説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】レーザ方式の定着装置において、小型で且つ簡単な構造で、エネルギー効率が高く、長寿命化を実現できる定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】レーザ照射部15cにおいて用紙P上の未定着トナー画像にレーザ光を照射し、未定着トナー画像を溶融して用紙P上に定着させるレーザヘッド15aと、用紙を搬送する用紙搬送装置15bとを備えた定着ユニット15において、未定着トナー画像を形成する画像情報に基づいてレーザヘッド15aのレーザ出力を制御するレーザ出力制御機能151aと、画像情報に基づいて用紙搬送装置15bの用紙搬送速度を制御する用紙搬送速度制御機能151bとを具備する制御装置151を備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に係り、特に、レーザ光照射手段により定着する定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、熱ローラ定着方式の定着装置が多用されている。熱ローラ定着方式の定着装置は、互いに圧接されたローラ対(定着ローラおよび加圧ローラ)を備え、このローラ対の両方あるいはいずれか一方の内部に配置されたハロゲンヒータ等からなる加熱手段によりローラ対を所定の温度(定着温度)に加熱した後、未定着トナー画像が形成された記録用紙(以下、単に「用紙」と称する。)をローラ対の圧接部(定着ニップ部)に給紙し、圧接部を通過させることで熱と圧力によりトナー画像の定着を行うようになっている。
【0003】
しかしながら、このような従来の熱ローラ定着方式の定着装置においては、定着ローラや加圧ローラを定着可能な温度に昇温させるためのウォームアップ時間が長いため、待機時においても定着ローラや加圧ローラを予熱しておく必要があり、消費電力が増大するといった課題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、用紙上に形成された未定着トナー像にレーザビームを照射し、トナー像を溶融することで定着を行うレーザ方式の定着装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、従来のレーザ定着装置は、レーザ素子によるエネルギー変換効率(出力エネルギー/投入エネルギー)が50(%)以下と低く、半分以上のエネルギーがレーザ素子における自己発熱となってしまうため、エネルギー効率が低くなるという課題がある。また、自己発熱によりレーザ素子の温度が高くなると、エネルギー変換効率が更に低下したり、レーザ素子の寿命が急激に短くなるといった課題があった。
【0006】
この課題に対応するために、レーザ素子を冷却するための冷却手段を設ける必要があり、その結果、装置が大型化すると同時に、構造が複雑化し、コスト高になってしまうといった課題があった。
【0007】
そこで、このような課題を解決するために、記録媒体上のトナー画像が形成された部分にのみ選択的にレーザを照射するようにした定着装置が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3016685号公報
【特許文献2】特開平2−221984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の定着装置のように、トナー画像に対し選択的にレーザを照射したとしても、例えば、画像の印字率(面積率)が100(%)になるような高印字率の画像に対しては、レーザを100(%)でONしつづけなければならず、このような画像パターンの原稿に対しては依然としてレーザ素子が過剰に発熱してしまうといった問題がある。
【0010】
更に、高速印字に対応した画像形成装置に適用しようとした場合、レーザの定格出力として非常に大きなものが必要となり(例えば、100(W)級のレーザ)、レーザ装置自体が非常に高価で且つ大型化してしまうといった問題もある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、レーザ方式の定着装置において、小型で且つ簡単な構造で、エネルギー効率が高く、長寿命化を実現できる定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、レーザ照射部において記録媒体上の未定着トナー画像にレーザ光を照射し、前記未定着トナー画像を溶融して前記記録媒体上に定着させるレーザ照射手段と、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段とを備えた定着装置において、前記未定着トナー画像を形成する画像情報に基づいて前記レーザ照射手段のレーザ出力を制御するレーザ出力制御手段と、前記画像情報に基づいて前記記録媒体搬送手段の記録媒体搬送速度を制御する速度制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、前記レーザ出力制御手段により、前記レーザ照射部における未定着トナー画像の有無によりレーザ出力を制御することが好ましい。例えば、レーザ照射部に画像がある場合をON,画像の無い場合をOFFとするように制御するものであってもよい。
【0014】
また、本発明は、前記レーザ出力制御手段により、前記レーザ照射部に位置する未定着トナー画像の画像濃度(例えば、ドット印字率あるいは画像の空隙率)に基づきレーザ出力を制御することが好ましい。例えば、レーザ照射部にある画像濃度(ドット印字率)が低い場合は、レーザ出力を上げるように制御し、画像濃度の高い場合は、レーザ出力を下げるように制御してもよい。
【0015】
また、本発明は、前記レーザ出力制御手段により、前記レーザ照射部に位置する未定着トナー画像の空隙率が大きくなるほどレーザ出力を大きくするとともに、前記レーザ出力を、前記未定着トナー画像の空隙率が0(%)の場合のレーザ出力に対して最大で約2倍以下になるように制御することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の印字率に応じて記録媒体搬送速度を制御することが好ましい。例えば、前記原稿の印字率が高い場合は、記録媒体搬送速度を減速するように制御してもよい。
【0017】
また、本発明は、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の印字率にほぼ反比例して記録媒体搬送速度を制御することが好ましい。例えば、前記原稿の印字率が2倍の時には、記録媒体搬送速度を1/2にするように制御してもよい。
【0018】
また、本発明は、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の中の最も低い画像濃度の情報に基づいて記録媒体搬送速度を制御することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の中の最も低い画像濃度にほぼ比例して記録媒体搬送速度を制御することが好ましい。例えば、前記原稿の画像濃度が1/2の時は、記録媒体搬送速度を1/2にするように制御してもよい。
【0020】
また、本発明は、前記レーザ照射手段を、複数の半導体レーザ素子を記録媒体搬送方向と直交する方向にアレイ状に並べたレーザアレイからなるものとすることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、前記未定着トナー画像として、カラートナーにより形成されるトナー画像を含み、前記カラートナーには、赤外線吸収剤が含まれていることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、前記レーザ照射手段の構成として、単一のレーザ光源(例えば、レーザ素子)と、前記レーザ光源からのレーザ光を記録媒体搬送方向に対して記録媒体に沿って垂直方向(主走査方向)に走査する走査光学系と、レーザ光を集光するレンズとを備えることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、前記レーザ照射手段のレーザ光源の波長を5.5〜11(μm)とすることが好ましい。より好ましくは、前記レーザ光源の波長を9〜11(μm)とするものであってもよい。
【0024】
