説明

安定化させたp53ペプチドおよびその使用法

ヒトp53と関連し、ならびにHMD2、または例えばHMD2またはHDM2のファミリーのメンバーに結合する治療剤の処理に、およびHMD2またはHDM2のファミリーのメンバーに結合する治療剤の同定における、アポトーシスを促進するのに有用なHDM2のファミリーのメンバーに結合する架橋されたペプチド。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒトp53転写因子は、DNA損傷1および細胞ストレス2に反応して細胞周期の停止およびアポトーシスを誘導することによって、悪性転換からの細胞の保護に重要な役割を果たす。E3ユビキチンリガーゼHDM2はp53のレベルを、p53のトランス活性化活性を中和し、p53を核外輸送し、およびこれをユビキチン化-プロテアソーム経路を介して分解させるように輸送する直接的な結合相互作用を介して制御する3,4。欠失、変異、またはHDM2の過剰発現のいずれかによるp53活性の喪失は、ヒトの癌における最も一般的な欠損である5。野生型p53の発現が持続する腫瘍は、天然のp53を安定化させる薬学的手法によって脆弱となる。これに関しては、HDM2の標的輸送は、インビトロおよびインビボにおいてp53活性を回復させるための、ならびに癌細胞をアポトーシスに再感作させるための確実な手法となりつつある6。HDMX(HDM4)も、p53の調節因子であることが判明しつつある。さらに、HDM2のp53結合界面と、HDMXのp53結合界面が似ていることが研究によって明らかにされている6a
【0002】
p53-HDM2タンパク質相互作用には、HDM2の表面の疎水性クレフト中に挿入するp53の15残基のαヘリックストランス活性化ドメインが関与する7。このドメイン中の3つの残基(F19、W23、およびL26)は、HDM2との結合に不可欠である8,9
【発明の概要】
【0003】
ヒトp53の一部分に関連した安定に架橋されたペプチド(「ステープルされたp53ペプチド」)について以下に説明する。これらの架橋されたペプチドには、HDM2へのp53の結合に重要であると考えられるp53の一部分のαヘリックス二次構造の安定化を補助することができる内部架橋(テザー(tether)とも称される)を一緒になって形成する少なくとも2つの修飾されたアミノ酸が含まれる。したがって、本明細書に記載する架橋されたポリペプチドは、架橋されていない対応するポリペプチドに対して生物活性を改善することが可能性である。ステープルされたp53ペプチドは、p53とHDM2の結合に干渉することによって、p53の破壊を阻害すると考えられている。本明細書に記載するステープルされたp53ペプチドは、例えば対象における様々な癌の処置などに治療的に使用することができる。例えば、p53の望ましくない低レベルまたは低活性を特徴とする癌および他の疾患、および/またはHDM2の活性の望ましくない高レベルを特徴とする癌および他の疾患。修飾されたペプチドは、不適切な細胞周期の停止およびアポトーシスの条件(例えば神経変性や免疫不全)に加えて、過剰な細胞の生存および増殖の条件(例えば癌や自己免疫)に至る、p53転写経路の調節異常と関連する任意の疾患の処置に有用である可能性がある。
【0004】
一つの局面において、本発明は、式(I)の修飾されたポリペプチド、またはその薬学的に許容される塩を特徴とする:

式中、
各R1およびR2は独立して、H、またはC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、もしくはヘテロシクリルアルキルであり;
R3は、アルキレン、アルケニレン、もしくはアルキニレン、または[R4'-K-R4]nであり;その各々は、0〜6個のR5で置換され;
R4およびR4'は独立して、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンであり(例えば、それぞれは独立して、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、もしくはC10のアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン)であり;
R5は、ハロ、アルキル、OR6、N(RO)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

、アジリジン、エピスルフィド、ジオール、アミノアルコールであり;
R6は、H、アルキル、または治療剤であり;
nは、2、3、4、または6であり;
xは、2〜10の整数であり;
wおよびyは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;かつ
各Xaaは独立して、アミノ酸(例えば、20種の天然のアミノ酸、または任意の非天然のアミノ酸の1種)であり;
ポリペプチドは、以下を除く、SEQ ID NO:1(ヒトp53)もしくはこのバリアント、SEQ ID NO:2もしくはこのバリアント、または本明細書に記載された別のポリペプチド配列の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む:(a)SEQ ID NO:1の8個の連続したアミノ酸内に、3、4、または6アミノ酸で隔てられた少なくとも1対のアミノ酸の側鎖が、式Iに示すアミノ酸対のα炭素に接続している連結基R3で置き換えられている;および(b)アミノ酸対の第一のα炭素は式Iに示すR1で置換されており、アミノ酸対の第二のα炭素は式Iに示すR2で置換されている。
【0005】
別の局面において、本発明は、式(II)の修飾されたポリペプチド、またはその薬学的に許容される塩を特徴とする:

式中、
各R1およびR2は独立して、H、またはC1〜C10のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、もしくはヘテロシクリルアルキルであり;
R3は、アルキレン、アルケニレン、もしくはアルキニレン、または[R4'-K-R4]nであり;その各々は、0〜6個のR5で置換され;
R4およびR4'は独立して、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン(例えば、それぞれは独立して、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、もしくはC10のアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン)であり;
R5は、ハロ、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

、アジリジン、エピスルフィド、ジオール、アミノアルコールであり;
R6は、H、アルキル、または治療剤であり;
nは、2、3、4、または6であり;
xは、2〜10の整数であり;
wおよびyは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;かつ
各Xaaは独立して、アミノ酸(例えば、20種の天然のアミノ酸または任意の非天然のアミノ酸の1種)であり;
R7は、例えば、チオカルバミン酸塩結合またはカルバミン酸結合を介して連結された、PEG、tatタンパク質、アフィニティー標識、標的化部分、脂肪酸由来のアシル基、ビオチン部分、蛍光プローブ(例えばフルオレセインもしくはローダミン)であり;
R8は、H、OH、NH2、NHR8a、NR8aR8bであり;
ポリペプチドは、以下を除くSEQ ID NO:1(ヒトp53)もしくはこのバリアント、SEQ ID NO:2もしくはこのバリアント、または本明細書に記載された別のポリペプチド配列の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む:(a)SEQ ID NO:1の8個の連続したアミノ酸内に、3、4、または6アミノ酸で隔てられた少なくとも1対のアミノ酸の側鎖が、式Iに示すアミノ酸対のα炭素に接続している連結基R3で置き換えられている;および(b)アミノ酸対の第一のα炭素は式IIに示すR1で置換されており、アミノ酸対の第二のα炭素は式IIに示すR2で置換されている。
【0006】
式Iまたは式IIについて、以下の態様を開示する。
【0007】
x=2(すなわちi+3結合)の場合、R3は、C7のアルキレン、アルケニレンの場合がある。アルケニレンの場合、1個または2個の二重結合が存在する場合がある。x=6(すなわちi+4結合)の場合、R3は、C1、C12、またはC13のアルキレンまたはアルケニレンの場合がある。アルケニレンの場合、1個または2個の二重結合が存在する場合がある。x=3(すなわちi+4結合)の場合、R3は、C8のアルキレン、アルケニレンの場合がある。アルケニレンの場合、1個または2個の二重結合が存在する場合がある。
【0008】
SEQ ID NO:1は、ヒトp53の配列である。ステープルされたペプチドは、配列

(SEQ ID NO:2;SEQ ID NO:1のアミノ酸14〜29に対応)を含む場合がある。ステープルされたペプチドは、配列

または配列

を含む場合もある。SEQ ID NO:1、2、3、および4のようなこれらの配列では、2、3、4、または6アミノ酸で隔てられた2アミノ酸の側鎖は、連結基R3によって置き換えられ得る。例えば、SEQ ID NO:5では、SerおよびProの側鎖を連結基R3と置換することができる。
【0009】
ステープルされたポリペプチドは、以下のアミノ酸配列の全体または一部(例えば、少なくとも10残基、少なくとも11残基、少なくとも12残基、少なくとも13残基)を含む場合がある:

式中、Xaa1、Xaa4、Xaa7、Xaa8、Xaa11、Xaa14、Xaa15のそれぞれは任意のアミノ酸(例えば20種の天然のアミノ酸のいずれか)。
【0010】
いくつかの条件では:
Xaa1=LeuもしくはGln、または連結基R3であり、
Xaa4=GluもしくはGln、または連結基R3であり、
Xaa7=Ser、または連結基R3であり、
Xaa8=Asp、またはAspおよびGlu以外の任意のアミノ酸(好ましくはAsn;例えば、Xaa8はAspもしくはAsnの場合がある)、または連結基R3であり、
Xaa11=Lysもしくは正に帯電したアミノ酸(好ましくはArg)、または連結基R3であり、
Xaa14=Proまたは連結基R3であり、
Xaa15=Glu、もしくはAspおよびGlu以外の任意のアミノ酸(好ましくはGln)、または連結基R3である。
【0011】
いくつかの条件では、ペプチドは、Xaa1=LeuもしくはGln、または連結基R3;Xaa4=GluもしくはGln、または連結基R3;Xaa7=Serまたは連結基R3;Xaa8=Asp、Asn、または連結基R3;Xaa11=Lys、Arg、または連結基R3;Xaa14=Proまたは連結基R3;Xaa15=Glu、Gln、または連結基R3であるSEQ ID NO:3を含む。ステープルされたペプチドでは、Glnが占める任意の位置は、代わりにGluの場合があり、およびGluが占める任意の位置は、代わりにGlnの場合がある。同様に、Asnが占める任意の位置は、代わりにAspの場合があり、およびAspが占める任意の位置は、代わりにAsnの場合がある。AsnまたはArg、およびGlnまたはGluの選択は、ステープルされたペプチドの望ましい電荷に依存する。
【0012】
場合によっては、ペプチドは、以下の配列を有するSEQ ID NO:3の一部分を含む:


【0013】
SEQ ID NO:3内では、架橋され得るアミノ酸対は、以下を含むが、これらに限定されない:5番目と12番目のアミノ酸;4番目と11番目のアミノ酸;7番目と11番目のアミノ酸;および7番目と14番目のアミノ酸。
【0014】
場合によっては、修飾されたペプチドは、HDM2(例えばGenBank(登録商標)アクセッション番号:228952;GI:228952)および/またはHDM4(HDMXとも呼ばれる;GenBank(登録商標)アクセッション番号:88702791;GI:88702791)に結合する。場合によっては、Phe6、Trp10、Leu13の1つまたは複数(例えば3つ全て)を別のアミノ酸、例えばAlaと置換することで、不活性なステープルされたペプチドを作製することが有用である可能性がある。
【0015】
他の有用なペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する非架橋ペプチドを含む:

