説明

定着用ベルト

【課題】近年の印刷スピードの高速化にも対応するような優れた定着性を達成できる高い熱伝導率を有するとともに、カラートナーを十分に包み込んで溶融・混色させることができるだけの適度な弾力性を有し、機械的強度にも優れる定着用ベルトを提供する。
【解決手段】チューブ状の基材、前記基材の外周側に設けられる弾性層、及び前記弾性層の外周側の表面に設けられる表層を有する定着用ベルトであって、前記弾性層は、ゴムに充填剤とカーボンナノチューブが配合されており、前記弾性層中の、前記充填剤の体積%をX、前記カーボンナノチューブの体積%をYとしたとき、10X+3Y<750、3X+30Y>170、及びY>0.1を満たすことを特徴とする定着用ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンター等の画像形成装置において、記録紙等の被転写物上に転写されたトナー画像を加熱して定着するために用いられる定着用ベルトに関し、特に複数種のカラートナーを用いた画像形成装置においてトナー画像を加熱して定着するために用いられる定着ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンター等の画像形成装置において、その印刷・複写の最終段階では、加熱源を内部に設けた定着用ベルト(すなわち定着スリーブ又は定着チューブローラ等)と、加圧ローラとを圧接させ、その間にトナー画像が転写された被転写物を通過させ、未定着のトナーを加熱溶融させる熱定着方式が一般的に行われている。
【0003】
ここで使用される定着用ベルトとしては、ポリイミド等の高強度耐熱性樹脂からなる筒状の基材の表面(被転写物に接する面)に、弾性、離型性、耐摩耗性等が優れる樹脂層を形成した構造の定着用ベルトや、金属やポリイミド製の円筒を基材とし、その外周側に弾性、離型性、耐摩耗性等が優れる樹脂層を取り付けられた定着ローラが一般的に用いられている。そして、弾性、離型性、耐摩耗性等が優れた樹脂層として、フッ素樹脂のコーティング層が広く使用されている。
【0004】
定着性を良好にするためには、内部に設けられた加熱源により被転写物が十分加熱される必要である。そこで、定着用ベルトには優れた熱伝導性が求められる。
【0005】
さらに、複数種のカラートナーを用いた画像形成装置の定着では、定着時に複数種のカラートナーを溶融状態で混色する必要がある。そこで、この用途の定着用ベルトには、カラートナーを十分に包み込んで溶融・混色させることができる適度な弾力性が求められる。
【0006】
このように、定着用ベルトには、優れた熱伝導性と適度な弾力性が求められるので、この要請を満たすものとして、特許文献1では、チューブ状基体の外周側に耐熱性エラストマー層(弾性層)を設け、さらにその上にフッ素樹脂層を設けた定着用ベルトであって、チューブ状基体、フッ素樹脂層及び耐熱性エラストマー層の厚さを規定し、かつ耐熱性エラストマーの厚さ、硬度及び熱伝導率の関係を所定の範囲内となるように規定した定着用ベルト(請求項2)が提案されている。そして、この条件を満たすために、耐熱性エラストマーにシリカ、アルミナ、ボロンナイトライド等、熱伝導率を向上させる無機充填剤を配合する技術が提案されている(段落0015)。
【0007】
又、特許文献2には、金属チューブまたは耐熱プラスチックチューブの外面に耐熱エラストマー層が形成され、さらにその外面にシリコーンゴムまたはフッ素樹脂の層が形成された積層構造を有する定着用ベルトであって、荷重に対する歪み量や各層の厚さ等が所定の範囲内であり、さらに耐熱エラストマー層の硬度や熱伝導度も所定の範囲内である定着用ベルトが開示されている(請求項1)。
【0008】
そして、耐熱エラストマー層の熱伝導度を所定の範囲内とするために、シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド等の熱伝導度を向上させる無機充填剤を配合する方法が提案されており、この方法により加熱源からの熱を迅速に定着用ベルトの外表面に供給することができることが開示されている(段落0012)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3735991号公報
【特許文献2】特許第3712086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし近年、印刷スピードの高速化に伴い、定着用ベルトにはさらに高い熱伝導率が求められる傾向にある。そこで、近年のユーザの厳しい要求を満たす定着性を達成するためには、前記のような先行技術では熱伝導性が不十分になりつつあり熱伝導率の向上が望まれていた。
【0011】
より高い熱伝導率を得るためには、熱伝導度を向上させる充填剤(無機フィラー等)の配合を増量する方法が考えられる。しかし、特許文献1や2に記載されている定着用ベルトにおいて、シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド等の無機充填剤を増量すると、定着用ベルトの弾性が低下してカラートナーを十分に包み込んで溶融・混色させることができるだけの適度な弾力性が得られにくくなる。
【0012】
