説明

定着装置、画像形成装置、定着方法、及び画像形成方法

【課題】複数の印刷媒体の未定着画像群から推定した加熱量に基づいて適切なタイミングで加熱量を供給することにより、生産性と定着性の両面を充足する。
【解決手段】印刷媒体上の未定着画像を加熱及び加圧により、前記印刷媒体に定着する定着装置であって、当該定着装置を通過する未定着画像に関する印刷情報を取得する印刷情報取得手段と、前記印刷情報取得手段により取得された印刷情報に基づき、当該定着装置を加熱して、前記印刷媒体に前記未定着画像を定着させるための加熱量を算出する熱量算出手段と、前記熱量算出手段により算出された未定着画像ごとの前記加熱量に基づいて、前記印刷情報取得手段により取得された複数の未定着画像群に供給する加熱量、及び前記加熱量を供給するタイミングを制御する熱量供給制御手段とを備えることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、画像形成装置、定着方法、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真プロセスを用いた画像形成装置には、印刷媒体(例えば用紙等)に形成された未定着画像(トナー画像)を加熱することによって印刷媒体に定着させる定着装置が備えられている。この定着装置においては、例えば未定着画像の画像濃度等の画像情報や、未定着画像を記録する用紙の種類等の情報から定着に必要な熱量を推定して、用紙ごとに適切な温度に加熱して定着させる技術(いわゆる「画質重視」技術)が知られている。一方、用紙の種類等の情報に基づいて、定着性を確保できる程度の加熱量で定着装置の温度を一定に保ちながら定着させる技術(いわゆる「生産性重視」技術)も知られている。
【0003】
なお、画質重視の場合と生産性重視の場合のいずれにも対応できるようにするため、画質重視の場合には用紙の種類ごとに加熱量を変更する変更モードと、生産性重視の場合には加熱量を一定に固定する固定モードとを選択させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の方法は、いずれも用紙ごと又は一回の印刷要求(ジョブ)ごとに加熱量を制御しているにすぎなかった。したがって、用紙ごとに加熱量を制御する場合には、用紙間で加熱、減熱の処理が必要となり、頻繁に温度を切り替えることにより消費電力が増加してしまう問題があった。
【0005】
また、ジョブごとに加熱量を制御する場合には、定着させるために必要な温度が一番高くなる用紙に合わせて温度を決定しなければならず、必要以上に温度供給がなされてしまう問題があった。
【0006】
また、上述した特許文献1の手法においても、生産性を重視して固定モードを選択した場合には、一番熱量を必要とする用紙に合わせて温度を固定するため、例えばその用紙が1枚しか混ざっていない場合であってもその用紙に合わせて温度が固定されてしまう。したがって、必要以上に温度供給がされてしまう問題を解決することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、複数の印刷媒体の未定着画像群から推定した加熱量に基づいて適切なタイミングで加熱量を供給することにより、生産性と定着性の両面を充足する定着装置、画像形成装置、定着方法、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、印刷媒体上の未定着画像を加熱及び加圧により、前記印刷媒体に定着する定着装置であって、当該定着装置を通過する未定着画像に関する印刷情報を取得する印刷情報取得手段と、前記印刷情報取得手段により取得された印刷情報に基づき、当該定着装置を加熱して、前記印刷媒体に前記未定着画像を定着させるための加熱量を算出する熱量算出手段と、前記熱量算出手段により算出された未定着画像ごとの前記加熱量に基づいて、前記印刷情報取得手段により取得された複数の未定着画像群に対して供給する前記加熱量、及び前記加熱量を供給するタイミングを制御する熱量供給制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述した定着装置を備えた画像形成装置である。
【0010】
