説明

定着装置

【課題】定着装置の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図る。
【解決手段】定着装置は、定着ベルト110と、ハロゲンランプ120と、定着ベルト110の内周面に摺接するニップ板130と、ハロゲンランプ120を覆うように配置されたステイ160と、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟む加圧ローラ140とを備えている。ハロゲンランプ120は、ガラス管121内にフィラメント122を封入して両端部を閉じることで形成され、両端部を閉じるときに形成される封止部124が、ガラス管121の径方向に長く延びる板状をなし、かつ、ガラス管121の軸方向から見てガラス管121の表面から突出するように形成されている。ハロゲンランプ120は、上下方向における断面形状の大きさL1が、前後方向における断面形状の大きさL2よりも大きくなるように、封止部124が所定の向きを向いて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で用いられる定着装置として、例えば、特許文献1に示すように、筒状の定着ベルトと、定着ベルトの内側に配置されるハロゲンランプと、定着ベルトの内周面に摺接する押圧パッドと、押圧パッドとの間で定着ベルトを挟む加圧ロールとを備えたものが知られている。そして、ハロゲンランプは、例えば、特許文献2に示すように、ガラス管内にフィラメント(発熱体)を封入してガラス管の両端部を閉じることで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−47769号公報(図7)
【特許文献2】特開2010−9781号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハロゲンランプのようなヒータには、小型化(ガラス管の細径化)により、両端部を閉じるときに形成される封止部がガラス管の径よりも大きくなっているものがある。このようなヒータを前記したような構成の定着装置に用いる場合、ガラス管の表面から突出する封止部の向きは、ニップ板の大きさに影響を及ぼすので、定着装置の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図る上で重要な要素となる。
【0005】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、定着装置の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記した目的を達成するため、本発明の定着装置は、可撓性を有する筒状部材と、筒状部材の内側に配置されたヒータと、筒状部材の内周面に摺接するように配置され、ヒータからの輻射熱を受けるニップ部材と、筒状部材の内側でヒータを覆うように配置され、記録シートの搬送方向におけるニップ部材の両端部を支持するステイと、ニップ部材との間で筒状部材を挟むバックアップ部材とを備えている。
ヒータは、ガラス管内に発熱体を封入して両端部を閉じることで形成され、両端部を閉じるときに形成される封止部が、ガラス管の径方向に長く延びる板状をなし、かつ、ガラス管の軸方向から見てガラス管の表面から突出するように形成されている。
ヒータは、ヒータとニップ部材が対向する対向方向における封止部を含んだガラス管の断面形状の大きさが、対向方向と直交する直交方向における前記断面形状の大きさよりも大きくなるように、封止部が所定の向きを向いて配置されている。
【0007】
このような構成によれば、板状の封止部がガラス管の表面から突出するように形成されたヒータは、対向方向における封止部を含んだガラス管の断面形状の大きさが、直交方向における前記断面形状の大きさよりも大きくなるように、封止部が所定の向きを向いて配置されているので、ニップ板やステイを直交方向に小型化することができる。
【0008】
これにより、定着装置の小型化を図ることができるとともに、ニップ板の熱容量が小さくなるので、ヒータによりニップ板を迅速に加熱することができ、定着装置の立ち上がり時間の短縮化を図ることができる。
【0009】
(2)また、前記した目的を達成するため、本発明の定着装置は、前記したステイの代わりに(または前記したステイとともに)、筒状部材の内側でヒータを覆うように配置され、ヒータからの輻射熱をニップ部材に向けて反射する反射部材を備えていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、ニップ板や反射部材を直交方向に小型化できるので、定着装置の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図ることができる。さらに、反射部材を備えることで、ヒータからの輻射熱をニップ板に集めることができ、熱を効率良く利用することができる。これにより、ニップ板のさらなる小型化も可能となるので、ニップ板をより迅速に加熱することができ、立ち上がり時間のさらなる短縮化を図ることができる。
【0011】
