説明

定着装置及びこれを備えた画像形成装置、並びに定着装置用のオイル除去ブレード

【課題】 オイル除去ブレード上での離型剤の蒸気や水蒸気の液化を防ぐことができ、液化した離型剤や水分によるウェブの汚れを防ぎ、安定した品質の印刷物を提供する定着装置の提供。
【解決手段】 未定着のトナー像を保持したウェブ3を加熱する加熱ローラ1と、前記加熱ローラ1の下部に当接してニップ部を形成する加圧ローラ2とを備え、前記ニップ部で前記ウェブ3を挟持搬送しながら、前記未定着のトナー像を前記ウェブに定着させる定着装置101であって、前記加熱ローラ1の周囲には、前記加熱ローラ1に当接し、前記加熱ローラ1表面から残トナーを除去し、前記加熱ローラ1表面に離型剤を供給するオイルウェブ5と、前記オイルウェブ5で供給した過剰の離型剤を前記加熱ローラ1表面から除去するオイル除去ブレード12を備え、前記オイル除去ブレード12は、周囲の空気を流通させる開口13を有することを特徴とする定着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びこれを備えた画像形成装置、並びに定着装置用のオイル除去ブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタや複写機等に代表される電子写真式印刷装置(画像形成装置)の定着装置として、トナー像を保持したウェブを接触加熱板にてウェブとトナー像の予熱を行い、内部に熱源を備えた加熱ローラと加圧ローラとで挟持搬送しながら加熱加圧し、トナー像をウェブに定着させる形態の定着装置が知られている。
【0003】
加熱ローラ表面には、加熱ローラとトナー等との離型性を良くする離型剤が供給されている。通常、離型剤は、シリコーンオイルなどのオイルが使用され(以下、離型剤をオイルと称することがある。)、オイルウェブと呼ばれる離型剤塗布装置により加熱ローラ表面に塗布される。オイルウェブは、不織布などのベルトにオイルを浸み込ませたベルト状のものであり、加熱ローラ表面に付着した残トナーの除去作用も合わせ持つ場合が多い。
【0004】
加熱ローラ表面に付着させるオイルは、多すぎるとウェブを汚染することがあるので、加熱ローラ表面上のオイルウェブと加熱ローラのニップ部の間にオイル除去ブレードを配置し、過剰に付着したオイルを除去している。
【0005】
特許文献1や特許文献2には、定着装置に備えられたオイル除去ブレードの発明が記載されている。例えば、特許文献1には、定着ローラ(加熱ローラ)の長手方向に押圧力を変化させた構成のオイル除去ブレードの発明が記載されている。これにより、定着ローラへの最適な離型剤の塗布が実現でき、長期に亘って定着ローラのメンテナンスが不用になるとしている。
【0006】
特許文献2には、ブレード固定部材とブレード支持部材をフッ素ゴム等の弾性部材を介して押圧固定したオイル除去ブレードの発明が記載されている。このオイル除去ブレードは、ブレードの熱膨張等による歪みに対しても、加熱ローラ表面に適正なオイルの塗布が実現できるとしている。
【0007】
特許文献3には、加圧ローラに設置したクリーニングブレード(オイル除去ブレード)の発明が記載されている。このクリーニングブレードは、加圧ローラの下側に配置されており、クリーニングブレードにオイルを逃がす空間部又は溝が形成されている。そして、クリーニングブレードにより加圧ローラから剥離された不用なオイルは、クリーニンブレードの溝を通ってクリーニングブレード下部に設置された容器に流れ落ちる構成となっている。この発明においては、クリーニングブレードが加圧ローラから掻き取った不用なオイルが効果的に収集できるように処理されている。
【0008】
特許文献4には、加圧ローラを囲う定着入口ガイド部材、定着下ガイド部材、及び定着フレーム部材のいずれか又はすべての面に換気用の穴形状を設け、穴形状に空気が流れるようにファン及び風路を配置した定着装置が記載されている。この定着装置においては、定着操作中に用紙(ウェブ)から発生した水蒸気が加圧ローラ表面に凝縮し、加圧ローラのグリップ力が低下し、用紙がスリップすることを防止している。