また、本発明は、印刷媒体上の未定着画像を加熱及び加圧により、前記印刷媒体に定着する定着装置で実行される定着方法であって、当該定着装置を通過する未定着画像に関する印刷情報を取得する印刷情報取得手順と、前記印刷情報取得手順により取得された印刷情報に基づき、当該定着装置を加熱して、前記印刷媒体に前記未定着画像を定着させるための加熱量を算出する熱量算出手順と、前記熱量算出手順により算出された未定着画像ごとの前記加熱量に基づいて、前記印刷情報取得手順により取得された複数の印刷媒体群に対して供給する前記加熱量、及び前記加熱量を供給するタイミングを制御する熱量供給制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した定着方法により前記未定着画像を前記印刷媒体に定着させて、前記印刷媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の印刷媒体の未定着画像群から推定した加熱量に基づいて適切なタイミングで加熱量を供給することにより、生産性と定着性の両面を充足することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る熱量供給制御手段が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】未定着画像ごとの温度分布について説明するための図である。
【図4】生産性を優先した場合に熱量供給制御手段が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】生産性優先モードにおける温度閾値の変更を説明するための図である。
【図6】未定着画像群の定着温度が連続的に取得できる場合の例を説明するための図である。
【図7】画像濃度が異なる未定着画像が連続した場合の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<画像形成装置に備えられた定着装置の機能構成>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の機能構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成装置100は、定着装置10と、画像情報検出手段20とを有するように構成される。
【0016】
また、画像形成装置に備えられた定着装置10は、印刷情報取得手段11と、熱量算出手段12と、印刷媒体記憶手段13と、熱量供給制御手段14とを有するように構成される。なお、画像情報検出手段20は、定着装置10に内蔵されていても良い。
【0017】
定着装置10は、用紙等の印刷媒体上の未定着画像(トナー画像)を加熱及び加圧することにより、印刷媒体に定着させる。
【0018】
定着装置10において、印刷情報取得手段11は、定着装置10の処理対象である未定着画像に関する印刷情報を取得する。印刷情報取得手段11は、例えば、画像形成装置100においてコピーやプリント等が行われる場合に、画像形成装置100が内蔵するプロセスコントローラから通知される、用紙に未定着画像を載せるための印刷要求を、用紙1枚ごとに取得する。
【0019】
ここで、印刷情報取得手段11は、用紙1枚ごとに取得する印刷情報として、例えば用紙に記録する未定着画像の画像濃度、未定着画像のカラーモード、未定着画像を載せる用紙の種類、厚さ等の情報を取得する。なお、印刷情報取得手段11は、このように取得した印刷情報に対応させて、後述する画像情報検出手段20から未定着画像の濃度判断を行うための印刷データ等を取得する。
【0020】
熱量算出手段12は、印刷情報取得手段11により取得された用紙1枚ごとの印刷情報等を用いて、用紙1枚ごとに、対応する未定着画像を定着させるために、定着装置10に備えられたヒータ等に供給する熱量(加熱量)を算出する。熱量算出手段12は、例えば予め実験値等に基づいて、未定着画像を記録する用紙の種類、用紙の厚さ、未定着画像の画像濃度、カラーモード等の情報に対応して設定された熱量の情報を用いて、用紙1枚ごとに未定着画像を定着させるために必要となる熱量を算出する。
【0021】
印刷媒体記憶手段13は、印刷情報取得手段11により取得された用紙1枚ごとの未定着画像の印刷情報等を記憶する。また、印刷媒体記憶手段13は、印刷情報取得手段11により取得された用紙1枚ごとの未定着画像の印刷情報等と対応させて、熱量算出手段12により算出された熱量を記憶する。
【0022】
熱量供給制御手段14は、熱量算出手段12により算出された用紙1枚ごとに未定着画像を定着させるために必要となる熱量に基づいて、印刷情報取得手段11により取得された複数の未定着画像群に対して供給する熱量、及び熱量を供給するタイミングを制御する。
【0023】
具体的には、熱量供給制御手段14は、処理対象となる未定着画像ごとに用紙に定着させるための温度閾値を算出し、算出した温度閾値に基づいて、複数の未定着画像群を定着させる定着温度を決定する。また、熱量供給制御手段14は、このように決定した定着温度で定着可能な複数の未定着画像群ごとに温度を切り替えるように制御する。
