説明

定着装置、及び、画像形成装置

【課題】装置の立ち上げ時においても、離型剤供給部材に付着したトナーを確実に除去することができる、定着装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着部材21に圧接してニップ部を形成する加圧回転体31の表面に離型剤を供給する離型剤供給部材51と、離型剤供給部材51に当接してその表面をクリーニングする第1クリーニング部材52と、を備える。また、加圧回転体31に当接してその表面をクリーニングする第2クリーニング部材62と、加圧回転体31に対して第2クリーニング部材62を離間させる離間機構と、をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、そこに設置される定着装置と、に関し、特に、加圧回転体の表面に離型剤を供給する離型剤供給部材が設置された定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置に設置される定着装置において、加圧ローラ等の加圧回転体や定着ベルト、定着ローラ等の定着部材にトナー(オフセットトナー)が付着する不具合を抑止するとともにニップ部を通過する記録媒体の分離性を向上させることを目的として、加圧回転体に離型剤(微量オイル)を塗布する離型剤供給部材(微量オイル塗布部材)を設置する技術が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
このような定着装置では、離型剤供給部材に付着したトナーをクリーニングするために、クリーニング部材が離型剤供給部材に当接されている。
【0003】
一方、特許文献2には、定着ローラ(定着部材)に当接させたオイル塗布ローラに付着したトナー(オフセットトナー)を除去するために、オイル塗布ローラにクリーニング部材を当接させる技術が開示されている。さらに、特許文献3には、定着ローラ(定着部材)に当接させたオイル塗布ローラに付着したトナーを除去するクリーニング部材に対して、クリーニング部材上に回収されたトナーを固定させるための部材を設ける技術が開示されている。
他方、特許文献4には、加圧ローラ(加圧回転体)に当接させたクリーニングローラによって回収されたトナー(オフセットトナー)が再び加圧ローラに逆転写してしまう「溶け出し」を防止するために、クリーニングローラの表面にトナー樹脂の粘弾性を大きくする反応性物質をコーティングする技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の特許文献1等の定着装置は、主電源投入直後やオフモードからの復帰直後等の装置の立ち上げ時において、離型剤供給部材に付着したトナーに充分な熱量が与えられていない状態のときに、離型剤供給部材に付着したトナーをクリーニング部材によって充分に除去できないという不具合があった。
これは、離型剤供給部材に付着したトナーに充分な熱量が与えられていない状態のときには、そのトナーの粘性が充分ではないためであって、このようなトナーは離型剤供給部材からクリーニング部材に移行できなくなってしまう。そして、このようなトナーは、さらに離型剤の作用によって「浮遊状態(離型剤供給部材の表面に充分に吸着していない状態である。)」になって、離型剤供給部材から加圧ローラ(加圧回転体)に移行してしまい、その後の定着工程においてニップ部に搬送される記録媒体の裏面(非定着面)を汚してしまったり、定着部材に移行した後にニップ部に搬送される記録媒体のオモテ面(定着面)を汚してしまったりすることになる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、装置の立ち上げ時においても、離型剤供給部材に付着したトナーを確実に除去することができる、定着装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着部材と、前記定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、前記加圧回転体に当接して当該加圧回転体の表面に離型剤を供給する離型剤供給部材と、前記離型剤供給部材に当接して当該離型剤供給部材の表面をクリーニングする第1クリーニング部材と、を備え、前記加圧回転体に当接して当該加圧回転体の表面をクリーニングする第2クリーニング部材と、前記加圧回転体に対して前記第2クリーニング部材を離間させる離間機構と、をさらに備えたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記第2クリーニング部材は、前記離型剤供給部材に対して前記加圧回転体の回転方向下流側に配設されたものである。
【0008】
また、請求項3記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第1クリーニング部材は、その表面にトナー樹脂と反応する架橋剤がコーティングされたものである。
【0009】
また、この発明の請求項4記載の発明にかかる定着装置は、所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着部材と、前記定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、前記加圧回転体に当接して当該加圧回転体の表面に離型剤を供給する離型剤供給部材と、前記離型剤供給部材に当接して当該離型剤供給部材の表面をクリーニングする第1クリーニング部材と、を備え、前記離型剤供給部材に当接して当該離型剤供給部材の表面をクリーニングする第2クリーニング部材と、前記離型剤供給部材に対して前記第2クリーニング部材を離間させる離間機構と、をさらに備えたものである。
【0010】
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項4に記載の発明において、前記第2クリーニング部材は、前記第1クリーニング部材に対して前記離型剤供給部材の回転方向上流側に配設されたものである。
【0011】
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項4又は請求項5に記載の発明において、前記第2クリーニング部材の表面のトナーに対する離型性が、前記第1クリーニング部材の表面のトナーに対する離型性よりも低くなるように形成されるとともに、前記離型剤供給部材の表面のトナーに対する離型性よりも低くなるように形成されたものである。
【0012】
