説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】ジャムが発生し、記録材が定着部材とエアノズル等との空隙に挟まることがあっても、定着部材の表面に疵が付くことがなく、記録材を容易に引き抜くことができる定着装置。
【解決手段】加熱された定着部材と該定着部材に対して加圧する加圧部材とにより形成されたニップ部で記録材上のトナー像を定着する定着装置において、
空気を吐出して前記記録材に対して吹き付け、該記録材を前記定着部材から分離させる空気吐出手段を備え、
前記空気吐出手段は空気を流通させて吐出口より吐出させる管状の管状部材を有し、該管状部材における該吐出口の近傍は弾性体により形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材と加圧部材とにより形成されたニップ部で記録材上のトナー像を定着する定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの諸機能を備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置においては、原稿に対応した潜像を感光体に形成し、この潜像にトナーを付与することによって顕像化し、この顕像化されたトナー像を記録紙上に転写し、この後、記録紙上に転写されたトナー像を定着して排紙している。
【0003】
このようにトナー像を定着する定着装置として、ハロゲンヒータ等を内蔵した定着ローラと、定着ローラを加圧する加圧ローラとによって形成されたニップ部で、トナー像が転写された記録紙を挟持・搬送しながら、加熱・加圧する熱ローラ定着方式の定着装置があり、このような定着装置は構成が簡便であるため、広く利用されている。
【0004】
また、無端状の定着ベルトをハロゲンヒータ等を内蔵した加熱ローラと定着ローラとに張架すると共に、定着ベルトを介して定着ローラを加圧する加圧ローラを有し、定着ベルトと加圧ローラとによって形成されたニップ部で、トナー像が転写された記録紙を挟持・搬送しながら、加熱・加圧するベルト定着方式の定着装置があり、このような定着装置は定着ベルトの熱容量が小さいので、ウオーミングアップタイムが短縮し、省エネになるという利点を有している。
【0005】
ここで、記録紙上のトナー像のトナーはニップ部を通過する際に加熱されるので、トナーが粘着力を有し、ニップ部を通過した記録紙が定着ローラや定着ベルトの表面に付着して巻き付いて分離せず、ジャムを発生させる虞がある。特に記録紙として、斤量の小さい紙(薄紙)、特に斤量の小さい印刷用コート紙を用いたときは、分離性能がより低下する。
【0006】
一方、画像形成装置は高速化が進んでおり、これに対応して充分な長さのニップ幅を確保するために定着ローラを大きくすると、定着ニップ出口でのローラ曲率が小さくなるため、分離性能が低下する。
【0007】
定着部材から記録紙を分離し易くするため、定着部材の表層に離型性の高い耐熱樹脂を用いたり、シリコンオイルなどの離型剤を塗布したり、トナー中に加熱によって溶融し離型剤として機能するワックスを含有させたりといった様々な対策が取られている。しかし、前述したコート紙への画像形成や、カラー画像を形成する複数色のトナーを重ねるためトナー量が増えることによるトナー接着力の増大など、分離性能を低下させる要因が増えており、記録紙を分離する分離手段が必須となっている。
【0008】
分離手段としては、ニップ部に対する記録紙の排紙側に離型性の良いフッ素樹脂をコーティングした分離爪を設け、その先端部を定着ローラ若しくは定着ベルトの外表面に当接させ、記録紙を定着ローラ等より分離させる方法がある。
【0009】
ところが、分離爪の先端部が定着ローラ等の表面に当接しているので、定着ローラ等の表面を被覆するフッ素樹脂等から形成された表層に擦り疵が付き、画像にも疵が転写されてしまうという問題がある。特に、カラー画像の場合には光沢画像が要求されるために顕著に顕れる傾向がある。
【0010】
このような問題に対処するために、ニップ部の出口側に空気を吹き付けて記録紙を定着ローラ等より分離させる技術が開発されている。
【0011】
この一例として、コンプレッサにより生成された圧搾空気をニップ部にパルス状に噴射することにより、記録紙を定着ローラより分離させる定着装置が知られている(特許文献1参照)。
【0012】
また、分離爪を設けると共に、ファンにより送風された空気をニップ部に吹き付けて、記録紙を定着ローラより分離させる定着装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−202043号公報
【特許文献2】実開昭63−140571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述の如く記録紙の分離のために、コンプレッサにより生成された圧搾空気はエアノズルから吐出し、ファンにより送風された空気はエアダクトから吐出する。この際に、エアノズルやエアダクトは可能な限りニップ部に近接させることが望ましい。これにより、吐出する空気の風量や風速を低減でき、その結果、エアノズルやエアダクトに連なる送風源を小型化できる。
【0015】
一方、画像形成装置には給紙可能な記録紙が規定され、取扱説明書等に記載されている。それにも拘わらず、ユーザーが規定外の記録紙、例えば60g/m以下の薄紙を用いた場合に、定着後に確実に分離がされないと、その記録紙の先端部がエアノズル等の先端部に当接してジャムが発生することがある。ジャムになった記録紙が定着ベルトや定着ローラとエアノズルとの間の狭い空隙に挟まると、抜け難くなる。また、記録紙を引き抜くことができても、ジャムで折れ曲がった記録紙が定着ベルト等とエアノズルとの間の狭い空隙を通過するので、記録紙により定着ベルト等の表面に疵が付くことがある。
