実質的に純粋なフルオレセイン
本発明は、実質的に純粋なフルオレセインを生成するための改良されたプロセス、ならびにこのプロセスによって調製された実質的に純粋なフルオレセイン組成物に関する。本発明は、具体的には、血管造影法で使用するための医薬組成物の提供に関する。本発明のプロセスによって生成された実質的に純粋なフルオレセインは、低色で、塩化ナトリウム含有量が低く、またピリジンを実質的に含まない。一つの実施形態において、本発明は、約0.1重量%、より好ましくは0.01重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、実質的に純粋なフルオレセインを含む組成物、実質的に純粋なフルオレセインを調製するためのプロセス、かかるプロセスによって調製された実質的に純粋なフルオレセイン、フルオレセインの純度を判断するための分析的方法、および血管造影法において使用するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
フルオレセインは、橙赤色の化合物、C20H12O5であり、アルカリ溶液中で強い蛍光発光を示し、例えば、診断目的の薬剤として、海洋学におけるトレーサーとして、またテキスタイル染料としてなどの応用分野で使用される。
【0003】
フルオレセインは、ドイツ人化学者Adolf Von Baeyerによって、1871年に初めて、石油誘導体のレゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)と無水フタル酸とから合成された。ドイツ人細菌学者Paul Erlichは、当時「ウラニン」として知られたこの蛍光色素を使用して(フルオレセインのナトリウム塩として)、眼房水の分泌経路を追跡した。これは、生理学の研究のためにin vivoで蛍光色素を使用した始めての例であると考えられている。
【0004】
フルオレセイン血管造影法は、眼底血管の状態の研究を可能にする重要な診断手段である。このような血管は、網膜に影響を与える多くの疾患の要因である。血管造影法は、患者の腕の静脈内にフルオレセインを注射することによって実施する。短時間(典型的には、2、3秒から数秒)で、色素は眼底血管まで進行するので、特殊フィルターを備えたカメラを用いて、色素が眼血管内を循環している間に画像化する。そのように生成された画像を検査することにより、あらゆる循環問題、例えば血管の漏出、膨張、異常なもしくは新しい血管などについて評価を行なうことができる。
【0005】
フルオレセインは、青色光を吸収し、465〜490nmの波長でピーク吸収および励起が生じる。蛍光発光は、520〜530nmの黄緑色の波長で生じる。一般的にフルオレセインといわれているが、血管造影法に使用される色素はフルオレセインナトリウム、つまりフルオレセインの可溶性ジナトリウム塩である。
【0006】
フルオレセインの健康成人への投与量は、静脈注射500mgである。これは、典型的には、10%溶液5mL、または25%溶液2mLの用量で包装されている。循環系に入ると、色素分子のおよそ80%が血清タンパク質と結合する。残りの非結合または遊離フルオレセイン分子は、適切な波長の光によって励起された場合に蛍光を発する。色素は、肝臓で代謝されてフルオレセインモノグルクロニドを形成し、最終的に、投与後24〜36時間以内に尿によって排泄される。
【0007】
フルオレセイン配合物中のフルオレセインの純度は、副作用および注射に対する耐性と相関する可能性があるという報告がされている非特許文献1。したがって、血管造影法に使用するフルオレセイン組成物から、全てまたは実質的に全ての不純物を排除することが、本発明の主目的である。
【0008】
以下の出版物を参照すると、フルオレセイン組成物、ならびにフルオレセインを調製および精製するためのプロセスに関するさらなる情報が得られるであろう。
【0009】
特許文献1(Friedrich et al.)の「Process for Preparing Highly Purified Fluorescein for Injection Purposes」は、ピリジンを用いてフルオレセインを調製するためのプロセスを記載している。
【0010】
特許文献2(Tran−Guyon et al.)の「High Purity Phthalein Derivatives and Method for Preparing Same」は、無水溶媒を用いてフルオレセインを調製するためのプロセスを記載している。
【0011】
また、さらなる背景については、以下の特許または広報を参照することができる:特許文献3(Sujeeth)の「Synthesis of Fluorescein Compounds with Excess Resorcinol as a Solvent」、および特許文献4(Kranz)の「Production of Hydroxybenzene−Phthaleins」。
【0012】
高度に精製されたフルオレセインは、注射を目的とする溶液の調製に必要とされる。使用される精製されたフルオレセインは、理想的には、(i)毒性であるおよび/または蛍光発光が欠如する可能性がある不純物を含まず、(ii)注射可能なフルオレセイン製品の許容できないほど高い重量オスモル濃度または高浸透圧をもたらしうる塩の含有量が低く、また(iii)低色である。ある不純物は強い色を呈する。したがって、特定の周波数での色の不在は、かかる不純物が存在しないことを示す。したがって、フルオレセイン組成物の色プロファイルは、重要な品質特性であり、純度の視覚的指標であると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許発明第136498号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0106234号明細書
【特許文献3】米国特許第5,637,733号明細書
【特許文献4】米国特許第1,965,842号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Yannuziら、「Effective differences in the formulation of intravenous fluorescein and related side effects」、Am.J. Ophthalmol.、1974年、78、(2)、p.217−221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
フルオレセイン組成物中に存在しうる非常に低レベルの不純物を同定し、定量化するための方法が必要とされている。このような方法は、存在しうる不純物を分離、同定、および定量化することができるべきである。
【0016】
したがって、高純度で、低色で、塩化ナトリウム含有量が少ないフルオレセイン組成物、およびかかるフルオレセインを生成するための、ピリジンあるいはその他の非水(また有害である可能性がある)溶媒の使用を必要としないプロセス、ならびにかかるフルオレセインの純度を判断するための方法が必要とされている。本発明は、これらの必要性を満たすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の背景)
本発明は、実質的に純粋なフルオレセインを含む組成物、精製されたフルオレセインを調製するための新規の改良されたプロセス、およびこれらのプロセスによって生成されたフルオレセインの組成物に関する。また本発明は、実質的に純粋なフルオレセインを含む血管造影法で使用するための医薬組成物、およびフルオレセイン組成物の純度を判断する方法に関する。本発明の方法によって生成された高度に精製されたフルオレセインは、従来のフルオレセイン組成物よりも低いレベルの関連不純物質を有する。また、このような新規のプロセスによって生成されたフルオレセインは、他の既知の組成物よりも低色で(590nmにおいて)、明らかに目に見える純度の指標を提示している。また、本発明のフルオレセインは、塩化ナトリウム含有量が少ないため、他の既知の組成物よりもより容易に薬学的使用のために調剤される。本発明のプロセスは、精製プロセスにおけるピリジンの使用を排除し、無水溶媒の使用を不要にし、未精製のフルオレセインをアセチル化するために必要とされる無水酢酸の量を減らし、高度に精製されたフルオレセインの収率を向上させることによって、他の既知のプロセスを改良する。また、本発明は、フルオレセイン組成物中の関連不純物質を分離し、定量化するための、またそれによってフルオレセイン組成物の純度を判断するための信頼できる方法を提供することによって、最新技術を進歩させる。
【0018】
本発明は様々な応用分野において実施でき、これには以下に要約するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明の一実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む組成物、より具体的には、ピリジンを実質的に含まないフルオレセインに関する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、約0.1重量%、より好ましくは0.01重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、約0.25重量%未満の残留塩化物含有量を有する実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、物質関連不純物の総量が約0.6重量%未満、好ましくは0.06重量%未満である、実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインの調製のためのプロセスに関する。このプロセスは、ジアセチルフルオレセインを加水分解してフルオレセインを形成するステップと、フルオレセインを炭で処理するステップと、濾過するステップと、濾液にエタノールを添加するステップと、酸性溶液を用いてpHを調整して沈殿物を形成するステップと、濾過するステップと、洗浄するステップとを含む。本実施形態の一態様において、pHレベルは、約1.0〜約2.5に調整される。別の態様では、約20℃〜約25℃冷却温度を維持しながらpHレベルを調整し、pHレベルは約2〜4時間の間に調整する。また、本発明は、かかるプロセスによって生成された実質的に純粋なフルオレセイン組成物にも関する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、フルオレセイン関連不純物質のレベルを定量化するためのHPLC法を提供する。この方法は、組成物の高圧液体クロマトグラムを得るステップと、関連不純物質に対応する、クロマトグラムにおけるピークを同定するステップと、ピークの面積測定値を得て、その相対濃度を判断するステップとを含む。本実施形態の一態様において、ピークは、約0.75、1.19、1.23、1.68、および1.71の相対HPLC保持時間を有する。別の実施形態は、フルオレセイン中の関連不純物質を同定するためのHPLC/MS法を提供する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物、より具体的には、フルオレセインがピリジンを実質的に含まない組成物に関する。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物に関し、この組成物は約0.1重量%、より好ましくは0.01重量を上回る濃度のいかなる物質関連不純物も含有しない。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物に関し、この組成物中に存在する関連不純物質の総量は、約0.6重量%未満、より好ましくは約0.06重量%未満である。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物に関し、このフルオレセインは、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態は、血管造影法で使用するためのフルオレセインの医薬組成物に関し、この組成物は、残留塩化物量約0.25重量%未満を有する。
【0031】
以下の図面および発明を実施するための形態を用いて、本発明をさらに十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】フルオレセイン洗浄実験の実験計画の概要である。
【図2】フルオレセインpH/沈殿実験の実験計画の概要である。
【図3】実施例3に記載される、フルオレセイン原体の色強度を示すUV/VISスペクトルである。
【図4】実施例5に記載される、希釈液ブランクのHPLCクロマトグラムである。
【図5】実施例5に記載される、1%USPフルオレセイン参照標準物質のHPLCクロマトグラムである。
【図6】実施例5に記載される、供給元Aのフルオレセイン原料のHPLCクロマトグラムである。
【図7】実施例5に記載される、0.8%レゾルシノールを添加したフルオレセイン原料のHPLCクロマトグラムである。
【図8】実施例5および6に記載される、フルオレセインの構造および関連不純物質の提示構造の図である。
【図9】LC/MSシステムからのフルオレセインの代表的HPLCクロマトグラムである。