また、請求項7記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項4〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記第1クリーニング部材と前記第2クリーニング部材とは、それぞれ、その表面にトナー樹脂と反応する架橋剤がコーティングされたものである。
【0013】
また、請求項8記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記第2クリーニング部材を加熱する加熱手段をさらに備えたものである。
【0014】
また、請求項9記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項8に記載の発明において、前記加熱手段は、前記離間機構によって前記第2クリーニング部材が相手部材に対して離間された後に、前記第2クリーニング部材の加熱を停止するように制御されるものである。
【0015】
また、請求項10記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項9のいずれかに記載の発明において、前記離間機構は、前記加圧回転体の昇温が開始されて前記加圧回転体の表面温度が所定値に達してから所定時間が経過した後に、前記第2クリーニング部材が相手部材に対して離間するように制御されるものである。
【0016】
また、請求項11記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、前記離型剤供給部材は、発泡ゴムにシリコーンオイルを内填させてなる発泡体層と、耐熱性を有する多孔質材料からなる表面層と、を具備したものである。
【0017】
また、請求項12記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項11のいずれかに記載の発明において、前記加圧回転体を加熱する加熱体をさらに備えたものである。
【0018】
また、この発明の請求項13記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、離型剤供給部材の表面をクリーニングする第1クリーニング部材とは別に、加圧回転体又は離型剤供給部材の表面をクリーニングする第2クリーニング部材を離間可能に設けている。これにより、装置の立ち上げ時においても、離型剤供給部材に付着したトナーが確実に除去される、定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】定着装置を示す構成図である。
【図3】第2クリーニングローラの離間機構を示す構成図である。
【図4】(A)第2クリーニングローラが加圧ローラに当接した状態を示す図と、(B)第2クリーニングローラが加圧ローラから離間した状態を示す図と、である。
【図5】(A)加圧ローラ及び第2クリーニングローラの表面の温度変動と、離型剤塗布ローラ及び第2クリーニングローラに付着したトナーの温度変動と、を示すグラフと、(B)第2クリーニングローラと加圧ローラとの制御を示すタイミングチャートと、である。
【図6】この発明の実施の形態2における定着装置を示す構成図である。
【図7】(A)第2クリーニングローラが離型剤塗布ローラに当接した状態を示す図と、(B)第2クリーニングローラが離型剤塗布ローラから離間した状態を示す図と、である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0022】
実施の形態1.
図1〜図5にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、7は転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙部、9は記録媒体Pの搬送タイミングを調整するレジストローラ、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上を帯電する帯電部、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成される静電潜像を現像する現像部、14は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成されたトナー像を記録媒体P上に重ねて転写する転写バイアスローラ(1次転写バイアスローラ)、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
【0023】
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上のカラートナー像を記録媒体P上に転写するための2次転写バイアスローラ、20は記録媒体P上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、を示す。
【0024】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0025】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0026】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に向けて発せられる。
【0027】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0028】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0029】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BK表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0030】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように転写バイアスローラ14が設置されている。そして、転写バイアスローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0031】
そして、転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0032】