【0009】
図4、5を参照にしながら、従来のオイル除去ブレードを備えた定着装置及びオイル除去ブレードの例について簡単に説明する。図4は、従来のオイル除去ブレードを備えた定着装置の例であり、図中の太い矢印は空気の流れを示している。この定着装置103はトナー像を保持したウェブ3を加熱加圧してトナー像をウェブ3上に定着するための加熱ローラ1、加熱ローラ1に対し圧接可能に設けられた加圧ローラ2を備えている。加熱ローラ1の周囲には、加熱ローラ1にオイルを塗布し、加熱ローラ1上の残トナー等を拭き取って残トナー等による汚染を防止するオイルウェブ5、オイルウェブ5にポンプでオイルを供給するためのオイル供給機構6、印刷停止時等に加熱ローラ1表面に過剰に塗布されたオイルを取り除くオイル除去ブレード12、及び加熱ローラ1の表面温度を測定し、加熱ローラ1の温度制御を行うためのサーミスタセンサ7を備えている。
【0010】
また、この定着装置103は、ウェブ3への定着操作前にトナー像を保持したウェブ3の予熱を行う接触加熱板4、印刷停止時等に接触加熱板4上に停止したウェブ3の過熱による含水率の低下を防止するためにウェブ3に外気を吹き付けるウェブ冷却ファン9、ウェブ冷却ファン9から吹き付けられる風がサーミスタセンサ7や加熱ローラ1に当らないようにする為のカバー8、加熱ローラ1や接触加熱板4の熱により発生した水蒸気や気化したオイルを定着装置内から排気する為に定着装置上部に設置された排気ファン10、排気ファン10にて排気する気化したオイルを回収するフィルタ11などの構成を有している。
【0011】
図5に、上記の定着装置103に備えられたオイル除去ブレードの形状例を示す。オイル除去ブレード12は、加熱ローラ1と接触するゴム製のエッジ部12bと、エッジ部12bを安定して加熱ローラ1に押し付けるための板金製の基部12aで構成されている。また、オイル除去ブレード12は、図示していない加熱ローラ1との離接を可能にする駆動手段を備えている。通常、オイル除去ブレード12は、印刷停止時やOHPフィルムのようなオイル吸収性の悪いウェブ3の印刷時等には、加熱ローラ1にエッジ部12bを押圧し、オイルウェブ5により加熱ローラ1に供給されたオイルの過剰分を加熱ローラ1表面から除去し、通常の用紙の印刷開始に伴い徐々にオイル除去ブレード12を離間し、加熱ローラ1表面のオイルを適正量に制御している。
【0012】
図4に戻って、カバー8は、接触加熱板4上のウェブ3の温度調節のためのウェブ冷却ファン9からの風がサーミスタセンサ7や加熱ローラ1に当らないようにするため、サーミスタセンサ7及び加熱ローラ1を覆うように設けられている。なお、カバー8は、接触加熱板4からの輻射熱や接触加熱板4付近の水蒸気を含んだ加熱空気がサーミスタセンサ7付近に流れこまないような遮蔽機能も有している。この為、図4に示すように、カバー8は、ウェブ冷却ファン9及び接触加熱板4のサーミスタセンサ7と加熱ローラ1を遮蔽するように配置されている。
【0013】
排気ファン10は、定着装置103の上部に設置され、加熱ローラ1や接触加熱板4の熱により発生され上昇してきた水蒸気や気化したオイルを排気している。しかし、加熱ローラ1やサーミスタセンサ7が、排気ファン10による吸引風の影響を受けると、加熱ローラ1の温度制御が不安定になるため、排気ファン10は、加熱ローラ1の周りの空気の流れを大きく変化させない配置や風量で排気している。
【0014】
このような構成において、オイル除去ブレード12の裏面(加熱ローラ1の回転方向下流側に向いている面)からカバー8の内側にあるサーミスタセンサ7付近においては、水蒸気や気化したオイルが、空気の流れのない空間(デッドスペース)に滞留しやすくなっている。このデッドスペースに滞留した水蒸気や気化したオイルは、やがてオイル除去ブレード12裏面上で再液化してしまい、再液化したオイルや水分はオイル除去ブレード12裏面から加熱ローラ1へと流下し、加熱ローラ1からウェブ3に転写され、ウェブ3にオイル筋を発生させ、ウェブ3の印刷品質を低下させる要因となることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、定着装置の定着ローラ(加熱ローラ)には、離型剤としてシリコーンオイルなどのオイルが塗布されることが知られている。そして、定着ローラに過剰に塗布されたオイルは、オイル除去ブレード等により除去されている。特許文献1〜3には、オイル除去ブレードの好適なオイル除去のできるブレードの構造や、除去したオイルの処置に関する発明が記載されているが、上述のようなオイル除去ブレードを設置したことによる新たな問題やその解決手段については記載されていない。
