説明

定着装置、および画像形成装置

【課題】記録媒体の厚さ寸法等の条件によらずジャム発生を回避でき正常な分離性能を発揮できるものとする。
【解決手段】未定着のトナー像を形成した記録媒体を加熱および加圧下で通過させ、前記未定着のトナーを前記記録媒体に定着する定着ニップ部Nを形成する加熱ローラ110と加圧ローラ120材と、定着ニップ部Nの通過後に、記録媒体と、加熱ローラ110との間に挿入され、記録媒体を加熱ローラ110から分離させる分離爪130と、を備え、分離爪130を、その先端部130aと加熱ローラ110との間隔寸法をカム140で変更するよう駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に係り、特に未定着のトナー像を形成した記録媒体を加熱加圧下で通過させ、未定着のトナー像を記録媒体に定着するニップ部を形成する一対の定着部材と、ニップ部の通過後に記録媒体と記録部材の間に配置され、記録媒体を定着部材から分離する分離爪と、を備える定着装置、およびこの定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター等の画像形成装置には、記録媒体に形成した未定着トナー像を定着するための定着装置が備えられている。この定着装置としては、互いに接触して回転する2つのローラを備えたものの他、加熱側回転体として無端状の定着ベルトを使用するものがある。
【0003】
例えば、2つのローラを使用する定着装置では、内部に熱源を備えた定着ローラと、加圧ばねによって前記定着ローラに押し付けられた加圧ローラとを備え、これらの加熱ローラと加圧ローラ間の定着ニップに供給される記録媒体上に担持された未定着トナー像を加熱および加圧してこれを記録媒体に定着する。
【0004】
ところで、このような定着装置においては、記録媒体が定着ローラと加圧ローラ間の定着ニップを通過した後、融着したトナーによって定着ローラに巻き付いてしまうことがある。これに対処するため、定着装置には、定着ローラから記録媒体を分離させるための分離爪が配置されることがある。
【0005】
このような定着装置において、分離爪を定着ローラと接触する位置と、定着ローラから分離した位置に切り替えて配置するものがある。特許文献1には、分離爪保持部材の回動により分離爪が、定着ローラの表面に接触する当接位置と、定着ローラの表面から離間している非当接位置との間を変位するように設けられており、分離爪保持部材は、ソレノイドにより、当接位置と非当接位置とに変位するように駆動され、非当接位置は、分離爪保持部材が回転部材に接触することにより位置決めされ、回転部材が回転駆動されることにより、分離爪保持部材および分離爪を振動させて未定着トナーを分離爪から除去するものが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、互いに圧接されて回転する定着ローラおよび加圧ローラと、これらの定着ローラと加圧ローラ間の定着ニップよりもシート搬送方向下流において定着ローラ表面に接触する分離爪を備え、トナー像が担持されたシートを定着ローラと加圧ローラ間の定着ニップを通過させることによってトナー像をシート上に定着させる定着装置において、前記定着ニップを通過するシートの分離状態を検知するセンサーと、センサーによって検知されるシートの分離状態に応じて前記分離爪を前記定着ローラ表面に対して接離させる接離手段を設けたものが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、未定着画像を担持した記録紙を、互いに対向して配設された定着ローラと加圧ローラに挟持して定着工程を行い、前記定着ローラの表面に接触するように配設された分離爪により定着後の記録紙を剥離、排紙する電子写真記録装置の定着装置において、記録紙の排紙を検知する排紙センサーと、複数の前記分離爪をそれぞれ回動可能に支持した分離爪支持部材と、前記分離爪の少なくとも1つを定着ローラに接触させるとともに、その他の分離爪を回動させて定着ローラから離間させる突起部を有する作動部材と、この作動部材を移動させて前記突起部により定着ローラに当接させる分離爪を交替させるカム部材と、このカム部材に動力を伝達して前記作動部材を移動させる駆動系とを備えたものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の定着装置においては、記録媒体を分離するに際して、分離爪は、定着部材に対して一定の間隔を保って配置されている。このため、記録媒体として薄紙を使用したとき、ジャムが生じてしまうという問題がある。なお、分離爪の先端部を定着部材と接触した場合には、分離爪によって定着部材の表面を傷つけ、耐久性および画像品質に劣るものとなる。
【0009】
そこで本発明は、記録媒体の厚さ条件によらずジャム発生を回避でき、正常な分離性能を発揮する定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための請求項1の発明は、未定着のトナー像を形成した記録媒体を加熱および加圧下で通過させ、前記未定着のトナーを前記記録媒体に定着するニップ部を形成する一対の定着部材と、前記ニップ部の通過後に、前記記録媒体と、前記定着部材のうちの一方の定着部材との間に挿入され、前記記録媒体を前記定着部材から分離させる分離爪と、を有する定着装置において、前記分離爪を、その先端部と前記定着部材との間隔寸法を変更可能に移動する分離爪駆動手段を備えることを特徴とする定着装置である。
