説明

定着装置、及び、画像形成装置

【課題】定着回転体に対する電磁誘導加熱による加熱効率が充分に高くて、定着回転体の昇温時間がさらに短縮化される、定着装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】励磁コイル部25によって電磁誘導加熱される第1発熱層を具備する定着回転体21と、定着回転体21を介して対向する励磁コイル部25によって電磁誘導加熱される第2発熱層を具備する発熱部材23と、を備える。そして、定着ベルト21の第1発熱層に作用する磁束密度を可変することで、励磁コイル部25によって第1発熱層のみを電磁誘導加熱して定着回転体21を加熱する第1の加熱状態と、励磁コイル部25によって第1発熱層と発熱部材23の第2発熱層とを電磁誘導加熱して定着回転体21を直接的に加熱するとともに発熱部材23によって定着回転体21を間接的に加熱する第2の加熱状態と、が切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、そこに設置される電磁誘導加熱方式の定着装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短いことを特徴とする、電磁誘導加熱方式の定着装置が知られている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
【0003】
特許文献1には、電磁誘導加熱方式の定着装置であって、定着ベルト(定着回転体)の温度が定着設定温度に到達するまで、感温磁性部材を定着ベルトから離間した状態で定着ベルトの電磁誘導加熱をおこない、定着ベルトの温度が定着設定温度に到達した後に、昇温状態の感温磁性部材を定着ベルトに接触させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、電磁誘導加熱方式の定着装置であって、発熱ローラの昇温時には、発熱ローラに内設された導電性部材を励磁コイルに対向しない位置に移動させて、定着ベルト(定着回転体)の温度が所定温度に達した後に、導電性部材を励磁コイルに対向する位置に移動させる技術が開示されている。
また、特許文献2、3には、励磁コイルによって電磁誘導加熱される発熱ローラ(金属パイプ)を、所定のキュリー温度を有する感温磁性材料で形成することで、発熱ローラ(金属パイプ)の過昇温を防止する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の定着装置は、定着ベルト(定着回転体)の温度が定着設定温度に到達するまで、感温磁性部材を定着ベルトから離間した状態で定着ベルトの電磁誘導加熱をおこなっているものの、その間も常に感温磁性部材が電磁誘導加熱されているために、定着ベルト(定着回転体)に対する電磁誘導加熱による加熱効率を充分に高めることができなかった。
また、上述した特許文献2、3の定着装置は、電磁誘導加熱される発熱層と、昇温防止のために形成された感温磁性層と、が一体化されているために、発熱層の熱が感温磁性層に奪われてしない、定着ベルト(定着回転体)の昇温時間を充分に短縮化することができなかった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、定着回転体に対する電磁誘導加熱による加熱効率が充分に高くて、定着回転体の昇温時間がさらに短縮化される、定着装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、励磁コイル部によって電磁誘導加熱される第1発熱層を具備するとともに、所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着回転体と、前記定着回転体に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体を介して対向する前記励磁コイル部によって電磁誘導加熱される第2発熱層を具備するとともに、前記定着回転体に当接した状態で前記定着回転体を加熱可能に形成された発熱部材と、を備え、前記第1発熱層に作用する磁束密度を可変することで、前記励磁コイル部によって前記第1発熱層のみを電磁誘導加熱して前記定着回転体を加熱する第1の加熱状態と、前記励磁コイル部によって前記第1発熱層及び前記第2発熱層を電磁誘導加熱して前記定着回転体を直接的に加熱するとともに前記発熱部材によって前記定着回転体を間接的に加熱する第2の加熱状態と、が切り替えられるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、定着回転体の第1発熱層に作用する磁束密度を可変することで、第1発熱層のみを電磁誘導加熱して定着回転体を加熱する第1の加熱状態と、第1発熱層と発熱部材の第2発熱層とを電磁誘導加熱して定着回転体を直接的に加熱するとともに発熱部材によって定着回転体を間接的に加熱する第2の加熱状態と、を切り替えている。これにより、定着回転体に対する電磁誘導加熱による加熱効率が充分に高くて、定着回転体の昇温時間がさらに短縮化される、定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の画像形成装置に設置された定着装置を示す構成図である。
【図3】(A)第1強磁性体と第2強磁性体との励磁コイル部に対する対向距離が短く設定された第1の加熱状態を示す拡大図と、(B)第1強磁性体の励磁コイル部に対する対向距離のみが短く設定された第2の加熱状態を示す拡大図と、である。
【図4】第1発熱層に形成される磁場と磁束密度との関係を示すグラフである。
【図5】小サイズ紙を連続通紙したときの、定着ベルトにおける幅方向の温度分布を示すグラフである。
【図6】別形態の定着装置を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2における定着装置を示す構成図である。
【図8】図7の定着装置における発熱部材の動作を示す図である。
【図9】別形態の定着装置の一部を幅方向に示す断面図である。
【図10】立ち上げ時において発熱部材の離間制御をおこなったときと、おこなわなかったときと、の定着回転体の昇温特性を示すグラフである。
【図11】通紙条件によって可変制御される発熱部材の接離状態を示す表図である。
【図12】印刷モードの切替時において発熱部材の離間制御をおこなったときと、おこなわなかったときと、の定着回転体の温度変化を示すグラフである。
【図13】定着回転体のオーバーシュート時において発熱部材の離間制御をおこなったときと、おこなわなかったときと、の定着回転体の温度変化を示すグラフである。
【図14】記録媒体の搬送速度が異なる画像形成装置ごとに変更される発熱部材の離間制御の条件を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1〜図6にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機の装置本体、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する転写部、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部、12〜14は転写紙等の記録媒体Pが収納された給紙部、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着回転体としての定着ベルト、31は定着装置20に設置された加圧回転体としての加圧ローラ、を示す。
【0012】