また、本発明は、前記レーザ照射手段のレーザ光源を、COレーザとすることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、前記レーザ照射手段の構成として、該レーザ照射手段の温度を検出する温度検出手段を備え、前記速度制御手段により、前記温度検出手段により検出された検出結果、すなわち、前記レーザ照射手段の温度に基づいて、記録媒体搬送速度を制御することが好ましい。例えば、印字率が高くてもレーザ素子の温度が低ければ、記録媒体搬送速度を通常より速くするように制御する。
【0026】
また、本発明は、表面に静電潜像が形成される感光体ドラムと、感光体ドラム表面を帯電させる帯電装置と、感光体ドラム表面に静電潜像を形成する露光装置と、感光体ドラム表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、感光体ドラム表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、前記定着装置として、請求項1乃至13のうちの何れか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、レーザ照射部において記録媒体上の未定着トナー画像にレーザ光を照射し、前記未定着トナー画像を溶融して前記記録媒体上に定着させるレーザ照射手段と、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段とを備えた定着装置において、前記未定着トナー画像を形成する画像情報に基づいて前記レーザ照射手段のレーザ出力を制御するレーザ出力制御手段と、前記画像情報に基づいて前記記録媒体搬送手段の記録媒体搬送速度を制御する速度制御手段とを備えることで、画像情報に対応した最適なレーザ照射を行うことができるため、不要なレーザ素子の発熱を抑制することができる。更に、画像情報からレーザ素子の過剰発熱が予想される場合には、記録媒体搬送速度を制御することにより、レーザ素子の過剰発熱を抑制することができる。これにより、小型で且つ簡単な構造で、エネルギー効率が高く、長寿命化を図った定着装置を実現できる。
【0028】
また、本発明によれば、前記レーザ出力制御手段により、前記レーザ照射部における未定着トナー画像の有無によりレーザ出力を制御することで、画像のある部分のみレーザを照射することにより、レーザ素子の無駄な発熱を抑制することができる。
【0029】
また、本発明によれば、前記レーザ出力制御手段により、前記レーザ照射部に位置する未定着トナー画像の画像濃度(例えば、ドット印字率あるいは画像の空隙率)に基づきレーザ出力を制御することで、レーザ素子の無駄な発熱を抑制することができる。すなわち、ハーフトーン画像のような濃度の低い(ドット印字率の低い、あるいは画像の空隙率の高い)画像はソリッド画像のような濃度の高い(ドット印字率の高い、あるいは画像の空隙率の低い)画像に比べて記録媒体に逃げる熱の割合が大きく、定着エネルギーが多く必要となるため、画像濃度に対応してレーザ出力を制御することで、レーザ素子の無駄な発熱を抑制することができる。
【0030】
また、本発明によれば、前記レーザ出力制御手段により、前記レーザ照射部に位置する未定着トナー画像の空隙率が大きくなるほどレーザ出力を大きくするとともに、前記レーザ出力を、前記未定着トナー画像の空隙率が0(%)の場合のレーザ出力に対して最大で約2倍以下になるように制御することで、レーザ素子の無駄な発熱を抑制することができる。すなわち、ソリッド画像に比べてハーフトーン画像では十分な定着性を確保するのに必要なエネルギー密度が高く、最大で2倍のエネルギー密度が必要であることから、この関係に基づいてレーザ出力を制御することで、レーザ素子の無駄な発熱を抑制することができる。
【0031】
また、本発明によれば、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の印字率に応じて記録媒体搬送速度を制御することで、レーザ素子の発熱を抑制することができる。例えば、原稿の印字率が100(%)の場合、レーザ素子を100(%)ONし続けなければならず、依然としてレーザ素子が過剰に発熱してしまうため、前記原稿の印字率に応じて、例えば、印字率が高い場合は記録媒体搬送速度を減速するように制御することで、レーザ素子の発熱を抑制することができる。
【0032】
また、本発明によれば、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の印字率にほぼ反比例して記録媒体搬送速度を制御することで、原稿の印字率が変わってもレーザ素子の過剰な発熱を抑制することができる。すなわち、原稿の印字率とレーザの消費電力は比例関係にあるため、記録媒体搬送速度とレーザの消費電力も比例関係にあることから、例えば、前記原稿の印字率が2倍の時には、記録媒体搬送速度を1/2にするように制御することで、レーザの消費電力を常に一定に維持することができ、原稿の印字率が変わってもレーザ素子の過剰な発熱を抑制することができる。
【0033】
また、本発明によれば、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の中の最も低い画像濃度の情報に基づいて記録媒体搬送速度を制御することで、レーザ素子の発熱を抑制することができる。例えば、ハーフトーン画像が多く含まれるような原稿の場合、ソリッド画像(ベタ画像)のみの原稿に比べて、レーザ出力を約2倍にUPした状態でONし続けなければならず、依然としてレーザ素子が過剰に発熱してしまう。そこで、原稿の中の最も低い画像濃度の情報に応じて記録媒体搬送速度を制御することでレーザ素子の発熱を抑制することができる。
【0034】
また、本発明によれば、前記速度制御手段により、トナー画像が形成される原稿の中の最も低い画像濃度にほぼ比例して記録媒体搬送速度を制御することで、レーザの消費出力を常に一定に維持することができ、原稿の画像濃度が変わってもレーザ素子の過剰な発熱を抑制することができる。すなわち、画像濃度とレーザの消費電力は反比例関係にあり、記録媒体搬送速度とレーザの消費電力は比例関係にあることから、原稿の中の最も低い画像濃度にほぼ比例して記録媒体搬送速度を制御することにより、例えば、前記原稿の画像濃度が1/2の時は、記録媒体搬送速度を1/2にするように制御することにより、レーザ素子の消費出力を常に一定に維持することができ、原稿の画像濃度が変わってもレーザ素子の過剰な発熱を抑制することができる。
【0035】
また、本発明によれば、前記レーザ照射手段を、複数の半導体レーザ素子を記録媒体搬送方向と直交する方向にアレイ状に並べたレーザアレイからなるものとすることで、ハイパワーで高コストのレーザを単独で用いる場合と比較して、低コスト化を図ることができ、レーザ光を走査・集光させる必要もないため光学系を廃止できるので、省スペース化が図れるとともに光学系でのエネルギー損失を無くすことができる。また、省スペース化により更に大きなサイズのヒートシンクを取り付けることができるので、レーザ素子の冷却性能を向上させることができる。
【0036】
また、本発明によれば、前記未定着トナー画像として、カラートナーにより形成されるトナー画像を含み、前記カラートナーには、赤外線吸収剤が含まれていることで、モノクロトナーと同様な光吸収率が実現できるので、定着不良を解消することができる。例えば、半導体レーザの場合、レーザ光の波長が780(nm)前後であり、モノクロトナーでは光吸収率が高く(約60(%))、カラートナーでは光吸収率が低く(10(%)前後)なるが、カラートナーに赤外線吸収剤を添加することで、光吸収率をモノクロトナー並みに向上させることができる。
【0037】
また、本発明によれば、前記レーザ照射手段の構成として、単一のレーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を記録媒体搬送方向に対して記録媒体に沿って垂直方向に走査する走査光学系と、レーザ光を集光するレンズとを備えることで、レーザ光をトナー画像部のみに、より高精度(高精細)に照射することができるため、無駄なエネルギー消費がなく、レーザ素子の発熱を抑制することができる。
【0038】
