における二重特異性活性をFeld1-Bet v 1クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、IgG含有試料を、PBS-ATにおいて全量300μlでセファロース連結ネコ抽出物(0.5 mg)と共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Feld1-Betv1)の濃度を、精製IgG1-Bet v 1を標準物質(プロテインGセファロースを用いるBet v 1結合試験において得られた)として用いて計算した。
【0196】
図8において、赤血球媒介交換から得られたデータを提示する。IgG1半分子の交換は赤血球の存在下では観察されなかったが、IgG4半分子の約最大の交換が72時間後に観察された(パネルA)(注意:等量のIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1が交換される場合、半分子のランダムおよび完全な交換後に二重特異性分画に組み入れられるのはIgG4-Betv1半抗体の多くて50%であろう)。過剰量の無関係なIgG4の存在下では、IgG4半分子の交換はほとんど測定されず、これはBet v 1およびFel d 1特異的IgG4と無関係なIgG4との予想される交換と一致している。IgG4ミックスにおいて観察された二重特異活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。この目的のために、血漿試料(t=72時間で採取)をSuperdex200カラムにおいて分画した後、Fel d 1結合IgGおよびBet v 1-Fel d 1クロスリンクIgGを分画において測定した。Fel d 1結合抗体は、保持容量〜12.9 mlで1つのピークに溶出され、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性は、同じ分画において検出され、このことは二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している(データは示していない)。
【0197】
理論では、IgG4半分子の交換はまた、二価性の減少にも関連する。これを試験するために、インキュベーション混合物における二価性を測定した。IgG1ミックスにおいてFel d 1二価性の低減はほとんど観察されなかったが、IgG4ミックスでは〜50%の低減が観察された。この低減は、1対1比で混合された異なる2つのIgG4分子の最大交換と一致する。予想されるように、過剰量の無関係なIgG4によるIgG4ミックスにおける二価性の低減はより高く(〜80%)、これは、過剰量の無関係なIgG4半分子の存在下では、2つの相同な半分子(Bet v 1またはFel d 1特異的)が再ハイブリダイゼーションする確率が低いためである。抗原結合は72時間のインキュベーション後ごくわずかに(〜10%)減少したに過ぎなかったことから(データは示していない)、二価性の強い低減は、インキュベーションの際に抗原結合が失われた結果ではなかった。
【0198】
IgG4半分子が自然発生的に交換されうるか否かを調べるために、PBS(0.05%(w/v)NaN3を補足した)におけるIgGの交換も同様に評価した。この実験の設定は、赤血球を加えなかったことを除き、赤血球の存在下での交換と類似であった。IgG1またはIgG4半分子の自然発生的交換は、図9Aにおいて証明されるようにPBSにおける37℃でのインキュベーションのあいだ観察されなかった。しかし、IgG4ミックスにおいて何らかのバックグラウンドが観察され、これはまた赤血球とのインキュベーションの際にも存在した。二価性の減少はPBSにおけるインキュベーションの際には観察されなかった(図9B)。
【0199】
実施例29:赤血球溶解物によるIgG4 Fabアーム交換の評価
キメラIgG4抗体を、希釈倍数が増加する赤血球溶解物と共に混合してインキュベートした。赤血球を健康なドナーから単離して、SAGM(生理食塩液アデニングルコースマンニトール)緩衝液において4℃で保存し、ヘマトクリットは60.7%であった。溶解物を得るために、細胞をPBS-アジド(0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)によって3回洗浄して、保存緩衝液の容量より2倍多い容量の水に浮遊させた。その結果、非希釈赤血球溶解物はヘマトクリット30%と同等であった。
【0200】
IgG4半分子の交換は、Bet v 1特異的IgG4(1μg)およびFeld1特異的IgG4(1μg)からなるIgG4抗体混合物を、新しく調製した溶解物(全量100μlとなるようにPBS/アジドを補足)50μlと共に37℃でインキュベートすることによって評価した。それぞれの抗体の最終濃度は10μg/mlであった。指示される時点で、インキュベーションミックスからPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)に試料を採取して、二重特異性活性を測定した。必要であれば、試料を4℃で保存した。
【0201】
二重特異性活性(すなわち、Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料の希釈液を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlでセファロース連結シラカバ抽出物0.5 mgと共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I-標識Fel d 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Bet v 1-Fel d 1)の濃度を、精製Fel d 1結合rIgGから得たFel d 1結合試験の検量線から計算した。
【0202】
図10において、二重特異性活性の経時的生成を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した結合した125I-標識Fel d 1の百分率として示す。これらのデータから、赤血球溶解物が交換活性を含有することは明らかである。最高の交換率は、非希釈溶解物において観察されたが、希釈が高くなると交換率はより低くなった。実際に、PBSにおける対照インキュベーションでは二重特異性活性は観察されなかった。
【0203】
赤血球溶解物によって誘導された二重特異性活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するためにサイズ排除クロマトグラフィーを行った(図11)。この目的のため、Bet v 1結合IgG4 10μg、Fel d 1結合IgG4 10μg、および赤血球溶解物50μlからなるインキュベーション混合物を調製して、これにPBS/アジドを全量100μlとなるように補足した。この混合物を37℃で24時間インキュベートした後、70μlをSuperdex200カラムにおいて分画した。分画において、Bet v 1結合IgGおよびFel d 1-Bet v 1クロスリンクIgGを測定した。Bet v 1結合抗体を抗原結合試験において測定した。試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIg、0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)750μlにおいて、125I-標識Bet v 1の存在下でプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、精製Bet v 1特異的抗体を標準物質(比濁計によって決定した場合に試験あたり0〜200 ngの範囲)として用いて計算した。二重特異性IgG(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)の濃度を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、Fel d 1抗原が存在するセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共にPBS-IATにおいて全量300μlで24時間インキュベートした。その後セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を、精製Bet v 1結合rIgGから得たBet v 1結合試験において用いられた検量線と同じ検量線を用いて計算した。
【0204】
Bet v 1結合抗体は、保持容量〜12.6 mlで1つのピークで溶出し、これは単量体IgGの保持容量と一致する(図11)。異種Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性は同じ分画において検出され、このことは二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している。
【0205】
実施例30:透析した赤血球溶解物におけるIgG4 Fabアーム交換活性の評価
赤血球を健康なドナーから単離して、SAGM(生理食塩液アデニングルコースマンニトール)緩衝液においてヘマトクリット60.7%で4℃で保存した。溶解物を得るために、細胞をPBS-アジド(0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)によって3回洗浄して、保存緩衝液の容量より2倍大きい容量の水に浮遊させた。それによって、非希釈赤血球溶解物はヘマトクリット30%と同等であった。溶解物の一部を、Pierce(3.5 kDカットオフ)からの透析膜カセットを用いてPBS-アジドに対して透析した。限外濾過液を、Amiconフィルター(3.5 kDカットオフ)における非透析溶解物の遠心によって得た。
【0206】