樹脂等に配合して熱伝導度を向上させるものとして、ナノサイズの円筒状カーボンであるカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略記することがある。)が知られている。CNTは、真比重が2.0g/cmでアスペクト比が通常50〜1000であるがこのような高アスペクト比で黒鉛構造型CNTが好ましく用いられている。CNTとしては、単層型と内部が同心円状になった構造を有している複層型が代表的である。
【0013】
CNTには、例えば、繊維径が1μm以下のカーボンナノファイバーや、底の空いたコップ状のカーボン材料が幾重にも重なったCNT等も含まれる。特開2004−123867号公報にはCNTを配合したポリイミドチューブが開示されているが、CNTはポリイミド樹脂に配合されているため、配合割合を高くすると機械的強度が著しく低下する。
【0014】
本発明は、近年の印刷スピードの高速化にも対応する高い熱伝導率を有するとともに、カラートナーを十分に包み込んで溶融・混色させることができるだけの適度な弾力性を有し、機械的強度にも優れる定着用ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意検討の結果、チューブ状の基材、表層、及び前記基材と表層間に弾性層を有する定着用ベルトにおいて、弾性層の材質として、充填剤とカーボンナノチューブを配合したゴムを用い、充填剤とカーボンナノチューブの配合比を所定の式で表される範囲内とすることにより、高い熱伝導率と適度な弾力性を両立でき、かつ機械的強度も低下しないことを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記の課題は以下に示す構成からなる発明により解決される。
【0016】
請求項1に記載の発明は、チューブ状の基材、前記基材の外周側に設けられる弾性層、及び前記弾性層の外周側の表面に設けられる表層を有する定着用ベルトであって、
前記弾性層は、ゴムに充填剤とカーボンナノチューブを配合して形成されており、
前記弾性層中の、前記充填剤の体積%をX、前記カーボンナノチューブの体積%をYとしたとき、10X+3Y<750、3X+30Y>170、及びY>0.1を満たすことを特徴とする定着用ベルトである。
【0017】
前記のように、定着用ベルトにおいて、近年の要請を満たす優れた熱伝導率を達成するためには、シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド等の充填剤の弾性層への配合率を高くする必要があり、その場合弾性層が硬くなりカラートナーを十分に包み込んで溶融・混色させることができるだけの適度な弾力性が得られない。しかし、これらの充填剤とともにカーボンナノチューブを併用する又はこれらの充填剤の代わりにカーボンナノチューブを単独で使用するとともに、それらの配合量を前記式で表される範囲内とすれば、近年の要請を十分満たす優れた熱伝導率と適度な弾力性をともに達成することができる。
【0018】
本発明は、弾性層中の充填剤の体積%をX、前記カーボンナノチューブの体積%をYとしたとき、10X+3Y<750であることを特徴とする。10X+3Yが750以上である場合、弾性層が硬くなりカラートナーを十分に包み込んで溶融・混色させることができるだけの適度な弾力性が得られにくくなる(10X+3Yの値は、弾性層の硬度と高い相関がある。そこで、以後、10X+3Yの値を硬度指数と言うことがある。)。10X+3Yは、好ましくは650未満、より好ましくは600未満であり、より優れた定着性が得られる。
【0019】
なお、X、Yは、それぞれ弾性層の全体積を100%としたときの、充填剤及びカーボンナノチューブの真体積の割合(%)を意味する。真体積はそれぞれの重量と比重から容易に計算することができる。
【0020】
本発明は、又、3X+30Y>170であることを特徴とする。3X+30Yが170以下の場合、優れた定着性が得られない(3X+30Yの値は、弾性層の熱伝導性と高い相関がある。そこで、以後、3X+30Yの値を熱伝導指数と言うことがある。)。3X+30Yは、好ましくは180以上、さらに好ましくは200以上でありより優れた定着性が得られる。
【0021】
本発明では、弾性層中に、カーボンナノチューブを、Y>0.1となるように含有することを特徴とする。カーボンナノチューブが含まれない場合、例えばY=0の場合は、シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、グラファイト等の充填剤の配合率を高くする必要があり、その結果適度な弾力性が得られない。カーボンナノチューブの含有割合をY>0.1となる範囲とすることにより、シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、グラファイト等の充填剤の配合率を少なくすることが出来、その結果、より適度な弾力性を達成できる。
【0022】
一方、Yの上限は、好ましくは40以下であり、より好ましくは20以下である。カーボンナノチューブの量が多すぎると、弾性層形成の際に用いる塗布液の粘度が高くなりすぎて塗布性の問題を生じることがあるが、上記の範囲内であれば、この問題が生じることもなく、又、定着用ベルトの機械的強度が低下することもない。
【0023】