また、本発明によれば、前記レーザ照射手段のレーザ光源の波長を、5.5〜11(μm)とすることで、半導体レーザの光源を用いる場合に比べて、記録媒体がレーザ光を吸収するようになるため、トナー画像が形成されずに記録媒体が露出している部分では、記録媒体の表面が発熱することにより、トナーから記録媒体に逃げる熱が減少する。その結果、レーザ出力が一定であっても、画像濃度に関係なく一定の定着性を確保することができる。
【0039】
また、本発明によれば、前記レーザ照射手段のレーザ光源を、CO(炭酸ガス)レーザとすることで、半導体レーザの光源を用いる場合に比べて、記録媒体がレーザ光を吸収するようになるため、トナー画像がなく記録媒体が露出している部分では、記録媒体の表面が発熱することにより、トナーから記録媒体に逃げる熱が減少する。その結果、レーザ出力が一定であっても、画像濃度に関係なく一定の定着性を確保することができる。
【0040】
また、本発明によれば、前記レーザ照射手段として、該レーザ照射手段の温度を検出する温度検出手段を備え、前記速度制御手段により、前記温度検出手段により検出された検出結果、すなわち、前記レーザ照射手段の温度に基づいて、記録媒体搬送速度を制御することで、より最適な制御を行うことができる。例えば、印字率が高くてもレーザ素子の温度が低ければ、記録媒体搬送速度を通常より速くするように制御することができる。
【0041】
また、本発明によれば、表面に静電潜像が形成される像担持体と、像担持体表面を帯電させる帯電装置と、像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、像担持体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、前記定着装置として、請求項1乃至13のうちの何れか一項に記載の定着装置を備えたことで、画像情報に対応した最適なレーザ照射を行うことができるため、不要なレーザ素子の発熱を抑制することができる。これにより、小型で且つ簡単な構造で、エネルギー効率が高く、長寿命化を図った画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る定着ユニットが用いられた画像形成装置の全体の構成を示す説明図である。
【図2】前記定着ユニットの構成を示す説明図である。
【図3】前記定着ユニットを構成するレーザヘッドの構成を示す正面から見た説明図である。
【図4】前記レーザヘッドの構成を示す側面から見た説明図である。
【図5】前記定着ユニットにおいて画像情報に基づきレーザヘッド及び用紙搬送装置の動作を制御する制御システムの構成を示すブロック図である。
【図6】前記定着ユニットにおいて画像情報及びレーザヘッドの温度に基づきレーザヘッド及び用紙搬送装置の動作を制御する制御システムの構成を示すブロック図である。
【図7】比較例における原稿の印字率及びドット印字率の条件とレーザビームのエネルギー密度及び平均消費電力の関係を示す表である。
【図8】実施例1−1における原稿の印字率及びドット印字率の条件とレーザビームのエネルギー密度及び平均消費電力の関係を示す表である。
【図9】実施例1−2における原稿の印字率及びドット印字率の条件とレーザビームのエネルギー密度及び平均消費電力の関係を示す表である。
【図10】実施例1−3におけるレーザヘッドに取り付けた温度センサの検知温度と用紙搬送速度との関係を示す表である。
【図11】前記定着ユニットにおける画像の空隙率と必要エネルギー密度との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の第2実施形態に係る定着ユニットを構成するレーザヘッドの構成を示す説明図である。
【図13】半導体レーザとCOレーザとによるドット印字率に対する必要エネルギー密度を求めた実験結果を示す表である。
【図14】用紙表面におけるレーザ光の波長と吸光度との関係を示すグラフである。
【図15】半導体レーザとCOレーザとによるモノクロトナーとカラートナー(イエロー、マゼンタ、シアン)に対する必要エネルギー密度を求めた実験結果を示す表である。
【図16】各色トナーにおけるレーザ光の波長と吸光度との関係を示すグラフである。
【図17】第2実施形態の定着ユニットにおける原稿の印字率及びドット印字率の条件とレーザビームのエネルギー密度及び平均消費電力の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は発明を実施する形態の一例であって、本発明の第1実施形態に係る定着ユニットが用いられた画像形成装置の全体の構成を示す説明図である。
なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0044】
第1本実施形態は、図1に示すように、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム101と、感光体ドラム101表面を帯電させる帯電ユニット(帯電装置)103と、感光体ドラム101表面に静電潜像を形成する光学系ユニット(露光装置)Eと、感光体ドラム101表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像ユニット(現像装置)102と、感光体ドラム101表面のトナー像を中間転写ベルト11に転写する一次転写ユニット(転写装置)13と、中間転写ベルト11に一時的に転写されたトナー像を用紙に転写する二次転写ユニット(転写装置)14と、前記転写されたトナー像を用紙に定着させる定着ユニット(定着装置)15とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置100において、定着ユニット15として、本発明に係る定着装置の構成を採用したものである。
【0045】
まず、画像形成装置100の全体構成について説明する。
画像形成装置100は、例えば、ネットワーク上の各端末装置から送信される画像データ等に基づいて、所定の用紙に対して多色又は単色の画像を形成する。
画像形成装置100は、図1に示すように、光学系ユニットE、4組の可視像形成ユニットpa,pb,pc,pd、中間転写ベルト11、二次転写ユニット14、定着ユニット15、内部給紙ユニット16及び手差し給紙ユニット17とを備えている。
【0046】
可視画像形成ユニットpaは、トナー像担持体となる感光体ドラム101aの周囲に、現像ユニット102a、帯電ユニット103a、クリーニングユニット104a及び一次転写ユニット13aが配置されている。現像ユニット102aには、ブラック(B)のトナーが収容されている。一次転写ユニット13aは、中間転写ベルト11を介して感光体ドラム101a上に配置されている。
【0047】
帯電ユニット103aとしては、感光体ドラム101a表面を一様に、またオゾンを極力発生させることなく帯電するために、帯電ローラ方式を採用している。
【0048】
他の3組の可視像形成ユニットpb,pc,pdは、可視画像形成ユニットpaと同様の構成であり、各可視像形成ユニットの現像ユニット102b,102c,102dには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナーが収容されている。
【0049】
光学系ユニットEは、レーザ光源4からの照射光を4組の感光体ドラム101a,101b,101c,101dに照射するように配置されている。
【0050】
詳しくは、光学系ユニットEは、メモリから読出した画像データ、または外部の装置から転送されてきた画像データに応じてレーザ光を出射するレーザ光源4、レーザ光を等角速度偏向するポリゴンミラー、等角速度で偏向されたレーザ光が感光体ドラム101上において等角速度で偏向されるように補正するf−θレンズなどから構成されている。そして、帯電された感光体ドラム101a,101b,101c,101dを入力された画像データに応じて露光することにより、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成するものである。
【0051】
中間転写ベルト11は、用紙搬送方向に沿って並設された可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdに沿って、テンションローラ11a,11bにより撓むことなく配置されている。中間転写ベルトにおいて、テンションローラ11b側には廃トナーボックス12が当接配置され、テンションローラ11a側には二次転写ユニット14が当接配置されている。
【0052】