(3)前記した各定着装置において、ヒータは、ガラス管内に発熱体とともにガスが封入され、ガスを封入するときに形成されるチップ部が、ガラス管の軸方向から見て、ガラス管の表面から封止部の長手方向に向けて突出するように形成されていることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、例えば、封止部の長手方向が対向方向を向き、チップ部が直交方向を向くというようなことがなくなるので、より確実にニップ板やステイ、反射部材を直交方向に小型化することができる。これにより、より確実に定着装置の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図ることができる。
【0013】
(4)前記したステイを備える定着装置において、ステイは、ヒータからの輻射熱をニップ部材に向けて反射する反射面を有していてもよい。
【0014】
このような構成によれば、ヒータからの輻射熱をニップ板に集めることができ、熱を効率良く利用することができる。これにより、ニップ板のさらなる小型化が可能となるので、ニップ板をより迅速に加熱することができ、立ち上がり時間のさらなる短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒータは、対向方向における封止部を含んだガラス管の断面形状の大きさが、直交方向における前記断面形状の大きさよりも大きくなるように、封止部が所定の向きを向いて配置されるので、定着装置の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る定着装置の断面図である。
【図3】定着装置の拡大断面図である。
【図4】ニップ板、ハロゲンランプ、反射部材、ステイ、サーモスタット、サーミスタおよびフレーム部材の斜視図である。
【図5】ニップ板の変形例を示す図である。
【図6】ニップ板の他の変形例を示す図である。
【図7】変形例に係る定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0018】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0019】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上に転写されたトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0020】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0021】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0022】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0023】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0024】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0025】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0026】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像(トナー)は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0027】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、ヒータの一例としてのハロゲンランプ120と、ニップ部材の一例としてのニップ板130と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ140と、反射部材150と、ステイ160と、サーモスタット170と、2つのサーミスタ180(図4参照)と、フレーム部材200とを主に備えている。
【0028】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のベルトであり、図示しないガイド部材により回転が案内されている。なお、本発明において、定着ベルト110の材質は特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの金属から形成されていてもよいし、ポリイミド樹脂などの樹脂から形成されていてもよいし、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されていてもよい。また、定着ベルト110は、多層構造、例えば、金属製ベルトの表面に摺動抵抗を低減するための樹脂層を有する構造であってもよいし、金属製ベルトの表面にゴム層などの弾性層を有する構造であってもよい。
【0029】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110(ニップ部N)を加熱することで用紙S上のトナーを加熱するヒータであり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0030】
図3,4に示すように、ハロゲンランプ120は、細長い略円筒状のガラス管121と、発熱体の一例としてのフィラメント122と、フィラメント122の端部と電気的に接続された一対の電極123とを主に備えている。このハロゲンランプ120は、ガラス管121内に螺旋状に巻かれたフィラメント122を封入してガラス管121の両端部を閉じ、さらに、ガラス管121内にハロゲン元素を含む不活性ガスを封入することで構成されている。
【0031】