前記のように、本発明において使用されるカーボンナノチューブは、炭素結晶(グラファイト等)からなり、サブミクロンサイズ以下の短軸径(繊維径)を有するものであって、グラファイトの層を筒状にした形状を持つものを挙げることができるが、さらにサブミクロンサイズ以下のカーボンファイバー(CF)等も含まれる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、前記充填剤が、金属ケイ素粉末を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の定着用ベルトである。ここで、主体とするとは、金属ケイ素粉末が充填剤全量中に50体積%以上含まれることを意味する。
【0025】
本発明において使用される充填剤としては、従来の定着用ベルトにおいて、熱伝導度を向上させる充填剤として配合されているもの、例えば、アルミナ、シリカ、ボロンナイトライド及びグラファイトから選ばれるものを用いることができる。しかし、本発明者は、充填剤として、金属ケイ素粉末を用いると、基材/プライマー層/弾性層間の密着力が特に優れ、プリンタ(コピー機)使用中の剥離の発生を防ぐことができることを見出した。金属ケイ素粉末としては、例えば、M−Si#600(キンセイマテック社製、破砕形状、平均粒径 約6.0μm)等の商品名で市販されているものを用いることもできる。
【0026】
前記弾性層を構成する材質(マトリックス材)としては、従来の定着用ベルトにおいて、弾性を付与するための中間層に用いられる耐熱性エラストマーを用いることができる。必ずしも加硫ゴムに限定されず、定着用ベルトの製造や使用時における加熱によっても劣化しにくくかつ弾性を有するものを用いることができる。耐熱性エラストマーとしては、シリコーンゴム又はフッ素ゴムが、耐熱性に優れるので、好ましく用いられる(請求項3)。
【0027】
前記表層の材質としては、トナー離型性が優れかつ耐久性やカラートナーの定着性にも優れるフッ素樹脂が好ましく用いられる(請求項4)。
【0028】
前記チューブ状(筒状)の基材としては、柔軟な材質からなるチューブ状の基材や円筒状の基材を挙げることができる。従って、本発明の定着用ベルト(定着スリーブ)としては、柔軟な材質からなるチューブ状の基材、その外周側に設けられた弾性層、さらにその弾性層の外周側に表層を形成した構造の定着用ベルトや、円筒状の基材、その外周側に設けられた弾性層、さらにその弾性層の外周側に表層を形成した構造の定着ローラ等を挙げることができる。
【0029】
前記チューブ状の基材の材質としては、具体的には、金属チューブ又は耐熱性プラスチックチューブを用いることができる(請求項5)が、柔軟な材質からなるチューブ状の基材としては、ポリイミド又はポリアミドイミドからなる筒状のフィルム(チューブ)が優れた耐熱性及び機械的強度を有するので好ましく用いられる(請求項6)。機材の熱伝導性を向上するために、機械的強度が許容する範囲で無機フィラー等を添加してもよい。円筒状の基材としては金属管等も用いることができる。
【0030】
本発明の定着用ベルト(定着スリーブ)では、各層間の接着性が不十分な場合、プリンタ(コピー機)使用中に層間の剥離が生じる場合がある。そこで、通常、各層間の接着性向上等のために、基材と弾性層間に下部プライマー層(基材と弾性層間に設けられるプライマー層を言う。)が、弾性層と表層間に上部プライマー層(弾性層と表層間に設けられるプライマー層を言う。)が設けられている。
【0031】
しかし、下部プライマー層を設けた場合でも、充填剤が金属ケイ素粉末以外の場合等、充填剤の種類やその配合量によっては、基材/下部プライマー層/弾性層間の密着力が十分でなく、プリンタ(コピー機)使用中に弾性層が基材より剥離しやすい場合がある。本発明者は、この問題を解決するため検討した結果、以下に示す方法1〜4により、基材/下部プライマー層/弾性層間の密着力が向上し、プリンタ(コピー機)使用中の剥離の発生を防ぐことができることを見出した。
【0032】
方法1
請求項2に記載の方法、即ち、充填剤として金属ケイ素を主体とし、CNTの配合量を最適化する方法である。
【0033】
方法2
充填材の種類及び充填材とCNTの配合量を最適化する方法である。具体的には、前記弾性層に、シリカを(弾性層の体積に対して)5〜20体積%、ボロンナイトライド(窒化ホウ素)を10〜40体積%、及びCNTを0.1〜2体積%の範囲で含有させる方法である。
【0034】
方法3
前記弾性層を構成するゴムとしてシリコーンゴムを選択し、シリコーンゴム中に接着成分を適量加える方法である。本発明者は検討の結果、弾性層に特定の接着成分を適量、即ち下記の範囲で加えることにより、高い熱伝導率と十分なゴム弾性を損なうことなく、密着力が向上し、通紙時の耐久性が高くなることを見出した。
【0035】
請求項7及び請求項8は、この方法により得られる定着用ベルトであり、請求項7は、前記基材と前記弾性層間が下部プライマー層により接着され、前記弾性層を構成するゴムがシリコーンゴムであり、前記弾性層が、シランカップリング剤を前記シリコーンゴムに対して0.5〜5重量%配合することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の定着用ベルトであり、請求項8は、前記基材と前記弾性層間が下部プライマー層により接着され、前記弾性層を構成するゴムがシリコーンゴムであり、前記弾性層が、ゴム系プライマー用樹脂を前記シリコーンゴムに対して0.1〜3重量%配合することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の定着用ベルトである。