【0011】
同じく請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記分離爪駆動手段が、カム機構を備えることを特徴とする。
【0012】
同じく請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の定着装置において、前記分離爪駆動手段が、前記分離爪の先端と前記定着部材との間の間隔寸法を、通紙される紙種に応じて変更することを特徴とする。
【0013】
同じく請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の定着装置において、前記分離爪が、板状部材であることを特徴とする。
【0014】
同じく請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の定着装置において、前記分離爪の先端部が、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0015】
同じく請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の定着装置と、前記記録媒体に未定着トナー像を形成するトナー像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分離爪の先端部と定着部材の先端部との間隔寸法を、分離爪駆動手段で用紙の状態にあわせて変更できるので、常に良好な分離性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係る画像形成装置を概念的に示す断面図である。
【図2】同じく定着装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】同じく定着装置の構造を示す平面図である。
【図4】同じく定着装置で通常の厚さの用紙を定着する場合を示す模式図である。
【図5】同じく定着装置で薄手の用紙を定着する場合を示す模式図である。
【図6】実施例2に係る定着装置の構成を示す模式図である。
【図7】実施例4に係る定着装置の構成を示す平面図である。
【図8】実施例4に係る定着装置の構成を示す模式図である。
【図9】実施例4に係る定着装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態に係る定着装置は、未定着のトナー像を形成した記録媒体を加熱および加圧下で通過させ、前記未定着のトナーを前記記録媒体に定着するニップ部を形成する一対の定着部材と、前記ニップ部の通過後に、前記記録媒体と、前記定着部材のうちの一方の定着部材との間に挿入され、前記記録媒体を前記定着部材から分離させる分離爪と、を有する定着装置において、前記分離爪を、その先端部と前記定着部材との間隔寸法を変更可能に移動する分離爪駆動手段を備えるものである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例(以下では単に実施例と記載する)に係る定着装置、および画像形成装置について説明する。以下、いくつかの例について説明するが、本発明はこれらに限定されず、かつ本発明の真の趣旨および範囲から逸脱せずに、数多くの改良、変更、変形、置換をなすことおよび応用例を想到することが当業者には可能であろう。
【0020】
<実施例1>
実施例1に係る画像形成装置について説明する。図1は実施例1に係る画像形成装置を概念的に示す断面図である。本例に係る画像形成装置10は、原稿を読み取る読み取りユニット11、画像を形成する画像形成部12、自動原稿搬送装置(ADF)13、ADF13から送り出される原稿をスタックする原稿排紙トレイ14、給紙カセット15ないし18を備える給紙部19、記録用紙をスタックする排紙部(排紙トレイ20)を備えている。
【0021】
この画像形成装置10では、ADF13の原稿台21上に原稿Dをセットして図示せぬ操作部での操作、例えばプリントキーの押下操作をすると、最上位の原稿Dがピックアップローラ22の回転により矢印B1方向へ送り出され、原稿搬送ベルト23の回転により、画像読み取りユニット11に固定されたコンタクトガラス24上へ搬送され、そこで停止する。
【0022】
コンタクトガラス24上に載置された原稿Dの画像は、画像形成部12とコンタクトガラス24の間に位置する読み取り装置25によって読み取られる。読み取り装置25は、コンタクトガラス24上の原稿Dを照明する光源26、原稿画像を結像する光学系27、原稿画像を結像させるCCD等からなる光電変換素子28等を有している。画像読み取り終了後、原稿Dを原稿搬送ベルト23の回転により矢印B2方向へ搬送して原稿排紙トレイ14上へ排出する。このように、原稿Dを1枚ずつコンタクトガラス24上へ給送して原稿画像を画像読み取りユニット11によって読み取る。
【0023】