【0016】
また、特許文献4に記載の発明は、ローラへの不用な水分の付着を防ぐ構成の発明ではあるが、加圧ローラがニップ部の用紙(ウェブ)よりも低温であり、主にニップ部で用紙から発生した水蒸気の加圧ローラ表面への凝縮を防ぐものであり、オイル除去ブレードの引き起こす問題点ではない。
【0017】
図4に示した定着装置103においては、オイル除去ブレード12は、加熱ローラ1の長手方向全体に亘ってオイルの塗布量を調整するため、加熱ローラ1の全長に亘ってブレードのエッジ部12bを当接させている。そうすると、加熱ローラ1とオイル除去ブレード12の間の長手方向全体に亘っての空間に空気の流通が悪いデッドスペースができる。特に、サーミスタセンサ7やカバー8が設置されている定着装置103においては、サーミスタセンサ7やカバー8の周辺も含めて空気の流通が更に悪くなる。そして、この空間は加熱ローラ1の表面に接しているため、加熱ローラ1上の加熱されたオイルの蒸気が蒸発してくる。このオイルの蒸気は、相対的に温度の低いオイル除去ブレード12の裏面側に凝縮してオイル除去ブレード裏面側に付着する。オイル除去ブレード裏面側に付着したオイルは、オイル除去ブレード裏面から加熱ローラ1の表面に流下し、加熱ローラ1の表面に流下したオイルはそのままウェブ3の定着部(ニップ部)に運ばれ、ウェブ3に付着してウェブ3を汚してしまう。特に、サーミスタセンサ7やカバー8が設置されている定着装置103においては、サーミスタセンサ7やカバー8にもオイルや水分が付着し、オイル除去ブレード12と同じようなトラブルを引き起こすこともある。このため、ウェブ3の種類や、印刷開始タイミングなどによっては、オイル除去ブレード12が却ってウェブの印刷品質を低下させることにもなりかねない。
【0018】
本発明の目的は、上記の問題点を踏まえ、オイル除去ブレード上での離型剤の蒸気や水蒸気の液化を防ぐことができ、液化した離型剤や水分によるウェブの汚れを防ぎ、安定した品質の印刷物を提供する定着装置、及び画像形成装置、並びに前記定着装置に使用するオイル除去ブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、未定着のトナー像を保持したウェブを加熱する加熱ローラと、加熱ローラの下部に当接してニップ部を形成する加圧ローラとを備えており、ニップ部にウェブを挟持して搬送しながら、未定着のトナー像をウェブに定着させる定着装置に関するものである。本発明の定着装置においては、加熱ローラの周囲に、加熱ローラに当接し、加熱ローラ表面から残トナーを除去するとともに加熱ローラ表面に離型剤を供給するオイルウェブと、オイルウェブで供給した離型剤の過剰分を加熱ローラ表面から除去するオイル除去ブレードを備えている。そして、オイル除去ブレードは、周辺の空気を流通させる開口を有している。
【0020】
加熱ローラとオイル除去ブレードの間の空間にある空気中には、加熱ローラにより暖められ蒸発した離型剤であるオイル蒸気(以下、離型剤をオイルということがある。)やウェブ中から発散した水蒸気などが含まれている。加熱ローラとオイル除去ブレードの間の空間は、通気に注意しないと、デッドスペースになりやすく、この空間の空気は加熱されるとともに、加熱ローラ表面から蒸発したオイル蒸気やウェブから発散した水蒸気の濃度が次第に高くなる。そうすると、加熱ローラ表面よりも温度の低いオイル除去ブレードの裏面(加熱ローラの回転方向下流側に向いている面)にオイル蒸気や水蒸気が凝縮し易くなる。しかし、本発明においては、オイル除去ブレードがオイル除去ブレード周辺の空気を流通させる開口を有しているため、この空間の空気が開口を通して排気され、オイル蒸気や水蒸気の濃度は上がらず、オイル除去ブレード裏面にオイル分の蒸気や水蒸気が凝縮することがない。
