説明

安定化させた煙霧剤分散体

本発明は、薬投与に役立つナノ粒子を含有する安定化分散体に関する。前記分散体は、賦形剤ナノ粒子、薬を含んでなる分散相、および噴霧剤を含んでなる連続相を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、煙霧剤からの薬投与に役立つ煙霧剤分散体に関する。
【0002】
薬は、例えば定量吸入器(MDI)、局所スプレー、およびウィップなどの多様な形態の噴霧剤ベースの煙霧剤からデリバリされており、MDIが最も一般的である。1950代中頃におけるMDIの導入以来、吸入は、喘息患者の気道に局所的に気管支拡張剤およびステロイドを投与する最も広く使用される経路になった。気管支拡張剤の経口投与と比べて、MDIを通じた吸入は、迅速な作用開始およびより低頻度の全身性副作用を提供する。
【0003】
医療用煙霧剤は、その製造で使用される噴霧剤システムの推進力に依存する。伝統的に噴霧剤システムは、所望の蒸気圧および懸濁液安定性を提供するように選択される、過フッ化された化合物、ヒドロフルオロアルカン(HFA)、またはクロロフルオロカーボン(CFC)混合物から構成される。このようなシステムを使用して、可溶化薬剤をデリバリしても良いが、選択される生体活性物質は典型的に細かい微粒子の形態に組み込まれ、液化噴霧剤中の分散体を提供する。このようなシステムにおける凝集の問題を最小化するまたは防止するために、界面活性剤を使用して生体活性物質の表面をコーティングして、煙霧剤噴霧剤で粒子をぬらす手助けをすることが多い。実質的に均一の分散体を維持するためのこのような界面活性剤の使用は、懸濁液を「安定化する」と称される。分散体によっては、界面活性剤の使用は望ましくないかもしれない。生物体に対する治療的に活性な化合物(すなわち薬)の一貫した効果的デリバリは、概して薬の実際の化学的同一性、および薬理的活性を超えるいくつかのパラメーターによって影響される。
【0004】
医療用煙霧剤は、経口または経鼻吸入を通じて薬を肺系統に導入する効果的方法であることができるが、それらの性能に影響する医療用煙霧剤組成物を支配するいくつかのパラメーターがある。これらのパラメーターの相対的重要性は、使用する剤形タイプ(例えば定量吸入器またはMDI、乾燥粉末吸入器、ネブライザー)およびデリバリされる薬のタイプ次第で変化できるが、通常、剤形中の薬濃度、生物体にデリバリされる煙霧剤の粒度、組成物の物理化学的安定性、および肺系統にデリバリされる粒子が身体に吸収される能力などが含まれる。
【0005】
特定の望ましい特性または許容可能な特性バランスを達成するために、様々な賦形剤を医療用煙霧剤組成物中に組み込むことが望ましいこともある。薬の可溶化、薬懸濁液の質の改善、放出粒度の増大などのために、医療用煙霧剤で使用するための多くの異なる賦形剤が提案されている。しかし多くの提案される賦形剤は、1つ以上の利点を提供しながら、毒物学的問題、限定的な噴霧剤溶解性、その他の生成物構成要素との有害な相互作用、または広範な使用における限定的能力などの欠点があり、その他の点では使用が望ましくないものになる。
【0006】
特にあらゆる既知の噴霧剤中のほとんどの薬懸濁液は、迅速に凝集する傾向がある。懸濁した材料の粒度が調節できなければ、凝集が生じて煙霧剤容器のバルブオリフィスが詰まり、定量供給装置を作動不能にするかもしれず、計量バルブが用いられる場合、それを不正確にするかもしれない。この望まれない凝集または凝結は、特に高度に強力で低用量の薬の場合、望ましくない結果をもたらす不適切な投薬につながるかもしれない。さらにこのような迅速な粒子凝集はまた、懸濁液の急速なクリーミングまたは沈殿をもたらす。生じる相分離は、概してMDI装置で使用直前に激しく振盪することで対処される。しかし患者のコンプライアンスは制御困難であり多くの市販される懸濁液は非常に不安定なので、振盪と使用の間のわずかな遅れでさえ、投薬量の均一性に影響できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって医療用煙霧剤、特にHFC−134aおよびHFC−227などのヒドロフルオロカーボン噴霧剤を使用する加圧医療用煙霧剤において有用な、新しい効果的な賦形剤に対する継続的な必要性がある。過去10年間にわたり研究がなされているが、厳密な機能性および今日の治療的な要件に関して適切な、CFCフリーの加圧定量吸入器を考案することは、重要であり続ける。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では本発明は、薬を含んでなる分散した固相と、噴霧剤および賦形剤ナノ粒子を含んでなる連続液相とを含んでなる安定した医薬品分散体を提供する。
【0009】
別の態様では本発明は、本発明に従った有効量の医薬品分散体を哺乳類の気道に投与するステップを含んでなる、気道を通じて前記哺乳類を処置する方法を提供する。
【0010】
別の態様では本発明は、計量バルブと、容器内に配置された本発明の安定した医薬品分散体とを有する、煙霧剤容器を含んでなる定量吸入器を提供する。
【0011】
別の態様では本発明は、煙霧剤容器を提供するステップと、前記容器に本発明の医薬品分散体を装填するステップを含んでなる、煙霧剤分散体を製造する方法を提供する。
【0012】
別の態様では本発明は、薬を含んでなる分散した固相と、噴霧剤を含んでなる連続液相とを含んでなる分散体に、有効量の賦形剤ナノ粒子を添加するステップを含んでなる、医薬品分散体を安定化する方法を提供する。
【0013】
別の態様では本発明は、本質的に、薬を含んでなる分散した固相と、噴霧剤および賦形剤ナノ粒子を含んでなる連続液相とからなる安定した医薬品分散体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の分散体は、分散体の実質的な撹拌なしに煙霧剤の形態で、有用な時間にわたり再現可能な1回分の薬を提供する、または最小のエネルギーインプットで容易に再分散される安定した分散体である。薬および噴霧剤を含んでなる分散体は、有効量の賦形剤ナノ粒子の分散体中への組み込みによって安定化させることができる。「有効量」の賦形剤ナノ粒子とは、薬の粒子凝集を最小化して、分散体の実質的な撹拌なしに有用な時間にわたり分散したままである、または最小のエネルギーインプットで容易に再分散される安定した分散体を形成する量である。いかなる理論による拘束も意図しないが、ナノ粒子は、分散した相の凝集を粒子荷電を通じてでなく、立体的に阻害すると考えられている。本発明の分散体で使用される賦形剤ナノ粒子は、分散体の連続相中に可溶性であるように見え、本発明の分散体中に沈殿、凝結などしない。さらに賦形剤ナノ粒子は薬粒子表面と実質的に結合せず、従来の懸濁助剤と比べて低濃度で効果的な懸濁助剤であるかもしれない。本発明の安定した分散体は、0.001wt%未満の界面活性剤、界面活性剤、伝統的乳化剤、洗剤、および/または保護コロイドを含有しても良い。