定着ユニット15は、用紙上の未定着トナー画像にレーザ光を照射して該未定着トナー画像を溶融して用紙上に定着させるレーザヘッド(レーザ照射手段)15aと、用紙を搬送する用紙搬送装置(記録媒体搬送手段)15bとを備え、レーザ光によりトナー像を用紙に定着するレーザ定着装置である。この定着ユニット15は、二次転写ユニット14の用紙搬送方向下流側に配置されている。
【0053】
光学系ユニットEの下方には、内部給紙ユニット16が設けられ、装置本体の外側面には手差し給紙ユニット17が設けられている。画像形成装置100の上部には排紙トレイ18が設けられている。この排紙トレイ18は、印刷済みの用紙をフェイスダウンで載置するためのものである。
【0054】
また、画像形成装置100には、内部給紙ユニット16の用紙及び手差し給紙ユニット17の用紙を二次転写ユニット14や定着ユニット15を経由させて排紙トレイ18に案内するための用紙搬送路Sが設けられている。
【0055】
用紙搬送路Sには、給紙ローラ16a,17a、レジストローラ19、二次転写ユニット14、定着ユニット15、搬送ローラr等が配置されている。
【0056】
搬送ローラrは、用紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。給紙ローラ16aは、内部給紙ユニット16の端部に備えられ、内部給紙ユニット16から用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。給紙ローラ17aは、手差し給紙ユニット17の近傍に備えられ、手差し給紙ユニット17から用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。
【0057】
レジストローラ19は、用紙搬送路Sを搬送されている用紙を一旦保持し、中間転写ベルト11上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を二次転写ユニット14の転写部に搬送するものである。
【0058】
次に、用紙搬送路Sによる用紙搬送動作について説明する。
画像形成装置100には、図1に示すように、上述したように予め用紙を収納する内部給紙ユニット16及び少数枚の印字を行う場合等に使用される手差し給紙ユニット17が配置されている。これら両ユニットには各々給紙ローラ16a,17aが配置され、これら給紙ローラ16a,17aによって用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに供給するようになっている。
【0059】
片面印字の場合は、内部給紙ユニット16から搬送される用紙は、用紙搬送路S中の搬送ローラrによってレジストローラ19まで搬送され、レジストローラ19により用紙の先端と中間転写ベルト11上の積層されたトナー像の先端とが整合するタイミングで二次転写ユニット14の転写部に搬送される。転写部では中間転写ベルト11に形成されたトナー像が用紙上に転写され、このトナー像は定着ユニット15にて用紙上に定着される。その後、用紙は排紙ローラ18aから排紙トレイ18上に排出される。
【0060】
また、手差し給紙ユニット17から搬送される用紙は、複数の搬送ローラrによってレジストローラ19まで搬送される。それ以降の用紙搬送動作は、上述した内部給紙ユニット16から供給される用紙と同様の経過を経て排紙トレイ18に排出される。
【0061】
一方、両面印字の場合は、上記のようにして片面印字が終了して定着ユニット15を通過した用紙は、排紙ローラ18aに搬送され、後端が排紙ローラ18aにてチャックされる。次に、用紙は、排紙ローラ18aが逆回転することによって搬送ローラrに導かれ、再びレジストローラ19を経て裏面印字が行われた後に、排紙トレイ18に排出される。
【0062】
次に、画像形成装置100における画像形成の行程について説明する。
可視像形成ユニットpa,pb,pc,pdにおいて行われる画像形成は同様に行われるため、可視像形成ユニットpaを例に挙げて説明する。
【0063】
可視像形成ユニットpaでは、感光体ドラム101a表面を帯電ユニット103aにより一様に帯電した後、光学系ユニットEにより感光体ドラム101a表面を画像情報に応じてレーザ露光することにより静電潜像を形成する。
【0064】
その後、現像ユニット102aにより感光体ドラム101a上の静電潜像に基づきトナー像を現像する。感光体ドラム101a上で顕像化されたトナー画像は、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された一次転写ユニット13aにより中間転写ベルト11上に転写される。
【0065】
他の3組の可視像形成ユニットpb,pc,pdにおいても、可視像形成ユニットpaと同様に画像形成が行われて、トナー画像が順次中間転写ベルト11上で重ねて転写されるようになっている。
【0066】
中間転写ベルト11上に形成されたトナー画像は、二次転写ユニット14において、内部給紙ユニット16の給紙ローラ16aまたは手差し給紙ユニット17の給紙ローラ17aにより給紙され、二次転写ユニット14において、トナー画像とは逆極性のバイアス電圧が印加された用紙に転写される。
【0067】
トナー画像が転写された用紙は、定着ユニット15に搬送され、定着ユニット15においてレーザ照射により未定着トナー像が加熱されて用紙上に融着された後、排紙ローラ18aにより外部の排紙トレイ18上に排出される。
【0068】
次に、第1実施形態に係る特徴的な定着ユニット15の構成について図面を参照して詳細に説明する。
図2は第1実施形態に係る定着ユニットの構成を示す説明図、図3は前記定着ユニットを構成するレーザヘッドの構成を示す正面から見た説明図、図4は前記レーザヘッドの構成を示す側面から見た説明図である。
【0069】
定着ユニット15は、図2に示すように、レーザヘッド(レーザ照射手段)15aと、用紙搬送装置(記録媒体搬送手段)15bとを備えている。
【0070】
この定着ユニット15は、用紙Pの表面に形成された未定着トナー画像をレーザ光によって溶融させて用紙Pに定着させるものである。
具体的には、用紙搬送装置15b上のレーザ光が照射されるレーザ照射部15cに所定の定着速度と複写速度とにより未定着トナー像を担持した用紙が用紙搬送装置15bにより搬送され、レーザヘッド15aから照射されるレーザ光によってトナーが溶融することで定着が行われる。
図中の符号T1は未定着トナー、T2は定着したトナーをそれぞれ示すものである。
【0071】
本実施形態の画像形成装置100では、最大定着速度225(mm/sec)、最大複写速度50枚/分(A4横送り)であり、後述するように定着ユニット15における定着速度(複写速度)が画像パターンにより可変制御される。
【0072】
未定着トナー画像は、例えば、非磁性トナーを含む非磁性1成分現像剤、非磁性トナーおよびキャリアを含む非磁性2成分現像剤、磁性トナーを含む磁性現像剤などの現像剤に含まれるトナーで形成される。そして、カラートナー(イエロー,マゼンタ,シアン)はモノクロトナーに比べてレーザ光の光吸収率が低いことから、赤外線吸収剤を添加することでモノクロトナーと同じ光吸収率を確保している。
【0073】
カラートナーは、例えば、カラートナーのメインバインダーレジン100重量部に対して、赤外線吸収剤であるフタロシアニンが1重量部から5重量部が内添されたものが用いられている。また、フタロシアニン以外にポリメチン、シアニン、オニウム、ニッケル錯体等を用いることもできるし、併用することもできる。
【0074】
まず、用紙搬送装置15bについて説明する。
用紙搬送装置15bは、図2に示すように、搬送ベルト15b1、駆動ローラ15b2、従動ローラ15b3、吸着チャージャー15b4、分離チャージャー15b5、除電チャージャー15b6、分離爪15b7、駆動モータ(図示省略)を備えている。
【0075】
搬送ベルト15b1は、ベルト厚75(μm)、体積抵抗率1×1016(Ω・cm)のポリイミド樹脂からなり、駆動ローラ15b2と従動ローラ15b3に張架されている。駆動ローラ15b2は、図示しない駆動モータにより、任意の速度で回転駆動するよう構成されている。すなわち、搬送ベルト15b1は、駆動ローラ15b2の回転により矢印方向に任意の速度で搬送される。また、搬送ベルト15b1の周囲には、吸着チャージャー15b4、分離チャージャー15b5、除電チャージャー15b6、分離爪15b7が設けられている。
【0076】