【0021】
本発明の定着装置が加熱ローラ表面の温度を測定するサーミスタセンサを備えている場合には、オイル除去ブレードに開口がないと、加熱ローラとオイル除去ブレードとサーミスタセンサとにより、オイル除去ブレード周辺及びサーミスタセンサ周辺の空気の流通が妨げられやすくなるが、本発明の定着装置におけるオイル除去ブレードによりオイル除去ブレード周辺及びサーミスタセンサ周辺の空気の流通は問題なくなる。
【0022】
オイル除去ブレードが、加熱ローラ表面のオイルウェブとサーミスタセンサの間に配置されている、すなわちオイル除去ブレードがサーミスタセンサの隣に配置されている定着装置では、オイル除去ブレードに形成した通気用の開口の効果は、更に顕著である。
【0023】
また、未定着のトナー像を保持したウェブを予備加熱する接触加熱板を備え、接触加熱板とサーミスタセンサの間に接触加熱板からサーミスタセンサに伝達する熱を遮る熱遮蔽板(カバー)を備える定着装置においても、熱遮蔽板が接触加熱板からサーミスタセンサ周辺に伝わる熱を遮る一方、熱遮蔽板とサーミスタセンサ又はオイル除去ブレードがオイル除去ブレード周辺の通気性を阻害しやすく、オイル除去ブレードに形成した通気用の開口の役割は大きなものとなる。
【0024】
本発明の定着装置は、ウェブが接触加熱板上で滞留する場合などに備え、過剰に加熱されたウェブを冷却する冷却ファンを備え、さらに、冷却ファンからの風がサーミスタセンサや加熱ローラを冷却しないような風遮蔽板(カバー)を備えることが好ましい。この風遮蔽板は、上記の熱遮蔽板と兼用するカバーであってもよい。
【0025】
本発明の定着装置は、加熱ローラ周辺の空気を排気する排気ファンを備えることが好ましい。排気ファンは、定着装置の上部に備えることが効果的であり、オイル除去ブレードの開口から空気を排気しやすい構造とすることが好ましい。
【0026】
本発明の定着装置におけるオイル除去ブレードは、加熱ローラと離接可能であることが好ましい。オイル除去ブレードは、ウェブの種類や、印刷のタイミングにより、加熱ローラ状に付着させるべき最適オイル量は異なるので、オイル除去ブレードは、加熱ローラと離接可能とし、加熱ローラ表面のオイル量を調整できることが好ましい。
【0027】
本発明の画像形成装置は、上記のいずれかの定着装置を備えている。
【0028】
本発明のオイル除去ブレードは、表面に離型剤を供給するオイルウェブを備える加熱ローラと前記加熱ローラに当接してニップ部を形成する加圧ローラとを備え、ニップ部に未定着のトナー像を保持したウェブを挟持搬送しながら、トナー像をウェブに定着させる定着装置に備えられている。そして、本発明のオイル除去ブレードは、通気用の開口を有しており、オイルウェブで供給した離型剤を加熱ローラ表面から除去することができる。
【0029】
好ましい本発明のオイル除去ブレードは、加熱ローラと離接可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、オイル除去ブレード上での離型剤の蒸気や水蒸気の液化を防ぐことができ、液化した離型剤や水分によるウェブの汚れを防ぎ、安定した品質の印刷物を提供する定着装置、及び画像形成装置、並びに前記定着装置に使用するオイル除去ブレードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る定着装置の構成図の例(1)である。
【図2】本発明の定着装置に適用するオイル除去ブレードの例図である。
【図3】本発明に係る定着装置の構成図の例(2)である。
【図4】従来の定着装置の構成図である。