ガラス管121には、その両端部を閉じるときに形成される封止部124が、ガラス管121の径方向(図3の上下方向)に長く延びる略平板状をなしており、さらに、ガラス管121の軸方向(左右方向)から見てガラス管121の表面から突出するように形成されている。
【0032】
また、ガラス管121には、不活性ガスを封入するときに形成されるチップ部125が、左右方向から見て、ガラス管121の表面から封止部124の長手方向(上方向)に向けて突出するように形成されている。補足すると、チップ部125は、左右方向から見て、封止部124のガラス管121の表面から突出する部分と重なるように形成されている(図3参照)。
【0033】
このような構成のハロゲンランプ120は、図3に示すように、当該ハロゲンランプ120とニップ板130が対向する対向方向(上下方向)における封止部124を含んだガラス管121の断面形状の大きさL1が、対向方向と直交する直交方向(前後方向)における断面形状の大きさL2よりも大きくなるように、封止部124が所定の向きを向いて配置されている。より具体的に、本実施形態においては、ハロゲンランプ120は、封止部124の長手方向が上下方向を向いて(上下方向に沿うように)配置されている。
【0034】
これにより、後述する反射部材150やステイ160の前後の壁(符号省略)をハロゲンランプ120に近づけることができるので、反射部材150やステイ160、そしてニップ板130を前後方向に小型化することができる。
【0035】
ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が筒状の定着ベルト110の内周面に摺接するように配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、金属板、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを屈曲させることにより形成されており、本体部131と、接続部132と、フランジ部133と、流入防止部134とを主に有している。
【0036】
本体部131は、定着ベルト110の内周面と摺接して加圧ローラ140との間で定着ベルト110を挟む部分であり、前後方向に沿って平らに延びる平板状に形成されている。本体部131の定着ベルト110と摺接する面は、用紙Sの搬送方向(前後方向)および定着ベルト110の軸方向(左右方向)の全範囲にわたって略均一な平面となっている。本実施形態において、ニップ板130は、この本体部131においてのみ加圧ローラ140との間で定着ベルト110を挟持するようになっている。
【0037】
図4に示すように、本体部131は、その後端部(用紙Sの搬送方向における下流側の端部)から搬送方向下流側(後方)に向けて延びる、略平板状の第1突出部135および2つの第2突出部136を有している。
【0038】
第1突出部135は、本体部131の左右方向における中央付近に1つ形成されており、その上面にサーモスタット170が対面して配置される。
第2突出部136は、本体部131の左右方向における中央付近と右端付近にそれぞれ1つずつ形成されており、それぞれの上面にサーミスタ180が対面して配置される。
【0039】
図3に戻り、接続部132は、本体部131の前端部(用紙Sの搬送方向における上流側の端部)から加圧ローラ140とは反対側、具体的には、前斜め上方に向けて延びる部分であり、本体部131とフランジ部133を接続するように形成されている。
【0040】
フランジ部133は、接続部132の前端部から搬送方向上流側(前方)に向けて延びる部分である。このフランジ部133と接続部132は、略V形状をなしており、定着ベルト110の内周面に対面する潤滑剤保持部137を形成している。この潤滑剤保持部137には、潤滑剤Gが保持されている。
【0041】
潤滑剤保持部137に保持された潤滑剤Gは、定着ベルト110の回転に伴って、ニップ板130(本体部131)と定着ベルト110との間に入り込むことで、ニップ板130と定着ベルト110との摩擦を低減する。なお、潤滑剤Gとしては、例えば、耐熱性のフッ素グリスなどを採用することができる。
【0042】
流入防止部134は、フランジ部133の前端部(搬送方向上流側の端部)から加圧ローラ140が配置された側とは反対側、具体的には、上方に向けて延びる部分である。この流入防止部134は、前方から見て、ニップ板130とステイ160の継ぎ目、より詳細には、ニップ板130とステイ160とによって挟持された反射部材150のフランジ部152を覆うように形成されている。
【0043】
このような流入防止部134を形成することにより、流入防止部134が壁となって、ニップ板130の上面(定着ベルト110と摺接する面とは反対側の面)、さらにいうと、ニップ板130とステイ160の継ぎ目への潤滑剤Gの流入を防止することができるようになっている。これにより、ニップ板130と定着ベルト110との間に保持される潤滑剤Gの減少を抑制することができる。
【0044】
本実施形態において、ニップ板130は、本体部131と接続部132をつなぐ第1屈曲部B1の曲率が、フランジ部133と流入防止部134をつなぐ第2屈曲部B2の曲率よりも小さくなっている。別の言い方をすると、第1屈曲部B1は、略鈍角形状をなしており、第2屈曲部B2は、略直角形状をなしている。
【0045】
ここで、第1屈曲部B1は、本体部131の前端部にあるため、ニップ板130(本体部131)と加圧ローラ140との間に向けて案内される定着ベルト110の内周面が摺接する可能性がある。そこで、第1屈曲部B1の曲率を小さくすることで、第1屈曲部B1と定着ベルト110の内周面が摺接した場合における、定着ベルト110の回転トルクの増大や、定着ベルト110の内周面の傷や摩耗を抑制している。
