説明

実質的に純粋なグリメピリドの調製のための新規プロセス

本発明は、3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミド(I)(グリメピリドとして一般的に公知)の合成において使用される、トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClおよび4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドの精製のための新規プロセスを開示する。本発明はまた、望ましくないシス異性体を0.15%未満有するグリメピリド形態I(I)の新規な精製を開示する。グリメピリド(I)は、真性糖尿病の処置において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、インド国特許出願第410/MUM/2005号(2005年4月1日出願)からの優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、実質的に純粋なグリメピリド(形態I)の精製のためのプロセスに関する。より詳細には、本発明は、式Iのグリメピリドとして一般に知られている3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミドの調製において使用される重要な中間体である、4−メチルシクロヘキシルアミン HClおよび4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドのトランス立体異性体の精製のための、新規プロセスに関する。本発明はまた、グリメピリドの精製のための新規プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景および先行技術)
Hoechstに発行された特許文献1(特許文献2)によると、グリメピリドは、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)とトランス−4−メチルシクロヘキシルイソシアネート(VIII)との反応を介して調製される。特許文献1(特許文献2)(本明細書で以後‘785号特許と称する)は、複素環置換スルホニル尿素(特に、3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミド(すなわち、グリメピリド(I)))を開示する。‘785号特許は、3−エチル−4−メチル−3−ピロリジン−2−オン(II)および2−フェニルエチルイソシアネートから始めて[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼン(III)を得るグリメピリドの調製を教示する。その[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンは、クロロスルホン酸と反応させ、その後アンモニア溶液で処理することによって、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)に変換される。次いで、この中間体化合物(IV)は、最終的に、トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)から調製されたトランス−4−メチルシクロヘキシルイソシアネート(VIII)と反応されて、グリメピリドを形成する。
【0004】
グリメピリドはまた、非特許文献1に報告されるように、N−[[4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−オキソ−3−ピロリン−1−カルボキサミド)−エチル]フェニル]スルホニル]メチルウレタン(IX)と、トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン(VII)との反応によって合成され得る。
【0005】
トランス−4−メチルシクロヘキシルイソシアネート(VIII)は、ホスゲン化によって、トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)から調製される。
【0006】
非特許文献2は、グリメピリドの新規な多形(エタノールと水との溶媒混合物から再結晶によって得られた形態II)を開示する。その文献はまた、以前に知られていた形態が形態Iであることを開示する。形態Iを得るために報告された溶媒は、メタノール、アセトニトリル、クロロホルム、酢酸ブチル、ベンゼンおよびトルエンである。
【0007】
代替経路は、特許文献3(Sun Pharmaceutical)に開示されており、ここで、3−エチル−4−メチル−2,5−ジヒドロ−N−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)−ピロール−2−オンが、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホンアミドで処理されて、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)が得られ、次いで、これが、グリメピリド(I)に変換された。しかし、生の物質は利用可能ではなくそして収率が乏しく、特許文献1に記載されるようなプロセスが好ましい。
【0008】
最も高い純度のグリメピリドを得るために、以下の中間体は、最も高い質であるべきである:
a)オルト異性体およびメタ異性体を含む可能性が最も低い4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)
b)トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン(VII)およびそのそれぞれのイソシアネート(VIII)は、シス異性体の含有率が最も低くあるべきである。
【0009】
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドの調製は、特許文献1に十分に開示されている。それは、2−フェニルエチルイソシアネートを用いる式(II)の3−エチル−4−メチル−3−ピロリジン−2−オンの縮合によって調製される。次いで、縮合生成物は、クロロスルホン酸でクロロスルホン化され、その後、アンモニア水溶液でアンモノリシスして、式(IV)の化合物を得る。純度は、上記特許では十分に文書で記載(document)されていないが、特許されたプロセスにしたがって、約85〜88%の望ましいパラ異性体が得られる。これは、クロロスルホン化がオルト−パラ配向性であることの証明(evident)である。