配列中、Xaa1、Xaa4、Xaa7、Xaa8、Xaa11、Xaa14、Xaa15のそれぞれは任意のアミノ酸(例えば、任意の20種の天然のアミノ酸)。
【0016】
このような非架橋ペプチドは場合によっては:
Xaa1=LeuもしくはGln、または連結基R3であり、
Xaa4=GluもしくはGln、または連結基R3であり、
Xaa7=Ser、または連結基R3であり、
Xaa8=Asp、またはAspおよびGlu以外の任意のアミノ酸(好ましくはAsn)、または連結基R3であり、
Xaa11=Lys、もしくは正に帯電したアミノ酸(好ましくはArg)、または連結基R3であり、
Xaa14=Pro、または連結基R3であり、
Xaa15=Glu、もしくはAspおよびGlu以外の任意のアミノ酸(好ましくはGln)、または連結基R3である。
【0017】
場合によっては、非架橋ペプチドは、

の配列を有するSEQ ID NO:3の一部分を含む。
【0018】
場合によっては、修飾されたペプチドは例えば、PEG、脂肪酸、または抗体(例えば、修飾されたペプチドを、p53、HDM2、またはHDM4を発現する細胞に輸送する抗体)をさらに含む。
【0019】
場合によっては、各wは独立して、3〜15の整数である。場合によっては、各yは独立して、1〜15の整数である。場合によっては、R1およびR2は各々独立して、HまたはC1〜C6アルキルである。場合によっては、R1およびR2は各々独立してC1〜C3アルキルである。場合によっては、R1およびR2の少なくとも一方はメチルである。例えば、R1およびR2はいずれもメチルである。場合によっては、R3はアルキル(例えばC8アルキル)であり、およびxは3である。場合によっては、R3はC11アルキルであり、およびxは6である。場合によっては、R3はアルケニル(例えばC8アルケニル)であり、およびxは3である。場合によっては、xは6であり、およびR3はC11アルケニルである。場合によっては、R3は直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。場合によっては、R3

である。場合によっては、R3

である。場合によっては、R3

である。
【0020】
いくつかの例では、2つのα,α二置換された立体中心(α炭素)は、R立体配置またはS立体配置の両方にあるか(例えば、i、i+4架橋)、または一方の立体中心はRであり、および他方はSである(例えば、i、i+7架橋)。したがって、式Iは、

として示され、例えばxが3である場合、C'およびC’’二置換された立体中心は、両方ともR立体配置であるか、またはこれらは両方ともS立体配置であることができる。xが6である場合、C'二置換された立体中心はR立体配置であり、およびC’’二置換された立体中心はS立体配置である。R3二重結合は、EまたはZ立体化学的立体配置であってもよい。類似の立体配置は、すぐ上の式中のC'およびC"に対応する式IIの炭素について可能である。
【0021】
場合によっては、R3は、[R4-K-R4']nであり;ならびにR4およびR4'は独立して、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン(例えば、各々独立して、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、もしくはC10のアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンである。
【0022】
場合によっては、ポリペプチドは、架橋によって置換されるアミノ酸側鎖に加えて、SEQ ID NO:1〜4の任意の1、2、3、4、または5アミノ酸の変化を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
テザーは、アルキル、アルケニル、またはアルキニル部分(例えば、C5、C8、もしくはC11アルキル、またはC5、C8、もしくはC11アルケニル、またはC5、C8、もしくはC11アルキニル)を含むことができる。テザーアミノ酸は、α二置換することができる(例えばC1〜C3またはメチル)。[Xaa]yおよび[Xaa]wは独立して、p53ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:1〜4のどれでも)の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25またはそれ以上の連続したアミノ酸(好ましくは2もしくは5個の連続したアミノ酸)を含むことができるペプチドであり、[Xaa]xは、p53ペプチドの3もしくは6個の連続したアミノ酸を含むことができるペプチドである。
【0024】
本ペプチドは、p53ポリペプチドの8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50アミノ酸を含むことができる。このアミノ酸は、3または6アミノ酸で隔てられた1つもしくは複数の対のアミノ酸が、例えばR3を介して架橋を形成するアミノ酸置換物で置き換えられている以外は連続的である。したがって少なくとも2個のアミノ酸は、テザーアミノ酸またはテザーアミノ酸置換基により置き換えることができる。したがって、式Iは

のように表され:
[Xaa]y'、[Xaa]x、および[Xaa]y''は、それぞれ同じまたは異なるp53ペプチド由来の連続したポリペプチド配列を含むことができる。同じことは、式IIについてもあてはまる。
【0025】
本ペプチドは、p53ポリペプチドの10(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上)の連続したアミノ酸を含むことができ、3アミノ酸(または6アミノ酸)で隔てられた2つのアミノ酸のα炭素は、R3を介して連結され、2つのα炭素の一方はR1で置換され、他方はR2で置換され、それぞれはさらなるアミノ酸に結合したペプチドを介して連結している。
【0026】
場合によっては、本ポリペプチドは、p53分解のドミナントネガティブな阻害因子として作用する。場合によっては、本ポリペプチドは、蛍光部分もしくは放射性同位元素、または放射性同位元素をキレート可能な部分(例えば、Re、In、またはYの放射性同位元素にキレートされたメルカプトアセチルトリグリシンもしくは1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA))も含む。場合によっては、R1およびR2はメチルであり;R3はC8アルキル、C11アルキル、C8アルケニル、C11アルケニル、C8アルキニル、またはC11アルキニルであり;xは、2、3、または6である。場合によっては、本ポリペプチドは、PEGリンカー、tatタンパク質、アフィニティー標識、標的化部分、脂肪酸由来のアシル基、ビオチン部分、蛍光プローブ(例えばフルオレセインまたはローダミン)を含む。
【0027】
本明細書では、本明細書に記載された任意の化合物を対象に投与する段階を含む、対象を処置する方法についても記載する。場合によっては、方法は、追加の治療的薬剤、例えば化学療法剤を投与する段階も含む。
【0028】
ペプチドは、1又は複数の不斉中心を含むことができ、その結果ラセミ体およびラセミ混合物、単独のエナンチオマー、個別のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物、ならびに存在する任意のオレフィンの幾何異性体(例えばZすなわちシスおよびEすなわちトランス)を生じる。これらの化合物のそのような異性体型は全て、明白に本発明に含まれる。化合物は、複数の互変異性体型においても表され、このような場合、本発明は明白に、本明細書に記載する化合物の全ての互変異性体型を含んでいる(例えば、環システムのアルキル化は、複数の部位のアルキル化を生じてもよく、本発明は明白にそのような反応生成物を全て含む)。そのような化合物のそのような異性体型は全て、全ての結晶型と同様に含まれる。
【0029】
アミノ基とカルボキシル基の両方を含むアミノ酸は、α炭素と呼ばれる炭素に結合している。α炭素には、水素および側鎖も結合されている。適当なアミノ酸は、ペプチドにおいて認められる20種の一般的な天然のアミノ酸のD型およびL型の両異性体(例えば、A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、V(一文字略号として公知))に加え、有機合成または他の代謝経路により調製された天然および非天然のアミノ酸を含むが、これらに限定されるものではない。20の共通する天然アミノ酸の各々に対する側鎖の構造を以下の表に提供する。この表中で、各構造の右側の「-」は、α炭素への結合である。

【0030】
「非必須」アミノ酸残基は、その活性を根絶または実質的に変更することなく、ポリペプチドの野生型配列から変更することができる残基である。「必須」アミノ酸残基は、ポリペプチドの野生型配列から変更された場合に、ポリペプチド活性の根絶または実質的に根絶を生じる残基である。
【0031】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基で交換される置換である。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝した側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸である。
【0032】
記号

