説明

官能基を有する脂環式化合物

【課題】 実用レベルの高屈折率を有し且つ重合物は高いアッベ数を有する、新規の、官能基を有する脂環式化合物を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化0】


(1)
(式中、R及びRは、各々結合して5員複素環もしくは6員複素環、又は、各々独立して水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基を表す。R及びRは各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基を表す。但し、少なくともR〜Rのいずれか1つはヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基であるものとし、R〜Rのいずれか2つがヒドロキシ基でないものとする。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、コーティング材料、光学フィルターなどの高屈折率及び高アッベ数が要求される光学材料として特に有用な、官能基を有する脂環式化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロイル基やヒドロキシ基等の官能基を有する脂環式化合物は、高いガラス転移温度と高屈折率を有することから、近年、光学材料用のプラスチック材料として検討が行われている。特に最近では、架橋密度が高く高硬度な皮膜を与えるような、多官能の脂環式化合物の検討も行われている。
【0003】
光学材料用プラスチックには、高屈折率であり且つ色収差の少ないことが望まれる。屈折率においては、従来使用されているジエチレングリコールビスアリルカーボネートを主原料とするプラスチック材料の屈折率が1.5から1.55程度であることから、最低でも1.6以上を目的とするような検討がなされている。一方色収差はアッベ数が高い程良好であり、少なくとも30以上の高アッベ数の材料が望まれる。
このような材料としては、従来、アダマンタンジメタノールジアクリレートやトリシクロデカンジメタノールジアクリレートが知られており、該脂環式化合物とポリチオ(メタ)アクリレートモノマーとを併用して、高屈折率と高アッベ数との両立を達成させた光学材料を得る例が知られている。(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2002−500700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、実用レベルの高屈折率を有し、且つ重合物は高いアッベ数を有し、特にアダマンタンジメタノールジアクリレートやトリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の従来ある化合物よりも高い屈折率を有する、新規の、官能基を有する脂環式化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ペンタシクロ[5.4.0.02, .03, 10.05, ]ウンデカンの骨格を有する化合物が高屈折率を有する化合物であることを見いだし、該構造に官能基を導入しても高屈折率を維持できることを見いだし、且つ、得られる重合物は高いアッベ数を与えることを見いだし、課題を解決するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、一般式(1)で表される化合物を提供する。
【0008】
【化1】

(1)
【0009】
(式中、R及びRは、各々結合して5員複素環もしくは6員複素環、又は、各々独立して水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基を表す。
及びRは各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基を表す。但し、少なくともR〜Rのいずれか1つはヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基であるものとし、R〜Rのいずれか2つがヒドロキシ基でないものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物は高屈折率を有し、且つ得られる重合物は実用レベルの高いアッベ数を与える。特に屈折率については、アダマンタンジメタノールジアクリレートやトリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の従来ある化合物よりも高い値を与える。官能基として(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性基を有する化合物は、UVあるいは熱硬化性の光学材料として特に有用である。また、官能基としてヒドロキシ基を有する化合物は、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、(ポリ)イソシアネート化合物等のヒドロキシ基と反応する反応性基を有する樹脂とを併用することにより、熱硬化性の光学材料として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
一般式(1)において、R及びRは、各々結合して5員複素環もしくは6員複素環、又は、各々独立して水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基を表す。
及びRが各々結合して5員複素環もしくは6員複素環である場合、該複素環に含まれる原子は硫黄原子もしくは酸素原子が好ましく、硫黄原子が最も好ましい。硫黄原子を有することで、得られる化合物の屈折率を更に高くすることができる。
5員複素環もしくは6員複素環の具体例としては、例えば、
【0012】
【化2】

【0013】
が挙げられる。但し*は、一般式(1)で表される化合物との結合部位を表す。
また、R及びRが各々結合して水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基で有る場合、RもしくはRのいずれか一方が水素原子であり、他方がヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基の官能基(以下、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基をまとめて、官能基Aと称する)であることが好ましい。官能基Aがヒドロキシ基の場合、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、(ポリ)イソシアネート化合物を併用することにより、熱硬化性の光学材料として使用することが可能である。また、官能基Aが(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基で有る場合、重合開始剤を併用し、重合性組成物の成分として使用することが可能である。
【0014】
一般式(1)において、R及びRは、いずれか一方が水素原子であり、他方が官能基Aであることが好ましい。官能基Aがヒドロキシ基の場合、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、(ポリ)イソシアネート化合物を併用することにより、熱硬化性の光学材料として使用することが可能である。また、官能基Aが(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基で有る場合、重合開始剤を併用し、重合性組成物の成分として使用することが可能である。
【0015】
本発明においては、一般式(1)において、少なくともR〜Rのいずれか1つは官能基Aである。官能基Aが2つ以上存在する場合、該官能基AはRとR、あるいはRとRの組合せで有することが好ましい。但し、R〜Rのいずれか2つがヒドロキシ基でないものとする。
【0016】
中でも、前記一般式(1)において、R及びRが各々結合して5員複素環もしくは6員複素環であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基である化合物は、特に高屈折率の特性を有しており、高い屈折率を必要とする光学材料に有用である。
【0017】
このような化合物としては、例えば、下記構造の化合物が挙げられる。
【0018】
【化3】