【0024】
なお、熱量供給制御手段14は、複数の未定着画像群のそれぞれに必要となる熱量を連続的に取得することによって形成される温度曲線に基づいて、複数の未定着画像群を定着させる温度閾値を算出し、算出した温度閾値に基づいて、定着温度を決定し、定着温度の切り替えタイミングを制御しても良い。
【0025】
また、熱量供給制御手段14は、上述した定着温度を切り替えるための時間を算出し、算出した時間に応じて定着装置を通過させる未定着画像の通過タイミングを制御する。また、熱量供給制御手段14は、予め選択された動作モードに応じて、未定着画像ごとに算出される温度閾値の値を変更することもできる。例えば、未定着画像を定着させる温度閾値を広げるように変更することで、生産性を優先させることもできる。
【0026】
画像情報検出手段20は、印刷情報取得手段11によって取得される未定着画像の画像情報を検出する。画像情報検出手段20は、例えば画像情報として印刷データを検出するが、物理デバイス媒体から取得できる情報であっても良い。
【0027】
なお、定着装置10は、CPU等を備えた制御部を備え、制御部は、熱量供給制御手段14により決定された熱量等の情報に基づいて、定着装置10に備えられたヒータ等に熱を供給する。
【0028】
上述したように、本実施形態に係る画像形成装置100では、定着装置10によって実行される定着方法により未定着画像が用紙に定着され、用紙に画像を形成することができる。
【0029】
<熱量供給制御手段14が実行する処理>
次に、図2を用いて、本実施形態に係る熱量供給制御手段14が実行する処理について説明する。図2は、本実施形態に係る熱量供給制御手段が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0030】
図2に示すように、熱量供給制御手段14は、例えば外部システム等から制御開始のトリガを受信すると、印刷媒体記憶手段13に制御対象となる複数の未定着画像の処理要求があるか否か判断する(S10)。
【0031】
熱量供給制御手段14は、印刷媒体記憶手段13に複数の未定着画像の処理要求がない場合、すなわち未定着画像の処理要求がないか、未定着画像の処理要求が1つしか存在しない場合(S10において、NO)、印刷情報記憶手段13に記憶したその未定着画像を定着させるための必要熱量を取得し、その未定着画像の定着性を確保できる温度に温度制御、又は準備等を行う(S11)。
【0032】
熱量供給制御手段14は、印刷媒体記憶手段13に複数の未定着画像の処理要求がある場合(S10)、印刷情報記憶手段13からn枚目の未定着画像を定着させるための必要熱量を取得するため、枚数カウンタである変数nに初期値1をセットし(S12)、n枚目の未定着画像を定着させるための必要熱量が、1〜n枚目までの未定着画像が定着性を確保できる温度の閾値以内か否か判断する(S13)。
【0033】
例えば、熱量供給制御手段14は、1〜n枚目までの未定着画像を定着させるための温度が、例えば1枚目の未定着画像が定着性を確保できる温度の閾値、すなわち1枚目の未定着画像の定着性を確保できる上限温度と下限温度に含まれているか否か等を判断する。
【0034】
熱量供給制御手段14は、n枚目の未定着画像の必要熱量が、1〜n枚目までの未定着画像が定着性を確保できる温度の閾値以内であると判断した場合(S13において、YES)、1〜n枚目までの未定着画像が定着性を確保できる温度を定着温度として決定し(S14)、n枚目は最終の未定着画像か否か判断する(S15)。
【0035】
ここで、熱量供給制御手段14は、n枚目が最終の未定着画像ではないと判断した場合(S15において、NO)、枚数カウンタに1を加算し(n=n+1)(S16)、S13の処理に戻る。また、n枚目が最終の未定着画像の場合(S15において、YES)、処理を終了する。
【0036】
なお、熱量供給制御手段14は、n枚目の必要熱量が、1〜n枚目までの未定着画像が定着性を確保できる温度の閾値以内でない場合(S13において、NO)、定着温度を変更する(S17)。
【0037】
このとき、熱量供給制御手段14は、S17の処理で変更した温度に定着温度を切り替えるための温度切り替え時間が、切り替え後の定着温度で定着させる未定着画像の処理が開始するまでの時間、すなわち次の処理開始時間までに収まるか否か判断する(S18)。
【0038】