【図5】従来のオイル除去ブレードの図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1、2を用いて、第1の実施の形態として、本発明に係るオイル除去ブレードを備えた定着装置及びオイル除去ブレードについて説明する。図1は、本発明に係るオイル除去ブレードを備えた定着装置の例であり、図中の太い矢印は空気の流れを示している。この定着装置101はトナー像を保持したウェブ3を加熱加圧してトナー像をウェブ3上に定着するための加熱ローラ1、加熱ローラ1に対し圧接可能に設けられた加圧ローラ2を備えている。加熱ローラ1の周囲には、加熱ローラ1に当接し、加熱ローラ1にオイルを塗布し、加熱ローラ1上の残トナー等を拭き取って残トナー等による汚染を防止するオイルウェブ5、オイルウェブ5にポンプでオイルを供給するためのオイル供給機構6、加熱ローラ1に離接可能に当接し、印刷停止時等に加熱ローラ1表面に過剰に塗布されたオイルを取り除くオイル除去ブレード12、及び加熱ローラ1の表面温度を測定し、加熱ローラ1の温度制御を行うためのサーミスタセンサ7を備えている。オイルウェブ5、オイル除去ブレード12、及びサーミスタセンサ7は、加熱ローラ1の回転方向に沿ってこの順で配置されている。
【0033】
オイル除去ブレード12は、図示していない加熱ローラ1と離接を可能にする駆動手段を備えている。通常、オイル除去ブレード12は、印刷停止時やOHPフィルムの印刷時等には、加熱ローラ1にエッジ部12bを押圧し、オイルウェブ5により加熱ローラ1に過剰に供給されたオイルを加熱ローラ1表面から除去する。通常の用紙の印刷を開始する場合は、オイル除去ブレード12を徐々に離間すれば、加熱ローラ1表面のオイルを適正に制御できる。オイル除去ブレード12は、加熱ローラ1と当接する先端部であるエッジ部12b(図2参照)の先端が、加熱ローラ1表面の回転方向に向かう方向に向けて配置されている。
【0034】
図2に、定着装置101に備えられているオイル除去ブレードの例を示す。オイル除去ブレード12は、加熱ローラ1と接触するゴム製のエッジ部12bと、エッジ部12bを安定して加熱ローラ1に押し付けるための板金製の基部12aで構成されており、加熱ローラ1表面のオイル塗布量の制御を容易にしている。オイル除去ブレード12の基部12aには、オイル除去ブレード12の裏面側と加熱ローラ1の間の空間の空気を流通させ排気するため、通気用の複数の開口13が設けられている。オイル除去ブレード12の詳細な構造については後述する。
【0035】
この実施の形態の定着装置101は、定着操作前にトナー像を保持したウェブ3の予熱を行う接触加熱板4、印刷停止時等に接触加熱板4上に停止したウェブ3の過熱による含水率の低下を防止するために、ウェブ3に外気を吹き付けるウェブ冷却ファン9、ウェブ冷却ファン9から吹き付けられる風がサーミスタセンサ7や加熱ローラ1に当らないようにする為のカバー8、加熱ローラ1や接触加熱板4の熱により発生した水蒸気や気化したオイルを定着装置内から排気する為に定着装置上部に設置された排気ファン10、排気ファン10にて排気する気化したオイルを回収するフィルタ11などの構成を有している。
【0036】
カバー8は、接触加熱板4上のウェブ3の温度調節のためのウェブ冷却ファン9からの風がサーミスタセンサ7や加熱ローラ1に当らないようにするため、サーミスタセンサ7及び加熱ローラ1を覆うように設けられている。カバー8には、接触加熱板4からの熱輻射によるサーミスタセンサ7や加熱ローラ1への影響や、接触加熱板4で加熱されウェブ3から蒸発した水分を含む空気のオイル除去ブレード12、サーミスタセンサ7、及び加熱ローラ1への影響を防ぐ機能もある。この為、図1に示すように、カバー8は、風遮蔽板及び熱遮蔽板を兼ね、ウェブ冷却ファン9及び接触加熱板4の方向からサーミスタセンサ7と加熱ローラ1を遮蔽するように配置されている。
【0037】
排気ファン10は、定着装置101の上部に設置され、加熱ローラ1や接触加熱板4の熱により上昇してきた水蒸気や気化したオイルを排気している。加熱ローラ1やサーミスタセンサ7が、排気ファン10による風の影響を強く受けると、加熱ローラ1の温度制御が不安定になるため、排気ファン10は、加熱ローラ1の周りの空気の流れを大きく変化させない配置や風量で排気している。
【0038】