【0016】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、エアノズル等から空気を吐出してニップ部を通過した記録材に対して吹き付け、記録材を定着ベルト等の定着部材から分離させる定着装置に関する。そして、前述の如くジャムが発生し、記録材が定着部材とエアノズル等との空隙に挟まることがあっても、定着部材の表面に疵が付くことがなく、記録材を容易に引き抜くことができる定着装置及び該定着部材を備えた画像形成装置を提案することを発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は下記に記載した発明により達成される。
【0018】
1.加熱された定着部材と該定着部材に対して加圧する加圧部材とにより形成されたニップ部で記録材上のトナー像を定着する定着装置において、
空気を吐出して前記記録材に対して吹き付け、該記録材を前記定着部材から分離させる空気吐出手段を備え、
前記空気吐出手段は空気を流通させて吐出口より吐出させる管状の管状部材を有し、該管状部材における該吐出口の近傍は弾性体により形成されていることを特徴とする定着装置。
【0019】
2.前記空気吐出手段はコンプレッサで生成された圧搾空気を吐出し、前記管状部材はエアノズルであることを特徴とする前記1に記載の定着装置。
【0020】
3.前記エアノズルにおける圧搾空気を流通させる流通孔は前記吐出口に進むに従い大口径より小口径に漸次縮小した後に前記吐出口まで一定の口径に形成され、該流通孔が一定の口径に縮小された第1部所から前記吐出口の側に所定の長さを隔てた第2部所と前記吐出口との間を弾性体で形成したことを特徴とする前記2に記載の定着装置。
【0021】
4.前記エアノズルは弾性体により形成され、該エアノズルにおける圧搾空気を流通させる流通孔は前記吐出口に進むに従い大口径より小口径に漸次縮小した後に前記吐出口まで一定の口径に形成され、該流通孔が一定の口径に縮小された第1部所から所定の長さを隔てた第2部所と前記吐出口との間を除いた該エアノズルの外周を剛体で被覆したことを特徴とする前記2に記載の定着装置。
【0022】
5.前記エアノズルにおける圧搾空気を流通させる流通孔は前記吐出口に進むに従い大口径より小口径に漸次縮小した後に前記吐出口まで一定の口径に形成され、該流通孔が一定の口径に縮小された第1部所から前記吐出口の側に所定の長さを隔てた第2部所と、前記吐出口から該第2部所の側に所定の長さを隔てた第3部所との間を弾性体で形成したことを特徴とする前記2に記載の定着装置。
【0023】
6.前記弾性体は補強部材を内蔵し、前記記録材の厚み方向のみに可撓性を有することを特徴とする前記1〜5の何れか1項に記載の定着装置。
【0024】
7.前記補強部材は前記流通孔を環状に包囲する複数の補強糸であり、各々が圧搾空気の流通方向に配設されていることを特徴とする前記6に記載の定着装置。
【0025】
8.複数の前記補強糸は前記吐出口から離れた部所に偏在していることを特徴とする前記7に記載の定着装置。
【0026】
9.複数の前記補強糸の互いの間隔は前記吐出口に近い程粗になるように配設されていることを特徴とする前記7に記載の定着装置。
【0027】
10.前記補強部材は前記流通孔を包囲する複数の補強糸であり、複数の該補強糸の互いの間隔は前記定着部材の側が密で前記定着部材と反対の側が粗になるように配設されていることを特徴とする前記6に記載の定着装置。
【0028】
11.前記吐出口周囲は鞘状の部材で被覆されていることを特徴とする前記1〜10の何れか1項に記載の定着装置。
【0029】
12.前記空気吐出手段はファンで送風された空気を吐出し、前記管状部材はエアダクトであることを特徴とする前記1に記載の定着装置。
【0030】
13.ファンにより送風された空気を吐出するエアダクトが前記エアノズルに並設されていることを特徴とする前記2〜12の何れか1項に記載の定着装置。
【0031】
14.前記エアダクトにおける空気を吐出する吐出口の近傍は弾性体により形成されていることを特徴とする前記13に記載の定着装置。
【0032】
15.前記弾性体はシリコンゴムにより形成されていることを特徴とする前記1〜14の何れか1項に記載の定着装置。
【0033】
16.前記1〜15の何れか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明の定着装置及び該定着部材を備えた画像形成装置によれば、エアノズル等から空気を吐出してニップ部を通過した記録材に対して吹き付け、記録材を定着ベルト等の定着部材から分離させる定着装置において、ジャムが発生し、記録材が定着部材とエアノズル等との空隙に挟まることがあっても、定着部材の表面に疵が付くことがなく、記録材を容易に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】画像形成装置の構成図である。
【図2】ベルト定着装置の断面図である。
【図3】エアノズルの拡大縦断面図である。
【図4】記録紙が定着ベルトとエアノズルとの間に挟まってジャムが発生した図である。
【図5】補強の形態1のエアノズルの斜視図である。
【図6】補強の形態2のエアノズルの斜視図である。
【図7】補強の形態3のエアノズルの斜視図である。
【図8】補強の形態1のエアノズルの縦断面図である。
【図9】先端を保護部材で被覆したエアノズルの縦断面図である。
【図10】ノズル本体と弾性体との接続方法を説明する図である。
【図11】全体を弾性材料により形成したエアノズルの縦断面図である。
【図12】吐出口から若干離れた位置に弾性体を配置したエアノズルの縦断面図である。
【図13】エアダクトの弾性体の斜視図である。
【図14】弾性体をダクト本体に装着したエアダクトの縦断面図である。
【図15】弾性体とダクト本体の接合を補強したエアダクトの縦断面図である。
【図16】エアノズルと電磁弁等の斜視図である。
【図17】エアノズルやエアダクトに関するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明に関する実施の形態を、図を参照して説明する。