IgG4抗体混合物(Bet v 1特異的IgG4(0.5μg)、およびFel d 1特異的IgG4(0.5μg))を新しく調製した赤血球溶解物(25μl)または透析した溶解物(25μl)と共に37℃でインキュベートすることによって、IgG4半分子の交換を評価した。各インキュベーションの総容量は50μlであり、それによって各抗体の最終濃度は10μg/mlとなった。以下の補足物質を用いた:Sigmaからの還元グルタチオン(GSH)、グルコース-6-リン酸(G-6-P)、およびNADPH(いずれもRocheから)。これらの化合物を使用前に水に溶解した。24時間インキュベーション後、試料をインキュベーションミックスからPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)に採取して、二重特異性活性を測定した。必要であれば試料を4℃で保存した。
【0207】
二重特異性活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料の希釈液をセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共に、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlで24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0208】
交換レベルを、新しく調製した溶解物によって生成された二重特異性活性と比較した(表2)。
(表2)透析した赤血球において二重特異性活性を回復する因子の概要の一覧

透析した赤血球溶解物の交換活性を、新しく調製した溶解物と比較した。透析した溶解物に限外濾過液5 □lを補足した。G-6-P、NADPH、およびGSHの最終濃度はそれぞれ、5 mM、0.1 mM、および0.5 mMであった。
【0209】
これらのデータから、赤血球溶解物の活性が透析後に失われたことは明白である。限外濾過液を加えると、交換を大部分回復した。この結果は、透析の際に、交換反応にとって必須である成分(<3.5 kD)が失われたことを示唆した。IgG4半分子の交換にとってジスルフィド架橋の還元および酸化が必要であることから、そのような成分は酸化還元サイクルに関係する可能性がある。ゆえに、酸化還元サイクルの3つの「共因子」(G-6-P、NADPH、およびGSH)を透析溶解物に加えて、これらの化合物が交換活性を回復できるか否かを調べた。G-6-P、NADPH、およびGSHを共に補足した場合、交換活性は回復されうるであろう。個別の因子の存在下で透析溶解物をインキュベートすると、GSHによって交換活性は回復するが、G-6-PまたはNADPHによって回復しないことが判明した。
【0210】
実施例31:還元グルタチオンによるIgG4半分子交換の評価
IgG4半分子の交換を調べるために、キメラ抗体を還元グルタチオン(GSH)と共に混合した後インキュベートした。GSH(Sigma- Aldrich, St. Louis, MO)を使用前に水に溶解した。
【0211】
この実験において、Bet v 1特異的IgG4(1μg)およびFel d 1特異的IgG4(1μg)からなるIgG4抗体混合物を、GSHを含有するPBS/アジドにおいて37℃でインキュベートすることによってIgG4半分子の交換を評価した。総インキュベーション容量は100μlであり、それによって各抗体の最終濃度は10μg/mlであった。指示される時点で、試料をインキュベーション混合物からPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)に採取した。試料を抗原結合および二重特異性活性の測定のために4℃で保存した。
【0212】
Bet v 1結合抗体のレベルを、抗原結合試験において測定した。試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)750μlにおいて125I標識Bet v 1の存在下でプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、標準物質(比濁計によって決定した場合に試験あたり0〜200 ngの範囲)として精製Bet v 1特異的抗体を用いて計算した。二重特異性IgG(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)の濃度を、異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、Fel d 1抗原が存在するセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共にPBS-IATにおいて全量300μlで24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Fe l d-1-Bet v 1)の濃度を、精製Bet v 1結合IgGから得たBet v 1結合試験において用いられた検量線と同じ検量線を用いて計算した。
【0213】
図12において、IgG4半分子のGSH媒介交換の時間経過を提示する。これらのデータから、IgG4半分子がGSHの存在下で交換されることは明らかである。この実験において、最適な交換は0.1〜1 mM GSHのあいだで観察され、0.5 mM GSHを用いて24時間後に最高の交換(〜90%)に達した。
【0214】
IgG4のGSH媒介交換後に観察された二重特異性活性がIgGの凝集の結果である可能性を除外するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った(図13)。この目的のために、Bet v 1結合IgG4およびFel d 1結合IgG4(各抗体10μg)の混合物をPBS/アジドにおいて0.5 mM GSHと共にインキュベートした。この混合物(最終容量100μl)を37℃で24時間インキュベートした後、70μlをSuperdex200カラムにおいて分画した。分画においてBet v 1結合IgGおよびFel d 1-Bet v 1クロスリンクIgGを測定した。Bet v 1結合抗体は、保持容量〜12.6 mlで1つのピークで溶出し、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性は同じ分画において検出され、このことは、二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している。GSHの存在下での二重特異性IgG4分子の生成は、交換が4℃より37℃においてより効率よく起こったことから温度依存的であることが見いだされた(図14)。
【0215】
実施例32:他の物質の存在下での二重特異性IgGの生成
IgG1-Betv1およびIgG1-Feld1またはIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1を、抗体10μg/mlの最終濃度で混合して、全量50μlで還元剤と共にインキュベートした。GSHを別として、以下の物質を試験した(インキュベーション混合物における最終濃度):L-システインをSigmaから得て(100μM)、ジチオスレイトール(DTT)をBioradから得て(50μM)、β-メルカプトエタノール(BME)をBioradから得て(100μM)、および酸化グルタチオン(GSSG、物質のパネルではこの物質は還元性ではないが、他の物質は全て還元剤であることに注意されたい)をSigmaから得た(100μM)。混合物を37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS/ATに採取し、(二重)特異性IgG濃度を測定した。図15は、精製IgG4-Betv1およびIgG4-Feld1の混合物にGSHまたは他の還元剤を加えることが(GSSGでは起こらない)、Fabアーム交換および二重特異性IgG4の生成を誘導するために十分であったことを示している。対照的に、対照IgG1混合物では二重特異性反応性は誘導されなかった。
【0216】
実施例33:GSHを用いた完全なヒトIgG4抗体の交換
IgGl-CD20、IgG4-CD20、IgGl-EGFr、およびIgG4-EGFrを、GSHと共に混合して全量1 mlでインキュベートした。各抗体の最終濃度は50μg/mlであった;GSHの最終濃度は0.5 mMであった。混合物を37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS-ATに採取し、その中で(二重)特異性IgG濃度を測定した。
【0217】
二重特異性活性はサンドイッチELISAを用いて決定した。このアッセイに関して、ELISAプレート(Greiner bio-one, Frickenhausen, Germany)を1μg/ml(100μl/ウェル)EGFRの組み換え型細胞外ドメインのPBS溶液によって4℃で終夜コーティングした。プレートをPBS/0.5%Tween 20(PBT)によって3回洗浄した。試料をPBT/0.2%BSA(PBTB)において希釈して、ELISAプレートに移した(100μl/ウェル)。プレートシェーカー(300 rpm)において室温(RT)で90分間インキュベートした後、試料を捨てて、プレートをPBTによって3回洗浄した。次に、マウス抗イディオタイプモノクローナル抗体2F2 SAB1.1(抗CD20抗体7D8に対する;Genmab)100μlをPBTBにおいて2μg/mlで加えて、プレートシェーカー(300 rpm)においてRTで90分間インキュベートした。抗イディオタイプ抗体を捨てて、プレートをPBTによって3回洗浄した後、PBTBにおいて1000×希釈してHRP共役ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Westgrove, PA, USA)100μl/ウェルを加えて、RTでプレートシェーカー(300 rpm)において90分間インキュベートした。検出抗体を捨てて、プレートをPBTによって3回洗浄した。ABTS 50 mg錠(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)をABTS緩衝液(Roche)に溶解して、ELISAプレート(100μl/ウェル)に加えた。ELISAプレートを、アルミニウムホイルで覆ったプレートシェーカー(300 rpm)においてRTで30分間(または望ましければそれより長く)インキュベートして、反応をシュウ酸(Riedel de Haen Seelze, Germany)100μl/ウェルによって停止させた。ELISAプレートをRTで10分間放置した後、ELISAプレートリーダーにおいて405 nmでの吸光度を読み取った。