【0036】
ここでシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、分子中に、無機質と化学結合する反応基(メトキシ基、エトキシ基、シラノール基等)及び有機材料と化学結合する反応基(ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基等)を持つ有機珪素化合物を挙げることができる。中でも、メトキシ基及びエポキシ基を有するものが好ましく、これらは、KBE−403(信越シリコーン社製)等の商品名で市販されているものを用いることができる。
【0037】
ゴム系プライマー用樹脂としては、市販されているものを用いることができるが、好ましくは、基材に合わせてその種類が選択される。例えば、基材が金属であれば、好ましいゴム系プライマー用樹脂としては、X−33−173(信越シリコーン社製)を挙げることができ、基材がポリイミド等の樹脂の場合は、X−33−174(信越シリコーン社製)を挙げることができる。
【0038】
方法4
前記弾性層を構成するゴムとしてシリコーンゴムを選択し、プライマー層に、シリコーンゴムを加える方法である。請求項9は、この方法により得られる定着用ベルトであり、前記基材と前記弾性層間が下部プライマー層により接着され、前記弾性層を構成するゴムがシリコーンゴムであり、前記下部プライマー層に、シリコーンゴムを加えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の定着用ベルトである。
【0039】
シリコーンゴムの種類に特に制限はないが、フィラー量が多くなく、密着力の強いゴムが好ましい。シリコーンゴムの添加量は、下部プライマー層に対して0.1〜30重量%程度が好ましい。
【0040】
本発明の定着用ベルトの製造方法は特に限定されない。例えば、最内層となるチューブ状の基材又は円筒状の基材の外周側に、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーをディスペンサーにて塗布した後加硫して弾性層を形成し、次いで、その上に、フッ素樹脂の分散液を塗布し、熱処理して燒結させ表層を形成して製造することができる。好ましくは、各層間の接着性を向上させるために、耐熱性エラストマーを塗布する前に、基材の外周面に下部プライマー層を形成し、又、フッ素樹脂の分散液を塗布前に、弾性層の外周面に上部プライマー層を形成する。
【0041】
加硫剤を配合した耐熱性エラストマーからなる熱収縮性チューブを作成し、これを基材の外周側に被せ、熱収縮させることにより、弾性層を形成してもよい。
【0042】
本発明の定着用ベルトは、各種画像形成装置の定着部において使用される。定着部では、定着用ベルト内に加熱源が設けられ、定着用ベルトは、ゴムローラ等からなる加圧ローラと対向・圧接され、その間にトナー画像が転写された被転写物が通過し、未定着のトナーを加熱溶融して定着する。
【発明の効果】
【0043】
本発明の定着用ベルトは、近年の印刷スピードの高速化にも対応するような優れた定着性を達成できる高い熱伝導率を有するとともに、カラートナーを十分に包み込んで溶融・混色させることができるだけの適度な弾力性を有する。さらに、機械的強度の低下もない優れた定着用ベルトである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の定着用ベルトの一例の回転軸に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本発明を実施するための形態につき説明するが、本発明の範囲はこの形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を損ねない範囲で変更されたものも本発明に含まれる。
【0046】
図1は、本発明の定着用ベルト(ローラ)の一例を模式的に示す図であり、定着用ベルトの回転軸に直交する断面図である。図1において、1は基材であり、3は弾性層であり、5は表層である。さらに、基材1と弾性層3の間及び弾性層3と表層5の間には、接着性向上のためのプライマー層2(下部プライマー)及びプライマー層4(上部プライマー)がそれぞれ設けられている。
【0047】
図1の例における基材1は、ポリイミド樹脂からなるエンドレスベルトである。基材1としては、他に、樹脂製や金属製の円筒や円柱状の固体(ローラ)を用いることもできる。又、エンドレスベルトの樹脂材料として、ポリイミド樹脂の代わりにポリアミドイミド樹脂等を用いることもできるが、耐熱性、弾性率、強度等の面からは、ポリイミド樹脂が好ましい。
【0048】
基材1は、金属製の円筒状芯体の外周面に、適量の熱伝導性改善用のフィラーを配合したポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の有機溶媒溶液(ポリイミドワニス)をディスペンサー法で塗布し、350℃から450℃程度に加熱し、前記前駆体を脱水、閉環させポリイミド化させて形成したものである。ポリイミドワニスとしては、宇部興産UワニスSを挙げることができ、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルアセトアミド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