【0010】
それゆえ、望ましくないオルト異性体およびメタ異性体を0.1%未満に維持するための精製プロセスを開発する必要がある。
【0011】
他の重要な中間体であるトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)は、好ましくは、シス異性体を含む可能性が最も低くあるべきである。一般的に使用される手順は、4−メチルシクロヘキサノンオキシム(V)をアルコール(好ましくは、エタノール)中、ナトリウムで還元することである。
【0012】
非特許文献3;非特許文献4および非特許文献5は、すべて上記の還元を報告している。このプロセスを介して得られるアミンは、代表的に、8%〜10%の間のシス異性体を含む。しかし、還元のための大過剰の金属ナトリウム(25当量)の使用は、プロセスを商業的にも環境的にも実行不可能にする。また、蒸留を介して混合物からトランスアミンを精製することは、沸点が約2℃しか異ならないので非常に困難である。また、すぐにカルボン酸塩を形成するという上記の遊離アミンに特有の欠点が存在する。さらに、アミンの塩の結晶化を介してシス含有物を還元するためのアミンの精製は、十分に文書で記載されていない。先行技術は、粗製のトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClをその塩酸塩の結晶化によって精製することを記載するが、その収率および純度は十分に議論されていない。そのような精製の説明は、非特許文献6に提供され、ここで、トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClが、粗製の塩酸塩(m.p. 260°C)をアセトニトリル中で3段階結晶化することによって、27%の収率で得られる。
【0013】
特許文献4(Zentiva)は、トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClの調製のためのプロセスを記載し、ここで、その発明のハイライトは、金属ナトリウムの使用およびピバリン酸塩を介する精製である。しかし、そのプロセスの欠点は、危険である金属ナトリウムおよび高価であるピバリン酸の使用である。全体の収率は約40%である。
【0014】
したがって、シス含有物に対する現在の切迫した薬局方の(pharmacopieal)要求を考えると、費用効果の高いプロセスによりシス不純物含有率が0.15%をはるかに下回るグリメピリドを得ることに対する必要性が存在する。
【0015】
グリメピリドの生成において重要な因子は:
a)シス異性体を含む可能性が最も低いトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)の実質的な純度
b)オルト異性体およびメタ異性体を含む可能性が最も低い4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)の実質的な純度
式(IV)の中間体化合物の純度は、‘785号特許に開示されるプロセスによって調製した場合、HPLCで82%〜85%であることが見出された。
【特許文献1】米国特許第4,379,785号明細書
【特許文献2】欧州特許第031058号明細書
【特許文献3】国際公開第03057131号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004073585号パンフレット
【非特許文献1】R.Weyer,V. Hitzel,Arzneimittel Forsch(1988)38,1079
【非特許文献2】H. Uedaら,S.T.P Pharma Sciences,2003,13(4)281−286
【非特許文献3】T.P.Johnstonら,J.Med.Chem.,(1971)14,600−614
【非特許文献4】H.Boothら,J.Chem.Soc(B)1971,1047-1050
【非特許文献5】K.Ramalingamら,Indian Journal of Chem(April 1972)Vol.40,366−369
【非特許文献6】J.Med.Chem,(1971)14,600−614
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
(発明の目的)
1)本発明の目的は、トランス異性体の実質的に高い含有率を有する重要な中間体である式(VII)のトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClを調製することである。
【0017】
2)本発明の別の目的は、より高い純度の式(IV)の4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドを調製することである。
【0018】
3)本発明のなお別の目的は、中間体化合物(すなわち、式(IV)の4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド)を使用することによって、薬学的に受容可能な質の式(I)のグリメピリドを調製することである。
【0019】
4)本発明のさらなる目的は、薬学的に受容可能な質(すなわち、メタ異性体およびオルト異性体の含有率が1%未満)を得るために、メタノール性アンモニアを使用してグリメピリドを精製し、グリメピリドの多型形態Iを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
本発明は、以下
a)メタノールとアセトンとの混合物を用いる、式(IV)の中間体化合物、すなわち、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドの精製、
b)メタノール、アセトンおよびトルエンまたはそれらの混合物を用いる、式(VII)の中間体化合物、すなわち、トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClの精製、
c)式(IV)の4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドを式(VIII)のトランス−4−メチルシクロヘキシルイソシアネートと反応させて、式(I)を得ること、