他方、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の各色のトナーが重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、図中の時計方向に走行して、2次転写バイアスローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写バイアスローラ18との対向位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像が転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部16の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部16に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0033】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写バイアスローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送される記録媒体Pは、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された記録媒体Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達した記録媒体Pは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0034】
そして、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ベルトと加圧ローラとのニップ部にて、カラー画像(トナー)が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0035】
次に、図2〜図4にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2は、定着装置20を示す構成図である。図3は、定着装置20における第2クリーニングローラ62の離間機構を示す構成図である。図4(A)は第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31に当接した状態を示す図であって、図4(B)は第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31から離間した状態を示す図である。
図2に示すように、定着装置20は、定着補助ローラ22、加熱ローラ23、定着部材としての定着ベルト21、加圧回転体としての加圧ローラ31、離型剤供給部材としての離型剤塗布ローラ51、第1クリーニング部材としての第1クリーニングローラ52、第2クリーニング部材としての第2クリーニングローラ62、温度センサ40、45、ガイド板38、分離爪39、等で構成される。
【0036】
ここで、定着部材としての定着ベルト21は、ポリイミド等の樹脂材料からなる層厚90μm程度のベース層上に、弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端状ベルトである。定着ベルト21の弾性層は、層厚が200μm程度であって、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト21の離型層は、層厚が20μm程度であって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等で形成されている。定着ベルト21の表層に離型層を設けることにより、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ベルト21は、2つのローラ部材(定着補助ローラ22と加熱ローラ23とである。)に張架・支持されて、図2中の矢印方向に走行する。定着部材として熱容量の低い定着ベルト21を用いることで、装置の昇温特性が向上する。
【0037】
定着補助ローラ22は、SUS304等の芯金22a上に、層厚が14mm程度の発泡シリコーンゴムからなる発泡弾性層22b(アスカーC硬度が25〜50程度のものである。)が形成された外径52mm程度のローラ部材であって、加圧回転体としての加圧ローラ31に定着ベルト21を介して圧接してニップ部を形成する。発泡弾性層22bを発泡材料で形成することで、ニップ部におけるニップ幅(ニップ量)を比較的大きく設定できるとともに、定着ベルト21の熱が定着補助ローラ22に移行しにくくなる。定着補助ローラ22は、図2中の時計方向に回転する。
【0038】
加熱ローラ23は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる外径が38mm程度の中空構造のローラ部材であって、その円筒体の内部には3つのヒータ25(熱源)が固設されている。なお、加熱ローラ23は、耐食性を向上させるために、その表面にアルマイト処理が施されている。
加熱ローラ23のヒータ25は、ハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板(不図示である。)に固定されている。そして、装置本体1の電源部(交流電源)により出力制御されたヒータ25からの輻射熱によって加熱ローラ23が加熱されて、さらに加熱ローラ23によって加熱された定着ベルト21(定着部材)の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に非接触で対向する温度センサ40(サーモパイル)によるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。詳しくは、温度センサ40の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ、ヒータ25に交流電圧が印加される。このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。
また、図示は省略するが、加熱ローラ23は定着装置20の側板に対して図2の左右方向に揺動可能に保持されて、加熱ローラ23がテンションプレートによって図2の右側に付勢されている。このような構成により、加熱ローラ23は、定着ベルト21に所定のテンションを与えるテンションローラとして機能することになる。なお、本実施の形態1では加熱ローラ23をテンションローラとして用いたが、加熱ローラ23を定着装置の側板に回転自在に固定して、定着ベルト21にテンションを与えるテンションローラを別に設置することもできる。
【0039】
また、加圧回転体としての加圧ローラ31は、外径が50mm程度であって、主として、芯金32と、芯金32の外周面に接着層を介して形成された弾性層33と、からなる。加圧ローラ31の弾性層33は、フッ素ゴム、シリコーンゴム等のソリッドゴム材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。
