説明

実験動物飼育管理手法およびキット

【課題】 均一な状態の実験動物であるかどうかを判定するための方法及び手段を提供すること。
【解決手段】 動物個体における遺伝子発現を指標として、動物の飼育管理状態を評価する方法及びキット。遺伝子としては、NM_214247、DY406205、AK235345、CV873795、CN157151、CF366984、NM_214003、BX922385、AJ958558、AK239625、BE234065、NM_214362、BX922813、DN116285、BP454356、CN156357、AY609599、AK230648、AJ943774、EV910206、AJ960599、NM_001038694などを例示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の管理方法が適正であることを判定するための方法及びキットに関する。具体的には、本発明は、遺伝子の発現を検出することによって動物が正常状態であること、もしくは、何らかのストレスを受けていることを判定する方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
動物実験は生物の応答により評価を行う手法であり、動物反応の再現性が重視される。しかし、個体の遺伝的背景、飼育管理状態により実験結果に変化、ばらつきが生じる。そこで、遺伝的背景を統御するだけでなく、より適切に管理された状態の実験動物が求められる。
【0003】
実験動物飼育方法としては音空調の管理等のシステムがあげられる(特許文献1)が、これは実験動物自体の状態の評価を行うものでは無い。
【0004】
また、行動情報等を監視するシステムはあるが、行動は個体の生理状態に影響される可能性はあるもののその詳細に反映はしない(特許文献2及び3)。
【0005】
全身の生理状態を反映する指標として、血液検査が用いられている。しかし血液検査のデータが示す情報には限りがある。実験動物用ミニブタに関しては、事前に体重、体高、体長を測定する。また用途に寄っては血液検査、微生物検査等を行うが、ここから得られる情報は少ない。
【0006】
また、ブタ等の実験動物管理の問題として、食餌等から摂取するカビ毒がある。家畜に関しては、2006年は、母豚約12万1700頭から1年間で約253万頭が生まれ、出荷頭数は約197万頭であった。すなわち約56万頭が死亡したと推定される。この死亡原因としては、サーコウイルス感染症、繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)、のような症状と言われているが、原因は確定していなく、カトリーナ被害を受けカビ毒に汚染されたトウモロコシが、2006年にかけて輸入され家畜被害を増加させたと考えられている。実験動物としてブタについても、食餌量が多いことから、市販の餌は事前には殺菌されてなく、もしされていたとしても、飼料成分である穀物等にカビ毒が残留する可能性は否定出来ない。そこで、家畜によるカビ毒の摂取の判定、食品又は飼料中に存在するカビ毒を検出することが必要され、解決の手段が提案されている。例えば、T細胞と検体とを接触させて、T細胞において誘導されるアポトーシスを定量することにより、食品又は飼料中に存在するトリコテセン系マイコトキシンを検出する方法が報告されている(特許文献4)。また、検出対象の毒性物質(例えばトリコテセン系マイコトキシン)に対する抗体を用いて、試料中の毒性物質の存在を検出する方法が報告されている(特許文献5〜7)。
【0007】
しかしながら、飼育中の実験動物の生理状態、健康状態の詳細を判定することは非常に困難であるため、実験動物の生理状態を直接的かつ効率的に判定するための方法及び手段は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−257789号公報
【特許文献2】特表2004−532475号公報
【特許文献3】特開2004−89027号公報
【特許文献4】特開2005−245211号公報
【特許文献5】特開平8−240583号公報
【特許文献6】特開2005−508395号公報
【特許文献7】国際公開WO01/018196号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、均一な状態の実験動物であるかどうかを判定するための方法及び手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、血液検査より詳細な生理状態を示す遺伝子発現により、飼育管理状態の検査を行う。本発明者らは、標準状態で飼育管理したクラウン系ミニブタのSPFにおいて3−9月齢の血液検査、3−7月齢のRNA発現解析を行い、飼育管理状態の指標とするのに有効な遺伝子として、飼育管理状態で変化せずに、ストレスや逸脱した飼育条件で変化する遺伝子を見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
【0011】
本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕動物個体における遺伝子発現を指標として、動物の飼育管理状態を評価する方法。
〔2〕動物個体由来のサンプルを調製する工程、該サンプル中の遺伝子の発現を検出する工程を含む〔1〕記載の方法。
〔3〕遺伝子が、(1)〜(5)に列挙した遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子である〔1〕又は〔2〕記載の方法。
(1)NM_214247、DY406205、AK235345、CV873795、CN157151、CF366984、NM_214003、BX922385、AJ958558、AK239625、BE234065、NM_214362、BX922813、DN116285、BP454356、CN156357、AY609599、AK230648、AJ943774、EV910206、AJ960599、NM_001038694
(2)BX666263、EW548701、BG609374、AK231118、AK231685、CK455500、CK449811、EW239292、NM_213917、EV961479、NM_213766、CN157127、CF179162、NM_001097445、ES443290、AK232168、NM_001113039、AK236447、AK230491、NM_001097445、AK230568
(3)DN100824、AJ952413、CF179182、CK458478、NM_214088、DN111129、BF194523、AK234933、DN114779、DB803791、CK454514、DY437619、DN110022、NM_213909、NM_001097429、BX923516、CN166560
(4)NM_001101026、EW537484、NM_001008691、DN110902、NM_213817、AJ944339、BP438909、BX926252、AK230980、AJ961542、BX917066、AK236917、DV229591、NM_214061、NM_213932、BQ604761、DN111689、NM_001004038、AJ956497、AK232816、AK238068、AK232717、BP159982、EW255532
(5)DN128270、EW274452、DN118645、DQ227991、CF367671、CN160052、AK230888、AK230888、DY426305、NM_001113039、NM_213757
