説明

定量注出器

【課題】容器内からの内容物の流出を防止し計量にかかわる内容物のみを注出できる定量注出器を提案する。
【解決手段】容器内の内容物の定量取り入れを可能とする貯溜空間を備え、注出経路を通して貯溜空間内の内容物を注出する定量注出器を、容器(1)内に通じる通路(2a)を有し容器(1)の口部(1a)において装着される弁座(2)と、内容物を注出する注出経路(3a)を有し該弁座(2)と協働してその内部に貯溜空間(M)を形成するヘッド(3)と、貯溜空間(M)内においてスライド可能に弾発支持され前記注出経路(3a)及び弁座(2)の通路(2a)を交互に開閉して貯溜空間(M)への内容物の定量取り入れと該貯溜空間(M)からの内容物の注出を行なう弁体(4)と、前記ヘッド(3)を内側に納めて容器(1)の口部側壁に係合保持されるカバー(6)とにて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の内容物を一回使用する分だけ取り出すのに好適な定量注出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
育毛剤の如き薬液等、一回の使用量が定められたものは、容器内の内容物を取り出すに際しては計量する必要があり、従来は、中栓に配置された円筒部を適宜上下動させて第一弁及び第二弁を交互に開閉することで容器内の内容物を計量筒部に流し込み、該計量筒部内の内容物を注出口を通して外部に排出するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−337910号公報
【0003】
ところで、従来のこの種の定量注出器は、計量にかかわる内容物を注出している最中に弁体に不用意な力が作用すると該弁体が簡単にスライドしてしまい、容器と計量筒部とを隔絶する弁が開放されることもあって、この場合、計量筒部内に容器内の内容物が流れ込んでしまう結果、定量注出ができないおそれがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は簡便な操作のもので計量を行なうことが可能で、計量に係わる内容物のみ確実に注出できる新規な定量注出器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器内の内容物の定量取り入れを可能とする貯溜空間を備え、注出経路を通して貯溜空間内の内容物を注出する定量注出器であって、
容器内に通じる通路を有し容器の口部において装着される弁座と、内容物を注出する注出経路を有し該弁座と協働してその内部に貯溜空間を形成するヘッドと、貯溜空間内においてスライド可能に弾性支持され前記注出経路及び弁座の通路を交互に開閉して貯溜空間への内容物の定量取り入れと該貯溜空間からの内容物の注出を行なう弁体と、前記ヘッドを内側に納めて容器の口部側壁に係合保持されるカバーとからなることを特徴とする定量注出器である。
【0006】
また、本発明は、容器内の内容物の定量取り入れを可能とする貯溜空間を備え、注出経路を通して貯溜空間内の内容物を注出する定量注出器であって、
容器内に通じる通路を有し容器の口部において装着される弁座と、この弁座と協働してその内部に貯溜空間を形成するとともに該貯溜空間及び外界を相互につなぐ貫通孔を有するヘッドと、このヘッドの貫通孔に摺動可能に嵌合保持される頭部を有し前記貯溜空間内において往復移動可能に弾性支持されるロッドと、前記ヘッドを内側に納め容器の口部側壁に係合保持されるカバーとからなり、
前記ロッドに、該ロッドの往復移動に合わせて弁座の通路を開閉する弁部と、該弁座の通路が開放された状態で閉塞されるが該通路が閉じた状態では開放されて貯溜空間内の内容物を外界に向けて注出する注出経路を設けたことを特徴とする定量注出器である。
【0007】
上記の構成になる定量注出器においては、前記注出経路を、ヘッドの貫通孔の側壁に向けて開口する横通路と、この通路につながりロッドの軸心に沿いその先端に向けて開口する縦通路にて構成することができる。
【0008】
また、弁体又はロッドの先端には、注出経路の出側先端にてエアー置換用の隙間を形成して内容物の効率的な注出を行なう凸部を設けることができる他、接触面積の拡大を図って注出姿勢を安定維持するためにディスクを設置することもできる。
【0009】