図1を参照して、画像形成装置における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0013】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は図中の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、転写部7で、レジストローラにより搬送された記録媒体P上に転写される。
【0014】
一方、転写部7に搬送される記録媒体Pは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給紙部12、13、14のうち、1つの給紙部が自動又は手動で選択される(例えば、最上段の給紙部12が選択されたものとする。)。
そして、給紙部12に収納された記録媒体Pの最上方の1枚が、搬送経路Kの位置に向けて搬送される。
【0015】
その後、記録媒体Pは、搬送経路Kを通過してレジストローラの位置に達する。そして、レジストローラの位置に達した記録媒体Pは、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7に向けて搬送される。
【0016】
そして、転写工程後の記録媒体Pは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達した記録媒体Pは、定着ベルト21と加圧ローラ31との間に送入されて、定着ベルト21から受ける熱と双方の部材21、31から受ける圧力とによって画像が定着される。画像が定着された記録媒体Pは、定着ベルト21と加圧ローラ31との間(ニップ部である。)から送出された後に、画像形成装置本体1から排出される。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0017】
次に、図2及び図3にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2に示すように、定着装置20は、定着回転体(定着部材)としての定着ベルト21、固定部材22(ニップ形成部材)、発熱部材23、強磁性体24(磁束調整部材)、励磁コイル部25(誘導加熱部)、加圧回転体としての加圧ローラ31、温度検知手段としての温度センサ40、ガイド板35、37、等で構成される。
【0018】
ここで、定着回転体としての定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(時計方向)に回転(走行)する。定着ベルト21は、内周面(固定部材22や発熱部材23との摺接面である。)側から、第1発熱層(基材層)、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。
【0019】
ここで、定着ベルト21の第1発熱層(基材層)は、層厚が数ミクロン〜数百ミクロン程度(好ましくは、十ミクロン〜数十ミクロン程度)の低熱容量の導電性材料からなり、励磁コイル部25によって電磁誘導加熱される発熱層として機能する。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μm程度であって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。なお、本実施の形態1では、定着ベルト21の弾性層として、層厚が200μmのシリコーンゴムを用いている。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μm程度であって、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
【0020】
定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材22、発熱部材23、強磁性体24、等が固設されている。また、定着ベルト21の外周面の一部に隙間を空けて対向するように、励磁コイル部25(誘導加熱部)が配設されている。また、図示は省略するが、定着ベルト21の内周面には、潤滑剤が塗布されている。
【0021】
ここで、固定部材22は、定着ベルト21の内周面に摺接するように固定されている。そして、固定部材22が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、記録媒体Pが搬送されるニップ部が形成される。図示は省略するが、固定部材22は、その幅方向両端部が定着装置20の側板に固定支持されている。また、固定部材22は、加圧ローラ31による加圧力を受けても大きく撓むことがないように、ある程度剛性のある材料で形成されている。
また、固定部材22は、加圧ローラ31との対向面(摺接面)が、加圧ローラ31の曲率にならうように凹状に形成されている。これにより、記録媒体Pは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21に吸着して分離しないような不具合を抑止することができる。
なお、本実施の形態1では、ニップ部を形成する固定部材22の形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成する固定部材22の形状を平面状に形成することもできる。すなわち、固定部材22の摺接面(加圧ローラ31に対向する面である。)が平面形状になるように形成することができる。これにより、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体Pを定着ベルト21から容易に分離することができる。
【0022】
図2を参照して、発熱部材23は、定着ベルト21(定着回転体)を介して励磁コイル部25に対向するとともに、定着ベルト21の内周面に当接するように配設されている。また、図示は省略するが、発熱部材23は、その幅方向両端部が定着装置20の側板に固定支持されている。
そして、発熱部材23には、励磁コイル部25によって電磁誘導加熱される第2発熱層(導電性材料で形成されている。)が形成されていて、励磁コイル部25により生成される交番磁界によって電磁誘導加熱されて定着ベルト21を加熱する(熱を伝える。)。すなわち、発熱部材23が励磁コイル部25によって直接的に電磁誘導加熱されて、発熱部材23を介して定着ベルト21が間接的に加熱されることになる。
ここで、先に説明したように、定着ベルト21にも第1発熱層が設けられているため、定着ベルト21(第1発熱層)自体も、励磁コイル部25により生成される交番磁界によって直接的に電磁誘導加熱されることになる。したがって、定着ベルト21は、励磁コイル部25により直接的に電磁誘導加熱されるとともに、発熱部材23(励磁コイル部25により電磁誘導加熱されている。)によって間接的に加熱されることになり、定着ベルト21の加熱効率が高められる。
【0023】
そして、本実施の形態1では、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられることになる。
なお、励磁コイル部25の出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーミスタ、サーモパイル等の温度センサ40(温度検知手段)によるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。また、このような励磁コイル部25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
【0024】
