説明

安定化効果を有する薬物送達システム

薬物送達システムはまた、水溶性の薄いフィルム・マトリックスを含んでなる単位剤形であって、ここで、当該フィルム・マトリックスが、以下の:a)水溶性マトリックスポリマーとしてのポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGグラフトコポリマー);b)ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるところのステロイドである有効成分、を含んでなり;且つ、当該フィルム・マトリックスが300μm未満の厚みを持つ単位剤形、としても意図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、水溶性の薄いフィルム(ウエハース(wafers))の形態の薬物送達システムに関する。それは、有効成分としてステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基である少なくとも1種類のステロイドを含み、特に上述の少なくとも1種類のステロイドがエストロゲンである。本発明は、有効成分としてエストロゲン、プロゲスチン又はその組み合わせ物を含んでなる薬物送達システムであり、且つ、上述の有効成分のうちの少なくとも1つが(ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基である)ステロイドであるものをさらに指す。
【0002】
本発明の薬物送達システムは、有効成分として、例えば、エストラジオール、エチニルエストラジオール若しくはエストロゲン受容体β(ERβ)選択的作動物質のようなエストロゲン、特にERβ選択的作動物質としての8β‐若しくは9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエンを含んでなり、上述のエストロゲンが(ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基である)ステロイドであるウエハースをさらに指す。
【0003】
本発明による薬物送達システムは、医薬品として有利に使用されることができるところの、エストロゲン、プロゲスチン又はその組み合わせ物を含んでなるウエハースをさらに指す。
【0004】
本発明による送達システムはまた、水溶性マトリックスポリマーとしてポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGグラフトコポリマー、若しくは単にPVA‐PEGコポリマー)を含んでなる単位剤形をも意味する。本発明が指す送達システムは、その中に含まれた1以上の有効成分に安定性向上をもたらす。
【0005】
本発明は、改良された食感を有する水溶性の薄いフィルム(ウエハース)の形態の薬物送達システムをさらに指す。本発明のウエハースは、ステロイドホルモン、特に、エストロゲン、プロゲスチン又はその組み合わせ物のようなステロイド性ホルモンの製剤に特に使用される。
【背景技術】
【0006】
本発明の背景
いくつかの有効成分は、周囲条件(25℃/60%相対湿度など)又は加速保存条件(40℃/75%相対湿度など)における酸化過程に対して限られた安定性しか有していないので、有効成分の有効量の変化及びそれらの生物学的同等性特性に鋭敏に影響を引き起こす形質転換を受けることが知られている。
【0007】
通常、ホルモンは非常に少量で処方されるので、医薬製剤中の有効成分の量の非常にわずかな変化もまた、上記の医薬製品の所望の効果に劇的な影響を及ぼす可能性がある。エストロゲン及びプロゲスチンの酸化的分解反応はその分野で周知であり、そして、関連する固形製剤の保存期限に関する代表的な問題である(T. Hurley et al. "Norethindrone acetate (NA) and ethinyl estradiol (EE) related oxidative transformation products in stability samples of formulated drug product: synthesis of authentic references", Steroids, Vol. 67 (2002), pages 165-174; Van D. Reif et al., "Automated Stability-Indicating High-Performance Liquid Chromatographic Assay for Ethinyl Estradiol and (Levo)norgestrel Tablets" pharmaceutical Research, Vol. 4 (1987), pages 54-58)。
【0008】
WO 96/02277A1には、17アルファ‐エチニルエストラジオールの酸化的分解反応を減らすための方法及び医薬組成物であって、エストラジオールを有効量のシクロデキストリンと組み合わせ、それよって上記ステロイドのシクロデキストリン包接体を形成することを含んでなるものが開示されている。上記特許文献は、特にステロイド性ホルモンを含む固体剤形に関する。天然及び特に合成的に誘導された性ホルモンは、ほとんどの場合、医薬作用物質の非常に効果的な有効成分であることが報告されている。その結果、大抵の場合、固体剤形は非常に低い投薬量にてこれらの有効成分を含んでいる;これらは、通常、単回投薬される1剤形あたり1mgよりもかなり少ない。これは、これらの剤形の調製、並びに使用及び保存中の安定性の両方に実際に問題のあることが多いことを意味する。
【0009】
先に議論したとおり、そのような低用量剤形の調製において、投薬単位中の有効成分濃度の大きな変動がほとんど不可避に起こり(不十分な含量の均一性)、それにそれは有効成分の量が少ないほどより強く現れる。
そのうえ、そのような低用量調製の保存では、有効成分濃度の低減が、大抵の場合、有効成分の酸化分解反応の結果としてさらに観察されることが多い。
加えて、そのような低用量では、有効成分の生物学的利用能が、強い初回通過効果の影響を受けやすいので、大きな個人間及び個人内変動を示す。
【0010】
しかしながら、エストロゲンなどの薬物は、正確、且つ、一貫した用量を提供するために従来の標準的な経口錠剤又はカプセル製剤に含まれることもできるとはいえ、そのようなデリバリー形態には、薬物の投与と調製の両方にいくつかの不利な点がある。例えば、約50%の人が錠剤を飲み込むことが難しいと試算されており(Seager in 3. Pharmacol. Pharm. 1998; 50; 375-382を参照のこと)、そして小児又は高齢者などの錠剤若しくはカプセル剤を飲み込まない又は飲み込めない患者が製薬業への課題を代表している。製薬業は、口内速崩壊錠、経口摂取の前に液体中で崩壊する錠剤、液剤やシロップ剤、ガム、並びに従来の経皮パッチまで含めた多くの異なった薬物送達システムを開発することによってこの課題を満たそうとしている。しかしながら、これらの薬物送達システムのそれぞれは、それら自体の問題を引き起こす可能性がある。
【0011】
チュアブル又は自己崩壊錠などの口内速崩壊錠は、すばらしい利便性を提供する。しかしながら、チュアブル又は自己崩壊錠は、咀嚼行為が保護コーティングを台無しにする可能性があるので、本当の味のマスキングの問題が生じることが多い。さらに、チュアブル又は自己崩壊錠は、不快な食感を伴うことが多い。そのうえ、そういった固形の造形品を飲み込むか、咀嚼するか、又は喉に詰まらせることに対する不安感が、いまだに特定の人々の懸念事項である。加えて、そういった多孔性の、低圧の成形錠剤の壊れやすさ/もろさは、それらを持ち運んだり、保存したり、取り扱ったり、及び患者、特に子供や高齢者に投与することを難しくする。
【0012】
チュアブル味マスキング医薬組成物が、例えば、US 4,800,087に記載されている。味マスキング口腔内崩壊錠(ODTs)が、US 2006/0105038に記載されている。味マスキング・コーティング・システムが、WO 00/30617に記載されている。味マスク・ウエハースが、WO 03/030883に記載されている。
【0013】
生理学的に活性な材料とビニル・アルコール/ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを含んだ崩壊性バッカル錠が、特許文献WO 2006/029787A1に記載されており;生理学的に活性な材料とビニル・アルコール/ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを含む組成物を粒状にした後に打錠が実施されることを特徴とする崩壊性バッカル錠の製造方法も一緒に記載されている。
【0014】
ドキュメントWO 2005/039499A2は、高分子量と低分子量の水溶性成分の混合物、及び医薬的又は美容的に活性な構成要素を含む可崩壊性フィルム(disintegratable films)を記載している。任意に、前記フィルムは、デンプン成分、グルコース成分、充填剤、可塑剤、及び/又は保湿剤を含んでいる。前記フィルムは、好ましくは、口腔環境で迅速に崩壊し、そして必要以上の不快感なしに有効成分を口腔粘膜に放出できるくらいの厚みを持っている粘膜接着性単層の形態である。前記単層は、ヒトの医薬的、美容的、又は獣医学的な適用のための経口又は他の粘膜表面への投与用の都合よく使用可能な単位剤形を提供するためにあらゆる所望のサイズ又は形状に切断できる。WO 2005/039499は、そのフィルムが崩壊し、そして有効成分を放出するのに十分な期間、例えば、口腔内に組成物を置いておくことによるフィルム組成物の投与方法をさらに記載する。ポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコールコポリマーを用いた明確な実施例は、具体的に開示されていない。
【0015】
WO 2005/009386A2は、口腔内の活性物質の迅速な放出のための速溶解性経口フィルム調製物を記載し、特に、良好な経頬側吸収を達成し、且つ、個人に対してニコチン渇望の軽減を提供するニコチン活性成分をを含んでなる速溶解性経口フィルムがこの中に開示されている。ポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを含んでなる溶解性フィルムに関する実施例が記載されている。しかしながら、有効成分に関して前述の製剤の安定性に対して言及されていない。
【0016】
最後に、WO 2007/115381A2は、低い水溶解度と溶解速度の生理活性化合物の固体分散体の製剤におけるポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGグラフトコポリマー)、例えばKollicoat IRなどの使用を記載し、より特に、そのような低い水溶解度と溶解速度の生理活性化合物、特に低い水溶解度の薬物、例えばBCSクラスII又はクラスIVの薬物化合物などの溶解度と溶解速度を改善するためのシステムと方法について記載している。
【0017】
本発明による薬物送達システムの一部になることができる有効成分に関して、そして特に上述の構成要素が選択的ステロイド性エストロゲンである場合に、その選択的エストロゲンがエストロゲン/プロゲスチン組み合わせ生成物に対して新しい代替手段を示すということに注目が向けられる。選択的エストロゲンは、これまで、それらの抗子宮栄養(すなわち、抗エストロゲン)部分的効果により脳、骨及び血管系に対するエストロゲン様効果を有する化合物であると考えられているが、子宮内膜に対して増殖促進効果は有していない。
【0018】
ER‐β、特にER‐β選択的作動物質が好まれるエストロゲン受容体モジュレーターはまた、同じ用量域で肝臓のエストロゲン効果又は子宮内膜と乳房に対する促進効果を有することなく、脳機能、膀胱、腸及び心血管系に対して有益な効果を有することもある。そのため、ER‐β作動薬は、選択的エストロゲン療法及び顔面潮紅と気分の動揺の処置のための新規な選択肢を示す。顔面潮紅の発生は、おそらく、エストロゲンの減少と閉経の始まりによって引き起こされる視床下部の体温調節の設定値の不安定性から生じる(Steams V, Ullmer L, Loepez JF, Smith Y, Isaacs C, Hayes DF (2002) Hot flushes. The Lancet 360: 1851-1861)。
【0019】