【0218】
図16Aは、IgG4-EGFrおよびIgG4-CD20の混合物をGSHの存在下でインキュベートすると、二重特異性抗EGFR/CD20抗体が形成されたが、非存在下では形成されなかったことを示している。Fabアーム交換は、GSHの存在下または非存在下のいずれにおいても、IgG1抗体の混合物では起こらなかった。
【0219】
IgG4半分子のGSH媒介交換の動的範囲を探索するために、GSH(0.5〜1,000μM)の完全な濃度曲線を用いて交換を分析した。IgG4-CD20およびIgG4-EGFrを混合して、全量1 mlでGSHと共にインキュベートした。各抗体の最終濃度は50μg/mlであった;GSHの最終濃度は図16Bにおいて表記されるとおりであった。混合物を37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS-ATに採取して、(二重)特異性IgG濃度を測定した。
【0220】
図16Bは、IgG4半分子交換の明らかなGSH用量依存性を示す。反応成分がGSH媒介IgG4半分子交換にどのように影響を及ぼすかを探索するために、PBSにおいて、ならびに無血清および無タンパク質の化学的に定義された培地(Freestyle 293発現培地、GIBCO/Invitrogen Corporation)において交換を試験した。この組織培養培地では、GSH媒介交換はより低いGSH濃度で起こることが見いだされた(図16C)。同様に、5 mM GSHと共にインキュベートすると0.5 mMの場合より低い交換が明らかに起こったことから、GSH媒介IgG4半分子交換には最適な値が存在することが見いだされた(図16D)。
【0221】
IgG4-EGFrおよびIgG4-CD20の混合物をGSHの存在下および非存在下で24時間インキュベートして、質量分析(ESI-TOF MS)によって評価した。各抗体200μg/mlを含有する試料50μlをN-グリコシダーゼF(Roche Diagnostics NL BV, Almere, The Netherlands)1μlによって終夜脱グリコシル化した。試料を、BEH C8、1.7μm、2.1×50 mmカラムを備えたAcquity UPLC(商標)(Waters, Milford, USA)において60℃で脱塩した。5μlを注入して5%〜95%溶出剤Bの勾配によって溶出した。溶出剤AはMilliQ水(Millipore Synthesis A10 apparatus)であり、溶出剤BはLC-MS等級のアセトニトリル(Biosolve, Valkenswaard, The Netherlands)であった。いずれの溶出剤も、有機改変剤として0.05%ギ酸(Fluka Riedel-de Haen, Buchs, Germany)を含有した。飛行時間型エレクトロスプレーイオン化質量分析を、micrOTOF(商標)質量分析計(Bruker, Bremen, Germany)において陽イオンモードで作動させてオンラインで記録した。それぞれの分析において、500〜5000 m/zスケールをESチューニングミックス(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)によって内部較正した。質量スペクトルを、DataAnalysis(商標)ソフトウェアv. 3.3(Bruker)を備えた最大エントロピー(Maximum Entropy)アルゴリズムを用いてデコンボリューションした。
【0222】
図16Eは、IgG4-CD20(145.5 kD)およびIgG4-EGFR(145.9 kD)の分子量が、GSHの非存在下では不変のままであったことを示している。しかし、GSHの存在下(図16F)では、Fabアーム交換分子に対応する質量を有する新しいピークが出現した(145.7 kD)。新規質量は、二重特異性抗EGFR/CD20抗体の予想質量に対応する。その上、MSスペクトルのピークの高さから、二重特異性抗体が、混合物における総抗体質量の50%を表すと推定することができ、このことは、24時間以内に平衡に達するランダムな交換であったことことを示している。
【0223】
実施例34:アカゲザルIVIgは組み換え型ヒトIgG4抗体のFabアーム交換に関与する
2つの組み換え型ヒトIgG4抗体(先に記述したようにIgG4-CD20およびIgG4-EGFr)を、アカゲザルまたはヒトIVIgの存在下または非存在下で、GSHと共に37℃で24時間インキュベートした。Fabアーム交換を通しての二重特異性抗体の形成を、先に記述したようにサンドイッチELISAにおいて測定した。
【0224】
図17は、サルポリクローナルIVIgが、還元グルタチオンの存在下でインビトロで組み換え型抗体のFabアームの交換阻害能に関してヒトポリクローナルIVIgに匹敵することを示す。これは、アカゲザルのIVIgの成分、すなわちアカゲザル免疫グロブリンがFabアーム交換に関与していることを意味している。アカゲザルの免疫グロブリン、おそらくアカゲザルIgG4は、Fabアームを組み換え型ヒトIgG4と交換することができる。
【0225】
実施例35:ヒンジ領域またはCH3ドメイン変異体のFabアーム交換
3つのIgG1変異体を作出した:IgG4コアヒンジを有するIgG1(IgG1-CPSC)および2つのCH3ドメインスワップ変異体(IgG1-CH3(IgG4)およびIgG1-CPSC-CH3(IgG4))。
【0226】
部位特異的変異誘発を用いて、鋳型としてpEE-G1-wt a Bet v 1を用いてIgG1のヒンジにおいてP228S変異を導入した。変異誘発プライマー、フォワードおよびリバースプライマーをVector NTI Advance 10によって設計した:

【0227】
Quickchange部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いて、pEE-G1-CPSC変異体を作製した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ミックスは、pEE-G1 a Betv1 DNA鋳型(〜35 ng)5μl、変異誘発プライマー-フォワード1.5μl(〜150 ng)、変異誘発プライマー-リバース1.5μl(〜150 ng)、dNTPミックス1μl、反応緩衝液(10×)5μl、H2O 36μl、および最後にPfu Turbo DNAポリメラーゼ1μlからなった。次に、ミックスをPCRに適用した:95℃で30秒、95℃で30秒(変性)、55℃で1分(アニール)、および68℃で17分(伸長)。このサイクルを20回繰り返した。
【0228】
DNA消化およびライゲーションを用いて、CH3ドメインスワップ変異体構築物IgG1-CH3(IgG4)およびIgG1-CPSC-CH3(IgG4)を作製した。CH3ドメインおよびCH3ドメインを有しないベクターを得るための消化反応は以下のとおりであった:DNA(pEE-G1-betv1、pEE-G1-CPSC、およびpEE-G4-betv1)〜1500 ng、BSA 2μl、Neb3緩衝液2μl、SalI 1μl、およびH2Oを20μlとなるように加えた。37℃で30分間インキュベートした。DNAを精製してH2O 30μlによって溶出した後、SanDI 1μlおよび万能緩衝液3μlを加えて、37℃で30分間インキュベートした。断片をエチジウムブロミドと共に1%アガロースゲルにおけるゲル電気泳動に供した。断片を紫外光下でゲルから切り出して、DNA精製キット(Amersham)を用いて溶解した。pEE-G4-wt SalI/SanDI(IgG4 CH3ドメインを含有した)断片を、以下の技法を用いてpEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSCにライゲーションした:全量20μl中に鋳型DNA(SalI/SanDI消化pEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSC)1μl、SalI/SanDIインサート5μl、Ligate-it緩衝液4μl、H2O 9μl、およびリガーゼ1μl。ライゲーションを5分後に停止させた。
【0229】
DNA消化(ApaIおよびHindIIIを用いて)およびライゲーションを用いて、上記と類似の技法に従って、bet v 1変異体抗体のVHドメインをpEE-G4-a-feld1 wtのVHドメインに置き換えた。
【0230】
同様に、1つのIgG4変異体、IgG4-S228Pnewを作出した。この変異体において、ヒンジは228位でのセリンをプロリンに置き換えることによって安定化された(IgG1コアヒンジ)。QuickChange II XL部位特異的変異誘発キット(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を用いて製造元の説明書に従って、部位特異的変異誘発を行った。この方法には、変異誘発の成否に関してスクリーニングするためにサイレントな余分のXmaI部位を導入することが含まれた。簡単に説明すると、10×反応緩衝液5μl、オリゴヌクレオチドS228Pfcorrect(100 pmol/μl)1μl、オリゴヌクレオチドS228Prcorrect(100 pmol/μl)1μl、dNTPミックス1μl、Quicksolution 3μl、プラスミドpTomG42F8HG(50 ng/μl)(2006年11月28日に提出された「組み換え型一価抗体およびその産生法(Recombinant monovalent antibodies and methods for production thereof)」と題するPCT出願公開(RO/DK (Genmab))において記述されている) 1μl、およびPfuUltra HF DNAポリメラーゼ1μlを全量50μlで混合して、TGradient Thermocycler 96(Whatman Biometra, Goettingen, Germany;製品番号050-801)によって18サイクルプログラムを用いて増幅した:95℃で1分間の変性;95℃で50秒、60℃で50秒、および68℃で10分間を18サイクル。PCR混合物をさらに処理するまで4℃で保存した。次に、PCR混合物をDpnI 1μlと共に37℃で60分間インキュベートして、pTomG42F8HGベクターを消化して、さらに処理するまで4℃で保存した。反応混合物を3 M NaAc 5μlおよびエタノール125μlによって沈殿させて、-20℃で20分間インキュベートして、14000×gで4℃で20分間遠心した。DNA沈降物を70%エタノールによって洗浄して乾燥させ、水4μlに溶解した。総4μl反応容量を One Shot DNH5αT1(登録商標)コンピテント大腸菌細胞(Invitrogen, Breda, The Netherlands)において製造元の説明書(Invitrogen)に従って形質転換した。次に、細胞を、50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-Bertani(LB)寒天プレートに播種した。細菌コロニーが明白となるまで、プレートを37℃で16〜18時間インキュベートした。