図2及び図3を参照して、励磁コイル部25(誘導加熱部)は、励磁コイル26、励磁コイルコア27、等で構成される。励磁コイル26は、定着ベルト21の外周面の一部を覆うように配設された励磁コイルコア27上に細線を束ねたリッツ線を巻回して幅方向(図2及び図3の紙面垂直方向である。)に延設したものである。そして、不図示の交流電源から励磁コイル26に交流電流が供給されることで、励磁コイル部25から定着ベルト21の第1発熱層や発熱部材23の第2発熱層に向けて磁束が生成されることになる。なお、励磁コイルコア27は、フェライト等の強磁性体(比透磁率が2500程度である。)からなり、定着ベルト21の第1発熱層や発熱部材23の第2発熱層に向けて効率のよい磁束を形成するためのものである。
【0025】
図2を参照して、磁束調整部材としての強磁性体24(内部コア)は、定着ベルト21と発熱部材23とを介して、励磁コイル部25に対向するように配設されている。強磁性体24は、フェライト等の磁束調整が可能な強磁性を有する材料(例えば、比透磁率が2500程度のものである。)で形成されている。
また、本実施の形態1において、強磁性体24は、制御部60に制御された駆動部61によって、励磁コイル部25に対向する姿勢を可変できるように形成されている。そして、駆動部61によって励磁コイル部25に対する強磁性体24の姿勢を可変することで、定着ベルト21の第1発熱層に作用する磁束密度を可変するように構成されているが、これについては後で詳しく説明する。
【0026】
図2を参照して、加圧回転体としての加圧ローラ31は、中空構造の芯金32上に弾性層33(層厚が3mm程度である。)を形成したものである。加圧ローラ31(加圧回転体)の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。加圧ローラ31は定着ベルト21を介して固定部材22に圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する。また、図示は省略するが、加圧ローラ31には不図示の駆動機構の駆動ギアに噛合するギアが設置されていて、加圧ローラ31は図2中の矢印方向(反時計方向)に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板に軸受を介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けることもできる。
【0027】
なお、加圧ローラ31の弾性層33を発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成した場合には、ニップ部に作用する加圧力を減ずることができるために、固定部材22に生じる撓みをさらに軽減することができる。さらに、加圧ローラ31の断熱性が高められて、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31側に移動しにくくなるために、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
【0028】
また、定着ベルト21と加圧ローラ31との当接部(ニップ部である。)の入口側には、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pを案内するガイド板35(入口ガイド板)が配設されている。また、ニップ部の出口側には、ニップ部から送出される記録媒体Pを案内するガイド板37(出口ガイド板)が配設されている。双方のガイド板35、37は、いずれも、定着装置20のフレーム(筐体)に固設されている。
【0029】
以下、上述のように構成された定着装置20の通常時の動作について簡単に説明する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、不図示の交流電源(高周波電源)から励磁コイル部25に交番電流が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。そして、ニップ部の位置における加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、転写部7の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、ガイド板35に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、加熱状態にある定着ベルト21による加熱と、定着ベルト21(固定部材22)と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
【0030】
以下、本実施の形態1における定着装置20において、特徴的な構成・動作について詳述する。
本実施の形態1における定着装置20は、駆動部61によって強磁性体24を移動させて、励磁コイル部25に対する強磁性体24の姿勢を可変することで、定着ベルト21の第1発熱層に作用する磁束密度を可変できるように構成されている。
【0031】
図3を参照して、強磁性体24は、定着ベルト21の回転方向に沿って複数に分割されている。詳しくは、強磁性体24は、第1強磁性体24Aと、第2強磁性体24Bと、で構成されている。第1強磁性体24Aは、定着ベルト21の回転方向に沿って励磁コイル部25の中央部(範囲W2である。)に対向するように配設されている。これに対して、第2強磁性体24Bは、第1強磁性体24Aを挟むように、定着ベルト21の回転方向に沿って励磁コイル部25の両端部(範囲W1において第1強磁性体24Aの範囲W2を除く範囲である。)に対向するように配設されている。分割された強磁性体24A、24Bは、いずれも同一材料(磁束調整部材として機能するフェライト等の材料である。)で形成されている。
そして、これらの分割された複数の強磁性体24A、24Bのうち、第2強磁性体24Bは、駆動部61によって励磁コイル部25との対向距離を可変できるように構成されている。詳しくは、第1強磁性体24Aは、定着ベルト21及び発熱部材22を介した励磁コイル部25との対向距離が所定距離H1になるように、定着装置20の側板に固定支持されている。これに対して、第2強磁性体24Bは、定着ベルト21及び発熱部材22を介した励磁コイル部25との対向距離がH1〜H2の範囲で可変できるように、定着装置20の側板に形成されたスライド溝(上下方向に延在する長穴である。)を介して保持され、制御部60に制御された駆動部61によって上下にスライド移動される。
なお、第2強磁性体24Bを上下動させる駆動部61としては、例えば、引張スプリング等によって下方に付勢された第2強磁性体24Bに下方から当接するカム機構等を用いることができる。
【0032】
そして、定着ベルト21の第1発熱層に作用する磁束密度を可変するように駆動部61を制御することで、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)のみを電磁誘導加熱して定着ベルト21を加熱する第1の加熱状態と、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)及び第2発熱層(発熱部材23)を電磁誘導加熱して定着ベルト21を直接的に加熱するとともに発熱部材23によって定着ベルト21を間接的に加熱する第2の加熱状態と、が切り替えられる。すなわち、制御部60によって駆動部61を制御して励磁コイル部25に対する第2強磁性体24Bの対向距離を可変して、励磁コイル部25に対する強磁性体24の対向姿勢を変化させることで、定着ベルト21の第1発熱層に作用する磁束密度を可変して、第1の加熱状態と第2の加熱状態とが切り替えられる。