【0015】
ここでの用法では、「分散体」とは、有用な時間にわたり分離しない、連続液体相全体に分布する固形物を意味する。
【0016】
ここでの用法では、「分離」とは、液体分散体中にある固形粒子が徐々に沈降またはクリーム化して、非常に異なる濃度の固形粒子および連続液体相の明瞭な層を形成することを意味する。
【0017】
ここでの用法では、「分散安定性」とは、分散体が分離する傾向の描写である。良好な分散安定性がある分散体では、粒子は連続相中にほぼ均質に分布したままである。分散安定性が不良な分散体では、粒子は連続相中でほぼ均質な分布を保たず分離するかもしれない。
【0018】
ここでの用法では、「賦形剤」とは、煙霧剤分散体調合物のいくつかの側面を改善するのに使用される、主要な活性薬部分以外のあらゆる不活性添加剤を広くを指す。
【0019】
ここでの用法では、「煙霧剤分散体」とは、圧力をかけると患者に薬をデリバリできる、薬および噴霧剤を含む医療用分散体を意味する。
【0020】
ここでの用法では、「ナノ粒子」とは、連続相中に可溶性であるように見える、有機または無機粒子または分子およびそれらの組み合わせを意味し、各粒子は連続相中でナノスケール寸法を有して、連続相中で100nm未満の立体排除領域を占めるまたは提供する。
【0021】
本発明の安定化分散体としては、表面変性無機ナノ粒子、表面変性有機ナノ粒子、および/または未変性表面を有する立体有機分子(ナノ粒子)が挙げられる。「立体有機分子」とは、ナノメートル径寸法で記述できる排除容積を有し、共有結合的に結合した有機単位から構成される単一分子(例えばポリマー)を意味する。「立体有機分子」は、連続相に可溶性の直鎖ポリマーを含まない。一実施形態では、それらの表面は、実質的にナノ粒子の内部またはコアに存在するのと同一部分から構成される。ナノ粒子は、望ましくは連続相全体に分散した個々の会合していない(すなわち凝集していない)ナノ粒子であり、望ましくは互いに不可逆的に結合せず、分散した薬と結合しない。「結合する」または「会合する」という用語には、例えば共有結合、水素結合、静電気引力、ロンドン力、および疎水性相互作用が含まれる。
【0022】
ナノ粒子は、それから形成された組成物が、組成物の所望の特性を妨げるある程度の粒子凝塊形成または凝集がないように選択される。表面変性有機または無機ナノ粒子は、ナノ粒子の「溶解性」または「ぬれ性」特性を変性する表面基を有する。表面基は、連続相の構成要素を含めた連続相と、粒子を適合性にするように選択される。未変性ナノ粒子は、さらなる表面変性なしに連続相と適合性である。
【0023】
ナノ粒子と連続相の適合性を評価する一方法としては、得られる組成物が安定した分散体を形成するかどうか判定することが挙げられる。非適合性ナノ粒子は、予期される効果的な濃度において懸濁液の品質を改善しない。透明連続相では、ナノ粒子と透明連続相との適合性を評価する有用な一方法は、ナノ粒子と連続相をあわせて、得られる分散体が透明または半透明になるように、ナノ粒子が連続相内に溶解するように見えるかどうかを観察するステップを含む。
【0024】
表面変性ナノ粒子では、表面変性ナノ粒子の無機または有機粒子構成要素の性質は、表面変性粒子が連続相中に実際に溶解するのを防止し、すなわち表面変性ナノ粒子が連続相中に分散するようにする。しかし表面基と連続相との適合性は、連続相中に溶解しているような外見を表面変性ナノ粒子に与える。表面変性ナノ粒子の粒度が増大すると、連続相の濁りは概して増大する。好ましい表面変性ナノ粒子は、連続相から析出しないように選択される。連続相と表面変性または未変性ナノ粒子との適合性を評価するさらなるステップは、引き続く連続相中に分散させる薬粒子の導入時に、組成物が安定した分散体を形成するかどうかを判定することを含む。
【0025】
適切な表面基はまた、表面基および連続相の溶解性パラメーターに基づいて選択できる。望ましくは表面基、または表面基がそれから誘導される作用薬は、連続相の溶解性パラメーターに類似した溶解性パラメーターを有する。例えば連続相が疎水性であれば、当業者は様々な疎水性表面基から選択して、疎水性連続相と適合性の表面変性粒子を得ることができる。同様に連続相が親水性であれば、当業者は親水性表面基から選択でき、連続相がヒドロフルオロカーボンであれば、当業者が様々な適合性表面基から選択できる。ナノ粒子はまた、組み合わさって、連続相の溶解性パラメーターと類似した溶解性パラメーターを有するナノ粒子を提供できる、少なくとも2つの異なる表面基も含むことができる。表面変性ナノ粒子は両親媒性でない。
【0026】
表面基は、統計学的に平均化された、無作為な表面変性粒子を提供するように選択されても良い。
【0027】
必要ならば、十分な量の表面基がナノ粒子表面に存在して、引き続いて連続相中で凝集なしに分散できる表面変性ナノ粒子を提供する。表面基は、望ましくはナノ粒子表面に単層、望ましくは連続の単層を形成するのに十分な量で存在する。
【0028】
表面変性基は、表面変性剤から誘導されても良い。模式的には、表面変性剤は式A−Bで表すことができ、式中、A基は粒子表面に付着でき、B基は相溶性付与基(連続相と非反応性)であり、または相溶性付与基に対する連結基である。相溶性付与基は、粒子を比較的より高い極性、比較的より低い極性、または比較的非極性にするように選択できる。
【0029】
表面変性剤の適切なクラスとしては、例えば、シラン、有機酸、有機塩基、アルコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
有用なシランの例としては、例えばアルキルクロロシランをはじめとするオルガノシランと、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、およびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのアルコキシシランと、トリアルコキシアリールシランと、イソオクチルトリメトキシ−シランと、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメートと、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメートと、例えば3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロペニルトリメトキシシラン、および3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランなどのシラン官能性(メタ)アクリレートと、例えばポリジメチルシロキサンなどのポリジアルキルシロキサンと、例えば置換されたおよび置換されていないアリールシランなどのアリールシランと、例えばメトキシおよびヒドロキシ置換アルキルシランなどの例えば置換されたおよび置換されていないアルキルシランなどのアルキルシランと、それらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