【図10】(a)は、UV検出によるフルオレセインのクロマトグラムであり、(b)は、13.65〜14.45分に抽出されたフルオレセインのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図11】(a)は、質量分析計を用いたm/z259での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Aのクロマトグラムであり、(b)は、11.95〜12.05分に抽出された不純物AのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図12】(a)は、質量分析計を用いたm/z285での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Bのクロマトグラムであり、(b)は、15.45〜15.55分に抽出された不純物BのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図13】(a)は、質量分析計を用いたm/z347での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Cのクロマトグラムであり、(b)は、16.10〜16.50分に抽出された不純物CのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図14】(a)は、質量分析計を用いたm/z347での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Dのクロマトグラムであり、(b)は、18.20〜18.65分に抽出された不純物DのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図15−1】(a)は、質量分析計を用いたm/z333での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Eのクロマトグラムであり、(b)は、13.23〜13.52分に抽出された不純物EのHPLCピークのAPCI質量スペクトルである。
【図15−2】(c)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物Eのクロマトグラムであり、(d)は、不純物EのピークのUV−Visスペクトルである。
【図16−1】(a)は、質量分析計を用いたm/z425での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Fのクロマトグラムであり、(b)は、19.10〜19.32分に抽出された不純物FのHPLCピークのAPCI質量スペクトルである。
【図16−2】(c)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物Fのクロマトグラムであり、(d)は、不純物FのピークのUV−Visスペクトルである。
【図17−1】(a)は、質量分析計を用いたm/z375での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Gのクロマトグラムであり、(b)は、21.27〜21.54分に抽出された不純物GのHPLCピークのAPCI質量スペクトルである。
【図17−2】(c)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物Gのクロマトグラムであり、(d)は、不純物GのピークのUV−Visスペクトルである。
【図18】(a)は、51.75〜51.85分に抽出された不純物H−1のHPLCピークのAPCI質量スペクトルであり、(b)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物H−1のクロマトグラムである。
【図19】(a)は、52.67〜52.79分に抽出された不純物H−2のHPLCピークのAPCI質量スペクトルであり、(b)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物H−2のクロマトグラムである。
【図20】不純物H−2のUV−Vis吸光度スキャンである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用される際、以下の略語および用語は、特別の定めのない限り以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0034】
略語「APCI」は、大気圧化学イオン化を意味する。
【0035】
略語「M/S」または「MS」は、質量分析計を意味する。
【0036】
略語「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味する。
【0037】
略語「UV−Vis」は、紫外可視を意味する。
【0038】
略語「LC/MS」は、液体クロマトグラフィー/質量分析計を意味する。
【0039】
「炭」という用語は、色度を減少させるのに有効な活性炭素剤を包含する。例示的な薬剤には、供給元Univar USA(米国テキサス州ダラス)から市販されている、Norit(登録商標) SA PlusおよびNorit(登録商標) SX Ultraが含まれるが、これらに限定されない。色度を減少させることができる炭の形態は、通常の実験によって判断することができる(例えば、別の市販の炭の形態であるDarco(登録商標) KBは、色度を減少させるのに有効でないことが判断されている)。
【0040】
「色度(color number)」という用語は、pH9.4の水酸化ナトリウムと重炭酸ナトリウムの水溶液中で調製したフルオレセイン原料1.0%溶液の、590nmで測定した場合の吸光度である。
【0041】
「フルオレセイン原体」および「フルオレセイン原料」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。
【0042】
「関連不純物質」という用語は、フルオレセインおよび/またはフルオレセイン反応物の合成不純物、異性体、酸化生成物、二量化生成物、および分解生成物を包含する。かかる関連不純物質の例示的構造は、図8に示す。
【0043】
「ピリジンを実質的に含まない」という用語は、フルオレセイン組成物が少なくとも99%ピリジンを含まないことを意味する。より好ましくは、分析純度が少なくとも99.9%であり、さらに好ましくは、フルオレセイン組成物はピリジン全く含まない。
【0044】
「実質的に純粋なフルオレセイン」という用語は、不純物、例えば関連不純物質などの完全な不在、あるいはほぼ完全な不在を指す。例えば、フルオレセイン組成物が実質的に純粋であるとされる場合、検出可能な関連不純物質が存在しないか、あるいは単一の関連不純物質が検出される場合、それが0.1重量%を上回らない量で存在し、または複数の関連不純物質が検出される場合、それらは全体で0.6重量%を上回らない量で存在する。
【0045】
本発明のプロセスは、低い関連不純物質プロファイルを有するフルオレセイン生成物を生成する。精製されたフルオレセイン材料でさえ、低レベルのある不純物、例えばレゾルシノールおよび2−(2’,4’−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸などを含有しうることは一般的に知られている。しかしながら、フルオレセインの市販試料が、レゾルシノールおよび2−(2’,4’−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸に加え、いくつかの不純物を含有しうることはこれまでは知られていなかった。これらの潜在的不純物の量は、本発明のプロセスによって実質的に減少される。かかる不純物は、本明細書において、集合的に「関連不純物質」と称する。
【0046】
このような関連不純物質の分子量をLC/MSによって判断するために実験を行なった。また、理論に縛られることは望まないが、これらの不純物の構造を本明細書において提示する(図8を参照)。精製されたフルオレセイン組成物中にさえ存在しうる低レベルの関連不純物質を分解し、定量化するためのプロセスを発見した。詳細は下記に記載する。本発明のプロセスが実質的に低下したレベルの関連不純物質を有する高度に精製されたフルオレセインを提供することを発見した。これは、下記の表1に示す本発明の精製されたフルオレセイン原体の不純物プロファイルにおいて、下記の表2に示す様々な製造業者からの工業グレードのフルオレセインの不純物プロファイル、および下記の表3〜5に示す様々な製造業者からのフルオレセイン原体の不純物プロファイルと比較して見ることができる。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2−1】
【0049】
【表2−2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5−1】
【0053】
【表5−2】
本発明に関与する一般的プロセスの概要を下記に説明する。商用グレードのフルオレセインを還流温度で無水酢酸と反応させることによってジアセチル化する。そのように生成したジアセチル化フルオレセインを単離し、その後塩基と反応させて、脱アセチル化フルオレセインを生成し、これを次に炭で処理して、高純度かつ低塩化物含有量の低色フルオレセインを生成する。下記に反応スキームを示す。
【0054】
【化1】
本発明の純フルオレセインを調製するために使用する特定の溶媒、反応時間および温度、ならびにpH値は、一連の実験に基づいて決定された。これらの実験の目標は、低色および低塩含有量を有する高純度の医薬品グレードのフルオレセインを得ること、また従来の既知の方法で使用される有害な溶媒、すなわちピリジンの使用を避けることであった。さらなる目標は、例えば、最低限の量の溶媒を用いることによって、あるいは必要なステップの反応サイクル時間を短縮することによって、プロセスに関わる費用と時間を最小限に抑えることであった。
【0055】
フルオレセインを精製するプロセスは、フルオレセインをO,O’−ジアセチルフルオレセインに転化させることから始める。このために、無水酢酸を溶媒および試薬として使用し、従来技術のプロセスで使用される有害な溶媒、ピリジンの使用を完全に回避する。したがって、フルオレセインと無水酢酸との混合物を還流下で数時間攪拌し、得られた懸濁液を冷ます。凝固点またはそのすぐ下の温度までさらに冷却することにより、完全な結晶化が生じる。結晶化した物質を収集して、まず冷無水酢酸で、次に冷アセトンで洗浄する。次に、この物質を攪拌と穏やか加熱によってアセトン中に再懸濁する。冷却後、白色結晶性物質を収集し、冷アセトンで洗浄し、風乾して、高純度O,O’−ジアセチルフルオレセインを得る。
【0056】
次に、このO,O’−ジアセチルフルオレセインを転化させてフルオレセインに戻し、ナトリウム塩を形成し、最終不純物を除去する。この転化をもたらすために、O,O’−ジアセチルフルオレセインのアセチル基を苛性溶液を用いて加水分解する。したがって、O,O’−ジアセチルフルオレセインおよびメタノールを好適な容器に入れ、調製した脱イオン水に水酸化ナトリウムを加えた溶液を添加し、混合物を攪拌しながら加熱還流する。次に混合物を冷却し、濾過助剤を用いて濾過し、その後メタノールで洗浄する。次に減圧蒸留によって濾液の容積を減らし、水を添加し、反応混合物を冷却する。次に反応混合物のpHを8.5〜8.7に調整する。好適な炭、例えばNorit(登録商標) SX Ultraを添加し、1時間攪拌する。必要であれば、炭処理ステップを繰り返す。次に、重要な沈殿ステップが続く。まず、濾液にエタノールを添加して、エタノールと水を2:1の比率にする。この比率は、沈殿手段において、水に対するより高い比率の有機溶媒は、フルオレセイン生成物中により低い塩化物含有量をもたらすという予期せぬ発見に基づく。この作用を認識するために行なった実験は、下記にさらに記載する。次に、フルオレセインを酸性化するために、較正済みのpH範囲を確立するように、希塩酸溶液を添加する。この範囲は、より低いpHがより望ましい色を有する生成物を提供するという予期せぬ発見に基づく。より具体的には、実験を通して、濾液の最適pH範囲は1.0〜2.5にすべきであり、酸性化は、生成物の凝集を避けるためにゆっくりと、例えば2〜4時間かけて、冷却しながら行なうべきであると判断した。さらなる攪拌および冷却後、フルオレセインを濾過によって単離する。生成物を水とエタノールとの溶液で洗浄し、生成物を乾燥させて、収率80〜90%の非常に高品質のフルオレセインを得る。この高純度フルオレセインは、注射用フルオレセインの調製に使用することができる。このために、フルオレセインを水酸化ナトリウムを用いて可溶性ジナトリウム塩の形態に転化し、アンプルに充填してから滅菌する。
【0057】
本発明のプロセスを実現するために行なった実験法の一例は、フルオレセイン生成物が沈殿するpH範囲の較正である。このpH範囲は、形成された生成物の色のスペクトルに関する経験的観察に一部基づいて、高い範囲から低い範囲に調整した。したがって、低色生成物の目標を達成するためにフルオレセイン生成物を沈殿させるべき最適pH範囲は、約pH1.0〜約pH2.5であると判断した。
【0058】
また、沈殿手段において、水性溶媒に対する有機溶媒のより高い比率は、フルオレセイン生成物中により低い塩化物含有量をもたらすことも、予期せずして発見された。この結果は、低い有機/水性比率は、塩化ナトリウムレベルを下げるために必要であろうと予想していたため、予期していなかった。より高比率の有機溶媒の使用は、濾過速度を向上させる付加的利点を有し、それによって材料を処理するのに要する時間が短縮される。
【0059】
本発明のプロセスを開発するために、さらなる沈殿実験を行なったが、これは下記に記載し、また図1および2に示す。具体的には、下記の表6に示すように、沈殿プロセスを変更することによって塩化物レベルを下げるために実験を行なった。
【0060】
【表6】
表6は、沈殿媒体の溶媒比率の変更は、存在する塩化物の量に影響を及ぼすことを示している。具体的には、沈殿媒体中のエタノールの水に対する比率を上げると、より低い塩化物含有量が生じる。実験Aは、水:エタノール(1:1)の沈殿媒体の容積を10容積(基準)から15容積に増加させた場合、塩化物含有量がわずかに減少することを示している(表6を参照)。実験Bは、水:エタノール(1:1、10容積、基準)からの沈殿を水:エタノール(2:1、15容積)からの沈殿と比較している。本実験の結果は直観に反したものであり、より低い水含有量およびより少ない容積を有する基準反応物が、より低い塩化物含有量をもたらしている。
【0061】
実験Cは、水:エタノール(1:1、10容積、基準)からの沈殿を水:エタノール(1:2、15容積)からの沈殿と比較している。実験Cの結果は、より高い有機含有量の沈殿媒体は、より低い塩化物含有量を生じさせることを示している。