WO 01/77139A1は、試験管内においてラット子宮のエストロゲン受容体標本よりもラット前立腺のエストロゲン受容体標本に対してより高い親和性を有する医薬有効成分としての8β‐置換エストラトリエン{式中、R8が、直鎖若しくは分岐鎖の、任意に部分的に若しくは完全にハロゲン化された最大で5つの炭素原子を持つアルキル又はアルケニル基、エチニル‐又はプロパ‐1‐イニル基を意味する。}、それらの製造、それらの治療上の使用、及び上述の化合物を含む医薬調剤形態を記載している。
【0020】
WO 03/104253A2は、試験管内において、ラット子宮のエストロゲン受容体標本よりもラット前立腺のエストロゲン受容体標本に対してより高い親和性を有し、且つ、生体内において、好ましくは子宮と比較して卵巣に対して選択的作用を有する医薬有効成分としての新規9α‐置換エストラトリエン{式中、R9が、直鎖若しくは分岐鎖の、任意に部分的に若しくは完全にハロゲン化された、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基、又はエチニル基若しくはプロパ‐1‐イニル基を表す。}に関する。
【0021】
PCT/EP2008/059115は、一般式(I)によって表される8β‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン誘導体、医薬有効成分(試験管内において、ラット子宮からのエストロゲン受容体標本よりもラット前立腺からのエストロゲン受容体標本に対してより高い親和性を有し、且つ、生体内において、子宮に比べて卵巣において選択的作用を有する)としてのそれらの使用、それらの製造、それらの治療上の使用、及び新規化合物を含む医薬調剤形態について言及している。
【0022】
前記ドキュメントは、特に、ERβを選択するエストロゲンについて言及している。試験管内及び生体内における選択的ERβ活性を確認するための日常的な試験は、先に引用したドキュメント、例えばWO 03/104253A2の18〜23ページに報告されている。
【0023】
選択的ERβ活性を有する化合物を同定するためのさらなる日常的な試験は、以下のとおりである:
エストロゲン受容体‐α及び‐β活性を測定するための試験管内における細胞アッセイ
【0024】
略語:
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
DNA デオキシ核酸
PCS ウシ胎仔血清
HEPES 4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペラジンエタンスルホン酸
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
【0025】
ヒト・エストロゲン受容体‐α及び‐β(ERα及びERβ)のモジュレーターが特定され、そして本明細書中に記載の物質の活性が組み換え細胞株を用いて定量される。これらの細胞は、元はハムスター卵巣上皮細胞(チャイニーズ・ハムスター卵巣、CHO K1、ATCC:アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、VA 20108、USA)に由来する。
【0026】
ヒト・ステロイドホルモン受容体のリガンド結合ドメインが酵母転写因子GAL4のDNA結合ドメインに融合されるところの確立されたキメラ・システムが、このCHO K1細胞株に使用される。このように作り出されたGAL4‐ステロイドホルモン受容体キメラが、同時遺伝子導入され、そしてCHO細胞内にレポーター構築物と共に安定して発現される。
【0027】
クローニング:
GAL4‐ステロイドホルモン受容体キメラを作り出すために、ベクターpFC2‐dbd(stratagene製)からのGAL4 DNA結合ドメイン(第1〜147アミノ酸)が、エストロゲン受容体α(ERα、ジェンバンク受入番号NM00125、第282〜595アミノ酸)とエストロゲン受容体β(ERβ、ジェンバンク受入番号AB006590、第223〜530アミノ酸)のPCR増幅リガンド結合ドメインと共にベクターplRES2(Clontech製)内にクローン化される。レポーター構築物(チミジンキナーゼ・プロモータのGAL4結合部位上流の5コピーを含んでなる)は特異的作動薬によって活性化、そしてGAL4‐エストロゲン受容体キメラの結合の後にホタル・ルシフェラーゼ(Photinus pyralis)の発現をもたらす。
【0028】
検査手順:
ERα及びERβ細胞の保存培養物が、DMEM/F12培地、10%のFCS、1%のHepes、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、1mg/mlのG418、及び5μg/mlのピューロマイシン中でごく普通に培養される。アッセイ前日に、ERα及びERβ細胞は、96(又は384)ウェル・マイクロタイタープレート内、Opti‐MEM培地(Optimem、Invitrogen製、2.5%のHyclone製の活性炭精製FCS、1%のHepes)中に蒔き、そして細胞インキュベータ(96%の湿度、5% v/vのCO2、37℃)内に維持される。アッセイ当日に、被験物質は、先に触れた培地中に溶かされ、そして細胞に加えられる。試験物質の見込まれる拮抗特性を調査することを目的としている場合には、その試験物質の添加の10〜30分後にエストロゲン受容体作動薬17‐βエストラジオール(Sigma製)が加えられるが、作動特性の調査において17‐βエストラジオールの追加的な添加は行われない。5〜6時間のさらなるインキュベーション時間の後に、細胞はルシフェリン/Tritonバッファーを用いて溶菌され、そしてルシフェラーゼ活性がビデオカメラを用いて計測される。物質濃度の関数としての計測された相対発光量は、シグモイド刺激曲線をもたらす。EC50と値は、Graph Pad PRISM(バージョン3.02)コンピュータ・プログラムを用いて計算される。
【0029】
類似した試験はまた:Peekhaus Norbert T. et al., ASSAY and Drug Development Technologies Volume 1, Number 6, 2003 "A β-Lactamase-Dependent Gal4-Estrogen Receptor b Transactivation Assay for the Ultra-High Throughput Screening of Estrogen Receptor β Agonists in a 3,456-Well Format"にも記載されている。
【0030】
特許文献WO 01/77139A1、WO 03/104253A2及びPCT/EP2008/059115を本願中に援用する。
現在の医薬製剤の分野において、例えば、有効成分が酸化的分解反応によって影響を受ける場合に、その中に含まれた有効成分に安定性向上をもたらすことができる水溶性の薄いフィルム(ウエハース)の形態をとる薬物送達システムへの要望は明らかに存在する。
【0031】
さらに、口腔用の医薬製剤、そして特に改良された食感を有するウエハースは、製剤分野において、特に長期使用におけるより高い受容性に関して、非常に望ましい。
【発明の概要】
【0032】
最初の態様において、本発明は、水溶性の薄いフィルム・マトリックスを含んでなる単位剤形に関し、ここで、上述のフィルム・マトリックスは、以下の:
a)水溶性マトリックスポリマーとしてのポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGグラフトコポリマー);
b)ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるステロイドである有効成分;
を含んでなり;且つ、上述のフィルム・マトリックスが、300μm未満の厚みを持つ。
【0033】
実施形態の特定の形態によると、本発明による剤形は、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるステロイド性エストロゲンを有効成分として含んでなり、そしてより特に上述のステロイド性エストロゲンは、ステロイド骨格の3位にヒドロキシ、エステル又はエーテル基を含んでなる。
【0034】
特に、先に規定されたステロイド性エストロゲンは、以下の治療的に許容し得る誘導体を含めた、エチニルエストラジオール、エストラジオール、エストロン、メストラノール、エストリオール、エストリオール・スクシナート、エストロン・スルファート、17β‐エストラジオール・スルファート、17α‐エストラジオール・スルファート、エストラジオール・バレラートを含んでなる群から選択される。
【0035】
さらに、本発明による単位剤形の別の実施形態において、前述のステロイド性エストロゲンは、ERβ選択的作動物質である8β‐又は9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエンである。本発明によるウエハースの一部になり得る前述のERβ選択的作動物質の特定の例は、以下の:
9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
18a‐ホモ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
16β‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
又はその誘導体である。
【0036】
更なる態様において、本発明は、前述の有効成分が、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるステロイド性プロゲスチンである、水溶性の薄いフィルム・マトリックス(ウエハース)を含んでなる単位剤形に関する。
【0037】
特に、ステロイド性プロゲスチンは、レボノルゲストレル、ノルゲストレル、ノルエチンドロン(ノレチステロン)、ジエノゲスト、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセタート、エチノジオール・ジアセタート、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、リネストレノール、ノルゲストリエノン、エチステロン、プロメゲストン、デソゲストレル、3‐ケト‐デソゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデンを含んでなる群からさらに選択できる。
【0038】
本発明の他の態様において、前述のフィルム・マトリックスは、有効成分としてエストロゲンとプロゲスチンを含んでなり、そして上述の有効成分の少なくとも1つが、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるステロイドである。
【0039】
実施形態の特定の形態によると、本発明によるウエハースにおいて、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるステロイド性エストロゲンは、16,17‐カルボラクトン誘導体、例えばドロスピレノンであるところのプロゲスチンと組み合わせられる。
別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための単位剤形に関する。
【0040】
更なる態様において、本発明は、ホルモン補充療法(HRT)において、特に、不十分な内因性のエストロゲン・レベルによって引き起こされる哺乳動物の雌の健康状態を処理するか、緩和するか又は予防するのに使用されるべき単位剤形に関する。そのような健康状態の例としては、これだけに限定されるものではないが、骨粗鬆症、頭痛、吐き気、うつ病、血管運動症状、泌尿生殖器の萎縮の症状、骨ミネラル濃度の減少、並びに骨折の危険性の増大又は骨折の発生が挙げられる。
【0041】
本発明による水溶性の薄いフィルム(ウエハース)の形態をとる薬物送達システムは、避妊にもまた都合良く使用できる。
本発明の他の態様は、以下の説明と添付の請求項から明らかになるだろう。
【0042】
発明の詳細な説明
本明細書中、「有効成分」、「薬物原料」、「活性な薬物原料」又は単に「薬物」という用語は、本発明による剤形中に含まれるあらゆる医薬的に活性な化合物を意味することを意図している。
本発明による「薬物送達システム」はまた、「単位剤形」の意味の範囲内にあることを意図し、そして、逆もまた同様である。
【0043】
本発明による水溶性の薄いフィルム(ウエハース)の形態をとる薬物送達システムは、活性化合物として少なくとも1つのステロイド(ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であり、これは6及び7位が置換されていないことを意味する)を特に含む。
これに関連して、「ステロイド骨格」という用語は、以下の4環系を指す:
【化1】