は、分子構造の一部として使用される場合、単結合、またはトランスもしくはシス二重結合を意味する。
【0033】
「アミノ酸側鎖」という用語は、アミノ酸のα-炭素に結合した部分を意味する。例えば、アラニンのアミノ酸側鎖はメチルであり、フェニルアラニンのアミノ酸側鎖はフェニルメチルであり、システインのアミノ酸側鎖はチオメチルであり、アスパラギン酸のアミノ酸側鎖はカルボキシメチルであり、チロシンのアミノ酸側鎖は4-ヒドロキシフェニルメチルであるなどである。他の非天然のアミノ酸側鎖も、例えば自然に生じるもの(例えば、アミノ酸代謝産物)または合成により生成されたもの(例えば、α二置換されたアミノ酸)などが含まれる。
【0034】
ポリペプチドという用語は、共有結合(例えばアミド結合)により連結された、2個またはそれよりも多い天然または合成のアミノ酸を包含している。本明細書に記載するようなポリペプチドは、完全長タンパク質(例えば、完全にプロセッシングされたタンパク質)に加え、より短いアミノ酸配列(例えば、天然のタンパク質の断片または合成ポリペプチド断片)を含む。
【0035】
「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の任意のラジカルを意味する。「アルキル」という用語は、直鎖または分枝鎖であることができ、指定された数の炭素原子を含む、炭化水素鎖を意味する。例えばC1-C10は、その基がその中に1〜10(を含む)個の炭素原子を有し得ることを示している。任意の数値指定がない場合、「アルキル」は、その中に1〜20個(を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。「アルキレン」という用語は、二価アルキル(すなわち-R-)を意味する。
【0036】
「アルケニル」という用語は、ZまたはEの幾何学的配置のいずれかの、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖であることができる炭化水素鎖を意味する。アルケニル部分は、指定された数の炭素原子を含む。例えばC2-C10は、その基がその中に2〜10(を含む)個の炭素原子を有し得ることを示している。「低級アルケニル」という用語は、C2-C8アルケニル鎖を意味する。任意の数値指定がない場合、「アルケニル」は、その中に2〜20(を含む)個の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0037】
「アルキニル」という用語は、1個または複数の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖であることができる炭化水素鎖を意味する。アルキニル部分は、指定された数の炭素原子を含む。例えばC2-C10は、その基がその中に2〜10(を含む)個の炭素原子を有し得ることを示している。「低級アルキニル」という用語は、C2-C8アルキニル鎖を意味する。任意の数値指定がない場合、「アルキニル」は、その中に2〜20(を含む)個の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0038】
「アリール」という用語は、各環の0、1、2、3、または4個の原子が、置換基により置換され得る、6炭素の単環式または10炭素の二環式芳香環システムを意味する。アリール基の例は、フェニル、ナフチルなどを含む。「アリールアルキル」という用語または「アラルキル」という用語は、アリールで置換されたアルキルを意味する。「アリールアルコキシ」という用語は、アリールで置換されたアルコキシを意味する。
【0039】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、より好ましくは3〜6個の炭素を有する、飽和および部分的に不飽和の環式炭化水素基を含み、ここでシクロアルキル基はさらに、任意に置換されてよい。好ましいシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0040】
「ヘテロアリール」という用語は、芳香族5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式の環システムで、単環式ならば1〜3個のヘテロ原子を、二環式ならば1〜6個のヘテロ原子を、または三環式ならば1〜9個のヘテロ原子を有するものを意味し、ここで該ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択され(例えば、単環、二環または三環であるならば、各々、炭素原子、1〜3、1〜6、または1〜9個のN、OもしくはSのヘテロ原子)、ここで各環の0、1、2、3または4個の原子は、置換基により置換されてよい。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、フリルまたはフラニル、イミダゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルまたはチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリルなどである。「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを意味する。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを意味する。
【0041】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式ならば1〜3個のヘテロ原子を、二環式ならば1〜6個のヘテロ原子を、または三環式ならば1〜9個のヘテロ原子を有する、非芳香族5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式の環システムを意味し、該ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択され(例えば単環、二環または三環であるならば、各々、炭素原子、および1〜3、1〜6、または1〜9個のO、NもしくはSのヘテロ原子)、ここで各環の0、1、2、3個の原子は、置換基により置換されてよい。ヘテロシクリル基の例は、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、アジリジニル、オキシリル、チリル(thiiryl)、モルホリニル、テトラヒドロフラニルなどである。
【0042】
「置換基」という用語は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基上の任意のその基の原子での「置換された」基を意味する。適当な置換基は、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、チオアルオッキシ、アリールオキシ、アミノ、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、アジド、およびシアノ基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の1種または複数の態様の詳細は、添付図面および以下の説明に記されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに「特許請求の範囲」から明らかであると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】SAH-p53ペプチドの合成、配列、および生化学的解析。(A)非天然アミノ酸を、文献に記載された手法で合成し、およびルテニウム触媒した閉環オレフィンメタセシスによって架橋した。(B)SAH-p53化合物は、p5314-29配列を記載の位置においてステープルすることで作製した。電荷、αヘリックス率、HDM2の結合親和性、細胞透過性、および細胞の生存を、各化合物について示す。(C、E)円二色性スペクトルによって、SAH-p53化合物のαヘリックス率が高まることが判明した。(D、F)FITC-ペプチドおよびHDM217-125を使用する蛍光偏光アッセイ法によって、特定のSAH-p53ペプチドに対するHDM2結合親和性がナノモル以下であることが判明した。注:UAH-p53-8は、SAH-p53-8の「ステープルされていない(unstapled)」型である。
【図2】SAH-p53-8は、p53転写経路を再活性化する。HDM2を過剰発現するSJSA-1細胞を、記載のペプチドに曝露し、p53、HDM2、およびp21に関するウエスタン解析を8〜30時間の処理によって実施した。
【図3】SAH-p53-8処理SJSA-1細胞のアポトーシスの再活性化。SAH-p53-8は、特異的で用量依存性の細胞毒性およびアポトーシスの誘導を示した。SAH-p53ペプチドで処理されたSJSA-1細胞の細胞生存アッセイ法(A)。SAH-p53ペプチドで処理されたSJSA-1細胞のカスパーゼ-3活性化アッセイ法(B)。SAH-p53ペプチド(25 μM)で処理されたSJSA-1細胞、HCT-116 p53+/+細胞、およびHCT-116 p53-/-細胞におけるカスパーゼ-3の活性化の比較(C)。
【図4】ペプチドSAH-p53-4のエレクトロスプレー質量スペクトル(正イオンモード)。
【図5】SAH-p53ペプチドが、タンパク質分解に対する安定性を高めるか否かを判定するために、野生型のp5314-29ペプチドおよびSAH-p53-4を血清にエクスビボで曝露した。SAH-p53-4は、修飾されていない野生型ペプチドの血清半減期(t1/2)よりほぼ4倍長い血清半減期を示した。
【図6】SAH-p53ペプチド1〜4が細胞透過性を有するか否かを判定するために、ジャーカットT細胞白血病細胞を、フルオレセイン化されたp53ペプチドと4時間インキュベート後に、洗浄し、トリプシン処理し、FACS解析を行って細胞の蛍光を評価した。検討したペプチドのなかで、細胞の蛍光を生じたものはなかった。
【図7】(A)SJSA-1細胞を、FITC-SAH-p53-5、および4.4 kDaのTRITC-デキストランと4時間にわたって処理した。共焦点顕微鏡による観察の結果、ピノソーム中でFITC-SAH-p53-5ペプチドがTRITC-デキストランと共存することが判明した。(B)FITC-SAH-p53-5の透過性が温度依存性か否かを評価するために、ジャーカットT細胞白血病細胞を、フルオレセイン化されたp53ペプチドと4時間にわたって4℃または37℃のいずれかでインキュベート後に、洗浄し、トリプシン処理し、FACS解析を行って細胞の蛍光を評価した。(C)細胞透過性の動態を見極めるために、ジャーカットT細胞白血病細胞をFITC-SAH-p53-5ペプチドに曝露し、細胞の蛍光をFACS解析によって、連続する時点で評価した。FITC-SAH-p53-5処理細胞は、細胞の蛍光の時間依存的な上昇を示した。(D)SJSA-1細胞を、FITC-野生型ペプチド、SAH-p53-8ペプチド、およびSAH-p53-8F19Aペプチドで4時間にわたって処理後に、FACSおよび共焦点顕微鏡による解析を行った。FITC-SAH-p53ペプチドによる処理後には細胞の蛍光が観察されたが、FITC-野生型p53ペプチドによる処理後には蛍光は観察されなかった。
【図8】SJSA-1細胞をFITC-ペプチドとインキュベート後に溶解し、抗FITCによってプルダウンした。天然のHDM2は、FITC-SAH-p53-8と共沈殿を生じたが、野生型または変異体のSAH-p53-8F19Aペプチドとは生じなかった。左:銀染色したゲル;右:ウエスタンブロット。
【図9】アポトーシスの指標としてのアネキシンV結合。RKO細胞を、様々な用量のペプチドで24時間にわたって処理後に、ヨウ化プロピジウムおよびFITC標識アネキシンVによって染色した。アポトーシスの誘導をFACSで定量し、データをFloJoソフトウェアで解析した。
【図10】ステープルされたペプチドの蛍光偏光結合アッセイ法。フルオレセイン化されたペプチド(5 nM)を、組換えHDM217-125(25 pM〜10 μM)と室温でインキュベートした。結合活性を蛍光偏光によって測定し、Kd値を直線回帰から得た。
【図11】細胞生存アッセイ法。SJSA-1骨肉腫細胞を、様々な濃度のSAH-p53-8のみと、または化学療法剤ドキソルビシン(20 μM)とともに24時間にわたって処理した。細胞の生存を、CellTiter-Glo(商標)生物発光試薬を添加することでアッセイし、プレートリーダーで読み取りを行った。
【図12】蛍光偏光による競合。フルオレセイン化された野生型のp5314-29(25 nM)を組換えHDM217-125とインキュベートした。非標識のSAH-p53を混合物中に滴定し、標識されたリガンドの置換を蛍光偏光によって測定した。
【図13】カスパーゼ-3活性化アッセイ法。SJSA-1骨肉腫細胞を、様々な濃度のSAH-p53と24時間にわたって処理した。次に細胞を、カスパーゼ-3特異的基質(Ac-DEVD-AMC)に曝露した。切断の結果として生じる蛍光をマイクロプレートリーダーで測定した。活性の特異性を見極めるために、一部のペプチドを、カスパーゼ-3を特異的に阻害することが既知の基質であるDEVD-CHOとインキュベートした。
【図14】マウスの腫瘍異種移植片を対象とした免疫組織化学的試験。それぞれ3種のSJSA-1由来の腫瘍異種移植片を含む2匹のマウスを、10 mg kg-1のSAH-p53-8(A)または溶媒(B)で12時間毎に2日間にわたって処理した。腫瘍異種移植片からパラフィン切片を得て、α-p53抗体を使用して染色した。HDM2の増幅に起因するp53の喪失は、非処理対照(B)では明らかであるが、キャピラリの近傍におけるp53の蓄積が、SAH-p53-8で処理した試料で見られる(A)。
【図15】ヒトp53のアミノ酸配列(GenBank(登録商標)アクセッション番号CAA42627;gi:50637)。
【図16−1】様々なステープルされたペプチドの配列。
【図16−2】様々なステープルされたペプチドの配列。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
ヒトp53に関連する内部で架橋されたαヘリックスドメインポリペプチドを、本明細書に記載する。これらのポリペプチドは、2つの非天然のアミノ酸間にテザー(架橋とも呼ばれる)を含み、このテザーは、ポリペプチドのαヘリックス二次構造を著しく増強する。一般にテザーまたは架橋(ステープルと呼ばれることもある)は、1個または2個のヘリックスターンの長さ(すなわち、約3.4個または約7個のアミノ酸)にわたって伸びる。したがって、iおよびi+3;iおよびi+4;またはiおよびi+7に位置したアミノ酸は、化学修飾および架橋の理想的な候補である。したがって、例えばペプチドが配列...Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa7、Xaa8、Xaa9...を有する場合(式中、「...」はさらなるアミノ酸の任意の存在を示す)、Xaa1とXaa4の間、またはXaa1とXaa5の間、またはXaa1とXaa8の間の架橋は、Xaa2とXaa5の間、またはXaa2とXaa6の間、またはXaa2とXaa9の間などの架橋のように有用である。本ポリペプチドは、配列をさらに安定化するかまたはより長い一連のポリペプチドの安定性を促進するかのいずれかのために、本ポリペプチド配列内の複数の架橋を含むことができる。これらのポリペプチドが、一部容易に合成するには長すぎる場合は、独立して合成され架橋されたペプチドを、ネイティブケミカルライゲーション(native chemical ligation)と称される手法により結合することができる(Bang, et al., J. Am. Chem Soc. 126:1377)。
【0046】
HDM2に高い親和性を示し、および対応する修飾されていないp53ペプチドとは対照的に、活性取り込み機構を介して細胞内に容易に侵入する、p53の安定化させたαヘリックス(stabilized alpha-helix)(SAH-p53)のペプチドを本明細書に記載する。後述するように、SAH-p53処理は、p53腫瘍抑制因子のカスケードを、p53応答性遺伝子の転写を誘導することによって再活性化し、これは、転写経路を標的とすることによって癌細胞を死滅させる、ステープルされたペプチドの最初の例となる。
【0047】
SAH-p53化合物を設計するために、発明者らは、合成オレフィン誘導体を、重要なHDM2結合残基を避ける位置に配置した。i、i+7位置に伸びる炭化水素のステープルをオレフィンメタセシスによって作製した(図1A)。それぞれ異なって位置する架橋を含む、4種類のSAH-p53ペプチドの初期パネルを合成した(図1B)。全-炭化水素型のi、i+7ステープルの配置の構造的影響を評価するために、発明者らは、円二色性(CD)実験を実施してαヘリックス率を見極めた。野生型のp53ペプチドは、pH 7.0で水中で11%のαヘリックス量を示したが、SAH-p53 1〜4は10〜59%のαヘリックス率を示した(図1Bおよび図1C)。HDM217-125およびSAH-p53 1〜4のFITC標識誘導体を使用した蛍光偏光結合アッセイ法によって、SAH-p53-4が、野生型ペプチドの対HDM2親和性よりほぼ3桁大きい対HDM2親和性を有するナノモル以下の相互作用因子(interactor)であることが判明した(図1Bおよび図1D)。SAH-p53-4は、タンパク質分解に対する高い安定性も示した(図5)。
【0048】
発明者らは、作製された最初のSAH-p53化合物が、無傷のジャーカットT細胞を透過できないことを明らかにした(図1Bおよび図6)。発明者らは、SAH-p53 1〜4が、生理学的pHで負に(-2)帯電していることに気づいた。正電荷は、あるクラスの細胞透過性ペプチドの特性である11。第二世代の化合物の開発の途上で、発明者らは、アスパラギン酸およびグルタミン酸を、アスパラギンおよびグルタミンと置換して、ペプチドの電荷を調整し、ならびにp53の核外輸送に関与することが報告済みの特定のアミノ酸(L14Q)、およびユビキチン化に関与することが報告済みの特定のアミノ酸(K24R)に変異を導入した4,12(図1B)。SAH-p53 5〜8は、αヘリックス量が2〜8.5倍に上昇し、HDM2に対する高い結合親和性を保持し、ならびに時間および温度に依存性の細胞への取り込みをFACSおよび共焦点顕微鏡による観察によって示した(図1B、図1E、図1F、および図7)。SAH-p53ペプチドに曝露させたRKO癌細胞またはSJSA-1癌細胞を使用した細胞生存アッセイ法の結果、核外輸送部位とユビキチン化部位の両方に点変異を含むSAH-p53-8が、細胞の生存に有害な影響を及ぼす、唯一の構造的に安定化した、細胞透過性で高親和性のHDM2結合分子であることが判明した(図1Bおよび図4A)。
【0049】
SAH-p53-8によるHDM2の標的輸送が、天然のp53のレベルを特異的に回復させることが可能か否かを判定するために、発明者らは、SJSA-1細胞を、野生型ペプチド、8ペプチド、および8F19Aペプチドで8〜30時間にわたって処理し、p53タンパク質のレベルをウエスタン解析でモニタリングした(図2)。SAH-p53-8に曝露させた細胞は、処理の18時間後にピークのある、高いp53タンパク質レベルを示した。24時間までのp53の再抑制は、p53によるHDM2の時間依存性のアップレギュレーションと相関しており、p53-HDM2の逆調節機構が損なわれていないことと矛盾がない13。SAH-p53-8は同様に、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21のアップレギュレーションを誘導した14。8で処理した細胞におけるp21のアップレギュレーションは、12時間の時点で検出され、18時間の時点でピークレベルに達した。ベースラインレベルは30時間後までに回復し、天然のp53の再抑制と矛盾がない。HDM2およびp21のレベルは、野生型または8F19Aで処理したSJSA-1細胞では変化せず、SAH-p53-8によるp53シグナル伝達経路の調節の特異性が浮き彫りとなった。
【0050】
天然のp53のSAH-p53-8を介する安定化が、アポトーシス経路を再活性化することによって癌細胞を阻害可能であるか否かを調べるために、発明者らは、生存アッセイ法およびカスパーゼ-3アッセイ法を、野生型、8、および8F19Aに24時間にわたって曝露したSJSA-1細胞を使用して実施した(図3)。野生型ペプチドおよび8F19Aペプチドは細胞の生存に影響しなかったが、SAH-p53-8はSJSA-1細胞の生存に用量依存性の阻害を示した(EC50=8.8 μM)(図3A)。切断されたカスパーゼ-3基質Ac-DEVD-AMCの蛍光モニタリング15によるカスパーゼ-3の活性化から、野生型ペプチドも8F19Aペプチドも何ら作用しないことが判明したが;8は、特異的カスパーゼ-3阻害剤DEVD-CHOによってブロックされる、用量依存性のカスパーゼ-3の活性化を引き起こし(EC50=5.8 μM)、SAH-p53-8が細胞の生存を、HDM2を過剰発現するSJSA-1細胞のアポトーシスを活性化することによって特異的に阻害することが判明した(図3B)。図3Cからわかるように、SJSA-1細胞に観察された、細胞の生存のSAH-p53-8を介した阻害は、結腸癌細胞株であるHCT 116細胞でも認められたが、p53を欠損するHCT 116細胞株のバリアント(HCT 116 p53-/-)では認められなかった。
【0051】
抗HDM2活性を有する多数の有機化合物およびp53ペプチド模倣物の同定8,16は、p53経路を操作することで臨床上の利益を達成するために有望である。ステープルされたペプチドベースのHDM2阻害剤を作製することによって、発明者らは、SAH-p53-8とHDM2の間のインサイチューにおける相互作用(図8)を明らかにし、そのアポトーシス促進活性が、p53経路の回復に由来することを確認した。
【0052】
RKO細胞を、様々な用量のペプチドで24時間にわたって処理後に、ヨウ化プロピジウムおよびFITC標識アネキシンVによって染色した。アポトーシスの誘導をFACSで定量し、データをFloJoソフトウェアで解析した。図9に示すように、p53-SAH-p53-6は、顕著なアポトーシスを生じた。
【0053】
蛍光偏光結合アッセイ法によって、HDM217-125に対するペプチドの結合を評価した。フルオレセイン化されたペプチド(5 nM)を、組換えHDM217-125(25 pM〜10 μM)と室温でインキュベートした。結合活性を蛍光偏光によって測定し、KD値を直線回帰から得た。この解析の結果を図10に示す。
【0054】
SAH-p53-8単独、またはドキソルビシン併用時の作用を以下の手順で調べた。SJSA-1骨肉腫細胞を、様々な濃度のSAH-p53-8単独、または化学療法剤ドキソルビシン(20 μM)を併用して24時間にわたって処理した。細胞の生存を、CellTiter-Glo(商標)生物発光試薬を添加することでアッセイし、プレートリーダーで読み取りを行った。この解析の結果を図11に示す。
【0055】
様々なSAH-p53が、HDM217-125に対する結合をめぐって野生型p5314-29と競合する能力を、以下の手順で評価した。フルオレセイン化された野生型p5314-29(25 nM)を組換えHDM217-125とインキュベートした。標識されていないSAH-p53を混合物中に滴定し、標識リガンドの置換を蛍光偏光によって測定した。この解析の結果を図12に示す。
【0056】
カスパーゼ-3の活性化に対する様々なペプチドの作用を、以下の手順で調べた。SJSA-1骨肉腫細胞を、様々な濃度のSAH-p53で24時間にわたって処理した。次に細胞を、カスパーゼ-3に特異的な基質に曝露した。切断の結果としての蛍光をマイクロプレートリーダーで測定した。活性の特異性を見極めるために、任意のペプチドを、カスパーゼ-3を特異的に阻害することが既知である基質DEVD-CHOとともにインキュベートした。この解析の結果を図13に示す。
【0057】
様々な長さのオレフィン系側鎖を含むα,α-二置換された非天然アミノ酸は、既知の方法で合成できる(Williams et al. 1991 J. Am. Chem. Soc. 113:9276;Schafrneister et al. 2000 J. Am. Chem Soc. 122:5891)。i+7ステープルに連結したiが用いられるペプチド(ヘリックスの2ターンが安定化)について、1つのS5アミノ酸が用いられ、1つのR8が用いられるか、または1つのS8アミノ酸が用いられ、1つのR5アミノ酸が用いられる。R8は、当初のキラル補助基がR-アルキル-立体異性体を与えることを除き、同じ経路を用いて合成される。同様に、8-ヨードオクテンを、5-ヨードペンテンの代わりに用いる。MBHA樹脂上の固相ペプチド合成(SPPS)を用いて、固体支持体上で阻害因子を合成する。
【0058】
アミノ酸およびペプチドの合成
上記の研究では、Fmoc保護されたα-アミノ酸(オレフィンアミノ酸であるFmoc-S5-OH、Fmoc-R8-OH、Fmoc-R8-OH、Fmoc-S8-OH、およびFmoc-R5-OH以外)、2-(6-クロロ-1-H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロリン酸(HCTU)、およびRink Amide MBHA樹脂は、Novabiochem(San Diego, CA)から購入した。ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1,2-ジクロロエタン(DCE)、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、およびピペリジンは、Sigma-Aldrichから購入し、供給された状態で使用した。オレフィンアミノ酸の合成は、文献1,2に記載されている。
【0059】
上記の研究におけるポリペプチドは、Fmoc固相ペプチド化学的手法でマニュアルによってRink amide MBHA樹脂樹脂上で、0.4〜0.6 mmol/g樹脂のローディングレベルで合成した。以下のプロトコルを使用した:
1.Fmoc保護基を、20%ピペリジン/NMPで30分間かけて除去した。
2.樹脂をNMPで5回洗浄した。
3.結果的に生じたFmoc保護アミノ酸を、30分間(架橋剤の場合は60分間)かけて、Fmoc-AA(10等量、架橋剤の場合は4等量)、HCTU(9.9等量、架橋剤の場合は3.9等量)、およびDIEA(20等量、架橋剤の場合は7.8等量)を使用してカップリングさせた。
4.樹脂をNMPで5回洗浄した。
5.工程1から繰り返す。
【0060】
全てのペプチドを、N末端のβ-アラニン残基においてキャップ処理した。N末端がアセチル化されたペプチドについてはCD実験を利用した。アセチル化反応は、既に概説したFmoc基の脱保護と、これに続く無水酢酸およびDIEAとの反応からなる。本明細書に示す他の全ての実験では、N末端においてフルオレセイン化されたペプチドを利用する。この目的で、N末端が脱保護されたペプチドを、フルオレセインイソチオシアナート/DMFに、DIEAの存在下で一晩曝露させた。
【0061】
ディスポーザブルのフリット(fritted)反応容器中の固体支持体上に引き続いて存在する、N末端のキャップが付加されたペプチドを対象に閉環メタセシス反応を実施した。樹脂を、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロライド(Grubbs First Generation Catalyst)/1,2-ジクロロエタンまたはジクロロメタンの10 mM溶液に2時間にわたって曝露した。触媒の添加、および2時間のメタセシス反応を1回繰り返した。樹脂に結合したペプチドをCH2Cl2で3回洗浄し、窒素気流下で乾燥した。
【0062】
ペプチドを樹脂から切断し、Reagent K(82.5% TFA、5%チオアニソール、5%フェノール、5%水、2.5% 1,2-エタンジチオール)に曝露させて脱保護し、メチル-tert-ブチルエーテルによって4℃で沈殿させて凍結乾燥した。
【0063】
凍結乾燥状態のペプチドを逆相HPLCで、C18カラム(Agilent)を使用して精製した。ペプチドを、LC-MSおよびアミノ酸解析によって特徴決定した。質量スペクトルを、正イオンモードのエレクトロスプレーか、またはMALDI-TOFののいずれかによって得た。代表的なLCトレースおよび質量スペクトルを以下に示し(図4-Aおよび図4-B)、全化合物の質量スペクトルデータを同様に以下の表2に示す。
(表2)様々なポリペプチドの質量スペクトルデータ