(1−1)
【0019】
【化4】

(1−2)
【0020】
【化5】

(1−3)
【0021】
【化6】

(1−4)
【0022】
前記式(1−1)〜(1−4)で表されるような化合物は、公知の方法にて合成が可能である。例えば、前記式(1−1)で表される化合物は、前記一般式(1)におけるR及びRが各々結合して5員複素環もしくは6員複素環であり、且つR及びRが同一の1つの酸素原子と結合しておりR及びRが結合する炭素原子と該酸素原子とが炭素−酸素二重結合を形成している化合物を還元することで得ることができる。
また、前記式(1−2)で表される化合物は、前記式(1−1)で表される化合物のヒドロキシ基と、アクリル酸等のカルボン酸基とを、付加反応、エステル交換反応、あるいは求核置換反応させることで得ることができる。
また、前記式(1−3)で表される化合物は、前記式(1−1)で表される化合物のヒドロキシ基と、ハロゲン化アリルとのハロゲン基とを、求核置換反応させることで得ることができる。
また、前記式(1−4)で表される化合物は、前記式(1−1)で表される化合物のヒドロキシ基と、エピクロロヒドリンとのエポキシ基とを、求核置換反応させた後、脱塩酸によるエポキシ化反応で得ることができる。
【0023】
また、前記一般式(1)において、R及びRが水素原子であり、R及びRが各々独立して(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基である化合物は、2官能であることから、単独で硬化皮膜を形成し得る材料として有用である。
【0024】
このような化合物としては、例えば、下記構造の化合物が挙げられる。
【0025】
【化7】

(1−5)
【0026】
【化8】

(1−6)
【0027】
【化9】

(1−7)
【0028】
前記式(1−5)〜(1−7)で表されるような化合物は、公知の方法にて合成が可能である。例えば、前記一般式(1)におけるR及びRが同一の1つの酸素原子と結合しておりR及びRが結合する炭素原子と該酸素原子とが炭素−酸素二重結合を形成しており、且つR及びRが同一の1つの酸素原子と結合しておりR及びRが結合する炭素原子と該酸素原子とが炭素−酸素二重結合を形成している化合物を還元することで、下記式(A)で表れされる化合物を得る。
【0029】
【化10】

(A)
【0030】
前記式(1−5)で表される化合物は、前記式(A)で表される化合物のヒドロキシ基と、アクリル酸等のカルボン酸基とを、付加反応、エステル交換反応、あるいは求核置換反応させることで得ることができる。
また、前記式(1−6)で表される化合物は、前記式(A)で表される化合物のヒドロキシ基と、ハロゲン化アリルとのハロゲン基とを、求核置換反応させることで得ることができる。
また、前記式(1−7)で表される化合物は、前記式(A)で表される化合物のヒドロキシ基と、エピクロロヒドリンとのエポキシ基とを、求核置換反応させた後、脱塩酸によるエポキシ化反応で得ることができる。
【0031】
一般式(1)において、R及びRが各々結合して5員複素環もしくは6員複素環であり、Rが水素原子であり、Rが官能基Aである化合物は鏡像異性体を有するが、本発明においてはどちらの異性体であっても、本発明の効果である高屈折率と高アッベ数は得られる。従って、本発明においては、どちらの異性体も含めるものとする。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0033】
(実施例1 式(1−1)で表される化合物の合成)
【0034】
【化11】