一方、画像形成部12の内部には、像担持体である感光体30が配置してある。感光体30は、図において時計方向に回転駆動し、帯電装置31によって表面を所定の電位に帯電させる。また、書き込みユニット32からは、読み取り装置25によって読み取った画像情報に応じて光変調したレーザー光Lを照射し、帯電させた感光体30の表面をこのレーザー光Lで露光し、これによって感光体30の表面に静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像装置33を通るとき、対向する転写装置34によって感光体30と転写装置34の間に給送された記録媒体Pに転写する。トナー像転写後の感光体30の表面は、クリーニング装置35によって清掃する。
【0024】
画像形成部12の下部に配置した複数の給紙カセット15ないし18には、紙等の記録媒体Pを収容してあり、いずれかの給紙カセット15ないし18から記録媒体Pを矢印B3方向へ送り出し、その記録媒体Pの表面に、上述のように感光体30の表面に形成したトナー像を転写する。次に、記録媒体Pを矢印B4で示すように画像形成部12内の定着装置100を通し、熱と圧力の作用によって記録媒体Pの表面に転写されたトナー像を定着させる。定着装置100を通った記録媒体Pを排出ローラ対37によって搬送し、矢印B5で示すように排紙トレイ20へ排出し、スタックする。
【0025】
次に実施例1に係る定着装置100について説明する。図2は実施例1に係る定着装置の概略構成を示す模式図、図3は同じく定着装置の構造を示す平面図である。定着装置100は、図2に示すように、定着ニップ部Nを形成する1対の定着部材として、加熱ローラ110および加圧ローラ120を備える。加熱ローラ110には、ハロゲンヒータ等の加熱手段111が内蔵されている。実施例1に係る定着装置100では、加熱ローラ110の定着ニップ部Nの下流側に、分離爪130がその先端部130aを近接して設置されている。なお、分離爪130は、加熱ローラ110ではなく、加圧ローラ120側に配置することや、加熱ローラ110および加圧ローラ120に近接させて2台配置することができる。また、定着部材は、ローラの他、無端状ベルトとして構成することができる。
【0026】
さらに、定着装置100には、入口ガイド板160と出口ガイド板170とが配置され、未定着トナー像が形成された記録材180は、定着ニップ部Nを通過してその画像が定着され、搬送される。
【0027】
実施例1に係る定着装置100では、分離爪130は回転支点131を中心に回転できるように配置され、スプリング150でその先端部130aが加熱ローラ110側に向け押し付けられている。そして、分離爪130の加熱ローラ110側には、分離爪130に接触して先端部130aと加熱ローラ110との間隔寸法を変更するカム140を配置している。このカム140は、偏心した位置に軸141を備える楕円形の板カムである。カム140が軸141を中心にして回転駆動されるとカム140に接触した分離爪130は、回転支点131を中心にして揺動して分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110の表面との距離が変更できる。
【0028】
また、定着装置100において、分離爪130は、図3に示すように、加熱ローラ110の長手方向に対して複数個、例えば5個設けられている。このとき、カム140は、それぞれの分離爪130に対して1つ配置され、各カム140は、1本のカム軸141に固定されて同時に回転駆動される。カム軸141は、駆動手段161で駆動される。この駆動手段161は、例えばステッピングモータとギア列を用いて構成でき、制御部162で駆動が制御される。実施例1に係る定着装置100では、カム140、駆動手段161と制御部162とが、分離爪駆動手段を構成する。なお、駆動手段161としては、前記ステッピングモータとギア列の組み合わせの他、電磁ソレノイド等、他の装置を用いることができる。
【0029】
制御部162は、用紙の厚さにもとづいて駆動手段161を駆動制御する。用紙の厚さは、画像形成装置10の入力手段から入力される記録媒体の種類や、厚さセンサーの出力にもとづいて取得される。制御部162は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピューターで構成され、ROMに格納したプログラムをCPUで実行することにより制御を実行する。例えば、ROMに用紙の厚さに対する駆動手段161の駆動量を格納したテーブルを備え、このテーブルから入力された用紙の厚さに適合する駆動量を読み出し、駆動手段161を駆動する。なお、この駆動量の所得を計算式にもとづいて行うこともできる。
【0030】
次に定着装置100の動作について説明する。この定着装置100では、通常の厚さの用紙の定着時と、通常より厚さ寸法が小さい薄紙の定着時で異なる以下の動作をする。まず通常の厚さの用紙の定着時について説明する。図4は定着装置で通常の厚さの用紙を定着する場合を示す模式図である。記録材180の定着時において、定着装置100は、図4に示すように、カム140の軸141からの距離が大きい輪郭が分離爪130側に配置している。これにより、カム140は分離爪130で接触し(図3中A部)、分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110との間には、あらかじめ定めた寸法Gの隙間ができる(図3中B部)。