【0064】
円二色性(CD)分光法
円二色性(CD)分光法では、化合物をH2Oに溶解して10〜50 μMの濃度とした。スペクトルは、Jasco J-715分光偏光計で20℃で得た。スペクトルは、0.1 cmの光路長の石英キュベットを使用して、以下の測定パラメータによって得た:波長、185〜255 nm;ステップ解像度(step resolution)0.1 nm;速度、20 nm min-1;蓄積、6;バンド幅、1 nm。各ペプチドのヘリックス量は、文献3に記載された方法で計算した。
【0065】
エクスビボにおけるプロテアーゼ安定性
ペプチドのプロテアーゼ安定性を評価するために、フルオレセイン化されたペプチド(2.5 μg)を、新鮮なマウス血清(20 μL)とともに37℃で0〜24時間インキュベートした。フルオレセイン化された完全な化合物のレベルを、血清検体の液体窒素による瞬間凍結、凍結乾燥、0.1% TFAを含む1:1のCH3CN:H2Oによる抽出と、これに続く、495/530 nmの励起/放出設定における蛍光検出を使用するHPLCベースの定量によって決定した。
【0066】
タンパク質の作製および蛍光偏光
精製されたHDM217-125を以下の手順で調製した。N末端にヘキサヒスチジンタグおよびトロンビン切断部位を有するHDM217-125をコードするプラスミドを含む大腸菌BL21(DE3)を、カナマイシン含有およびクロラムフェニコール含有のLuria Brothで培養し、0.1 mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)によって誘導した。4時間後に細胞を3200 rpmで20分間の遠心分離によって回収し、緩衝液A(20 mM Tris pH 7.4、0.5 M NaCl)に再懸濁し、超音波処理によって溶解した。細胞残渣を、15,000 rpmで30分間の遠心分離によって沈殿させ、上清をNi-NTAアガロース(QIAGEN)とともに2時間インキュベートした。樹脂を緩衝液Aで洗浄し、5 mM〜500 mMの勾配のイミダゾールで溶出した。溶出されたタンパク質を含むフラクションを濃縮し、トロンビン切断緩衝液(5 mM CaCl2、20 mM Tris pH 7.4、1 μL mL-1 β-メルカプトエタノール、および0.8 U mL-1トロンビン)で1:1に希釈した。切断反応物を4℃で一晩インキュベートした。反応物を2 mLに濃縮し、ゲル濾過でG75カラムを使用して精製した。タンパク質の純度を、SDS-PAGE、FPLC、およびMALDI-TOFで評価し、>90%であると判定した。その内容を、結果として得られたペプチド断片の消化と、続く質量分析によって、さらに確認した。
【0067】
フルオレセイン化された化合物(LT=5〜25 nM)を、結合アッセイ法緩衝液(140 mM NaCl、50 mM、Tris pH 8.0)を溶媒とするHDM217-125とともに室温でインキュベートした。結合活性を、スターバーを含むキュベット、またはSpectramax M5 Microplate Reader(Molecular Devices)を使用して、Perkin-Elmer LS50Bルミネセンス分光光度計による蛍光偏光によって測定した。Kd値を、用量反応曲線の非直線回帰解析によって、Prismソフトウェア4.0 Graphpadを使用して決定した。LT<Kd、およびLT?Lfreeと仮定される化合物については、結合等温曲線を以下の方程式に適合させた:

式中、Pは測定された偏光値であり、Pfは遊離の蛍光リガンドの偏光であり、Pbは結合リガンドの偏光であり、およびRTは受容体/タンパク質濃度である。
【0068】
LT>Kdの化合物については、LT≒Lfreeという仮定は、リガンドの枯渇のために維持されない。したがって結合等温曲線は、より明示的な以下の方程式に適合させた:

式中、Pは測定された偏光値であり、Pfは遊離の蛍光リガンドの偏光であり、Pbは結合リガンドの偏光であり、LTは蛍光リガンドの総濃度であり、およびRTは受容体/タンパク質濃度である4。各データ点は、少なくとも3回実施された実験条件の平均を示す。
【0069】
フローサイトメトリー
ジャーカットT細胞白血病細胞を、10%ウシ胎児血清、100 U mL-1ペニシリン、100 μg mL-1 2 mMグルタミン、50 mM Hepes pH 7、および50 μM β-メルカプトエタノールを含むRPMI-1640(Gibco)培地で成長させた。SJSA-1細胞を、10%ウシ胎仔血清および100 U mL-1ペニシリンが添加されたマッコイ5A培地(ATCC)で培養した。ジャーカット細胞(1ウェルあたり50,000細胞)を、フルオレセイン化されたペプチド(10 μM)で37℃で最長4時間にわたって処理した。培地で洗浄後、細胞をトリプシン(0.25%;Gibco)に曝露して消化し(30分間、37℃)、PBSで洗浄し、0.5 mg mL-1のヨウ化プロピジウム(BD Biosciences)を含むPBSに懸濁した。細胞の蛍光およびヨウ化プロピジウムが陽性であることを、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)およびFlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用して解析した。同じ実験を、4℃で30分間の細胞のプレインキュベーションと、これに続く、フルオレセイン化されたペプチドとの4℃で4時間のインキュベーションによって行い、蛍光標識の温度依存性を評価した。
【0070】
共焦点顕微鏡による観察
ジャーカットT細胞白血病細胞を、フルオレセイン化された化合物とともに37℃で24時間インキュベートした。PBSで洗浄後に、細胞を600 rpmで5分間かけて、Superfrostプラススライドガラス(Fisher Scientific)上にサイトスピンした。細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄し、TOPRO-3ヨウ化物(100 nM;Molecular Probes)とともにインキュベートして核を対比染色し、Vectashield封入剤(Vector)で処理し、共焦点顕微鏡(BioRad 1024またはNikon E800)で可視化した。
【0071】
類似の様式で、SJSA-1骨肉腫細胞(1x105細胞)を37℃で24時間、Lab-Tek(商標)-CC2 Chamber Slides(Nunc)中で、フルオレセイン化された化合物とともにインキュベートした。PBSで洗浄後に、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄し、DAPIを含む(核の対比染色用)Vectashield封入剤(Vector)で処理し、カバースリップをかぶせ、共焦点顕微鏡(BioRad 1024またはNikon E800)で可視化した。
【0072】
ウエスタンブロッティング
37℃でインキュベートしたSJSA-1骨肉腫細胞(1x106)を、無血清培地を溶媒とするp53ペプチド(20 μM)で4時間にわたって処理後に、血清を交換してさらに4〜26時間、追加のインキュベーションを行った。細胞を溶解し(20 mM Tris-HCl pH 8.0、0.8% SDS、1 mM PMSF、1 U mL-1ベンゾナーゼヌクレアーゼ)、粗溶解物を短時間の遠心分離によって清澄化し、総タンパク質濃度をPierce BCAタンパク質アッセイ法で決定した。5 μgの全タンパク質を含むアリコートを、4〜12%のBis-Trisポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)に流した。タンパク質を、p53に特異的な抗体(DO-1クローン;Calbiochem)、HDM2に特異的な抗体(IF2クローン;EMD Biosciences)、p21に特異的な抗体(EA10クローン;Calbiochem)、およびβ-アクチンに特異的な抗体(Sigma-Aldrich)を使用して、化学発光試薬(Perkin Elmer)によって検出した。
【0073】
細胞生存アッセイ法およびアポトーシスのハイスループットアッセイ法
SJSA-1骨肉腫細胞(1ウェルあたり4x105細胞)を96ウェルプレートでインキュベートし、無血清培地に溶解したp53ペプチドで4時間にわたって処理後に、血清を交換して20時間の追加のインキュベーションを行った。細胞の生存を、CellTiter-Glo(商標)生物発光試薬(Promega)を添加し、発光をSpectramax M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で読み取ることでアッセイした。アポトーシスの規模を、カスパーゼ-3活性を、細胞をカスパーゼ-3に特異的な基質(Oncogene)に曝露して検出することで測定した。基質の切断の結果としての蛍光を、Spectramax M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。
【0074】
FITC-SAH-p53ペプチドと内因性HDM2の共免疫沈殿
SJSA-1骨肉腫細胞(1x106)を、無血清培地を溶媒とするFITC-p53ペプチド(15 μM)で4時間処理した後に、血清を交換して追加の8時間のインキュベーションを行った。細胞を、血清を含む培地およびPBSで十分に洗浄し、溶解緩衝液(50 mM Tris pH 7.6、150 mM NaCl、1 % Triton-X100、1 mM PMSF、1 U mL-1ベンゾナーゼヌクレアーゼ[EMD Biosciences]、およびコンプリートプロテアーゼインヒビター剤[Roche])に室温で曝露した。続く全ての過程は、いずれも4℃で実施した。抽出物を遠心分離し、上清をプロテインA/Gセファロース(0.5 mLの溶解物あたり50 μLの50%ビーズスラリー;Santa Cruz Biotechnology)とインキュベートした。清澄化済みの上清(500 μL)を遠心分離して回収し、10 μLのヤギ抗FITC抗体(AbCam)と1.5時間インキュベート後に、プロテインA/Gセファロースとさらに1.5時間インキュベートした。免疫沈降反応物を沈殿させ、溶解緩衝液で3回洗浄した。沈殿したタンパク質を、SDSを含むローディング緩衝液に懸濁し、沸騰させ、上清を4〜12%のBis-Trisゲル(Invitrogen)でSDS-PAGEで処理した。タンパク質を、Immobilon-P膜(Millipore)にブロットした。ブロック後に、ブロットを、3% BSA/PBSに溶解した希釈率1:100のマウス抗ヒトHDM2抗体(IF2クローン;EMD Biosciences)、または希釈率1:200のウサギ抗FITC抗体(Zymed)のいずれかとともにインキュベート後に、抗マウスもしくは抗ウサギの西洋ワサビペルオキシダーゼ結合IgG(Pharmingen)とインキュベートした。HDM2タンパク質およびFITCペプチドを、Western Lightning(商標)化学発光試薬(Perkin Elmer)を使用して可視化し、フィルムを露光した。ゲルを、銀染色用キット(Bio-Rad)を製造業者の指示書に従って使用して染色した。
【0075】
ポリペプチド
場合によっては、本明細書に記載する炭化水素テザー(すなわち、架橋)はさらに操作することができる。一例として、炭化水素アルケニルテザーの二重結合(例えば、ルテニウム触媒した閉環メタセシス(RCM)を用いて合成された)は、酸化され(例えば、エポキシ化またはジヒドロキシル化を介して)、以下の化合物のひとつを提供する。