【0044】
本発明によるウエハースは、8β‐又は9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエンであるところのステロイドを特に含んでなる。前述の置換されたステロイドの骨格は、以下のとおり表される:
【化2】

【0045】
本文脈中では、「プロゲスチン」(「ゲスターゲン」若しくは「プロゲストゲン」とも呼ばれることもある)という用語は、プロゲステロン受容体作動薬である合成ホルモン化合物に及ぶ。この用語は、水和物、溶媒和物、塩、及び複合体、例えばシクロデキストリンとの複合体などを含めたプロゲスチンのすべての異性体及び物理的形態を網羅することをさらに意味する。プロゲスチンの具体例としては、これだけに限定されるものではないが、16,17‐カルボラクトン誘導体(例えばドロスピレノン)、及びレボノルゲストレル、ノルゲストレル、ノルエチンドロン(ノレチステロン)、ジエノゲスト、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセタート、エチノジオール・ジアセタート、ジドロゲステロン、メドロキシプロゲステロン‐アセタート、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、リネストレノール、キンゲスタノール・アセタート、メドロゲストン、ノルゲストリエノン、ジメチステロン、エチステロン、クロルマジノン・アセタート、メゲストロール、プロメゲストン、デソゲストレル、3‐ケト‐デソゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデン、チボロン、及びシプロテロン・アセタートから成る群から選択されるプロゲスチンが挙げられる。特に好ましいプロゲスチンは、16,17‐カルボラクトン誘導体(例えばドロスピレノン)、及びレボノルゲストレル、ジエノゲスト、ゲストデン、並びにシプロテロン・アセタートである。
【0046】
ステロイド骨格の6及び7位共に‐CH2‐残基であるステロイド性プロゲスチンとしては、これだけに限定されるものではないが、治療的に許容し得る誘導体を含めたレボノルゲストレル、ノルゲストレル、ノルエチンドロン(ノレチステロン)、ジエノゲスト、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセタート、エチノジオール・ジアセタート、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、リネストレノール、ノルゲストリエノン、エチステロン、プロメゲストン、デソゲストレル、3‐ケト‐デソゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデンから成る群から選択される化合物が挙げられる。
【0047】
以下に議論されるとおり、プロゲスチンは、シクロデキストリンと複合体化されても、及び/又は保護剤と組み合わせられてもよい。
「エストロゲン」という用語は、エストロゲン様活性を示すすべての天然又は合成のステロイド性化合物を網羅することを意味する。そのような化合物は、とりわけ、抱合型エストロゲン及び植物性エストロゲンを網羅する。この用語は、水和物、溶媒和物、塩、及び複合体、例えばシクロデキストリンとの複合体などを含めたエストロゲンのすべての異性体及び物理的形態を網羅することをさらに意味する。
【0048】
より特に、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるステロイド性エストロゲンは、エチニルエストラジオール、エストラジオールの(エステルを含めた)治療的に許容し得る誘導体を含めたエストラジオール、エストロン、メストラノール、エストリオール、エストリオール・スクシナート、及び抱合型ウマ・エストロゲンを含めた抱合型エストロゲンから成る群から選択されるエストロゲン、例えばエストロン・スルファート、17β‐エストラジオール・スルファート、17α‐エストラジオール・スルファートなどを含む。特定の注目のエストロゲンは、エチニルエストラジオール、エストラジオール、エストラジオール・スルファメート、エストラジオール・バレラート、エストラジオール・ベンゾアート、エストロン、メストラノール及びエストロン・スルファートから成る群から選択される。より好ましくは、エストロゲンは、エチニルエストラジオール又はエストラジオールである。最も好ましいエストロゲンは、エチニルエストラジオールである。
【0049】
本発明の特定の実施形態によると、ERβ選択的作動物質としての8β‐又は9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン、より特に、以下の:
9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
18a‐ホモ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
16β‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、又はその誘導体、
を含む群から選ばれる化合物が、エストロゲンの定義に含まれると見なされる。
【0050】
さらに、本明細書中に使用されるとき、用語「その誘導体」は、特に、薬剤師に明らかである8β‐又は9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエンのエステル、すなわち、実質的に無毒であるもの、且つ、特定された化合物の薬物動態学的特性、例えば受容性、吸収、分布、代謝及び排泄などに都合良く作用し得るものを指す。典型的に、本発明に関連する化合物のエステルは、先に規定した8β‐若しくは9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエンの3位又は17位にある。医薬的に許容し得るエステルの具体例としては、吉草酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、エナント酸エステル、ウンデシル酸エステル、安息香酸エステル、シピオン酸エステル、硫酸エステル及びスルファミン酸エステルが挙げられる。
【0051】
本明細書中に使用されるとき、「エストラジオールの治療的の許容される誘導体」という用語は、エストラジオールのエステル;エストラジオール及びエストラジオール・エステルの塩、例えばナトリウム塩など;並びに当該技術分野で知られている他の誘導体を指す。典型的に、エストラジオールのエステルは、エストラジオールの3位又は17位にある。代表的なエストラジオールのエステルの具体例としては、エストラジオール吉草酸エステル、エストラジオール酢酸エステル、エストラジオール・プロピオン酸エステル、エストラジオール・エナント酸エステル、エストラジオール・ウンデシレン酸エステル、エストラジオール安息香酸エステル、エストラジオール・シピオン酸エステル、エストラジオール硫酸エステル又はエストラジオール・スルファミン酸エステル、並びにその塩が挙げられる。エストラジオール吉草酸エステルが、エストラジオール・エステルの中で特に好まれる。
【0052】
「エストラジオール」という用語は、エストラジオールが17‐α‐エストラジオール又は17‐β‐エストラジオールの形態であってもよいことを意味することを意図している。好ましくは、エストラジオールは、17‐β‐エストラジオールの形態である。「エストラジオール」という用語はまた、エストラジオールの水和形態、特にエストラジオール半水和物にも及ぶ。
以下に議論されるとおり、エストロゲンは、シクロデキストリンと複合体化されても、及び/又は保護剤と組み合わせられてもよい。
【0053】
用語「水溶性フィルム・マトリックス」は、本明細書中に使用されるとき、水溶性高分子及び有効成分、並びに当該水溶性高分子中に溶解若しくは分散された他の助剤を含んでなるか、又はそれらから成る薄いフィルムを指す。好ましい実施形態において、少なくとも1つの有効成分が、水溶性高分子中に完全に溶解される。
【0054】
本明細書中に使用されるとき、「水溶性高分子」という用語は、少なくとも部分的に水に可溶性である、そして好ましくは完全に又は主に水に可溶性である、又は水を吸収するポリマーを指す。水を吸収するポリマーは、「水膨潤性ポリマー」であると呼ばれることも多い。本発明に有用な材料は、室温(約20℃)及び他の温度にて、例えば室温を超える温度などにて水溶性又は水膨潤性であることができる。
【0055】
そのうえ、前記材料は、大気圧より低い圧力にて水溶性又は水膨潤性であることができる。好ましくは、水溶性高分子は、水可溶性であるか、又は少なくとも20重量%の水吸収がある水膨潤性を有する。25重量%又はそれ以上の水吸収がある水膨潤性ポリマーもまた有用である。そのような水溶性高分子から形成される本発明の単位剤形は、体液、特に唾液との接触により溶解可能であるくらいに十分な水溶性であることが望ましい。本発明の好ましい実施形態において、水溶性高分子は粘膜接着性ポリマーである。これは、特定の例であるERβ選択的作動物質として、ステロイド性エストロゲンの場合に、有効成分の経粘膜デリバリーを可能にし、そして初回通過代謝を回避することによってそれらの分子の効果的な摂取を確実にするであろう。水溶性高分子は、典型的に、水溶性フィルム・マトリックスの50〜99.99重量%、例えば75〜99.9重量%程度を占める。
【0056】
(水溶性フィルム・マトリックスの大半を占める)本発明による水溶性マトリックスポリマーは、ポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGコポリマー)を含んでなり、そしてそれらは、Kollicoat(登録商標)IRの商標で様々な品質等級として市販されている。前述のPVA‐PEGコポリマーは、本発明による水溶性フィルム・マトリックスの少なくとも50重量%超、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%を占める。
【0057】
好ましくは、PVA‐PEGコポリマーは、90重量%超、最も好ましくは95%超を占める。
好ましくは、PVA‐PEGコポリマーは、BASF社(ドイツ)によってKollicoat(登録商標)IRとして市販されたものであり、それは、75%のポリビニルアルコール・ユニットと25%のポリエチレングリコール・ユニットを含んでなる。
【0058】
水溶性マトリックスポリマーは、例えばセルロース系物質、合成ポリマー、ゴム、タンパク質、デンプン、グルカン、及びその混合物から成る群から選択されるものなどの他の水溶性マトリックスポリマーをさらに含んでなる。前述の他の水溶性マトリックスポリマーは、典型的に、水溶性フィルム・マトリックスの40%未満、30%、20%、又は10%を占める。好ましくは、前述の他の水溶性マトリックスポリマーは、水溶性フィルム・マトリックスの30%未満である。
【0059】
本明細書中に記載の目的に好適なセルロース系物質の例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びその組み合わせ物が挙げられる。特に好ましいセルロース系物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースであり、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0060】
PVA‐PEGコポリマーと組み合わせられる他の合成ポリマーの例として、ポリマー、例えばポリアクリル酸やポリアクリル酸誘導体などが挙げられる。
水溶性ゴムの例としては、アラビアゴム、キサンタンゴム、トラガント、アカシア、カラギーナン、グアルゴム、ローカストビーンゴム、ペクチン、アルギナート及びその組み合わせ物が挙げられる。
【0061】
有用な可溶性タンパク質ポリマーとしては、ゼラチン、ゼイン、グルテン、ダイズ・タンパク質、ダイズ・タンパク質分離物、ホエー・タンパク質、ホエー・タンパク質分離物、カゼイン、レビン(levin)、コラーゲン及びその組み合わせ物が挙げられる。
有用なデンプンの例としては、α化、修飾又は未修飾デンプンが挙げられる。デンプンの起源は、変わってもよく、そしてプルラン、タピオカ、コメ、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギ、及びその組み合わせ物が挙げられる。
【0062】
(本発明に従って使用されてもよい)追加の水溶性高分子としては、デキストリン、デキストラン及びその組み合わせ物、並びにキチン、キトサン(chitosin)及びその組み合わせ物、ポリデキストロース、そしてフルクトース・オリゴマーが挙げられる。
先に示したとおり、本発明の単位剤形は、同様のものである低用量の、すなわち5〜5000μgの用量の、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるところのステロイド性エストロゲンの実施形態の特定の形態を含んでなる。
【0063】
注目の本発明の実施形態において、フィルム・マトリックスは、10〜3000μgの前述のステロイド性エストロゲン、例えば25〜1500μg程度のステロイド性エストロゲンを含んでなる。
【0064】
ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるところのステロイド性エストロゲンは、治療的に許容し得るそれらの誘導体を含めたエチニルエストラジオール、エストラジオール・エストロン、メストラノール、エストリオール、エストリオール・スクシナート、エストロン・スルファート、17β‐エストラジオール・スルファート、17α‐エストラジオール・スルファート、エストラジオール・バレラートから成る群から選択されることもできる。本発明の非常に好ましい実施形態において、エストロゲンは、エチニルエストラジオール又はエストラジオールであり、特にエチニルエストラジオールである。
【0065】