【0031】
すなわち、定着装置100では、定着時に分離爪130とカム140とが接触して、カム140がストッパの役目を果たすことにより分離爪130の動きが規制され、その先端部130aと加熱ローラ110との間に一定距離(寸法G)のギャップを保持することができる。これにより、分離爪130の先端部130aが加熱ローラ110と非接触状態となり、加熱ローラ110の表面を傷つけることなく記録材180を加熱ローラ110から分離させることができる。
【0032】
次に薄手の紙の定着時について説明する。図5は定着装置で薄手の用紙を定着する場合を示す模式図である。この状態では、カム140は回転駆動され、カム140は、分離爪130と非接触状態となる(図5C部)。すると分離爪130は、スプリング150で押されて回動し、分離爪130の先端部130aは、加熱ローラ110の表面に接触した状態となる(図5D部)。これにより、分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110との間には隙間がなくなり、薄紙のように分離性の悪い紙であっても分離爪130で加熱ローラ110から強制的に分離させることができ、ジャムの発生を防止できる。
【0033】
<実施例2>
次に実施例2に係る定着装置について説明する。実施例1に係る定着装置では、分離爪130の先端部130aが加熱ローラ110と接触するようにした。ここで、分離爪130の先端部130aが通常の厚さの用紙を定着するとき(図4)よりも分離爪130の先端部130aと、加熱ローラ110との間隔寸法が小さくなれば、分離性の悪い用紙を定着する際のジャムを減少できる。
【0034】
そのため、実施例2に係る定着装置200では、薄紙の定着時に分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110との距離を通常の用紙のときの寸法Gより小さい寸法gとした(G>g)。図6は実施例2に係る定着装置の構成を示す模式図である。実施例2に係る定着装置200においては、カム140の輪郭形状を実施例1のものとは変更している。なお、駆動手段161の回転駆動量を制御して、分離爪130の先端部130aが加熱ローラ110に接触せず、それらの間隔を寸法gとなるよう駆動することで実現することもできる。
【0035】
なお、実施例1に係る定着装置100は、分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110とを接触させているため、最も良好な分離性能を得ることができるが、加熱ローラ110の表層を分離爪130の先端部130aで傷つけてしまうおそれがある。一方、実施例2に係る定着装置200は、画像品質低下の懸念があるが、分離爪130の先端部130aは加熱ローラ110と接触しないため加熱ローラ110を傷つけるような事態は発生しない。ただし、分離性能としては、実施例1には劣ることとなる。
【0036】
<実施例3>
次に実施例実施例3に係る定着装置について説明する。前記実施例では、カム140の輪郭形状を楕円形としていた。実施例3に係る定着装置では、カム140の輪郭形状を、段差がつい形状等、複雑な形状とする。実施例3では、このようなカムを用いることにより、カムの回転角度に応じてカム140と加熱ローラ110との間隔を複数の値に切り替えることができる。実施例3に係る定着装によれば、複数種の厚さの用紙に対応して最適な間隔の値に設定することができる。
【0037】
<実施例4>
次に実施例4に係る定着装置について説明する。前記各実施例に係る定着装置では、分離爪の幅寸法を小さくして複数設けた。実施例4に係る定着装置は、分離爪130を1枚の板状部材としたものである。図7は実施例4に係る定着装置の構成を示す平面図である。実施例4に係る定着装置210では、爪部材190を板状の部材とし、その両端の2カ所にカム140を配置した。なお、カム140は3カ所以上に設けることができる。そして、カム140は、加熱ローラ110の長手方向中央部の通紙範囲内よりも外側端部に配置する。
【0038】
従って、実施例4に係る定着装置210によれば、用紙とカム140と加熱ローラ110の通紙部分が接触して跡を残すことがないので、画像を汚染することなく、良好な画像品質を得ることができる。また、実施例4に係る定着装置210によれば、分離爪を1つの部材とでき、部品構成を簡素化してコストダウンを図れる。
【0039】
<実施例5>
次に実施例5に係る定着装置について説明する。図8および図9は実施例4に係る定着装置の構成を示す模式図である。定着装置では、熱膨張した定着部材と、分離爪の先端との間隔の変動を少なくするため、分離爪130を支持する支持部材上に、定着部材に接触して滑る位置決部材を設けることがある。実施例5に係る定着装置220は、位置決部材の機能をカム140で兼用させる。
【0040】