エポキシド部分またはひとつの遊離ヒドロキシル部分のいずれかは、さらに官能基化することができる。例えばエポキシドは、求核試薬により処理され、これは例えばタグ(例えば、放射性同位元素または蛍光タグ)の結合に使用することができる追加の官能性を提供する。このタグは、化合物の体内の所望の位置への指示、または体内の化合物の位置の追跡を補助するために使用することができる。あるいは、追加の治療剤を、官能基化されたテザーへ化学的に付着することができる(例えば、ラパマイシン、ビンブラスチン、タキソールなどの抗癌剤)。このような誘導体化は、代わりに、ポリペプチドのアミノもしくはカルボキシ末端の合成操作によるか、またはアミノ酸側鎖を介して実現することができる。他の物質を、例えばポリペプチドの細胞への進入を促進する物質など、官能基化されたテザーに付着させることができる。
【0076】
炭化水素テザーが説明される一方で、他のテザーも想起される。例えば、このテザーは、エーテル、チオエーテル、エステル、アミンまたはアミド部分の1種または複数を含むことができる。場合によっては、天然のアミノ酸側鎖を、このテザーへ組込むことができる。例えば、テザーは、セリンのヒドロキシル、システインのチオール、リシンの第1級アミン、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸の酸、またはアスパラギンもしくはグルタミンのアミドなどの官能基とカップリングすることができる。したがって、2個の非天然のアミノ酸のカップリングにより作製されたテザーを使用するよりもむしろ、天然のアミノ酸を用いテザーを作製することが可能である。天然のアミノ酸と共に1個の非天然のアミノ酸を使用することも可能である。
【0077】
さらにテザーの長さは変動することが想起される。例えばα-ヘリックス二次構造上に比較的高度の拘束を提供することが望ましい場合には、より短い長さのテザーを使用することができるのに対し、α-ヘリックス二次構造上により少ない拘束を提供することが望ましい場合には、したがって比較的長いテザーが望ましい。
【0078】
加えて、アミノ酸iからi+3、iからi+4;および、iからi+7に広がるテザーの例が、主としてαヘリックスの単一面上にあるテザーを提供するために説明されているが、これらのテザーは、多くのアミノ酸の任意の組み合わせに広がるように合成することができる。
【0079】
場合によっては、αヘリックス二次構造の安定性を改善するために、α二置換されたアミノ酸がこのポリペプチドにおいて使用される。しかしモノ-α置換基(例えば、テザーアミノ酸)の使用も想起される場合は、α二置換されたアミノ酸は不要である。
【0080】
当業者に理解されるように、本明細書に記載する化合物の合成法は、当業者には明らかであると思われる。加えて所望の化合物を得るために、様々な合成工程を、別の手順または順番で行うことができる。本明細書に記載する化合物の合成において有用な合成化学の転換および保護基の方法論(保護および脱保護)は、当該技術分野において公知であり、ならびに例えばR. Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers (1989);T. W. Greene and P. G. M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、3d. Ed.、John Wiley and Sons (1999);L. Fieser and M. Fieser、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);および、L. Paquette編集、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)およびそれらの続版に説明されたものを含む。
【0081】
本発明のペプチドは、化学合成法により生成することができ、これは当業者に周知である。例えば、Fields et al.、Chapter 3、「Synthetic Peptides: A User's Guide」、Grant, W. H.編集 Freeman & Co.、New York、NY、1992、p.77を参照のこと。ここでペプチドは、例えばApplied Biosystems Peptide Synthesizer Model 430Aまたは431上で、側鎖が保護されたアミノ酸を使用する、t-BocまたはF-mocケミストリーのいずれかにより保護されたα-NH2による固相合成の自動Merrifield技術を用いて合成することができる。
【0082】
本明細書に記載するペプチドを作製するひとつの方法は、固相ペプチド合成(SPPS)を使用する。C末端アミノ酸は、リンカー分子との、酸に不安定な結合を介して、架橋したポリスチレン樹脂に付着される。この樹脂は、合成に使用される溶媒中に不溶性であり、このことは、過剰な試薬および副産物の洗浄除去を、比較的単純かつ迅速なものとしている。N末端は、Fmoc基により保護され、これは酸の中で安定しているが、塩基により除去することができる。任意の側鎖の官能基は、塩基に安定し、酸に不安定な基により保護される。
【0083】
比較的長いペプチドは、未変性ケミカル連結を使用し、個々の合成ペプチドの結合により作製される。あるいは、比較的長い合成ペプチドは、周知の組換えDNA技術を用い合成することができる。このような技術は、詳述されたプロトコールを伴う周知の標準マニュアルにおいて提供される。本発明のペプチドをコードしている遺伝子を構築するために、そのアミノ酸配列は、逆に翻訳され、アミノ酸配列をコードしている核酸配列、好ましくはそこで遺伝子が発現される生物に最適であるコドンを伴う核酸配列を得ることができる。次に、典型的にはこのペプチドおよび必要ならば任意の調節エレメントをコードしているオリゴヌクレオチドの合成により、合成遺伝子が作製される。合成遺伝子は、適当なクローニングベクターへ挿入され、および宿主細胞へ形質移入される。その後このペプチドは、選択された発現システムおよび宿主に適した適当な条件下で発現される。このペプチドは、常法により精製および特徴決定される。
【0084】
これらのペプチドは、例えば、Advanced Chemtechから入手可能なハイスループット多チャネルコンビナトリアル合成装置を使用して、ハイスループット、コンビナトリアル様式で作製することができる。修飾されたポリペプチド内で、従来の1つまたは複数のペプチド結合は、体内のポリペプチドの安定性を増大し得る異なる結合によって置き換えられている。ペプチド結合は以下によって置き換えられ得る:レトロインベルソ(retro-inverso)結合(C(O)-NH);減少したアミド結合(NH-CH2);チオメチレン結合(S-CH2またはCH2-S);オキソメチレン結合(O-CH2またはCH2-O);エチレン結合(CH2-CH2);チオアミド結合(C(S)-NH);トランスオレフィン結合(CH=CH);フルオロ置換トランスオレフィン結合(CF=CH);ケトメチレン結合(C(O)-CHR)またはCHR-C(O)、式中RはHまたはCH3;およびフルオロ-ケトメチレン結合(C(O)-CFRまたはCFR-C(O)、式中RはHまたはFまたはCH3)。
【0085】
これらのポリペプチドはさらに、以下によって修飾され得る:アセチル化、アミド化、ビオチン化、シナモイル化(cinnamoylation)、ファルネシル化、蛍光標識化、ホルミル化、ミリストイル化、パルミトイル化、リン酸化(Ser、Tyr、またはThr)、ステアロイル化、スクシニル化、およびスルフリル化。本発明のポリペプチドはまた、例えばポリエチレングリコール(PEG)、アルキル基(例えばC1-C20直鎖または分岐アルキル基)、脂肪酸ラジカル、およびそれらの組合わせに共役してもよい。
【0086】
処置方法
本発明は、低下したp53活性と関連した障害のリスクがある(または感受性がある)またはその障害を有する対象を処置する予防的および治療的方法の両方を提供する。これは、ポリペプチドがHDM2及び/又はHDMXへのp53結合の阻害因子として作用すると予測されるためである。本明細書において使用される「処置」という用語とは、疾患、疾患の症状もしくは疾患への素因の治癒、回復、軽減、緩和、変更、救済、改善、改良、もしくは影響することを目的として、疾患、疾患の症状もしくは疾患への素因を有する患者への治療剤の適用もしくは投与、または患者から単離された組織もしくは細胞株への治療剤の適用もしくは投与と定義される。治療剤は、小型分子、ペプチド、抗体、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本願明細書に記載のポリペプチドは、癌および新生物性状態を処置、予防、および/または診断するために使用することができる。本明細書において使用される「癌」、「過増殖物」および「新生物」という用語は、自律増殖能、すなわち迅速に繁殖する細胞増殖により特徴付けられる異常な状態または条件を有する細胞を意味する。過増殖性および新生物性の病態は、病原性として、すなわち病態の特徴もしくは構成として分類することができるか、または非病原性として、すなわち正常からは逸脱しているが病態には関連していないとして分類することができる。この用語は、組織病理学的型または侵襲の段階に関わりなく、全ての種類の癌性増殖または腫瘍形成性プロセス、転移性組織または悪性転換された細胞、組織もしくは臓器を含むことを意味する。「病原性過増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖を特徴とする病態において生じる。非病原性過増殖性細胞の例は、創傷修復に関連した細胞の増殖を含む。
【0088】
細胞の増殖および/または分化の障害の例は、癌、例えば癌腫、肉腫、または転移性障害を含む。本化合物(すなわちポリペプチド)は、骨肉腫、結腸癌、乳癌、T細胞癌、およびB細胞癌の抑制のための新規治療剤として作用することができる。本ポリペプチドはまた、粘液性類表皮癌、網膜芽腫、および髄芽腫を処置するために有用である可能性がある。本化合物は、p53の活性および/または発現が低下している細胞(特に該細胞は少なくとも活性なp53を産生する)の望ましくない増殖に関連する疾患の処置に使用することができる。
【0089】
増殖性障害の例は、造血系新生物性障害を含む。本明細書において使用される「造血系新生物性障害」という用語は、例えば、骨髄系、リンパ系もしくは赤血球系統、またはそれらの細胞の前駆体から生じる、造血起源の過形成細胞および/または新形成細胞が関連した疾患を含む。例示的な疾患には、急性白血病、例えば赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病が含まれる。骨髄系障害の追加例は、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)を含むが、これらに限定されるものではなく(Vaickus, L. (1991) Crit Rev. in Oncol./Hemotol. 11:267-97において検証);リンパ系悪性疾患転移は、B細胞系ALLおよびT細胞系ALLを含む急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、多発性骨髄腫、毛様細胞性白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を含むが、これらに限定されるものではない。悪性リンパ腫の追加例は、非ホジキンリンパ腫およびそれらの変種、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大型顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン疾患およびリード-スターンバーグ疾患を含むが、これらに限定されるものではない。
【0090】
乳房の細胞増殖性および/または分化性の障害の例は、例えば上皮過形成、硬化性腺疾患、および小管乳頭腫などを含む、増殖性乳房疾患;例えば、線維腺腫などの間質性腫瘍、葉状腫瘍、および肉腫、ならびに大管乳頭腫のような上皮腫瘍などの、腫瘍;原位置の腺管癌(パジェット病を含む)および原位置の小葉癌を含む原位置(非侵襲性)癌腫、ならびに侵襲性腺管癌、侵襲性小葉癌、髄様癌、膠様癌(粘液性癌腫)、管状腺癌、および侵襲性乳頭状癌を含むが、これに限定されない侵襲性(浸潤する)癌腫、ならびにその他の悪性新生物を含む、乳房の癌腫を含むが、これらに限定されるものではない。男性乳房の障害は、女性化乳房および癌腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0091】
薬学的組成物および投与経路
本明細書において使用される、本明細書に説明した式の化合物を含む本発明の化合物は、それらの薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグを含むように定義される。「薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ」は、レシピエントへの投与の場合に、本発明の化合物を(直接または間接に)提供することが可能であるような、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、このような化合物が哺乳類に投与された場合に、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増大する(例えば、経口投与された化合物が血中により迅速に吸収されることを可能にすることにより)か、または親種と比べ親化合物の生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への送達を増強するものである。好ましいプロドラッグは、水への溶解度または消化管膜を通る能動輸送を増強する基が、本明細書に記載する式の構造に付加されている誘導体を含む。
【0092】
本発明の化合物は、選択的生物学的特性を増強する適当な官能性を付加することにより修飾されてもよい。このような修飾は、当該技術分野において公知であり、かつ所定の生物学的区画(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的透過を増大し、経口のアベイラビリティを増加し、注射による投与を可能にするために溶解度を増加し、代謝を変更しおよび排泄率を変更するものを含む。
【0093】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機および有機の酸および塩基に由来するものを含む。適当な酸塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロメチルスルホネート、およびウンデカン酸塩を含む。適当な塩基に由来する塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN-(アルキル)4+塩を含む。本発明は、本明細書に明らかにされた化合物の塩基性窒素含有基の四級化も想起している。水または油へ溶解性または分散性の生成物は、このような四級化により得ることができる。
【0094】
本明細書に記載する式の化合物は、例えば、注射により、静脈内、動脈内、皮内、腹腔内、筋肉内もしくは皮下に;または、経口、口腔内、鼻腔内、経粘膜、局所的、眼用調製物、もしくは吸入により、用量約0.001〜約100mg/kg体重の範囲で、もしくは具体的薬物の必要要件に従い、投与することができる。本明細書の方法は、所望のまたは言及された作用を実現するのに有効な量の化合物または化合物組成物を投与することを企図している。典型的には、本発明の薬学的組成物は、1日に約1〜約6回で、あるいは連続注入として投与される。このような投与は、慢性または急性の療法として使用することができる。単位剤形を製造するために担体物質と一緒にすることができる活性成分の量は、処置される宿主および投与の具体的様式に応じて変動すると考えられる。典型的調製物は、約5%〜約95%の活性化合物(w/w)を含有すると考えられる。あるいは、このような調製物は、約20%〜約80%の活性化合物を含有する。
【0095】
先に言及したものよりもより低いまたはより高い投与量が、必要なこともある。任意の特定の患者に関する具体的用量および治療方式は、使用される具体的化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排泄率、併用薬、疾患、状態または症状の重症度および経過、患者の疾患、状態または症状に対する素因、および治療担当医の判断を含む、様々な要因によって決まると考えられる。
【0096】
患者の状態の改善時には、必要ならば、本発明の化合物、組成物または組み合わせの維持量が投与されてよい。その後改善された状態が維持されるレベルへ、用量または投与頻度、または両方が、症状の関数として減量される。しかし患者は、疾患症状の何らかの再発を基に、長期にわたり断続的処置を必要とすることができる。
【0097】
本発明の薬学的組成物は、本明細書に記載する式の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩;例えば、モルヒネまたはコデインを含む、追加の物質;ならびに、任意の薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルを含有する。本発明の別の組成物は、本明細書に記載する式の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩;および、薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルを含有する。本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の式の化合物に加え、存在するならば追加の治療剤を、疾患または疾患症状の変調を実現するのに有効な量で含む。「薬学的に許容される担体または補助剤」という用語は、患者へ本発明の化合物と一緒に投与することができ、ならびに化合物の治療量を送達するのに十分な用量で投与した場合にそれらの薬理学的活性を破壊せずおよび無毒であるような、担体または補助剤を意味する。
【0098】
本発明の薬学的組成物中で使用することができる薬学的に許容される担体、補助剤およびビヒクルは、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)、例えばd-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネートなど、薬学的剤形で使用される界面活性剤、例えばTweensまたは他の同様の高分子送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和した植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含むが、これらに限定されるものではない。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンのようなシクロデキストリン類も、本明細書に記載する式の化合物の送達を増強するために、有利に使用することができる。
【0099】
本発明の薬学的組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所的、直腸、鼻腔内、口腔内、膣内または埋込み式貯蔵庫を介して投与してもよく、好ましくは経口投与または注射による投与である。本発明の薬学的組成物は、任意の通常の無毒の薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルを含んでもよい。場合によってはこの製剤のpHは、薬学的に許容される酸、塩基または緩衝液により、製剤された化合物またはその送達型の安定性を増強するように調節される。本明細書において使用される非経口という用語とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、陰嚢内、鞘内、病巣内および頭蓋内の注射または注入技術を含む。
【0100】
この薬学的組成物は、無菌の注射可能な調製物の形、例えば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液であることができる。この懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤(例えばTween 80など)および懸濁化剤を使用し、当該技術分野において公知の技術に従い製剤することができる。無菌の注射可能な調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール溶液のような、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な液体または懸濁液であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒の中で使用されるものは、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒として、通常利用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の(bland)不揮発油を使用することができる。オリーブ油またはひまし油、特にそれらのポリオキシエチレン型のような、天然の薬学的に許容される油分である、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射可能な調製物において有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、乳剤および/または懸濁剤のような、薬学的に許容される剤形の製剤において通常使用される、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、またはカルボキシメチルセルロースもしくは同様の分散剤を含むこともできる。薬学的に許容される固形、液体、または他の剤形の製造において通常使用される、他の通常使用される界面活性剤、例えばTweensまたはSpansおよび/または他の同様の乳化剤またはバイオアベイラビリティ増加剤も、製剤目的で使用することができる。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、乳剤および水性懸濁剤、分散剤および液剤を含むが、これらに限定されるものではない任意の経口的に許容される剤形で、経口投与することができる。経口使用するための錠剤の場合、通常使用される担体は、乳糖およびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も、典型的には添加される。カプセル剤での経口投与のためには、有用な希釈剤は、乳糖および無水コーンスターチである。水性懸濁剤および/または乳剤が経口的に投与される場合は、活性成分は、油相中に懸濁または溶解され、乳化剤および/または懸濁化剤と組合わせられる。望ましいならばある甘味剤および/または矯味矯臭剤および/または着色剤を添加することができる。
【0102】
本発明の薬学的組成物は、直腸投与のために、坐剤の形で投与することもできる。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温では固形であるが直腸温度で液体であり、その結果直腸中で溶融し活性成分を放出するような、適当な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製することができる。このような物質は、ココアバター、ビーズワックスおよびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本発明の薬学的組成物は、鼻腔用エアゾールまたは吸入により投与することができる。このような組成物は、薬学的製剤の技術分野において周知の技術に従い調製され、ならびにベンジルアルコールまたは他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティを促進するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の当該技術分野において公知の溶解剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の溶液として調製されてよい。
【0104】
本発明の組成物が、本明細書に記載する式の化合物と1種または複数の追加の治療的または予防的物質の組み合わせを含有する場合、化合物および追加の物質の両方は、単剤療法様式で通常投与される用量の約1〜100%、より好ましくは約5〜95%の間の用量レベルで存在しなければならない。追加の物質は、反復投与様式の一部として、本発明の化合物とは個別に投与されてもよい。あるいはこれらの物質は、単独の組成物中に本発明の化合物と一緒に混合された、単位剤形の一部であってもよい。
【0105】
ポリペプチドの修飾
ステープルされたポリペプチドは、薬剤、トキシン、ポリエチレングリコールの誘導体;第二のポリペプチド;炭水化物などを含む場合がある。ポリマーまたは他の薬剤が、ステープルされたポリペプチドに連結される部位は、組成物が実質的に均一となる際に望ましいようにすることができる。
【0106】
ポリエチレングリコール(PEG)分子の添加は、ポリペプチドの薬物動態学的および薬力学的な特性を改善することができる。例えばPEG化は、腎クリアランスを低下可能であり、より安定な血漿濃度につながる可能性がある。PEGは水溶性のポリマーであり、