【0033】
具体的に、図3(A)に示すように、第1強磁性体24Aと第2強磁性体24Bとの対向距離がいずれも第1の距離H1(比較的短い距離である。)になるように駆動部61によって第2強磁性体24Bの位置が設定されているとき、強磁性体24が定着ベルト21に対向する範囲W1のほぼ全域にわたって磁束が形成されて、第1発熱層(定着ベルト21)に作用する磁束密度が低くなる。このような状態において、励磁コイル部25によって生成される磁束(破線矢印で示すものである。)は、第1発熱層(定着ベルト21)のみに達して、第2発熱層(発熱部材23)にまで達することがないため、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)のみが電磁誘導加熱されることになる(第1の加熱状態である。)。このとき、励磁コイル部25からの磁束は、第1発熱層(定着ベルト21)のみに集中的に作用するため、第1発熱層(定着ベルト21)の急速な昇温が可能になる。なお、第1の加熱状態のとき、定着ベルト21の熱が発熱部材23に伝熱されることになるが、発熱部材23の接触面積(定着ベルト21に対して、周方向全域ではなく、周方向の一部のみに接触する。)はそれ程大きくなく熱容量も小さいために、それによる定着ベルト21の昇温効率のロスは極めて小さなものになる。
これに対して、図3(B)に示すように、第2強磁性体24Bの対向距離が第2の距離H2(第1の距離H1より大きく、比較的長い距離である。)になるように駆動部61によって第2強磁性体24Bの位置が設定されて、第1強磁性体24Aのみが短い距離H1で励磁コイル部25に対向しているとき、強磁性体24が定着ベルト21に近接して対向する範囲W2(<W1)に磁束が集中的に形成されて、第1発熱層(定着ベルト21)に作用する磁束密度が高くなる。このような状態において、励磁コイル部25によって生成される磁束(破線矢印で示すものである。)は、第1発熱層(定着ベルト21)を貫いて、第2発熱層(発熱部材23)にまで達することになり、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)に加えて、第2発熱層(発熱部材23)もが電磁誘導加熱されることになる(第2の加熱状態である。)。このとき、励磁コイル部25からの磁束は、第2発熱層(発熱部材23)にも分散的に作用するため、加熱状態にある定着ベルト21の温度低下を補完するように、発熱部材23の熱が定着ベルト21に伝熱されることになる。
なお、第1の加熱状態のときも第2の加熱状態のときも励磁コイル部25には同じコイル磁界が形成される。そして、第2の加熱状態のときに第1発熱層(定着ベルト21)に作用する磁束密度は、第1の加熱状態のときのものに比べて、約W1/W2だけ高くなる。すなわち、励磁コイル部25によって第1発熱層に作用する磁束密度の大きさは、定着ベルト21に近接して対向する強磁性体24の範囲に反比例することになる。
【0034】
このように第1発熱層(定着ベルト21)に作用する磁束密度によって、第1発熱層において磁束が作用する領域(表皮深さ)が異なるのは、「表皮深さ」が、発熱層の固有抵抗に比例して、発熱層の透磁率や発熱層を励磁する交番電流の周波数に反比例するためである。すなわち、発熱層に作用する磁束密度は発熱層の透磁率(励磁コイル部25に対向する強磁性体24の姿勢変化によって可変される。)に反比例するため、「表皮深さ」は発熱層に作用する磁束密度に対して比例することになる。
そして、このように、第1の加熱状態と第2の加熱状態とを切り替え可能に構成することで、定着ベルト21の昇温状態に応じて、適切な加熱状態にて定着ベルト21を加熱することができる。すなわち、定着ベルト21に対する電磁誘導加熱による加熱効率が充分に高くて、定着ベルト21の昇温時間をさらに短縮化することができる。
【0035】
具体的に、本実施の形態1では、定着装置20(装置本体1)の立ち上げ時には第1の加熱状態になって、連続通紙時には第2の加熱状態になるように、駆動部61によって強磁性体24を制御している(第2強磁性体24Bの移動制御をおこなっている)。
これにより、朝一等で放置時間が長くて温度が低下している定着ベルト21が第1の加熱状態で加熱されることになるため、定着ベルト21の急速な昇温(立ち上げ)が可能になる。また、連続通紙時には、定着ベルト21の熱が連続通紙される記録媒体Pに徐々に奪われることになるが、それを補完するように発熱部材23の熱が定着ベルト21に伝熱されるため、連続通紙時における定着ベルト21の温度低下にともなう定着不良画像の発生を低減することができる。
【0036】
ここで、本実施の形態1において、強磁性体24は、第1の加熱状態では第1発熱層(定着ベルト21)に作用する磁束密度が第1発熱層の飽和磁束密度より小さくなるように励磁コイル部25に対向する姿勢が可変され、第2の加熱状態では第1発熱層に作用する磁束密度が第1発熱層の飽和磁束密度より大きくなるように励磁コイル部25に対向する姿勢が可変されることになる。
図4は、第1発熱層を鉄、ニッケル、コバルト、又は、それらの合金等の強磁性材料で形成したときの、第1発熱層の近傍に生成される磁場(コイル磁界)と、第1発熱層に作用する磁束密度と、の関係を示すグラフである。図4に示すように、磁場の大きさが大きくなるにつれて第1発熱層に作用する磁束密度は大きくなるが、磁場の大きさがある程度大きくなると磁束密度は飽和した状態になる(飽和磁束密度Cに達する)。そして、この飽和磁束密度Cよりも小さな磁束密度B1が作用するように強磁性体24(第2強磁性体24B)を移動制御することにより、励磁コイル部25によって生成される磁束が、第1発熱層を貫くことなく、第1発熱層のみに作用することになる(図3(A)の状態であって、第1の加熱状態である。)。これに対して、飽和磁束密度Cよりも大きな磁束密度B2が作用するように強磁性体24(第2強磁性体24B)を移動制御することにより、励磁コイル部25によって生成される磁束が、第1発熱層を貫いて、第2発熱層(発熱部材23)にも作用することになる(図3(B)の状態であって、第2の加熱状態である。)。
【0037】
ここで、定着ベルト21の第1発熱層は、鉄、ニッケル、コバルト、又は、それらの合金、等の強磁性を有する整磁性金属材料(好ましくは、鉄、ニッケル、シリコン、ホウ素、ニオブ、銅、ジルコニウム、コバルト、又は、それらの合金、等の強磁性から常磁性に変化する整磁性金属材料)で形成することができる。
その場合、第1発熱層のキュリー温度を定着温度近傍に設定することで、定着ベルト21の温度が定着温度を超えることがなくなるため、連続通紙時における定着ベルト21の温度リップルが小さくなり、定着性や光沢性が安定した定着画像を得ることができる。また、第1発熱層のキュリー温度を定着ベルト21の耐熱温度以下に設定することで、小サイズ紙(幅方向サイズが小さな記録媒体Pである。)を連続通紙した場合であっても、定着ベルト21の非通紙領域が耐熱温度を超えて過昇温する不具合を抑止することができる。
図5は、小サイズ紙の連続通紙時における定着ベルト21の幅方向の温度分布を示すグラフであって、一点鎖線Q0は第1発熱層を通常の金属材料で形成したときの温度分布を示し、実線Q1は第1発熱層を整磁性金属材料で形成したときの温度分布を示す。図5から、第1発熱層を整磁性金属材料で形成したときには、小サイズ紙の非通紙領域においても定着設定温度TMの近傍にベルト温度が抑えられていることがわかる。
【0038】
これに対して、定着ベルト21の第1発熱層を、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又は、それらの合金、等の非磁性金属材料で形成することもできる。
