説明

安定化された殺微生物組成物

【課題】2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む安定化された水性殺微生物組成物の提供。
【解決手段】少なくとも4つの成分を有する殺微生物組成物。第1の成分は2〜25重量%の2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドである。第2の成分は2〜30重量%の水である。第3の成分は5〜30重量%の2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物である。第4の成分は20〜70重量%のグリコール溶媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む安定化された水性殺微生物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
DBNPAおよびグリセリンを含む水性組成物が特許第3287937号に開示されている。しかし、この組成物はグリセリンを65%含む。さらなる安定化された水性DBNPA組成物、特に、低粘度および/またはより高い安定性を有する組成物についての必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3287937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題はこのようなさらなる安定化された組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)2〜25重量%の2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド;(b)2〜30重量%の水;(c)5〜30重量%の2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物;並びに(d)20〜70重量%のグリコール溶媒を含む殺微生物組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される場合、次の用語は、文脈が明らかに他のことを示さない限りは、指定された定義を有する。用語「殺微生物剤」とは、対象において、微生物の成長を阻止し、または微生物の成長を制御することができる化合物をいい;殺微生物剤には殺バクテリア剤、殺真菌剤および殺藻剤が挙げられる。用語「微生物」には、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビ)、バクテリアおよび藻類が挙げられる。用語「対象(locus)」とは、微生物による汚染を受ける産業システムもしくは製品をいう。以下の略語が本明細書を通して使用される:ppm=重量基準の100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル、AI=活性成分。本発明の組成物中の抗微生物化合物のパーセンテージは組成物中の活性成分の全重量、すなわち、溶媒、担体、分散剤、安定化剤もしくは存在しうる他の物質の量を除いた抗微生物化合物自体に基づく。他に特定されない限りは、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージ(%)に関する言及は重量パーセンテージ(重量%)である。
【0007】
好ましくは、殺微生物組成物は0.1〜6重量%、好ましくは0.5〜6重量%、好ましくは2〜6重量%、好ましくは4〜5.5重量%、好ましくは0.7〜5重量%、好ましくは0.7〜2重量%、好ましくは0.9〜3重量%、好ましくは0.9〜1.6重量%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物をさらに含む。「MI」は2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンであり、2−メチル−3−イソチアゾロンの名前でも称される。「CMI」は5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンであり、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロンの名前でも称される。好ましくは、CMI:MIの重量比は1以上:1であり、あるいは2以上:1である。好ましくはCMI:MIの重量比は4以下:1である。好ましくはこのCMI:MI比は約3:1である。好ましくは、このCMI/MI混合物のソースは実質的に塩を含まない配合物である。「実質的に塩を含まない」とはこの組成物が、組成物の重量を基準にして0.5%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%以下しか金属塩を含まないことを意味する。好ましくは、本発明の殺微生物組成物は0.1%以下、好ましくは0.05%以下、好ましくは0.01%以下しか金属塩を含まない。好ましくは、DBNPAおよびCMI/MIを含む組成物は12〜20%のDBNPA、0.2〜3%のCMI/MI混合物、10〜27%の3〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物(好ましくはグリセリン)、30〜60%のグリコール溶媒、および7〜20%の水を含む。好ましくは、DBNPAおよびCMI/MIを含む組成物は8〜15%のDBNPA、3〜7%のCMI/MI混合物、5〜30%の3〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物(好ましくはグリセリン)、10〜35%のグリコール溶媒、および20〜55%の水を含む。好ましくは、DBNPAおよびCMI/MIを含む組成物は2〜10%のDBNPA、0.9〜3%のCMI/MI混合物、10〜27%の3〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物(好ましくはグリセリン)、35〜65%のグリコール溶媒、および7〜20%の水を含む。
【0008】
好ましくは、殺微生物組成物は1〜20重量%、好ましくは少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、好ましくは少なくとも4%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも7%;好ましくは15%以下、好ましくは12%以下、好ましくは10%以下、好ましくは8%以下、好ましくは7%以下の2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール(BNPD)を含む。
【0009】
好ましくは、組成物は、少なくとも4%、好ましくは少なくとも6%、好ましくは少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも12%、好ましくは22%以下、好ましくは20%以下、好ましくは18%以下、好ましくは17%以下のDBNPAを含む。
【0010】