このように構成された用紙搬送装置15bにおいて、二次転写ユニット14から搬送されてきた未定着トナー像が形成された用紙Pは、従動ローラ15b3上の搬送ベルト15b1と吸着チャージャー15b4の間に搬送される。
【0077】
従動ローラ15b3は、導電性材料で構成されて接地されている。この従動ローラ15b3に対向する位置で、吸着チャージャー15b4によって用紙に電荷を与えることで、用紙Pと搬送ベルト15b1とは、それぞれ誘電分極を起こす。これにより、用紙Pは、搬送ベルト15b1上に静電吸着される。
【0078】
用紙Pは、駆動ローラ15b2の駆動によってレーザ光が照射されるレーザ照射部15cに搬送される。レーザ照射部15cにおいて、用紙P上の未定着トナー像は、レーザヘッド15aによって画像情報に応じてレーザ照射されることにより溶融して用紙Pに定着する。
【0079】
そして、レーザ照射部15cにおいて、トナー画像の定着を終了した用紙Pは、搬送ベルト15b1に静電吸着された状態で、分離チャージャー15b5と駆動ローラ15b2との間に搬送される。
【0080】
駆動ローラ15b2は、導電性材料で構成され接地されている。分離チャージャー15b5によって用紙P上を除電することで、搬送ベルト15b1と用紙Pとの間の静電吸着力が弱まる。
【0081】
その状態で搬送ベルト15b1が、駆動ローラ15b2に沿って大きな曲率で回動することにより、用紙Pは、その先端部が搬送ベルト15b1から浮き上がり、さらに、分離爪15b7により完全に搬送ベルト15b1から分離される。用紙Pが剥離された搬送ベルト15b1は、除電チャージャー15b6により外面および内面が除電された後、再び用紙Pの吸着位置へ移動される。
【0082】
次に、特徴的なレーザヘッド15aの構成について説明する。
レーザヘッド15aは、レーザ照射部15cにおいて未定着トナー像にレーザ光を照射し、トナーを用紙に定着させるものである。
【0083】
レーザヘッド15aは、図2〜図4に示すように、複数の半導体レーザ素子15a1を長手方向(用紙搬送方向に対して直角方向)に一列状に配列した半導体レーザアレイ15aa、フォトダイオード15a2、シリコン基板15a3、ヒートシンク(放熱板)15a9及び温度センサ15a10を備えている。
【0084】
フォトダイオード15a2は、受光素子であるモニター用フォトダイオードである。シリコン基板15a3は、ワイヤーボンド線15a4により表面電極15a5に配線され、セラミック基板15a6に取付けられている。
【0085】
半導体レーザアレイ15aaは、波長780(nm)で、1個の定格出力が150(mW)の半導体レーザ素子15a1を1,000個配列したものが用いられている。この時、各半導体レーザ素子15a1の配列ピッチpは、0.3(mm)でレーザスポット径dも0.3(mm)となる。
【0086】
ヒートシンク15a9は、アルミニウム合金製でベースサイズが30(mm)×30(mm)、高さ20(mm)、熱抵抗1.6(℃/W)のヒートシンク((株)アルファ社製:UB30−20B)を計10個一列に並べたもの(トータルの熱抵抗0.16(℃/W))を用いている。
【0087】
更に、レーザヘッド15aの詳細構成について説明する。
レーザヘッド15aは、図3,図4に示すように、入力された信号によりレーザ光出力を可変したり、受光素子であるモニター用のフォトダイオード15a2からの信号によりレーザ出力を一定に保持したりするための制御回路(図示せず)とフォトダイオード15a2とがモノシリックに形成されたシリコン基板15a3に、半導体レーザ素子(チップ)15a1をマウントして、半導体レーザ素子15a1とシリコン基板15a3との間をワイヤーボンド線15a4等により電気的接続している。
【0088】
半導体レーザ素子15a1を具備したシリコン基板15a3は、セラミック基板15a6上に複数個取り付けられ、ワイヤーボンディング等によりセラミック基板15a6の表面電極15a5とシリコン基板15a3上の電極との間を電気的接続している。
【0089】
この複数個のレーザ装置(半導体レーザ素子15a1を具備したシリコン基板15a3)が並んだセラミック基板15a6には、ヒートシンク15a9と、複数個の集光光学系としての複数の凸レンズ15a8とが保持されたレンズホルダ15a7が設けられている。
【0090】
更に、図2に示すように、セラミック基板15a6上には、レーザヘッド15aの温度を測定するためのサーミスタからなる温度センサ15a10が取り付けられている。
【0091】
温度センサ15a10は、定着ユニット15の長手方向(用紙搬送方向に対して用紙Pの表面に沿って垂直方向)の略中央の位置に配置されている。そして、温度センサ15a10により検出された温度データに基づいて、制御回路(図示せず)により半導体レーザ素子15a1に印加する電圧(或いはレーザー素子15a1に流れる電流)を制御するようにされている。
以上のように、本実施形態に係るレーザヘッド15aが構成されている。
【0092】
尚、第1実施形態のレーザヘッド15aにおける複数の凸レンズ15a8とレンズホルダ15a7との構成は、各凸レンズ15a8を樹脂ホルダ等に組み込んだものよりも、樹脂によるレンズ及びレンズホルダを一体成形したものや、平板ガラスをレンズ状にイオン交換して製造される平板マイクロレンズなどのレンズアレイとしたものの方が、価格や工程、組立精度に関して有利である。
【0093】
また、第1実施形態では、レーザヘッド15aの構成として、凸レンズ15a8を用いているが、凸レンズ15a8等の集光光学系を無くし、平行光の状態でトナー画像にレーザを照射することも可能である。
【0094】
次に、第1実施形態の定着ユニット15の制御方法について図面を参照して説明する。
図5は第1実施形態の定着ユニットにおいて画像情報に基づきレーザヘッド及び用紙搬送装置の動作を制御する制御システムの構成を示すブロック図、図6は前記定着ユニットにおいて画像情報及びレーザヘッドの温度に基づきレーザヘッド及び用紙搬送装置の動作を制御する制御システムの構成を示すブロック図、図7〜図9は前記定着ユニットにおける原稿の印字率及びドット印字率の条件と、その条件の際に必要となるレーザビームのエネルギー密度及び平均消費電力の関係を示す表、図10はレーザヘッドに取り付けた温度センサの検知温度と用紙搬送速度との関係を示す表である。
【0095】
まず、定着ユニット15の制御システムの構成について説明する。
定着ユニット15の制御システムは、図5に示すように、レーザヘッド15aのレーザ出力を制御するレーザ出力制御機能(レーザ出力制御手段)151aと用紙搬送装置15bの用紙搬送速度を制御する用紙搬送速度制御機能(速度制御手段)151bとを有する制御装置151を備え、図示しない画像情報検出手段からの画像情報152に基づきレーザヘッド15a及び用紙搬送装置15bの動作を制御するようにされている。
【0096】
画像情報152としては、(1)未定着トナー画像の画像濃度、(2)トナー画像が形成される原稿の印字率、等の情報が含まれている。
【0097】
未定着トナー画像の画像濃度は、画像の空隙率やドット印字率により示すことができる。また、トナー画像が形成される原稿の印字率により、未定着トナー画像が存在しているか否かを判定することができる。
【0098】
また、定着ユニット15において、レーザヘッド15aの温度状態に応じてレーザヘッド15a及び用紙搬送装置15bの動作を制御する場合は、図6に示すように、図5に示す構成に加えて、温度センサ15a1を備え、温度センサ15a10により検出されたレーザヘッド15aの温度に基づき用紙搬送装置15bによる用紙搬送速度を制御するようにされている。
【0099】
ここで、図7〜図9に示す表に用いられる用語について説明する。
「原稿印字率」とは、1ページの原稿における平均の印字率(マクロな印字率)であり、具体的には原稿全体の面積に対する印字(画像)部分の面積の割合を示したものである。
【0100】
「ドット印字率」とは、各レーザ素子のレーザ照射部におけるミクロな印字率であり、具体的にはレーザスポット径(第1実施形態ではφ0.3(mm)とする)の面積に対する印字(画像)部分の面積の割合を示したものである。例えば、ソリッド画像の場合は100(%)、ハーフトーン画像の場合、1by1画像では50(%)、1by2画像では33(%)、1by3画像では25(%)となる。
【0101】