図1中において、太い矢印は空気の流れを示している。定着装置101においては、排気ファン10により装置内から水蒸気、気化したオイル等を排気ファン10により排気している。オイル除去ブレード12の裏面側(加熱ローラ1の回転方向の下流側の面側)付近からカバー8までの空間には、加熱ローラ1からオイルが気化してくる。定着装置101においては、この気化したオイルやウェブから発生した水蒸気の滞留を防止するために、オイル除去ブレード12に複数の通気用の開口13が設けられている。気化したオイルや水蒸気を含む空気は、オイル除去ブレード12の開口13を通って、排気ファン10により排気される。開口13の大きさやオイル除去ブレード12上の配置により、オイル除去ブレード12の裏面側付近の空気の排気量を調整すれば、サーミスタセンサ7への空気の流れの影響防止と、オイル除去ブレード12の裏面へのオイル付着の防止を達成できる。
【0039】
なお、オイル除去ブレード12の裏面側付近の空気の滞留を防ぐ方法として、カバー8に開口を設ける方法、又はカバー8の内側に吸引ダクトを設ける方法なども想定される。しかし、カバー8はサーミスタセンサ7がウェブ冷却ファン9より印刷停止時に、接触加熱板4上に停止したウェブ3の含水率低下防止のために吹き付けている風の影響を受け、加熱ローラ1の温度制御が不安定になるのを防止している。また、加熱ローラ1の温度低下を防ぐために設置されているため、カバー8に開口を設けることによりカバー8の効果が低減してしまう。また、排気ファン10の排気する風量を増加させることも考えられるが、サーミスタセンサ7への風の影響を考慮すると難しく、加熱ローラ1の熱による空気の上昇と加熱ローラ1の周りの空気の流れに影響を与え易くなり好ましくない。
【0040】
図2に本発明に係るオイル除去ブレード12の形状例を示す。図5に示した従来のオイル除去ブレード12と比較しながら、本発明に係るオイル除去ブレード12の説明をする。通常、オイル除去ブレード12は、加熱ローラ1の長さとほぼ同じで、例えば、加熱ローラ1の(ローラ部の)長さが全長520mmであれば、オイル除去ブレード12の長さaもほぼ520mmか若干長めとする。図2及び図5に示した例では、いずれのオイル除去ブレード12も板金製の基部12aの幅bは13.4mm、厚さは0.8mmであり、ゴム製のエッジ部の幅は約5mmである。
【0041】
オイル除去ブレード12の基部12aには、14箇の開口13が等間隔で配置されている。開口13の長さcは27mm、高さdは5mmとしている。通常、開口13は、オイル除去ブレード12の基部12aに等間隔で配置されていればよいが、排気ファン10の位置などを勘案して、オイル除去ブレード12の裏面付近のデッドスペースの空気が均等に排気されるように開口13の配置を決めればよい。また、開口13の形状や大きさは、どのようなものでもよく、図2に示すような楕円形、長方形、円形などとすればよい。オイル除去ブレード12の基部12aをパンチングメタルや格子状の開口を有する板金などで作製したものでもよい。
【0042】
上述のように、オイル除去ブレード12の基部12aに設ける開口13は、通気量が適正なことが望まれる。通気量が少なすぎると、オイル蒸気や水蒸気が十分排気されず、オイル除去ブレード12などに凝縮付着する。図2に示した上記のオイル除去ブレード12の開口率は、26%である。なお、開口率とは、オイル除去ブレード12の基部12aの面積に対する開口13の面積の比率である。最適な開口率は、排気ファン10の配置や吸引能力、オイル除去ブレード12、サーミスタセンサ7、カバー8などの配置、加熱ローラ1の運転温度などによっても変化する。
【0043】
本発明の定着装置101においては、排気ファン10は、加熱ローラ1の熱によりウェブ3から発生する水蒸気や、加熱ローラ1からの気化オイルを含む空気の排気用として設けられているが、オイル除去ブレード12の開口13からの排気についても、開口13から排気ファン10への空気流路が効率的に確保される構成とすることが好ましい。例えば、排気ファン10を開口13の上部に設け、途中に障害物がなく開口13から見通せる構成とすることが好ましい。
【0044】