シラン官能性(メタ)アクリレートを使用してシリカを表面変性する方法については、例えばオルセン(Olsen)らに付与された米国特許第4,491,508号明細書および米国特許第4,455,205号明細書、チャン(Chung)に付与された米国特許第4,478,876号明細書および米国特許第4,486,504号明細書、およびカツァムベリス(Katsamberis)に付与された米国特許第5,258,225号明細書で述べられる。
【0032】
有用な有機酸表面変性剤としては、例えば炭素(例えばカルボン酸)、イオウ、およびリンのオキシ酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
カルボン酸官能基を有する極性表面変性剤の代表的な例としては、CH3O(CH2CH2O)2CH2COOH(以下MEEAA)と、化学構造CH3OCH2CH2OCH2COOH(以下MEAA)を有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸と、モノ(ポリエチレングリコール)コハク酸塩などの酸官能性付与ポリエチレングリコール(PEGS)と、酢酸、プロピオン酸、またはブタン酸で単置換されたポリエチレングリコールとが挙げられる。このようなポリマーまたはそれらの誘導体は、米国特許第5,672,662号明細書で述べられように調製してもまたは市販品を購入しても良い。
【0034】
カルボン酸官能基を有する非極性表面変性剤の代表的な例としては、オクタン酸、ドデカン酸、およびオレイン酸が挙げられる。
【0035】
適切なリン含有酸の例としては、例えばオクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸をはじめとするホスホン酸、およびリン酸またはホスホン酸置換されたポリエチレングリコールが挙げられる。
【0036】
有用な有機塩基変性剤としては、例えばオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、およびオクタデシルアミンをはじめとするアルキルアミン、またはアミン官能性付与ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0037】
その他の有用な非シラン表面変性剤の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)コハク酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ナノ粒子に極性および反応性の双方を与える有用な表面変性剤は、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)コハク酸塩である。
【0038】
適切な表面変性アルコールの例としては、例えばオクタデシル、ドデシル、ラウリル、およびフルフリルアルコールをはじめとする脂肪族アルコールと、例えばシクロヘキサノールをはじめとする脂環式アルコールと、例えばフェノールおよびベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、モノメチルポリエチレングリコールをはじめとする芳香族アルコールと、それらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
例えばナノ粒子に表面変性剤(例えば粉末またはコロイド分散体の形態の)を添加して、表面変性剤をナノ粒子と反応させることをはじめとする、ナノ粒子表面を変性するための多様な方法が利用できる。当業者は、ナノ粒子と相溶性付与基とを一緒にする複数の合成手順が可能であり、例えば相溶性付与基との反応に続いて反応性基/リンカーがナノ粒子と反応するという範囲内で想定されることを認識する。代案としてはナノ粒子との反応に続いて、反応性基/リンカーを相溶性付与基と反応させても良い。その他の有用な表面変性過程は、例えば米国特許第2,801,185号明細書および米国特許第4,522,958号明細書で述べられる。
【0040】
ナノ粒子は、主として無機または有機物またはそれらの組み合わせである。適切な無機ナノ粒子の例としては、ジルコニア、チタニア、酸化セリウム、アルミナ、酸化鉄、バナジア、アンチモン酸化、酸化スズ、アルミナ/シリカをはじめとするシリカおよび金属酸化物ナノ粒子、例えばヒドロキシ−アパタイトなどのカルシウムリン酸塩、カルシウムリン酸塩、およびそれらの組み合わせが挙げられ、材料混合物または中央無機または有機コアを取り囲む材料層などの組み合わせ材料が含まれる。適切な有機ナノ粒子の例としては、バックミンスターフラーレン(フラーレン)と、デンドリマーと、乳糖、トレハロース、グルコースまたはスクロースなどの噴霧剤不溶性の糖と、アミノ酸と、多様な末端基がある直鎖または分枝鎖、またはウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company(Milwaukee、WI))またはアラバマ州ハンツビルのシェアウォーター(Shearwater Corporation(Huntsville、AL)から入手できる4、6、または8腕ポリエチレンオキシドなどのハイパーブランチ「スター」ポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
フラーレンの具体例としては、C60、C70、C82、およびC84が挙げられる。デンドリマーの具体例としては、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)から入手できる第2世代から第10世代(G2〜G10)のポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー挙げられる。
【0042】
当業者は理解するように、上述のナノ粒子をそのまま、または表面変性して、およびあらゆる組み合わせで使用しても良い。不溶性のナノ粒子(無機物、トレハロースまたは乳糖などの糖、または特定のデンドリマーなどの)は、適切に表面変性して、それらを連続相中でぬらすことができるようにすべきである。また変性を使用して、立体排除ゾーンの容積を調節しても良い。制限を意図しない表面変性方法としては、「表面」との吸着、イオン、または共有結合化学反応、または連続相中での粒子の「溶解性」を増大させるシェルを作り出す反応性部分によるナノ粒子の封入またはコーティングが挙げられる。吸着がナノ粒子の表面を変性する主要な方法であれば、実質的な脱着と引き続く薬の表面変性を避けるために、吸着化学種は当業者によって選択されるべきである。