d)グリメピリド(I)をメタノール性アンモニアおよび氷酢酸で精製して、実質的に純粋な形態のグリメピリド(形態I)を得ること
のためのプロセスを開示する。
【0021】
本発明のこれらの局面および他の局面は、ここでさらに本明細書においてより詳細に記載される。
【0022】
表Iは、実施例5にしたがって得られるグリメピリド(Glimiperide)のXPRDを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下:
a)トランス−4−メチルシクロヘキシルアミンヒドロクロリド(VII)、
b)4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)、
c)グリメピリド(I)
の精製のための新規プロセスを提供する。
【0024】
本発明は、極めて純粋な形態のグリメピリド(I)を得るための精製プロセスに関する。しかし、本発明のプロセスは、スキームI〜IIIに示されるような化合物(I)の範囲内の任意の化合物を調製するために使用され得る。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】


【0028】
トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)の精製は、適切な溶媒の組み合わせを用いることによって達成される。シス/トランス立体異性体の混合物(すなわち、50:50)を希釈したメタノールに溶解させ、それにアセトンを添加することによって、望ましいトランス異性体を共沈させる。このプロセスは、様々な比率の溶媒混合物を用いて繰り返され、シス異性体が0.15%未満のトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)(>99.5%)を得る。4−メチルシクロヘキサノンからの全体の収率は、約30%である。この精製は、アルコールとケトンとの溶媒混合物を用いて達成されている。溶解のために好ましいアルコールは、脂肪族アルコールであり、ここで炭素鎖は、好ましくは、C1〜C4であり得る。好ましいメタノールが使用され、粗製のトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClが溶解される。基質:メタノール:アセトンの比は、望ましい純度を達成するために、1:1.5:6で固定される。沈殿のために使用される共溶媒は、脂肪族ケトンである。好ましいケトンはアセトンである。沈殿は、20℃〜50℃の間の温度で、好ましくは、30℃〜50℃の間の温度で、最も好ましくは、約40℃で行われる。アセトンの添加は、2時間〜6時間にわたって、より好ましくは、約2時間〜4時間にわたって、最も好ましくは、約3時間で行われる。そのようにして得られる化合物は、ガスクロマトグラフィーで95%より高い純度を有する。
【0029】
富化されたトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)(>95%)はさらに、様々な比率の同じ溶媒混合物を用いて精製される。富化されたトランス異性体はアルコールに溶解され、そして脂肪族ケトンを用いて再沈殿される。基質:メタノール:アセトンの比は、99.8%より高い純度を得るために、1:1.5:13.6で固定される。
【0030】
好ましいアルコールは脂肪族であり、ここで炭素鎖は、好ましくは、C1〜C4であり得る。好ましいメタノールが使用され、富化されたトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)が溶解される。沈殿のために使用される共溶媒は、脂肪族ケトンである。好ましいケトンはアセトンである。沈殿は、20℃〜50℃の間の温度で、より好ましくは、30℃〜50℃の間の温度で行われる。アセトンの添加は、好ましくは、2時間〜6時間にわたって、より好ましくは、約2時間〜4時間行われる。得られる純度は、ガスクロマトグラフィーで99.8%よりも高い。シス含有率は、0.15%をはるかに下回って制御される。得られる収率は約70%である。
【0031】
他の重要な中間体、すなわち、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)の純度もまた、文献では十分に文書で記載されていない。US 4,379,785(EP 031058)は、粗製の4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)をトランス−4−メチルシクロヘキシルイソシアネート(VIII)と縮合して、グリメピリド(Glimeperide)(I)を得ることを報告する。しかし、この粗製スルホンアミドを用いると、常に、グリメピリド中に望ましくないオルト異性体およびメタ異性体が生じる可能性が存在する。本発明は、式(IV)の4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドを炭化水素とアルコールとの混合物で精製するプロセスに関する。この炭化水素は、脂肪族、脂環式または芳香族であり得る。その炭化水素はさらに、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンまたはそれらの混合物から選択され、好ましくは、トルエンである。結晶化のために使用されるアルコールは、脂肪族アルコールであり、ここで炭素鎖は、好ましくは、C1〜C4であり得る。好ましいメタノールが再結晶のためにトルエンとともに使用される。95%より高い純度を有する望ましいパラ異性体が得られる。望ましくないオルト異性体は、8%〜10%から1%〜2%に減少する。アルコール/ケトンの組み合わせを用いる繰り返しの結晶化は、オルト異性体およびメタ異性体を0.5%をはるかに下回って、好ましくは0.2%に最小限にする。この組み合わせで使用されるアルコールは、脂肪族アルコール、好ましくは、メタノールであり、一方で使用されるケトンは、脂肪族ケトン、好ましくはアセトンであり、体積比は2:8、好ましくは4:6である。そのようにして得られる望ましいパラ異性体の純度は、HPLCで99%よりも高い。
【0032】
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)のグリメピリド(I)への上記縮合は、US 4,379,785(EP 031058)において十分に文書で記載されている。しかし、他の異性体(すなわち、グリメピリドのオルト異性体およびメタ異性体)の含有は報告されておらず、それゆえ、これらの異性体を0.1%未満に制御するための精製プロセスを行う必要性が存在する。