【0037】
先ず、本発明を用いる画像形成装置の一例を図1の構成図に基づいて説明する。
【0038】
本画像形成装置は画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。
【0039】
画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y,10M,10C,10K、ベルト状の中間転写ベルト5、給紙搬送手段及び定着装置8等からなる。
【0040】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から成る画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台に載置された原稿dは搬送手段により搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0041】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y,3M,3C,3Kに送られる。
【0042】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段7Yを配置している。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段7Mを配置している。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段7Cを配置している。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段7Kを配置している。そして、帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0043】
なお、現像手段4Y,4M,4C,4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。トナーは発色剤となる顔料若しくは染料と、定着後に定着部材からのトナーの剥離を助けるワックスと、これらを保持するバインダー樹脂とからなる。
【0044】
中間転写ベルト5は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0045】
定着装置8は、加熱された定着ベルト81と加圧ローラ83との間に形成されたニップ部で記録紙(記録材)Pのトナー像を加熱・加圧して定着する。
【0046】
かくして、画像形成部10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写ベルト5に転写手段6Y,6M,6C,6Kにより逐次転写されて(1次転写)、カラー画像合成されたトナー像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録紙Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A,22B,22C,22D,レジストローラ23等を経て、転写手段6Aに搬送され、記録紙Pにカラー画像が転写される(2次転写)。カラー画像が転写された記録紙Pは定着装置8において加熱・加圧され、記録紙Pのカラートナー像が定着される。その後、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25に載置される。
【0047】
一方、転写手段6Aにより記録紙Pにカラー画像を転写した後、記録紙Pを曲率分離した中間転写ベルト5は、クリーニング手段7Aにより残留トナーが除去される。
【0048】
なお、以上はカラー画像を形成する画像形成装置であったが、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよいし、中間転写ベルトを用いても用いなくてもよい。
【0049】
次に、本発明に係わる定着装置8について、図2のベルト定着装置の断面図に基づいて説明する。
【0050】
定着ベルト81(定着部材)は、無端状に形成され、例えば、基体として厚さ70μmのPI(ポリイミド)を用い、基体の外周面を弾性層として厚さ200μmの耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A15°)で被覆し、更に、厚さ30μmの耐熱性樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシ)のチューブで被覆している。外径寸法は例えば168mmである。他の構成として、基体にニッケル電鋳など金属基体を用いたり、弾性層にフッ素ゴムを用いたり、表面離型層にPFAやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂コーティング層を用いたりしてもよい。
【0051】
加熱ローラ82は、定着ベルト81を加熱する加熱手段としてのハロゲンヒータ82Aを内蔵し、例えば、アルミニウム等から形成された肉厚4mmの円筒状の芯金82Bの外周面を、厚さ30μmのPTFEでコーティングした樹脂層82Cで被覆している。外径寸法は例えば90mmである。なお、ハロゲンヒータ82Aは異なった紙幅に対応するために例えば1200Wのもの2本、750Wのもの2本、500Wのもの1本より構成され、記録紙の異なる紙幅に対応させて軸方向に異なる発熱分布になるように配置してある。
【0052】
定着ローラ83は、鉄等の金属から形成された中実の芯金83Aを、弾性層83Bとして厚さ17mmの耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A10°)で被覆し、更に、厚さ30μmの低摩擦で耐熱性樹脂であるPTFEでコーティングした樹脂層83Cで被覆している。外径寸法は例えば90mmである。
【0053】