このようなポリイミド樹脂からなるエンドレスベルトの厚さは、耐久性と弾力性の面から30〜80μm程度が好ましい。
【0050】
弾性層3の材質としては、前記のように、耐熱性に優れたシリコーンゴムやフッ素ゴムが好ましいが、特に、シリコーンゴム層を基材1側に配置し、その上に厚さ20〜100μmのフッ素ゴム層を表層側に配置した2層構造の弾性層は、耐熱性、表層との接着性の面から好ましい。すなわち、表層5側にフッ素ゴム層があるためフッ素樹脂をマトリックス材とする表層5との接着性に優れ、さらにフッ素ゴムは耐熱性が良好であるため、表層形成時の熱でシリコーンゴム層が損傷を受けるのが防止される。又、基材1側にシリコーンゴム層があるため弾力性の点でも好ましい。
【0051】
定着性向上のため、弾性層3は、厚さ方向の弾力性に優れることが求められる。そのため、弾性層3の硬度は、JIS K6301に規定するスプリング式片さ試験A形により測定した硬度(JIS−A硬度)が、10〜60であるのが好ましく、10〜40であるのが特に好ましい。又、弾性層3の厚さも、0.1〜0.5mmであるのが好ましく、0.2mm以上であるのがさらに好ましい。
【0052】
従来の技術では、適度な弾力性と高い熱伝導率をともに満たすことは困難であったが、本発明の方法により、両者をともに満たすことが可能になり、その結果、より高速のカラー印刷に十分対処可能な定着性が得られるようになった。
【0053】
本発明に使用されるカーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ合成法、電解法、電子線照射法、気相成長法等の方法により製造することができる。特に、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法にて作製されたカーボンナノチューブは、径や長さ等の形状を制御しやすいため本発明に使用されるカーボンナノチューブの製造法として好ましい。中でも気相成長法は、その制御が特に容易であるので、特に好ましい。
【0054】
このような気相成長法によって作製されるカーボンナノチューブとしては、ハイペリオンキャタリシスインターナショナル社、昭和電工社、日機装社、カーボン・ナノテク・インスティチュート、GSIクレオス社等よって製造されるものが挙げられ、具体的商品としては、昭和電工社製のVGCF−Hを例示することができる。
【0055】
カーボンナノチューブの短軸径は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、特に好ましくは0.2μm以下である。短軸径が小さいほど、同重量添加する場合におけるファイバーの本数が増え、熱伝導の改善効果が優れるために好ましい。また、カーボンナノチューブには、単層から多層(複層)まで幅広く種類が存在する。カーボンナノチューブの長軸径は、特に限定されないが、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。短軸径と長軸径がこの範囲を外れると熱伝導性と機械的強度のバランスもとりにくくなる傾向がある。
【0056】
弾性層3の外周側に設けられる表層5の材質として用いられるフッ素樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体等が挙げられる。特に、耐熱性の点からPTFEまたはPFAを用いることが好ましい。
【0057】
フッ素樹脂からなる表層5の厚さは、10〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜35μm、さらに好ましくは10〜25μmである。フッ素樹脂層の厚さが薄すぎると耐久性に劣り、複写枚数が多くなるにつれて早期に摩耗して離型性が損なわれるおそれがある。フッ素樹脂層の厚さが厚すぎると、定着用ベルト表面が硬くなり、カラートナーの定着性が低下する。
【0058】
プライマー層2及び4の材質は、特に限定されないが、接着力の面からは、プライマー層2にはゴム系プライマーが、プライマー層4には、フッ素系プライマーが好ましい。
【実施例】
【0059】
実施例1〜9及び比較例1〜5
以下に示す手順にて、図1で表される定着用ベルト(すなわち、基材1、プライマー層2、弾性層3、プライマー層4、表層5を有する定着用スリーブ)を作製した。
【0060】
[基材1の作製]
金属製の円筒状芯体の外周面に、適量の熱伝導性改善用のフィラーを配合したポリイミド前駆体の有機溶媒溶液(ポリイミドワニス、宇部興産社製、商品名:UワニスS)をディスペンサー法で塗布し、350℃から450℃程度に加熱し、前記前駆体を脱水、閉環させポリイミド化させた後、円筒状芯体から取り外してチューブ状の基材1を得た。なお、この基材1の寸法は、厚さ50μm、内径26mm、長さ24cmである。
【0061】
[プライマー層2]
信越シリコーン社製X−33−174A/B(ゴム系プライマー)を用いた。
【0062】
[弾性層3の作製]