【0231】
コロニーPCRによるスクリーニングおよびXmaI(変異誘発によってXmaI部位の喪失が起こる)消化の後、プラスミドを細菌から単離して、DNAシークエンシングにより変異を確認した。望ましくない余分の変異が導入されたか否かをチェックするために、全HCコード領域をシークエンシングしたところ、いかなる追加の変異も含有しなかった。最終構築物を pTomG42F8S228PNewと命名した。

【0232】
これらの構築物からの組み換え型抗体を、3 mlの6ウェルプレート(NUNC)において、または125 mlのアーレンマイヤーフラスコ(Corning)においてトランスフェクション試薬として293 Fectin(Invitrogen)によってHEK293細胞において一過性に発現させた。
【0233】
非精製抗体(Freestyle 293発現培地、GIBCO/Invitrogen Corporation)の以下の混合物を0.1 mM GSHと共に37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS-ATに採取し、(二重)特異性IgG濃度を先の実施例において記述されているように測定した:
− IgG4抗feld1 wtとIgG4抗betv1 wt
− IgG1抗feld1 wtとIgG4抗betv1wt
− IgG1抗feld1 CPSCとIgGl抗betv1 CPSC(IgG1 CPSC-IgG1 CPSCとして以下に指示される)
− IgG1抗feld1 CPSCとIgG1抗betv1 CH3(IgG4)(IgG1 CPSC-IgG1 CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CPSCとIgG1抗betv1 CPSC/CH3(IgG4)(IgG1 CPSC-IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CH3(IgG4)とIgGl抗betv1 CH3(IgG4)(IgG1 CH3(IgG4)-IgG1 CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CH3(IgG4)とIgGl抗betv1 CPSC/CH3(IgG4)(IgG1 CH3(IgG4)-IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CPSC/CH3(IgG4)と抗betv1 IgG1 CPSC/CH3(IgG4)(IgG1 CPSC/CH3(IgG4)-IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CPSC/CH3(IgG4)とIgG4抗betv1 wt(IgG1 CPSC/CH3(IgG4)-IgG4 wt)
− IgG4抗bet1 S228PnewとIgG4 wt
【0234】
結果は、これらのインビトロ条件において(0.1 mM GSH)、抗体の1つがCPSCヒンジを含有し、および双方の抗体がIgG4様CH3を含有する場合に、半分子交換が起こることを示した。同様に、半分子交換は、IgG1ヒンジを含有するIgG4分子とIgG4 wt分子とのあいだでも起こる。

−=変化なし
+=交換が起こる
±=限られた交換(〜5%)
空欄=試験していない
【0235】
異なる変異体からの半分子の交換に及ぼすGSH濃度の効果を0、0.1、1、および10 mM GSHを用いて試験した。交換を以下の混合物を用いて試験した:
− IgG4 a-feld1 wtとIgG4 a-betv1 wt
− IgG1 a-feld1 wtとIgG4 a-betv1 wt
− IgG1 a-feld1 CPSCとIgG1 a-betv1 CPSC
− IgG1 a-feld1 CH3(IgG4)とIgG1 a-betv1 CH3(IgG4)
− IgG1 a-feld1 CPSC/CH3(IgG4)とa-betv1 IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
【0236】
1 mMまでのGSH濃度に関して、結果(図18)は、先に記述した結果を確認した。10 mM GSHでは、半分子交換はまた、IgG1 a-feld1 CH3(IgG4)およびIgG1 a-betv1 CH3(IgG4)を含有する反応においても認められた。
【0237】
適当なIgG1変異体のGSH媒介交換後に観察された二重特異性活性が、先の実施例において記述されたように、IgG凝集の結果である可能性を除外するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。異種Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性は、単量体IgGの保持容量に対応する分画において検出された。
【0238】
実施例36:ヒンジ領域および/またはCH3ドメイン変異を有するIgG1およびIgG4抗体の生成
5つのIgG1変異体を作出した:IgG4コアヒンジを有するIgG1(IgG1-P228S)、2つのCH3ドメインスワップ変異体(IgG1-CH3(γ4)およびIgGl-P228S-CH3(γ4))、IgG1の409位(CH3ドメイン内)に存在するリジンがアルギニンに置き換えられている1つのCH3点突然変異体(IgG1-K409R)、ならびにIgG4コアヒンジおよびK409R変異を有する1つのIgG1(IgG1-P228S-K409R)(図19)。これらの変異体は、Bet v 1またはFel d 1特異性のいずれかを有するように作出された。
【0239】
2つのIgG4変異体を作出した:IgG4の409位に存在するアルギニン(CH3ドメイン内)がリジンに置き換えられている1つのCH3点突然変異体(IgG4-R409K)、および1つのCH3スワップ変異体(IgG4-CH3(γ1))(図19)。これらの変異体はまた、Bet v 1またはFel d 1特異性のいずれかを有するように作出された。
【0240】
部位特異的変異誘発を用いて、鋳型としてpEE-G1-wt a Bet v 1を用いてIgG1のヒンジにP228S変異を導入した。変異誘発プライマー、フォワードおよびリバースをVector NTI Advance 10によって設計した:
P228S Mutプライマー-F:SEQ ID NO:23:

P228S Meuプライマー-R:SEQ ID NO:24:

【0241】
Quickchange部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いてpEE-G1-CPSC変異体を作製した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ミックスは、pEE-G1 a Betv1 DNA鋳型(〜35 ng)5μl、変異誘発プライマー-フォワード1.5μl(〜150 ng)、変異誘発プライマー-リバース1.5μl(〜150 ng)、dNTPミックス1μl、反応緩衝液(10×)5μl、 H2O 36μl、および最後にPfu Turbo DNAポリメラーゼ1μlからなった。次に、ミックスをPCRに適用した:95℃で30秒、95℃で30秒(変性)、55℃で1分(アニール)、および68℃で17分(伸長)。このサイクルを20回繰り返した。
【0242】
DNAの消化およびライゲーションを用いてCH3ドメインスワップ変異体構築物IgG1-CH3(γ4)およびIgG1-P228S-CH3(γ4)を作製した。CH3ドメインおよびCH3ドメインを有しないベクターを得るための消化反応は、以下のとおりであった:DNA(pEE-G1-betv1、pEE-G1-CPSC、およびpEE-G4-betv1)〜1500 ng、BSA 2μl、Neb3緩衝液2μl、SalI 1μl、およびH2Oを全量20μlとなるように加えた。37℃で30分間のインキュベーションを行った。DNAを精製してH2O 30μlによって溶出した後、SanDI 1μlおよび万能緩衝液3μlを加えて、37℃で30分間インキュベートした。断片を、エチジウムブロミドと共に1%アガロースゲルでのゲル電気泳動に供した。断片を紫外光下でゲルから切り出し、DNA精製キット(Amersham)を用いて溶解した。pEE-G4-wt SalI/SanDI(IgG4 CH3ドメインを含有する)断片を、以下の技法を用いてpEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSCにライゲーションした:全量20μl中に、鋳型DNA(SalI/SanDI消化pEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSC)1μl、SalI/SanDIインサート5μl、Ligate-it緩衝液4μl、H2O 9μl、およびリガーゼ1μl。ライゲーションを5分後に停止させた。
【0243】
DNA消化(ApaIおよびHindIIIを用いて)およびライゲーションを用いて、上記と類似の技法に従ってbet v 1変異体抗体のVHドメインをpEE-G4-a-feld1 wtのVHドメインに置き換えた。
【0244】
部位特異的変異誘発を用いて、点突然変異(K409RまたはR409K)をpEE-γ4 wt、pEE-γ1、およびpEE-γ1-P228S構築物に導入した。変異誘発プライマー、フォワードおよびリバースをVector NTI Advance 10によって設計した:
G1-K409R Mut-F:SEQ ID NO: 25
G1-K409R Mut-R:SEQ ID NO: 26
G4-R409K Mut-F:SEQ ID NO: 27
G4-R409K Mut-R:SEQ ID NO: 28

【0245】
QuickChange II XL部位特異的変異誘発キット(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を用いて、製造元の説明書に従って、変異誘発効率を増加させるために以下に指示されるように変化させて、部位特異的変異誘発を行った。この方法には、変異誘発の成否をスクリーニングするためにサイレントの余分のAccI部位の導入が含まれた。第一に、10×pfu反応緩衝液3μl、dNTPミックス(10 mM)1μl、フォワードまたはリバースプライマー275 ng、鋳型DNA 50 ng、およびPfu turbo hotstartポリメラーゼ0.75μlを含有するプレPCRミックスを用いた。GeneAmp PCRシステム9700(Applied Biosystems)を用いてプレPCRを行った:94℃で5分間の初回変性;94℃で30秒;50℃で1分、および68℃で14分を4サイクル。プレPCRミックスを含有するフォワードプライマー25μlを、プレPCRミックスを含有するリバースプライマー25μlに加えた。Pfu turbo hotstart 0.5μlを加えて、増幅を行った:94℃で1分間の変性;94℃で1分間、50℃で1分間、および68℃で8分間を14サイクル;94℃で30秒、55℃で1分間、および68℃で8分間を12サイクル。
【0246】
PCR混合物をさらに処理するまで4℃で保存した。次に、PCR混合物をDpnI 1μlと共に37℃で60分間インキュベートして、さらに処理するまで4℃で保存した。消化したPCR産物2μlをOne Shot DNH5αT1(登録商標)コンピテント大腸菌細胞(Invitrogen, Breda, The Netherlands)において製造元の説明書(Invitrogen)に従って形質転換した。次に、細胞を50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-Bertani(LB)寒天プレートに播種した。細菌コロニーが明白となるまでプレートを37℃で16〜18時間インキュベートした。
【0247】
変異誘発の成否をチェックするために、コロニーPCRおよびAccI消化によってスクリーニングした後、プラスミドを細菌から単離して、変異をDNAシークエンシングによって確認した。望ましくない余分の変異が導入されたか否かをチェックするために、全HCコード領域をシークエンシングしたところ、いかなる追加の変異も含有しなかった。

【0248】
これらの構築物からの組み換え型抗体を3 mlの6ウェルプレート(NUNC)または125もしくは250アーレンマイヤーフラスコ(Corning)において、トランスフェクション試薬として293 Fectin(Invitrogen)によってHEK293細胞において一過性に発現させた。
【0249】
実施例37.IgG1およびIgG4ヒンジ領域またはCH3ドメイン変異体のFabアーム交換
半分子の交換を調べるために、抗体を混合して、還元グルタチオン(GSH)と共にインキュベートした。GSH(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を使用前に水に溶解した。
【0250】
半分子の交換は、Bet v 1特異的抗体(200 ng)およびFel d 1特異的抗体(200 ng)からなる抗体混合物を、GSH(1または10 mM)を含有するPBS/アジドにおいて37℃でインキュベートすることによって評価した。総インキュベーション容量は50μlであった。24時間後、試料を、インキュベーション混合物からPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)に採取した。10 mM GSHを含有する試料に関して、GSH活性を阻害する強いアルキル化剤である等モル量のヨウ素-アセトアミドを加えた。試料を、抗原結合および二重特異性活性を測定するために4℃で保存した。
【0251】
Bet v 1結合抗体のレベルを抗原結合試験において測定した。試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)750μlにおいて、プロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に、125I標識Bet v 1の存在下で24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、標準物質(比濁計によって決定した場合に試験あた0〜200 ngの範囲)として精製Bet v1特異的抗体を用いて計算した。
【0252】
二重特異性IgG(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)の濃度を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、Fel d 1抗原が存在するセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共に、PBS-IATにおいて全量300μlで24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、125I標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を、精製Bet v 1結合IgGから得られた、Bet v 1結合試験において用いられる検量線と同じ検量線を用いて計算した。試験はFreeStyle 293発現培地、GIBCO/Invitrogen Corporationにおいて抗体含有上清を用いて行った。
【0253】
以下の抗体混合物を用いた:
−Betv1-IgG1 wtとFeld1-IgG1 wt(図20においてIgG1として指示される)
−Betv1-IgG1 P228SとFeld1-IgG1-P228S(図20におけるIgG1-P228S)
−Betv1-IgG4-CH3(γ1)とFeld1-IgG4-CH3(γ1)(図20におけるIgG4-CH3(γl))
−Betv1-IgG4-R409KとFeld1-IgG4-R409K(図20におけるIgG4-R409K)
−Betv1-IgG1-CH3(γ4)とFeld1-IgG1-CH3(γ4)(図20におけるIgG1-CH3(γ4))
−Betv1-IgG1-K409RとFeld1-IgG1-K409R(図20におけるIgG1-K409R)
−Betv1-IgG4 wtとFeld1-IgG4 wt(図20におけるIgG4 wt)
−Betv1-IgG1-P228S-CH3(γ4)とFeld1-IgG1-P228S-CH3(γ4)(図20におけるIgG1-P228S-CH3(γ4))
−Betv1-IgG1-P228S-K409RとFeld1-IgG1-P228S-K409R(図20におけるIgG1-P228S- K409R)
【0254】
結果(図20)は、1 mM GSHで、IgG4 wt、IgG1-P228S-K409R、またはIgG1-P228S-CH3(γ4)抗体のあいだで半分子交換が起こることを示した。これらの条件下では、IgG1 wt、IgG1-P228S、IgG4-CH3(γl)、IgG4-R409K、IgG1-CH3(γ4)、またはIgG1- K409R抗体は、半分子交換を全く示さなかったか、ごくわずかに示したに過ぎなかった。10 mM GSHでは、半分子交換はまた、IgG1-CH3(γ4)またはIgG1-K409R抗体を含有する反応において認められた。
【0255】
実施例38.IVIGの非存在下での無ヒンジIgG4抗体分子の二量体化を安定化させるための追加のCH3変異
無ヒンジIgG4抗体(HG)分子は、低親和性非共有結合相互作用によって二量体を形成する。WO/2007/059782は、この二量体化プロセスが過剰量の無関係な抗体の存在下で、HG IgG4分子を用いて阻害されうることを記述している。WO/2007/059782は、無ヒンジIgG4抗EGFR抗体2F8-HGを記述している。
【0256】
pHG-2F8の構築:2F8-HGの重鎖を発現させるためのベクター。2F8-HGの領域をコードする重鎖cDNAをコドン最適化して、pEE6.4ベクター(Lonza Biologics, Slough, UK)においてクローニングした。得られたベクターをpHG-2F8と命名した。
【0257】
pKappa2F8の構築:2F8抗体の軽鎖を発現させるためのベクター。抗体2F8をコードするVL領域をコドン最適化して、pKappa2F2ベクター(ベクターpEE12.4(Lonza)において抗体2F2(WO2004035607において記述される)のコドン最適化cDNA領域をコードするベクター)においてクローニングして、2F2 VL領域を2F8 VL領域に置き換えた。得られたベクターをpKappa-2F8と命名した。
【0258】
無ヒンジIgG4抗EGFR抗体2F8-HGはWO/2007/059782において記述されている。以下の表において与えられた追加の変異を、部位特異的変異誘発によって無ヒンジIgG4抗体2F8-HGのCH3領域に導入した。
【0259】
KABATは、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))に従うアミノ酸番号付けを示す。EUインデックスは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において概要されるようにEUインデックスに従うアミノ酸番号付けを示す。SEQ ID NO:39、40、41は、本文書のSEQ ID NO:39、40、および41において示されるアミノ酸番号付けを示す。同様に番号付け法の比較のために図22も参照されたい。

【0260】
CH3変異体を発現させるための構築物を作出するために、以下のプライマーを用いて部位特異的変異誘発を用いて変異をpHG2F8に導入した:

【0261】
構築物を、重鎖および軽鎖コードプラスミドを同時トランスフェクトすることによってHEK-293F細胞において一過性に発現させて、精製EGFrに対する結合を200μg/mlポリクローナルヒトIgG(静脈内免疫グロブリン、IVIg、Sanquin Netherlands)の非存在下および存在下で決定した。
【0262】
精製EGFr(Sigma, St Louis, MO)を96ウェルMicrolon ELISAプレート(Greiner, Germany)に50 ng/ウェルでコーティングしたELISAを用いて、結合親和性を決定した。プレートを0.05%Tween-20および2%ニワトリ血清を補足したPBSによってブロックした。次に、100μg/mlポリクローナルヒトIgG(静脈内免疫グロブリン、IVIG、Sanquin Netherlands)を含有する緩衝液において連続希釈した試料を加えて、室温(RT)で1時間インキュベートした。その後プレートを、検出抗体としてペルオキシダーゼ共役ウサギ抗ヒトカッパ軽鎖(DAKO、Glostrup, Denmark)と共にインキュベートして、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS;Roche, Mannheim, Germany)によって顕色した。マイクロプレートリーダー(Biotek, Winooski, VT)において405 nmで吸光度を測定した。
【0263】
図21は、IVIGの存在下における2F8-HGの結合曲線(■を有する太い破線)が、IVIGを有しない2F8-HGの結合曲線(□を有する太い実線)に対して明らかに右にシフトしていることを示している。EGFrコーティングに対するアビディティのこの差は、IVIGの存在下では2F8-HGが一価で結合するという考えと一貫する。試験された変異2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409A、および2F8-HG-R409KAの結合曲線は、IVIGの付加に対して非感受性となり、IVIGの非存在下での2F8-HGの二価の結合曲線に対して重ね合わせることができた。EGFrコーティングに関するアビディティのこれらの差は、2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409A、および2F8-HG-R409K変異がHG分子の二量体化を安定化させるという考えと一貫する。
【0264】
実施例39.ヒトIgG4抗体の二量体化を安定化させるための追加のCH3ドメイン変異
以下の表において与えられる変異を、部位特異的変異誘発によってIgG4-CD20およびIgG4-EGFrのCH3ドメインに導入した。
【0265】
KABATは、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))に従うアミノ酸番号付けを示す。EUインデックスは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において概要されるようにEUインデックスに従うアミノ酸番号付けを示す。SEQ ID NO:39、40、41は、本文書のSEQ ID NO:39、40、および41において示されるアミノ酸番号付けを示す。同様に番号付け法の比較のために図22も参照されたい。

【0266】
IgG1-CD20およびIgGl-EGFr、IgG4-CD20、およびIgG4-EGFr、またはIgG4-CH3変異体-CD20およびIgG4-CH3変異体-EGFrを混合して、先に記述したように0.5 mM GSHと共にインキュベートした。二重特異性活性を実施例33において記述されるように決定した。
【0267】
図23は、二重特異性抗EGFr/CD20抗体が、CH3ドメイン変異体Q355R、E419Q、L445P、およびR409Aの混合物と共にIgG4抗体の混合物において形成されたことを示す。CH3ドメイン変異体R409K、R409M、R409L、およびK370Tの混合物では二重特異性活性は測定されず、これらの変異が、ヒトIgG4抗体の二量体化を安定化させたことを示している。CH3ドメイン変異体R409T、F405A、およびF405Lは、ヒトIgG4抗体の二量体化を部分的に安定化させた。
【0268】
配列表
SEQ ID NO:39:ヒトIgG4の野生型CH領域のアミノ酸配列

SEQ ID NO:40:ヒトIgG4の野生型CH領域のアミノ酸配列

SEQ ID NO:41:ヒトIgG4の野生型CH領域のアミノ酸配列


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖と軽鎖とを含む、薬剤として用いるための安定化されたIgG4抗体であって、該重鎖が409位のArg残基、405位のPhe残基、または370位のLys残基の置換を有するヒトIgG4定常領域を含み、該抗体が409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基を有する場合、抗体はヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まないことを条件として、抗体が任意で、1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含む、前記安定化されたIgG4抗体。
【請求項2】
重鎖が、409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基、および/または405位に対応する位置でAla、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、抗体が任意で1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含むが、ヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない、請求項1記載の安定化IgG4抗体。
【請求項3】
409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、Met、またはLeu残基を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項4】
409位に対応する位置でLys、Thr、Met、またはLeu残基を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項5】
409位に対応する位置でLys、Met、またはLeu残基を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項6】
抗体のCH3領域が、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域に置き換えられている、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項7】
405位に対応する位置でPheより分子量が小さい残基を有する、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項8】
405位に対応する位置でAlaまたはLeu残基を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項9】
370位に対応する位置でThr残基を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項10】
235位に対応する位置でのLeu残基のGluによる置換を含まない、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項11】
235位に対応する位置でのLeu残基のGluによる置換を含む、先行請求項1〜9のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項12】
以下の置換の1つまたは複数を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体:234位でAla、236位でAla、237位でAla、297位でAla、318位でAlaまたはVal、320位でAla、322位でAlaまたはGln。
【請求項13】
ヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項14】
ヒンジ領域において、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であり得るCXPCまたはCPXC配列を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項15】
伸長したIgG3様ヒンジ領域を含まない、先行請求項1〜13のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項16】
ヒンジ領域においてCPSC配列を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項17】
SEQ ID NO:39、40、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と比較して10個未満、たとえば9、8、7、6、5、4、3、もしくは2個未満のような、25個未満の置換、欠失、および/または挿入を有する該アミノ酸配列の変種を含む重鎖定常領域を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項18】
同じ可変領域を有する対応するIgG1またはIgG3抗体よりCDCおよび/またはADCCの媒介効率が低い、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項19】
SEQ ID NO:40において記載されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項20】
ヒト抗体、ヒト化抗体、およびキメラ抗体からなる群より選択される、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項21】