エストラジオールが本発明の実施形態の特定の形態の選択されたステロイド性エストロゲンであると考えれば、フィルム・マトリックス中に含まれる量は、約25〜400μg、より特に30〜300μgのエストラジオールである。単位剤形は、「極めて少ない」量のエストラジオール、すなわち、25〜60μgのエストラジオール、例えば30〜50μg程度のエストラジオール、好ましくは40〜50μgのエストラジオール、例えば、約40μg、約45μg又は約50μgのエストラジオールを含むことができる。単位剤形はまた、「非常に少ない」量のエストラジオール、すなわち、>60〜200μgのエストラジオール、例えば、70〜160μg程度のエストラジオール、好ましくは80〜150μgのエストラジオール、例えば、約80μg、85μg、90μg、100μg、115μg;120μg、150μg、又は約160μgのエストラジオールを含むことができる。
【0066】
エチニルエストラジオールが本発明のこの特定の実施形態による単位剤形中に組み込まれる場合、その単位剤形は、典型的に、10〜30μgのエチニルエストラジオール、例えば、約15μg又は約20μg程度のエチニルエストラジオールを含む。
【0067】
フィルム・マトリックス中に含まれることができる、先に規定した8β‐又は9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン、特に以下の:
9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
18a‐ホモ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
16β‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール又はその誘導体を含んでなる群から選択される化合物、より特に17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、又はその誘導体に関する用量の具体例としては、約10、12.5、15、20、25、30、40、50、60、62.5、70、80、90、100、120、150、180、200、250、270、300、350、360、400、450、500、540、600、625、700、800、875、900、1000、1100、1250、1500、1750、2000、2500又は3000μgのER‐β選択的作動物質の用量が挙げられる。フィルム・マトリックス中に含まれることができるER‐β選択的作動物質の用量の特定の例は、約15、20、25、30、40、50、60、62.5、70、75、80、90、100、120、150、180、200、250、270、300、500、625、875又は1000μgのER‐β選択的作動物質の用量である。
【0068】
先に触れた用量は、好ましくは日用量に相当する。先に触れた用量は、エストラジオール、エチニルエストラジオール又はステロイド骨格の3又は7位においてエステル化されていない先に規定したERβ選択的作動物質に関して示されていることは理解されるべきである。前述の有効成分の医薬的に許容し得るエステルが利用される場合、エステル化されていない前述の有効成分の決まった用量と治療的に同等である用量が使用されるべきであることは理解されるであろう。前述の有効成分の有効量が知られているときに、他の形態の薬理学的/治療的に等価な用量を決定することは、当業者にとって日常的なことである。
【0069】
別の言い方をすれば、エストラジオール、エチニルエストラジオールの医薬的に許容し得るエステル又は先に規定したERβ選択的作動薬が利用される場合、エステル化されていない有効成分の決まった用量と等モルである用量が使用されるべきであることは理解されるであろうが、但し、エステル化されていない有効成分及びその誘導体の吸収が同じであることを条件とする、以下を参照のこと。よって、「有効成分(AI)の誘導体Xの治療的な同等量」は、以下の式:
【0070】
用量AI×(MWAIの誘導体X/MWAI
{式中、MWは着目の有効成分の分子量を示す。}によって計算できる。有効成分としてのエストロゲンの先に示した間隔及び用量のすべては、そのエストロゲンが誘導体としてそれ自体使用される場合には、(前記の式を使用して)対応する間隔及び用量に変換されるべきであることは理解されるであろう。しかしながら、前記の式は、生物学的利用能と濃度曲線下面積(AUC)がエストロゲンと着目の誘導体に関して同一である場合にのみ適用できることは理解されるだろう。よって、着目のエストロゲン誘導体の吸収がエストロゲンそのものの吸収と異なる場合には、所定の用量のエストロゲン作動薬の血漿レベルを達成するのに必要とされるエストロゲン誘導体の量が、治療的に同等量を決定するための決め手となる。
【0071】
Timmer及びGeurtsの研究論文は、エストロゲンの場合に同等の用量をどのように決定することができるかに関する手引きを提供する(European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics, 24(1):47-53,1999中の"Bioequivalence assessment of three different estradiol formulations in postmenopausal women in an open, randomized, single-dose, 3-way cross-over"を参照のこと)。
【0072】
本発明の実施形態の更なる形態によると、単位剤形は、有効成分としてプロゲスチンを含んでなる。本発明の単位剤形中に組み込まれるプロゲスチンの量もまた、もちろん、選択されたプロゲスチンの効力に依存するが、ほとんどの場合、単位剤形に基づいて計算された0.1〜30%(w/w)の範囲内にあるであろう。典型的に、本発明の単位剤形に組み込まれるプロゲスチンの量は、0.1〜25%(w/w)であり、例えば0.2〜20%(w/w)程度である。
【0073】
より特に、単位剤形は、0.05〜0.5mg、好ましくは0.075〜0.25mg、例えば0.1mg、0.125mg又は0.15mg程度の量でデソゲストレルを;0.25〜2mg、好ましくは0.75〜1.5mg、例えば1mg程度の量でエチノジオール・ジアセタートを;0.025〜0.3mg、好ましくは0.075〜0.25mg、例えば0.1mg又は0.15mg程度の量でレボノルゲストレルを;0.2〜1.5mg、好ましくは0.3〜1.25mg、例えば0.4mg、0.5mg又は1mg程度の量でノルエチンドロン(ノレチステロン)を;0.5〜2mg、好ましくは1〜1.5mg、例えば1mg又は1.5mg程度の量でノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセタートを;0.1〜1mg、好ましくは0.25〜0.75mg、例えば0.3mg又は0.5mg程度の量でノルゲストレルを;0.1〜0.5mg、好ましくは0.15〜0.3mg、例えば0.18mg、0.215mg又は0.25mg程度の量でノルゲスチメートを;1〜2mg、好ましくは2mgの量でシプロテロン・アセタートを;2〜3mg、好ましくは2mgの量でジエノゲストを;0.05〜0.1mg、好ましくは0.06〜0.075mg、例えば0.075mg程度の量でゲストデンを;そして2〜3mg、例えば2.5mg程度の量でチボロンを含んでなることができる。
【0074】
単位剤形がプロゲスチン様成分(progestinic component)としてドロスピレノンを含んでいる場合、そのとき、単位剤形は、典型的に0.25〜4mgのドロスピレノン、例えば1〜4mg程度のドロスピレノン、例えば、約1mg程度、約2mg又は約3mgのドロスピレノンを含んでいる。
上記に議論されたとおり、少なくとも1つの有効成分は、シクロデキストリンと複合体化される、及び/又は保護剤と組み合わせられてもよい。
【0075】
本発明の1つの態様において、単位剤形は、ジC1-4‐アルキル‐アミノ‐C1-4‐アルキル・メタクリラートと保護剤としての中性メタクリル酸C1-6‐アルキル・エステル・ベースのカチオン性ポリメタクリラートコポリマーと組み合わせられる有効成分、好ましくはドロスピレノンを含んでいる。本発明のより好ましい実施形態において、カチオン性ポリメタクリラートは、ジメチルアミノエチル・メタクリラートと中性メタクリル酸C1-4アルキル・エステル・ベースのコポリマー、例えば、ジメチル‐アミノエチル・メタクリラート、メタクリル酸メチルエステル、及びメタクリル酸ブチルエステル・ベースのコポリマーなどである。特定の好ましいカチオン性ポリメタクリラートは、ポリ(ブチル・メタクリラート、(2‐ジメチル・アミノエチル)メタクリラート、メチル・メタクリラート)1:2:1である。先に触れたカチオン性ポリメタクリラートは、典型的に、100,000〜500,000Daの範囲の平均分子量、例えば100,000〜300,000Da程度の範囲の平均分子量、例えば100,000〜250,000Daの範囲の平均分子量、好ましくは100,000〜200,000の範囲の平均分子量、例えば125,000〜175,000Da程度の範囲の平均分子量、例えば約150,000Daの平均分子量を有する。そのようなカチオン性ポリメタクリラートは、Eudragit(登録商標)Eという商品名でDegussa(ドイツ)から入手可能である。特に、Eudragit(登録商標)E100が好まれる。
【0076】
本発明の他の実施形態において、単位剤形は、保護剤としてワックスと組み合わせられた有効成分、好ましくはドロスピレノンを含んでいる。ワックスの例としては、動物ロウ、例えば、蜜ロウ、いぼたロウ(chinese wax)、シェラックロウ、鯨ロウ、及びウール・ワックスなど;野菜ロウ、例えば、カルナバ・ロウ、ベイベリー・ワックス、キャンデリラ・ワックス、ヒマシ・ロウ、エスパルト・ワックス、オーリクリー・ロウ、コメヌカ・ワックス及びダイズ・ワックスなど;鉱物ワックス、例えば、セレシン・ロウ、モンタン・ロウ、オゾセライト・ワックス及びピート・ロウなど;石油ワックス、例えば、パラフィン・ロウ及び微結晶性ワックスなど;並びに合成ワックス、例えば、ポリエチレン・ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、エステル化及び/又は鹸化ワックス、置換アミド・ワックス、そして重合α‐オレフィンが挙げられる。特定の好ましいワックスは、カルナバ・ロウである。
【0077】
有効成分が保護剤と組み合わせられる場合、それは、好ましくは有効成分と保護剤を含んでなる粒子の形態で提供される。前述の粒子は、口の中ではできるだけわずかな有効成分しか放出しないようにすべきであると同時に、できるだけ多くの有効成分が胃及び/又は腸内で溶解されるべきである。これは、例えば、有効成分を保護剤内に包理することによって、例えば、有効成分を保護剤中に固体分散状態で存在させるような方法により達成できる。この実施形態は、保護剤がカチオン性ポリメタクリラートであるとき、特に好ましい。あるいは、有効成分を、保護剤でコーティングしてもよい。この実施形態は、保護剤がワックスであるときに、特に好ましい。
【0078】
有効成分と保護剤を含んでなる粒子は、≦200μmのd90粒径を有する。本発明の注目の実施形態において、粒子は、≦175μmのd90粒径、例えば≦150μm程度のd90粒径を有する。本明細書中に提供される実施例から分かるように、有効成分と保護剤を含んでなる粒子の粒径は、少なくともある程度、適用された保護剤に依存する。例えば、保護剤がカチオン性ポリメタクリラートコポリマーである場合、有効成分と保護剤を含んでなる粒子は、典型的に、50〜200μmの範囲のd90粒径を有し、より典型的に、50〜150μmの範囲、例えば75〜150μm程度の範囲のd90粒径を有する。d90粒径の具体例としては、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm、及び約150μmの値が挙げられる。同様に、d50粒径は、典型的に、5〜80μmの範囲、より典型的に10〜75μmの範囲、例えば25〜60μm程度の範囲にある。d50粒径の具体例としては、約5μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、及び約80μmの値が挙げられる。その一方で、保護剤がワックスである場合、粒径はかなり小さい。よって、本発明のこの実施形態によると、有効成分と保護剤を含んでなる粒子は、典型的に、0.1〜40μmの範囲、例えば0.2〜30μm程度、例えば0.4〜25μm、好ましくは0.5〜20μm、例えば0.75〜15μm程度、例えば1〜10μmのd90粒径を有する。d90粒径の具体例としては、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約15μm、約20μm、及び約30μmの値が挙げられる。同様に、d50粒径は、典型的に、0.1〜10μmの範囲、より典型的に、0.5〜7.5μmの範囲、例えば1〜6μm程度の範囲にある。d50粒径の具体例としては、約0.5μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、及び約10μmの値が挙げられる。
【0079】
本明細書中に使用されるとき、「d90粒径」という用語は、粒子の少なくとも90%が球状粒子の推定に従って体積分配曲線から計算される所定値未満の粒径を有するような粒径分布であることを意味することを意図している。同様にして、「d50粒径」という用語は、粒子の少なくとも50%が球状粒子の推定に従って体積分配曲線から計算される所定値未満の粒径を有するような粒径分布であることを意味することを意図している。
【0080】