の式のポリペプチドに連結した状態で存在する場合がある。ここで、式中、nは2〜10,000であり、XはHまたは末端修飾(terminal modification)、例えばC1-4アルキルであり;およびYはアミド、カルバミン酸塩、またはポリペプチドのアミン基(リシンのイプシロンアミンもしくはN末端を含むが、これらに限定されない)に対する尿素結合である。Yは、チオール基(システインのチオール基を含むが、これに限定されない)に対するマレイミド結合の場合もある。PEGをポリペプチドに直接的または間接的に連結させる他の方法は当業者に既知である。PEGは、直鎖でも分枝鎖でもよい。様々な官能基化された誘導体を含む、様々な形状のPEGが市販されている。
【0107】
骨格に分解可能な結合を有するPEGを使用することができる。例えば、PEGを、加水分解を受けるエステル結合によって作製することができる。分解性のPEG連結を有するコンジュゲートは、WO 99/34833;WO 99/14259、および米国特許第6,348,558号に記載されている。
【0108】
ある態様では、高分子ポリマー(例えばPEG)を、本明細書に記載された薬剤に中間リンカーを介して結合させる。ある態様では、このようなリンカーは、ペプチド結合によって連結された1〜20アミノ酸から作製される、アミノ酸は、20種の天然のアミノ酸から選択される。これらのアミノ酸の一部は、当業者によってよく理解されるように、グリコシル化され得る。他の態様では、1〜20種のアミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリシンから選択される。他の態様では、リンカーは、グリシンやアラニンなどの立体的に妨害性のない多数のアミノ酸から作製される。非ペプチドのリンカーも可能である。例えば、-NH(CH2)nC(O)-;(式中n=2〜20)などのアルキルリンカーを使用することができる。このようなアルキルリンカーは、低級アルキル(例えばC1〜C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH2、フェニルなどの、任意の立体的に妨害性のない官能基とさらに置換されてもよい。米国特許第5,446,090号には、二機能性のPEGリンカー、およびPEGリンカー末端のそれぞれにペプチドを有するコンジュゲートの形成におけるその使用について記載されている。
【0109】
スクリーニングアッセイ法
本発明は、HDM2および/またはHDMXに結合するポリペプチド、小分子、または二機能性誘導体を同定するための方法(本明細書では「スクリーニングアッセイ法」とも称する)を提供する。
【0110】
HDM2および/またはHDMXに結合するポリペプチドの結合親和性は、本明細書に記載の方法を用いて、例えば滴定結合アッセイ法で測定することができる。HDM2および/またはHDMXを、候補化合物(すなわちポリペプチド)の濃度を変化させながら(例えば1 nM、10 nM、100 nM、1 μM、10 μM、100 μM、1 mM、および10 mM)曝露し、表面プラズモン共鳴法を用いて結合を測定し、結合に対するKdを決定することができる。加えて、フルオレセイン化されたSAH-p53ペプチドとHDM2および/またはHDMXの結合相互作用を、FITC-SAH-p53ペプチドと競合するペプチド、小分子、またはこの二機能性誘導体をスクリーニングして同定する競合結合アッセイ法に使用し、さらには結合の競合に対するKi値を計算することができる。インビボ生物活性について、候補化合物をスクリーニングすることもできる。細胞透過性スクリーニングアッセイ法も用いることもでき、この方法では、フルオレセイン化された候補化合物を無傷の細胞に適用し、その後顕微鏡またはハイスループット細胞蛍光検出により、細胞の蛍光についてアッセイする。
【0111】
本明細書に記載するアッセイ法は、個々の候補化合物と共に行うか、または複数の候補化合物と共に行うことができる。アッセイ法が複数の候補化合物で行われる場合、このアッセイ法は、候補化合物の混合物を使用し行うか、または単独の候補化合物を有する各反応と平行反応で試行することができる。被験化合物または物質は、当該技術分野において公知であるコンビナトリアルライブラリー法の多くの手法を用いて得ることができる。
【0112】
したがって、精製されたHDM2(例えば精製されたMDM2)またはHDMX(例えば精製されたMDM2)を試験化合物に、ステープルされたp53ペプチドの存在下で曝露させて、試験化合物が、MDM2またはMDMXに対する、ステープルされたp53ペプチドの結合を弱める(阻害する)か否かを判定することができる。結合を阻害する試験化合物は、p53とMDM2またはMDMX(もしくはこの両方)の間の相互作用の候補阻害剤である。p53の結合の結合の阻害に比較的選択性の高い化合物を同定するために、試験化合物を、MDM2およびMDMXに対する結合を阻害する能力に関して検証することができる。場合によっては、ヌトリン(nutlin)-3(CAS 548472-68-0)を対照として使用することができる。というのは、ヌトリン-3は、HMD2に対するp53の結合の選択的な阻害剤だからである。
【0113】
他の適用
多くの本発明の態様を説明してきた。しかし、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、様々な修飾を行うことができることは理解されると思われる。したがって他の態様も、特許請求の範囲内である。
【0114】
参考文献