その場合、励磁コイル部25と定着ベルト21との対向距離が変化しても、定着ベルト21を貫通する磁束の量は大きく変化しないため、定着ベルト21の幅方向の加熱ムラが発生しにくくなる。また、定着ベルト21の走行中に、定着ベルト21に幅方向のベルト寄りが生じても、定着ベルト21の幅方向の加熱ムラが発生しにくくなる。
【0039】
また、定着ベルト21の第1発熱層は、その層厚が、励磁コイル部25(励磁コイル26)に所定の周波数の交番電流が流れたときの表皮深さよりも小さくなるように形成することが好ましい。ここで、「表皮深さ」とは、上述したように、発熱層の固有抵抗及び透磁率、発熱層を励磁する交番電流の周波数(本実施の形態1では、交流電源から出力される交流電流の周波数が20kHz〜100kHzの範囲内で設定されている。)で求まる値である。
そして、本実施の形態1における定着装置20の構成において、第1発熱層の層厚が表皮深さよりも小さくなるように形成することで、第2の加熱状態において励磁コイル部25の磁束が確実に第2発熱層(発熱部材23)に達することになる。
【0040】
さらに、発熱部材23の第2発熱層は、鉄、ニッケル、シリコン、ホウ素、ニオブ、銅、ジルコニウム、コバルト、又は、それらの合金、等の強磁性から常磁性に変化する整磁性金属材料で形成することができる。
その場合、第2発熱層のキュリー温度を定着温度より高く、定着ベルト21の耐熱温度以下に設定することで、定着ベルト21が過昇温する不具合を防止することができる。
【0041】
これに対して、発熱部材23の第2発熱層を、鉄、ニッケル、コバルト、等の強磁性金属材料で形成することもできる。
この場合、第2の加熱状態においても、励磁コイル部25からの磁束が第2発熱層を貫くことがなくなる。
【0042】
なお、本実施の形態1では、発熱部材23を第2発熱層のみで形成された単層構造体としたが、発熱部材23を第2発熱層を含む多層構造体にすることもできる。例えば、発熱部材23の表裏層を第2発熱層(電磁誘導加熱層)で形成して、中間層をアルミニウム、鉄、ステンレス等の高熱伝導性材料で形成することもできる。
【0043】
また、本実施の形態1では、発熱部材23を半円筒状に形成した。これに対して、図6(A)に示すように、発熱部材23を円筒状に形成することもできる。
さらに、本実施の形態1では、発熱部材23を定着ベルト21の内周面に当接するように配設して、励磁コイル部25を定着ベルト21の外周面に対向するように配設した。これに対して、図6(B)に示すように、発熱部材23を定着ベルト21の外周面に当接するように配設して、励磁コイル部25を定着ベルト21の内周面に対向するように配設することもできる。
これらの場合であっても、定着ベルト21の第1発熱層に作用する磁束密度を可変するように強磁性体24(第2強磁性体24B)を移動制御して第1の加熱状態と第2の加熱状態とを切り替えることで、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、図示は省略するが、図6(A)、(B)に示した定着装置20においても、後述する実施の形態2のもの(発熱部材23の離間をおこなうものである。)を適用することもできる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態1においては、定着ベルト21(定着回転体)の第1発熱層に作用する磁束密度を可変することで、第1発熱層(定着ベルト21)のみを電磁誘導加熱して定着ベルト21(定着回転体)を加熱する第1の加熱状態と、第1発熱層(定着ベルト21)及び第2発熱層(発熱層23)を電磁誘導加熱して定着ベルト21を直接的に加熱するとともに発熱部材23によって定着ベルト21を間接的に加熱する第2の加熱状態と、を切り替えている。これにより、定着ベルト21に対する電磁誘導加熱による加熱効率が充分に高くて、定着ベルト21の昇温時間をさらに短縮化することができる。
【0045】
実施の形態2.
図7〜図14にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図7は、実施の形態2における定着装置20を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に対応する図である。また、図8は、定着装置における発熱部材23の動作を示す図である。さらに、図9は、別形態の定着装置の一部を幅方向に示す断面図である。
本実施の形態2における定着装置は、定着ベルト21に対して発熱部材23が離間可能に構成されている点が、定着ベルト21に対して発熱部材23が当接・固定されている前記実施の形態1のものと相違する。
【0046】
図7を参照して、本実施の形態2における定着装置20も、前記実施の形態1のものと同様に、定着ベルト21(定着回転体)、固定部材22、発熱部材23、強磁性体24(磁束調整部材)、励磁コイル部25、加圧ローラ31(加圧回転体)、温度センサ40(温度検知手段)、等で構成される。
また、本実施の形態2における定着装置20も、前記実施の形態1のものと同様に、強磁性体24が定着ベルト21の回転方向に沿って第1強磁性体24Aと第2強磁性体24Bとに分割されていて、駆動部61によって強磁性体24(第2強磁性体24B)を移動制御することで、第1発熱層(定着ベルト21)に作用する磁束密度の大きさを可変して、第1の加熱状態と第2の加熱状態とを切り替えている。
【0047】
ここで、本実施の形態2における定着装置20は、前記実施の形態1のものとは異なり、所定のタイミングで発熱部材23を定着ベルト21に対して離間する離間機構が設けられている。そして、発熱部材23が定着ベルト21から離間した状態(図7、図8(B)の状態である。)で、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)が加熱される第3の加熱状態に切り替え可能に構成されている。第3の加熱状態では、励磁コイル部25からの磁束が第1発熱層(定着ベルト21)を貫通して離間状態にある第2発熱層(発熱部材23)に達したとしても、第2発熱層の加熱効率は低くなるとともに、発熱部材23と定着ベルト21の間で熱伝導はおこなわれないことになる。このような第3の加熱状態を所定のタイミングで利用することによって、定着ベルト21の加熱状態を細かく調整することができる。
なお、定着ベルト21に対して発熱部材23を離間する離間機構としては、例えば、所定方向に付勢された発熱部材23に当接するカム機構等を用いることができる。
【0048】
さらに、上述した離間機構は、発熱部材23を励磁コイル部25に対向しない位置まで定着ベルト21の周方向に沿って移動させる移動手段としても機能する。詳しくは、発熱部材23は、離間機構によって、励磁コイル部25に対向する位置(図8(B)の位置である。)と、励磁コイル部25に対向しない位置(図8(A)の位置である。)と、を移動(図7の両矢印方向の移動である。)できるように構成されている。そして、離間機構によって、発熱部材23を図8(A)の位置に移動させることで、励磁コイル部25の磁束が発熱部材23に完全に作用しないことになる。このような状態は、発熱部材23を完全に電磁誘導加熱したくないときに有用である。
なお、発熱部材23を移動する離間機構(移動手段)としては、例えば、発熱部材23を支持する支軸に設置されたギアに噛合するギア機構等を用いることができる。
【0049】