(1−1)
【0035】
ペンタシクロ[5.4.0.02, .03, 10.05, ]ウンデカン−8、11−ジオン17.42部をテトラヒドロフラン267部に溶解し、エタンジチオール14.13部とアンバーリスト−15(アルドリッチ社製)10部を酸触媒として加えて、6時間加熱還流した。アンバーリスト−15をろ過によって除去し、ろ液のテトラヒドロフランを減圧除去して反応混合物24.16部を得た。この反応混合物24.16部を2−プロパノール158部に溶解した溶液を、水素化ホウ素ナトリウム3.65部を2−プロパノール440部に懸濁させた溶液に滴下した後、6.5時間加熱還流した。氷冷した蒸留水に反応溶液を注ぎ込み、2−プロパノールを減圧除去した後、水層を食塩で飽和させ、酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過をして、ろ液の酢酸エチルを減圧除去して式(1−1)で表される化合物の24.12部を白色固体として得た。
【0036】
得られた生成物の核磁気共鳴(NMR)の測定を行った結果を下記に示す。なお、下記測定は、基準物質としてテトラメチルシランを、溶媒は重クロロホルムを用いて行った。
H NMRスペクトル値:3.71ppm(s、1H)、3.50‐2.32ppm(m、13H)、1.70ppm(d、J=10.7Hz、1H)、1.16ppm(d、J=10.7Hz、1H)
13C NMRスペクトル値:73.5ppm、71.5ppm、52.7ppm、49.1ppm、48.8ppm、47.4ppm、44.0ppm、42.9ppm、40.2ppm、39.8ppm、37.5ppm、35.9ppm、33.7ppm
【0037】
(実施例2 式(1−2)で表される化合物の合成)
【0038】
【化12】

(1−2)
【0039】
式(1−1)で表される化合物5.05部をテトラヒドロフラン133.5部に溶解し、トリエチルアミン8.52部を加えて氷水浴で冷却した溶液に、アクリル酸クロライド5.43部をテトラヒドロフラン89部で希釈した溶液を滴下した後、室温に戻して1時間攪拌した。析出した沈殿を蒸留水で溶解した後、テトラヒドロフランを減圧除去し、水層を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過をして、ろ液の酢酸エチルを減圧除去して反応混合物を得た。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行い、化合物(1−2)3.65部を白色固体として得た。
【0040】
得られた生成物の核磁気共鳴(NMR)の測定を行った結果を下記に示す。なお、下記測定は、基準物質としてテトラメチルシランを、溶媒は、重クロロホルムを用いて行った。
H NMRスペクトル値:6.50ppm(dd、J=17.3、1.6Hz、1H)、6.25ppm(dd、J=17.3、10.4Hz、1H)、5.83ppm(dd、J=10.3、1.6Hz、1H)、4.59ppm(t、J=3.5Hz、1H)、3.31‐2.43ppm(m、12H)、1.73ppm(d、J=10.8Hz、1H)、1.21ppm(d、J=10.8Hz、1H)
13C NMRスペクトル値:166.1ppm、130.9ppm、128,9ppm、74.1ppm、71.6ppm、54.1ppm、49.2ppm、49.0ppm、44.8ppm、43.6ppm、43.4ppm、41.6ppm、37.7ppm、37.0ppm、36.0ppm、33.9ppm
【0041】
(実施例3 式(1−3)で表される化合物)の合成)
【0042】
【化13】

(1−3)
【0043】
水素化ナトリウム(東京化成社製)1.20部をテトラヒドロフラン9部に懸濁させて氷水浴で冷却した溶液に、式(1−1)で表される化合物7.57部をテトラヒドロフラン27部に溶解した溶液を滴下した後、室温に戻して1時間攪拌した。この反応溶液に臭化アリル7.26部をテトラヒドロフラン18部で希釈した溶液を滴下した後、60℃で1.5時間攪拌した。メタノール40部に室温に戻した反応溶液を注ぎ込み、溶剤を減圧除去した。酢酸エチルを加えて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過をして、ろ液の酢酸エチルを減圧除去して反応混合物を得た。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行い、純度83%で化合物(1−3)6.51部を淡黄色液体として得た。
【0044】
得られた生成物の核磁気共鳴(NMR)の測定を行った結果を下記に示す。なお、下記測定は、基準物質としてテトラメチルシランを、溶媒は、重クロロホルムを用いて行った。
H NMRスペクトル値:6.03‐5.95ppm(m、1H)、5.29ppm(dt、J=17.3、1.6Hz、1H)、5.16(d、J=10.4Hz、1H)、3.99ppm(t、J=3.5Hz、2H)、3.49ppm(s、1H)、3.20‐2.46ppm(m、12H)、2.30ppm(s、1H)、1.69ppm(d、J=10.6Hz,1H)、1.17ppm(d、J=10.6Hz,1H)
13C NMRスペクトル値:134.9ppm、116.8ppm、77.2ppm、74.2ppm、70.4ppm、54.3ppm、49.5ppm、48.9ppm、44.3ppm、43.6ppm(2C)、41.5ppm、37.4ppm、37.2ppm、35.9ppm、34.1ppm
【0045】
(実施例4 式(1−5)で表される化合物の合成)
【0046】
【化14】