【0062】
沈殿媒体中のより高い有機含有量がより低い塩化物含有量を生じさせる傾向は、実験D、E、F、およびG、ならびに実験H、I、J、およびKにおいて、洗浄を行なっていない生成物と洗浄を行なった生成物の双方について再現している。結果は直観に反するように思われるが、理論に縛られることなく、より高い有機含有量は、生成物ケーキのより速くより効率的な洗浄を可能にすると考えられる。
【0063】
検討した別の態様は、フルオレセインの色が、沈殿媒体のpHに依存しているかどうかである。下記の図7を参照(エタノール:水の比率が2:1の沈殿媒体を使用)。
【0064】
【表7】
結果は、フルオレセインの色がpH変化に対して敏感であることを示している。例えば、pH約3.0では、生成物の外観は栗色の色調を呈し始めるが、これは望ましくないとみなされる。
【0065】
下記の実施例1〜8は、本発明のある実施形態をさらに説明するために提供される。実施例5、6、7、および/または8から得られた代表的データは、図9〜19に示す。
【0066】
図9〜14のデータは、HPLCと連結したサーモスプレー質量分析計を用いたLC/MSによって得た。ピークは、UV検出器(280nm)およびサーモスプレー質量分析計を使用して観察した。実験条件:器具=Waters Model 600 MS HPLCシステムおよびWaters Model 486MS UV検出器(280nm)と連結した、Vestec Model 201Bサーモスプレー質量分析計;カラム=Waters Symmetry C−8、5μ、3.9×150mm;移動相=B0%からB100%までを25分間でプログラムした直線勾配;移動相A=0.1M酢酸アンモニウムを含む10:90(V:V)メタノール:水;移動相B=0.1M酢酸アンモニウムを含むメタノール;流速=1.0mL/分;試料濃度=未希釈;注射量=20μL。
【0067】
図15〜20のデータは、HPLCと連結した質量分析計を用いたLC/MSによって得た。質量分析計は、大気圧化学イオン化(APCI)インターフェースとともに使用し、この質量分析計を正イオン検出モードで作動した。ピークは、220〜500nmの総吸光度をモニターするUV−Vis検出器と質量分析計とを使用して観察した。Waters Symmetry C−8カラム(3.9×150mm)を流速0.6mL/分で使用し、移動相B0%から移動相B100%までを30分間でプログラムした。移動相Bは、0.01M酢酸アンモニウムを含むメタノールとし、移動相Aは、0.01M酢酸アンモニウムを含む10:90/メタノール:水とした。
【実施例】
【0068】
実施例1
フルオレセインジアセテートの形成
【0069】
【化2】
5リットルの三口丸底フラスコに、フルオレセイン(1000g、3.01モル)および無水酢酸(1622g、15.9モル)を加えた。得られた混合物を還流下で3〜5時間攪拌し、得られた懸濁液を室温まで冷ました。継続して攪拌しながら、反応混合物を−5〜3℃までさらに冷却して、完全な結晶化を生じた。結晶化した物質をBuchnerフィルター上に収集し、冷無水酢酸(2×500mL)で洗浄し、次に冷アセトン(1×600mL)で洗浄した。この物質を部分的に乾燥させ、攪拌と穏やかな加熱によってアセトン(1000mL)中に再懸濁した。冷めたあと、白色結晶性物質をフィルター上に収集し、冷アセトン(2×700mL)で洗浄し、風乾した。収率:約75%〜85%;TLCによる単一スポット;MP=203〜205.5℃;純度99.7%。
【0070】
実施例2
ジアセチルフルオレセインからのフルオレセインの形成、ナトリウム塩の形成、および最終不純物の除去
【0071】
【化3】
O,O’−ジアセチルフルオレセイン(1000g)およびメタノール(4000mL)を好適な反応器に入れた。これとは別に、脱イオン水(620mL)に水酸化ナトリウム溶液(480g、50%苛性)を含む溶液を調製した。この水酸化ナトリウム溶液をO,O’−ジアセチルフルオレセインおよびメタノール含有の反応器に入れた。混合物を加熱還流し、還流下で90分間攪拌した。反応混合物を20℃〜25℃まで冷却した。濾過助剤(100g)を用いてこの混合物を濾過し、その後メタノール(500mL)で洗浄した。濾液(5000mL)を減圧下で蒸留して残留量1400mL〜1700mLにし、次に反応混合物を20℃〜25℃まで冷却した。脱イオン水(5000mL)を蒸留濃縮物に添加した。これとは別に、脱イオン水(72g)に水酸化ナトリウム溶液(56g、50%苛性)を含む溶液を調製した。調製したばかりの水酸化ナトリウム溶液(100mL)を用いて、反応物のpHを8.5〜8.7に調整した。Norit SX Ultra(100g)、濾過助剤(100g)、および脱イオン水(500mL)を反応物に室温で添加し、続いてその混合物を1時間攪拌した。このバッチを濾過し、さらにNorit SX Ultra(100g)および脱イオン水(500mL)を室温で濾液に添加し、続いてその混合物を1時間攪拌した。このバッチを濾過し、脱イオン水(2000mL)で洗浄した。エタノール(10000mL)を濾液に添加した。これとは別に、脱イオン水(320mL)に塩酸(32%、820g)を溶解して塩酸溶液を調製した。この希酸性溶液を用いて、濾液のpHを1.0〜2.5に調整し、その間バッチの温度は20℃〜25℃に維持した。バッチを20℃〜25℃で1時間攪拌し、その後濾過によって単離した。溶液(注射用水:エタノール):(3:1)、(2×1000mL)でケーキを洗浄した。生成物を乾燥させ、典型的な収率80〜90%の非常に高品質のフルオレセインを得た。
【0072】
実施例3
フルオレセイン原体の色強度
機器
1cmセルに対応し、660nmから570nmまでをスキャンできる分光光度計。
【0073】
660nmから570nmまでの波長に適した材料、例えば石英の分光光度計用セル(光路長1cm)。
【0074】
フルオレセイン原体の色強度を下記のように測定した。pH9.4の水酸化ナトリウムと重炭酸ナトリウムの水溶液中で調製したフルオレセイン原料の1.0%溶液の色を判断するために、その590nmでの吸収を測定することによる手段を用いた。この値は、「色度」とも称することができる。590nmでの吸光度測定値の増加は、完成した製剤の目に見える色強度の増加に対応する。
【0075】
フルオレセイン(250mg±5mg、正確に計量)および重炭酸ナトリウム(50mg)を計量して、25mLビーカーに入れた。水酸化ナトリウム(1%、5mL)を加えた。溶液を攪拌しながら穏やかに加温した。全ての材料が溶解し、溶液が透明になるまで、水酸化ナトリウム(1%、さらに1mLまで、合計6.0mL)を加えた。反応物を室温まで冷却した。必要であれば、1%水酸化ナトリウムを滴下して用い、pHを9.4に調整した。pHが9.4を上回る場合、溶液を廃棄し、より少ない水酸化ナトリウムを用いて再調製した。溶液をメスフラスコ(25mL)に定量的に移動し、精製水を適量加えて25.0mLにした。最終濃度は、10mg/mL、または1%とした。
【0076】
方法
試料および参照セルキュベットに精製水でブランクのユーザーベースラインを確立し、660nmから570nmまでを100nm/分でスキャンして、分光光度計をゼロに調節した。フルオレセイン溶液(1%)を試料キュベットに加えた。試料溶液を100nm/分で660nmから570nmまでスキャンした。590nmで吸光度の読み取り値を記録した。試料の個々のアリコートに二重測定を行なった。表1は、この方法を用いたいくつかのフルオレセイン原料試料試験の典型的な色度結果を記載している。結果は、下の項に示す方程式を用いて補正した。図3は、フルオレセイン原料試料から得られた典型的なスペクトルを示している。
【0077】
計算
以下のように、吸光度読み取り値を試料濃度に対して補正した:
【0078】
【数1】
フルオレセイン試料ロットの色強度測定値は、実施例2に記載のように得た。これを下記の表8に記載する。
【0079】
【表8】
実施例4
電位差滴定法によるフルオレセイン残留塩化物の判定
機器
Brinkman 716 DMS Titrino Automated Titratorまたは同等のもの
Brinkman 730 Sample Changerおよび759 Swing Head AutoSamplerまたは同等のもの
Ag Titrode電極
5桁分析天秤または同等のもの
ソニケーター
ホットプレート
3,000rpmが可能な遠心機
培養管、16×125mm、VWR カタログ番号47729−578または同等のもの
16mm培養管用白色キャップ、VWR カタログ番号60828−760または同等のもの
血清フィルター、6.×16mm、VWR カタログ番号28295−556または同等のもの。
【0080】
以下の方法を用いて、硝酸銀電位差滴定法、自動滴定装置、および銀電極を使用して、フルオレセイン中の残留塩化物量を定量化した。
【0081】
(1)試薬溶液調製、水酸化アンモニウム(5N)
濃水酸化アンモニウム(約338mL)を精製水(約600mL)に添加して、精製水で1000mLに希釈した。銀電極をすすぎ、保存するために、この溶液を自動滴定装置に使用した。
【0082】
(2)標準溶液調製、硝酸銀、0.10N、水性
分析証明書を備える市販用に溶液として調製された0.10N硝酸銀を使用することが好ましい。ただし、市販の認可された硝酸銀溶液が入手できない場合は、硝酸銀(17.0g)を計量して、精製水(1000mL)に溶解し、標準としてもよい。塩化カリウム参照標準物質(乾燥、50mg)を計量して、滴定用容器内で精製水(約30mL)に溶解した。この溶液に硝酸(1mL)を加えた。この溶液を銀ビレット電極を用いて、電位差滴定によって滴定した。0.10Nの硝酸銀1mLが塩化カリウム7.455mgに対応した。以下の方程式を用いて、硝酸銀の規定度を計算した:N AgNO3=(KClmg×KCl純度)/(AgNO3mL×74.55)。
【0083】
(3)試料調製および滴定
フルオレセイン原料(2g)を計量して培養管(16×125mm)に入れた。精製水(熱水、10mL)を加えた。硝酸(1mL)を加えて、全管に栓をし、2分間振盪し、15分間超音波処理した。全管を30分間遠心分離した(約3,000rpm)。血清フィルターを用いて、沈殿剤を上澄みから分離した。溶液をデカントして滴定容器に入れた。精製水(1回分5mL)を用いて、血清をすすぎ、濾過した。すすぎ液を滴定容器に注入した。血清フィルターを除去して、廃棄した。2回目も上記の手段を繰り返すが、ただし全管に栓をして1分間振盪し、全管を20分間遠心分離した(約3,000rpm)。1回目および2回目の抽出物からの溶液を混ぜ合わせ、血清フィルターを精製水ですすいだ。混ぜ合わせた溶液を0.10N AgNO3でその電位差滴定終点まで滴定した。滴定パラメータには、各試料のあとに洗浄サイクル(5N水酸化アンモニウム)およびすすぎサイクル(5N水酸化アンモニウム)を用いることが含まれる。パラメータの一覧は下記に示す。
【0084】
(4)計算
【0085】
【数2】
V=滴定した0.10N AgNO3の容積
N=AgNO3滴定剤の規定度
35.453=塩化物の分子量
W=例で使用したフルオレセインの重量
【0086】
【表9】
実施例5
この手段では、フルオレセイン原料の溶液をメタノール中で調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム、勾配移動相プログラミング、およびC−18カラムを用いて、その関連物質から分離した。関連物質をフルオレセイン参照標準物質の1%溶液に対して定量化した。紫外線HPLC検出器を用いて、波長280nmにおけるピーク反応を測定した。移動相Aは、0.01M酢酸アンモニウム、10%メタノール/90%水、および0.5%酢酸である。移動相Bは、0.01M酢酸アンモニウム、100%メタノール、0.5%酢酸である。参照標準物質をメタノール中のフルオレセイン0.5mg/mL溶液とし、メタノール中に最終濃度0.005mg/mLまで希釈するか、あるいはフルオレセイン0.5mg/mLの試料最終理論濃度1%を同様に調製した。HPLC UV/VIS検出器および280nmをモニターする能力を備える、プログラムした勾配操作が可能な高速液体クロマトグラフィーシステムを用いた。カラム:3.9×150mm Waters Symmetry C−18カラム、5μm、(または同等のもの)フルオレセインに対し少なくとも20,000プレート/カラムが可能。流速:0.6mL/分。勾配プログラムは以下のとおりとした:
【表A】
【0087】
ピーク面積を用いて、0.025%以上の既知および未知の不純物のパーセント濃度を下記の計算の項に示すように計算した。本方法の定量化の限界は0.025%であるが、不純物は通常は≧0.05%の濃度で報告される。フルオレセインの分析で9つの不純物が見られ、それらの分子量をLC/MSによって判定した。それらの提示構造は、図8に示す。不純物Hは、2つのジアステレオマー、H−1およびH−2として見られた。このクロマトグラフ法を用いた本手段で例として挙げるフルオレセインのロット中で同定された不純物の典型的な相対保持時間(RRT)、容量係数(k’)、溶出時の勾配組成物(B%)は、以下のとおりである:
【表B】
【0088】
フルオレセインのクロマトグラムにおけるピークは、ピークの相対保持時間、容量係数、およびおおよその移動相組成物が、上記の挙げた関連物質に相当する場合、関連物質A、D、F、H−1、またはH−2として同定することができる。ただし、相対保持時間のそれぞれの値は、クロマトグラフシステムによっておよそ0.02異なりうる。またクロマトグラフシステムの修正は、上記に挙げた値に影響を与えうる。不純物B、C、E、およびGは、ここで検定した4つのフルオレセインロットにおいては同定されなかったが、先の供給元AのフルオレセインのLC/MS分析は、不純物B、C、E、およびGが、RRT1.09、1.11、1.20、および1.44に近似したかもしれないことを示唆している。それぞれRRT1.10および1.74を有する2つの未知の不純物が、本文書において報告されるフルオレセイン原料の4つのロット中に存在した。これらの濃度は、0.025%〜0.05%であった。RRT=1.10における未知のピークが不純物BまたはCのいずれかであった可能性がある。フルオレセイン原料試料のクロマトグラムは、図6に示す。ジアセチルフルオレセインは、フルオレセイン原体中で観察され、フルオレセインに対する保持時間1.35において出現する。