加圧ローラ84(加圧部材)は、画像出力装置への電源投入直後の昇温時間を短縮するためハロゲンヒータ84Aを内蔵し、アルミニウム等から形成された肉厚4mmの円筒状の芯金84Bの外周面を、弾性層84Cとして厚さ2mmの耐熱性のシリコンゴム(硬度JIS−A10°)で被覆し、更に、厚さ30μmのPFAチューブの樹脂層84Dで被覆している。外径寸法は90mmである。なお、ハロゲンヒータ84Aは例えば700Wである。
【0054】
そして、不図示の付勢手段により、加圧ローラ84が定着ベルト81を介して定着ローラ83を押圧している。
【0055】
以上の構成において、不図示の駆動手段によって加圧ローラ84を反時計方向に回転させると、定着ベルト81及び加熱ローラ82は時計方向に回転し、定着ローラ83も時計方向に回転する。なお、定着ローラ83を駆動してもよい。また、定着ベルト81は当接する加熱ローラ82を介してハロゲンヒータ82Aにより加熱され、加圧ローラ84もハロゲンヒータ84Aによって加熱される。そして、不図示の付勢手段によって加圧ローラ84が定着ローラ83の方向に付勢されているので、定着ローラ83に巻回された定着ベルト81と加圧ローラ84との間に形成されたニップ部Nで、給紙された記録材Pが加熱・加圧され、記録材P上のトナー像が定着される。
【0056】
なお、定着条件は例えば下記の通りである。
【0057】
定着荷重:2000N
定着ベルト張力:250N
定着ベルト制御温度:160〜200℃
加圧ローラ制御温度:80〜120℃
記録紙搬送速度:500mm/s
また、定着ベルト81を加熱する加熱手段として、どのような加熱手段を用いてもよく、例えば励磁コイルを用いた誘導加熱発熱体を用いてもよい。また、加熱手段を設ける位置は、必ずしも加熱ローラ82の中に限定するものではない。
【0058】
また、定着ベルト81に張力を付与するテンションローラを設けたり、ベルトの蛇行を制御する寄り制御ローラを設けたりしてもよい。
【0059】
以上の如き定着装置8において、定着された記録材Pがニップ部Nから排紙された後に定着ベルト81に付着して巻き付くとジャムが発生する虞があるので、記録材Pを定着ベルト81から確実に分離させる必要がある。
【0060】
そこで、本定着装置8においては記録材Pを定着ベルト81から分離させるために空気を吐出する2種の空気吐出手段を備えている。第1の空気吐出手段は後述するコンプレッサで圧縮されて生成された圧搾空気を管状に形成された管状部材であるエアノズル110から吐出するものであって、ニップ部Nを通過した直後の記録紙Pの先端部近傍に対して短時間吹き付け、記録紙Pの先端部を定着ベルト81から分離させる。第2の空気吐出手段はファン151により送風された空気を管状に形成された管状部材であるエアダクト150から連続して吐出するものであって、先端部が分離された記録紙Pに吹き付けて定着ベルト81に付着しないようにする。そして、エアノズル110の吐出口112Bとエアダクト150の吐出口162Aがニップ部Nの出口側近傍で近接するようにエアノズル110とエアダクト150を並設させている。
【0061】
なお、吹き付け位置は、一例としてエアノズル110からの空気はニップ部Nの出口部から25mmに位置する定着ベルト81の外周面であり、エアダクト150からの空気はニップ部Nの出口部から10mmに位置する定着ベルト81の外周面である。
【0062】
そして、エアノズル110から吐出する空気は、記録紙Pの先端部を定着ベルト81から分離させるので風速は大きい必要があるが、短時間の吐出で済むので風量は少量でよい。一方、エアダクト150から吐出する空気は、記録紙Pの先端部が分離された後なので風速はエアノズル110より小さくてよいが、記録紙Pの全体がニップ部Nを通過するまで連続して吐出するので風量はエアノズル110より多量に必要とする。なお、エアノズル110からの風量はエアダクト150からの風量の約1/10でよい。このようにエアノズル110とエアダクト150とにより互いを補う構成であるので、エアダクト150を設けずにエアノズル110から圧搾空気のみを吐出する構成と比較して、寸法や電力が約1/10になり、小型化し省電力になる。
【0063】
このようにして、定着ベルト81から分離された記録紙Pは排紙ガイド板85に案内されて搬送される。なお、耐熱樹脂から成る分離爪86が加圧ローラ84に圧接しているので、エアノズル110やエアダクト150からの空気によって記録紙Pが下方に押圧されても記録紙Pが加圧ローラ84に巻き付くことはない。また、分離爪86は例えば10mm程度の先端部がフッ素樹脂でコーティングされて潤滑性が良い上に、1mN程度の弱い圧力で加圧ローラ84に圧接しているので、加圧ローラ84に疵が付くことがない。加えて、両面コピーの際にトナー像が加圧ローラ84の側に位置しても、加圧ローラ84の温度は低いので、トナー像が溶融することはなく、分離爪86によって画像不良が発生することがない。なお、分離爪86は従来の定着装置に用いられていたものを適用できる。
【0064】
一方、画像形成装置には給紙可能な記録紙が規定され、取扱説明書等に記載されている。それにも拘わらず、ユーザーが規定外の記録紙、例えば60g/m以下の薄紙を用いた場合に、定着後に定着ベルト81から確実に分離されないと、その記録紙の先端部がエアノズル110の先端部に当接してジャムが発生することがある。ジャムになった記録紙が定着ベルト81とエアノズル110との間の狭い空隙に挟まると、抜け難くなる。また、記録紙を引き抜くことができても、ジャムで折れ曲がった記録紙が定着ベルト81とエアノズル110との間の狭い空隙を通過するので、記録紙により定着ベルト81の表面に疵が付くことがある。以下に、かかる課題に対する解決手段を述べる。
【0065】
図3はエアノズル110の拡大縦断面図である。
【0066】
エアノズル110は紙面垂直方向、即ち記録紙の幅方向に長く形成されている。そして、圧搾空気が後述する電磁弁等を介して複数のパイプ121の内孔121Aを通ってエアノズル110の中に送り込まれる。