好ましくは、組成物は少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも7%、好ましくは少なくとも8%、好ましくは少なくとも9%の水を含む。好ましくは、水の量は27%以下、好ましくは25%以下、好ましくは20%以下、好ましくは18%以下、好ましくは16%以下、好ましくは14%以下、好ましくは12%以下である。
【0011】
好ましくは、2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物は、3〜8個の炭素原子を有する脂肪族化合物、好ましくは3〜6個のヒドロキシル基および3〜6個の炭素原子を有する化合物に限定される。好ましくは、2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物は、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、グリセリンおよび単糖(還元単糖、例えば、ソルビトールも包含する)からなる群から選択される。好ましくは、3〜6個のヒドロキシル基および3〜6個の炭素原子を有する化合物は、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトールおよびスレイトールからなる群から選択される。好ましくは、組成物は少なくとも10%、好ましくは少なくとも12%、好ましくは少なくとも14%、好ましくは少なくとも16%の2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物を含む。好ましくは、2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物の量は、27%以下、好ましくは25%以下、好ましくは23%以下、好ましくは21%以下である。
【0012】
好ましくは、組成物は少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも32%、好ましくは少なくとも34%、好ましくは少なくとも36%のグリコール溶媒を含む。好ましくは、グリコール溶媒の量は、65%以下、好ましくは60%以下、好ましくは57%以下、好ましくは55%以下、好ましくは52%以下、好ましくは50%以下、好ましくは48%以下、好ましくは46%以下、好ましくは44%以下である。グリコール溶媒は構造
−O−Z−Rを有し、式中、nは1〜6であり、RおよびRは独立して水素もしくはC−Cアルキルであり、n=1の場合にはRおよびRの少なくとも一方は水素ではない;−Z−は−CH(R)−CH(R)−O−であり、各Z単位において、RおよびRは独立して水素もしくはメチルである;RおよびRが独立して両方ともメチルであることはなく、RおよびRの双方が水素であるグリコール溶媒中のZ単位の全ての重量:RおよびRの一方がメチルであるZ単位の全ての重量の比率は0.66以下:1である。好ましくは、RおよびRは独立して水素もしくはメチルである。好ましくは、nは1〜4である。好ましくは、グリコール溶媒には、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および200〜300のMを有するポリエチレングリコールが挙げられる。
【0013】
2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物の添加におけるいくつかのグリコール溶媒中でのDBNPAの安定性の増大は、これらグリコール溶媒中でのDBNPAの本質的により高い安定性のせいで、観察するのがより困難な場合がある。
【0014】
好ましくは、組成物はDBNPA、BNPDおよびCMI/MI混合物を含む。好ましくは、組成物は12〜22%のDBNPA、4〜12%のBNPDおよび0.2〜3%のCMI/MI混合物を含む。好ましくは、グリコール溶媒はテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールもしくはトリエチレングリコールであり、好ましくはグリコール溶媒の量は30〜50%である。好ましくは、水含有量は20%以下、好ましくは18%以下、好ましくは16%以下、好ましくは14%以下である。好ましくは、水含有量は少なくとも7%、好ましくは少なくとも8%である。好ましくは、3〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物の量は10〜27%である。
【0015】
好ましくは、組成物は3〜10%のDBNPA、7〜18%のBNPD、および0.2〜3%のCMI/MI混合物を含む。好ましくは、グリコール溶媒はテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールもしくはトリエチレングリコールであり、好ましくはグリコール溶媒の量は35〜55%である。好ましくは、水含有量は20%以下、好ましくは18%以下、好ましくは16%以下、好ましくは14%以下である。好ましくは、水含有量は少なくとも5%、好ましくは少なくとも7%、好ましくは少なくとも8%である。好ましくは、3〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物の量は10〜30%である。
【0016】
本発明の殺微生物組成物は使用されて、殺微生物的有効量の組成物を、微生物の汚染を受ける対象上に、対象中にまたは対象に導入することにより、微生物またはより高等な形態の水生生物(例えば、原虫、無脊椎動物、コケムシ、渦鞭毛藻、甲殻類、軟体動物など)の成長を阻止することができる。好適な対象には、例えば、工業プロセス水;電着堆積系;冷却塔;空気清浄機;ガススクラバー;鉱物スラリー;排水処理;装飾噴水;逆浸透ろ過;超ろ過;バラスト水;蒸発凝縮器;熱交換機;パルプおよび紙処理用流体および添加剤;スターチ;プラスチック;エマルション;分散物;塗料;ラテックス;コーティング剤、例えば、ワニス;建築用製品、例えば、マスチック、コーキングおよびシーラント;建築用接着剤、例えば、セラミック接着剤、カーペット裏当て接着剤および積層接着剤;産業用または消費者用接着剤;写真用化学物質;印刷用流体;家庭用製品、例えば、浴室および台所洗浄剤など;化粧品;洗面用化粧品;シャンプー;石けん;洗剤;産業用洗浄剤;フロアポリッシュ;洗濯リンス水;金属加工用流体;コンベア潤滑剤;液圧流体;皮革および皮革製品;布;布製品;木材および木材製品、例えば、合板、チップボード、フレークボード、積層梁、配向ストランドボード、ハードボードおよびパーティクルボード;石油処理用流体;燃料;油田用流体、例えば、注入水、破砕流体、および掘削泥水;農業用アジュバント保存;界面活性剤保存;医療用装置;診断試薬保存;食品保存、例えば、プラスチックまたは紙製食品ラップ;食品、飲料および産業用プロセス殺菌装置;便器;娯楽用水;プール;並びに温泉が挙げられる。
【0017】
本明細書に記載された組成物は本明細書に列挙された成分に加えて、他の既知の殺生物活性成分を組み込むことができる。
【実施例】
【0018】
20%DBNPA、6%BNPDおよび1.25%CMI/MI(3:1)を有する配合物:
これら配合物は、他に示されたことを除いて、塩を含まないCMI/MI殺生物剤から製造された。これらは40℃のオーブン内に配置され、60日後に殺生物剤の減少について分析された。
【0019】
【表1】