そのため、用語「粒径」、「粒径分布」、「粒子直径」、「d90」、「d50」等が本明細書中に使用されるときにはいつも、それに関連して使用される具体的な値又は範囲が球状粒子の推定に従って体積分配曲線から決定されることを常に意味していると理解されるべきであり、そのことに留意することが重要である。粒径分布は、様々な技術、例えば、レーザ回折によって測定することができ、そして当業者に知られているであろう。粒子は、球状、実質的に球状、又は非球状であってもよく、例えば不規則な形状の粒子若しくは楕円状の形状の粒子などであってもよい。楕円状の形状の粒子又は楕円体は望ましい、なぜなら、それらには球状粒子と比較してより低い程度でしか沈殿しない傾向があるので、フィルム成形マトリックス中で均一性を維持するそれらの能力のためである。ウエハースに組み込まれるとき、有効成分と保護剤を含んでなる粒子の粒径分布は、フィルム成形マトリックスの溶解、保護された粒子の分離、及び保護された粒子の乾燥によって測定することもできる。得られた粒子の粒径分布は、例えばレーザ回折によって、先に記載したように測定することもできる。
【0081】
本発明の単位剤形は、最も好ましくは薄いフィルムの形態であり、そしてそれは、主にフィルムの大きい表面積のため速く溶解し、湿気の多い口腔環境に晒されると素早く湿る。通常、柔らかく、壊れやすく、及び/又はもろい速溶性の錠剤とは逆に、フィルムは、固形であり、且つ、強いが、それでも柔らかい。先に示したとおり、フィルムは、薄く、且つ、患者のポケット、財布又はハンドバッグに入れて持ち歩かれる。
【0082】
フィルムは、哺乳動物の雌の、舌下若しくは舌上、口蓋上側、頬の内側又はあらゆる口腔粘膜に適用されてもよい。フィルムは、長方形、楕円形、円形、又は、所望であれば、適用される可能性がある、舌、口蓋又は頬の内側の形状に切り取られた特定の形状であってもよい。フィルムは、素早く水和され、そして適用部位の上に付着するであろう。それは、次に、素早く崩壊し、そして溶解する。有効成分は、例えば、口腔粘膜吸収のために放出され得る。
【0083】
本発明の単位剤形の寸法に関して、水溶性フィルム形成マトリックスは、典型的に、300μm未満、特に250μm未満、好ましくは200μm未満、例えば150μm未満程度の厚みを持っているドライ・フィルムに形成される。より好ましくは、厚さは、125μm未満、例えば100μm未満程度である。別の言い方をすれば、厚さは、典型的に、10〜300μmの範囲、特に15〜250μmの範囲、好ましくは20〜200μmの範囲、例えば25〜150μm程度の範囲にある。より好ましくは、厚さは、25〜125μmの範囲、例えば25〜100μm程度の範囲、例えば30〜90μmの範囲、特に40〜80μmの範囲にある。具体的、且つ、好ましい例としては、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm又は約100μmの厚さが挙げられる。具体的、且つ、特に好ましい例としては、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm又は約80μmの厚さが挙げられる。
【0084】
フィルム・マトリックスの表面の寸法(表面積)は、典型的に、2〜10cm2の範囲、例えば3〜9cm2程度の範囲、例えば3〜8cm2の範囲、より好ましくは3〜7cm2の範囲、特に4〜6cm2の範囲にある。具体的、且つ、好ましい表面積の例としては、約2、3、3.5、4、4,5、5、5.5、6、6.5又は7cm2の表面積が挙げられる。
【0085】
フィルム・マトリックスの総重量は、典型的に、5〜200 mgの範囲、例えば5〜150mg程度の範囲、例えば10〜100mgの範囲にある。より好ましくは、フィルム・マトリックスの総重量は、10〜75mgの範囲、例えば10〜55mg程度の範囲にある。フィルム・マトリックスの重さの例としては、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約50mg又は約55mgの重さが挙げられる。
【0086】
本発明の注目の実施形態において、単位剤形は吸収促進薬をさらに含んでなる。吸収促進薬は、例えば、低い頬側吸収率を通常示すペプチドなどの高分子量薬物を送達する際にそれらの有効性が実証された。そのような吸収促進薬は、多くの機構によって、例えば細胞膜の流動性を高めること、細胞間/細胞内の脂質を引き出すこと、細胞タンパク質を変化させること、又は表面ムチンを変化させることなどによって作用することができる。最も一般的に使用される吸収促進薬としては、アゾン、脂肪酸、胆汁酸塩、及び界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。吸収促進薬の具体例としては、これだけに限定されるものではないが、2,3‐ラウリル・エーテル、アプロチニン、アゾン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セチルトリメチル臭化アンモニウム、シクロデキストリン、デキストラン硫酸、グリコール、ラウリン酸、リゾホスファチジルコリン、メンソール、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン、ホスファチジルコリン、EDTAナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム及びタウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシドが挙げられる。吸収促進薬は、典型的に、フィルム・マトリックスの0.1〜50重量%、例えばフィルム・マトリックスの1〜20重量%程度、例えばフィルム・マトリックスの1〜10重量%に相当する量でフィルム・マトリックス中に組み込まれる。吸収促進薬は、典型的に、フィルム・マトリックス中にで含まれる、すなわち、吸収促進薬は、典型的に、フィルム・マトリックス中に溶解されているか、又は分散されている。好ましくは、吸収促進薬を含まない。
【0087】
水溶性マトリックスポリマーと有効成分(そして任意に1以上の吸収促進薬)に加えて、本発明の単位剤形は、様々ないくつかの助剤、例えば、味マスキング剤;感覚受容剤(organoleptic agents)、例えば甘味料や香味料など;脱泡及び脱泡剤;可塑剤;界面活性剤;乳化剤;増粘剤;結合剤;清涼化剤;唾液刺激剤、例えばメンソールなど;抗微生物剤;着色料等を含むことができる。かかる種々助剤は、フィルム・マトリックス中に含まれ、そして典型的に、フィルム・マトリックス中に溶解されているか、又は分散されている。
【0088】
好適な甘味料としては、天然の甘味料と人工の甘味料が挙げられる。好適な甘味料の具体例としては、例えば、以下の:
a)水溶性甘味料、例えば、糖アルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖など、例えば、マルチット(maltit)、キシリット、マンニット(mannit)、ソルビット、キシロース、リボース、グルコース(デキストロース)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(レブロース)、ショ糖(糖)、マルトース、転化糖(ショ糖由来のフルクトースとグルコースの混合物)、部分的加水分解デンプン、コーン・シロップ固体、ジヒドロカルコン、モネリン、ステビオシド、及びグリチルリジンなど;
【0089】
b)水溶性人工甘味料、例えば、サッカリン・ナトリウム塩、すなわち、サッカリン・ナトリウム若しくはカルシウム塩、シクラミン酸塩、3,4‐ジヒドロ‐6‐メチル‐1,2,3‐オキサチアジン‐4‐オン‐2,2‐ジオキシドのナトリウム、アンモニウム若しくはカルシウム塩、3,4‐ジヒドロ‐6‐メチル‐1,2,3‐オキサチアジン‐4‐オン‐2,2‐ジオキシドのカリウム塩(アセスルファム‐K)、サッカリンの遊離酸形態等;
【0090】
c)ジペプチド・ベースの甘味料、例えば、L‐アスパラギン酸から誘導された甘味料など、例えばL‐アスパルチル‐L‐フェニルアラニン・メチルエステル(アスパルテーム)、L‐アルファ‐アスパルチル‐N‐(2,2,4,4,5‐テトラメチル‐3‐チエタニル)‐D‐アラニンアミド水和物、L‐アスパルチル‐LフェニルグリセリンとL‐アスパルチル‐L‐2,5‐ジヒドロフェニルグリシンのメチルエステル、L‐アスパルチル‐2,5‐ジヒドロ‐Lフェニルアラニン、L‐アスパルチル‐L‐(1‐シクロヘキシエン)‐アラニン等;
【0091】
d)天然に存在する水溶性甘味料由来の水溶性甘味料、例えばsucralose(登録商標)の製品名で知られている、例えば、普通糖(ショ糖)の塩素化誘導体など;並びに
e)タンパク質ベースの甘味料、例えばthaurnatoccous danielli(Thaurnatin I及びII)など、
が挙げられる。
【0092】
一般に、特定の組成物に所望される甘さのレベルを提供するために有効量の甘味料が利用され、そしてこの量は選択された甘味料によって異なる。この量は、典型的に、フィルム・マトリックスの約0.01%〜約20重量%、好ましくは約0.05%〜約10重量%のであるだろう。これらの量は、使用されるいずれかの任意の香味オイルによって達成される香味レベルとは独立に、所望の甘味レベルを達成するのに使用できる。
【0093】
有用な香味(香味料)は、天然の人工の香味を含んでいる。これらの香味料は、合成香味オイル及び、香味芳香剤、及び/又は植物、葉、花、果実などに由来するオイル、オレオ樹脂、及び抽出物、並びにその組み合わせ物から選択することができる。香味オイルの限定されることのない例としては:スペアミント油、シナモン油、ペパーミント油、チョウジ油、ベイ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグ油、セージ油、及びビターアーモンド油が挙げられる。同様に、人工の、天然の、又は合成の果物香味料、例えば、バニラ、チョコレート、コーヒー、ココア、並びにレモン、オレンジ、ブドウ、ライム及びグレープフルーツを含めた柑橘油、そしてリンゴ、洋ナシ、モモ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、アプリコットを含めたフルーツ・エッセンス等も有用である。これらの香味料は、個別に又は組み合わせて使用できる。個別又は組み合わせて利用されるか否かに関係なく、一般的に使用される香味料としては、ミント、例えばペパーミントなど、人工バニラ、シナモン派生物、及び様々な果物香味料が挙げられる。
【0094】
シンナミル・アセタート、シンナムアルデヒド、シトラール、ジエチルアセタール、ジヒドロカルビル・アセタート、エウゲニル・ホルマート、p‐メチルアニソール等を含めたアルデヒドやエステルなどの香味料が使用されてもよい。アルデヒド香味料の更なる例としては、これだけに限定されるものではないが、アセトアルデヒド(リンゴ);ベンズアルデヒド(サクランボ、アーモンド);シナモンアルデヒド(シナモン);シトラール、すなわちアルファ・シトラール(レモン、ライム);ネラール、すなわちベータ・シトラール(レモン、ライム);デカナール(オレンジ、レモン);エチル・バニリン(バニラ、クリーム);ヘリオトロピン、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム);バニリン(バニラ、クリーム);アルファ‐アミル・シンナムアルデヒド(スパイシー・フルーティな香味料);ブチルアルデヒド(バター、チーズ);バレルアルデヒド(バター、チーズ);シトロネラール(改質、多くのタイプ);デカナール(柑橘類);アルデヒドC‐8(柑橘類);アルデヒドC‐9(柑橘類);アルデヒドC‐12(柑橘類);2‐エチル・ブチルアルデヒド(ベリー類);ヘキセナール、すなわちトランス‐2(ベリー類);トリル・アルデヒド(サクランボ、アーモンド);ベラトルムアルデヒド(バニラ);12,6‐ジメチル‐5‐ヘプテナール、すなわちメロナール(メロン);2‐ジメチルオクタナール(緑の果実);及び2‐ドデセナール(柑橘類、ミカン);サクランボ;ブドウ;メンソールのような精油;その混合物;等が挙げられる。
【0095】
利用される香味料香味料の量は、典型的に、好みの問題であり、香味料のタイプ、個々の香味、及び所望の強さなどの要因に左右される。最終製品で所望の結果を得るように、この量を変えてもよい。このような変更は、必要以上の実験の必要なしに、当業者の能力の範疇にある。一般に、フィルム・マトリックスの約0.01重量%〜約10重量%の量が採用される。
【0096】
先に議論したように、単位剤形はまた、消泡及び/又は脱泡剤、例えばシメチコンなどを含むこともでき、それは、ポリメチル・シロキサンと二酸化ケイ素の組み合わせ物である。シメチコンは、フィルム組成から空気を減らす又は除去する消泡又は脱泡剤のいずれかとして働く。消泡剤が、組成物中への空気の導入を予防する際の助けとなる一方で、脱泡剤は、組成物から空気を除去する助けとなる。好ましくは、消泡も脱泡剤も含まない。
【0097】
単位剤形は、調製され、そしてそれが使用前、すなわち、口腔内に導入される前にそれから取り外される第2の層、すなわち、支持層又は裏打ち層(ライナー)に貼られてもよい。好ましくは、支持体又は裏打ち材は、水溶性でなく、且つ、好ましくは、ポリエチレン‐テレフタラート、又は当業者に周知の他の好適な材料から成ることができる。
接着剤を使用する場合、それは、摂取可能で、且つ、(単数若しくは複数の)有効成分の特性を変えない食品グレードの接着剤が好ましい。
【0098】
本発明の実施形態の特定の形態において、先に規定したステロイド性エストロゲン、より特にERβ選択的作動物質、又はその誘導体は、単位剤形中に存在する唯一の、又はたった一つの治療的活性薬物物質である。
本発明の他の実施形態において、本発明の単位剤形は、2以上の薬物原料、特に少なくともエストロゲンと少なくともプロゲスチンを含んでなる。特に好ましいプロゲスチンは、16,17‐カルボラクトン誘導体(例えばドロスピレノン)、及びレボノルゲストレル、ジエノゲスト、ゲストデン、並びにシプロテロン・アセタートである。本発明によるウエハース中に含まれ得るプロゲスチンの他の具体例を、先に明確に言及した。
【0099】
少なくとも1つの活性薬物物質が、フィルム・マトリックス中に含まれる。