【0033】
本発明はさらに、粗製のグリメピリドの精製を記載する。この精製は、ジオキサン、THF、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、酢酸、DMSO、アセトン、アセトニトリル、DMFまたはそれらの混合物から選択される適切な溶媒からの結晶化によって報告されている。しかし、グリメピリドの高い極性に起因して、大量の溶媒が結晶化に必要であった。
【0034】
それゆえ、メタノール性アンモニアを用いる新規な精製方法論が、異性体不純物ならびにより高い温度でのグリメピリドの分解を最小限にするために確立された。
【0035】
グリメピリドの精製は、アルコール性アンモニア中で、好ましくは、C1〜C4炭素鎖を有する脂肪族アルコール中で行われる。好ましくは、6体積のメタノールが精製のために使用される。乾燥アンモニアガスが、溶解のために10℃〜30℃の温度で、好ましくは、15℃〜25℃で、最も好ましくは、20℃でパージされる。生成物の再沈殿は、グリメピリドのアンモニウム塩を硫酸(sulphuric acid)、塩酸および酢酸から選択される酸(好ましくは、酢酸)で、pH5.5〜6.0で中和することによって行われる。再沈殿は、好ましくは、15℃〜20℃で行われる。そのようにして得られる生成物は、一貫して形態Iであることが見出される。
【0036】
XRPD、IR、DSCが、表Iに示されるように、H.Uedaら,S.T.P Pharma Sciences,13(4),281−286,2003によって報告された値と一致する。
【0037】
(表1)
グリメピリドのXRPDピーク
【0038】
【表1】


【0039】
形態Iの形成はさらに、IRデータおよびDSCデータによって確認される。3290cm−1および3370cm−1でのバンドにより形態Iが確認される。
【0040】
DSCは、207.7度でのその分解とともにその融点に対応する唯一の吸熱ピークを示す。
【0041】
本発明は、以下:
a)トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)の精製;
b)4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)の精製;および
c)グリメピリドの精製
を含む。
したがって、本発明は、望ましくないシス異性体の含有率が0.15%よりも低い、異例に純粋なグリメピリドを提供する。
【0042】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
(トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII))
1.5Kgの粗製の4−メチルシクロヘキシルオキシム(V)を、8.33Lのメタノールに溶解させた。これに、0.15Kgのラネーニッケルを添加した。次いで、この混合物を、50℃〜55℃で4〜5Kg/cmの圧力で水素化した。Hの吸収を停止した後、この反応塊(mass)を冷却し、濾過する。得られた反応混合物から、メタノールを完全に蒸留した。得られた粗製の濃縮油状物を、15℃〜20℃に冷却し、それに、メタノール性塩酸(12〜13%)をゆっくりと添加すると、生成物(すなわち、4−メチルシクロヘキシルアミン HCl)が析出する。収率は、トランス異性体が約50%の含有率で、1.5Kgの粗製の4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(85%)が得られた。
【0044】
この粗製の4−メチルシクロヘキシルアミン HCl 1.5Kg(湿性)を、メタノール/アセトン混合物中でさらに精製した。この粗製の4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(1.5Kg)を、25℃〜30℃で2.25Lのメタノールに溶解させた。13.5Lのアセトンの添加をゆっくりと開始し、3時間にわたって行った。トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClが析出した。収量0.6Kg。達成されたトランス異性体の純度は95%より高い。この段階でのシス異性体は、約2%〜3%である。
【0045】
そのようにして得られたトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(0.6Kg)を再度0.9Lのメタノールに入れ、25℃〜30℃で完全に溶解させる。8.1Lのアセトンを3時間かけてゆっくりと添加すると、純粋なトランス異性体が完全に析出する。この段階で達成される純度は99.8%を超え、シス異性体は0.15%をはるかに下回る。第二の精製の後、そのようにして得られた収量は、0.48Kgのトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(始めのオキシムで計算した収率27.2%)である。望ましいトランス異性体の純度は、G.C.で99.8%より高い。
【0046】
そのようにして得られたトランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HClの融点は、262℃〜263℃である。
【0047】
(実施例2)
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)の調製
3−エチル−4−メチル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−2−オン(II)(1.0Kg)およびβ−フェニルエチルイソシアネート(1.488Kg)を、無水トルエン(4.0L)中で混合し、4時間還流した。トルエンを蒸留して除き、ヘキサン(8.0L)をその反応混合物に50℃で添加した。沈殿した生成物を0℃〜5℃に冷却し、固体化合物、すなわち、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼン(2.17Kg)を得る。これを濾過し、2.0Lのヘキサンで洗浄した。
【0048】