そして、加圧ローラ31は、不図示の加圧機構によって定着ベルト21を介して定着補助ローラ22に圧接する。こうして、加圧ローラ31と定着ベルト21との間に、所望のニップ部が形成される。
【0040】
ここで、本実施の形態1では、加圧ローラ31の内部に、加熱体としてのヒータ35を設置している。加圧ローラ31のヒータ35(加熱体)は、ハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板(不図示である。)に固定されている。そして、装置本体1の電源部(交流電源)により出力制御されたヒータ35からの輻射熱によって加圧ローラ31が加熱されて、さらに加圧ローラ31から受熱した定着ベルト21(定着部材)の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。ヒータ35の出力制御は、加圧ローラ31表面に非接触で対向する温度センサ45(サーモパイル)によるローラ表面温度の検知結果に基いておこなわれる。詳しくは、温度センサ45の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ、ヒータ35に交流電圧が印加される。このように加圧ローラ31を加熱するヒータ35を設けることで、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31に奪われて定着ベルト21の加熱効率が低下する不具合が抑止される。
【0041】
離型剤供給部材としての離型剤塗布ローラ51は、加圧ローラ31に当接して、加圧ローラ31の表面に微量オイル等の離型剤を供給するものである。このように、離型剤塗布ローラ51を設置することで、加圧ローラ31や定着ベルト21にトナー(オフセットトナー)が付着する不具合を抑止するとともに、ニップ部を通過する記録媒体Pの分離性を向上させることができる。
ここで、離型剤塗布ローラ51は、芯金上51aに、発泡ゴムに離型剤としてのシリコーンオイルが内填(含浸)されてなる発泡体層51b(層厚5mm程度である。)、耐熱性を有する多孔質材料(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等からなる多孔質フィルムである。)からなる表面層、を順次形成したものであって、全体の外径が16mm程度のものである。そして、加圧ローラ31が回転することにより、摩擦力によって離型剤塗布ローラ51も図2の時計方向に連れ回りしながら加圧ローラ31の表面に微量(適量)の離型剤が塗布されることになる。すなわち、上述のように構成された離型剤塗布ローラ51を用いることで、離型剤塗布ローラ51から加圧ローラ31に離型剤が過剰に供給されて、記録媒体Pにオイル汚れが生じる不具合が抑止される。
なお、本実施の形態1では、離型剤塗布ローラ51の発泡体層51bとして、シリコーンゴムとウレタンゴムとが複合された発泡ゴムに、離型剤としてジメチルシリコーンオイルが内填されたものを用いている。
【0042】
また、第1クリーニング部材としての第1クリーニングローラ52は、アルミニウム等からなる金属ローラの表面にトナー樹脂と反応する架橋剤がコーティングされたものである。このように構成された第1クリーニングローラ52(第1クリーニング部材)を離型剤塗布ローラ51に当接させることで、第1クリーニングローラ52が図2の反時計方向に連れ回りしながら離型剤塗布ローラ51に付着したトナーや紙粉をクリーニングする。このように構成された第1クリーニングローラ52を設置することで、離型剤塗布ローラ51の表面が効率的にクリーニングでされて、離型剤塗布ローラ51の性能が経時においても安定的に発揮されることになる。
なお、第1クリーニングローラ52として、アルミニウム等からなる芯金の内部にヒートパイプが熱拡管によって圧入されて、その表面にトナー樹脂と反応する架橋剤がコーティングされたものを用いることもできる。
【0043】
ここで、本実施の形態1における定着装置20には、加圧ローラ31(加圧回転体)に当接して加圧ローラ31の表面をクリーニングする第2クリーニング部材としての第2クリーニングローラ62が、離型剤塗布ローラ51に対して下流側(加圧ローラ31の回転方向下流側である。)の位置に、加圧ローラ31に対して接離可能に設置されているが、第2クリーニングローラ62については後で詳しく説明する。
【0044】
図2を参照して、定着ベルト21と加圧ローラ31との当接部(ニップ部である。)の入口側には、記録媒体Pの搬送を案内するガイド板38が配設されている。ガイド板35は、定着装置20の側板に固設されている。
また、加圧ローラ31の外周面に対向する位置であって、ニップ部の出口側近傍には、分離爪39が配設されている。分離板39は、定着工程後の記録媒体Pが加圧ローラ31の回転に沿って加圧ローラ31に巻き付いてしまう不具合を抑止する。
【0045】
上述のように構成された定着装置20は、通紙時に次のように動作する。
装置本体1の電源スイッチ(主電源)が投入されると、交流電源からヒータ25、35に交流電圧が印加(給電)されるとともに、定着ベルト21(定着補助ローラ22、加熱ローラ23)及び加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。なお、このとき、第2クリーニングローラ62のヒータ65(加熱手段)にも交流電流が印加されるが、これについては後で詳しく説明する。
その後、給紙部7から記録媒体Pが給送されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の各色のトナーが記録媒体P上に未定着画像として担持される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。そして、定着ベルト21による加熱と、定着ベルト21(定着補助ローラ22)及び加圧ローラ31の押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、回転する定着ベルト21及び加圧ローラ31によってそのニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
【0046】
以下、図2〜図5にて、本実施の形態1における定着装置20の、特徴的な構成・動作について、詳しく説明する。