本開示は、ERβ選択的作動物質、又はその誘導体を含んでいるウエハースに主に関係するが、本発明はまた、プロゲステロン様活性を示す治療的に許容し得る誘導体又は化合物、例えば、治療的に許容し得る誘導体を含めたレボノルゲストレル、ノルゲストレル、ノルエチンドロン(ノレチステロン)、ジエノゲスト、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセタート、エチノジオール・ジアセタート、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、リネストレノール、ノルゲストリエノン、エチステロン、プロメゲストン、デソゲストレル、3‐ケト‐デソゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデンなどを含めた、エストロゲン様活性を示す他の化合物、例えば、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストロン、エストラジオール、エストラジオール・バレラート、17β‐エストラジオール・スルファート、17α‐エストラジオール・スルファート、メストラノール、エストリオール、エストリオール・スクシナートなどを用いても実施できることが想定される。一般に、本発明は、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるところのステロイドである有効成分を用いて実施できる。
【0100】
従って、1つの態様において、本発明は、水溶性の薄いフィルム・マトリックスを含んでなる単位剤形に関し、ここで上述のフィルム・マトリックスは、以下の:
a)水溶性マトリックスポリマーとしてのポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGグラフトコポリマー);
b)エストロゲン受容体ベータ(ERβ)選択的作動物質、特に以下の化合物:
9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
18a‐ホモ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
16β‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、又はその誘導体、
から選択されるERベータ選択的作動物質としての8β‐又は9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエンを含んでなり;且つ、上述のフィルム・マトリックスには300μm未満の厚みしかない。
【0101】
治療的使用と投与
本発明の単位剤形が口内に投与されること、すなわち、単位剤形が口腔内に投与され、そして続いて、活性薬物物質が1ヵ所以上の口腔粘膜を介して吸収されることは理解されるであろう。よって、活性薬物物質は、舌側投与、舌下投与、頬側投与、及び口蓋投与に好適である。
従って、別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の単位剤形に関する。
【0102】
さらに別の態様において、本発明は、ホルモン補充療法(HRT)において、特に、不十分な内因性エストロゲン・レベルによって引き起こされる哺乳動物の雌の健康状態を処理するか、緩和するか又は予防するのに使用される単位剤形に関する。そのような健康状態の例としては、これだけに限定されるものではないが、骨粗鬆症、頭痛、吐き気、うつ病、血管運動症状、泌尿生殖器の萎縮の症状、骨ミネラル濃度の減少、並びに骨折の危険性の増大又は骨折の発生が挙げられる。
【0103】
本発明による水溶性の薄いフィルム(ウエハース)の形態をとる薬物送達システムは、避妊にもまた都合良く使用できる。
本発明の単位剤形は、特にステロイド性エストロゲンに関して、経口投与された錠剤に比べて著しく高い生物学的利用能を有する。
よって、30%より高い生物学的利用能が、そういったエストロゲンに関して典型的に達成されるだろう。より特に、30〜100%、例えば40〜90%程度の範囲の生物学的利用能が、典型的に達成されるだろう。本発明の注目の実施形態において、50%より高い、特に60%より高い生物学的利用能が達成される。
【0104】
今度、これは、治療学的な有効成分の血清レベルを、経口投与と比較して有意に低い用量の上述の有効成分しか投与されないにも関わらず達成できるといった結果を招く。これは、例えば、本発明によるステロイド性エストロゲンとしてのERβ選択的作動物質が有効成分である場合である。
明らかに、達成された有効成分の生物学的利用能、並びに血清レベルは、単位剤形の実際のデザイン、並びに薬物負荷や適用された有効成分に依存するであろう。
【0105】
製造
本発明による単位剤形と等しく規定されるに薬物送達システムは、医薬技術者に周知の標準的な方法によって調製されることができる。
【0106】
典型的に、薬液は、適切な溶媒中に有効成分、又はその誘導体を溶解することによって調製される。溶媒は、好ましくは、比較的に揮発性の溶媒、例えばアルコールなど、特にエタノールである。そして、PVA‐PEGコポリマーを含んでなるマトリックスポリマー溶液は、水溶性マトリックスポリマーを好適な溶剤、例えば水若しくはアルコール又はアルコールと水の混合物に加えることによって調製される。好ましくは、溶媒は、エタノール/水混合物である。当然のことながら、水溶性マトリックスポリマーを溶解するのに必要な時間と条件は、使用されるポリマーと溶媒に依存するだろう。よって、ある場合には、水溶性マトリックスポリマーは、室温にて緩やかに撹拌するだけで容易に溶解できるが、その他の場合では、系に熱と激しい撹拌を加える必要がある。代表的な実施形態において、混合物は、1〜4時間、好ましくは、約2時間、又は溶液が得られるまで撹拌される。溶液は、典型的に、60〜80℃、例えば約70℃程度の温度にて撹拌される。室温にさました後に、薬液は、マトリックスポリマー溶液中に注ぎ込まれ、そして十分に混合される。得られた溶液(コーティング溶液)は、すぐに又は数日以内であればコーティングに使用できる。様々な量の溶媒、マトリックスポリマー等が、約5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に20〜35重量%のコーティング溶液の固形含量に達するように調整される。
【0107】
代替の実施形態において、コーティング溶液は、有効成分、又はその誘導体を適切な溶媒、好ましくはアルコール、特にエタノールに加え、それ続いて、水を加え、その後マトリックスポリマーを加えることによって、直接的に調製されることもできる。そして、その混合物は、先に記載したように溶液を得るまで処理される。得られた溶液(コーティング溶液)は、すぐに又は数日以内であればコーティングに使用できる。様々な量の溶媒、マトリックスポリマー等が、約5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に20〜35重量%のコーティング溶液の固形含量に達するように調整される。
【0108】
代替の実施形態において、コーティング溶液は、有効成分、又はその誘導体を適切なポリマー溶液に直接的に加え、そして薬物をその中に溶解することによって調製されることもできる。この場合、ポリマー溶液は、先に記載の工程に従って溶媒/水混合物中にポリマーを溶解することによって、あらかじめ調製された。ポリマー溶液中への有効成分の溶解の後に、得られた溶液(コーティング溶液)は、すぐに又は数日以内であればコーティングに使用できる。様々な量の溶媒、マトリックスポリマー等が、約5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に20〜35重量%のコーティング溶液の固形含量に達するように調整される。
他の賦形剤、助剤、及び/又は活性な薬物原料を、先に触れたステップのいずれの間であっても加えることができる。
【0109】
必要であれば、コーティング溶液は、好適な支持体又は剥離ライナー(ライナー)上に広げられる前に脱気される。好適なライナーの例としては、これだけに限定されるものではないが、ポリエチレン‐テレフタラート(PET)ライナー、例えば、Perlasic(登録商標)LF75(Perlen Convertingから入手可能)、Loparex(登録商標)LF2000(Loparex BVから入手可能)及びScotchpack(登録商標)9742など(3M Drug delivery Systemsから入手可能)などが挙げられる。本発明の1つの態様において、コーティング溶液は、展着ボックス(a spreading box)を用いて好適なライナー上に広げられ、そして室温にて12〜24時間乾かされる。そして、30〜100μmの厚さ、好ましくは40〜80μmの厚さの薄い透明フィルムが作製され、続いて、それが、所望の大きさ及び形状の小片に切り出される。あるいは、コーティング溶液が、好適なライナー上に薄いフィルムとしてコートされ、そして40〜120℃の乾燥温度を使用した(例えばCoatema Coating Machinery GmbH、Dormagen, Germanyによる)自動コーティング及び乾燥装置を使用してインラインで乾かされる。そして、薄い透明フィルムが作製され、続いて、それが、所望の大きさ及び形状の小片に切り出される。
【0110】
上記の製造手順に従って、本発明によるPVA‐PEGコポリマーを含んでなる薬物送達システムと上述のポリマーを含まない薬物送達システムの両方が以下の実施例に記載のとおり調製された。
【実施例】
【0111】
A.本発明によるウエハースとその調製
水溶性の薄いフィルム・マトリックス(ウエハース)を含んでなる単位剤形、並びにそれらの調製法に関する以下の実施例(1〜4)は、本発明による単位剤形とそれらの調製法の説明に役立つ制限されることのない例として意図されている。有効成分としてERβ選択的作動物質を含んでなるウエハースに関する以下の実施例のために、化合物17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオールを使用した。
以下に提供されるウエハースは、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐基であるところのステロイドである有効成分を含んでなる本発明による単位剤形の制限されることのない例として考慮されるべきである。
本願では、パーセンテージ(%)で与えられるあらゆる量は、別に指定されない場合には重量パーセント(% w/w)として意図されるべきである。
【0112】
実施例1:ウエハースの製造
コーティング溶液の調製
【0113】
選択肢A
0.725gのERG選択的作動物質を含む薬液を、撹拌しながら236.7gのエタノール(96%)中にその薬物を溶解することによって調製する。ポリマー溶液を、比2:1の水/エタノール混合物710gにグラフトした289.275gのPVA‐PEGコポリマー(マクロゴール・ポリ(ビニル・アルコール)グラフトコポリマー)又は比1:2の水/エタノール混合物710gにグラフとした289.275gのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)若しくはヒドロキシプロピル・メチルセルロース(HPMC)を広げることによって調製する。そのポリマーを、70℃にて1〜2時間撹拌した後に溶解する。室温まで冷ました後に、薬液を、ポリマー溶液中に注ぎ込み、そして十分に混合する。得られた溶液(コーティング溶液)は、すぐに又は数日以内であればコーティングに使用できる。
【0114】
選択肢B
コーティング溶液を、撹拌しながらエタノール(96%)中に0.725gのERβ選択的作動物質を溶解することによって調製する。水と混合した後に、289.275gのそれぞれのポリマーを加える。マトリックスポリマーがPVA‐PEGコポリマー(マクロゴール・ポリ(ビニル・アルコール)グラフトコポリマー)の場合には、236.7gのエタノールと473.3gの水を使用する。マトリックスポリマーがヒドロキシプロピル・セルロース(HPC)又はヒドロキシプロピル・メチルセルロース(HPMC)の場合には、473.3gのエタノールと236.7gの水を使用する。ポリマーを加え、そして70℃にて2時間撹拌した後に溶解する。得られた溶液(コーティング溶液)は、すぐに又は数日以内であればコーティングに使用できる。
【0115】
ウエハースの調製
選択肢1
コーティング溶液を、脱気し、ポリエチレン‐テレフタラート(PET)ライナー(例えば、Scotchpak(登録商標)9742又はPerlasic(登録商標)LF75)上に展着ボックスを用いて広げ、そして室温にて24時間乾燥させる。約40〜70μmの厚さであるところの薄いフィルムを作製する。2〜7cm2のサイズのサンプルを打ち抜くことによって、ウエハースを得る。
【0116】
選択肢2
コーティング溶液を、脱気し、そして、ポリエチレン‐テレフタラート(PET)ライナー(例えば、Scotchpak(登録商標)9742又はPerlasic(登録商標)LF75)上に薄いフィルムとしてコーティングし、そして自動コーティング及び乾燥装置(Coatema Coating Machinery GmbH、Dormagen, Germany)を使用してインラインで乾燥させる。40〜120℃の乾燥温度をかける。約40〜70μmの厚さであるところの薄いフィルムを作製する。2〜7cm2のサイズのサンプルを打ち抜くことによって、ウエハースを得る。
【0117】
先に触れた製法を使用して、以下の組成を有するウエハースを調製した(実施例1a〜f、2a〜b、3a〜b、及び4):
本発明によるPVA‐PEGコポリマーを含んでなる薬物送達システム(ウエハース):
実施例1a
ERβ選択的作動物質ウエハース、25μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックスを含む)、2cm2、有効成分濃度0.25%
【表1】