【0067】
また、エアノズル110は、鉄やアルミニウムの金属から形成されたノズル本体111の先端部にシリコンゴム等から形成された弾性体112が接続されている。ノズル本体111は、紙面垂直方向に複数個(例えば5個)設けられ断面形状が円形の投入孔111Aと、紙面垂直方向に長く形成された単一の第1流通孔111Bと、紙面垂直方向に複数個(例えば130個)設けられ断面形状が円形である第2流通孔111Cとを有する。弾性体112は、紙面垂直方向に複数個設けられ断面形状が円形であって各々の第2流通孔111Cと対応して配置された複数の第3流通孔112Aを有する。
【0068】
圧搾空気は、複数のパイプ121の内孔121Aを通ってエアノズル110の中に送り込まれ、複数の投入孔111Aから単一の第1流通孔111Bに流入する。続いて、第1流通孔111Bの中の圧搾空気は分岐して複数の第2流通孔111C及び第3流通孔112Aを流通し、第3流通孔112Aの先端にある吐出口112Bから吐出する。
【0069】
以上により、図4に示す如く記録紙Pが定着ベルト81とエアノズル110との間の狭い空隙に挟まってジャムが発生した場合には、記録紙Pを矢印A方向に引き抜くことになる。この際に、エアノズル110の先端部に設けた弾性体112は矢印B方向に力を受けて変形する。従って、ジャムが発生した記録紙Pを引き抜く力が少なくて済み、定着ベルト81の表面に疵が付くこともない。
【0070】
なお、エアノズル110における第1流通孔111Bは、吐出口112Bに進むに従い大口径より小口径に漸次縮小しているので、圧搾空気の流れは乱流である。一方、第2流通孔111C及び第3流通孔112Aは吐出口112Bまで一定の口径であるので、圧搾空気の流れは層流である。従って、弾性体を第1流通孔111Bの位置まで延在させて形成すると、乱流によって振動が生じ、圧搾空気を吹き付ける方向が不安定になる。そこで、弾性体を設ける位置は、流通孔が一定の口径に縮小された部所、即ち第1流通孔111Bと第2流通孔111Cとの境目の第1部所110Xから吐出口112Bまでの間であって口径が一定の部分が望ましい。しかし、第1部所110Xにおいては圧搾空気の風圧が最大であって、吐出口112Bに向かうに従って風圧は漸次低減する。従って、風圧が最大である第1部所110Xまで弾性体に形成すると、風圧で口径が広がって不安定な流れになるので、これは避け、第1部所110Xから吐出口112Bの側に所定の長さを隔てた第2部所110Yと吐出口112Bの間に弾性体に形成することが望ましい。しかし、弾性体の長さが短いと変形し難くなるので、適度に長い方が望ましい。
【0071】
本発明者の実験によれば、第1部所110Xから吐出口112Bの長さが13mmのとき、第2部所110Yは第1部所110Xから2mm隔てた位置が望ましいことが分かった。
【0072】
また、高速化に伴ってニップ部Nの幅を拡大させるために定着ローラ83の外径を増大させることがある。このような場合は、記録紙Pの曲率分離性能が低下するので、エアノズル110からの吐出圧をより高くする必要がある。しかし、吐出圧が高くなると、弾性体の流通孔が膨張して乱流が生じ、圧搾空気の吐出方向が不安定になる。このような場合は、弾性体に補強部材を内蔵して弾性体を補強する必要があり、以下にその補強の形態を説明する。
・補強の形態1
弾性体を補強する補強の形態1をエアノズルの斜視図である図5を参照して説明する。
【0073】
エアノズル210の弾性体212の中には、環状に形成された複数の補強糸213が補強部材として圧搾空気の流通方向に並設され、全ての第3流通孔212Aを包囲している。従って、高圧の圧搾空気が流れても、第3流通孔212Aが膨張して圧搾空気の吐出方向が不安定になることがない。また、複数の補強糸213は圧搾空気の流通方向に所定の間隔で並設されているので、弾性体212は記録紙の厚み方向、即ち図5の上下方向へのみ可撓性を有し、補強糸213は弾性体212が変形するのに支障になることはない。
【0074】
なお、補強糸213の材質はビニロンやポリエステル等の合成繊維が望ましく、ビニロンの場合は1200デニールの原糸を3本撚り合わせ、強度が約7.5g/dのものが望ましい。また、複数の補強糸213のピッチを例えば2mmの等間隔にすることにより、弾性体212の製造が容易になる。
・補強の形態2
弾性体を補強する補強の形態2をエアノズルの斜視図である図6を参照して説明する。
【0075】
エアノズル310の弾性体312の中には、補強の形態1と同様に複数の環状の補強糸313が圧搾空気の吐出方向に並設され、その材質等も同様である。
【0076】
本形態が補強の形態1と異なる点は、補強糸313が弾性体312の吐出口312Bの近傍には設けられず、吐出口312Bから離れた部所に偏在していることである。このように構成したのは、圧搾空気の風圧は吐出口312Bから離れた部所の方がより高圧であるからであり、吐出口312Bの近傍は低圧であるので、必ずしも補強糸313を必要としないからである。
【0077】
これにより、補強糸313の総本数を低減できる。
・補強の形態3
弾性体を補強する補強の形態3をエアノズルの斜視図である図7を参照して説明する。
【0078】
エアノズル410の弾性体412の中には、補強の形態1と同様に複数の環状の補強糸413が圧搾空気の吐出方向に並設され、その材質等も同様である。
【0079】
本形態が補強の形態1と異なる点は、補強糸413のピッチが等間隔でなく、弾性体412の吐出口412Bに近い程粗に並設され、吐出口412Bから遠い程密に並設されていることである。このように構成したのは、圧搾空気の風圧は吐出口412Bに近い程低圧であり、吐出口412Bから遠い程高圧であるからである。
【0080】
これにより、補強糸413の本数が補強の形態1と同一であっても、より高い耐圧特性が得られる。
・補強の形態4
弾性体を補強する補強の形態4をエアノズルの縦断面図である図8を参照して説明する。
【0081】