具体的に、本実施の形態2では、定着装置20(装置本体1)の立ち上げ時には、第1の加熱状態(図8(B)又は図8(A)の状態である。)になるように、発熱部材23の離間機構を制御している。これにより、朝一等で放置時間が長くて温度が低下している定着ベルト21が発熱部材23に熱を奪われることなく集中的に加熱されることになるため、定着ベルト21の急速な昇温(立ち上げ)が可能になる。
なお、第1の加熱状態(図8(B)又は図8(A)の状態である。)においては、強磁性体24(第2強磁性体24B)の姿勢が図3(A)の状態になるように、駆動部61が制御されている。
【0050】
図10は、このように立ち上げ時において発熱部材23の離間制御をおこなったときと、おこなわなかったときと、の定着ベルト21の表面の昇温特性を示すグラフである。
図10において、実線グラフは装置の立ち上げ時において発熱部材23を離間させたとき(図8(B)又は図8(A)の状態である。)の定着ベルト21の昇温特性を示し、破線グラフは装置の立ち上げ時において発熱部材23を当接させたとき(図8(C)の状態である。)の定着ベルト21の昇温特性を示す。
図10の結果からも、立ち上げ時において発熱部材23の離間制御をおこなうことで、定着ベルト21の急速な昇温(立ち上げ)が可能になることがわかる。
【0051】
これに対して、通紙時には、第2の加熱状態(図8(C)の状態である。)に切り替えられるように、励磁コイル部25や発熱部材23の離間機構が制御される。このとき、発熱部材23(第2発熱層)は、励磁コイル部25によって積極的に電磁誘導加熱されることになる。そして、上述した立ち上げ時の動作によって充分に昇温した状態の定着ベルト21の加熱を補完するように、定着ベルト21と発熱部材23との間で熱の受け渡しがおこなわれることになる。
なお、第2の加熱状態(図8(C)の状態である。)においては、強磁性体24(第2強磁性体24B)の姿勢が図3(B)の状態になるように、駆動部61が制御されている。
【0052】
なお、温度センサ40(温度検知手段)によって検知された温度が所定値以下になったときには、離間状態(図8(B)の状態である。)から当接状態(図8(C)の状態である。)に切り替えられるように、発熱部材23の離間機構を制御して、温度センサ40によって検知された温度が所定値に達したときには、当接状態(図8(C)の状態である。)から離間状態(図8(B)の状態である。)に切り替えられるように、発熱部材23の離間機構を制御することもできる。
このような制御をおこなうことで、通紙時において、定着ベルト21の熱が通紙される記録媒体Pに奪われてベルト温度が低下してしまっても、それを補完するように発熱部材23が定着ベルト21に当接して発熱部材23の熱が定着ベルト21に伝熱されるため、通紙時における定着ベルト21の温度低下にともなう定着不良画像の発生を低減することができる。また、定着ベルト21の温度の低下が生じていないときには、発熱部材23を定着ベルト21から離間して電磁誘導加熱による発熱部材23の蓄熱をおこなう。
なお、このような通紙時の制御は、連続通紙時においても同様におこなうことができる。
【0053】
また、記録媒体Pとして薄紙が通紙される場合(厚さが所定値以下の記録媒体Pがニップ部に搬送される場合である。)に、定着ベルト21に対して発熱部材23が離間するように(図8(B)の状態になるように)、離間機構を制御することもできる。これは、薄紙が通紙される場合には、記録媒体Pに奪われる定着ベルト21の熱が小さいため、発熱部材23を定着ベルト21に当接して発熱部材23の熱を定着ベルト21に伝熱しなくても定着ベルト21の温度を安定化できることによる。
また、本実施の形態1における画像形成装置はモノクロ画像形成装置であるが、カラー画像形成装置を用いる場合であって、モノクロ画像モードが実行されるとき(カラー画像を定着せずにモノクロ画像を定着するときである。)には、定着ベルト21に対して発熱部材23が離間するように(図8(B)の状態になるように)、離間機構を制御することもできる。これは、モノクロ画像モード時には、カラー画像モード時に比べて、記録媒体P上のトナー像に奪われる定着ベルト21の熱が小さいため、発熱部材23を定着ベルト21に当接して発熱部材23の熱を定着ベルト21に伝熱しなくても定着ベルト21の温度を安定化できることによる。
【0054】
図11は、これらの通紙条件(通紙される記録媒体Pの厚さや、プリントモードである。)によって可変制御される発熱部材の接離状態を示す表図である。具体的に、通紙される記録媒体Pが薄紙(坪量が80g/cm2以下のものである。)の場合、モノクロ画像モード時であってもカラー画像モード時であっても発熱部材23を定着ベルト21から離間させる。また、通紙される記録媒体Pが普通紙(坪量81〜105g/cm2のものである。)の場合、モノクロ画像モード時には発熱部材23を定着ベルト21から離間させて、カラー画像モード時には発熱部材23を定着ベルト21に当接させる。さらに、通紙される記録媒体Pが厚紙(坪量が106g/cm2以上のものである。)の場合、モノクロ画像モード時であってもカラー画像モード時であっても発熱部材23を定着ベルト21に当接させる。
そして、これらの制御をおこなうことで、定着ベルト21と発熱部材23との摺接による劣化を低減することができる。
なお、通紙される記録媒体Pの厚さを検知する手段としては、記録媒体Pの搬送経路中や給紙部12〜14に紙厚センサを設置して記録媒体Pの厚さを直接的に検知してもよいし、ユーザーによる装置本体1の操作パネルの操作によって入力される記録媒体Pの情報に基いて記録媒体Pの厚さを間接的に検知してもよい。そして、このようにして検知された記録媒体Pの厚さの情報に基いて、上述した制御がおこなわれることになる。
【0055】
また、本実施の形態2において、定着ベルト21の温度が第1の狙い値になるように制御される印刷モード(例えば、記録媒体Pとして厚紙が通紙される場合であって、定着ベルト21の温度が高めに設定される高温モードである。)から第1の狙い値よりも低い第2の狙い値になるように制御される印刷モード(例えば、記録媒体Pとして薄紙が通紙される場合であって、定着ベルト21の温度が低めに設定される低温モードである。)に切り替えられたときに、定着ベルト21に対して発熱部材23が離間するように(図8(B)の状態になるように)、離間機構を制御することもできる。
これは、高温モードから低温モードに切り替えられるときに、発熱部材23が定着ベルト21に当接した状態で発熱部材23の熱が定着ベルト21に伝熱されてしまうと、高温状態にある定着ベルト21の温度を低めに制御するのに時間がかかってしまうためである。すなわち、このような制御をおこなうことで、高温モードから低温モードに切り替えられる時間(待ち時間)を短縮化することができる。
【0056】
図12は、このように印刷モードの切替時(厚紙通紙モードから普通紙通紙モードへの切替時である。)において発熱部材23の離間制御をおこなったときと、おこなわなかったときと、の定着ベルト21の表面温度の変化を示すグラフである。
図12において、実線グラフは印刷モードの切替時において発熱部材23を離間させたとき(図8(B)又は図8(A)の状態である。)の定着ベルト21の温度変化を示し、破線グラフは印刷モードの切替時において発熱部材23を当接させたとき(図8(C)の状態である。)の定着ベルト21の温度変化を示す。なお、厚紙通紙モード時における定着温度の狙い値(第1の狙い値)は180℃に設定されていて、普通紙通紙モード時における定着温度の狙い値(第2の狙い値)は165℃に設定されている。
図12の結果からも、印刷モードの切替時において発熱部材23の離間制御をおこなうことで、高温モード(厚紙通紙モード)から低温モード(普通紙通紙モード)に切り替えられる時間(待ち時間)を短縮化できることがわかる。