【0043】
HFAを含有するナノ粒子が連続相内に存在する場合、ナノ粒子表面は、望ましくは複数のエーテル、エステル、またはアミド部分から構成されても良い。補助溶剤(例えば、エタノール)またはジメチルエーテル、プロパン、ブタン、またはそれらの配合物もまた含有する連続相では、ナノ粒子表面の性質は疎水性がより高くても良い。望ましいナノ粒子表面は、ラクチドまたはカプロラクトンから誘導されるポリエチレングリコール、またはポリエステルなどの既知の生体適合性材料から構成される。
【0044】
PAMAMデンドリマーは、主要なアミン、ヒドロキシル、カルボキシレートナトリウム塩、混合アミン/ヒドロキシル、およびC12表面官能基と共に現在市販される。当業者は、これらのデンドリマーがそのまま使用でき、または必要ならば変性して表面を連続相と適合性にして使用できることを認識するであろう。
【0045】
有用なジルコニアナノ粒子としては、粒子表面に吸着されたオレイン酸とアクリル酸の組み合わせを有する、ジルコニアナノ粒子が挙げられる。
【0046】
有用なシリカナノ粒子としては、例えばアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、およびそれらの組み合わせをはじめとするシラン表面変性剤で表面変性されたシリカナノ粒子が挙げられる。シリカナノ粒子は、例えばアルコールと、例えばアルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、およびそれらの組み合わせをはじめとするオルガノシランと、オルガノチタネートと、それらの混合物をはじめとするいくつかの表面変性剤で処理きる。
【0047】
有用な表面変性酸化鉄粒子としては、シリルまたはシアノによって誘導される、長鎖炭化水素またはエーテル(例えばポリエチレングリコール)で変性された酸化鉄粒子が挙げられる。リン酸カルシウムのための有用な表面変性基としては、1)任意に一価を超える金属カチオンがある、カルボン酸、リン酸または、硫酸などのアシルまたはアルキル酸に基づく、または2)アルキルまたはアミンおよび誘導体に基づくオン結合が挙げられる。
【0048】
HFAを含有する連続相中では、有用な表面変性剤としては、例えば上で列挙したアルコール、酸、またはアミン官能基を有する単官能性PEGなどの官能基を有するポリエステルまたはエステルが挙げられる。
【0049】
バックミンスターフラーレン(フラーレン)およびポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーのための有用な表面変性基としては、直鎖または分枝鎖アルキル基が挙げられ、少なくともC3からC30以下の範囲、およびC3〜C30内のあらゆるサイズまたは範囲であっても良い。
【0050】
表面変性の有無にかかわらず、ナノ粒子は約100nm未満の平均粒径を有し、その他の実施形態では約50、40、30、20、15、10、または5nm以下、その他の実施形態では約3nm〜約50nm、その他の実施形態では約3nm〜約20nm、その他の実施形態では約5nm〜約10nmの平均粒径を有する。ナノ粒子が凝集する場合、凝集粒子の最大断面寸法は、これらのいずれかの好ましい範囲内である。
【0051】
ナノ粒子は、コロイド分散体の形態であっても良い。有用な市販される未変性シリカの例としては、イリノイ州ネーパービルのナルコ・ケミカル(Nalco Chemical Co.(Naperville、IL))からNALCO 1040、1050、1060、2326、2327、および2329コロイドシリカの商品名の下に入手できるナノサイズのコロイドシリカが挙げられる。
【0052】
有用な金属酸化物コロイドの分散体としては、その適切な例が米国特許第5,037,579号明細書で述べられるコロイド酸化ジルコニウムと、その適切な例が1998年7月30日に出願されたアルネー(Arney)らの「透明な金属酸化物コロイドおよびセラマーを製造するためのナノサイズ金属酸化物粒子(Nanosize Metal Oxide Particles for Producing Transparent Metal Oxide Colloids and Ceramers)」と題されたPCT公報国際公開第00/06495号パンフレットで述べられるコロイド酸化チタンが挙げられる。
【0053】
ナノ粒子は本発明の分散体において有効量で用いられ、薬粒子の凝集を最小化する。ナノ粒子は概して0.005〜0.5wt%の量で存在し、0.001〜0.5wt%のあらゆる量または範囲で存在しても良い。別の実施形態では、本発明の分散体は、0.5、0.4、0.3、または0.2wt%未満を含有する。当業者は、必要とされる有効量が、噴霧剤のタイプ、表面の官能基、およびナノ粒子の粒度、薬の濃度とタイプ、およびその他の賦形剤の存在に左右されることを認識する。ここで述べる異なるタイプのナノ粒子の組み合わせを使用しても良い。
【0054】
本発明は、煙霧剤分散体として調製されるあらゆる薬に応用できる。制限を意図しないその他の適切な薬の例としては、抗アレルギー性物質、鎮痛薬、気管支拡張剤、抗ヒスタミン薬、治療的タンパク質およびペプチド、鎮咳薬、狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、利尿薬、ホルモン、または例えば血管収縮性アミンなどのスルホンアミド、酵素、アルカロイドまたはステロイド、およびこれらの具体例の組み合わせが挙げられ、または用いても良い薬は、イソプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、グルカゴン、アドレノクロム、トリプシン、エピネフリン、エフェドリン、ナルコチン、コデイン、アトロピン、ヘパリン、モルフィン、ジヒドロモルフィノン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、スコポラミン、メタピリレン、シアノコバラミン、テルブタリン、リミテロール、サルブタモール、イソプレナリン、フェノテロール、臭化オキシトロピウム、レプロテロール、ブデソニド、フルニソリド、シクレソニド、フォルモテロール、プロピン酸フルチカゾン、サルメテロール、プロカテロール、イプラトロピウルン(ipratropiurn)、トリアムシノロンアセトニド、チプレダン(tipredane)、フランカルボン酸モメタゾン、コルヒチン、ピルブテロール、ベクロメタゾンジプロピオネート、オルシプレナリン、フェンタニル、ジアモルフィン、およびジルチアゼムである。その他は、ネオマイシン、セファロスポリン、ストレプトマイシン、ペニシリン、プロカインペニシリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリンおよびヒドロキシテトラサイクリンなどの抗生物質と、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質刺激ホルモンおよび副腎皮質ホルモンと、クロモリンナトリウム、およびネドクロミルなどの抗アレルギー化合物と、インシュリン、ペンタミジン、カルシトニン、アミロライド、インターフェロン、LHRH類似体、IDNAase、ヘパリンなどのタンパク質およびペプチド分子である。妥当な場合、上で例証した薬を遊離塩基または技術分野で既知の1つ以上の塩のいずれかとして使用しても良い。ワクチンもまた、このアプローチから恩恵を被るかもしれない。