【0089】
レゾルシノールは、フルオレセインの既知の一般的な不純物である。レゾルシノールは、フルオレセインの合成において出発物質として使用され、潜在的な分解生成物である。レゾルシノールは、上記のようにRRT=0.14、k’=2.9、およびB%=24.6で溶出することがわかっている。レゾルシノールは、場合により、未分解の二重線として溶出するのが観察されうる。レゾルシノールを含有するフルオレセイン原体のクロマトグラムは、図7に示す。
【0090】
あらゆる関連のないピーク(すなわち、溶媒先端、システムピーク)をレゾルシノールに加えて同定したが、以下の計算から省いた。レゾルシノールは、RRT約0.14で溶出した(図7を参照)。それぞれの関連物質のパーセント濃度は、下記に示すとおり計算した。
【0091】
【数3】
濃度0.025%以上の不純物を合計することによって不純物の合計を計算する。
以下の式に従って保持比を計算する:
【0092】
【数4】
本方法の定量化の限界は、フルオレセイン0.127μg/mLとして定めた(試料調製濃度0.025%)。検出の限界は、フルオレセイン0.05μg/mLと決定した(試料調製濃度0.01%)。
【0093】
供給元Aのフルオレセイン原料の4ロットを本方法を用いて分析した。7つの不純物を検出し、5つの不純物(A、D、F、H−1、およびH−2)を同定した。報告できる不純物(≧0.025%)の合計パーセントは、0.2%〜0.7%の範囲であった。結果は下記の表10に記載する。
【0094】
本手段の代替として、試料および標準物質の調製物用の希釈液を変更して、レゾルシノールとその他の関連不純物質との同時分析を可能にする。希釈液を調製するために、まず酢酸アンモニウム0.77gを水1000mLに溶解して、酢酸を用いてpHを3.9に調整し、その後同量の酢酸アンモニウム緩衝液とメタノールとを加える。最初に15mLに対して50mgの比率でフルオレセインをメタノールに溶解したあと、この希釈液をメタノールの代わりに使用して、実施例5に記載の手段と同様に標準物質および試料を希釈し、ブランクもメタノールから希釈液に変更する。フルオレセインの標準物質と試料の調整物は、希釈液での希釈後、光から保護する。レゾルシノールとフタル酸との典型的な相対保持時間(RRT)は、以下のとおりである:
【表C】
【0095】
RRF(相対感度係数)を不純物の計算に追加してもよい(RRFは、フルオレセインに対する反応を表わす)。
【表D】
【0096】
1不純物D、F、H−1、およびH2の相対感度係数は決定されていない。それらの相対感度係数は、1.0と仮定される。
【0097】
各関連物質のパーセント濃度は、下記のように計算することができる:
【0098】
【数5】
【0099】
【表10】
実施例6
フルオレセイン関連不純物質の独自性を判断するために、研究を実施した。フルオレセインの試料を不純物の存在および濃度について分析した。高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)によって、同定分析を実施した。
【0100】
LC/MSシステムによる代表的HPLCクロマトグラムを図9に再現する。フルオレセインは、クロマトグラム中に主要ピークを表わした。図10(b)に示すフルオレセインのサーモスプレー質量スペクトルは、分子量332と一致する、m/z333におけるM+H分子イオンを表わした。
【0101】
図11(b)に示すように、不純物Aのサーモスプレー質量スペクトルは、m/z259にM+H分子イオンを表わし、分子量258を示した。図8に提示する不純物A[2−(2’,4’−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸]の構造は、フルオレセイン調製物中の不純物として以前に報告されている。
【0102】
図12(b)に示すように、不純物Bのサーモスプレー質量スペクトルは、m/z285にM+H分子イオンを表わし、分子量284を示唆している。分子量284は、成分式C15H8O6、C16H12O5、またはC17H18O4に相当しうる。図8に示す不純物Bの提示構造は、レゾルシノールのコハク酸との反応から生じうる(フルオレセインのフタル酸前駆体中の不純物として)。
【0103】
図13(b)に示すように、不純物Cのサーモスプレー質量スペクトルは、m/z347にM+H分子イオンを表わす。これは、分子量346を表わし、フルオレセインから14質量単位の増加に相当する。
【0104】
図14(b)に示すように、不純物Dのサーモスプレー質量スペクトルもm/z347にM+H分子イオンを表わすが、これは不純物Cの異性体と思われる。不純物CおよびDについて提示される構造は、互いに互変異性体であり、双方ともフルオレセインのキニーネ型酸化生成物である。
【0105】
図15(b)に示すように、不純物EのAPCIは、m/z333にM+H分子イオンを表わして分子量332を示し、また492nmにUVmaxを有するUVスペクトル表わした。したがって、不純物Eは、フルオレセインの位置異性体でありえると思われる。
【0106】
図16(b)に示すように、不純物FのAPCIは、m/z425にM+H分子イオンを表わして分子量424を示し、400nmを上回るUVmaxを生じた。スペクトルは、親化合物に加えられた追加レゾルシノール分子と一致すると思われる。したがって、化合物Fは、3つのレゾルシノールから形成しうる一方、親化合物は、2つのレゾルシノールから形成しうる。
【0107】
図17(b)に示すように、不純物GのAPCIは、m/z375にM+H分子イオンを表わして分子量374を示し、484nmにUVmaxを表わした。スペクトルと親油性の双方は、フルオレセインの酢酸エステルと一致すると思われた。
【0108】
図18(a)および19(a)に示すように、不純物H−1およびH−2のAPCIは、両化合物についてm/z739にM+H分子イオンを表わして、それぞれについて分子量738を示唆した。両化合物のUV−Vis吸光度スペクトルは同様であり、233nmにUVmaxを有し、462および488nmに比較的弱い吸収極大を有した。不純物H−2の吸光度スペクトルは、図20に示す。
【0109】
実施例7
注射用フルオレセイン、またはFluorescite 25%の調製
配合槽内の必要とされる注射用水の60%に、必要量の水酸化ナトリウムを溶解して、計量した。フルオレセインを加えて、溶解した。溶解するために必要な場合、追加の注射用水を加えたが、容積は総容積の90%を上回らないようにした。フルオレセインが30分攪拌後に完全に溶解しない場合、次のステップに進んでpHを調整した。pHは9.4に調整したが、これは水酸化ナトリウム3Nおよび/または塩酸INで行なった。混合物を180R.P.Mで30分間攪拌した。pHを再確認した。9.3を下回る、または9.5を上回る場合、水酸化ナトリウム3Nおよび/または塩酸INでpHを9.4に再調整した。フルオレセインナトリウム溶液に注射用水を追加して所定の容積にし、15分間攪拌した。pHを上記のように再確認した。窒素槽を用いて、膜孔サイズ5ミクロン、0.8ミクロン、および0.45ミクロンの3枚の連続するメンブレンフィルターを通して溶液を加圧濾過して、滅菌充填槽に入れた。生成物のpHを上記の手段を用いて再確認した。試料を実験室試験用に無菌的に取り出した。生成物をあらかじめ滅菌したアンプルに充填した。各アンプルには、2.15〜2.25mLを加えた。充填直後に、標準方法で試料をチップシールまたはプルシールした。各アンプルのシールは、滅菌の際に試験した。アンプルを高圧蒸気殺菌法によって121℃でバッチサイズに応じて20分間以上滅菌した。漏れを慎重に検査した。最適な光条件下で、各アンプルに粒状物質が存在しないか個々に検査した。
【0110】
実施例8
注射用フルオレセイン、またはFluorescite 10%の調製
注射用フルオレセインを調製するための代替手段として、好適なステンレススチール槽に、冷注射用水(およそ30℃)のバッチ量のおよそ70%〜75%を加えた。フルオレセインを加え、懸濁液が完成するまで混合した。初期pHを記録した。十分な量(総容積のおよそ7.5%)の7N水酸化ナトリウムを加え、その後追加量の7N水酸化ナトリウムを、追加ごとにおよそ15分間待ったあとにpH値を確認しながら、pH9.4を目標に、pHが9.3〜9.5になるまで加えた。pHが9.5を上回る場合、pH範囲9.3〜9.5を達成するために、IN塩酸を加えてpHを調整した。このpH範囲に達したあと、混合を15分以上継続した。バッチを注射用水で最終重量にし、30分以上混合した。pHを試験して、必要に応じて水酸化ナトリウムまたは塩酸で調整した。生成物を無菌的に滅菌バイアルに充填し、標準実施手段に従ってさらなる検査および試験を行なった。
【0111】
本明細書において強調される特定の実施形態は、本発明の全ての実施形態の列挙するものではない。また、当業者は、通常の実験法を用いるだけで、本発明の実施形態の多数の同等物を認識する、あるいは解明することができるであろう。かかる同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、実質的に純粋なフルオレセインを含む組成物、実質的に純粋なフルオレセインを調製するためのプロセス、かかるプロセスによって調製された実質的に純粋なフルオレセイン、フルオレセインの純度を判断するための分析的方法、および血管造影法において使用するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
フルオレセインは、橙赤色の化合物、C20H12O5であり、アルカリ溶液中で強い蛍光発光を示し、例えば、診断目的の薬剤として、海洋学におけるトレーサーとして、またテキスタイル染料としてなどの応用分野で使用される。
【0003】
フルオレセインは、ドイツ人化学者Adolf Von Baeyerによって、1871年に初めて、石油誘導体のレゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)と無水フタル酸とから合成された。ドイツ人細菌学者Paul Erlichは、当時「ウラニン」として知られたこの蛍光色素を使用して(フルオレセインのナトリウム塩として)、眼房水の分泌経路を追跡した。これは、生理学の研究のためにin vivoで蛍光色素を使用した始めての例であると考えられている。
【0004】
フルオレセイン血管造影法は、眼底血管の状態の研究を可能にする重要な診断手段である。このような血管は、網膜に影響を与える多くの疾患の要因である。血管造影法は、患者の腕の静脈内にフルオレセインを注射することによって実施する。短時間(典型的には、2、3秒から数秒)で、色素は眼底血管まで進行するので、特殊フィルターを備えたカメラを用いて、色素が眼血管内を循環している間に画像化する。そのように生成された画像を検査することにより、あらゆる循環問題、例えば血管の漏出、膨張、異常なもしくは新しい血管などについて評価を行なうことができる。
【0005】
フルオレセインは、青色光を吸収し、465〜490nmの波長でピーク吸収および励起が生じる。蛍光発光は、520〜530nmの黄緑色の波長で生じる。一般的にフルオレセインといわれているが、血管造影法に使用される色素はフルオレセインナトリウム、つまりフルオレセインの可溶性ジナトリウム塩である。
【0006】
フルオレセインの健康成人への投与量は、静脈注射500mgである。これは、典型的には、10%溶液5mL、または25%溶液2mLの用量で包装されている。循環系に入ると、色素分子のおよそ80%が血清タンパク質と結合する。残りの非結合または遊離フルオレセイン分子は、適切な波長の光によって励起された場合に蛍光を発する。色素は、肝臓で代謝されてフルオレセインモノグルクロニドを形成し、最終的に、投与後24〜36時間以内に尿によって排泄される。
【0007】
フルオレセイン配合物中のフルオレセインの純度は、副作用および注射に対する耐性と相関する可能性があるという報告がされている非特許文献1。したがって、血管造影法に使用するフルオレセイン組成物から、全てまたは実質的に全ての不純物を排除することが、本発明の主目的である。
【0008】
以下の出版物を参照すると、フルオレセイン組成物、ならびにフルオレセインを調製および精製するためのプロセスに関するさらなる情報が得られるであろう。
【0009】
特許文献1(Friedrich et al.)の「Process for Preparing Highly Purified Fluorescein for Injection Purposes」は、ピリジンを用いてフルオレセインを調製するためのプロセスを記載している。
【0010】
特許文献2(Tran−Guyon et al.)の「High Purity Phthalein Derivatives and Method for Preparing Same」は、無水溶媒を用いてフルオレセインを調製するためのプロセスを記載している。
【0011】
また、さらなる背景については、以下の特許または広報を参照することができる:特許文献3(Sujeeth)の「Synthesis of Fluorescein Compounds with Excess Resorcinol as a Solvent」、および特許文献4(Kranz)の「Production of Hydroxybenzene−Phthaleins」。
【0012】