【0046】
図2に示すように、加圧ローラ140は、ニップ板130(本体部131)との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部Nを形成する部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ部Nを形成するために、ニップ板130および加圧ローラ140の一方を他方に向けて付勢している。
【0047】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間(ニップ部N)を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0048】
図示は省略するが、本実施形態において、加圧ローラ140は、左右方向両端に向けて徐々に径が大きくなる逆クラウン形状のローラである。これにより、ニップ板130と加圧ローラ140の間を搬送される定着ベルト110に皺が発生したり、定着ベルト110が左右方向の一方側に寄ったりすることを抑制することができるようになっている。
【0049】
反射部材150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱(主に前後方向や上方向に向けて放射された輻射熱)をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を取り囲む(覆う)ように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0050】
このような反射部材150によってハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に集めることで、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率良く利用することができ、ニップ板130および定着ベルト110を迅速に加熱することができる。
【0051】
反射部材150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に屈曲させることにより形成されている。より詳細に、反射部材150は、湾曲形状(断面視略U形状)をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端部から前後方向外側に向けて延びるフランジ部152とを主に有している。
【0052】
ステイ160は、前後方向におけるニップ板130の両端部を支持する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120および反射部材150を覆うように配置されている。このステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを反射部材150(反射部151)に沿った形状(断面視略U形状)に屈曲させることにより形成されている。
【0053】
より詳細に、断面視略U形状のステイ160は、ニップ板130を挟んで加圧ローラ140とは反対側に配置され、図3に示すように、前側の下端部161が、反射部材150の前側のフランジ部152を介してニップ板130のフランジ部133を上から支持しており、後側の下端部162が、反射部材150の後側のフランジ部152を介して本体部131の後端(ニップ部Nよりも下流側の部分)を上から支持している。
【0054】
このようなステイ160は、ニップ板130に対し下方(加圧ローラ140側)から力が作用したときにその力を受け止めてニップ板130を支持する。なお、ここでいう力は、主に、加圧ローラ140がニップ板130を付勢する構成においては、加圧ローラ140からの付勢力をいうものとし、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0055】
ニップ板130は、フランジ部133と本体部131の後端とが反射部材150のフランジ部152を介してステイ160に支持されていることで、本体部131と接続部132の上面がハロゲンランプ120と直接対向するように配置されることとなる。これにより、本体部131や接続部132は、ハロゲンランプ120や反射部材150からの輻射熱により直接加熱されることとなる。
【0056】
図2,4に示すように、サーモスタット170は、ニップ板130の温度を検出する部材であり、定着ベルト110の内側で、反射部材150およびステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側に配置されている。
【0057】
さらに述べると、サーモスタット170は、温度検知面(下面)が、第1突出部135の上面(加圧ローラ140側とは反対側の面)に対向して配置されている。第1突出部135は、ハロゲンランプ120によって加熱される本体部131から直接延びる部分なので、この第1突出部135にサーモスタット170を対向して配置することで、ニップ板130の温度を精度よく検出することができる。
【0058】