【0057】
また、本実施の形態2において、定着ベルト21に対して発熱部材23が当接した状態である場合(図8(C)の状態である。)であって、定着ベルト21の温度が所定値を超えたとき(温度センサ40によって定着ベルト21のオーバーシュートが検知されたときである。)に、図8(B)のように離間機構によって定着ベルト21に対して発熱部材23が離間するように制御することが好ましい。これにより、発熱部材23の熱が定着ベルト21に伝熱されないため、過昇温状態にある定着ベルト21の温度を低下させやすくなる。
【0058】
図13は、定着ベルト21のオーバーシュート時において発熱部材23の離間制御をおこなったときと、おこなわなかったときと、の定着ベルト21の表面温度の変化を示すグラフである。
図13において、実線グラフはオーバーシュート時において発熱部材23を離間させたとき(図8(B)又は図8(A)の状態である。)の定着ベルト21の温度変化を示し、破線グラフはオーバーシュート時において発熱部材23を当接させたとき(図8(C)の状態である。)の定着ベルト21の温度変化を示す。なお、定着ベルト21のオーバーシュートは、定着ベルト21の表面温度が高め(180℃である。)に設定される厚紙通紙モード時に生じやすく、定着ベルト21の表面温度が耐熱限界温度である225℃に達しないように、温度センサ40によって定着ベルト21の表面温度が所定値(例えば、195℃)を超えた状態が検知されたときに、オーバーシュート状態にあるものとして、発熱部材23の離間制御がおこなわれる。
図13の結果からも、オーバーシュート時において発熱部材23の離間制御をおこなうことで、定着ベルト21に熱的損傷が生じる不具合を未然に防止できることがわかる。
【0059】
また、本実施の形態2における定着装置20が、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)が異なる画像形成装置本体1(印刷生産性の異なる装置である。)に設置される場合(共通化されたユニットとして用いられる場合)に、離間機構によって発熱部材23を定着ベルト21に対して離間される条件(図8(B)の状態になる条件である。)を可変することができる。
これは、記録媒体Pの搬送速度が低い画像形成装置では、記録媒体Pの搬送速度が高い画像形成装置に比べて、搬送される記録媒体Pに奪われる定着ベルト21の熱が小さいため、発熱部材23を定着ベルト21に当接して発熱部材23の熱を定着ベルト21に伝熱しなくても定着ベルト21の温度をある程度安定化できることによる。
そして、このような設定をおこなうことで、印刷スピードの異なる画像形成装置に対しても、共通化された定着装置20を不具合なく用いることができる。
【0060】
図14は、記録媒体Pの搬送速度が異なる画像形成装置ごとに変更される発熱部材23の離間制御の条件を示す表図である。
具体的に、記録媒体Pの搬送速度が最も遅い画像形成装置A(A4サイズの記録媒体Pを1分間当り31枚搬送する装置である。)では、通紙される記録媒体Pが薄紙(坪量が80g/cm2以下のものである。)の場合に発熱部材23を定着ベルト21から離間させて、通紙される記録媒体Pが普通紙(坪量81〜105g/cm2のものである。)の場合にも発熱部材23を定着ベルト21から離間させて、通紙される記録媒体Pが厚紙(坪量が106g/cm2以上のものである。)の場合に発熱部材23を定着ベルト21に当接させる。また、記録媒体Pの搬送速度が中程度の画像形成装置B(A4サイズの記録媒体Pを1分間当り41枚搬送する装置である。)では、通紙される記録媒体Pが薄紙の場合に発熱部材23を定着ベルト21から離間させて、通紙される記録媒体Pが普通紙の場合に発熱部材23を定着ベルト21に当接させて、通紙される記録媒体Pが厚紙の場合にも発熱部材23を定着ベルト21に当接させる。さらに、記録媒体Pの搬送速度が最も速い画像形成装置C(A4サイズの記録媒体Pを1分間当り51枚搬送する装置である。)では、通紙される記録媒体Pの厚さに関わらず発熱部材23を定着ベルト21に当接させる。
そして、これらの制御をおこなうことで、印刷スピードの異なる画像形成装置に対しても、共通化された定着装置20を不具合なく用いることができる。
【0061】
さらに、本実施の形態2において、図9に示すように、発熱部材23A、23Bを幅方向サイズの異なる記録媒体Pに合わせて幅方向に複数に分割して、ニップ部に搬送される記録媒体Pの幅方向サイズに合わせて複数に分割された発熱部材23A、23Bの定着ベルト21に対するそれぞれの離間状態を可変するように離間機構を制御することもできる。
具体的に、図9に示すように、小サイズ紙の通紙領域に合わせて幅方向中央部には第1の発熱部材23Aを接離可能に設置して、大サイズ紙の通紙領域(小サイズ紙の領域外である。)に合わせて幅方向両端部には第2の発熱部材23Bを接離可能に設置している。そして、離間機構によって、第1の発熱部材23Aと第2の発熱部材23Bとを定着ベルト21に対して独立して接離できるように構成している。そして、通紙される記録媒体Pのサイズに応じて第1の発熱部材23Aと第2の発熱部材23Bとの接離動作を独立しておこなうことで、小サイズ紙が通紙されるときの非通紙領域における定着ベルト21の過昇温を抑止することができる(図5を参照できる)。
例えば、図9(B)の状態(発熱部材23A、23Bが離間された状態である。)で大サイズ紙が連続通紙された直後に小サイズ紙が通紙される場合に、そのままでは小サイズ紙の非通紙領域に対応する定着ベルト21の両端部の熱が紙に奪われないために過昇温してしまう。これに対して、図9(A)のように、両端部の発熱部材23Bを定着ベルト21の非通紙領域に当接させることで、定着ベルト21の非通紙領域の熱が発熱部材23Bに奪われて、定着ベルト21の両端部の過昇温を防止することができる。
なお、上述した発熱部材23A、23Bの動作は、一例であって、様々な状況に合わせて2つの発熱部材23A、23Bの独立した接離動作をおこなうことができる。また、図9では、発熱部材23A、23Bを2つのサイズの記録媒体Pに合わせて分割したが、3つ以上のサイズの記録媒体Pに合わせて発熱部材を分割することもできる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、定着ベルト21(定着回転体)の第1発熱層に作用する磁束密度を可変することで、第1発熱層(定着ベルト21)のみを電磁誘導加熱して定着ベルト21(定着回転体)を加熱する第1の加熱状態と、第1発熱層(定着ベルト21)及び第2発熱層(発熱層23)を電磁誘導加熱して定着ベルト21を直接的に加熱するとともに発熱部材23によって定着ベルト21を間接的に加熱する第2の加熱状態と、を切り替えている。これにより、定着ベルト21に対する電磁誘導加熱による加熱効率が充分に高くて、定着ベルト21の昇温時間をさらに短縮化することができる。
【0063】
なお、前記各実施の形態では、加圧回転体として加圧ローラを用いて定着回転体として定着ベルトを用いた定着装置に対して本発明を適用したが、加圧回転体として加圧ベルト等を用いた定着装置や、定着回転体として定着フィルムや定着ローラを用いた定着装置に対しても本発明を適用することができる。そして、この場合にも、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、前記各実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置される定着装置20に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置される定着装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