熱量供給制御手段14は、上述した温度切り替え時間が、上述した処理開始時間までに収まると判断した場合(S18において、YES)、定着温度を切り替えるための温度制御を継続し(S19)、S16の処理に進む。
【0039】
熱量供給制御手段14は、上述した温度切り替え時間が、上述した処理開始時間までに収まらないと判断した場合(S18において、NO)、定着温度を切り替えた後に処理する未定着画像の処理開始時間を遅らせる等、未定着画像の通過タイミングを制御し(S20)、S18の処理に戻る。
【0040】
<未定着画像の温度分布について>
次に、図3を用いて、本実施形態に係る熱量算出手段12によって算出された未定着画像ごとの温度分布について説明する。図3は、未定着画像ごとの温度分布について説明するための図である。
【0041】
なお、図3の横軸は未定着画像の処理番号を示し、縦軸は未定着画像を定着させるための定着温度を示している。また、図3には、各未定着画像の定着温度の閾値として、定着性を確保することが可能な上限温度と、定着性を確保することが可能な下限温度が示されている。
【0042】
図3に示すように、例えば、熱量供給制御手段14は、熱量算出手段12によって算出された未定着画像ごとの定着温度に対して予め設定されたモードに基づいて上限温度、下限温度を決定し、仮に設定した定着温度が各未定着画像の上限温度と下限温度に含まれているかを判断する。
【0043】
具体的には、上述した図2のS13の処理において、例えば1枚目の未定着画像の定着温度を用いて、その定着温度が、各未定着画像の上限温度と下限温度に含まれているか判断していく。図3の場合、処理番号1の未定着画像の定着温度が、処理番号2〜5までの未定着画像の上限温度と下限温度に含まれている。したがって、このような場合には、熱量供給制御手段14は、処理番号1の未定着画像の定着温度を、処理番号5までの未定着画像を定着させる温度(決定定着温度)として決定することができる。
【0044】
なお、図3では、処理番号1の未定着画像の定着温度を初期温度として用いているが、待ち時間の短縮のために初期温度を別の要因から決めても良い。
【0045】
また、図3に示すように、処理番号6以降の未定着画像の上限温度、下限温度は、処理番号1の未定着画像の定着温度では、定着性を確保できない領域にある。したがって、熱量供給制御手段14は、このような場合、上述した図2のS17の処理において、定着温度を変更する。
【0046】
なお、熱量供給制御手段14は、例えば処理番号6の未定着画像を処理するための温度の切り替えが、定着装置に備えられているヒータの応答性により、通常の処理間隔で間に合わないと判断した場合、上述した図2のS19の処理において、処理番号6の未定着画像を処理する時間を調整する。
【0047】
このように、熱量供給制御手段14は、未定着画像の印刷情報等を取得すると、上述した処理を繰り返すことにより、複数の未定着画像群に対して供給する熱量、及び熱量を供給するタイミングを制御する。
【0048】
<生産性を優先した場合に熱量供給制御手段14が実行する処理>
次に、図4を用いて、生産性を優先した場合に熱量供給制御手段14が実行する処理について説明する。図4は、生産性を優先した場合に熱量供給制御手段が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
なお、図4のフローチャートは、図2のフローチャートと比較すると、図2に示すS13の処理において、n枚目の必要熱量が、1〜n枚目までの未定着画像が定着性を確保できる温度の閾値以内でない場合(S13において、NO)、S17の処理を行う前に、S28、S29の処理が追加されている。
【0050】
すなわち、図4のフローチャートでは、S28〜S29の処理のみ異なるため、図2のフローチャートのS10〜S20に対応するS21〜S27及びS30〜S33の処理についての具体的な説明は省略し、S28〜S29の処理について具体的に説明する。
【0051】
図4に示すように、熱量供給制御手段14は、n枚目の必要熱量が、1〜n枚目までの未定着画像が定着性を確保できる温度の閾値以内でない場合(S24において、NO)、生産性優先モードが選択されているか否か判断する(S28)。
【0052】
ここで、熱量供給制御手段14は、予め生産性優先モードが選択されていると判断した場合(S28において、YES)、1〜n枚目までの温度閾値を最低限の定着性が確保できる温度閾値に変更し(S29)、S24の処理に戻る。生産性優先モードが選択されていないと判断した場合(S28において、NO)、S30の処理に進む。
【0053】