カム140はその加熱ローラ110側の部分(図8のI部)で加熱ローラ110に接触しており、また、カム140と分離爪130とを、定着装置220に配置された共通の支持部材(図示していない)上に設けることで、加熱ローラ110が熱膨張したとき、カム140と分離爪130がともに移動でき、分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110との間隙寸法を一定に保つことができる。
【0041】
図9に示すように、カム140を軸141で回転したとき、カム140がその加熱ローラ110側の輪郭で加熱ローラ110に接触している(図9I部)。カム140の加熱ローラ110との接触部140aとカム140の回転中心Oとの距離dを、カム140回転前(図8参照)における接触部140aとカム140の回転中心O軸との距離d1と等しくなるようカム140の輪郭を形成しておけば、カム140の回転中心Oと加熱ローラ110との間隔寸法を、カム140の回転前後で等しくしたまま、図8に示した状態から図9に示す状態へカム140を回転させることで、分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110との間隔を寸法Gと寸法gに変更できる。このため、加熱ローラ110の熱膨張の程度にかかわらず、分離性の悪い紙への分離機能の対応力を高めることができる。
【0042】
<実施例5>
次に実施例5に係る定着装置について説明する。実施例5に係る定着装置は、前記各実施例に係る定着装置の分離爪130の先端部130aをPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂で構成するものである。このPTF樹脂は、従来分離爪の材料として一般的に使用されるPEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PEK(ポリエーテルケトン)等の素材より柔らかく、加熱ローラ110に接触させても傷をつけにくい。このため、分離爪130の先端部130aと加熱ローラ110との間隔を狭くすることができ、より良好な分離性能を得ることができる。
【0043】
なお、各実施例において画像形成装置は、単一色のトナーを用いてモノクロの画像形成を行うものとして説明したが、各定着装置は、複数色のトナーを使用して画像形成を行うカラー画像形成装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 画像形成装置
11 読み取りユニット
12 画像形成部
13 自動原稿搬送装置(ADF)
14 原稿排紙トレイ
15〜18 給紙カセット
19 給紙部
20 排紙トレイ
21 原稿台
22 ピックアップローラ
23 原稿搬送ベルト
24 コンタクトガラス
25 読み取り装置
26 光源
27 光学系
28 光電変換素子
30 感光体
31 帯電装置
32 書き込みユニット
33 現像装置
34 転写装置
35 クリーニング装置
37 排出ローラ対
100 定着装置
110 加熱ローラ
111 加熱手段
120 加圧ローラ
130 分離爪
130a 先端部
130a 先端部
131 回転支点
140 カム
140a 接触部
140a 接触部
141 軸
141 カム軸
150 スプリング
160 入口ガイド板
161 駆動手段
162 制御部
170 出口ガイド板
180 記録材
190 爪部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2005−099426号公報
【特許文献2】特開2009−258327号公報
【特許文献3】特開平7−261589号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着のトナー像を形成した記録媒体を加熱および加圧下で通過させ、前記未定着のトナーを前記記録媒体に定着するニップ部を形成する一対の定着部材と、
前記ニップ部の通過後に、前記記録媒体と、前記定着部材のうちの一方の定着部材との間に挿入され、前記記録媒体を前記定着部材から分離させる分離爪と、
を有する定着装置において、
前記分離爪を、その先端部と前記定着部材との間隔寸法を変更可能に移動する分離爪駆動手段を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記分離爪駆動手段が、カム機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記分離爪駆動手段が、前記分離爪の先端と前記定着部材との間の間隔寸法を、通紙される紙種に応じて変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記分離爪が、板状部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記分離爪の先端部が、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の定着装置と、前記記録媒体に未定着トナー像を形成するトナー像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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