クロロスルホン酸の冷却した(15℃〜25℃)溶液(2.8L)に、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼン(2.0Kg)を少しずつ、2時間〜3時間にわたって添加した。さらに、これをこの温度で30分間攪拌し、次いで、温度を徐々に30℃〜35℃に上昇させた。この反応塊をさらに2時間攪拌する。次いで、この反応混合物を氷水にクエンチし、1時間攪拌し、濾過して生成物4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホニルクロリド(2.0kg)を得た。希釈アンモニアの冷却した(15℃〜20℃)溶液(1.4L)に、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホニルクロリドを少しずつ、1時間〜2時間にわたって添加した。次いで、この反応混合物を2時間70℃に加熱すると、アンモノリシスが完了する。次いで、変換された生成物を室温で1時間攪拌し、濾過し、90℃〜100℃で乾燥させて、82%〜88%の範囲のHPLC純度を有する粗製の4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(2.2Kg)を得る。次いで、この粗製の化合物4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(2.2Kg)をメタノール、アセトンおよびトルエンから選択される有機溶媒の混合物から精製する。
【0049】
(実施例3A)
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル ]ベンゼンスルホンアミド(IV)の精製
第一の精製
トルエン(12.0L)を含む反応容器に、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(2.0Kg)を25℃〜30℃でチャージした。温度を60℃〜65℃にゆっくりと上昇させ、メタノール(5.0L)を供給タンク(dosing tank)を介してゆっくりと添加すると、生成物が完全に溶解した。これを0.5時間還流した。別の反応容器でこの生成物を木炭に通し(charcoalise)、濾過した。総回収率約65%まで、トルエン/メタノール混合物を減圧下で蒸留して除いた。白色の結晶性生成物が析出した。回収後、この反応塊を15℃〜20℃に冷却する。得られた結晶化固体生成物を濾過し、それぞれ冷アセトン(約2L)で2回洗浄した。得られた生成物を、恒量までエアオーブン中で90℃〜100℃で乾燥させて、約1.4Kgの4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドを95%より高いHPLC純度で得た。
【0050】
(実施例3B)
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)の精製
第二の精製
アセトン(8.4L)を含む反応容器に、1.4Kgの第一の精製をした4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドを25℃〜30℃でゆっくりとチャージし、そしてその温度を55℃〜60℃に上昇させた。メタノールを、この還流温度で供給タンクを介して添加し(5.6L)、これを完全に溶解させた。これをさらに30分間還流した。総回収率約65%〜70%まで、アセトン/メタノール混合物を蒸留して除いた。白色の結晶性生成物が析出した。回収後、この生成物を15℃〜20℃にゆっくりと冷却した。得られた固体生成物を濾過し、それぞれ冷アセトン(約1.4L)で2回洗浄した。この4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドを、恒量までエアオーブンで90℃〜100℃で乾燥させて、約1.12Kgの4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)を99.5%より高い純度(他の異性体(すなわちオルトおよびメタ)はそれぞれ0.2%をはるかに下回る)で得た。
【0051】
(実施例4)
3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミド(I)の調製
アセトン(24.2L)を含む反応容器に、4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(1.0Kg)および炭酸カリウム(0.46Kg)を添加し、約55℃〜60℃で1時間還流した。トランス−4−メチル−シクロヘキシルイソシアネートを、トランス−4−メチル−シクロヘキシルアミンから、当該分野で公知の方法によって得た。トルエン(5L)中のトランス−4−メチル−シクロヘキシルイソシアネート(0.515Kg)の溶液を調製し、上記反応混合物に添加した。この反応混合物を12時間還流し、次いで冷却する。この冷却した反応塊に、27Lの水をチャージする。この反応塊を濾過し、約20℃〜25℃で酢酸を添加することによって、pHを5.5〜6.0に調整した。得られた固体を濾過し、水で洗浄した。次いで、得られた3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミド(I)を、恒量まで90℃〜100℃で乾燥させる。生成物の収率は86.3%である。
【0052】
(実施例5)
3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミド(I)の精製
6.0Lのメタノールおよび1.0Kgの粗製のグリメピリドを含む反応容器に、乾燥アンモニアガスを、すべてのグリメピリドが溶解するまで20℃〜25℃でパージし、透明な溶液を得る。次いで、この均質な塊を木炭に通し、濾過し、最終的に全生成物が析出するまで氷酢酸でpH5.5〜6.0に中和した。次いで、この純粋なグリメピリドを濾過し、恒量まで65℃〜70℃で乾燥させた。得られた収率は約90%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な、式(I):
【化1】

の3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロヘキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミド(グリメピリド)形態Iを調製するためのプロセスであって、ここで、該プロセスは、
a)式(IV)の4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミドを炭化水素、アルコールおよびケトンを用いる溶媒の混合物で精製する工程;