【0055】
上で例証した薬は、遊離塩基または技術分野で知られている1つ以上の塩のいずれかとして使用しても良い。遊離塩基または塩の選択は、分散体中の薬の物理的安定性によって影響される。上述の薬の以下の塩を使用しても良い。酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭塩、酒石酸水素塩、臭化物、カルシウムエデト酸塩、カンシラート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、フルセプタート、グルコナート、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸(エンボン酸)、パントテン酸塩、リン酸二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチレート、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、およびトリエチオジド。
【0056】
カチオン塩を使用しても良い。適切なカチオン塩としては、例えばナトリウムおよびカリウムおよびアンモニウム塩などのアルカリ金属と、例えばグリシン、エチレンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オクタデシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1−アミノ−2−プロパノール−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール、および1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2イソプロピルアミノエタノールなどの薬学的に許容可能であることが技術分野で知られているアミンの塩とが挙げられる。
【0057】
医薬品目的では、より大きな粒子は、容器のバルブまたはオリフィスを詰まらせるかもしれないので、薬粉末の粒度は、望ましくは直径100μm以下であるべきである。別の実施形態では、粒度は直径25μm未満であるべきである。望ましくは微粉化した固形物粉末の粒度は、生理的な理由から約25μm未満であるべきであり、別の実施形態では、直径約10μm未満であるべきである。吸入治療法のための粉末の粒度は、望ましくは約5μm未満である。
【0058】
本発明に従った医療用分散体は、治療的有効量で分散体中に分散した薬を含有する。「治療的に有効量」とは、気管支拡張または抗ウィルス活性などの治療的効果を誘導するのに十分な量を意味する。量は、特定の薬の薬理的活性は、処置する病状、投与の頻度、処置部位、および同時投与されるあらゆるその他の治療的薬剤の存在などの当業者に知られている因子に従って変動する。薬濃度は所望の投薬量に左右されるが、概して0.01〜15、0.01〜10、0.01〜5、0.01〜4、0.01〜3、または0.01〜2wt%の範囲であり、0.001〜15wt%のあらゆる量または範囲で存在しても良い。
【0059】
適切な噴霧剤としては、例えばトリクロロフルオロメタン(噴霧剤11とも称される)、ジクロロジフルオロメタン(噴霧剤12とも称される)、および1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(噴霧剤114とも称される)、ヒドロクロロフルオロカーボンなどのクロロフルオロカーボン(CFC)と、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(噴霧剤134a、HFC−134a、またはHFA−134aとも称される)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(噴霧剤227、HFC−227、またはHFA−227とも称される)などのヒドロフルオロカーボン(HFC)と、二酸化炭素、ジメチルエーテル、ブタン、プロパン、またはそれらの混合物が挙げられる。別の実施形態では、噴霧剤としてクロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、またはそれらの混合物が挙げられる。別の実施形態では、噴霧剤としてヒドロフルオロカーボンが使用される。その他の実施形態では、噴霧剤としてHFC−227および/またはHFC−134aが使用される。
【0060】
噴霧剤は、分散体の少なくとも70wt%、常態では約85〜99.99wt%の量で、本発明の分散体中に存在する。
【0061】
適切なアジュバントとしては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールなどのアルコールと、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンなどの炭化水素と、一般に噴霧剤11、12、114、113、142b、152a 124と称されるものなどのその他の噴霧剤と、ジメチルエーテルと、フッ素化されたおよび非フッ素化界面活性剤、カルボン酸、およびポリエトキシレートなどの界面活性剤とが挙げられる。アジュバントは、用いられる量の噴霧剤、およびあらゆる補助アジュバントと混和性であるべきである。
【0062】
本発明の分散体は、計量バルブを装着した従来の煙霧剤容器内に充填して、従来の様式でディスペンスしても良い。
【実施例】
【0063】
表面変性ナノ粒子の調製
PEG変性シリカナノ粒子(PEG−ナノSiO2)の調製