前記カバーについては、その内側に弁体の頭部又はロッドの先端に係合し該カバーの取り外しに帯同させて弁体又はロッドを移動させる係合突起を有するものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
弁体を、板ばねの如き部材にて弾性支持することで、それを一気に撥ね上げ、撥ね下げることができるため注出経路、弁座の通路の開閉を確実に行なうことができるとともに、その際の弾性力が弁体の押しつけ力として作用し弁体の姿勢が比較的強固に維持されるため、不用意な力が付加されても弁体が簡単にスライド(位置ずれ)することがなく貯溜空間に取り入れた内容物のみの注出が可能になる。
【0011】
ロッドを弾性支持する構造のものにおいても、弾性力によってロッドの姿勢が維持されるため該ロッドに不用意な力が付加されても簡単にスライドすることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう定量注出器の実施の形態を示したものである。
【0013】
図における1は内容物を収納する容器、2は容器1の口部1aにおいて装着される弁座である。この弁座2はその中央に容器内に通じる通路2aを有しており、該通路2a端部から上方へ傾斜する天板を形成し、天板外端部付近下面より容器1の口部1aに圧入する環状足部を垂下させている。
【0014】
また、3は容器1の口部1aの外側においてねじ止め(あるいはアンダーカット係合)された例で示したヘッドである。このヘッド3は内容物を注出するための注出経路3aを有しており、弁座2と協働してその内部に内容物を定量取り入れるための貯溜空間Mを形成する。
【0015】
4は貯溜空間Mに配置された弁体である。この弁体4はヘッド3の注出経路3aを通り抜けて外部に突出する頭部4aと、弁座2の通路2aに合致して該通路2aを閉塞する基部4bを有するもので、頭部4aの周りには複数本の縦溝4cが形成されており貯溜空間Mに存在する内容物はヘッド3の注出経路3aと縦溝4cの相互間に形成される隙間を通して注出される。
【0016】
5は弁体4の基部4b及び容器1の口部1a(本実施例では、ヘッド3に固着された環状壁部を指す)の相互間に設置され該弁体4を弾性支持する板ばねの如き弾性部材である。この弾性部材5は両端(接続端)が揺動可能で2方向(上下)に弾性反転(弾性力は弁体に対して常に作用している)できるようになっており基部4bの周りに間隔をおいて複数枚設置される。
【0017】
弾性部材5にて支持した弁体4を下方にスライドさせた図1に示すような状態では、弁体4の基部4bが弁座2の通路2aに適合、閉塞し(この時、注出経路3aは開放されていて内容物の定量注出が可能となる)、容器1を反転させても容器1内の内容物が貯溜空間Mに流れ込むことはなく、逆に、弁体4を上方にスライドさせた図2に示すような状態では、弁体4の頭部4aの本体部分が注出経路3aに嵌合、閉塞し(この時、通路2aは開放され内容物の計量が可能となる)注出経路3aを通して内容物が漏れ出すことがない。
【0018】
また、6はヘッド3を内側に納めて容器1の口部1a側壁にねじあるはアンダーカットによって係合保持されるカバーである。このカバー6はその内側に弁体4の頭部4aに係合する係合突起6aを有しており、カバー6の取り外しに帯同させて弁体4をスライドさせることができるようになっている。
【0019】
容器1内の内容物を計量するには、まず、カバー6を取り外す。この時、弁体4は図2に示すような状態にあり、図3に示す如く、容器1を反転することで貯溜空間M内に内容物の定量取り入れが可能となる。
【0020】
貯溜空間M内の内容物を注出するには、容器1を図3に示すような姿勢のまま、供給箇所(例えば育毛剤にあっては頭皮等)に接触させ、弾性部材5の弾発力を上回る程度の力でもって弁体4を押し込む。
【0021】
そうすると、弁体4は図4に示すような状態になり貯溜空間M内の内容物のみが注出経路3aを通して注出されることとなる。
【0022】
図5は本発明にしたがう定量注出器の他の実施の形態を示したものである。
図における7は容器1の口部1aにおいて装着される弁座である。この弁座7は容器内に通じる通路7aを有する。
【0023】
また、8はヘッドである。このヘッド8は弁座7と協働してその内部に貯溜空間Mを形成するとともに該貯溜空間M及び外界を相互につなぐ貫通孔8aを有する。
【0024】