また、サーモスタット170は、フレーム部材200の第1フレーム210に設けられた第1位置決め部231に嵌合することで、前後方向および左右方向に位置決めされており、さらに、コイルバネ191によって第1突出部135に付勢されている。これにより、サーモスタット170とニップ板130の位置関係が安定するので、ニップ板130の温度をより精度良く検出することができるようになっている。
【0059】
サーモスタット170は、所定の温度を検出したときに通電を遮断するように構成されており、ハロゲンランプ120に電力を供給する配線の途中に設けられている。これにより、ニップ板130が過熱した場合には、サーモスタット170が通電を遮断するので、ハロゲンランプ120への通電を速やかに遮断することができるようになっている。
【0060】
サーミスタ180は、ニップ板130の温度を検出する温度センサであり、図示は省略するが、サーモスタット170と同様に、定着ベルト110の内側で、反射部材150およびステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側に配置されている。
【0061】
さらに述べると、サーミスタ180は、温度検知面(下面)が、第2突出部136の上面に対向して配置されている。第2突出部136も、本体部131から直接延びる部分なので、この第2突出部136にサーミスタ180を対向して配置することで、ニップ板130の温度を精度よく検出することができる。
【0062】
また、サーミスタ180は、フレーム部材200の第1フレーム210に設けられた第2位置決め部232に嵌合することで、前後方向および左右方向に位置決めされており、さらに、コイルバネ192によって第2突出部136に付勢されている。これにより、ニップ板130の温度をより精度良く検出することができるようになっている。
【0063】
サーミスタ180の検出結果は、本体筐体2内に設けられた図示しない制御基板に出力され、ハロゲンランプ120(定着装置100)の温度制御に利用される。
【0064】
フレーム部材200は、サーモスタット170やサーミスタ180、コイルバネ191,192などを支持する部材であり、定着ベルト110の内側においてステイ160を覆うように配置されている。このフレーム部材200は、第1フレーム210と、第2フレーム220とを主に備えて構成されている。
【0065】
第1フレーム210は、断面視略U形状をなしており、反射部材150およびステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側に配置されている。この第1フレーム210には、サーモスタット170およびサーミスタ180が嵌合する第1位置決め部231と第2位置決め部232が形成されている。
【0066】
第2フレーム220は、断面視略L形状をなし、第1フレーム210を挟んでステイ160や反射部材150とは反対側に配置されている。この第2フレーム220には、コイルバネ191,192を支持するボス状の支持部241(1つのみ図示)が形成されている。コイルバネ191,192は、上端が支持部241に係合することで第2フレーム220に支持される。
【0067】
このようなフレーム部材200(第1フレーム210および第2フレーム220)は、ネジなどにより、剛性が高いステイ160に固定されている。これにより、サーモスタット170およびサーミスタ180の位置を安定させることができるようになっている。
【0068】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用効果を得ることができる。
封止部124がガラス管121の表面から突出するハロゲンランプ120は、上下方向における断面形状の大きさL1が、前後方向における断面形状の大きさL2よりも大きくなるように、封止部124が所定の向きを向いて配置されているので、ニップ板130や反射部材150、ステイ160などを前後方向に小型化することができる。
【0069】
これにより、定着装置100の小型化を図ることができる。また、ニップ板130が小型化することにより、ニップ板130の熱容量が小さくなるので、ハロゲンランプ120によりニップ板130を迅速に加熱することができ、定着装置100の立ち上がり時間の短縮化を図ることができる。
【0070】
特に、本実施形態では、反射部材150を備えるので、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率良く利用することができ、ニップ板130のさらなる小型化を図ることが可能となる。これにより、立ち上がり時間のさらなる短縮化を図ることができる。
【0071】
チップ部125が封止部124の長手方向に向けて突出するように形成されているので、例えば、封止部124の長手方向が上下方向を向き、チップ部125が前後方向を向くというようなことがない。これにより、より確実にニップ板130や反射部材150、ステイ160を前後方向に小型化できるので、より確実に定着装置100の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図ることができる。
【0072】
ニップ板130に潤滑剤保持部137が形成されているので、潤滑剤保持部137に保持された潤滑剤Gが本体部131と定着ベルト110の間に入り込むことで、ニップ板130と定着ベルト110との摩擦を低減することができる。そして、本体部131が平板状(略均一な平面)に形成されているので、ニップ板130と加圧ローラ140の間を搬送される定着ベルト110には局所的な力が加わりにくい。これらにより、例えば、ニップ板の定着ベルトと摺接する面に潤滑剤を保持するための潤滑剤保持部を形成するような構成と比較して、定着ベルト110をより良好に回転させることができる。