図2、図3に示すように、本実施の形態1における定着装置20には、加圧ローラ31(加圧回転体)に当接して加圧ローラ31の表面をクリーニングする第2クリーニング部材としての第2クリーニングローラ62と、加圧ローラ31に対して第2クリーニングローラ62を離間させる離間機構55、56と、が設置されている。
第2クリーニングローラ62(第2クリーニング部材)は、アルミニウム等からなる中空構造のローラ部材であって、その内部に加熱手段としてのヒータ65が設置されている。第2クリーニングローラ62は、離型剤塗布ローラ51に対して下流側(加圧ローラ31の回転方向下流側である。)の位置に設置されていて、離間機構55、56(接離機構)によって図2の両矢印方向に移動されることにより加圧ローラ31に対して接離するように構成されている。
【0047】
詳しくは、図3を参照して、第2クリーニングローラ62は、その両端の軸部が軸受63を介して定着装置20の側板に回転自在に保持されている。また、軸受63は、定着装置20の側板に形成された長穴に、上下方向に移動可能に保持されている。図3に示すように、離間機構(接離機構)は、第2クリーニングローラ62の軸受63に係合する加圧レバー55、加圧レバー55に作用して第2クリーニングローラ62を加圧ローラ31に向けて付勢する偏心カム56、偏心カム56を回転駆動する不図示の駆動モータ(接離モータ)、偏心カム56の回転方向の姿勢を検知する位置センサ(不図示である。)、等で構成される。加圧レバー55は、定着装置20の側板に、支軸55aを中心に回動可能に保持されている。
【0048】
そして、偏心カム56を図3の姿勢になるように回転駆動すると、加圧レバー55が軸受63を介して第2クリーニングローラ62を上方に押し上げて、加圧ローラ31に対して第2クリーニングローラ62が当接する(図2、図3、図4(A)の状態である。)。そして、このように第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31に当接した状態で、加圧ローラ31の回転にともない第2クリーニングローラ62が図2の時計方向に連れ回りしながら、加圧ローラ31の表面に付着したトナーをクリーニングすることになる。
これに対して、偏心カム56を図3の姿勢から半周ほど回転駆動すると、加圧レバー55が自身の自重と第2クリーニングローラ62の自重とにより下方に移動して、加圧ローラ31に対して第2クリーニングローラ62が離間する(図4(B)の状態である。)。このとき、第2クリーニングローラ62による加圧ローラ31のクリーニングはおこなわれないことになる。
【0049】
このように構成された離間機構55、56は、加圧ローラ31の昇温が開始されて加圧ローラ31の表面温度が所定値に達してから所定時間が経過した後に、第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31(相手部材)に対して離間するように制御される(図4(A)の状態から図4(B)の状態に制御される)。
そして、ヒータ65(加熱手段)は、離間機構55、56によって第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31(相手部材)に対して離間された後(図4(B)の状態になった後)に、第2クリーニングローラ62の加熱を停止するように制御される。すなわち、第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31に当接している間は、常に、不図示の電源から給電されたヒータ65によって第2クリーニングローラ62が加熱されている。
【0050】
詳しくは、装置の立ち上げが開始(電源オフ時、省エネモード時、待機モード時、オフモード時等からの装置の立ち上げ開始である。)されると加圧ローラ31の表面温度が所定値W2に達したことが温度センサ45によって検知されてから所定時間(t2〜t3)が経過するまでは、第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31に当接するように離間機構55、56が制御される(図4(A)の状態である。)。
このように立ち上げ直後の状態においては、定着装置20全体が充分な加熱状態にないため、図4(A)に示すように、離型剤塗布ローラ51や分離爪39に、充分な熱量が与えられていない状態の冷えたトナーT0(オフセットトナー)が残留している。このような冷えたトナーT0は、粘性が充分ではないために、第1クリーニングローラ52によって充分に回収(移行)されずに、離型剤の作用によって「浮遊状態」になって、離型剤塗布ローラ51や分離爪39から加圧ローラ31に移行してしまう。ところが、離型剤塗布ローラ51が加圧ローラ31に当接する位置に対して、加圧ローラ31の回転方向下流側の位置には、第2クリーニングローラ62が設置されているために、この第2クリーニングローラ62によって加圧ローラ31に付着している冷えたトナーT0が回収(移行)されることになる。
ここで、第2クリーニングローラ62は、加圧ローラ31から熱を受けての加熱に加えて、ヒータ65によって積極的に加熱されているために、冷えたトナーT0に充分に熱量を与えた状態で、充分に粘性のあるトナーT1として回収することができる。そして、第2クリーニングローラ62に回収されたトナーT1は、第2クリーニングローラ62上に充分に付着(固着)するとともにトナーT1同士が吸着した状態になるため、加圧ローラ31に再付着(逆転写)してしまうことはない。そのため、加圧ローラ31がニップ部の位置においてトナーで汚れてしまうことがなく、その後の定着工程においてニップ部に搬送される記録媒体Pの裏面(非定着面)を汚してしまったり、定着ベルト21に移行した後にニップ部に搬送される記録媒体Pのオモテ面(定着面)を汚してしまったりする不具合が抑止される。
特に、立ち上がり時間が短い定着装置であったり、小サイズ紙(通紙可能な最大サイズの記録媒体Pに対して幅方向サイズが小さな記録媒体Pである。)が通紙される場合であったり、連続通紙がされる場合であったり、上述したオフセットトナーが加圧ローラ31に再付着する不具合が生じやすい条件であっても、第2クリーニングローラ62を設けることで上述した不具合の発生を抑止することができる。
【0051】
そして、装置の立ち上げを開始してから所定時間t3が経過した後は、第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31から離間するように離間機構55、56が制御される(図4(B)の状態である。)。