エアノズル510の弾性体512の中には、複数の補強糸513が配設されているが、全てが環状であるのでなく、凹状や逆凹状に形成されたものもある。そして、複数の補強糸513はピッチが定着部材である定着ベルト81の側の方(図8の上方)が密に、その反対側が粗になるように配設されている。
【0082】
これにより、補強糸を内蔵していても矢印方向への変形がより容易になる。
【0083】
なお、各補強糸513において、補強糸513Aは環状に形成され、補強糸513Bは凹状に形成され、補強糸513Cは逆凹状に形成されている。また、その材質等は補強の形態1と同様である。
【0084】
その他に、図示していないが補強糸のピッチを定着ベルト81の側とその反対側で同一にし、定着ベルト81の側に太い補強糸を配置し、その反対側に細い補強糸を配置するようにしてもよい。
【0085】
また、分離ができない記録紙の先端がエアノズルの弾性体の先端に当接して、弾性体が損傷する場合がある。このような問題に対しては、図9に示す如く、弾性体112の先端を、吐出口114Aを有する鞘状の保護部材114で被覆すればよい。保護部材114は金属板や樹脂で形成する。
【0086】
次に、エアノズル110のノズル本体111に弾性体112を接続する手段を、図10を参照して説明する。ノズル本体111は突出した嵌合ボス111Dを有し、弾性体112は嵌合ボス111Dの外径より僅かに大きい径の嵌合穴112Dを有する。そして、嵌合ボス111Dに嵌合穴112Dを嵌め込み、接着剤で両者を接合する。
【0087】
なお、ノズル本体111に嵌合穴を設け、弾性体112に嵌合ボスを設けてもよい。
【0088】
また、エアノズル110におけるノズル本体111と弾性体112とを2色成型やアウトサート成型で形成してもよい。
【0089】
以上の各形態は、エアノズルのノズル本体に弾性体を接続したものであるが、これとは異なる構成のエアノズルについて説明する。
【0090】
図11はエアノズル全体を弾性材料により形成したエアノズルの断面図である。
【0091】
図11において、このエアノズル610は図3におけるノズル本体111と弾性体112を一体にし、ノズル本体111もシリコンゴム等より形成された構成になっている。従って、圧搾空気は複数の投入孔610Aから単一の第1流通孔610Bに流れ、複数の第2流通孔610Cを流れて吐出口610Dから吐出する。ただし、このままでは圧搾空気の風圧によってエアノズル610が振動したり変形したりするので、吐出口610D近傍を除く部所を金属や樹脂等の剛性を有する剛体615で被覆している。なお、剛体615で被覆しない部所は、第1流通孔610Bと第2流通孔610Cの境目の第1部所610Xから吐出口610Dの側に所定の長さを隔てた第2部所610Yと吐出口610Dの間とする。
【0092】
また、以上の各形態はエアノズルの吐出口近傍を弾性体により形成したものであるが、この吐出口近傍という意味は必ずしも吐出口を弾性体により形成するということではない。即ち、吐出口そのものは必ずしも弾性体である必要はなく剛体であってもよく、吐出口の近傍ではあるが吐出口から若干離れた位置に弾性体が位置することも含む。このようなエアノズルを図12に示す。
【0093】
エアノズル710は、金属により形成されたノズル本体711にシリコンゴム等より形成された弾性体712が接続し、更に弾性体712に金属や樹脂で形成された保護部材713が接続している。即ち、流通孔が漸次縮小して一定の口径に縮小された第1部所710Xから吐出口713Aの側に所定の長さを隔てた第2部所710Yと、吐出口713Aから第2部所710Yの側に所定の長さを隔てた第3部所710Zとの間に弾性体712を配置すればよい。
【0094】
なお、これらの接続方法は前述の接続方法を用いることができる。
【0095】
これにより、記録紙にジャムが発生した場合にエアノズル710は弾性体712によって変形可能であると共に、記録紙の先端部がエアノズル710の先端部に当接しても保護部材713によってエアノズル710が損傷することがない。
【0096】
次に、エアダクト150について説明する。
【0097】
エアダクト150の先端部は必ずしもエアノズル110の如く弾性体112を有していなく剛体であってもよい。しかし、図4に示す如く記録紙Pにジャムが生じたときに弾性体112が変形するが、エアノズル110にエアダクト150が近接しているので、弾性体112がエアダクト150の先端部に当接し、弾性体112の変形量が限定される場合がある。このような場合を想定すると、エアダクト150も先端部に弾性体を設けることにより、エアノズル110の弾性体112がより大きく変形し易くなり、記録紙Pにジャムが生じたときの対処が容易になる。
【0098】
以下に弾性体を有するエアダクト150について説明する。
【0099】
エアダクト150もエアノズル110と同様に吐出口に進むに従い大口径より小口径に漸次縮小する流通孔と一定の口径の流通孔を有する。但し、エアダクト150は風圧が低いので、弾性体を設ける部所は一定の口径の流通孔を有する部所に限定されず、口径が漸次縮小する部所に掛かっていても問題は生じない。
【0100】
このようなエアダクト150の弾性体162の斜視図を図13に示す。
【0101】
弾性体162はシリコンゴム等で形成されている。エアダクト150は風圧が低いが風量は大きいので、その吐出口162Aは大きく形成されている。従って、風圧が低くても周囲の枠だけでは変形し易いので、縦方向に複数のリブ162Bを設けて補強している。
【0102】
また、弾性体162をダクト本体161に装着するのには、図14のエアダクトの断面図に示す如く、弾性体162の端部とダクト本体161の端部とを嵌合させて、接着剤で接合すればよい。
【0103】
また、エアダクト150により高い風圧が必要なときは、図15に示す如く補強部材163を用い、図14のエアダクト150に対して補強部材163をネジ164で固定すればよい。
【0104】