【0073】
また、潤滑剤保持部137を金属板を屈曲させることにより形成したので、肉厚のニップ部材に潤滑剤を保持させる潤滑剤保持部を形成する構成と比較して、ニップ板130の板厚を薄く保って熱容量を小さくすることができる。これにより、ニップ板130を迅速に加熱することができるので、立ち上がり時間を短くすることができる。
【0074】
また、ニップ板130を迅速に加熱できることで、ニップ板130から熱を受ける潤滑剤Gの粘度を迅速に適正な粘度とすることができる。そのため、特に冬場や寒冷地などの低温の状況下において定着装置100を動作させる場合であっても、潤滑剤Gを迅速に温めてニップ板130と定着ベルト110との摩擦を迅速に低減することができる。これにより、低温の状況下の始動においても、定着ベルト110を良好に回転させることができる。
【0075】
ステイ160がフランジ部133と本体部131の後端を支持することで接続部132がハロゲンランプ120と直接対向するので、潤滑剤保持部137を直接温めることができる。これにより、潤滑剤保持部137に保持された潤滑剤Gをより迅速に温めることができるので、低温の状況下の始動においても、定着ベルト110をより良好に回転させることができる。
【0076】
ニップ板130が流入防止部134を有するので、ニップ板130とステイ160の継ぎ目への潤滑剤Gの流入を防止することができる。これにより、ニップ板130と定着ベルト110との間に保持される潤滑剤Gの減少を抑制できるので、定着ベルト110の良好な回転を維持することができる。
【0077】
加圧ローラ140が逆クラウン形状のローラなので、ニップ板130と加圧ローラ140の間を搬送される定着ベルト110に皺が発生したり、定着ベルト110が左右一方側に寄ったりすることを抑制することができる。
【0078】
サーモスタット170やサーミスタ180が本体部131から直接延びる突出部135,136の上面に対向して配置されているので、ニップ板130の温度を精度よく検出でき、定着装置100における温度制御の精度を向上させることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0080】
前記実施形態では、ニップ板130は、本体部131の前側(搬送方向上流側)にのみ潤滑剤保持部137(接続部132およびフランジ部133)が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、潤滑剤保持部137(接続部132およびフランジ部133)は、本体部131の前後両方(搬送方向の両側)に形成されていてもよい。
【0081】
前記実施形態では、ニップ板130は、本体部131が前後方向に沿って平らに延びる平板状に形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明において、ニップ板の本体部は、曲面に沿って延びる平板状であってもよい。
【0082】
例えば、本体部131(少なくとも定着ベルト110と摺接する面)は、図6に示すように、加圧ローラ140側に向けて凸となる曲面形状をなしていてもよいし、図示は省略するが、ハロゲンランプ120側に向けて凸となる曲面形状をなしていてもよい。なお、筒状部材の良好な回転を実現するため、曲面形状の本体部の曲率は、本体部と接続部をつなぐ第1屈曲部の曲率よりも小さいことが好ましい。
【0083】
前記実施形態では、ステイ160が、ニップ板130のフランジ部133と本体部131の後端とを支持するように構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、本体部131の前後にフランジ部133が形成される場合には、ステイ160が前後のフランジ部133を支持するように構成されていてもよい。
【0084】
前記実施形態では、ニップ板130に流入防止部134が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明において、流入防止部は任意の構成であるため、形成されていなくてもよい。
【0085】
前記実施形態では、ハロゲンランプ120は、封止部124が上下方向を向いて配置されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、ハロゲンランプ120は、封止部124が上下方向に対して傾くように(所定の角度をなすように)配置されていてもよい。この場合においても、定着装置100の小型化や立ち上がり時間の短縮化を図るため、ハロゲンランプ120は、上下方向における断面形状の大きさL1が、前後方向における断面形状の大きさL2よりも大きくなるように配置される。
【0086】
なお、本発明において、ハロゲンランプ120は、図3や図7に示したように、前後方向(対向方向と直交する直交方向)における断面形状の大きさL2が、ガラス管121の径と等しくなるように、封止部124が所定の向きを向いて配置されることが好ましい。
【0087】
前記実施形態では、ハロゲンランプ120は、チップ部125が封止部124の長手方向に向けて突出するように形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、チップ部は、ガラス管の軸方向から見て、封止部の長手方向とは異なる方向に突出していてもよい。この場合、ガラス管の軸方向から見て、チップ部が突出する方向は、封止部の長手方向に対し、例えば、20°程度ずれていてもよい。