【0118】
実施例1b
ERβ選択的作動物質ウエハース、150μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、3cm2、有効成分濃度1%
【表2】

【0119】
実施例1c
ERβ選択的作動物質ウエハース、62.5μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度0.25%
【表3】

【0120】
実施例1d
ERβ選択的作動物質ウエハース、250μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度1%
【表4】

【0121】
実施例1e
ERβ選択的作動物質ウエハース、625μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度2.5%
【表5】

【0122】
実施例1f
ERβ選択的作動物質ウエハース、875μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、7cm2、有効成分濃度2.5%
【表6】

【0123】
当然のことながら、他の量のER‐β選択的作動物質を含む類似のウエハースを、本明細書中に記載の手順を使用して容易に製造することができる。
実施例2a
エストラジオール、150μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度0.6%
【表7】

【0124】
実施例2b
エストラジオール、80μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度0.3%
【表8】

【0125】
実施例3a
エチニルエストラジオール、15μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度0.06%
【表9】

【0126】
実施例3b
エチニルエストラジオール、20μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度0.08%
【表10】

【0127】
実施例4
レボノルゲストレル、125μg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、5cm2、有効成分濃度0.5%
【表11】

【0128】
当然のことながら、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐であるところのステロイドである有効成分を他の量で含む類似のウエハースを、本明細書中に記載の手順を用いることで容易に製造することができる。
説明に役立つ例として与えられた先の組成物において使用したPVA‐PEGコポリマーは、75%のポリビニルアルコール・ユニットと25%のポリエチレングリコール・ユニットを含んでなるKollicoat(登録商標)IRであった。
【0129】
B.シクロデキストリンと複合体化された、及び/又は本発明による保護剤と組み合わせられた有効成分を少なくとも1つ含んでなるウエハースの調製
少なくとも有効成分がシクロデキストリンと複合体化されている、及び/又は保護剤と組み合わせられているところの水溶性の薄いフィルム・マトリックス(ウエハース)を含んでなる単位剤形、並びにそれらの調製方法のさらなる実施例(5〜7)を以下に報告し、そしてそれらは、本発明による単位剤形に関して説明に役立つ、制限されることのない実施例として意図されている。
【0130】
実施例5 有効成分としてのドロスピレノンと保護剤を含んでなる粒子の調製
実施例5a:ドロスピレノン/カルナバ・ロウ
80gのカルナバ・ロウ(医薬品グレード)を、400rpmにて透明溶液を得るまで撹拌しながら、2リットルの二重壁ガラス・ビーカー内、60℃にて1kgのn‐ヘプタン中に溶解した。
80gの微粉化ドロスピレノンを、撹拌速度を600rpmに調整しながら、凝集するのを避けるようにゆっくりと前記溶液中に加えた。その混合物を、20℃/時間の冷却速度にて20℃まで冷まして、カルナバ・ロウでコートされた薬物含有微小粒子を得た。
【0131】
ドロスピレノン含有微小粒子を、酢酸セルロース濾過膜とガラス・フィルター・ユニットを使用して濾過した。その微小粒子を、続いて300mlのエタノール(96%)で洗浄して、n‐ヘプタン残基と封入されていないドロスピレノンを取り除いた。濾過した微小粒子を、ガラス・ボールに移し、そして30℃にて2時間乾燥させた。得られた保護粒子(ここで、ドロスピレノンは保護剤によりコートされている)は、2.2μmのd50粒径と4.8μmのd90粒径を有していた。
【0132】
実施例5b:製粉(milling)によって調製したドロスピレノン/Eudragit(登録商標)E100
20gのドロスピレノンと80gのEudragit(登録商標)E100を、200rpmで室温にて1時間撹拌しながら、300mlのガラス・ビーカー内、200mlのエタノールとアセトン7+23(w+w)の混合物中に溶解した。透明の溶液を得た。
そして、前記溶液を、シリコン処理した平なべに移した。溶液を、フード内、周囲条件下で3日間乾燥させて、アセトンを取り除いた。官能試験を、アセトンの不存在を示すのに使用した。このようにして、得られた堅いフィルムは、数ミリメートルの厚みを有し、そしてそれを手で約10cm2の小片に割った。続いて、これらの小片を、ドライアイスを用いた冷却下、ローター型ミル(Retsch ultra centrifugation mill ZM200)を使用して製粉した。得られた保護粒子(ここで、ドロスピレノンは保護剤中に固体分散体で存在している)は、20〜50μmのd50粒径と80〜100μmのd90粒径を有していた。保護粒子を、次の使用まで(例えば、冷蔵庫内で)熱から保護して保存する。
【0133】
実施例5c:スプレードライによって調製したドロスピレノン/Eudragit(登録商標)E100
20gのドロスピレノンと80gのEudragit(登録商標)E100を、200rpmで室温にて1時間撹拌しながら、300mlのガラス・ビーカー内、200mlのエタノール96%中に溶解した。透明な溶液を得た。
溶液を、約35℃にてスプレードライした。得られた保護粒子(ここで、ドロスピレノンは保護剤中に固体分散体で存在している)は、5〜50μmのd50粒径と<100μmのd90粒径を有していた。保護粒子を、次の使用まで(例えば、冷蔵庫内で)熱から保護して保存する。
【0134】
実施例6:ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐基であるところのエストロゲンを含んでなるコーティング溶液、及びドロスピレノンと保護剤を含んでなる粒子の調製
実施例6a:Kollicoat(登録商標)IRマトリックス/エチニルエストラジオール/ドロスピレノン粒子
43.985gのKollicoat(登録商標)IRを、100rpmで2時間撹拌しながら、ガラス・ビーカー内、78mlの精製水中に60〜80℃にて溶解した。透明な溶液を得た(ポリマー溶液)。除熱の後に、蒸発した水を戻した。
【0135】
15mgのエチニルエストラジオールを、周囲条件下で撹拌しながら、2mlのエタノール(96%)中に溶解した(エタノール溶液)。
実施例5aで調製した粒子6gを、8mlのエタノールと12mlの水の混合物中に分散させ、次に、撹拌しながら、ポリマー溶液に加えた。撹拌速度と時間を、均一な分散液(コーティング溶液)を得るように調整した。それに続いて、エタノール溶液を加えた(コーティング溶液)。
【0136】
実施例6b:Kollicoat(登録商標)IRマトリックス/エストラジオール/ドロスピレノン粒子
43.907gのKollicoat(登録商標)IRを、100rpmで2時間撹拌しながら、ガラス・ビーカー内、60〜80℃にて78mlの精製水中に溶解した。透明な溶液を得た(ポリマー溶液)。除熱の後に、蒸発した水を戻した。
【0137】
93mgのエストラジオール半水和物を、周囲条件下で撹拌しながら、2mlのエタノール(96%)中に溶解した(エタノール溶液)。
実施例5aで調製した粒子6gを、8mlのエタノールと12mlの水の混合物中に分散させ、次に、撹拌しながら、ポリマー溶液に加えた。撹拌速度と時間を、均一な分散液(コーティング溶液)を得るように調整した。それに続いて、エタノール溶液を加えた(コーティング溶液)。
【0138】
実施例7:ウエハースの調製
実施例6によるコーティング溶液からのウエハースの調製を、実施例1、選択肢2に従って実施する(上記を参照のこと):
PVA‐PEGコポリマーと、シクロデキストリンと複合体化された、及び/又は保護剤と組み合わせられた有効成分を少なくとも1つ含んでなる薬物送達システム(ウエハース):
実施例5に従って粒子を調製し、それに続いて、実施例6に従ってコーティング溶液を調製し、そして先に記載の実施例1、選択肢2に従ってウエハースを調製することによって、以下の実施例(7j、7k、7l、7o、及び7p)を得た。
【0139】
実施例7j:(保護された粒子として)エチニルエストラジオール、15μg及びドロスピレノン、3mg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、7cm2
【表12】

【0140】
実施例7k:(保護された粒子として)エチニルエストラジオール、15μgとドロスピレノン、3mg(PVA‐PEGコポリマーマトリックスを含む)、7cm2
【表13】

【0141】
実施例7l:(保護された粒子として)(ベータ‐シクロデキストリンと複合体化された)エチニルエストラジオール、15μgとドロスピレノン、3mg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、7cm2
【表14】

【0142】
実施例7o:(保護された粒子として)エストラジオール、150μgとドロスピレノン、3mg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、7cm2
【表15】

【0143】
実施例7p:(保護された粒子として)エストラジオール、120μgとドロスピレノン、3mg(PVA‐PEGコポリマーマトリックを含む)、7cm2
【表16】

【0144】
C.比較級試験のための、PVA‐PEGコポリマーを含まない薬物送達システム(ウエハース):
実施例1、選択肢A又はBによるコーティング溶液を調製と、それに伴う先に記載の実施例1、選択肢1又は2による上述のウエハースの調製によって、PVA‐PEGコポリマーを含まないウエハースに関する以下の実施例(8a〜f)を得た。
【0145】
実施例8a
ERβ選択的作動物質ウエハース、87.5μg(ヒドロキシプロピル・セルロース・マトリックを含む)、7cm2、有効成分濃度0.25%
【表17】

【0146】
実施例8b
ERβ選択的作動物質ウエハース、350μg(ヒドロキシプロピル・セルロース・マトリックを含む)、7cm2、有効成分濃度1%
【表18】

【0147】
実施例8c
ERβ選択的作動物質ウエハース、875μg(ヒドロキシプロピル・セルロース・マトリクスを含む)、7cm2、有効成分濃度2.5%
【表19】

【0148】
実施例8d
ERβ選択的作動物質ウエハース、875μg(ヒドロキシプロピル・メチルセルロース・マトリクスを含む)、7cm2、有効成分濃度2.5%
【表20】

【0149】
実施例8e
追加の製剤を、先に記載の同じ手順によって、他のポリマー、例えばポリビニールピロリドン(PVP)又はポリビニルアルコール(PVA)(グレード:4‐88)などを用いて調製した。
いくつかの製剤ではまた、添加物、例えば、可塑剤(例えば、プロピレングリコール(PG)、トリエチルシトラート(TEC))、安定化剤(例えば、異なるグレードのシクロデキストリン(CD)、例えばガンマ‐シクロデキストリンなど)、又は抗酸化剤(例えば、ブチルヒドロキシトルオール(BHT)又はプロピルガラート)などを、示した量で加えた。
【0150】
実施例8f
プラシーボ・ウエハースを、適宜、ポリマーと添加物をエタノール/水2:1中に溶解して、コーティング溶液を入手することによって製造した。このコーティング溶液から、ウエハースを、先に記載の実施例1、選択肢1に従って調製した。
【0151】
有効成分に対する薬物送達システム(ウエハース)の安定化効果
本発明による薬物送達システムの、それに含まれる薬物原料に対する安定化効果を、周囲(室内)条件と加速条件(40℃/75%の相対湿度)において調査した。
単位剤形に含まれた薬物原料は、0.25〜2.5重量%の範囲にあった。
【0152】
化合物17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオールを、試験単位剤形において使用したが、それは、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐であるところのステロイドの制限されることのない例であると見なされるべきである。
HPMCは一般的に最も使用されるフィルム・マトリックスポリマーであるが、他のいくつかのポリマー、特にHPC(Klucel(登録商標)EF);PVP(Kollidon(登録商標)30);及びPVA(4‐88)を、同じ条件下で調査した。
【0153】
HPMCウエハースでは、先に報告した実施例によるポリマーマトリックス中の0.25%の薬物濃度において、促進条件(40℃/75%の相対湿度)における1ヶ月の保存後に、薬物の21.8%が分解されていた。
そのうえ、ステロイドの安定性を改善することが知られている一般的な安定化技術(抗酸化剤、シクロデキストリン(CD))もまた、試験した。しかしながら、公知の技術のいずれもがステロイドERβ選択的作動物質17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオールの安定性改善を実現しなかった。
【0154】
ステロイドホルモンに対して顕著な安定化効果を通常提供するシクロデキストリンでさえ、HPMCマトリックス中の先の化合物の安定性に対して効果を示さなかった。
驚いたことに、選択されたステロイドの安定性は、PVA‐PEGコポリマーを含んでなるウエハース中で優れていることが分かった。
【0155】
PVA‐PEGコポリマーを含んでなる本発明による単位剤形において薬剤含量と比較した、保存開始前後の、安定化剤を含む及び含まない異なるマトリックスポリマー中のERβ選択的作動物質の薬剤含量(ポリマーマトリックス中の薬物濃度:0.25%)
【表21】

【0156】
先の結果(ポリマーマトリックス中の0.25%の薬物濃度)から明らかに見えるように、ほとんどのポリマーが、加速条件にて1ヶ月の保存後に約20%の活性の損失を明らかにした。
PVPは、安定化剤(例えば、ブチルヒドロキシトルオール(BHT))の追加があっても、他のポリマーと比較して、初めのより強い活性の分解を既に明らかにした。
【0157】
しかしながら、驚いたことに、本発明によるPVA‐PEGコポリマーは、ポリマーマトリックス中の0.25%の薬物濃度にて、他のすべてのポリマー(活性の>20%の損失)と比較して、わずかな程度の分解(活性の16.5%の損失)しか明らかにならなかった。
これはまた、以下の表中で報告するように、より高い薬物濃度及びより長い保存期間においても確認された。
【0158】
PVA‐PEGコポリマーを含んでなる本発明による単位剤形において薬剤含量と比較した、保存開始前後の、安定化剤を含む及び含まない異なるマトリックスポリマー中のERβ選択的作動物質の薬剤含量(ポリマーマトリックス中の薬物濃度:1%)
【表22】

【0159】
ぴったりした一次包装(例えば、アルミニウム・ラミネート・パウチ)が、湿度からウエハースを守るために使用できる。その場合、安定性は、通常改善する。しかしながら、以下の表中で報告したように、高い薬物濃度であってもぴったりとした一次包装において、PVA‐PEGコポリマーの安定化効果が確認された。
【0160】
PVA‐PEGコポリマーを含んでなる本発明による単位剤形と比較した、ぴったりした一次包装中での1ヶ月の保存前後の、安定化剤としてBHT(0.01%)を含むマトリックスポリマーとしてのHPMC中のERβ選択的作動物質の薬剤含量と不純物(ポリマーマトリックス中の薬物濃度:1%)
【表23】