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の修飾されたポリペプチド、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
各R1およびR2は独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
各R3は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4']nであり;その各々は0〜6個のR5で置換され;
R4およびR4'は独立して、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンであり;
各R5は独立して、ハロ、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
各Kは独立して、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
各R6は独立して、H、アルキル、または治療剤であり;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2、3、4、または6であり;
yおよびwは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数であり;かつ
各Xaaは独立して、アミノ酸であり;
該修飾されたポリペプチドは、
(a)8個の連続したアミノ酸内に、3、4、または6アミノ酸で隔てられた少なくとも1対のアミノ酸の側鎖が、式Iに示すアミノ酸対のα炭素に接続している連結基R3で置き換えられていること;および
(b)アミノ酸対の第一のアミノ酸のα炭素が式Iに示すR1で置換されており、かつアミノ酸対の第二のアミノ酸のα炭素が式Iに示すR2で置換されていること
を除いて、ヒトp53もしくはこのバリアント、またはヒトp53もしくはこのバリアントのホモログの少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む。
【請求項2】
ヒトp53ポリペプチドが、SEQ ID NO:1を含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項3】
ヒトp53の少なくとも8個の連続したアミノ酸が、SEQ ID NO:2の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項4】
ヒトp53の少なくとも8個の連続したアミノ酸が、Xaa1、Xaa4、Xaa7、Xaa8、Xaa11、Xaa14、Xaa15のそれぞれがSEQ ID NO:3の任意のアミノ酸である、

の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項5】
修飾されたポリペプチドがHDM2に結合する、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項6】
xが2である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項7】
xが3である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項8】
xが6である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項9】
xが2、3、または6であり、R3が単一の二重結合を含むアルケニルであり、かつR1およびR2が両方ともHである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項10】
各yが独立して、3〜15の間の整数である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項11】
ポリペプチドが、SEQ ID NO:2の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項12】
Ser7およびPro14の側鎖が、アミノ酸対のα炭素に連結している式Iに示す連結基R3と置換されており、かつアミノ酸対の第一のアミノ酸のα炭素が式Iに示すR1で置換されており、かつアミノ酸対の第二のアミノ酸のα炭素が式Iに示すR2で置換されており、かつPhe6、Trp10、およびLeu13以外の0個または最大6個のアミノ酸が独立して、他の任意のアミノ酸と置換されている、

の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項13】
Ser7およびPro14の側鎖が、アミノ酸対のα炭素に接続している式Iに示す連結基R3と置換されており、かつアミノ酸対の第一のアミノ酸のα炭素が式Iに示すR1で置換されており、かつアミノ酸対の第二のアミノ酸のα炭素が式Iに示すR2で置換されており、かつPhe6、Trp10、およびLeu13以外の0個または最大6個のアミノ酸が独立して、他の任意のアミノ酸と置換されている、

の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項14】
Leu1およびLys11がいずれも独立して、他の任意のアミノ酸と置換されている、請求項13記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項15】
Glu4がAsp以外の任意のアミノ酸と置換されている、請求項13記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項16】
Asp8がGlu以外の任意のアミノ酸と置換されている、請求項13記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項17】
ポリペプチドがpH 7で正味の負電荷を有しない、請求項13記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項18】
ポリペプチドが、pH 7で正電荷を有する少なくとも1個のアミノ酸を含み、(a)アミノ末端がLeu1であるか、もしくはLeu1と置換されたアミノ酸、または(b)カルボキシ末端がAsn16であるか、もしくはAsn16と置換されたアミノ酸のいずれかである、請求項17記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項19】
ポリペプチドがPEGと共有結合されている、請求項17b記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項20】
R1およびR2が各々独立して、HまたはC1-C6アルキルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項21】
R1およびR2が各々独立して、C1-C3アルキルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項22】
R1およびR2がメチルである、請求項12記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項23】
R3がアルキルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項24】
xが3である、請求項22記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項25】
R3がC8アルキルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項26】
xが6である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項27】
R3がC11アルキルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項28】
R3がアルケニルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項29】
xが3である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項30】
R3がC8アルケニルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項31】
xが6である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項32】
R3がC11アルケニルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項33】
R3が直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項34】
R3が[R4-K-R4]であり;かつR4が直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項35】
R1またはR2の少なくとも一方がアルキルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項36】
R1およびR2が各々独立して、HまたはC1-C3アルキルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項37】
R1およびR2がメチルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項38】
xが3または6であり、かつzが1である、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項39】
R3が、C8またはC11のアルキルもしくはアルケニルである、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項40】
乳酸とグリコール酸のコポリマーをさらに含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項41】
アミノ末端の脂肪酸をさらに含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項42】
HDM2を発現する細胞にペプチドを標的輸送する抗体をさらに含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項43】
ビオチン部分をさらに含む、請求項1記載の修飾されたポリペプチド。
【請求項44】
下記式を有する化合物:

式中、
R1は、Gln以外の任意のアミノ酸の側鎖であり;
R2は、-CH2OH[S]であり;
R3は、-CH2CH2C(O)NH2[Q]であり;
R4は、GluまたはAsp以外の任意のアミノ酸の側鎖であり;
R5は、-C(OH)CH3[T]であり;
R6は、ベンジル[F]であり;
R7およびR14は合わせてRxであり;
R8は、R4は、GluまたはAsp以外の任意のアミノ酸の側鎖であり;
R9は、-CH2CH(CH3)2[L]であり;
R10は、

であり;
R11は、Lys以外の任意のアミノ酸の側鎖であり;
R12およびR13は、-CH2CH(CH3)2[L]であり;
R15は、-CH2CH2C(O)NH2[Q]であり;かつ
R16は、-CH2C(O)NH2[N]であり;
Rxは、アルキル、アルケニル、アルキニル;[Rx1-K-Rx1]nであり;その各々は、0〜6個のRx2で置換され;
Rx1およびRx1'は独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
Rx2は、ハロ、アルキル、ORx3、N(Rx3)2、SRx3、SORx3、SO2Rx3、CO2Rx3、Rx3、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONRx3、または

であり;
Rx3は、H、アルキル、または治療剤であり;かつ
RzおよびRwは独立して、H、ヒドロキシル、アミド(NH2)、アミノ酸、ペプチド結合によって連結された2〜10アミノ酸;tat;およびPEGである。
【請求項45】
各yが独立して、3〜15の間の整数である、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項46】
R1およびR2が各々独立して、HまたはC1-C6アルキルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項47】
R1およびR2が各々独立して、C1-C3アルキルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項48】
R1およびR2の少なくとも一方がメチルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項49】
R1およびR2がメチルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項50】
R3がアルキルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項51】
R3がC8アルキルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項52】
R3がC11アルキルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項53】
R3がアルケニルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項54】
R3がC8アルケニルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項55】
R3がC11アルケニルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項56】
R3が、直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項57】
R3が[R4-K-R4]であり、かつR4が直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項58】
xが3であり、かつzが1である、請求項44記載のポリペプチド。
【請求項59】
細胞膜を通って輸送される、請求項47記載のポリペプチド。
【請求項60】
下記式(II)の修飾されたポリペプチド、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
各R1およびR2は独立して、HまたはC1〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3は、アルキレン、アルケニレン、もしくはアルキニレン、または[R4'-K-R4]nであり;その各々は0〜6個のR5で置換され;
R4およびR4'は独立して、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン(例えば各々独立して、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、またはC10のアルキレン、アルケニレン、もしくはアルキニレン)であり;
R5は、ハロ、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

、アジリジン、エピスルフィド、ジオール、アミノアルコールであり;
R6は、H、アルキル、または治療剤であり;
nは、2、3、4、または6であり;
xは、2〜10の整数であり;
wおよびyは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;かつ
各Xaaは独立して、アミノ酸(例えば、20種の天然のアミノ酸の1つ、または任意の天然の、非天然のアミノ酸)であり;
R7は、例えばチオカルバミン酸塩またはカルバミン酸結合を介して連結された、PEG、tatタンパク質、アフィニティー標識、標的化部分、脂肪酸由来のアシル基、ビオチン部分、蛍光プローブ(例えばフルオレセインもしくはローダミン)であり;
R8は、H、OH、NH2、NHR8a、NR8aR8bであり;
該ポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1の8個の連続したアミノ酸内に、3、4、または6アミノ酸で隔てられた少なくとも1対のアミノ酸の側鎖が、式Iに示すアミノ酸対のα炭素に接続している連結基R3で置き換えられていること;および(b)アミノ酸対の第一のα炭素が、式IIに示すR1で置換されており、かつアミノ酸対の第二のα炭素が式IIに示すR2で置換されていること
を除いて、SEQ ID NO:1(ヒトp53)もしくはこのバリアント、SEQ ID NO:2もしくはこのバリアント、または本明細書に記載された別のポリペプチド配列の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【公表番号】特表2010−518017(P2010−518017A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548441(P2009−548441)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/052580
【国際公開番号】WO2008/095063
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(399052796)ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート インク. (36)
【出願人】(507244910)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (18)
【Fターム(参考)】