このような本発明の定着装置101においては、オイル除去ブレード12の裏面上でのオイルの再液化を防止することが出来、オイル除去ブレード12裏面からの加熱ローラ1へのオイル垂れがなくなり、ウェブ3にオイル筋を発生させることがなくなるため、ウェブ3への安定した印刷品質を得ることが出来る。
【0045】
本実施の形態では、オイル除去ブレード12の基部12aの幅方向に一定の間隔で長さ27mm、高さ5mmの開口13を14箇所設けたが、加熱ローラ1の温度が高く、水蒸気や気化したオイルの発生量が多い場合には、排気をスムーズにするために、開口13の広さの拡大、個数の増加等を行えばよい。開口13の長さを拡大した場合には、開口13の個数を減少させる必要があり、開口13の個数を増加した場合には開口13の長さを縮小する必要がある。そのため、開口13のオイル除去ブレード12の板金部の面積比で26%以上を確保するためには、開口13の高さの拡大により容易に実現できる。また、オイル除去ブレード12の基部12a板金の厚みを増し強度を向上させて、加熱ローラ1へのオイル除去ブレード12のゴム部の押し付けが不均一にならないように開口13の開口率を増加させることができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、図3に示すように、オイル除去ブレード12の加熱ローラ1の回転方向下流側に、第1の実施の形態で設置していたサーミスタセンサ7とカバー8が配置されていない。そして、ウェブ冷却ファン9も備えていない。この為、オイル除去ブレード12は、加熱ローラ1表面のうちオイルウェブ5の設置部15の下流側の加熱ローラ1と加圧ローラ2のニップ部14までの間に配置することができる。例えば、図3の符号(A),(B),(C)として示した位置のいずれかにオイル除去ブレード12を設置することができる。なお、図3においては、オイル除去ブレード12を符号(C)の位置に設置した場合、オイル除去ブレード12とウェブ3とが接触している図となっているが、実際には、接触加熱板4とウェブ3の搬送経路を下方に移動させ、場合によってはニップ部14を接触加熱板4の移動に合わせてオイルウェブ5側に移動させて、オイル除去ブレード12とウェブ3とが接触しないように配置する。
【0047】
オイル除去ブレード12は、符号(A),(B),(C)のどの位置にあっても、図3に示すように、エッジ部12bの先端が加熱ローラ1の回転方向に向かい合うように設置されているので、オイル除去ブレード12の裏面側と加熱ローラ1の表面が作る空間は、開口13がないと空気が滞留し易い空間である。しかし、この実施の形態においては、オイル除去ブレード12に開口13が設けられているので、上記空間に空気が滞留することがない。この為、加熱ローラ1の表面から上記空間に蒸発したオイル上記は、滞留することなくオイル除去ブレード12付近から拡散していく。
【0048】
なお、オイル除去ブレード12が符号(A),(B),(C)のどの位置にあっても、仮にオイル除去ブレード12に開口13が設置されていないと、オイル垂れによるウェブ3の汚れが問題となる。開口13が設置されていないオイル除去ブレード12が、図4における符号(A)又は(B)の位置に設置された場合は、オイル除去ブレード12の裏面に凝縮付着したオイルは、基部12a側からエッジ部12bの先端側に流れ、加熱ローラ1の表面にたれる。一方、基部12a側の方がエッジ部12b側より低くなる形態である符号(C)の位置にオイル除去ブレード12が設置された場合は、オイル除去ブレード12の裏面に凝縮付着したオイルは、基部12a側に流れ、ウェブ3上に直接落下する恐れがある。いずれにしても、最終的にはウェブ3上にオイルが付着して、ウェブ3の印刷品質を低下させる。
【0049】
本発明の定着装置102及び本発明のオイル除去ブレード12は、気化したオイルを空気とともに開口13から排気してしまうので、オイル除去ブレード12の裏面上にオイルを凝縮させないため、オイル除去ブレード12の裏面からのオイル垂れの問題が起こらず、ウェブ3の印刷品質を低下させない。
【符号の説明】
【0050】
1 :加熱ローラ