高度に精製されたフルオレセインは、注射を目的とする溶液の調製に必要とされる。使用される精製されたフルオレセインは、理想的には、(i)毒性であるおよび/または蛍光発光が欠如する可能性がある不純物を含まず、(ii)注射可能なフルオレセイン製品の許容できないほど高い重量オスモル濃度または高浸透圧をもたらしうる塩の含有量が低く、また(iii)低色である。ある不純物は強い色を呈する。したがって、特定の周波数での色の不在は、かかる不純物が存在しないことを示す。したがって、フルオレセイン組成物の色プロファイルは、重要な品質特性であり、純度の視覚的指標であると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許発明第136498号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0106234号明細書
【特許文献3】米国特許第5,637,733号明細書
【特許文献4】米国特許第1,965,842号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Yannuziら、「Effective differences in the formulation of intravenous fluorescein and related side effects」、Am.J. Ophthalmol.、1974年、78、(2)、p.217−221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
フルオレセイン組成物中に存在しうる非常に低レベルの不純物を同定し、定量化するための方法が必要とされている。このような方法は、存在しうる不純物を分離、同定、および定量化することができるべきである。
【0016】
したがって、高純度で、低色で、塩化ナトリウム含有量が少ないフルオレセイン組成物、およびかかるフルオレセインを生成するための、ピリジンあるいはその他の非水(また有害である可能性がある)溶媒の使用を必要としないプロセス、ならびにかかるフルオレセインの純度を判断するための方法が必要とされている。本発明は、これらの必要性を満たすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の背景)
本発明は、実質的に純粋なフルオレセインを含む組成物、精製されたフルオレセインを調製するための新規の改良されたプロセス、およびこれらのプロセスによって生成されたフルオレセインの組成物に関する。また本発明は、実質的に純粋なフルオレセインを含む血管造影法で使用するための医薬組成物、およびフルオレセイン組成物の純度を判断する方法に関する。本発明の方法によって生成された高度に精製されたフルオレセインは、従来のフルオレセイン組成物よりも低いレベルの関連不純物質を有する。また、このような新規のプロセスによって生成されたフルオレセインは、他の既知の組成物よりも低色で(590nmにおいて)、明らかに目に見える純度の指標を提示している。また、本発明のフルオレセインは、塩化ナトリウム含有量が少ないため、他の既知の組成物よりもより容易に薬学的使用のために調剤される。本発明のプロセスは、精製プロセスにおけるピリジンの使用を排除し、無水溶媒の使用を不要にし、未精製のフルオレセインをアセチル化するために必要とされる無水酢酸の量を減らし、高度に精製されたフルオレセインの収率を向上させることによって、他の既知のプロセスを改良する。また、本発明は、フルオレセイン組成物中の関連不純物質を分離し、定量化するための、またそれによってフルオレセイン組成物の純度を判断するための信頼できる方法を提供することによって、最新技術を進歩させる。
【0018】
本発明は様々な応用分野において実施でき、これには以下に要約するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明の一実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む組成物、より具体的には、ピリジンを実質的に含まないフルオレセインに関する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、約0.1重量%、より好ましくは0.01重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、約0.25重量%未満の残留塩化物含有量を有する実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、物質関連不純物の総量が約0.6重量%未満、好ましくは0.06重量%未満である、実質的に純粋なフルオレセインに関する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインの調製のためのプロセスに関する。このプロセスは、ジアセチルフルオレセインを加水分解してフルオレセインを形成するステップと、フルオレセインを炭で処理するステップと、濾過するステップと、濾液にエタノールを添加するステップと、酸性溶液を用いてpHを調整して沈殿物を形成するステップと、濾過するステップと、洗浄するステップとを含む。本実施形態の一態様において、pHレベルは、約1.0〜約2.5に調整される。別の態様では、約20℃〜約25℃冷却温度を維持しながらpHレベルを調整し、pHレベルは約2〜4時間の間に調整する。また、本発明は、かかるプロセスによって生成された実質的に純粋なフルオレセイン組成物にも関する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、フルオレセイン関連不純物質のレベルを定量化するためのHPLC法を提供する。この方法は、組成物の高圧液体クロマトグラムを得るステップと、関連不純物質に対応する、クロマトグラムにおけるピークを同定するステップと、ピークの面積測定値を得て、その相対濃度を判断するステップとを含む。本実施形態の一態様において、ピークは、約0.75、1.19、1.23、1.68、および1.71の相対HPLC保持時間を有する。別の実施形態は、フルオレセイン中の関連不純物質を同定するためのHPLC/MS法を提供する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物、より具体的には、フルオレセインがピリジンを実質的に含まない組成物に関する。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物に関し、この組成物は約0.1重量%、より好ましくは0.01重量を上回る濃度のいかなる物質関連不純物も含有しない。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物に関し、この組成物中に存在する関連不純物質の総量は、約0.6重量%未満、より好ましくは約0.06重量%未満である。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態は、実質的に純粋なフルオレセインを含む、血管造影法で使用するための医薬組成物に関し、このフルオレセインは、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態は、血管造影法で使用するためのフルオレセインの医薬組成物に関し、この組成物は、残留塩化物量約0.25重量%未満を有する。
【0031】
以下の図面および発明を実施するための形態を用いて、本発明をさらに十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】フルオレセイン洗浄実験の実験計画の概要である。
【図2】フルオレセインpH/沈殿実験の実験計画の概要である。
【図3】実施例3に記載される、フルオレセイン原体の色強度を示すUV/VISスペクトルである。
【図4】実施例5に記載される、希釈液ブランクのHPLCクロマトグラムである。
【図5】実施例5に記載される、1%USPフルオレセイン参照標準物質のHPLCクロマトグラムである。
【図6】実施例5に記載される、供給元Aのフルオレセイン原料のHPLCクロマトグラムである。
【図7】実施例5に記載される、0.8%レゾルシノールを添加したフルオレセイン原料のHPLCクロマトグラムである。
【図8】実施例5および6に記載される、フルオレセインの構造および関連不純物質の提示構造の図である。
【図9】LC/MSシステムからのフルオレセインの代表的HPLCクロマトグラムである。
【図10】(a)は、UV検出によるフルオレセインのクロマトグラムであり、(b)は、13.65〜14.45分に抽出されたフルオレセインのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図11】(a)は、質量分析計を用いたm/z259での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Aのクロマトグラムであり、(b)は、11.95〜12.05分に抽出された不純物AのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図12】(a)は、質量分析計を用いたm/z285での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Bのクロマトグラムであり、(b)は、15.45〜15.55分に抽出された不純物BのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図13】(a)は、質量分析計を用いたm/z347での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Cのクロマトグラムであり、(b)は、16.10〜16.50分に抽出された不純物CのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図14】(a)は、質量分析計を用いたm/z347での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Dのクロマトグラムであり、(b)は、18.20〜18.65分に抽出された不純物DのHPLCピークのサーモスプレー質量スペクトルである。
【図15−1】(a)は、質量分析計を用いたm/z333での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Eのクロマトグラムであり、(b)は、13.23〜13.52分に抽出された不純物EのHPLCピークのAPCI質量スペクトルである。
【図15−2】(c)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物Eのクロマトグラムであり、(d)は、不純物EのピークのUV−Visスペクトルである。
【図16−1】(a)は、質量分析計を用いたm/z425での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Fのクロマトグラムであり、(b)は、19.10〜19.32分に抽出された不純物FのHPLCピークのAPCI質量スペクトルである。
【図16−2】(c)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物Fのクロマトグラムであり、(d)は、不純物FのピークのUV−Visスペクトルである。
【図17−1】(a)は、質量分析計を用いたm/z375での質量選択検出による、フルオレセイン中の不純物Gのクロマトグラムであり、(b)は、21.27〜21.54分に抽出された不純物GのHPLCピークのAPCI質量スペクトルである。
【図17−2】(c)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物Gのクロマトグラムであり、(d)は、不純物GのピークのUV−Visスペクトルである。
【図18】(a)は、51.75〜51.85分に抽出された不純物H−1のHPLCピークのAPCI質量スペクトルであり、(b)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物H−1のクロマトグラムである。
【図19】(a)は、52.67〜52.79分に抽出された不純物H−2のHPLCピークのAPCI質量スペクトルであり、(b)は、220〜500nmの総吸光度スキャンでの検出による、フルオレセイン中の不純物H−2のクロマトグラムである。
【図20】不純物H−2のUV−Vis吸光度スキャンである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用される際、以下の略語および用語は、特別の定めのない限り以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0034】
略語「APCI」は、大気圧化学イオン化を意味する。
【0035】
略語「M/S」または「MS」は、質量分析計を意味する。
【0036】
略語「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味する。
【0037】
略語「UV−Vis」は、紫外可視を意味する。
【0038】
略語「LC/MS」は、液体クロマトグラフィー/質量分析計を意味する。
【0039】
「炭」という用語は、色度を減少させるのに有効な活性炭素剤を包含する。例示的な薬剤には、供給元Univar USA(米国テキサス州ダラス)から市販されている、Norit(登録商標) SA PlusおよびNorit(登録商標) SX Ultraが含まれるが、これらに限定されない。色度を減少させることができる炭の形態は、通常の実験によって判断することができる(例えば、別の市販の炭の形態であるDarco(登録商標) KBは、色度を減少させるのに有効でないことが判断されている)。
【0040】
「色度(color number)」という用語は、pH9.4の水酸化ナトリウムと重炭酸ナトリウムの水溶液中で調製したフルオレセイン原料1.0%溶液の、590nmで測定した場合の吸光度である。
【0041】
「フルオレセイン原体」および「フルオレセイン原料」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。
【0042】