【0161】
【表24】

【0162】
PVA‐PEGコポリマーを含んでなる水溶性の薄いフィルム(ウエハース)の形態をとる薬物送達システムは、有効成分の優れた安定性を示すが、それは特に上述の有効成分がステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐であるところのステロイドである場合においてである。これは、剤形のより長い保存期間とより高い信頼性を与える。
【0163】
本発明による薬物送達システム(ウエハース)の受容性
本発明によるウエハースの受容性を、有効成分と独立して試験した。このアプローチは、そこで、好ましい形態の総合的な選択を可能にする有効成分の組み込みに由来するパラメーターから完全に独立したパラメーターに対する剤形の評価を可能にした。口腔用の医薬製剤、そして特に食感を改良したウエハースは、長期間の使用において最も重要であり、そして高い受容性が必要とされる。
ウエハースを、実施例8fに従って調製した。
【0164】
プラシーボ・ウエハース製剤の受容性を、取り扱いと投与に関してヒト試験パネル(n=8)において評価した。両特性について、以下の特徴を評価した:
【表25】

【0165】
特に、主に味及び崩壊時間によって表される食感は、長期使用のための製剤の受容性に関する関連パラメーターであると思われる。
フィルム厚と柔軟性を、さらに定量化し、そして生体内評価と相関させた。
フィルム厚を、MiniTest 600、Erichsen, Hemer, Germanyによって計測した。機械的特性を、引張り強度と伸び(Zwick Material Testing、Ulm, Germany)の計測によって定量化し、そして次式によって弾性係数、Eを計算した:
【化3】

【0166】
ここで、
E:弾性係数(ヤング率)
F:対象にかけた力(N単位)
A0:力をかけたところの元の断面積
ΔL:対象の長さが変化した量
L0:対象の元の長
プラシーボ・ウエハース製剤の柔軟性の評価
【表26】

【0167】
プラシーボ・ウエハース製剤のフィルム厚、機械的特性、及び弾性係数の測定
【表27】

【0168】
ポリマーマトリックスとしてHPC又はPVA‐PEGコポリマーを使用することにより、得られたウエハースは、多量の可塑剤(例えば、プロピレングリコール(PG)又はトリエチルシトラート(TEC)最大20%)を含むものであっても、ポリマーマトリックスとしてHPMCを含むウエハースに比べて、はるかに柔軟であった。機械的特性の計測では、弾性係数が大きく減少し、そして伸び率(%)(ΔL/L0)が他のすべての製剤と比較してもHPCとPVA‐PEGコポリマーウエハースで非常に上がったことを確認した。
【0169】
(50μmのウエハース厚に標準化した)投与後のプラシーボ・ウエハース製剤の崩壊時間
【表28】

【0170】
ウエハースの完全な崩壊までの時間の平均値は、20.3秒(S.D.:±5.3秒)であった。関連する量の液体添加物(例えば、可塑剤)の追加は、崩壊時間の短縮をもたらした(例えば、HPMC対HMPC+PG)。しかしながら、いくつかのポリマーではまた、著しく崩壊時間を延長することもあった(例えば、HPC)。ヒト味パネルの結果によると、約15〜25秒、好ましくは約20秒の崩壊時間が快適であると受け止められる。
【0171】
投与後のプラシーボ・ウエハース製剤の口蓋への付着性
【表29】

【0172】
投与後のプラシーボ・ウエハース製剤の味
【表30】

【0173】
一般に、製剤の味は、ポリマーマトリックスに関連した。ほとんどの添加物が、味を悪くするか又は受け入れられない状態にさえするまで製剤の味を有意に変えた(例えば、トリエチルシトラート(TEC)、ガンマ‐シクロデキストリン(ガンマCD))。
【0174】
プラシーボ・ウエハース製剤の生体内評価の結果の総括
【表31】

【0175】
驚いたことに、結果の総括的評価は、HPCとPVA‐PEGコポリマーに見られるように、製剤の認識された味のそれらの柔軟性との相関関係を明らかにしていた。よって、フィルムの柔軟性は、認識可能な味に重要な影響を持っていると考えられる。
そのうえ、口蓋への付着性もまた、製剤の改善された柔軟性により改善された。
【0176】
結論として、より柔軟なフィルムは、改善された味と粘膜への付着性に関連する投与中のより高い快適性のため、その結果、患者によるより高い受容性を有するウエハースをもたらすだろう。
本ウエハースは、改善された患者の受容性をもたらすことができる望ましい厚さと弾性を規定することによって、改良された食感と味を実証する。
【0177】
そのため、本発明による改善された受容性を有する単位剤形(ウエハース)は、好ましくは約45μm〜80μmの範囲の厚さを含んでなり、且つ、<200MPas、特に<150MPasの弾性係数を有し、及び/又は>15%、若しくは特に>20%の伸び率(%)を有する。好ましくは、弾性係数は、20〜200MPas、特に40〜150MPasの範囲にあるべきであり、及び/又は伸び率(%)は、15〜100 %、特に20〜50%の範囲にあるべきである。
【0178】
先に規定した改善された受容性を有し、且つ、約50μmに標準化された厚さを持つ単位剤形(ウエハース)の崩壊時間は、好ましくは、約15〜25秒である。
先に報告したとおり、本発明による単位剤形(ウエハース)の受容性を、その中に含まれる有効成分から独立して試験して、有効成分の組み込みから独立しているパラメーターを評価した。
【0179】
しかしながら、先に記載の実施例1〜7による有効成分とPVA‐PEGコポリマーを含んでなる単位剤形(ウエハース)は、先に規定した改善された受容性を与える厚さ、崩壊時間、弾性、伸び、並びに他の機械的及び感覚受容性特性の要望をも満たすように製造された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の薄いフィルム・マトリックスを含んでなる単位剤形であって、ここで、当該フィルム・マトリックスが、以下の:
a)水溶性マトリックスポリマーとしてのポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGグラフトコポリマー);
b)ステロイドである有効成分、ここで、ステロイド骨格の6及び7位は共に‐CH2‐残基である、
を含んでなり;且つ、当該フィルム・マトリックスが、300μm未満の厚さを持つ前記単位剤形。
【請求項2】
前記有効成分が、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるステロイド性エストロゲンである、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項3】
前記有効成分が、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であり、且つ、ステロイド骨格の3位にOH基、エステル又はエーテル基を持つステロイド性エストロゲンである、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項4】
前記有効成分が、治療的に許容し得るその誘導体を含めたエチニルエストラジオール、エストラジオール・エストロン、メストラノール、エストリオール、エストリオール・スクシナート、エストロン・スルファート、17β‐エストラジオール・スルファート、17α‐エストラジオール・スルファート、エストラジオール・バレラートの群から選択される、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項5】
ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるところの前記ステロイド性エストロゲンが、ERβ選択的作動物質としての8β‐又は9α‐置換エストラ‐1,3,5(10)‐トリエンである、請求項2に記載の単位剤形。
【請求項6】
前記ステロイド性エストロゲンが、治療的に許容し得るその誘導体を含めた以下の群:
9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール
17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
18a‐ホモ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17α‐ジオール、
16α‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
16β‐フルオロ‐8β‐ビニル‐エストラ‐1,3, 5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
8β‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,17β‐ジオール、
から選択される、請求項5に記載の単位剤形。
【請求項7】
前記ステロイド性エストロゲンが、治療的に許容し得るその誘導体を含めた17β‐フルオロ‐9α‐ビニル‐エストラ‐1,3,5(10)‐トリエン‐3,16α‐ジオールである、請求項6に記載の単位剤形。
【請求項8】
前記有効成分が、ステロイド骨格の6及び7位が共に‐CH2‐残基であるところのステロイド性プロゲスチンである、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項9】
前記ステロイド性プロゲスチンが、レボノルゲストレル、ノルゲストレル、ノルエチンドロン(ノレチステロン)、ジエノゲスト、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセタート、エチノジオール・ジアセタート、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、リネストレノール、ノルゲストリエノン、エチステロン、プロメゲストン、デソゲストレル、3‐ケト‐デソゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデンの群から選択される、請求項8に記載の単位剤形。
【請求項10】
前記フィルム・マトリックスが、プロゲスチンであるさらなる活性物質を含んでなる、請求項2〜7のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項11】
前記プロゲスチンが、具体的には16,17‐カルボラクトン誘導体であり、特にドロスピレノンである、請求項10に記載の単位剤形。
【請求項12】
前記プロゲスチンが、レボノルゲストレル、ノルゲストレル、ノルエチンドロン(ノレチステロン)、ジエノゲスト、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセタート、エチノジオール・ジアセタート、ジドロゲステロン、メドロキシプロゲステロン・アセタート、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、リネストレノール、キンゲスタノール・アセタート、メドロゲストン、ノルゲストリエノン、ジメチステロン、エチステロン、クロルマジノン・アセタート、メゲストロール、プロメゲストン、デソゲストレル、3‐ケト‐デソゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデン、チボロン、シプロテロン・アセタートの群から選択される、請求項10に記載の単位剤形。
【請求項13】
少なくとも1つの有効成分が、シクロデキストリンと複合体化されているか、又は保護剤と組み合わせられている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項14】
少なくとも1つの有効成分が、シクロデキストリンと複合体化されており、且つ、少なくとも1つの有効成分が、保護剤と組み合わせられている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項15】
保護剤と組み合わせられている前記有効成分が、フィルム・マトリックス中の微小粒子の形態で分散している、請求項13又は14に記載の単位剤形。
【請求項16】
前記ポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーが、前記剤形の50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%を超える、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項17】
前記フィルム・マトリックスが、セルロース系物質、合成ポリマー、ゴム、タンパク質、デンプン、グルカン、及びその混合物の群から選択されるさらなる水溶性マトリックスポリマーを少なくとも1つ含んでなる、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項18】
1〜5000μgの前記ステロイド性エストロゲン、又はその誘導体を含んでなる、請求項2〜7のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項19】
前記フィルム・マトリックスが、200μm未満、又は100μm未満の厚みを持つ、請求項1〜18のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項20】
前記フィルム・マトリックスが、2〜10cm2、3〜7cm2、又は4〜6cm2の表面積を持つ、請求項1〜19のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項21】
5〜200mgの範囲、10〜100mgの範囲、又は10〜50mgの範囲の重さを持つ、請求項1〜20のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項22】
<200MPas、<150MPas又は<100MPasの弾性係数を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項23】
>15%、又は>20%の伸び率(%)を有する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項24】
前記剤形が、吸収促進薬を含んでなる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項25】
前記吸収促進薬が、フィルム・マトリックス中に溶解しているか、又は分散している、請求項24に記載の単位剤形。
【請求項26】
医薬品として使用するための、請求項1〜25のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項27】
水溶性の薄いフィルム・マトリックスを含んでなる単位剤形であって、ここで、当該フィルム・マトリックスが、以下の:
a)水溶性マトリックスポリマーとしてのポリビニルアルコール‐ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(PVA‐PEGグラフトコポリマー);
b)有効成分、
を含んでなり;且つ、当該フィルム・マトリックスが、100μm未満の厚さを持つ前記単位剤形。
【請求項28】
20〜200MPasの範囲の弾性係数を有する、請求項27に記載の単位剤形。
【請求項29】
15〜100%の範囲の伸び率(%)を有する、請求項27又は28に記載の単位剤形。
【請求項30】
約50μmに標準化した厚さであれば、前記単位剤形の崩壊時間が約15〜25秒である、請求項27〜29のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項31】
2〜10cm2、3〜7cm2、又は4〜6cm2の表面積を持つ、請求項27〜30のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項32】
10〜50mgの範囲の重さを持つ、請求項27〜31のいずれか1項に記載の単位剤形。

【公表番号】特表2011−511816(P2011−511816A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546253(P2010−546253)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000904
【国際公開番号】WO2009/100871
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】