このように立ち上げ開始から充分な時間が経過した状態においては、定着装置20全体が充分な加熱状態になっているため、図4(B)に示すように、離型剤塗布ローラ51や分離爪39に、充分な熱量が与えられていない状態の冷えたトナーT0(オフセットトナー)が残留することはない。したがって、粘性が充分なトナーT1が、離型剤塗布ローラ51から(又は、加圧ローラ31から離型剤塗布ローラ51を介して)第1クリーニングローラ52によって充分に回収(移行)されることになる。このため、第2クリーニングローラ62によるクリーニング動作は不要となり、第2クリーニングローラ62は、加圧ローラ31から離間されるとともに、ヒータ65への給電が停止される。
このように、第2クリーニングローラ62は、装置の立ち上げ時(+所定時間)においてのみ加圧ローラ31の表面をクリーニングするクリーニング部材として機能することになる。
【0052】
以下、図5を用いて、上述した制御について補完的に説明する。
図5(A)において、グラフS1は加圧ローラ31の表面の温度変動を示し、グラフS2は第2クリーニングローラ62の表面の温度変動を示し、グラフQ0は離型剤塗布ローラ51上に付着しているトナー(オフセットトナー)の温度変動を示し、グラフQ2は第2クリーニングローラ62上に付着しているトナー(オフセットトナー)の温度変動を示す。また、図5(A)において、時間t0は装置を常温から立ち上げ開始したときの時間であって、時間t2は装置の立ち上がりが終了するとともに加圧ローラ31の表面温度が充分な温度W2に達してプリント可能となる時間であって、時間t3は第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31から離間されるとともにヒータ65への給電が停止される時間である。
図5(B)は、第2クリーニングローラ62のヒータ65の制御を示すタイミングチャートと、第2クリーニングローラ62の接離機構55、56を駆動する駆動モータ(接離モータ)の制御を示すタイミングチャートと、加圧ローラ31のヒータ35の制御を示すタイミングチャートと、であって、図5(A)の時間軸(横軸)に合わせて図示している。
【0053】
図5(B)に示すように、装置の立ち上げが開始されると、ヒータ35によって加圧ローラ31の加熱が開始されるとともに、離間機構55、56によって第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31に当接されるとともに、ヒータ65によって第2クリーニングローラ62の加熱が開始される。
これにより、加圧ローラ31と第2クリーニングローラ62とは、時間の経過とともに図5(A)に示すように温度上昇する。さらに、離型剤塗布ローラ51上のオフセットトナーも初期温度W0から温度上昇して、第2クリーニングローラ62上に回収されたトナーはそれよりも高い勾配で温度上昇して時間t2(プリント可能な時間である。)にてトナー粘性が充分な温度W1にまで達する。これにより、加圧ローラ31上に再付着したオフセットトナーは、第2クリーニングローラ62によって充分にクリーニングされることになる。
これに対して、第2クリーニングローラ62を設置しない場合(従来の定着装置を用いた場合である。)、離型剤塗布ローラ51や加圧ローラ31の表面に残留した状態のオフセットトナーは、プリント可能な時間t2においてトナー粘性が充分な温度W1に達していないため、トナー粘性が充分な温度W1に達するまでの時間の間(t3−t2)に浮遊状態となって加圧ローラ31に再付着して記録媒体P上を汚してしまうことになる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態1では、離型剤塗布ローラ51(離型剤供給部材)の表面をクリーニングする第1クリーニングローラ52(第1クリーニング部材)とは別に、加圧ローラ31(加圧回転体)の表面をクリーニングする第2クリーニングローラ62(第2クリーニング部材)を離間可能に設けている。これにより、定着装置20(画像形成装置1)の立ち上げ時においても、離型剤塗布ローラ51に付着したトナーを確実に除去することができる。
【0055】
実施の形態2.
図6及び図7にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図6は、実施の形態2における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。また、図7(A)は第2クリーニングローラが離型剤塗布ローラに当接した状態を示す図であって、図7(B)は第2クリーニングローラが離型剤塗布ローラから離間した状態を示す図であって、それぞれ前記実施の形態1における図4(A)、(B)に相当する図である。
本実施の形態2における定着装置は、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51に対して接離可能に設置されている点が、第2クリーニングローラ62が加圧ローラ31に対して接離可能に設置されている前記実施の形態1のものと相違する。
【0056】
図6に示すように、本実施の形態2における定着装置20も、前記実施の形態1のものと同様に、定着補助ローラ22、加熱ローラ23、定着ベルト21(定着部材)、加圧回転体としての加圧ローラ31、離型剤塗布ローラ51(離型剤供給部材)、第1クリーニングローラ52(第1クリーニング部材)、第2クリーニングローラ62(第2クリーニング部材)、温度センサ40、45、分離爪39、等で構成される。
【0057】
ここで、本実施の形態2における定着装置20は、前記実施の形態1のものとは異なり、第2クリーニング部材としての第2クリーニングローラ62が、離型剤塗布ローラ51に当接して離型剤塗布ローラ51の表面をクリーニングするように構成されている。さらに、図示は省略するが、離間機構55、56は、離型剤塗布ローラ51に対して第2クリーニングローラ62を離間させるように構成されている。
【0058】
第2クリーニングローラ62(第2クリーニング部材)は、アルミニウム等からなる中空構造のローラ部材であって、その内部に加熱手段としてのヒータ65が設置されている。第2クリーニングローラ62は、第1クリーニングローラ52に対して上流側(離型剤塗布ローラ51の回転方向上流側である。)の位置に設置されていて、離間機構55、56(接離機構)によって図6の両矢印方向に移動されることにより離型剤塗布ローラ51に対して接離するように構成されている。
なお、第2クリーニングローラ62の離間機構55、56の構成・動作は、接離の対象となる相手部材が異なる以外は、前記実施の形態1における図3の離間機構55、56のものと同様である。
【0059】