「必要エネルギー密度」とは、各画像パターンに対し、十分な定着強度を得るために必要なレーザ出力から単位面積当たりのエネルギー密度を算出したものである。例えば、用紙搬送速度がV(mm/sec)、画像領域幅がL(mm)、必要なレーザ出力がP(W)としたとき、必要エネルギー密度E(J/cm)は、
E=100*P/(V・L)
となる。
【0102】
「レーザ平均出力」とは、1ページの原稿を定着する際に必要となるレーザの平均出力のことである。例えば、用紙搬送速度がV(mm/sec)、画像領域幅がL(mm)、原稿の画像が全てソリッド画像でその原稿印字率がRt(%)、ソリッド画像に対する必要エネルギー密度がE(J/cm)とした場合、レーザ平均出力Pa(W)は、
Pa=Rt*E*(V・L)/10000
となる。
【0103】
また、図7〜図10における制御条件の違いは、以下に示す表の通りである。表中の、「○」は、その制御方法を使用しているもの、「(○)」は、その制御方法を使用しているかどうかは任意のもの、「−」は、その制御方法を使用していないものをそれぞれ表している。
【0104】
【表1】

【0105】
以下に、上記表に示す4つの制御方法について説明する。
(1)「用紙搬送速度制御」とは、原稿の印字率や原稿内の画像の最小濃度、或いはレーザヘッドの温度測定データに基づいて、用紙搬送速度を0〜225(mm/sec)の間で可変制御する制御方法のことである。尚、用紙搬送速度が0(mm/sec)とは画像形成を一旦停止することを意味する。
【0106】
(2)「トナー画像選択加熱制御」とは、用紙上のトナー画像が存在する部分にのみレーザをONして照射する制御方法のことである。具体的には、各半導体レーザ素子のレーザ照射部において、トナー画像が存在する場合にレーザ出力をON、トナー画像が存在しない場合にレーザ出力をOFFする。
【0107】
(3)「画像濃度補正制御」とは、用紙上のトナー画像の濃度に基づいてレーザ出力を可変制御する制御方法のことである。具体的には、各レーザ素子のレーザ照射部における画像のドット印字率(或いは空隙率)に応じてレーザ出力を可変制御する。
【0108】
ここで、画像の空隙率とレーザ出力との関係について図面を参照して説明する。図11は第1実施形態の定着ユニットにおける画像の空隙率と必要エネルギー密度との関係を示すグラフである。
【0109】
空隙率とは、レーザビームのスポット径(本実施例ではφ0.3(mm))の領域において、ドットが印字されていない領域の割合であり、空隙率をRpとすると、
ドット印字率をRt(%)とした場合、
Rp(%)=100−Rt(%)
で表される。
【0110】
定着ユニット15においては、図11に示すように、ソリッド画像(空隙率0%)では0.4(J/cm)のエネルギー密度で定着が可能であるものの、ハーフトーン画像では空隙率が大きくなる(濃度が低くなる)ほど、必要なエネルギー密度は大きくなり、最大0.8(J/cm)と、ソリッド画像の2倍のエネルギー密度が必要となることがわかる。
【0111】
この理由としては、あるひとつのドットに着目した場合、ソリッド画像では用紙に対しては、このドットの直下にある部分に対してのみ熱が逃げるものの、ハーフトーン画像のような濃度の低い(ドット印字率の低い=画像の空隙率の高い)画像では、このドットの直下だけでなく自分の周囲の領域の用紙に対しても熱が逃げることから、ソリッド画像のような濃度の高い画像に比べて用紙に逃げる熱の割合が相対的に大きくなる。そのため、定着エネルギーが多く必要となる。
【0112】
(4)「レーザヘッド温度による制御」とは、レーザヘッド15aに取り付けた温度センサ15a10の温度情報をフィードバックして、用紙搬送装置15bによる用紙搬送速度を可変制御する制御方法のことである。
【0113】
次に、第1実施形態の定着ユニット15において、上記制御方法による実験結果について比較する。
【0114】
(比較例1)
図7は、上記4つの制御方法を全く使用していない従来のレーザ定着装置での制御方法による比較例1の実験結果である。
【0115】
具体的には、レーザヘッドのレーザ出力は、図7に示すように、原稿印字率やドット印字率に関係なく、常に定格出力の150(W)でONすることから、レーザの平均出力としては150(W)となる。また、用紙搬送速度は、一律62.5(mm/sec)に減速しないと対応できない(それ以上速い条件では150(W)のレーザ定格出力では定着できない)ことがわかる。従って、比較例1の制御方法では、用紙搬送速度としては通常速度の225(mm/sec)には対応できない。
【0116】
また、通常、半導体レーザのエネルギー変換効率は50(%)程度であることから、半導体レーザの平均出力が150(W)の場合、同じ150(W)がレーザ素子(レーザヘッド)での自己発熱となる。一方、一般的にレーザ素子の耐熱温度は40(℃)で、雰囲気温度はHH環境(高温、高湿環境)では最大35(℃)まで上昇することから、レーザ素子の自己発熱による温度上昇としては5(℃)以下に抑える必要がある。このため、比較例1ではヒートシンクなどの簡易な空冷式の冷却手段を用いることができず、水冷式(チラー)や熱を移行させるペルチエ素子などの複雑で高価な冷却手段が必要となる。
【0117】
(実施例1−1)
図8は、上記4つの制御方法のうち、「用紙搬送速度制御」と「トナー画像選択加熱制御」の2つを使用した場合のレーザ定着装置での制御方法による実施例1−1の実験結果である。
用紙搬送速度制御としては、図8に示すように、原稿印字率に応じて225〜12.5(mm/sec)の間で7段階で制御を行っている。
【0118】
実施例1−1の制御方法によれば、図8に示すように、用紙搬送速度としては通常速度である225(mm/sec)に対応できる条件が存在することがわかる(グレー色で示す原稿印字率が0〜5(%)の部分)。
【0119】
原稿印字率が5(%)以上の場合は、用紙搬送速度を(最大で12.5(mm/sec)まで)減速する必要があるものの、通常のモノクロの文字原稿の場合は、平均的な印字率としては5(%)程度であり、このような制御を行っても、実使用においては特に大きくスループット(ジョブ効率)が低下する訳ではない。
【0120】
また、レーザ平均出力は27〜30(W)であり、レーザ素子での自己発熱も27〜30(W)、平均29.6(W)となることから、比較例1(自己発熱150(W))に比べて、自己発熱量を約1/5に抑制することができる。その結果、第1実施形態の定着ユニット15のような自然空冷タイプの簡易なヒートシンク(トータル熱抵抗0.16(℃/W))15a9を用いても、温度上昇を5(℃)以内(0.16(℃/W)×30(W)=4.8(℃))に抑えることができる。
【0121】
(実施例1−2)
図9は、図8に示す実施例1−1の制御方法に対し、更に「画像濃度補正制御」を加えた場合の制御方法による実施例1−2の実験結果である。
画像濃度補正制御としては、図9に示すように、ドット印字率に応じて0.8〜0.4(mm/sec)の間で5段階で制御を行っている。
【0122】
実施例1−2によれば、図9に示すように、実施例1−1の制御方法に比べて、225(mm/sec)の用紙搬送速度に対応できる領域(グレー色の部分)が更に広がっている。
【0123】
また、減速しなければならない領域についても、減速率が実施例1−1より小さく(例えば、原稿印字率11〜20(%)、ドット印字率100〜81(%)の場合、実施例1−1では62.5(mm/sec)まで減速する必要があるものの、実施例1−2では125(mm/sec)で収まる。)、実施例1−1に比べてスループットが向上することがわかる。
【0124】
また、レーザ平均出力は13.5〜30(W)であり、レーザ素子での自己発熱も13.5〜30(W)、平均28.5(W)となることから、実施例1−1(自己発熱27〜30(W)、平均29.6(W))に比べて、さらに自己発熱量を抑制することができる。
【0125】
(実施例1−3)
図10は、「レーザヘッド温度による制御」を行う場合の制御方法による実施例1−3の制御仕様を示した表である。この制御の場合は、実施例1−1や実施例1−2とは異なり、原稿印字率やドット印字率から用紙搬送速度を決定するのではなく、レーザヘッド15aの温度を温度センサ15a10により直接計測することで、用紙搬送装置15bによる用紙搬送速度を決定するものである。
【0126】