PEG変性シリカナノ粒子(PEG−ナノSiO2)を次のようにして調製した。ガラス容器内で、イリノイ州ネーパービルのナルコ・ケミカル(Nalco Chemical Co.(Naperville、IL))からの平均粒度5nmおよび表面積約600m2/gを有する525gのアンモニア安定化コロイドシリカ(15%固形分)(NALCO 2326)をコネチカット州ミドルベリのクロンプトン・ケミカルズ(Crompton Chemicals(Middlebury、CT)から入手できる46.3gのポリエトキシル化トリアルコキシシラン(SILQUEST A1230)および203.5gの蒸留水と組み合わせた。容器を密封して、80℃のオーブンに16時間入れた。得られた沈殿組成物を蒸発によって乾燥させた。乾燥させた粒子にトルエンを添加して、溶液を無水酢酸と共に還流してあらゆる未反応−OH基をキャップした。ロータリーエバポレータを使用してトルエンを除去し、白色粉末を得た。
【0064】
PEG変性酸化鉄ナノ粒子(PEG−ナノFe23)の調製
コロイド加水分解酸化鉄ナノ粒子を次のようにして調製した。2Lの0.375M 鉄硝酸九水和物溶液に、1Lの1.875M重炭酸アンモニウム溶液を迅速に撹拌しながら滴下して添加した。添加完了後、ジョージア州サバナのスペクトラム・ラボラトリーズ(Spectrum Laboratories,Inc.(Savannah、GA))からの透析管(ほぼ1メートルの長さ、1000 MWCO Spectra/Por)を加水分解した硝酸第二鉄の撹拌された溶液に浸漬し、脱イオン水を緩慢に通過させて、溶液を脱イオン水に対して透析した。約5相当容量の脱イオン水で透析した後、透析の残りの時間、コロイド加水分解酸化鉄ナノ粒子溶液を約65℃に加熱した。追加的な7相当容積の脱イオン水を使用して、透析を継続した。
【0065】
100gのコロイド加水分解酸化鉄ナノ粒子を0.71gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸と組み合わせ、振盪して混合し、80℃のオーブンに約18時間入れた。得られた沈殿組成物を150℃のオーブン内で乾燥させて、PEG変性酸化鉄ナノ粒子(PEG−ナノFe23)を、赤褐色固形物として回収した。
【0066】
アセチル化スターPEG有機ナノ粒子(PEG−ナノスター)の調製
アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)からのポリ(酸化エチレン)(4または6腕、ヒドロキシ末端)を温度80℃で容器内の過剰な無水酢酸に添加した。窒素下で24時間、容器内の混合物を撹拌し、続いて過剰な無水酢酸を真空下で除去した。IR分析からはヒドロキシル基の形跡は示されなかった。
【0067】
イソオクチル置換シリカナノ粒子(IO−ナノSiO2)の調製
米国特許出願公開第2002/0128336号で述べられるようにして、イソ−オクチル置換シリカナノ粒子(IO−ナノSiO2)を調製した。
【0068】
PEG変性PAMAMデンドリマーの調製
表面変性PAMAM(第2世代)デンドリマー(PAMAM G−2)を次のようにして調製した。
【0069】
MPEG−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
ドイツ国ザルツバッハ・アム・タウヌスのクラリアント(Clariant(Sulzbach am Taunus、Germany))から入手できる100gの単官能性ポリエチレングリコール(ポリグリコールM、1100 MW、以下MPEG 1100と称する)をトルエン内で24時間共沸的に乾燥させ、引き続いて50℃で絶えず撹拌しながら2モル過剰量のナトリウム金属(4.2g)を添加した。温度を75℃に上昇させて、反応を24時間進行させた。反応を室温に冷却してあらゆる未反応ナトリウムを除去し、さらに10℃に冷却した。アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)からのt−ブチルブロモ酢酸(30mL、2.25モル過剰量)を添加して、反応を絶えず撹拌しながら48時間進行させ、温度を徐々に室温に上昇させた。反応を真空濾過してNaBr塩を除去し、トルエンをロータリーエバポレータ上で蒸発させた。M−PEG 1100 t−ブチルエステル生成物を300mLの塩化メチレンに溶解し、精製水(3×400mL)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して溶剤をロータリーエバポレータ上で蒸発させた。あらゆる残留揮発性物質を高真空下で110℃において蒸留によって除去した。175mLの精製水中の2.25gの水酸化リチウム一水和物で、生成物を50℃で48時間加水分解した。反応をHClでpH3.0に酸性化して、塩化メチレン(4×300mL)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して溶剤をロータリーエバポレータ上で蒸発させ、12gのM−PEG 1100酸を得て、それを150mLのテトラヒドロフランに溶解し、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)からの2.6gの1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.1モル過剰量)と共に、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)からの2モル過剰量の2.6gのN−ヒドロキシスクシンイミドを添加した。反応を絶えず撹拌しながら0℃で24時間進行させた。次に得られた混合物を真空濾過して、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドから得られた尿素を除去し、続いてTHFをロータリーエバポレータ上で除去した。
【0070】
アセチル化PAMAM G−2 MPEG1100誘導体(PAMAM G−2 MPEG1100)
100mLのN,N−ジメチルホルムアミドに、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)からの0.5gスターバースト(STARBURST)PAMAM G−2を0℃で溶解し、5.4gのMPEG 1100−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを添加した。絶えず撹拌しながら反応を2時間進行させた。室温に暖まったら、100mLのトルエンを添加した。得られた溶液を精製水(5×300mL)および1.0NaOH(5×200mL)ですすいだ。ロータリーエバポレータ上でトルエンを蒸発させ、生成物を高真空下で乾燥させた。
【0071】
あらゆる末端アミノ基から反応しなかったキャップを外すために、生成物を50mLのトルエン中に再溶解して、過剰な無水酢酸で処理した。80℃に2時間保った後、溶液をわずかに冷却して50mLのエタノールを添加した。次に全ての溶剤をロータリーエバポレータ上で蒸発させて、アセチル化PAMAM G−2 MPEG1100誘導体を高真空下で乾燥させた。
【0072】
アセチル化PAMAM G−2 MPEG 2000誘導体(PAMAM G−2 MPEG 2000)