2 :加圧ローラ
3 :ウェブ
4 :接触加熱板
5 :オイルウェブ(離型剤塗布装置)
6 :オイル供給機構(離型剤供給機構)
7 :サーミスタセンサ
8 :カバー(熱遮蔽板、風遮蔽板)
9 :ウェブ冷却ファン
10 :排気ファン
11 :フィルタ
12 :オイル除去ブレード(離型剤除去ブレード)
12a :基部
12b :エッジ部
13 :開口
14 :ニップ部
15 :オイルウェブの設置部
101 :定着装置
102 :定着装置
103 :定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開平05−035141号公報
【特許文献2】特開平10−039669号公報
【特許文献3】特開平11−065344号公報
【特許文献4】特開2002−365946号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着のトナー像を保持したウェブを加熱する加熱ローラと、前記加熱ローラに当接してニップ部を形成する加圧ローラとを備え、前記ニップ部で前記ウェブを挟持搬送しながら、前記未定着のトナー像を前記ウェブに定着させる定着装置であって、
前記加熱ローラの周囲には、前記加熱ローラに接触し、前記加熱ローラ表面から残トナーを除去し、前記加熱ローラ表面に離型剤を供給するオイルウェブと、前記オイルウェブで供給した過剰の離型剤を前記加熱ローラ表面から除去するオイル除去ブレードを備え、
前記オイル除去ブレードは、周辺の空気を流通させる開口を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加熱ローラの周囲には、前記加熱ローラ表面の温度を測定するサーミスタセンサを備え、
前記オイル除去ブレードは、前記加熱ローラ表面の前記オイルウェブと前記サーミスタセンサの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記未定着のトナー像を保持したウェブを、トナーの定着前に予備加熱する接触加熱板と、
前記接触加熱板と前記サーミスタセンサの間に配置され、前記接触加熱板から前記サーミスタセンサに伝達する熱を遮る熱遮蔽板を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記接触加熱板により加熱されたウェブを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンから前記サーミスタセンサに向かう風を遮る風遮蔽板を備えることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱ローラ周辺の空気を排気する排気ファンを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記オイル除去ブレードは、前記加熱ローラと離接可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【請求項8】
加熱ローラと、前記加熱ローラに当接してニップ部を形成する加圧ローラと、加熱ローラ表面に離型剤を供給するオイルウェブを備え、前記ニップ部に未定着のトナー像を保持したウェブを挟持搬送しながら、前記トナー像を前記ウェブに定着させる定着装置に備えられ、前記オイルウェブで供給された過剰の離型剤を前記加熱ローラ表面から除去するオイル除去ブレードであって、
周囲の空気を流通させる開口を有することを特徴とするオイル除去ブレード。
【請求項9】
前記オイル除去ブレードは、前記加熱ローラと離接可能であることを特徴とする請求項9に記載のオイル除去ブレード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−191351(P2011−191351A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55356(P2010−55356)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】