次に、エアノズル110及びその関連の構成を図16及び図17に基づいて説明する。図16はエアノズル110と電磁弁123等の斜視図、図17はエアノズル110やエアダクト150に関するブロック図である。
【0105】
図16において、エアノズル110は記録紙Pの幅方向に長く形成されており、各エアノズル110の弾性体112には口径0.8mmのノズル孔112Bが2.5mmピッチで130個設けられている。
【0106】
エアノズル110のノズル本体111は5本のパイプ121で2個の配管部122に接続され、2個の配管部122は2個の電磁弁123にそれぞれ連通している。電磁弁123は図16に示す如くエアタンク124に接続されて統合され、エアタンク124はコンプレッサ125に接続されている。
【0107】
なお、電磁弁123は直動型であって、容量0.001m/s(100kPa)で応答速度は20msである。
【0108】
エアタンク124の容量は0.05mである。
【0109】
コンプレッサ125はレシプロ・オイルフリー型であって、電力は0.75kW、静圧は0.8MPa、風量は0.00125m/sである。
【0110】
以上の構成を有する図1に示す如き画像形成装置において、給紙カセット20内に収容された記録紙Pが給紙手段21により給紙されたことを給紙センサ102が検知する。給紙センサ102の検知時より、搬送された記録紙Pの先端部がニップ部Nの出口部に達する迄の時間は一定で予め分かっているので、CPU等から成る制御手段101はタイマ103によってその時間に達するより約15ms前に電磁弁123に開信号を送信し、50ms後に閉信号を送信する。エアタンク124にはコンプレッサ125により圧縮された圧搾空気が予め貯溜されているので、電磁弁123の開放に伴ってエアノズル110より圧搾空気が吐出し、ニップ部Nを通過した直後の記録紙Pの先端部に対して吹き付ける。
【0111】
このとき、コンプレッサ125によりエアタンク124に貯留された0.8MPa程度の圧搾空気が不図示のレギュレータによって減圧され、エアノズル110に供給される。エアノズル110からの吐出圧は0.1〜0.2MPaであり、吐出風量は100〜160m/s、吐出風量は0.005〜0.008m/sである。
【0112】
また、電磁弁123は開信号が入力されてから約20msで全開状態になるので、記録紙Pがニップ部から約10mm搬送された時点で最大風量に達する。エアノズル110からの圧搾空気の吐出最大風量は記録紙Pの分離に必要な風量の2〜3倍であるので、記録紙Pは圧搾空気の吐出風量が最大に達する前に、即ちニップ部Nからの搬送量が10mmに達する前に分離し始める。その後、電磁弁123に閉信号が入力されると、エアノズル110からの吐出される圧搾空気の吐出風量は徐々に減少し、記録紙Pの先端部がニップ部Nから25〜30mmに達するまで吐出し続ける。このときの吐出風量は最大付着量のトナー像があっても記録紙Pを分離できる風量である。
【0113】
なお、図16において、電磁弁123Aと連通する配管部122Aから分岐した3本のパイプ121B,121C,121Dはノズル本体111の中央部に接続され、電磁弁123Bと連通する配管部122Bから分岐した2本のパイプ121A,121Eはノズル本体111の周辺部に接続されている。
【0114】
そして、画像形成装置の上部に配置された操作パネルへ画像形成する記録紙のサイズが入力されると、記録紙サイズ検知手段104はそのサイズを検知し、制御手段101に送信する。例えば、A4サイズの記録紙を横送りする場合には制御手段101は電位弁123Aと電磁弁123Bの双方に開信号を送信する。これにより、全ての吐出口112Bから圧搾空気が吐出する。また、A4サイズの記録紙を縦送りする場合には制御手段101は電磁弁123Aのみに開信号を送信し電位弁123Bには開信号を送信しない。これにより、大凡A4サイズの縦寸法に相当する中央付近の吐出口112Bのみから圧搾空気が吐出する。以上の如く記録紙のサイズにより圧搾空気の吐出位置を変えることにより、圧搾空気の無駄な吐出を抑え、コンプレッサ125の消費電力を減少させることができる。
【0115】
また、このとき加熱ローラ82に内蔵されたハロゲンヒータ82Aも通紙領域に対応するものに通電し、電力を抑制する。
【0116】
以上の如く、エアノズル110より圧搾空気を吐出し、ニップ部Nを通過した記録紙Pの先端部を定着ベルト81から分離させた後は圧搾空気の吐出を中止し、ファン用スイッチ152をオンにして代わりにエアダクト150よりファン151により送風された空気を連続して吐出して記録紙Pに吹き付け、記録紙Pが定着ベルト81に付着することを防止する。
【0117】
ここで、記録紙Pの分離がある程度進み、記録紙Pの先端部が定着ベルト81より0.2mm以上開いてくると、開いた領域の全てに剥離力を作用させるためには、エアノズル110より吐出する圧搾空気の如く高圧で狭い範囲に吹き付ける空気より、低圧であっても風量が大きく広い範囲に吹き付ける空気の方が望ましい。そこで、エアノズル110からの吐出を停止し、記録紙Pにおける定着ベルト81より開いた先端部にエアダクト150からファン151により送風された空気を吹き付ける。これにより、エアノズル110からの吹き付けがなくても、トナーの粘着力に抗して記録紙Pに力が加えられ、記録紙Pは定着ローラ81より確実に分離する。
【0118】
一方、エアダクト150の吐出口162Aは、記録紙Pの厚み方向が1.6mmに形成されている。エアダクト150はファン151に接続されているが、ファン151は97×33mmのシロッコファンが5個設けられ、静圧は1280Paである。また、吐出風量は160×10−5/sである。
【0119】
なお、ファン151はシロッコファンに限定されるものではなく、軸流ファンやクロスフローファン、或いはブロア等でもよく、要は定着ベルト81から先端部が分離された記録紙Pを連続して分離可能な風量等を有する条件を備えていればよい。そして、ファン151の形式によってダクト150の形状が設定される。