「関連不純物質」という用語は、フルオレセインおよび/またはフルオレセイン反応物の合成不純物、異性体、酸化生成物、二量化生成物、および分解生成物を包含する。かかる関連不純物質の例示的構造は、図8に示す。
【0043】
「ピリジンを実質的に含まない」という用語は、フルオレセイン組成物が少なくとも99%ピリジンを含まないことを意味する。より好ましくは、分析純度が少なくとも99.9%であり、さらに好ましくは、フルオレセイン組成物はピリジン全く含まない。
【0044】
「実質的に純粋なフルオレセイン」という用語は、不純物、例えば関連不純物質などの完全な不在、あるいはほぼ完全な不在を指す。例えば、フルオレセイン組成物が実質的に純粋であるとされる場合、検出可能な関連不純物質が存在しないか、あるいは単一の関連不純物質が検出される場合、それが0.1重量%を上回らない量で存在し、または複数の関連不純物質が検出される場合、それらは全体で0.6重量%を上回らない量で存在する。
【0045】
本発明のプロセスは、低い関連不純物質プロファイルを有するフルオレセイン生成物を生成する。精製されたフルオレセイン材料でさえ、低レベルのある不純物、例えばレゾルシノールおよび2−(2’,4’−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸などを含有しうることは一般的に知られている。しかしながら、フルオレセインの市販試料が、レゾルシノールおよび2−(2’,4’−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸に加え、いくつかの不純物を含有しうることはこれまでは知られていなかった。これらの潜在的不純物の量は、本発明のプロセスによって実質的に減少される。かかる不純物は、本明細書において、集合的に「関連不純物質」と称する。
【0046】
このような関連不純物質の分子量をLC/MSによって判断するために実験を行なった。また、理論に縛られることは望まないが、これらの不純物の構造を本明細書において提示する(図8を参照)。精製されたフルオレセイン組成物中にさえ存在しうる低レベルの関連不純物質を分解し、定量化するためのプロセスを発見した。詳細は下記に記載する。本発明のプロセスが実質的に低下したレベルの関連不純物質を有する高度に精製されたフルオレセインを提供することを発見した。これは、下記の表1に示す本発明の精製されたフルオレセイン原体の不純物プロファイルにおいて、下記の表2に示す様々な製造業者からの工業グレードのフルオレセインの不純物プロファイル、および下記の表3〜5に示す様々な製造業者からのフルオレセイン原体の不純物プロファイルと比較して見ることができる。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2−1】
【0049】
【表2−2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5−1】
【0053】
【表5−2】
本発明に関与する一般的プロセスの概要を下記に説明する。商用グレードのフルオレセインを還流温度で無水酢酸と反応させることによってジアセチル化する。そのように生成したジアセチル化フルオレセインを単離し、その後塩基と反応させて、脱アセチル化フルオレセインを生成し、これを次に炭で処理して、高純度かつ低塩化物含有量の低色フルオレセインを生成する。下記に反応スキームを示す。
【0054】
【化1】
本発明の純フルオレセインを調製するために使用する特定の溶媒、反応時間および温度、ならびにpH値は、一連の実験に基づいて決定された。これらの実験の目標は、低色および低塩含有量を有する高純度の医薬品グレードのフルオレセインを得ること、また従来の既知の方法で使用される有害な溶媒、すなわちピリジンの使用を避けることであった。さらなる目標は、例えば、最低限の量の溶媒を用いることによって、あるいは必要なステップの反応サイクル時間を短縮することによって、プロセスに関わる費用と時間を最小限に抑えることであった。
【0055】
フルオレセインを精製するプロセスは、フルオレセインをO,O’−ジアセチルフルオレセインに転化させることから始める。このために、無水酢酸を溶媒および試薬として使用し、従来技術のプロセスで使用される有害な溶媒、ピリジンの使用を完全に回避する。したがって、フルオレセインと無水酢酸との混合物を還流下で数時間攪拌し、得られた懸濁液を冷ます。凝固点またはそのすぐ下の温度までさらに冷却することにより、完全な結晶化が生じる。結晶化した物質を収集して、まず冷無水酢酸で、次に冷アセトンで洗浄する。次に、この物質を攪拌と穏やか加熱によってアセトン中に再懸濁する。冷却後、白色結晶性物質を収集し、冷アセトンで洗浄し、風乾して、高純度O,O’−ジアセチルフルオレセインを得る。
【0056】
次に、このO,O’−ジアセチルフルオレセインを転化させてフルオレセインに戻し、ナトリウム塩を形成し、最終不純物を除去する。この転化をもたらすために、O,O’−ジアセチルフルオレセインのアセチル基を苛性溶液を用いて加水分解する。したがって、O,O’−ジアセチルフルオレセインおよびメタノールを好適な容器に入れ、調製した脱イオン水に水酸化ナトリウムを加えた溶液を添加し、混合物を攪拌しながら加熱還流する。次に混合物を冷却し、濾過助剤を用いて濾過し、その後メタノールで洗浄する。次に減圧蒸留によって濾液の容積を減らし、水を添加し、反応混合物を冷却する。次に反応混合物のpHを8.5〜8.7に調整する。好適な炭、例えばNorit(登録商標) SX Ultraを添加し、1時間攪拌する。必要であれば、炭処理ステップを繰り返す。次に、重要な沈殿ステップが続く。まず、濾液にエタノールを添加して、エタノールと水を2:1の比率にする。この比率は、沈殿手段において、水に対するより高い比率の有機溶媒は、フルオレセイン生成物中により低い塩化物含有量をもたらすという予期せぬ発見に基づく。この作用を認識するために行なった実験は、下記にさらに記載する。次に、フルオレセインを酸性化するために、較正済みのpH範囲を確立するように、希塩酸溶液を添加する。この範囲は、より低いpHがより望ましい色を有する生成物を提供するという予期せぬ発見に基づく。より具体的には、実験を通して、濾液の最適pH範囲は1.0〜2.5にすべきであり、酸性化は、生成物の凝集を避けるためにゆっくりと、例えば2〜4時間かけて、冷却しながら行なうべきであると判断した。さらなる攪拌および冷却後、フルオレセインを濾過によって単離する。生成物を水とエタノールとの溶液で洗浄し、生成物を乾燥させて、収率80〜90%の非常に高品質のフルオレセインを得る。この高純度フルオレセインは、注射用フルオレセインの調製に使用することができる。このために、フルオレセインを水酸化ナトリウムを用いて可溶性ジナトリウム塩の形態に転化し、アンプルに充填してから滅菌する。
【0057】
本発明のプロセスを実現するために行なった実験法の一例は、フルオレセイン生成物が沈殿するpH範囲の較正である。このpH範囲は、形成された生成物の色のスペクトルに関する経験的観察に一部基づいて、高い範囲から低い範囲に調整した。したがって、低色生成物の目標を達成するためにフルオレセイン生成物を沈殿させるべき最適pH範囲は、約pH1.0〜約pH2.5であると判断した。
【0058】
また、沈殿手段において、水性溶媒に対する有機溶媒のより高い比率は、フルオレセイン生成物中により低い塩化物含有量をもたらすことも、予期せずして発見された。この結果は、低い有機/水性比率は、塩化ナトリウムレベルを下げるために必要であろうと予想していたため、予期していなかった。より高比率の有機溶媒の使用は、濾過速度を向上させる付加的利点を有し、それによって材料を処理するのに要する時間が短縮される。
【0059】
本発明のプロセスを開発するために、さらなる沈殿実験を行なったが、これは下記に記載し、また図1および2に示す。具体的には、下記の表6に示すように、沈殿プロセスを変更することによって塩化物レベルを下げるために実験を行なった。
【0060】
【表6】
表6は、沈殿媒体の溶媒比率の変更は、存在する塩化物の量に影響を及ぼすことを示している。具体的には、沈殿媒体中のエタノールの水に対する比率を上げると、より低い塩化物含有量が生じる。実験Aは、水:エタノール(1:1)の沈殿媒体の容積を10容積(基準)から15容積に増加させた場合、塩化物含有量がわずかに減少することを示している(表6を参照)。実験Bは、水:エタノール(1:1、10容積、基準)からの沈殿を水:エタノール(2:1、15容積)からの沈殿と比較している。本実験の結果は直観に反したものであり、より低い水含有量およびより少ない容積を有する基準反応物が、より低い塩化物含有量をもたらしている。
【0061】
実験Cは、水:エタノール(1:1、10容積、基準)からの沈殿を水:エタノール(1:2、15容積)からの沈殿と比較している。実験Cの結果は、より高い有機含有量の沈殿媒体は、より低い塩化物含有量を生じさせることを示している。
【0062】
沈殿媒体中のより高い有機含有量がより低い塩化物含有量を生じさせる傾向は、実験D、E、F、およびG、ならびに実験H、I、J、およびKにおいて、洗浄を行なっていない生成物と洗浄を行なった生成物の双方について再現している。結果は直観に反するように思われるが、理論に縛られることなく、より高い有機含有量は、生成物ケーキのより速くより効率的な洗浄を可能にすると考えられる。
【0063】
検討した別の態様は、フルオレセインの色が、沈殿媒体のpHに依存しているかどうかである。下記の図7を参照(エタノール:水の比率が2:1の沈殿媒体を使用)。
【0064】
【表7】
結果は、フルオレセインの色がpH変化に対して敏感であることを示している。例えば、pH約3.0では、生成物の外観は栗色の色調を呈し始めるが、これは望ましくないとみなされる。
【0065】
下記の実施例1〜8は、本発明のある実施形態をさらに説明するために提供される。実施例5、6、7、および/または8から得られた代表的データは、図9〜19に示す。
【0066】
図9〜14のデータは、HPLCと連結したサーモスプレー質量分析計を用いたLC/MSによって得た。ピークは、UV検出器(280nm)およびサーモスプレー質量分析計を使用して観察した。実験条件:器具=Waters Model 600 MS HPLCシステムおよびWaters Model 486MS UV検出器(280nm)と連結した、Vestec Model 201Bサーモスプレー質量分析計;カラム=Waters Symmetry C−8、5μ、3.9×150mm;移動相=B0%からB100%までを25分間でプログラムした直線勾配;移動相A=0.1M酢酸アンモニウムを含む10:90(V:V)メタノール:水;移動相B=0.1M酢酸アンモニウムを含むメタノール;流速=1.0mL/分;試料濃度=未希釈;注射量=20μL。
【0067】
図15〜20のデータは、HPLCと連結した質量分析計を用いたLC/MSによって得た。質量分析計は、大気圧化学イオン化(APCI)インターフェースとともに使用し、この質量分析計を正イオン検出モードで作動した。ピークは、220〜500nmの総吸光度をモニターするUV−Vis検出器と質量分析計とを使用して観察した。Waters Symmetry C−8カラム(3.9×150mm)を流速0.6mL/分で使用し、移動相B0%から移動相B100%までを30分間でプログラムした。移動相Bは、0.01M酢酸アンモニウムを含むメタノールとし、移動相Aは、0.01M酢酸アンモニウムを含む10:90/メタノール:水とした。
【実施例】
【0068】
実施例1
フルオレセインジアセテートの形成
【0069】
【化2】
5リットルの三口丸底フラスコに、フルオレセイン(1000g、3.01モル)および無水酢酸(1622g、15.9モル)を加えた。得られた混合物を還流下で3〜5時間攪拌し、得られた懸濁液を室温まで冷ました。継続して攪拌しながら、反応混合物を−5〜3℃までさらに冷却して、完全な結晶化を生じた。結晶化した物質をBuchnerフィルター上に収集し、冷無水酢酸(2×500mL)で洗浄し、次に冷アセトン(1×600mL)で洗浄した。この物質を部分的に乾燥させ、攪拌と穏やかな加熱によってアセトン(1000mL)中に再懸濁した。冷めたあと、白色結晶性物質をフィルター上に収集し、冷アセトン(2×700mL)で洗浄し、風乾した。収率:約75%〜85%;TLCによる単一スポット;MP=203〜205.5℃;純度99.7%。
【0070】
実施例2
ジアセチルフルオレセインからのフルオレセインの形成、ナトリウム塩の形成、および最終不純物の除去
【0071】
【化3】
O,O’−ジアセチルフルオレセイン(1000g)およびメタノール(4000mL)を好適な反応器に入れた。これとは別に、脱イオン水(620mL)に水酸化ナトリウム溶液(480g、50%苛性)を含む溶液を調製した。この水酸化ナトリウム溶液をO,O’−ジアセチルフルオレセインおよびメタノール含有の反応器に入れた。混合物を加熱還流し、還流下で90分間攪拌した。反応混合物を20℃〜25℃まで冷却した。濾過助剤(100g)を用いてこの混合物を濾過し、その後メタノール(500mL)で洗浄した。濾液(5000mL)を減圧下で蒸留して残留量1400mL〜1700mLにし、次に反応混合物を20℃〜25℃まで冷却した。脱イオン水(5000mL)を蒸留濃縮物に添加した。これとは別に、脱イオン水(72g)に水酸化ナトリウム溶液(56g、50%苛性)を含む溶液を調製した。調製したばかりの水酸化ナトリウム溶液(100mL)を用いて、反応物のpHを8.5〜8.7に調整した。Norit SX Ultra(100g)、濾過助剤(100g)、および脱イオン水(500mL)を反応物に室温で添加し、続いてその混合物を1時間攪拌した。このバッチを濾過し、さらにNorit SX Ultra(100g)および脱イオン水(500mL)を室温で濾液に添加し、続いてその混合物を1時間攪拌した。このバッチを濾過し、脱イオン水(2000mL)で洗浄した。エタノール(10000mL)を濾液に添加した。これとは別に、脱イオン水(320mL)に塩酸(32%、820g)を溶解して塩酸溶液を調製した。この希酸性溶液を用いて、濾液のpHを1.0〜2.5に調整し、その間バッチの温度は20℃〜25℃に維持した。バッチを20℃〜25℃で1時間攪拌し、その後濾過によって単離した。溶液(注射用水:エタノール):(3:1)、(2×1000mL)でケーキを洗浄した。生成物を乾燥させ、典型的な収率80〜90%の非常に高品質のフルオレセインを得た。