(1−5)
【0047】
式(A)で表される化合物5.14部をテトラヒドロフラン178部に溶解し、トリエチルアミン9.10部を加えて、氷水浴で冷却した溶液に、アクリル酸クロライド8.15部をテトラヒドロフラン89部で希釈した溶液を滴下し、氷水浴で冷却したまま4時間攪拌した。析出した沈殿を蒸留水で溶解した後、テトラヒドロフランを減圧除去し、水層を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過をして、ろ液の酢酸エチルを減圧除去して反応混合物を得た。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行い、式(1−5)で表される化合物3.67部を白色固体として得た。
【0048】
得られた生成物の核磁気共鳴(NMR)の測定を行った結果を下記に示す。なお、下記測定は、基準物質としてテトラメチルシランを、溶媒は、重クロロホルムを用いて行った。
H NMRスペクトル値:6.40ppm(dd、J=17.2、1.5Hz,2H)、6.08ppm(dd、J=17.2、10.4Hz、2H)、5.78ppm(dd、J=10.4、1.5Hz、2H)、4.64ppm(s、2H)、2.92ppm(d、J=3.3Hz、2H)、2.67‐2.45ppm(m、6H)、1.72ppm(d、J=10.7Hz,1H)、1.15ppm(d、J=10.7Hz,1H)
13C NMRスペクトル値:166.5ppm(2C)、130.3ppm(2C)、128.9ppm(2C)、72.6ppm(2C)、43.0ppm(2C)、42.3ppm(2C)、39.2ppm(2C)、35.4ppm(2C)、34.0ppm
【0049】
(屈折率の評価)
実施例1〜4で得られた式(1−1)〜(1−3)、(1−5)で表される化合物の屈折率を測定した。
<固形物の屈折率の測定方法>
島津製作所社製の固形物密度測定装置を用いて、固形物の密度の測定を行い、シクロヘキサノン(和光社製)及び固形物の重量パーセントが10%のシクロヘキサノン溶液それぞれの密度を5mlのピクノメーターで測定を行い、それぞれの屈折率をアタゴ社製のアッベ屈折計で測定した。各測定値を下記式に導入して固形物の屈折率mを推測した。結果を表1に示す。
【0050】
【数1】

【0051】
各記号はそれぞれ、n:溶液の屈折率、L:シクロヘキサノンの屈折率、m:固形物の屈折率、p:溶液の密度(g/cm)、pL:シクロヘキサノンの密度(g/cm)、ps:固形物の密度(g/cm)、c:溶液中の固形物の重量パーセント(10%)を表している。
【0052】
<液状物の屈折率の測定方法>
液状物は、直接アタゴ社製のアッベ屈折計で測定した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
(参考例1 重合物の屈折率とアッベ数の評価)
<サンプル作成方法>
実施例2で得られた式(1−2)で表される化合物の固形物0.50部を加温して融解し、光重合開始剤「イルガキュア184」0.01部を加え、厚み0.20mmのスペーサーを間に挟んだ2枚のガラス基板の間に挟持させて高圧水銀灯にて硬化させ、膜厚0.2mmの重合物を得た。該重合物の屈折率とアッベ数を、中間液にα−ブロモナフタレンを用いて、アタゴ社製のアッベ屈折計で測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(参考例2 重合物の屈折率とアッベ数の評価)
実施例4で得られた式(1−5)で表される化合物を使用し、参考例1と同様にして重合物の屈折率とアッベ数を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(比較参考例3 重合物の屈折率とアッベ数の評価)
液状物のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート0.50部に光重合開始剤「イルガキュア184」0.01部を加え、厚み0.20mmのスペーサーを間に挟んだ2枚のガラス基板の間に挟持させて高圧水銀灯にて硬化させ、膜厚0.2mmの重合物を得た。参考例1と同様にして重合物の屈折率とアッベ数を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
この結果、本発明の化合物は、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートやノルボルネニルジアクリレートと同等かそれ以上の高屈折率を有し、該化合物の重合物は30以上の高いアッベ数を有することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】

(1)
(式中、R及びRは、各々結合して5員複素環もしくは6員複素環、又は、各々独立して水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基もしくはグリシジルオキシ基を表す。
及びRは各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基を表す。但し、少なくともR〜Rのいずれか1つはヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基であるものとし、R〜Rのいずれか2つがヒドロキシ基でないものとする。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、R及びRが各々結合して5員複素環もしくは6員複素環であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記5員複素環もしくは6員複素環が、
【化2】


(但し*は、一般式(1)で表される化合物との結合部位を表す。)
である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R及びRが水素原子であり、R及びRが各々独立して(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基又はグリシジルオキシ基である、請求項1に記載の化合物。

【公開番号】特開2008−133199(P2008−133199A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318388(P2006−318388)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】