すなわち、レーザヘッド15aの温度が低い場合(25(℃)以下)は、通常の225(mm/sec)で用紙搬送を行い、レーザヘッド15aの温度が25(℃)より高くなるにつれて、徐々に用紙搬送速度の減速を行うようにしている。そして、レーザヘッド15aの耐熱限界温度である41(℃)以上になると、ジョブを一旦停止し、レーザヘッドの温度が40(℃)以下になるまで待つようにしている。
【0127】
この実施例1−3の制御方法では、温度センサ15a10によりレーザヘッド15aの温度を直接検出し、その温度情報をフィードバックして用紙搬送装置15bによる用紙搬送速度を制御することで、より最適な制御を行うことができる。
【0128】
例えば、原稿印字率が高かったり、ドット印字率が低かったりしても、レーザヘッド15aの温度自体が低ければ、用紙搬送速度を実施例1−1や実施例1−2より速くすることができ、実使用上のスループットが向上する。また、実施例1−3の制御方法は、「トナー画像選択加熱制御」や「画像濃度補正制御」を組み合わせて実施しても問題はない。
【0129】
以上のように、第1実施形態によれば、定着ユニット15に、用紙P上に形成される未定着トナー画像を形成する画像情報、すなわち、原稿印字率やドット印字率(画像空隙率)に基づいてレーザヘッド15aのレーザ出力を制御するレーザ出力制御機能151aと、前記画像情報に基づいて用紙搬送装置15bの用紙搬送速度を制御する用紙搬送速度制御機能151bとを具備する制御装置151を備えることで、前記画像情報に対応した最適なレーザ照射を行うことができるため、不要な半導体レーザ素子15a1の発熱を抑制することができる。
【0130】
更に、画像情報から半導体レーザ素子15a1の過剰発熱が予想される場合には、用紙搬送速度を制御することにより、半導体レーザ素子15a1の過剰発熱を抑制することができる。これにより、装置構成を簡単にできるので、小型を実現でき、エネルギーの効率化を図り、定着ユニット15の長寿命化を実現できる。
【0131】
また、第1実施形態によれば、レーザヘッド15aに温度センサ15a10を設けて、温度センサ15a10によるレーザヘッド15aの温度情報をフィードバックして用紙搬送装置15bによる用紙搬送速度を制御することで、より最適な制御を行うことができる。
【0132】
加えて、第1実施形態の定着ユニット15では、安価な半導体レーザ素子15a1を用いるため、COレーザのようなハイパワーで高コストのレーザを単独で用いる第2実施形態(後述)の定着ユニット115と比較して、定着ユニット15の低コスト化を図ることができる。また、後述する第2実施形態のようにレーザ光を走査・集光させる必要もないため光学系を廃止できるので、省スペース化が図れるとともに光学系でのエネルギー損失を無くすことができる。更に、省スペース化により更に大きなサイズのヒートシンクを取り付けることができるので、レーザ素子の冷却性能を向上させることができる。
【0133】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。
図12は本発明の第2実施形態に係る定着ユニットを構成するレーザヘッドの構成を示す説明図である。
尚、第2実施形態の定着ユニットは、レーザヘッドの構成を除いては第1実施形態の構成と同じ構成を有することから、レーザヘッド以外の同一の構成を有するものは同一の符号を付することで説明を省略する。
【0134】
第2実施形態に係る定着ユニット115は、図12に示すように、単一のレーザ光源113からのレーザ光を回転する多面体ミラー112により、用紙Pの横方向(主走査方向)に走査し、レーザ光の偏向により生じる収差を補正する補正レンズ114としてのfθレンズや集光レンズにより用紙Pの全域に集光し、用紙Pを用紙搬送装置15bにより縦方向に搬送することにより、用紙Pの全域に集光レーザ光を照射するレーザ照射機構115aを備えている。
【0135】
レーザ光源113としては、定格出力150(W)、波長10.6(μm)、レーザスポット径φ150(μm)のCOレーザを用いている。
【0136】
ここで、レーザ光源113としてCOレーザを用いた場合の必要エネルギー密度について、半導体レーザの場合と比較して説明する。
【0137】
図13は、半導体レーザ(波長780(nm))とCOレーザ(波長10.6(μm))とによるドット印字率に対する必要エネルギー密度を実験により求めた結果を示す表である。尚、この実験ではモノクロトナーを用いた。
【0138】
図13に示すように、半導体レーザでは、ドット印字率が小さくなるに連れて必要エネルギー密度が大きくなるのに対して、COレーザでは、ドット印字率に関係なく必要エネルギー密度が一定となる。
【0139】
この理由について以下に説明する。
図14は用紙表面におけるレーザ光の波長と吸光度との関係を示すグラフである。ここでは、赤外分光装置を用いて坪量60(g/m)のPPC用紙表面のIRスペクトルを1回反射ATR法で測定した。
【0140】
図14に示すように、用紙表面は、波長9〜11(μm)の領域で高い吸光度を示すことがわかる。すなわち、COレーザの場合、半導体レーザに比べて波長が長く、半導体レーザの波長780(nm)では用紙表面はレーザ光を吸収できないものの、COレーザの波長10.6(μm)では用紙表面もレーザ光を吸収する。従って、COレーザを用いた場合、トナー画像がなく用紙表面が露出している部分では、用紙の表面が発熱し、トナーから用紙に逃げる熱が減少するため、レーザ出力が一定であっても、画像濃度に関係なく一定の定着性を確保することができる。
【0141】
図15は、半導体レーザ(波長780(nm))とCOレーザ(波長10.6(μm))とで、モノクロトナーとカラートナー(イエロー、マゼンタ、シアン)に対する必要エネルギー密度を実験により求めた結果を示す表である。尚、この実験では、カラートナーは赤外線吸収剤を添加していないタイプのものを使用した。
【0142】
図15に示すように、半導体レーザでは、モノクロトナーに比べてカラートナーでは必要エネルギー密度が大きくなることに対して、COレーザでは、モノクロトナー,カラートナーに関係なく必要エネルギー密度が一定となる。
【0143】
この理由について以下に説明する。
図16は各色トナーにおけるレーザ光の波長と吸光度との関係を示すグラフである。ここでは、図14と同様に赤外分光装置を用いて、各色トナーのIRスペクトルをKBr錠剤法で測定した。
【0144】
図16に示すように、カラートナーは、波長5.5(μm)以下の短波長領域ではモノクロトナーに比べて吸光度が低いものの、波長5.5〜11(μm)の長波長領域ではモノクロトナーと同等の高い吸光度を示すことがわかる。
【0145】
すなわち、COレーザの場合、半導体レーザに比べて波長が長く、半導体レーザの波長780(nm)ではカラートナーはレーザ光を吸収できないものの、COレーザの波長10.6(μm)ではカラートナーもレーザ光を吸収する。従って、COレーザによれば、高価な赤外線吸収剤を添加しなくても、カラートナーを定着させることができる。
【0146】
次に、第2実施形態の定着ユニット115の制御方法について図面を参照して詳細に説明する。
図17は第2実施形態の定着ユニットにおける原稿の印字率及びドット印字率の条件とレーザビームのエネルギー密度及び平均消費電力の関係を示す表である。
尚、第2実施形態で用いられる制御方法は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明についてはここでは省略する。
【0147】
(実施例2)
図17は、第1実施形態における実施例1−1(図8)における制御方法と同様に、前述した4つの制御方法のうち、「用紙搬送速度制御」と「トナー画像選択加熱制御」の2つを使用した場合のレーザ定着装置での制御方法による実施例2の実験結果である。
用紙搬送速度制御としては、図17に示すように、原稿印字率に応じて225〜25(mm/sec)の間で7段階で制御を行っている。
【0148】
実施例2において、「画像濃度補正制御」を使用していない理由としては、上述のようにCOレーザの場合、画像濃度に関係なく、必要エネルギー密度が一定となるためである。
【0149】
実施例2によれば、図17に示すように、実施例1−1や実施例1−2の制御方法に比べて、225(mm/sec)の用紙搬送速度に対応できる領域(グレー色の部分)が広がっている。
【0150】