開始試薬としてアルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)からの0.16gのスターバーストPAMAM G−2デンドリマーおよびカリフォルニア州サン・カルロスのネクター(Nektar(San Carlos、CA))から入手できる1.5gのM−PEG 2000スクシンイミジルプロピオネート(MPEG−SPA)を使用したこと以外は、上述のアセチル化PAMAM G−2 MPEG 1100誘導体を製造するのに使用したのと同一の手順に従って、PAMAM G−2 MPEG2000誘導体を調製した。
【0073】
アセチル化PAMAM G−4 MPEG1100誘導体(PAMAM G−4 MPEG1100)
アセチル化PAMAM G−2 MPEG 1100誘導体の合成のために、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)からの0.4gスターバーストPAMAM G−4(第4世代)デンドリマーを上述のように5.0gのMPEG1100−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルで処理した。2時間の反応後に、さらに4.0gのM−PEG−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを添加して、反応をより完全に完了させるために反応をさらに2時間継続した。
【0074】
分散体の調製
MDIキャニスター内に(存在すれば)賦形剤、薬、およびエタノールの量を計量して入れ、次にキャニスター上に連続バルブを圧接して試験する分散体を調製した。連続バルブを通じて既知量の噴霧剤をキャニスター内に押し込んだ。キャニスターをドライアイスにのせて冷却し、キャニスターおよびキャニスターに圧接した定量バルブから連続バルブが除去できるように、分散体の揮発性を十分に低下させた。試験に先だって少なくとも12時間、各分散体を暖めて安定化させた。
【0075】
懸濁液品質振盪試験
懸濁液品質振盪試験を使用して、実施例1〜12および22〜29および比較例A〜DのMDI分散体の物理的安定性を評価した。表2および3で示すような適切な量の薬、ナノ粒子分散剤、噴霧剤、アルコール、およびいずれかの賦形剤をポリシールキャップ付きガラスバイアル内に入れた。各バイアルを30秒間振盪した。次にバイアルを20分間静置した。20分間後、バイアルの懸濁液特性を視覚的に観察して記録した。分散体を表1に明らかにする評価システムに従って評価した。
【0076】
【表1】

【0077】
振盪遅延薬物デリバリ
振盪−遅延薬物デリバリ(SDMD)試験を使用して、振盪と引き続く投与の計量容積補給との間の遅延の影響を評価した。SDMD試験を行うために、MDIを排気フード内でMDIを4回作動させてMDIをプライムし、MDIを各作動直前に振盪した。MDIをプライムした後それを振盪して、排気フード内でもう1回作動させるのに先だって、規定の時間直立位置に保った。MDIを引き続いて単位スプレー収集装置(USCA−米国薬局方、621節、1996)内で作動させた。30Lpmの流量をUSCA装置に通過させた。MDIが放出した用量をUSCAの壁またはUSCAのフィルター上に収集した。USCAの壁およびフィルターへの付着薬量は、これらの構成要素を適切な溶剤ですすいで薬を溶解し、次に引き続いて適切なHPLC法で溶液を分析して測定した。試験を振盪遅延時間0、30、および60秒間で行った。
【0078】
表面変性無機ナノ粒子を用いて調合した実施例1〜21および比較例A〜G MDI
薬と表面変性無機ナノ粒子分散体を含む調合物を製作して、実施例1〜12および比較例A〜Dに上述の懸濁液品質振盪試験を行った。試験結果を下に表2で示す。比較例はナノ粒子分散剤を含有しない。結果は、小量の無機ナノ粒子分散体のMDI調合物への添加が、懸濁液品質振盪試験において分散を保つ調合物を作り出すことを実証する。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例13〜20および比較例E、F、およびGに上述の振盪遅延薬物デリバリ試験を行った。これらの試験結果を図1〜3に示す。推定された薬粒度の質量−中央値は、注記した以外の実施例の全てで2.5μmであった。図1は、ナノ粒子分散剤(比較例E)がないMDI調合物と比較して、表面変性ナノ粒子(PEG−ナノFe23またはPEG−ナノSiO2)の添加が、硫酸アルブテロール(実施例13〜16)を含有するMDI調合物を安定化することを実証する。添加するナノ粒子分散剤の量を0.25%から0.03%に低下させても、調合物安定性に対してわずかな影響しかなかった。図2はなおさらに少量のナノ粒子分散剤(実施例17〜19で0.01〜0.001%)の添加が、振盪遅延薬物デリバリ試験における30秒後の対照と比較して、MDI調合物を安定化する効果を有することを実証する。図3は、ナノ粒子分散剤が、小さな質量−中央値粒度の薬を含有するMDI調合物を安定化する上で、特に効果的であることを示す。
【0081】
表面変性有機ナノ粒子を用いて調合した実施例22〜28MDI
実施例22〜28の分散体および視覚試験結果を下に表3で示す。これらの実施例では、表2の比較例A〜Dが該当比較対照である。推定される質量−中央値薬粒度は全ての実施例で2.5μmであった。
【0082】
【表3】

【0083】
本発明の範囲と精神を逸脱することなく本発明に予見できる修正および変更ができることは、当業者には明らかである。本発明は、本願明細書において例証目的で述べられる実施形態によって制限されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施例13〜16の振盪−遅延薬物デリバリ(SDMD)試験の結果を示す。
【図2】実施例17〜19のSDMD試験結果を示す。
【図3】実施例20のSDMD試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬を含んでなる分散した固相、および
噴霧剤および賦形剤ナノ粒子を含んでなる連続液相
を含んでなる、安定した医薬品分散体。
【請求項2】
賦形剤ナノ粒子が、無機物、有機物、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項3】
賦形剤ナノ粒子が有機物である、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項4】
賦形剤ナノ粒子が表面変性されている、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項5】