【0072】
実施例3
フルオレセイン原体の色強度
機器
1cmセルに対応し、660nmから570nmまでをスキャンできる分光光度計。
【0073】
660nmから570nmまでの波長に適した材料、例えば石英の分光光度計用セル(光路長1cm)。
【0074】
フルオレセイン原体の色強度を下記のように測定した。pH9.4の水酸化ナトリウムと重炭酸ナトリウムの水溶液中で調製したフルオレセイン原料の1.0%溶液の色を判断するために、その590nmでの吸収を測定することによる手段を用いた。この値は、「色度」とも称することができる。590nmでの吸光度測定値の増加は、完成した製剤の目に見える色強度の増加に対応する。
【0075】
フルオレセイン(250mg±5mg、正確に計量)および重炭酸ナトリウム(50mg)を計量して、25mLビーカーに入れた。水酸化ナトリウム(1%、5mL)を加えた。溶液を攪拌しながら穏やかに加温した。全ての材料が溶解し、溶液が透明になるまで、水酸化ナトリウム(1%、さらに1mLまで、合計6.0mL)を加えた。反応物を室温まで冷却した。必要であれば、1%水酸化ナトリウムを滴下して用い、pHを9.4に調整した。pHが9.4を上回る場合、溶液を廃棄し、より少ない水酸化ナトリウムを用いて再調製した。溶液をメスフラスコ(25mL)に定量的に移動し、精製水を適量加えて25.0mLにした。最終濃度は、10mg/mL、または1%とした。
【0076】
方法
試料および参照セルキュベットに精製水でブランクのユーザーベースラインを確立し、660nmから570nmまでを100nm/分でスキャンして、分光光度計をゼロに調節した。フルオレセイン溶液(1%)を試料キュベットに加えた。試料溶液を100nm/分で660nmから570nmまでスキャンした。590nmで吸光度の読み取り値を記録した。試料の個々のアリコートに二重測定を行なった。表1は、この方法を用いたいくつかのフルオレセイン原料試料試験の典型的な色度結果を記載している。結果は、下の項に示す方程式を用いて補正した。図3は、フルオレセイン原料試料から得られた典型的なスペクトルを示している。
【0077】
計算
以下のように、吸光度読み取り値を試料濃度に対して補正した:
【0078】
【数1】
フルオレセイン試料ロットの色強度測定値は、実施例2に記載のように得た。これを下記の表8に記載する。
【0079】
【表8】
実施例4
電位差滴定法によるフルオレセイン残留塩化物の判定
機器
Brinkman 716 DMS Titrino Automated Titratorまたは同等のもの
Brinkman 730 Sample Changerおよび759 Swing Head AutoSamplerまたは同等のもの
Ag Titrode電極
5桁分析天秤または同等のもの
ソニケーター
ホットプレート
3,000rpmが可能な遠心機
培養管、16×125mm、VWR カタログ番号47729−578または同等のもの
16mm培養管用白色キャップ、VWR カタログ番号60828−760または同等のもの
血清フィルター、6.×16mm、VWR カタログ番号28295−556または同等のもの。
【0080】
以下の方法を用いて、硝酸銀電位差滴定法、自動滴定装置、および銀電極を使用して、フルオレセイン中の残留塩化物量を定量化した。
【0081】
(1)試薬溶液調製、水酸化アンモニウム(5N)
濃水酸化アンモニウム(約338mL)を精製水(約600mL)に添加して、精製水で1000mLに希釈した。銀電極をすすぎ、保存するために、この溶液を自動滴定装置に使用した。
【0082】
(2)標準溶液調製、硝酸銀、0.10N、水性
分析証明書を備える市販用に溶液として調製された0.10N硝酸銀を使用することが好ましい。ただし、市販の認可された硝酸銀溶液が入手できない場合は、硝酸銀(17.0g)を計量して、精製水(1000mL)に溶解し、標準としてもよい。塩化カリウム参照標準物質(乾燥、50mg)を計量して、滴定用容器内で精製水(約30mL)に溶解した。この溶液に硝酸(1mL)を加えた。この溶液を銀ビレット電極を用いて、電位差滴定によって滴定した。0.10Nの硝酸銀1mLが塩化カリウム7.455mgに対応した。以下の方程式を用いて、硝酸銀の規定度を計算した:N AgNO3=(KClmg×KCl純度)/(AgNO3mL×74.55)。
【0083】
(3)試料調製および滴定
フルオレセイン原料(2g)を計量して培養管(16×125mm)に入れた。精製水(熱水、10mL)を加えた。硝酸(1mL)を加えて、全管に栓をし、2分間振盪し、15分間超音波処理した。全管を30分間遠心分離した(約3,000rpm)。血清フィルターを用いて、沈殿剤を上澄みから分離した。溶液をデカントして滴定容器に入れた。精製水(1回分5mL)を用いて、血清をすすぎ、濾過した。すすぎ液を滴定容器に注入した。血清フィルターを除去して、廃棄した。2回目も上記の手段を繰り返すが、ただし全管に栓をして1分間振盪し、全管を20分間遠心分離した(約3,000rpm)。1回目および2回目の抽出物からの溶液を混ぜ合わせ、血清フィルターを精製水ですすいだ。混ぜ合わせた溶液を0.10N AgNO3でその電位差滴定終点まで滴定した。滴定パラメータには、各試料のあとに洗浄サイクル(5N水酸化アンモニウム)およびすすぎサイクル(5N水酸化アンモニウム)を用いることが含まれる。パラメータの一覧は下記に示す。
【0084】
(4)計算
【0085】
【数2】
V=滴定した0.10N AgNO3の容積
N=AgNO3滴定剤の規定度
35.453=塩化物の分子量
W=例で使用したフルオレセインの重量
【0086】
【表9】
実施例5
この手段では、フルオレセイン原料の溶液をメタノール中で調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム、勾配移動相プログラミング、およびC−18カラムを用いて、その関連物質から分離した。関連物質をフルオレセイン参照標準物質の1%溶液に対して定量化した。紫外線HPLC検出器を用いて、波長280nmにおけるピーク反応を測定した。移動相Aは、0.01M酢酸アンモニウム、10%メタノール/90%水、および0.5%酢酸である。移動相Bは、0.01M酢酸アンモニウム、100%メタノール、0.5%酢酸である。参照標準物質をメタノール中のフルオレセイン0.5mg/mL溶液とし、メタノール中に最終濃度0.005mg/mLまで希釈するか、あるいはフルオレセイン0.5mg/mLの試料最終理論濃度1%を同様に調製した。HPLC UV/VIS検出器および280nmをモニターする能力を備える、プログラムした勾配操作が可能な高速液体クロマトグラフィーシステムを用いた。カラム:3.9×150mm Waters Symmetry C−18カラム、5μm、(または同等のもの)フルオレセインに対し少なくとも20,000プレート/カラムが可能。流速:0.6mL/分。勾配プログラムは以下のとおりとした:
【表A】
【0087】
ピーク面積を用いて、0.025%以上の既知および未知の不純物のパーセント濃度を下記の計算の項に示すように計算した。本方法の定量化の限界は0.025%であるが、不純物は通常は≧0.05%の濃度で報告される。フルオレセインの分析で9つの不純物が見られ、それらの分子量をLC/MSによって判定した。それらの提示構造は、図8に示す。不純物Hは、2つのジアステレオマー、H−1およびH−2として見られた。このクロマトグラフ法を用いた本手段で例として挙げるフルオレセインのロット中で同定された不純物の典型的な相対保持時間(RRT)、容量係数(k’)、溶出時の勾配組成物(B%)は、以下のとおりである:
【表B】
【0088】
フルオレセインのクロマトグラムにおけるピークは、ピークの相対保持時間、容量係数、およびおおよその移動相組成物が、上記の挙げた関連物質に相当する場合、関連物質A、D、F、H−1、またはH−2として同定することができる。ただし、相対保持時間のそれぞれの値は、クロマトグラフシステムによっておよそ0.02異なりうる。またクロマトグラフシステムの修正は、上記に挙げた値に影響を与えうる。不純物B、C、E、およびGは、ここで検定した4つのフルオレセインロットにおいては同定されなかったが、先の供給元AのフルオレセインのLC/MS分析は、不純物B、C、E、およびGが、RRT1.09、1.11、1.20、および1.44に近似したかもしれないことを示唆している。それぞれRRT1.10および1.74を有する2つの未知の不純物が、本文書において報告されるフルオレセイン原料の4つのロット中に存在した。これらの濃度は、0.025%〜0.05%であった。RRT=1.10における未知のピークが不純物BまたはCのいずれかであった可能性がある。フルオレセイン原料試料のクロマトグラムは、図6に示す。ジアセチルフルオレセインは、フルオレセイン原体中で観察され、フルオレセインに対する保持時間1.35において出現する。
【0089】
レゾルシノールは、フルオレセインの既知の一般的な不純物である。レゾルシノールは、フルオレセインの合成において出発物質として使用され、潜在的な分解生成物である。レゾルシノールは、上記のようにRRT=0.14、k’=2.9、およびB%=24.6で溶出することがわかっている。レゾルシノールは、場合により、未分解の二重線として溶出するのが観察されうる。レゾルシノールを含有するフルオレセイン原体のクロマトグラムは、図7に示す。
【0090】
あらゆる関連のないピーク(すなわち、溶媒先端、システムピーク)をレゾルシノールに加えて同定したが、以下の計算から省いた。レゾルシノールは、RRT約0.14で溶出した(図7を参照)。それぞれの関連物質のパーセント濃度は、下記に示すとおり計算した。
【0091】
【数3】
濃度0.025%以上の不純物を合計することによって不純物の合計を計算する。
以下の式に従って保持比を計算する:
【0092】
【数4】
本方法の定量化の限界は、フルオレセイン0.127μg/mLとして定めた(試料調製濃度0.025%)。検出の限界は、フルオレセイン0.05μg/mLと決定した(試料調製濃度0.01%)。
【0093】
供給元Aのフルオレセイン原料の4ロットを本方法を用いて分析した。7つの不純物を検出し、5つの不純物(A、D、F、H−1、およびH−2)を同定した。報告できる不純物(≧0.025%)の合計パーセントは、0.2%〜0.7%の範囲であった。結果は下記の表10に記載する。
【0094】
本手段の代替として、試料および標準物質の調製物用の希釈液を変更して、レゾルシノールとその他の関連不純物質との同時分析を可能にする。希釈液を調製するために、まず酢酸アンモニウム0.77gを水1000mLに溶解して、酢酸を用いてpHを3.9に調整し、その後同量の酢酸アンモニウム緩衝液とメタノールとを加える。最初に15mLに対して50mgの比率でフルオレセインをメタノールに溶解したあと、この希釈液をメタノールの代わりに使用して、実施例5に記載の手段と同様に標準物質および試料を希釈し、ブランクもメタノールから希釈液に変更する。フルオレセインの標準物質と試料の調整物は、希釈液での希釈後、光から保護する。レゾルシノールとフタル酸との典型的な相対保持時間(RRT)は、以下のとおりである:
【表C】
【0095】
RRF(相対感度係数)を不純物の計算に追加してもよい(RRFは、フルオレセインに対する反応を表わす)。
【表D】
【0096】
1不純物D、F、H−1、およびH2の相対感度係数は決定されていない。それらの相対感度係数は、1.0と仮定される。
【0097】
各関連物質のパーセント濃度は、下記のように計算することができる:
【0098】
【数5】
【0099】
【表10】
実施例6
フルオレセイン関連不純物質の独自性を判断するために、研究を実施した。フルオレセインの試料を不純物の存在および濃度について分析した。高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)によって、同定分析を実施した。
【0100】
LC/MSシステムによる代表的HPLCクロマトグラムを図9に再現する。フルオレセインは、クロマトグラム中に主要ピークを表わした。図10(b)に示すフルオレセインのサーモスプレー質量スペクトルは、分子量332と一致する、m/z333におけるM+H分子イオンを表わした。
【0101】
図11(b)に示すように、不純物Aのサーモスプレー質量スペクトルは、m/z259にM+H分子イオンを表わし、分子量258を示した。図8に提示する不純物A[2−(2’,4’−ジヒドロキシベンゾイル)安息香酸]の構造は、フルオレセイン調製物中の不純物として以前に報告されている。
【0102】
図12(b)に示すように、不純物Bのサーモスプレー質量スペクトルは、m/z285にM+H分子イオンを表わし、分子量284を示唆している。分子量284は、成分式C15H8O6、C16H12O5、またはC17H18O4に相当しうる。図8に示す不純物Bの提示構造は、レゾルシノールのコハク酸との反応から生じうる(フルオレセインのフタル酸前駆体中の不純物として)。
【0103】
図13(b)に示すように、不純物Cのサーモスプレー質量スペクトルは、m/z347にM+H分子イオンを表わす。これは、分子量346を表わし、フルオレセインから14質量単位の増加に相当する。
【0104】
図14(b)に示すように、不純物Dのサーモスプレー質量スペクトルもm/z347にM+H分子イオンを表わすが、これは不純物Cの異性体と思われる。不純物CおよびDについて提示される構造は、互いに互変異性体であり、双方ともフルオレセインのキニーネ型酸化生成物である。
【0105】
図15(b)に示すように、不純物EのAPCIは、m/z333にM+H分子イオンを表わして分子量332を示し、また492nmにUVmaxを有するUVスペクトル表わした。したがって、不純物Eは、フルオレセインの位置異性体でありえると思われる。