そして、図6及び図7(A)に示すように、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51に当接した状態で、離型剤塗布ローラ51の回転にともない第2クリーニングローラ62が図6の反時計方向に連れ回りしながら、離型剤塗布ローラ51の表面に付着したトナーをクリーニングすることになる。
これに対して、図7(B)に示すように、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51から離間した状態で、第2クリーニングローラ62による離型剤塗布ローラ51のクリーニングはおこなわれないことになる。
【0060】
具体的に、離間機構55、56は、加圧ローラ31の昇温が開始されて加圧ローラ31の表面温度が所定値に達してから所定時間が経過した後に、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51(相手部材)に対して離間するように制御される(図7(A)の状態から図7(B)の状態に制御される)。
そして、ヒータ65(加熱手段)は、離間機構55、56によって第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51(相手部材)に対して離間された後(図7(B)の状態になった後)に、第2クリーニングローラ62の加熱を停止するように制御される。すなわち、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51に当接している間は、常に、不図示の電源から給電されたヒータ65によって第2クリーニングローラ62が加熱されている。
【0061】
さらに詳しくは、装置の立ち上げが開始されて加圧ローラ31の表面温度が所定値W2に達したことが温度センサ45によって検知されてから所定時間(t2〜t3)が経過するまでは、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51に当接するように離間機構55、56が制御される(図7(A)の状態である。)。
このように立ち上げ直後の状態においては、定着装置20全体が充分な加熱状態にないため、図7(A)に示すように、離型剤塗布ローラ51や分離爪39に、充分な熱量が与えられていない状態の冷えたトナーT0(オフセットトナー)が残留している。このような冷えたトナーT0は、粘性が充分ではないために、第1クリーニングローラ52によって充分に回収(移行)されずに、離型剤の作用によって「浮遊状態」になって、離型剤塗布ローラ51や分離爪39から加圧ローラ31に移行してしまう。ところが、第1クリーニングローラ52が離型剤塗布ローラ51に当接する位置に対して、離型剤塗布ローラ51の回転方向上流側の位置には、第2クリーニングローラ62が設置されているために、この第2クリーニングローラ62によって離型剤塗布ローラ51に付着している冷えたトナーT0が回収(移行)されることになる。
ここで、第2クリーニングローラ62は、加圧ローラ31から熱を受けての加熱に加えて、ヒータ65によって積極的に加熱されているために、冷えたトナーT0に充分に熱量を与えた状態で、充分に粘性のあるトナーT1として回収することができる。そして、第2クリーニングローラ62に回収されたトナーT1は、第2クリーニングローラ62上に充分に付着するとともにトナーT1同士が吸着した状態になるため、加圧ローラ31に再付着してしまうことはない。そのため、加圧ローラ31がニップ部の位置においてトナーで汚れてしまうことがなく、その後の定着工程においてニップ部に搬送される記録媒体Pの裏面(非定着面)を汚してしまったり、定着ベルト21に移行した後にニップ部に搬送される記録媒体Pのオモテ面(定着面)を汚してしまったりする不具合が抑止される。
【0062】
そして、装置の立ち上げを開始してから所定時間t3が経過した後は、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51から離間するように離間機構55、56が制御される(図7(B)の状態である。)。
このように立ち上げ開始から充分な時間が経過した状態においては、定着装置20全体が充分な加熱状態になっているため、図7(B)に示すように、離型剤塗布ローラ51や分離爪39に、充分な熱量が与えられていない状態の冷えたトナーT0(オフセットトナー)が残留することはない。したがって、粘性が充分なトナーT1が、離型剤塗布ローラ51から(又は、加圧ローラ31から離型剤塗布ローラ51を介して)第1クリーニングローラ52によって充分に回収(移行)されることになる。このため、第2クリーニングローラ62によるクリーニングは不要となり、第2クリーニングローラ62は離型剤塗布ローラ51から離間されるとともに、ヒータ65への給電が停止される。
このように、第2クリーニングローラ62は、装置の立ち上げ時(+所定時間)においてのみ離型剤塗布ローラ51の表面をクリーニングするクリーニング部材として機能することになる。
【0063】
なお、本実施の形態2において、第2クリーニングローラ62は、第1クリーニングローラ52と同様に、その表面にトナー樹脂と反応する架橋剤がコーティングされている。このように構成された第2クリーニングローラ62を設置することで、立ち上げ時において、離型剤塗布ローラ51の表面が効率的にクリーニングでされることになる。
【0064】
また、本実施の形態2において、第2クリーニングローラ62の表面のトナーに対する離型性が、第1クリーニングローラ52の表面のトナーに対する離型性よりも低くなるように形成するとともに、離型剤塗布ローラ51の表面のトナーに対する離型性よりも低くなるように形成することが好ましい。すなわち、第2クリーニングローラ62の表面のトナーに対する離型性(非粘着性)が、第1クリーニングローラ52や離型剤塗布ローラ51の表面のトナーに対する離型性(非粘着性)より低くなるように形成することが好ましい。
具体的には、第2クリーニングローラ62として、アルミニウムやステンレス等からなる無垢の金属ローラを用いたり、第1クリーニングローラ52や離型剤塗布ローラ51の表面よりも離型性が低いポリイミド系PPS樹脂等を表面にコーティングしたローラ部材を用いたりすることができる。
このような構成により、第2クリーニングローラ62が離型剤塗布ローラ51に当接した状態で、離型剤塗布ローラ51に付着しているオフセットトナーを第1クリーニングローラ52よりも先に効率的に回収することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態2では、離型剤塗布ローラ51(離型剤供給部材)の表面をクリーニングする第1クリーニングローラ52(第1クリーニング部材)とは別に、離型剤塗布ローラ51の表面をクリーニングする第2クリーニングローラ62(第2クリーニング部材)を離間可能に設けている。これにより、定着装置20(画像形成装置1)の立ち上げ時においても、離型剤塗布ローラ51に付着したトナーを確実に除去することができる。