また、減速しなければならない領域についても、減速率が実施例1−1や実施例1−2より小さくて済み(例えば、原稿印字率11〜20(%)、ドット印字率20〜0(%)の場合、実施例1−1や1−2では62.5(mm/sec)まで減速する必要があるものの、実施例2では125(mm/sec)で収まる。)、実施例1−1や1−2に比べてスループットが向上することがわかる。
【0151】
また、レーザ平均出力は13.5〜30(W)であり、レーザ素子での自己発熱も13.5〜30(W)、平均27.2(W)となることから、実施例1−1(自己発熱27〜30(W)、平均29.6(W))や実施例1−2(自己発熱13.5〜30(W)、平均28.5(W))に比べて自己発熱量を抑制することができる。
【0152】
なお、実施例2では波長10.6(μm)のCOレーザを用いたが、本発明は、レーザ光の波長を10.6(μm)に限定するではなく、図14、図16の結果より、波長が5.5〜11(μm)、より好ましくは、9〜11(μm)のレーザ光であれば、実施例2と同様の効果が得られる。
【0153】
また、本発明は、レーザ光源としてCOレーザに限定されるものではなく、波長が5.5〜11(μm)、より好ましくは9〜11(μm)のレーザ光源であれば任意のレーザ光源を使用するものであっても良い。
【0154】
以上のように構成したので、第2実施形態によれば、定着ユニット115において、レーザ光源113としてCOレーザを用いることで、第1実施形態のように半導体レーザの光源を用いる場合に比べて、用紙がレーザ光を吸収するため、トナー画像が形成されずに用紙が露出している部分では、用紙の表面が発熱することにより、トナーから用紙に逃げる熱が減少するため、レーザ出力が一定であっても、画像濃度に関係なく一定の定着性を確保することができる。これにより、装置構成を簡単にできるので、小型化を実現でき、エネルギーの効率化を図り、定着ユニット115の長寿命化を実現できる。
【0155】
また、第1実施形態の定着ユニット15では、半導体レーザ素子15a1を等ピッチでアレイ状に並べる必要があるため、レーザスポット径を小さくするには制約があるものの、本第2実施形態の定着ユニット115では、そのような制約がなく、レーザスポット径を更に小さく絞ることが可能となる。その結果、レーザ光をトナー画像部のみに、より高精度(高精細)に照射することができるため、無駄なエネルギー消費がなく、レーザ素子の発熱を抑制することができる。
【0156】
尚、上述した実施形態では、本発明に係る定着ユニット15,115を図1に示すような画像形成装置100に適用した例について説明したが、レーザ光を照射して未定着トナー像を溶融して記録媒体に定着させるようにした定着ユニット(定着装置)を用いる画像形成装置であれば、上述したような構成の画像形成装置や複写機に限定されるものではなく、その他の画像形成装置等に展開が可能である。
【0157】
以上のように、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0158】
15,115 定着ユニット(定着装置)
15a レーザヘッド
15a1 半導体レーザ素子
15a2 フォトダイオード
15a3 シリコン基板
15a4 ワイヤーボンド線
15a5 表面電極
15a6 セラミック基板
15a7 レンズホルダ
15a8 凸レンズ
15a9 ヒートシンク
15a10 温度センサ(温度検出手段)
15aa 半導体レーザアレイ
15b 用紙搬送装置(記録媒体搬送手段)
15b1 搬送ベルト
15b2 駆動ローラ
15b3 従動ローラ
15b4 吸着チャージャー
15b5 分離チャージャー
15b6 除電チャージャー
15b7 分離爪
15c レーザ照射部
100 画像形成装置
113 レーザ光源
114 補正レンズ
151 制御装置
151a レーザ出力制御機能(レーザ出力制御手段)
151b 用紙搬送速度制御機能(速度制御手段)
152 画像情報
P 用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照射部において記録媒体上の未定着トナー画像にレーザ光を照射し、前記未定着トナー画像を溶融して前記記録媒体上に定着させるレーザ照射手段と、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段とを備えた定着装置において、
前記未定着トナー画像を形成する画像情報に基づいて前記レーザ照射手段のレーザ出力を制御するレーザ出力制御手段と、前記画像情報に基づいて前記記録媒体搬送手段の記録媒体搬送速度を制御する速度制御手段とを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ照射部における未定着トナー画像の有無によりレーザ出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ照射部に位置する未定着トナー画像の画像濃度に基づきレーザ出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ照射部に位置する未定着トナー画像の空隙率が大きくなるほどレーザ出力を大きくするとともに、前記レーザ出力を、前記未定着トナー画像の空隙率が0(%)の場合のレーザ出力に対して最大で約2倍以下になるように制御することを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記速度制御手段は、トナー画像が形成される原稿の印字率に応じて記録媒体搬送速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記速度制御手段は、トナー画像が形成される原稿の印字率にほぼ反比例して記録媒体搬送速度を制御することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記速度制御手段は、トナー画像が形成される原稿の中の最も低い画像濃度の情報に基づいて記録媒体搬送速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記速度制御手段は、トナー画像が形成される原稿の中の最も低い画像濃度にほぼ比例して記録媒体搬送速度を制御することを特徴とする請求項7記載の定着装置。
【請求項9】
前記レーザ照射手段は、複数の半導体レーザ素子を記録媒体搬送方向と直交する方向にアレイ状に並べたレーザアレイからなることを特徴とする請求項1乃至8のうちの何れか一項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記未定着トナー画像は、カラートナーにより形成されるトナー画像を含み、前記カラートナーには、赤外線吸収剤が含まれていることを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記レーザ照射手段は、単一のレーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を記録媒体搬送方向に対して記録媒体に沿って垂直方向に走査する走査光学系と、レーザ光を集光するレンズとを備えることを特徴とする請求項1乃至8のうちの何れか一項に記載の定着装置。
【請求項12】
前記レーザ照射手段は、前記レーザ光源の波長が5.5〜11(μm)であることを特徴とする請求項11に記載の定着装置。
【請求項13】
前記レーザ照射手段は、前記レーザ光源がCOレーザであることを特徴とする請求項11または12に記載の定着装置。
【請求項14】
前記レーザ照射手段は、該レーザ照射手段の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記速度制御手段は、前記温度検出手段により検出された検出結果に基づいて、記録媒体搬送速度を制御することを特徴とする請求項1乃至13のうちの何れか一項に記載の定着装置。
【請求項15】
表面に静電潜像が形成される像担持体と、像担持体表面を帯電させる帯電装置と、像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、像担持体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、
前記定着装置として、請求項1乃至14のうちの何れか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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