2相系が形成され、安定性は決定されなかった。
TEG=トリエチレングリコール
【0020】
BNPDもCMI/MIも含まず、20%DBNPAを有する配合物:
これらは製造され、45℃のオーブン内に配置され、28日後に殺生物剤の減少について分析された。TetEG=テトラエチレングリコール。
【0021】
【表2】

1 10%DBNPA−20%は可溶性ではない
2 不溶性−安定性は試験されず
【0022】
20%DBNPAおよび0.25%CMI/MI(3:1)を有する配合物:
これら配合物は、塩を含まないCMI/MIを用いて製造され、45℃のオーブン内に配置され、28日後に殺生物剤の減少について分析された。
【0023】
【表3】

1 これらの結果は全体のパターンに適合せず、誤りであると考えられる
2 これらサンプルは1%CMI/MIを有していた
【0024】
20%DBNPAおよび6%BNPDを有する配合物:
これら配合物は製造され、45℃のオーブン内に配置され、28日後に殺生物剤の減少について分析された。
【0025】
【表4】

不溶性−安定性は測定されなかった
1 これらの結果は全体のパターンに適合せず、誤りであると考えられる
【0026】
BNPDもCMI/MIも含まず、10〜20%DBNPAを有する配合物:
これらは製造され、45℃のオーブン内に配置され、28日後に殺生物剤の減少について分析された。DEGMME=ジエチレングリコールモノメチルエーテル。
【0027】
【表5】

1 サンプルは10%しかDBNPAを含んでいなかった−20%は可溶性ではない
安定性が試験されなかった全てのサンプルは相分離を有していた

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2〜25重量%の2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド;
(b)2〜30重量%の水;
(c)5〜30重量%の2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物;並びに
(d)20〜70重量%のグリコール溶媒
を含む殺微生物組成物。
【請求項2】
2〜6個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物が、3〜6個のヒドロキシル基および3〜6個の炭素原子を有する脂肪族化合物に限定される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.1〜6重量%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物をさらに含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
7〜25重量%の水および8〜22重量%の2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを含む請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン:2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの重量比が4:1〜1:1である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
1〜20重量%の2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールをさらに含む請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
5〜18重量%の水を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
4〜12重量%の2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールおよび0.2〜2重量%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物をさらに含み、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン:2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの重量比が4:1〜1:1である請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
7〜25重量%の水および8〜22重量%の2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
グリコール溶媒が、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種のグリコール溶媒を含む請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2012−136510(P2012−136510A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−254496(P2011−254496)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】