【0088】
前記実施形態では、反射部材150とステイ160の両方を備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、ステイのみを備える構成としてもよいし、反射部材のみを備える構成としてもよい。
【0089】
なお、ステイのみを備える(反射部材を設けない)構成とした場合、ステイは、ヒータと対向する側の面に、ヒータからの輻射熱をニップ部材に向けて反射する反射面を有していてもよい(すなわち、ステイと反射部材が一体に構成されていてもよい。)。これによれば、ヒータからの輻射熱を効率良く利用することができるので、ニップ部材や筒状部材を迅速に加熱することができる。また、別部品としての反射部材を備えないことで、反射部材を配置するためのスペースが不要となるので、ステイをヒータにより近づけることができ、ステイやニップ部材を記録シートの搬送方向により小型化することができる。
【0090】
前記実施形態では、ヒータとしてハロゲンランプ120(ハロゲンヒータ)を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、カーボンヒータなどであってもよい。
【0091】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0092】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【0093】
前記実施形態では、本発明の定着装置を備える画像形成装置として、モノクロの画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、カラーの画像を形成するプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
100 定着装置
110 定着ベルト
120 ハロゲンランプ
121 ガラス管
122 フィラメント
124 封止部
125 チップ部
130 ニップ板
131 本体部
133 フランジ部
140 加圧ローラ
150 反射部材
160 ステイ
170 サーモスタット
180 サーミスタ
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置であって、
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材の内側に配置されたヒータと、
前記筒状部材の内周面に摺接するように配置され、前記ヒータからの輻射熱を受けるニップ部材と、
前記筒状部材の内側で前記ヒータを覆うように配置され、記録シートの搬送方向における前記ニップ部材の両端部を支持するステイと、
前記ニップ部材との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材と、を備え、
前記ヒータは、
ガラス管内に発熱体を封入して両端部を閉じることで形成され、両端部を閉じるときに形成される封止部が、前記ガラス管の径方向に長く延びる板状をなし、かつ、前記ガラス管の軸方向から見て前記ガラス管の表面から突出するように形成され、
前記ヒータと前記ニップ部材が対向する対向方向における前記封止部を含んだガラス管の断面形状の大きさが、前記対向方向と直交する直交方向における前記断面形状の大きさよりも大きくなるように、前記封止部が所定の向きを向いて配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置であって、
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材の内側に配置されたヒータと、
前記筒状部材の内周面に摺接するように配置され、前記ヒータからの輻射熱を受けるニップ部材と、
前記筒状部材の内側で前記ヒータを覆うように配置され、前記ヒータからの輻射熱を前記ニップ部材に向けて反射する反射部材と、
前記ニップ部材との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材と、を備え、
前記ヒータは、
ガラス管内に発熱体を封入して両端部を閉じることで形成され、両端部を閉じるときに形成される封止部が、前記ガラス管の径方向に長く延びる板状をなし、かつ、前記ガラス管の軸方向から見て前記ガラス管の表面から突出するように形成され、
前記ヒータと前記ニップ部材が対向する対向方向における前記封止部を含んだガラス管の断面形状の大きさが、前記対向方向と直交する直交方向における前記断面形状の大きさよりも大きくなるように、前記封止部が所定の向きを向いて配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記ガラス管内に前記発熱体とともにガスが封入され、ガスを封入するときに形成されるチップ部が、前記ガラス管の軸方向から見て、前記ガラス管の表面から前記封止部の長手方向に向けて突出するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ステイは、前記ヒータからの輻射熱を前記ニップ部材に向けて反射する反射面を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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