9はヘッド8の貫通孔8aに嵌合保持する頭部を有し貯溜空間M内において往復移動可能なロッド、10はロッド9を後述する弁部9aと容器1の口部1a(本実施例では、ヘッド3に固着された環状壁部を指す)の相互間にて弾発支持する板ばねの如き弾性部材、11はヘッド8を内側に納め容器1の口部側壁に係合保持されるカバー、そして12はロッド9の先端に設けられ注出経路の出側先端でエアー置換用の隙間を形成して内容物の効率的な注出を行なう凸部である。
【0025】
上記の構成になる注出器のロッド9は、その往復移動に合わせて弁座7の通路7aを開閉する弁部9aと、該弁座7の通路7aが開放された状態で閉塞するが該通路7aが閉じた状態で開放して貯溜空間M内の内容物を外界へ向けて注出する注出経路9bを有する構造のもので、注出経路9bはヘッド8の貫通孔8aの側壁に向けて開口する横通路9bと、この通路9bにつながりロッド9の軸心Pに沿いその先端に向けて開口する縦通路9bからなっている。
【0026】
弾性部材10にて支持されたロッド9が下方に位置する図5に示すような状態では、ロッド9の弁部9aが弁座7の通路7aに適合、閉塞し(この時、注出経路9bは開放されていて内容物の定量注出が可能となる)、容器1を反転させても容器1内の内容物が貯溜空間Mに流れ込むことはなく、逆に、ロッド9を上方に移動させた図6に示すような状態では、ロッド9の注出経路9bが貫通孔8aの壁部に密着、閉塞され(この時、通路7aは開放され内容物の計量が可能となる)注出経路9bを通して内容物が漏れ出すことがない。
【0027】
ロッド9を往復移動させるには、上掲図1に示した構造の注出器と同様に、カバー11の内側にロッド9の頭部に係合する係合突起11aを設けておき、カバー11の取り外しに際してカバー11の動きに帯同させればよい。
【0028】
内容物の計量と計量にかかわる内容物の注出は上掲図1に示した構成の注出器と同様の手順にて行なうことができるもので、その説明は省略するが、この例の定量注出器は、図7に示すように、ロッド9の先端に設けられた凸部12が注出経路9bの出側先端でエアー置換用の隙間13を形成するため内容物を効率的に注出できる利点がある。なお、凸部12はエアー置換用の隙間13を形成するのみならず、育毛剤等の薬品注出器として使用する際には、刺激、マッサージ効果をも奏するものであり、その個数(あるいは本数)は適宜に選択される。
【0029】
ロッド9の先端には注出経路9bの出側先端を取り囲むように一体成形された図8に示すようなディスク14を設置することもでき、これにより接触面積の拡大を図って内容物を注出する際の注出姿勢を安定化させることができる。
【0030】
弁座7について上掲図5〜8においてはロッド9の凹部に入り込み該ロッド9の往復移動を誘導するガイド7bを設けたものとして示したが、このようなガイド7bにてロッド9を誘導することでロッド9の移動がスムーズになる。
【0031】
図9、図10(a)(b)は本発明にしたがう定量注出器のさらに他の実施の形態を示したものである。
【0032】
図9は上掲図1に示した構成の注出器と基本的には同構成のものであり、相違点は弾性部材5を支持する環状壁部の固着位置を図1に示したヘッド3に代えて弁座2の内側としたところにある。
【0033】
すなわち、この実施例は、弁座2の外周より立ち上がる壁部を形成し同壁部内に弾性部材5を支持する環状壁部を圧入するか、又はアンダーカット嵌合等の方法により固着するものであり、このような構成を採用しても図1に示した注出器と同様の作用、効果を奏することになる。
【0034】
図10(a)(b)は、上掲図1に示した構成のものに傘状の断面を有する押圧塗布部材15を配置したものであり、図10(a)は要部の外観斜視図であり、図10(b)はその断面を示した図である。
【0035】
押圧塗布部材15の表面には複数の突起部15aが成形されており、また、内容物の注出に際して取り付け部材15自体が抵抗にならないように縦溝4cにつながるスリット15bを有している。
【0036】
このような押圧塗布部材15を弁体4の頭部4aに取り付けることで、内容物の注出、塗布に際して塗布部位に刺激、マッサージ効果を与えることが可能となる。なお、この実施例では、図示しないカバー6の取り外しに帯同させて弁体4をスライドさせるため、押圧塗布部材15の外周下端に係合する係合突起をカバー6に設ける必要がある。
【0037】