側鎖がメチルタイプの周知のシリコーンゴムに、表1、表2又は表3に記載の充填剤及びカーボンナノチューブを、3本ロールを用いて表1、表2又は表3に記載の量、混合した。得られた混合物を、プライマー層2の外周面に、ディスペンサーにて塗布後、熱加硫により成形し、厚さ275μmの弾性層3を得た。なお、弾性層3の作製に用いた充填剤及びカーボンナノチューブを以下に示す。
【0063】
(充填剤)
1.アルミナ:昭和電工社製のアルミナCB−A10(商品名)である。なお、このアルミナの形状は球であり、平均粒径は10mmである。(以下の表中では「アルミナ」と示す。)
2.シリカ:電気化学工業社製のFB−8S(商品名;平均粒径約6.5μm、球状、以下の表中では「シリカ」と示す。)
【0064】
(カーボンナノチューブ)
昭和電工社製のカーボンナノチューブVGCF−H(商品名)である。なお、このカーボンナノチューブの形状は、短軸径150nm、長軸径6μmである。
【0065】
充填剤の体積%X及びカーボンナノチューブの体積%Yは、シリコーンゴム、充填剤及びカーボンナノチューブのそれぞれの使用した重量、及びそれぞれの比重より計算した値である。2種以上の充填剤を使用した場合は、その体積%の合計をXとする。
【0066】
[プライマー層4]
デュポン社製855N−703(フッ素系プライマー)を用いた。
【0067】
[表層5の作製]
プライマー層4の上に、フッ素樹脂塗料(PFA:デュポン社製855N−713)を塗布して、約340℃で処理し、表層5(フッ素樹脂層)を形成し、図1で表される定着用ベルトを得た。フッ素樹脂層の厚さは、15μmであった。
【0068】
上記のようにして製作した定着用ベルトについて、以下に示す方法で定着性、硬度及び熱伝導率、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力を測定し、又、耐久テストを行った。その結果を表1、表2及び表3に示す。
【0069】
[定着性の評価]
製作した定着用ベルトを用いて実際にカラー画像を印刷して評価した。印刷時の表面温度は150℃、押圧力は6kgとした。又、印刷時の通紙の条件は、A4の印刷用紙を連続10枚、25枚/分で印刷し、色むらの有無とざらつきの有無を目視により判定した。その結果を、以下の基準に基づいて、表1、表2及び表3に示す。
◎:色むらとざらつきがない。
○:色むらはないがざらつきがある。
×:色むらとざらつきのいずれもがある。
【0070】
[硬度と熱伝導性の評価]
硬度は、JIS K 6253に準じて、JIS−A硬度計にて測定した。熱伝導率は、アルバック理工社製周期的加熱法測定装置FTC−1により測定して得られた熱拡散率に、JIS K 7123により測定した比熱及びJIS K 7112A法により測定した密度を掛け合わせた値である。
【0071】
[密着力の評価]
180℃ピーリング強度の測定により評価した。具体的には、ポリイミド基材上にベースゴム(シリコーンゴム)を所定の厚みになるように製膜し、ベースゴムを接着剤で
基板に貼りつけたサンプルを1cm幅に切断、ポリイミド基材側を引っ張り試験機で引っ張り、ポリイミド基材とベースゴム界面の180度ピール強度を測定した。
【0072】
[耐久テスト]
製作した定着用ベルトを用いて実際にカラー画像を印刷した。印刷時の表面温度は150℃、押圧力は6kgとした。又、印刷時の通紙の条件は、A4の印刷用紙を25枚/分で連続印刷し、定着ベルトの基材1/プライマー層2/弾性層3間の剥離の有無を目視にて確認し、以下の評価基準に基づき評価した。
【0073】
[評価基準]
◎: 全く剥離が生じない。
○: 殆ど剥離が生じない。
△: 剥離を生じる場合があるが、実用に差し支えないレベルである。
×: 剥離が多数発生し、実用レベルにない。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表1、表2及び表3には、定着性等の評価結果とともに、充填剤やカーボンナノチューブの体積%から求めた硬度指数及び熱伝導指数を示した。表1、表2及び表3の結果より明らかなように、充填剤やカーボンナノチューブを配合しない比較例1や、熱伝導指数が170以下の比較例2や比較例4では優れた定着性が得られない。熱伝導率が低すぎることが原因と考えられる。又、硬度指数が750以上の比較例3や比較例5でも優れた定着性が得られない。弾性層が硬すぎ、カラートナーの溶融・混色が不十分であったことが原因と考えられる。
【0078】
一方、カーボンナノチューブを配合し、硬度指数及び熱伝導指数が本発明の範囲内である実施例1〜9では、優れた定着性が得られている。特に、熱伝導指数が200〜280の範囲内にある実施例2及び3は、定着性が優れる。
【0079】
なお、前記実施例では、充填剤としてアルミナが配合されているが、一般的に熱伝導性充填剤としてアルミナと同様に用いられているシリカ、ボロンナイトライド、酸化チタン、グラファイト等の他の充填剤を用いても、アルミナの場合と同様な結果が得られると考えられる。
【0080】
実施例10〜17
充填剤として、金属ケイ素粉末(キンセイマテック社製の商品名;M−Si#600、、破砕形状、平均粒径約6.0μm。以下の表中では「金属Si」と示す。)を用い、表4又は表5に示す処方とした以外は、実施例2と同様な方法、手順で、図1で表される定着用ベルトを作製した。この定着用ベルトについて、前記の物性を測定し、その結果を表4、5に示した。