【0120】
以上の如く説明した定着装置はエアノズルとエアダクトとを併用して記録紙の分離を行う構成であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアノズル若しくはエアダクトの何れか一方のみにより記録紙の分離を行う定着装置にも適用できる。例えばローラが小径の場合は、エアダクトより吐出した空気だけで記録紙の分離が可能であり、エアダクトの吐出口近傍を弾性体で構成すればよい。
【0121】
また、本発明の定着装置はベルト定着装置に限定されるものではなく、熱ローラ定着方式の定着装置等の他の形態の定着装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0122】
8 定着装置
81 定着ベルト
82 加熱ローラ
83 定着ローラ
84 加圧ローラ
101 制御手段
110,210,310,410,510,610,710 エアノズル
110X 第1部所
110Y 第2部所
111,711 ノズル本体
111B 第1流通孔
111C 第2流通孔
114,713 保護部材
112,162,212,312,412,512,712 弾性体
112A 第3流通孔
112B,162A 吐出口
123 電磁弁
125 コンプレッサ
150 エアダクト
151 ファン
163 補強部材
213,313,413 補強糸
615 剛体
P 記録材
N ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された定着部材と該定着部材に対して加圧する加圧部材とにより形成されたニップ部で記録材上のトナー像を定着する定着装置において、
空気を吐出して前記記録材に対して吹き付け、該記録材を前記定着部材から分離させる空気吐出手段を備え、
前記空気吐出手段は空気を流通させて吐出口より吐出させる管状の管状部材を有し、該管状部材における該吐出口の近傍は弾性体により形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記空気吐出手段はコンプレッサで生成された圧搾空気を吐出し、前記管状部材はエアノズルであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記エアノズルにおける圧搾空気を流通させる流通孔は前記吐出口に進むに従い大口径より小口径に漸次縮小した後に前記吐出口まで一定の口径に形成され、該流通孔が一定の口径に縮小された第1部所から前記吐出口の側に所定の長さを隔てた第2部所と前記吐出口との間を弾性体で形成したことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記エアノズルは弾性体により形成され、該エアノズルにおける圧搾空気を流通させる流通孔は前記吐出口に進むに従い大口径より小口径に漸次縮小した後に前記吐出口まで一定の口径に形成され、該流通孔が一定の口径に縮小された第1部所から所定の長さを隔てた第2部所と前記吐出口との間を除いた該エアノズルの外周を剛体で被覆したことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記エアノズルにおける圧搾空気を流通させる流通孔は前記吐出口に進むに従い大口径より小口径に漸次縮小した後に前記吐出口まで一定の口径に形成され、該流通孔が一定の口径に縮小された第1部所から前記吐出口の側に所定の長さを隔てた第2部所と、前記吐出口から該第2部所の側に所定の長さを隔てた第3部所との間を弾性体で形成したことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項6】
前記弾性体は補強部材を内蔵し、前記記録材の厚み方向のみに可撓性を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記補強部材は前記流通孔を環状に包囲する複数の補強糸であり、各々が圧搾空気の流通方向に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
複数の前記補強糸は前記吐出口から離れた部所に偏在していることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
複数の前記補強糸の互いの間隔は前記吐出口に近い程粗になるように配設されていることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項10】
前記補強部材は前記流通孔を包囲する複数の補強糸であり、複数の該補強糸の互いの間隔は前記定着部材の側が密で前記定着部材と反対の側が粗になるように配設されていることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項11】
前記吐出口周囲は鞘状の部材で被覆されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項12】
前記空気吐出手段はファンで送風された空気を吐出し、前記管状部材はエアダクトであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項13】
ファンにより送風された空気を吐出するエアダクトが前記エアノズルに並設されていることを特徴とする請求項2〜12の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記エアダクトにおける空気を吐出する吐出口の近傍は弾性体により形成されていることを特徴とする請求項13に記載の定着装置。
【請求項15】
前記弾性体はシリコンゴムにより形成されていることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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