本発明の定量注出器は、構成部材の全てを合成樹脂にて成形できるもので、育毛剤等の薬品の他、化粧料や調味料等の容器に適用可能でありその用途は広範囲にわたる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
計量した内容物のみを確実に注出できる定量注出器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にしたがう定量注出器の実施の形態を示した図である。
【図2】弁体をスライドさせた状態を示した図である。
【図3】図1に示した定量注出器の計量要領の説明図である。
【図4】図1に示した定量注出器の注出要領の説明図である。
【図5】本発明にしたがう定量注出器の他の実施の形態を示した図である。
【図6】ロッドを移動させた状態を示した図である。
【図7】図5に示した注出器の注出状態を示した図である。
【図8】本発明にしたがう定量注出器のさらに他の実施の形態を示した図である。
【図9】本発明にしたがう定量注出器のさらに他の実施の形態を示した図である。
【図10】本発明にしたがう定量注出器のさらに他の実施の形態を示した図であり、(a)は要部の外観斜図であり、(b)は要部の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 容器
1a 口部
2 弁座
2a 通路
3 ヘッド
3a 注出経路
4 弁体
4a 頭部
4b 基部
4c 縦溝
5 弾発部材
6 カバー
6a 係合突起
7 弁座
7a 通路
8 ヘッド
8a 貫通孔
9 ロッド
9a 頭部
9b 注出経路
10 弾発部材
11 カバー
12 凸部
13 隙間
14 ディスク
15 押圧塗布部材
15a 突起部
15b スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の内容物の定量取り入れを可能とする貯溜空間を備え、注出経路を通して貯溜空間内の内容物を注出する定量注出器であって、
容器内に通じる通路を有し容器の口部において装着される弁座と、内容物を注出する注出経路を有し該弁座と協働してその内部に貯溜空間を形成するヘッドと、貯溜空間内においてスライド可能に弾性支持され前記注出経路及び弁座の通路を交互に開閉して貯溜空間への内容物の定量取り入れと該貯溜空間からの内容物の注出を行なう弁体と、前記ヘッドを内側に納めて容器の口部側壁に係合保持されるカバーとからなることを特徴とする定量注出器。
【請求項2】
容器内の内容物の定量取り入れを可能とする貯溜空間を備え、注出経路を通して貯溜空間内の内容物を注出する定量注出器であって、
容器内に通じる通路を有し容器の口部において装着される弁座と、この弁座と協働してその内部に貯溜空間を形成するとともに該貯溜空間及び外界を相互につなぐ貫通孔を有するヘッドと、このヘッドの貫通孔に摺動可能に嵌合保持する頭部を有し前記貯溜空間内において往復移動可能に弾性支持されるロッドと、前記ヘッドを内側に納め容器の口部側壁に係合保持されるカバーとからなり、
前記ロッドに、該ロッドの往復移動に合わせて弁座の通路を開閉する弁部と、該弁座の通路が開放された状態で閉塞するが該通路が閉じた状態では開放して貯溜空間内の内容物を外界に向けて注出する注出経路を設けたことを特徴とする定量注出器。
【請求項3】
前記注出経路は、ヘッドの貫通孔の側壁に向けて開口する横通路と、この通路につながりロッドの軸心に沿いその先端に向けて開口する縦通路からなる請求項2記載の定量注出器。
【請求項4】
前記弁体又はロッドはその先端に、注出経路の出側先端にてエアー置換用の隙間を形成して内容物の効率的な注出を行なう凸部を有する請求項1〜3の何れかに記載の定量注出器。
【請求項5】
前記弁体又はロッドはその先端に、接触面積の拡大を図って注出姿勢を安定維持するディスクを有する請求項1〜4の何れかに記載の定量注出器。
【請求項6】
前記カバーは、その内側に弁体の頭部又はロッドの先端に係合し該カバーの取り外しに帯同して弁体又はロッドを移動させる係合突起を有する請求項1〜5の何れかに記載の定量注出器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−36319(P2006−36319A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221784(P2004−221784)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】