賦形剤ナノ粒子が、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化セリウム、リン酸カルシウム、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項4に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項6】
賦形剤ナノ粒子がPEGで表面変性されている、請求項5に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項7】
賦形剤ナノ粒子が、フラーレン、デンドリマー、噴霧剤不溶性の糖、アミノ酸、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項3に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項8】
賦形剤ナノ粒子がPEGで表面変性された、請求項7に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項9】
賦形剤ナノ粒子が、分枝またはハイパーブランチポリエチレンオキシドまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項10】
賦形剤ナノ粒子が、4、6、または8腕ポリエチレンオキシドを含んでなる、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項11】
噴霧剤が、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、またはそれらの混合物を含んでなる、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項12】
噴霧剤が、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、二酸化炭素、ジメチルエーテル、ブタン、プロパン、またはそれらの混合物を含んでなる、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項13】
噴霧剤が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項14】
薬が、抗アレルギー性物質、鎮痛薬、気管支拡張剤、抗ヒスタミン薬、治療的タンパク質およびペプチド、鎮咳薬、狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質ホルモン、利尿薬、ホルモン、およびスルホンアミドよりなる群から選択される、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項15】
前記分散体が0.001wt%未満の界面活性剤を含有する、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項16】
前記ナノ粒子が約100nm未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項17】
前記ナノ粒子が約50nm未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項18】
前記ナノ粒子が約20nm未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項19】
前記ナノ粒子が約10nm未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項20】
前記ナノ粒子が0.001〜2wt%の量で存在する、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項21】
薬が、イソプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、グルカゴン、アドレノクロム、トリプシン、エピネフリン、エフェドリン、ナルコチン、コデイン、アトロピン、ヘパリン、モルフィン、ジヒドロモルフィノン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、スコポラミン、メタピリレン、シアノコバラミン、テルブタリン、リミテロール、サルブタモール、イソプレナリン、フェノテロール、臭化オキシトロピウム、レプロテロール、ブデソニド、フルニソリド、シクレソニド、フォルモテロール、プロピン酸フルチカゾン、サルメテロール、プロカテロール、イプラトロピウルン、トリアムシノロンアセトニド、チプレダン、フランカルボン酸モメタゾン、コルヒチン、ピルブテロール、ベクロメタゾンジプロピオネート、オルシプレナリン、フェンタニル、ジアモルフィン、ジルチアゼム、ネオマイシン、セファロスポリン、ストレプトマイシン、ペニシリン、プロカインペニシリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、ヒドロキシテトラサイクリンコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾンおよびプレドニゾロン、クロモリンナトリウム、ネドクロミル、インシュリン、ペンタミジン、カルシトニン、アミロライド、インターフェロン、LHRH類似体、IDNAase、ヘパリン、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1に記載の安定した医薬品分散体。
【請求項22】
哺乳類の気道に、有効量の請求項1に記載の医薬品分散体を投与するステップを含んでなる、気道を通じて前記哺乳類を処置する方法。
【請求項23】
計量バルブを有する煙霧剤容器、および
容器内に配置された請求項1に記載の安定した医薬品分散体
を含んでなる定量吸入器。
【請求項24】
煙霧剤容器を提供するステップと、
前記容器に請求項1に記載の医薬品分散体を装填するステップと、
を含んでなる、煙霧剤分散体を製造する方法。
【請求項25】
薬を含んでなる分散した固相と、噴霧剤を含んでなる連続液相とを含んでなる分散体に、有効量のナノ粒子を添加するステップを含んでなる、医薬品分散体を安定化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526624(P2006−526624A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509816(P2006−509816)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/010847
【国際公開番号】WO2004/108118
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】