なお、上述したS29の処理における最低限の定着性が確保できる温度閾値とは、例えば、未定着画像の定着性を確保することが可能な上限温度と、定着性を確保できる可能な下限温度とが、例えば図3で示した定着温度の上限温度と下限温度よりもそれぞれ広く設定された閾値等を示すが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば上限温度又は下限温度の一方が広く設定されていても良い。
【0054】
また、上述のように設定される温度閾値は、例えば用紙に記録する未定着画像の画像濃度、未定着画像のカラーモード、未定着画像を載せる用紙の種類、厚さ、ヒータの応答性等により適宜設定することが可能である。
【0055】
上述したように、S29の処理で、最低限の定着性が確保できる温度閾値に変更することで、未定着画像群を処理するための温度切り替えを少なくして、稼働率を向上させ、その結果として生産性を優先させた処理を実現することが可能となる。
【0056】
<生産性を優先する場合に定着温度閾値を広げた例>
次に、図5を用いて、上述した生産性優先モードにおける温度閾値の変更について説明する。図5は、生産性優先モードにおける温度閾値の変更を説明するための図である。なお、上述した図3と同様に、横軸は未定着画像の処理番号を示し、縦軸は未定着画像を定着させるための定着温度を示している。
【0057】
一方、図5は図3とは異なり、処理番号1〜7の未定着画像の定着性を確保することが可能な上限温度と、定着性を確保することが可能な下限温度がそれぞれ広く設定され、定着性が最低限確保できる範囲の閾値が示されている。
【0058】
そのため、図5の場合には、未定着画像群を定着させる定着温度(決定定着温度)を、図3の場合よりも高く設定することが可能となり、この定着温度により、処理番号1〜7までの未定着画像を定着させることが可能となる。したがって、図3の場合よりも未定着画像群を定着させる温度の切り替えを少なくし、生産性を優先して、定着装置の消費電力を削減することが可能となる。
【0059】
なお、上述したように、未定着画像群の温度閾値を決める際には、定着性を最低限確保すると共に、定着装置のヒータの応答性等を考慮すると良い。
【0060】
<連続的に定着温度が取得できる場合の例>
次に、図6を用いて、未定着画像群の定着温度が連続的に取得できる場合の例について説明する。図6は、未定着画像群の定着温度が連続的に取得できる場合の例を説明するための図である。
【0061】
図6に示すように、熱量供給制御手段14は、上述した未定着画像ごとではなく、処理対象となる未定着画像群の定着温度を連続的に取得して温度曲線を形成する。また、熱量供給制御手段14は、このように形成した温度曲線から、定着性を保つことが可能となる温度閾値を決定し、決定した閾値から定着温度を決定することで、上述した図4等に示す制御を行うことが可能となる。
【0062】
図6に示す温度曲線を用いた場合には、熱量供給制御手段14は、上述した未定着画像群ごとではなく、処理対象である未定着画像群の処理途中に境界(温度を切り替える単位)を定め、未定着画像群の処理途中に温度の切り替えを行うことが可能となる。具体的には、熱量供給制御手段14は、図6に示す温度曲線のうちの何点かを抽出して温度平均を求め、求めた温度平均から温度閾値を決定し、温度を切り替える境界を定め、定めた境界で決定した定着温度の切り替えを制御する。
【0063】
また、上述した場合に、更に生産性優先モードが選択されている場合には、最低限の定着性を確保できる境界を定めることにより、生産性を極力落とさないように処理することが可能となる。また、境界間の温度変化が少なくなるよう加熱温度を調整することにより、温度切り替えを少なくし、省電力化を可能とする。
【0064】
<画像濃度が異なる未定着画像が連続した場合の処理>
次に、図7を用いて、画像濃度が異なる未定着画像が連続した場合の処理について説明する。図7は、画像濃度が異なる未定着画像が連続した場合の例を説明するための図である。図7(A)〜図7(D)には、画像濃度が異なる未定着画像が連続している。
【0065】
従来の手法を用いた場合、図7(A)〜図7(D)の未定着画像を定着させるためには、図7(A)に示す画像濃度が濃い未定着画像を定着させる温度で固定をするか、図7(A)〜図7(D)のぞれぞれの未定着画像ごとに定着温度を切り替えるしかなかった。
【0066】
一方、本実施形態の手法を用いれば、図7(A)〜図7(D)の未定着画像群の温度閾値の設定の仕方によって、それぞれの未定着画像ごとに温度を切り替えることも、最低限の定着性を確保できる温度で未定着画像群の処理中に温度を切り替えることも可能となる。したがって、本実施形態では、例えば最低限の定着性を確保できる温度で未定着画像群の処理中に温度を切り替える場合、図7(A)の濃い未定着画像で定着させるための温度を引き下げ、結果として消費電力を削減することが可能となる。