【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
表4及び表5の結果より明らかなように、充填剤として金属ケイ素粉末を配合し、硬度指数及び熱伝導指数が本発明の範囲内である実施例10〜17では、優れた定着性が得られている。
【0084】
又、実施例10〜17における基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力や耐久テスト結果は、充填剤としてアルミナを配合した実施例1〜9よりもはるかに優れており、充填剤として金属ケイ素粉末を配合することにより、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力が向上し、耐久性に優れた定着用ベルトが得られることが、表4及び表5の結果により示されている。
【0085】
実施例18〜20
弾性層3の作製において、シリコーンゴムに、KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン信越シリコーン社製シランカップリング剤)を表6に示す量を添加した以外は、実施例2と同様にして図1で表される定着用ベルトを作製した。この定着用ベルトについて、前記の物性を測定し、その結果を表6に示した。なお、表中では、KBE−403の添加量は、シリコーンゴム100重量部に対する重量部で表している。
【0086】
【表6】

【0087】
実施例18〜20は、弾性層3をシリコーンゴムで形成し、さらにシランカップリング剤を添加したものである(請求項7に該当)。表6の結果が示すように、硬度指数及び熱伝導指数が本発明の範囲内である実施例18〜20では、優れた定着性が得られているが、さらに、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力や耐久テスト結果は、シランカップリング剤の添加を行わない以外は同条件の実施例2より優れている。従って、弾性層3をシリコーンゴムで形成しさらにシランカップリング剤を添加することにより、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力が向上することが、表6の結果により示されている。
【0088】
実施例21〜23
弾性層3の作製において、シリコーンゴムに、KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン信越シリコーン社製シランカップリング剤)を表7に示す量を添加した以外は、実施例14と同様にして図1で表される定着用ベルトを作製した。この定着用ベルトについて、前記の物性を測定し、その結果を表7に示した。なお、表中では、KBE−403の添加量は、シリコーンゴム100重量部に対する重量部で表している。
【0089】
【表7】

【0090】
実施例21〜23は、弾性層3をシリコーンゴムで形成し、さらにシランカップリング剤を添加したものである(請求項7に該当)が、さらに充填剤として金属ケイ素粉末を用いたものである。表7の結果が示すように、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力は、実施例18〜20の場合よりさらに向上している。
【0091】
実施例24〜26
弾性層3の作製において、シリコーンゴムに、信越シリコーン社製X−33−174A/B(ゴム系プライマー、なお、以後、X−33−174と略すことがある。)を表8に示す量を添加した以外は、実施例2と同様にして図1で表される定着用ベルトを作製した。この定着用ベルトについて、前記の物性を測定し、その結果を表8に示した。なお、表中では、X−33−174の添加量は、シリコーンゴム100重量部に対する重量部で表している。
【0092】
【表8】

【0093】
実施例24〜26は、弾性層3をシリコーンゴムで形成し、さらにゴム系プライマー用樹脂を添加したものである(請求項8に該当)。表8の結果が示すように、硬度指数及び熱伝導指数が本発明の範囲内である実施例24〜26では、優れた定着性が得られているが、さらに、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力や耐久テスト結果は、ゴム系プライマー用樹脂の添加を行わない以外は同条件の実施例2より優れている。従って、弾性層3をシリコーンゴムで形成しさらにゴム系プライマー用樹脂を添加することにより、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力が向上することが、表8の結果により示されている。
【0094】
実施例27〜29
弾性層3の作製において、シリコーンゴムに、X−33−174を表9に示す量を添加した以外は、実施例14と同様にして図1で表される定着用ベルトを作製した。この定着用ベルトについて、前記の物性を測定し、その結果を表9に示した。なお、表中では、X−33−174の添加量はシリコーンゴム100重量部に対する重量部で表している。
【0095】
【表9】

【0096】
実施例27〜29は、弾性層3をシリコーンゴムで形成し、さらにゴム系プライマー用樹脂を添加したものである(請求項8に該当)が、さらに充填剤として金属ケイ素粉末を用いたものである。表9の結果が示すように、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力は、実施例24〜26の場合よりさらに向上している。