【0066】
なお、前記各実施の形態では加圧回転体として加圧ローラ31を用いたが、加圧回転体として加圧ベルトを用いてもよい。また、前記各実施の形態では定着部材として定着ベルト21を用いたが、定着部材として定着ローラや定着フィルムを用いてもよい。
そして、それらの場合にも、前記各実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、前記各実施の形態ではヒータ25、35の輻射熱によって定着ベルト21や加圧ローラ31を加熱する熱ヒータ方式の定着装置20に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、励磁コイルから生じる磁束によって定着ベルト21や加圧ローラ31を直接的又は間接的に電磁誘導加熱する電磁誘導加熱方式の定着装置に対しても本発明を適用することができる。その場合にも、前記各実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 定着補助ローラ、
23 加熱ローラ、
25 ヒータ、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
35 ヒータ(加熱体)、
51 離型剤塗布ローラ(離型剤供給部材)、
52 第1クリーニングローラ(第1クリーニング部材)、
62 第2クリーニングローラ(第2クリーニング部材)、
65 ヒータ(加熱手段)、
55 加圧レバー(離間機構)、
56 カム部材(離間機構)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2006−201640号公報
【特許文献2】特許第3224950号公報
【特許文献3】特許第3236169号公報
【特許文献4】特開2005−266746号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着部材と、
前記定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体に当接して当該加圧回転体の表面に離型剤を供給する離型剤供給部材と、
前記離型剤供給部材に当接して当該離型剤供給部材の表面をクリーニングする第1クリーニング部材と、
を備え、
前記加圧回転体に当接して当該加圧回転体の表面をクリーニングする第2クリーニング部材と、
前記加圧回転体に対して前記第2クリーニング部材を離間させる離間機構と、
をさらに備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第2クリーニング部材は、前記離型剤供給部材に対して前記加圧回転体の回転方向下流側に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1クリーニング部材は、その表面にトナー樹脂と反応する架橋剤がコーティングされたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着部材と、
前記定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体に当接して当該加圧回転体の表面に離型剤を供給する離型剤供給部材と、
前記離型剤供給部材に当接して当該離型剤供給部材の表面をクリーニングする第1クリーニング部材と、
を備え、
前記離型剤供給部材に当接して当該離型剤供給部材の表面をクリーニングする第2クリーニング部材と、
前記離型剤供給部材に対して前記第2クリーニング部材を離間させる離間機構と、
をさらに備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
前記第2クリーニング部材は、前記第1クリーニング部材に対して前記離型剤供給部材の回転方向上流側に配設されたことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第2クリーニング部材の表面のトナーに対する離型性が、前記第1クリーニング部材の表面のトナーに対する離型性よりも低くなるように形成されるとともに、前記離型剤供給部材の表面のトナーに対する離型性よりも低くなるように形成されたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第1クリーニング部材と前記第2クリーニング部材とは、それぞれ、その表面にトナー樹脂と反応する架橋剤がコーティングされたことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記第2クリーニング部材を加熱する加熱手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
前記加熱手段は、前記離間機構によって前記第2クリーニング部材が相手部材に対して離間された後に、前記第2クリーニング部材の加熱を停止するように制御されることを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記離間機構は、前記加圧回転体の昇温が開始されて前記加圧回転体の表面温度が所定値に達してから所定時間が経過した後に、前記第2クリーニング部材が相手部材に対して離間するように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置。
【請求項11】
前記離型剤供給部材は、
発泡ゴムにシリコーンオイルを内填させてなる発泡体層と、
耐熱性を有する多孔質材料からなる表面層と、
を具備したことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の定着装置。
【請求項12】
前記加圧回転体を加熱する加熱体をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載の定着装置。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−42535(P2012−42535A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181369(P2010−181369)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】