【0106】
図16(b)に示すように、不純物FのAPCIは、m/z425にM+H分子イオンを表わして分子量424を示し、400nmを上回るUVmaxを生じた。スペクトルは、親化合物に加えられた追加レゾルシノール分子と一致すると思われる。したがって、化合物Fは、3つのレゾルシノールから形成しうる一方、親化合物は、2つのレゾルシノールから形成しうる。
【0107】
図17(b)に示すように、不純物GのAPCIは、m/z375にM+H分子イオンを表わして分子量374を示し、484nmにUVmaxを表わした。スペクトルと親油性の双方は、フルオレセインの酢酸エステルと一致すると思われた。
【0108】
図18(a)および19(a)に示すように、不純物H−1およびH−2のAPCIは、両化合物についてm/z739にM+H分子イオンを表わして、それぞれについて分子量738を示唆した。両化合物のUV−Vis吸光度スペクトルは同様であり、233nmにUVmaxを有し、462および488nmに比較的弱い吸収極大を有した。不純物H−2の吸光度スペクトルは、図20に示す。
【0109】
実施例7
注射用フルオレセイン、またはFluorescite 25%の調製
配合槽内の必要とされる注射用水の60%に、必要量の水酸化ナトリウムを溶解して、計量した。フルオレセインを加えて、溶解した。溶解するために必要な場合、追加の注射用水を加えたが、容積は総容積の90%を上回らないようにした。フルオレセインが30分攪拌後に完全に溶解しない場合、次のステップに進んでpHを調整した。pHは9.4に調整したが、これは水酸化ナトリウム3Nおよび/または塩酸INで行なった。混合物を180R.P.Mで30分間攪拌した。pHを再確認した。9.3を下回る、または9.5を上回る場合、水酸化ナトリウム3Nおよび/または塩酸INでpHを9.4に再調整した。フルオレセインナトリウム溶液に注射用水を追加して所定の容積にし、15分間攪拌した。pHを上記のように再確認した。窒素槽を用いて、膜孔サイズ5ミクロン、0.8ミクロン、および0.45ミクロンの3枚の連続するメンブレンフィルターを通して溶液を加圧濾過して、滅菌充填槽に入れた。生成物のpHを上記の手段を用いて再確認した。試料を実験室試験用に無菌的に取り出した。生成物をあらかじめ滅菌したアンプルに充填した。各アンプルには、2.15〜2.25mLを加えた。充填直後に、標準方法で試料をチップシールまたはプルシールした。各アンプルのシールは、滅菌の際に試験した。アンプルを高圧蒸気殺菌法によって121℃でバッチサイズに応じて20分間以上滅菌した。漏れを慎重に検査した。最適な光条件下で、各アンプルに粒状物質が存在しないか個々に検査した。
【0110】
実施例8
注射用フルオレセイン、またはFluorescite 10%の調製
注射用フルオレセインを調製するための代替手段として、好適なステンレススチール槽に、冷注射用水(およそ30℃)のバッチ量のおよそ70%〜75%を加えた。フルオレセインを加え、懸濁液が完成するまで混合した。初期pHを記録した。十分な量(総容積のおよそ7.5%)の7N水酸化ナトリウムを加え、その後追加量の7N水酸化ナトリウムを、追加ごとにおよそ15分間待ったあとにpH値を確認しながら、pH9.4を目標に、pHが9.3〜9.5になるまで加えた。pHが9.5を上回る場合、pH範囲9.3〜9.5を達成するために、IN塩酸を加えてpHを調整した。このpH範囲に達したあと、混合を15分以上継続した。バッチを注射用水で最終重量にし、30分以上混合した。pHを試験して、必要に応じて水酸化ナトリウムまたは塩酸で調整した。生成物を無菌的に滅菌バイアルに充填し、標準実施手段に従ってさらなる検査および試験を行なった。
【0111】
本明細書において強調される特定の実施形態は、本発明の全ての実施形態の列挙するものではない。また、当業者は、通常の実験法を用いるだけで、本発明の実施形態の多数の同等物を認識する、あるいは解明することができるであろう。かかる同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋なフルオレセインを含む、組成物。
【請求項2】
ピリジンを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.1重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.01重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中に存在する関連不純物質の総量は約0.6重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中に存在する関連不純物質の総量は約0.06重量%未満である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記実質的に純粋なフルオレセインは、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中に存在する残留塩化物の量は、約0.25重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
実質的に純粋なフルオレセインを調製するためのプロセスであって、
(a)ジアセチルフルオレセインを加水分解して、フルオレセインを形成するステップと、
(b)溶液中の該フルオレセインに炭を添加して、フルオレセイン/炭混合物を形成するステップと、
(c)該フルオレセイン/炭混合物を濾過するステップと、
(d)濾液にエタノールを添加するステップと、
(e)酸性溶液を用いてpHを調整して、沈殿物を形成するステップと、
(f)濾過するステップと、
(g)洗浄するステップと
を含む、プロセス。
【請求項10】
ステップ(e)におけるpHは、約1.0〜約2.5のレベルに調整される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(e)は、冷却を伴って実施される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(e)は、約2〜約4時間の間に実施される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項9に記載のプロセスによって調製された、実質的に純粋なフルオレセイン。
【請求項14】
フルオレセイン組成物の純度を判断するための方法であって、
(a)前記組成物の高圧液体クロマトグラムを得るステップと、
(b)関連不純物質に対応する、該クロマトグラムにおけるピークを同定するステップと、
(c)該ピークの面積測定値を得て、その相対濃度を判断するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記ピークは、約0.75、1.19、1.23、1.68、および1.71の相対HPLC保持時間を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
実質的に純粋なフルオレセインと注射用賦形剤とを含む、血管造影で使用するための医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物は、ピリジンを実質的に含まない、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、約0.1重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物中に存在する関連不純物質の総量は、約0.6重量%未満である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記実質的に純粋なフルオレセインは、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中に存在する残留塩化物の量は、約0.25重量%未満である、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
請求項9に記載のプロセスによって調製された実質的に純粋なフルオレセインを含む、組成物。
【請求項23】
ジアセチルフルオレセインの脱アセチル化によって調製された実質的に純粋なフルオレセインを含む、組成物。
【請求項1】
実質的に純粋なフルオレセインを含む、組成物。
【請求項2】
ピリジンを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.1重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.01重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中に存在する関連不純物質の総量は約0.6重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中に存在する関連不純物質の総量は約0.06重量%未満である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記実質的に純粋なフルオレセインは、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中に存在する残留塩化物の量は、約0.25重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
実質的に純粋なフルオレセインを調製するためのプロセスであって、
(a)ジアセチルフルオレセインを加水分解して、フルオレセインを形成するステップと、
(b)溶液中の該フルオレセインに炭を添加して、フルオレセイン/炭混合物を形成するステップと、
(c)該フルオレセイン/炭混合物を濾過するステップと、
(d)濾液にエタノールを添加するステップと、
(e)酸性溶液を用いてpHを調整して、沈殿物を形成するステップと、
(f)濾過するステップと、
(g)洗浄するステップと
を含む、プロセス。
【請求項10】
ステップ(e)におけるpHは、約1.0〜約2.5のレベルに調整される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(e)は、冷却を伴って実施される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(e)は、約2〜約4時間の間に実施される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項9に記載のプロセスによって調製された、実質的に純粋なフルオレセイン。
【請求項14】
フルオレセイン組成物の純度を判断するための方法であって、
(a)前記組成物の高圧液体クロマトグラムを得るステップと、
(b)関連不純物質に対応する、該クロマトグラムにおけるピークを同定するステップと、
(c)該ピークの面積測定値を得て、その相対濃度を判断するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記ピークは、約0.75、1.19、1.23、1.68、および1.71の相対HPLC保持時間を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
実質的に純粋なフルオレセインと注射用賦形剤とを含む、血管造影で使用するための医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物は、ピリジンを実質的に含まない、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、約0.1重量%を上回る濃度のいかなる関連不純物質も含有しない、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物中に存在する関連不純物質の総量は、約0.6重量%未満である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記実質的に純粋なフルオレセインは、約0.015〜約0.050AUCの色度を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中に存在する残留塩化物の量は、約0.25重量%未満である、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
請求項9に記載のプロセスによって調製された実質的に純粋なフルオレセインを含む、組成物。
【請求項23】
ジアセチルフルオレセインの脱アセチル化によって調製された実質的に純粋なフルオレセインを含む、組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16−1】
【図16−2】
【図17−1】
【図17−2】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16−1】
【図16−2】
【図17−1】
【図17−2】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−512409(P2010−512409A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541476(P2009−541476)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/086390
【国際公開番号】WO2008/073764
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/086390
【国際公開番号】WO2008/073764
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】
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