【0097】
実施例30〜32
プライマー層2に、弾性層に用いられているシリコーンゴムと同じシリコーンゴム(側鎖がメチルタイプの周知のシリコーンゴム)を、表10に示す量を添加した以外は、実施例2と同様にして図1で表される定着用ベルトを作製した。この定着用ベルトについて、前記の物性を測定し、その結果を表10に示した。なお、表中では、シリコーンゴムの添加量は、プライマー層2を形成するX−33−174A/B(ゴム系プライマー)100重量部に対する重量部で表している。
【0098】
【表10】

【0099】
実施例30〜32は、プライマー層2にシリコーンゴムを添加したものである(請求項9に該当)。表10の結果が示すように、硬度指数及び熱伝導指数が本発明の範囲内である実施例30〜32では、優れた定着性が得られているが、さらに、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力や耐久テスト結果は、プライマー層2にシリコーンゴムの添加を行わない以外は同条件の実施例2より優れている。従って、プライマー層2にシリコーンゴムを添加することにより、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力が向上することが、表10の結果により示されている。
【0100】
実施例33〜35
プライマー層2に、弾性層に用いられているシリコーンゴムと同じシリコーンゴム(側鎖がメチルタイプの周知のシリコーンゴム)を、表10に示す量を添加した以外は、実施例14と同様にして図1で表される定着用ベルトを作製した。この定着用ベルトについて、前記の物性を測定し、その結果を表11に示した。なお、表中では、シリコーンゴムの添加量は、プライマー層2を形成するX−33−174A/B(ゴム系プライマー)100重量部に対する重量部で表している。
【0101】
【表11】

【0102】
実施例33〜35は、プライマー層2にシリコーンゴムを添加したものである(請求項9に該当)が、さらに充填剤として金属ケイ素粉末を用いたものである。表11の結果が示すように、基材1/プライマー層2/弾性層3間の密着力は、実施例30〜32の場合よりさらに向上している。
【符号の説明】
【0103】
1 基材
2 下部プライマー層
3 弾性層
4 上部プライマー層
5 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状の基材、前記基材の外周側に設けられる弾性層、及び前記弾性層の外周側の表面に設けられる表層を有する定着用ベルトであって、
前記弾性層は、ゴムに充填剤とカーボンナノチューブを配合して形成されており、
前記弾性層中の、前記充填剤の体積%をX、前記カーボンナノチューブの体積%をYとしたとき、10X+3Y<750、3X+30Y>170、及びY>0.1を満たすことを特徴とする定着用ベルト。
【請求項2】
前記充填剤が、金属ケイ素粉末を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の定着用ベルト。
【請求項3】
前記弾性層を構成するゴムが、シリコーンゴム又はフッ素ゴムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着用ベルト。
【請求項4】
前記表層が、フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の定着用ベルト。
【請求項5】
前記基材が、金属チューブ又は耐熱性プラスチックチューブであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の定着用ベルト。
【請求項6】
前記基材が、ポリイミド又はポリアミドイミドのチューブであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の定着用ベルト。
【請求項7】
前記基材と前記弾性層間が下部プライマー層により接着され、前記弾性層を構成するゴムがシリコーンゴムであり、前記弾性層が、シランカップリング剤を前記シリコーンゴムに対して0.5〜5重量%配合することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の定着用ベルト。
【請求項8】
前記基材と前記弾性層間が下部プライマー層により接着され、前記弾性層を構成するゴムがシリコーンゴムであり、前記弾性層が、ゴム系プライマー用樹脂を前記シリコーンゴムに対して0.1〜3重量%配合することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の定着用ベルト。
【請求項9】
前記基材と前記弾性層間が下部プライマー層により接着され、前記弾性層を構成するゴムがシリコーンゴムであり、前記下部プライマーに、シリコーンゴムを加えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の定着用ベルト。

【図1】
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