ヒトカッパ軽鎖を含む、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項22】
ヒトラムダ軽鎖を含む、先行請求項1〜20のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項23】
二価抗体である、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項24】
完全長の抗体である、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項25】
細胞障害剤;放射性同位元素;プロドラッグもしくはタキサンのような薬物;サイトカイン;およびケモカインからなる群より選択される化合物に連接している、先行請求項のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項26】
エリスロポエチン、β-アミロイド、トロンボポエチン、インターフェロン-α(2aおよび2b)、インターフェロン-β(1b)、インターフェロン-γ、TNFR I(CD120a)、TNFR II(CD120b)、IL-1R 1型(CD121a)、IL-1R 2型(CD121b)、IL- 2、IL2R(CD25)、IL-2R-β(CD123)、IL-3、IL-4、IL-3R(CD123)、IL-4R(CD124)、IL-5R(CD125)、IL-6R-α(CD126)、-β(CD130)、IL-8、IL-10、IL-11、IL-15、IL-15BP、IL-15R、IL-20、IL-21、TCR可変鎖、RANK、RANK-L、CTLA4、CXCR4R、CCR5R、TGF-β1、-β2、-β3、G-CSF、GM-CSF、MIF-R(CD74)、M-CSF-R(CD115)、GM-CSFR(CD116)、可溶性FcRI、sFcRII、sFcRIII、FcRn、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、VEGF、VEGFxxxb、α-4インテグリン、Cd11a、CD18、CD20、CD38、CD25、CD74、FcαRI、FcεRI、アセチルコリン受容体、fas、fasL、TRAIL、肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのエンベロープE2、組織因子、組織因子と第VII因子との複合体、EGFr、CD4、CD28、VLA-1、2、3、または4、LFA-1、MAC-1、L-セレクチン、PSGL-1、ICAM-1、P-セレクチン、ペリオスチン、CD33(Siglec 3)、Siglec 8、TNF、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL13、CCL17、CCL18、CCL20、CCL22、CCL26、CCL27、CX3CL1、LIGHT、EGF、VEGF、TGFα、HGF、PDGF、NGF、C1q、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、MBL、B因子などの補体または補体関連成分、MMP1からMMP28のいずれかなどのマトリクスメタロプロテアーゼ、CD32b、CD200、CD200R、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、NKG2Dおよび関連分子、白血球関連免疫グロブリン様受容体(LAIR)、ly49、PD-L2、CD26、BST-2、ML-IAP(アポトーシスタンパク質の黒色腫阻害剤)、カテプシンD、CD40、CD40R、CD86、B細胞受容体、CD79、PD-1、ならびにT細胞受容体からなる群より選択される抗原に結合する、先行請求項1〜24のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項27】
α-4インテグリンに結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項28】
VLA-1、2、3、または4に結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、COPD、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項29】
LFA-1、MAC-1、l-セレクチンおよびPSGL-1からなる群より選択される分子に結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項30】
LFA-1、MAC-1、l-セレクチン、およびPSGL-1からなる群より選択される分子に結合し、虚血-再灌流損傷、嚢胞性線維症、骨髄炎、糸球体腎炎、痛風、および敗血症からなる群より選択される疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項31】
CD18に結合し、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項32】
CD11aに結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項33】
ICAM-1に結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項34】
P-セレクチンに結合して、心血管疾患、血栓後静脈壁線維症、虚血-再灌流損傷、炎症疾患、または敗血症の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項35】
ペリオスチンに結合して、卵巣癌、子宮内膜癌、NSCLC、神経膠芽腫、脳関連腫瘍、乳癌、OSCC、結腸癌、膵臓癌、HNSCC、腎癌、胸腺腫、肺癌、皮膚癌、喉頭癌、肝臓癌、耳下腺腫瘍、胃癌、食道癌、前立腺癌、膀胱癌、および精巣の癌などの悪性疾患および/または転移性疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項36】
CD33(Siglec 3)に結合して、任意で毒素、細胞障害剤、または細胞増殖抑制剤に連結され、CD33を発現する腫瘍または急性骨髄性白血病の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項37】
Siglec 8に結合して、喘息、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、およびCOPDなどの炎症または自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項38】
TNFに結合して、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、COPD、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項39】
CCLl、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL13、CCL17、CCL18、CCL20、CCL22、CCL26、CCL27、またはCX3CL1に結合して、アトピー性皮膚炎、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、COPD、および敗血症などの炎症および自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項40】
LIGHTに結合して、肝炎、炎症性腸疾患、GVHD、および炎症からなる群より選択される疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項41】
EGF、VEGF、TGFα、またはHGFに結合して、固形癌などの悪性疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項42】
PDGFに結合して、アテローム性動脈硬化症、線維症、および悪性疾患などの異常な細胞増殖、細胞遊走、および/または血管新生が起こる疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項43】
NGFに結合して、神経疾患、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患、または前立腺癌などの癌の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項44】
C1q、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、MBL、またはB因子などの補体または関連成分に結合し、臓器移植拒絶、多発性硬化症、ギヤン-バレー症候群、溶血性貧血、発作性夜間血色素尿症、卒中、心臓発作、火傷の損傷、加齢性黄斑変性、喘息、狼瘡、関節炎、重症筋無力症、抗リン脂質症候群、敗血症、および虚血-再灌流損傷などの、補体および関連成分が有害な役割を果たす疾患において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項45】
MMP1からMMP28のいずれかなどのマトリクスメタロプロテアーゼに結合して、炎症および自己免疫疾患、転移性癌が含まれる癌、関節炎、炎症、心血管疾患、卒中もしくは脳動脈瘤などの脳血管疾患、喘息などの肺疾患、角膜創傷治癒もしくは変性性遺伝性眼科疾患などの眼科疾患、炎症性腸疾患もしくは潰瘍などの消化管疾患、虫歯、口腔癌、もしくは歯周炎などの口腔疾患、虚血-再灌流損傷、または敗血症の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項46】
CD32bに結合して、もう1つの治療抗体と併用して、腫瘍抗原に対するT細胞応答およびマクロファージによるADCC/貪食の増強、ワクチン接種、B細胞リンパ腫、喘息、またはアレルギーの免疫療法において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項47】
CD200またはCD200Rに結合して、喘息、リウマチ性関節炎、GVHD、他の自己免疫疾患、または固形腫瘍もしくはリンパ腫などの癌の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項48】
キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、NKG2Dもしくは関連分子、白血球関連免疫グロブリン様受容体(LAIR)、またはly49に結合して、固形腫瘍もしくはリンパ腫などの癌、喘息、リウマチ性関節炎、GVHD、または他の自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項49】
PD-L2に結合して、癌、喘息の処置において、またはワクチン強化において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項50】
CD26に結合して、アテローム性動脈硬化症、GVHD、または自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項51】
BST-2に結合して、喘息、アテローム性動脈硬化症、リウマチ性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、敗血症、または炎症の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項52】
ML-IAP(アポトーシスタンパク質の黒色腫阻害剤)に結合して、黒色腫の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項53】
カテプシンDに結合して、乳癌、卵巣癌、神経膠腫、NSCLC、膀胱癌、子宮内膜癌、肝臓癌、肉腫、胃癌、SCCHN、前立腺癌、または結腸直腸癌などの悪性疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項54】
CD40またはCD40Rに結合して、癌、特にB細胞リンパ腫、B細胞関連または媒介疾患、乾癬性関節炎、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、乾癬、クローン病、または潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項55】
CD86に結合して、臓器移植に関連して用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項56】
B細胞受容体に結合して、B細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症、またはアレルギーなどのB-細胞関連または媒介疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項57】
CD79に結合して、B細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症、またはアレルギーなどのB-細胞関連または媒介疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項58】
T細胞受容体に結合して、T細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症、またはアレルギーなどのT細胞関連または媒介疾患の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項59】
FcαRIに結合して、アレルギー性喘息、またはアレルギー性鼻炎、季節性/通年性アレルギー、枯草熱、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹(hives)、蕁麻疹(urticaria)、接触性アレルギー、アレルギー性結膜炎、眼のアレルギー、食物および薬物アレルギー、ラテックスアレルギー、もしくは昆虫アレルギーなどの他のアレルギー疾患、またはIgA天疱瘡などのIgA腎症から選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項60】
CD25に結合して、移植の拒絶、移植片対宿主病、炎症、免疫または自己免疫疾患、炎症、または過増殖皮膚障害、リンパ系新生物、悪性疾患、血液障害、皮膚障害、肝臓-消化管障害、心障害、血管障害、腎障害、肺障害、神経障害、結合組織障害、内分泌障害、ウイルス感染症からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項61】
IL-15またはIL-15受容体に結合して、関節炎、痛風、結合組織障害、神経障害、消化管障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、血管障害、感染障害、腎障害、心障害、循環器障害、代謝障害、骨障害、および筋障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項62】
IL-8に結合して、掌しょ膿疱性発疹(PPP)、乾癬、または他の皮膚疾患、炎症、自己免疫および免疫障害、アルコール性肝炎および急性膵炎、IL-8媒介血管新生を伴う疾患からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項63】
CD20に結合して、リウマチ性関節炎、(自己)免疫および炎症障害、非ホジキンリンパ腫、B-CLL、リンパ系新生物、悪性疾患および血液障害、感染疾患および結合組織障害、神経障害、消化管障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、血管障害、感染障害、腎障害、心障害、循環器障害、代謝障害、骨および筋障害、ならびに免疫媒介血球減少症からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項64】
CD38に結合して、腫瘍形成性の障害、CD38発現B細胞、プラズマ細胞、単球、およびT細胞が関係している免疫障害、急性呼吸窮迫症候群および舞踏病網膜炎、リウマチ性関節炎、炎症、自己抗体および/または過剰なBおよびTリンパ球活性が優勢である免疫および/または自己免疫障害、皮膚障害、免疫媒介血球減少症、結合組織障害、関節炎、血液障害、内分泌障害、肝臓-消化管障害、腎症、神経障害、心肺障害、アレルギー障害、眼科障害、感染疾患、婦人科産科障害、男性生殖障害、移植由来障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項65】
EGFrに結合して、EGFrを(過剰)発現する癌、および自己免疫疾患、乾癬、炎症性関節炎などの他のEGFr関連疾患からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項66】
CD4に結合して、リウマチ性関節炎、(自己)免疫および炎症障害、皮膚T細胞リンパ腫、非皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、悪性疾患および血液障害、感染疾患、および結合組織障害、神経障害、消化管障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、血管障害、感染障害、腎障害、心障害、循環器障害、代謝障害、骨障害、筋障害、免疫媒介血球減少症、およびHIV感染症/AIDSからなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項67】
CD28に結合して、炎症疾患、自己免疫疾患、および免疫障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項68】
組織因子または第VII因子と組織因子との複合体に結合して、心筋血管疾患、脳血管疾患、網膜症、および黄斑変性などの血管疾患、ならびに炎症障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項69】
PD-1に結合して、HIV-1/AIDSの処置において用いられるためのものである、請求項26記載の安定化IgG4抗体。
【請求項70】
重鎖が409位でArg残基、405位でPhe残基、または370位でLys残基の置換を有するヒトIgG4定常領域を含み、抗体が、409位に対応する位置でLys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基を有する場合、抗体はヒンジ領域においてCys-Pro-Pro-Cys配列を含まないことを条件として、ならびに抗体が409位でLysおよび309位でLeuをいずれも含まないことを条件として、抗体が任意で1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含む、重鎖と軽鎖とを含む単離された安定化IgG4抗体。
【請求項71】
請求項2において明記された特色の1つまたは複数を含む、請求項70記載の安定化IgG4抗体。
【請求項72】
先行請求項のいずれか1項において定義された安定化IgG4抗体を含む薬学的組成物。
【請求項73】
請求項24〜69のいずれか1項に記載の疾患または障害を処置するための薬剤を調製するための、請求項24〜69のいずれか1項に記載の安定化IgG4抗体の使用。
【請求項74】
宿主細胞において抗体をコードする核酸構築物を発現させる段階、および任意で該抗体を精製する段階を含む、先行請求項1〜69のいずれか1項記載の安定化IgG4抗体を産生するための方法。
【請求項75】
安定化IgG4抗体が、409位でLysおよび309位でLeuをいずれも含まない、請求項74記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−528993(P2010−528993A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509682(P2010−509682)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050129
【国際公開番号】WO2008/145142
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(507316398)ゲンマブ エー/エス (18)
【Fターム(参考)】