b)トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)をアルコールとケトンとの混合物で精製する工程;
c)トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)を当該分野で公知の方法によってトランス−4−メチルシクロヘキシルアミンイソシアネート(VIII)に変換する工程;
d)4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)を当該分野で公知の方法によってトランス−4−メチルシクロヘキシルアミンイソシアネート(VIII)と縮合して、グリメピリドを得る工程;および
e)該グリメピリドを精製して、多形形態Iで実質的に純粋なグリメピリド(Glimeperide)を得る工程
を包含する、プロセス。
【請求項2】
前記4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV):
【化2】

の精製が、炭化水素とアルコールとの混合物から結晶化する工程、およびケトンとアルコールとの混合物からさらに再結晶する工程によって行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
炭化水素が、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素および芳香族炭化水素を含む群から選択され;好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンおよびトルエンまたはそれらの混合物から選択される、請求項1および請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
アルコールが、C1〜C4脂肪族アルコールからなる群より選択され、好ましくはメタノールである、請求項1および請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)が、体積比6:2.5でトルエンとメタノールとの混合物から再結晶される、請求項1〜4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
得られる4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)の純度が95%である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)がさらに、ケトンとアルコールとの混合物から再結晶される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ケトンが、脂肪族ケトンの群より選択され、好ましくはアセトンであり;そして前記アルコールが、C1〜C4脂肪族アルコールの群から選択され、より好ましくはメタノールである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)が、体積比6:4でアセトンとメタノールとの混合物を用いて再結晶される、請求項7〜8に記載のプロセス。
【請求項10】
4−[2−(3−エチル−4−メチル−2−カルボニルピロリジンアミド)エチル]ベンゼンスルホンアミド(IV)の純度が、オルトおよびメタ両方の異性体が0.2%未満で99.2%よりも高い、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl (VII)
【化3】

が、C1〜C4アルコールおよび脂肪族ケトンの群から選択される溶媒としてのケトンからなる群より選択される溶媒の混合物から再結晶される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)が、体積比1.5:6でメタノールとアセトンとの混合物から再結晶されて、95%よりも高い純度が得られる、請求項1および請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
トランス−4−メチルシクロヘキシルアミン HCl(VII)がさらに、体積比1.5:13.6でメタノールとアセトンとの溶媒混合物から再結晶されて、99.8%の純度が得られる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記グリメピリドの精製が、3−エチル−2,5−ジヒドロ−4−メチル−N−[2−[4−[[[[(トランス−4−メチルシクロへキシル)アミノ]カルボニル]アミノ]スルホニル]フェニル]エチル]−2−オキソ−1H−ピロール−1−カルボキサミド(グリメピリド)化合物(I)を塩基を用いてアルコールに溶解させる工程;必要に応じて得られた透明な溶液を木炭に通す工程;酸を用いてpHを好ましくは5.5〜6.0に調整する工程;および純粋なグリメピリドを単離する工程を包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
塩基が好ましくはアンモニアであり、そして前記アルコールが、C1〜C4アルコールの群から選択され、好ましくはメタノールである、請求項1および請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
酸が、塩酸、硫酸または酢酸の群から選択され、好ましくは酢酸である、請求項1および請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
99.8%よりも高い純度を有する、請求項14〜16のいずれかに記載のグリメピリド。
【請求項18】
実施例1〜5に関して本明細書に実質的に記載され例示されるような、実質的に純粋なグリメピリドの調製プロセス。

【公表番号】特表2008−534576(P2008−534576A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503683(P2008−503683)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/IN2005/000164
【国際公開番号】WO2006/103690
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506078563)ユーエスヴィー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】