【0065】
また、前記各実施の形態では、強磁性体24を第1強磁性体24Aと第2強磁性体24Bとに分割して、駆動部61によって第2強磁性体24Bを上下に移動させることによって、励磁コイル部25に対する強磁性体24の姿勢を可変して、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)のみが加熱される第1の加熱状態と、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)と第2発熱層(発熱部材23)とが加熱される第2の加熱状態と、が切り替えられるように構成した。
しかし、強磁性体24を分割する態様や、励磁コイル部25に対する強磁性体24の姿勢を可変する態様は、前記各実施の形態のものに限定されることなく、第1発熱層(定着ベルト21)に作用する磁束の磁束密度が可変されて、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)のみが加熱される第1の加熱状態と、励磁コイル部25によって第1発熱層(定着ベルト21)と第2発熱層(発熱部材23)とが加熱される第2の加熱状態と、が切り替えられるのであれば、種々の態様を用いることができる。
そして、その場合にも、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着回転体)、
22 固定部材、
23 発熱部材、
24 強磁性体(磁束調整部材)、
24A 第1強磁性体、 24B 第2強磁性体、
25 励磁コイル部(誘導加熱部)、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
40 温度センサ、
61 駆動部、 P 記録媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2009−282413号公報
【特許文献2】特許第3527442号公報
【特許文献3】特許第3900692号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイル部によって電磁誘導加熱される第1発熱層を具備するとともに、所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融する定着回転体と、
前記定着回転体に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、
前記定着回転体を介して対向する前記励磁コイル部によって電磁誘導加熱される第2発熱層を具備するとともに、前記定着回転体に当接した状態で前記定着回転体を加熱可能に形成された発熱部材と、
を備え、
前記第1発熱層に作用する磁束密度を可変することで、前記励磁コイル部によって前記第1発熱層のみを電磁誘導加熱して前記定着回転体を加熱する第1の加熱状態と、前記励磁コイル部によって前記第1発熱層及び前記第2発熱層を電磁誘導加熱して前記定着回転体を直接的に加熱するとともに前記発熱部材によって前記定着回転体を間接的に加熱する第2の加熱状態と、が切り替えられることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着回転体と前記発熱部材とを介して前記励磁コイル部に対向するとともに、前記励磁コイル部に対向する姿勢を可変できるように形成された強磁性体を備え、
前記強磁性体の姿勢を可変することで、前記第1発熱層に作用する磁束密度を可変することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記強磁性体は、前記定着回転体の回転方向に沿って複数に分割され、
前記複数の強磁性体のうち少なくとも1つの強磁性体における前記励磁コイル部との対向距離を可変することで、前記第1発熱層に作用する磁束密度を可変することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記強磁性体は、前記第1の加熱状態では前記第1発熱層に作用する磁束密度が前記第1発熱層の飽和磁束密度より小さくなるように前記励磁コイル部に対向する姿勢が可変され、前記第2の加熱状態では前記第1発熱層に作用する磁束密度が前記第1発熱層の飽和磁束密度より大きくなるように前記励磁コイル部に対向する姿勢が可変されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
装置の立ち上げ時には前記第1の加熱状態になって、連続通紙時には前記第2の加熱状態になるように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記発熱部材は、離間機構によって所定のタイミングで前記定着回転体に対して離間させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記離間機構は、装置の立ち上げ時に前記定着回転体に対して前記発熱部材が離間するように制御されることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記離間機構は、カラー画像を定着せずにモノクロ画像を定着する場合、又は/及び、厚さが所定値以下の記録媒体が前記ニップ部に搬送される場合、に前記定着回転体に対して前記発熱部材が離間するように制御されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記離間機構は、前記定着回転体の温度が第1の狙い値になるように制御される印刷モードから前記第1の狙い値よりも低い第2の狙い値になるように制御される印刷モードに切り替えられたときに、前記定着回転体に対して前記発熱部材が離間するように制御されることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
前記定着回転体に対して前記発熱部材が当接した状態である場合であって、前記定着回転体の温度が所定値を超えたときに、前記離間機構によって前記定着回転体に対して前記発熱部材が離間するように制御されることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の定着装置。
【請求項11】
前記発熱部材は、幅方向サイズの異なる記録媒体に合わせて幅方向に複数に分割され、
前記離間機構は、前記ニップ部に搬送される記録媒体の幅方向サイズに合わせて前記複数に分割された発熱部材の前記定着回転体に対するそれぞれの離間状態を可変することを特徴とする請求項6〜請求項10のいずれかに記載の定着装置。
【請求項12】
前記離間機構は、前記発熱部材を前記定着回転体に対して離間するとともに、前記発熱部材を前記励磁コイル部に対向しない位置まで前記定着回転体の周方向に沿って移動させることを特徴とする請求項6〜請求項11のいずれかに記載の定着装置。
【請求項13】
記録媒体の搬送速度が異なる画像形成装置本体に設置される場合に、前記離間機構によって前記発熱部材が前記定着回転体に対して離間される条件が可変されることを特徴とする請求項6〜請求項12のいずれかに記載の定着装置。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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