【0067】
上述したように、本実施形態によれば、複数の印刷媒体の未定着画像群から推定した加熱量に基づいて適切なタイミングで加熱量を供給することにより、生産性と定着性の両面を充足することが可能となる。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 定着装置
11 印刷情報取得手段
12 熱量算出手段
13 印刷情報記憶手段
14 熱量供給制御手段
20 画像情報検出手段
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2005−321478号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上の未定着画像を加熱及び加圧により、前記印刷媒体に定着する定着装置であって、
当該定着装置を通過する未定着画像に関する印刷情報を取得する印刷情報取得手段と、
前記印刷情報取得手段により取得された印刷情報に基づき、当該定着装置を加熱して、前記印刷媒体に前記未定着画像を定着させるための加熱量を算出する熱量算出手段と、
前記熱量算出手段により算出された未定着画像ごとの前記加熱量に基づいて、前記印刷情報取得手段により取得された複数の未定着画像群に対して供給する前記加熱量、及び前記加熱量を供給するタイミングを制御する熱量供給制御手段とを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記熱量供給制御手段は、前記未定着画像ごとに前記印刷媒体に定着させるための温度閾値を決定し、決定した温度閾値に基づいて、前記複数の未定着画像群を定着させる定着温度を決定し、決定した定着温度で定着可能な複数の未定着画像群ごとに温度を切り替えるよう制御することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記熱量供給制御手段は、前記複数の未定着画像群それぞれに対応する前記加熱量を連続的に取得して形成される温度曲線から、前記複数の未定着画像群を定着させる温度閾値を決定し、決定した温度閾値に基づいて定着温度を決定し、決定した定着温度の切り替えタイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記熱量供給制御手段は、前記定着温度に切り替えるための時間を算出し、算出した時間に応じて当該定着装置を通過させる前記未定着画像の通過タイミングを制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記熱量供給制御手段は、予め選択された動作モードに応じて、前記温度閾値を変更することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記熱量算出手段は、前記印刷情報取得手段によって取得された前記未定着画像の画像濃度、カラーモード、前記未定着画像が印刷される印刷媒体の種類、及び厚さに基づき加熱量を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【請求項8】
印刷媒体上の未定着画像を加熱及び加圧により、前記印刷媒体に定着する定着装置で実行される定着方法であって、
当該定着装置を通過する未定着画像に関する印刷情報を取得する印刷情報取得手順と、
前記印刷情報取得手順により取得された印刷情報に基づき、当該定着装置を加熱して、前記印刷媒体に前記未定着画像を定着させるための加熱量を算出する熱量算出手順と、
前記熱量算出手順により算出された未定着画像ごとの前記加熱量に基づいて、前記印刷情報取得手順により取得された複数の印刷媒体群に対して供給する前記加熱量、及び前記加熱量を供給するタイミングを制御する熱量供給制御手段とを備えることを特徴とする定着方法。
【請求項9】
請求項8に記載の定着方法により前記未定着画像を前記印刷媒体に定着させて、前記印刷媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−63635(P2012−63635A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208583(P2010−208583)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】