〔4〕(6)に列挙した遺伝子のいずれか一つの発現量に対する(1)〜(5)に列挙した遺伝子からなる群より選択された少なくとも一つの遺伝子の発現量の相対値を算出し、その値に基づいて実験動物の飼育管理状態を評価する〔3〕記載の方法。
(6)AY550069、AK231307、NM_001113047、AK233471、EW250348、BX673160、NM_001113047、BG608821、NM_214201、AK233704、AK239460、CK468057、AJ945423
〔5〕遺伝子の発現の検出が、プライマーDNAを用いてサンプル中の遺伝子のmRNA若しくはそれに対応するcDNAを鋳型とした増幅反応を行い、増幅産物を検出することにより、あるいはプローブDNAを、該サンプル中の該mRNA若しくはそれに対応するcDNAと接触させ、該プローブDNAと該mRNA若しくはcDNAとの反応を検出することにより行われる〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕遺伝子の発現の検出が、遺伝子によりコードされるポリペプチドに対する抗体と、サンプル中の該ポリペプチドとを接触させ、該ポリペプチドと該抗体との反応を検出することにより行われる〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕動物が家畜である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕家畜がブタである〔7〕記載の方法。
〔9〕家畜がミニブタである〔8〕記載の方法。
〔10〕サンプルが臓器である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕臓器が血液である〔10〕記載の方法。
〔12〕動物個体における遺伝子発現を測定するための手段を含む、実験動物の飼育管理状態を評価するためのキット。
〔13〕動物個体における遺伝子発現を測定するための手段が、該遺伝子の塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な配列における少なくとも15個の連続する塩基からなるプライマーDNA又はプローブDNAである〔12〕記載のキット。
〔14〕動物個体における遺伝子発現を測定するための手段が、該遺伝子によりコードされるポリペプチドに対する抗体又は抗体フラグメントである〔12〕記載のキット。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、均一な状態の動物を簡便かつ効率的に判定することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ブタ血液発現遺伝子数の月齢による変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
【0015】
本発明は、動物個体における遺伝子発現を指標として、動物の飼育管理状態を評価する方法を提供する。
【0016】
本発明の方法は、動物個体由来のサンプルを調製する工程、該サンプル中の遺伝子の発現を検出する工程を含むとよい。
【0017】
本発明の方法において、発現の指標とする遺伝子は、飼育管理状態で変化せずに、ストレスや逸脱した飼育条件で変化する遺伝子であるとよく、具体的には、(1)〜(5)に列挙した遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子であるとよい。
【0018】
(1)(アジ化6時間,24時間、表3に対応)NM_214247、DY406205、AK235345、CV873795、CN157151、CF366984、NM_214003、BX922385、AJ958558、AK239625、BE234065、NM_214362、BX922813、DN116285、BP454356、CN156357、AY609599、AK230648、AJ943774、EV910206、AJ960599、NM_001038694
(2)(アジ化6時間,表4に対応)BX666263、EW548701、BG609374、AK231118、AK231685、CK455500、CK449811、EW239292、NM_213917、EV961479、NM_213766、CN157127、CF179162、NM_001097445、ES443290、AK232168、NM_001113039、AK236447、AK230491、NM_001097445、AK230568
(3)(アジ化24時間、表5に対応)DN100824、AJ952413、CF179182、CK458478、NM_214088、DN111129、BF194523、AK234933、DN114779、DB803791、CK454514、DY437619、DN110022、NM_213909、NM_001097429、BX923516、CN166560
(4)(食餌、表7に対応)NM_001101026、EW537484、NM_001008691、DN110902、NM_213817、AJ944339、BP438909、BX926252、AK230980、AJ961542、BX917066、AK236917、DV229591、NM_214061、NM_213932、BQ604761、DN111689、NM_001004038、AJ956497、AK232816、AK238068、AK232717、BP159982、EW255532
(5)(麻酔、表8に対応)DN128270、EW274452、DN118645、DQ227991、CF367671、CN160052、AK230888、AK230888、DY426305、NM_001113039、NM_213757
(1)〜(5)に列挙した遺伝子の中では、ストレスや管理された飼育環境から逸脱した条件下で発現量の変化が大きい遺伝子が好ましい。さらに発現が抑制される遺伝子は、様々なストレスや逸脱した条件において共通である場合が多いことから好ましい(後述の表3〜5、7及び8を参照のこと)。
【0019】
さらに、発現の指標とする遺伝子の発現量は恒常的に変化なく発現する遺伝子に対する相対値で算出し、その値に基づいて実験動物の飼育管理状態を評価するとよい。恒常的に変化なく発現する遺伝子としては、(6)に列挙した遺伝子を例示することができる。
【0020】
(6)(対照遺伝子、表9に対応)AY550069、AK231307、NM_001113047、AK233471、EW250348、BX673160、NM_001113047、BG608821、NM_214201、AK233704、AK239460、CK468057、AJ945423
遺伝子の発現の検出は、プライマーDNAを用いてサンプル中の遺伝子のmRNA若しくはそれに対応するcDNAを鋳型とした増幅反応を行い、増幅産物を検出することにより、あるいはプローブDNAを、該サンプル中の該mRNA若しくはそれに対応するcDNAと接触させ、該プローブDNAと該mRNA若しくはcDNAとの反応を検出することにより行うことができる。
【0021】
あるいはまた、遺伝子の発現の検出は、遺伝子によりコードされるポリペプチドに対する抗体と、サンプル中の該ポリペプチドとを接触させ、該ポリペプチドと該抗体との反応を検出することにより行うこともできる。
【0022】
本発明の方法により飼育管理状態を評価する動物としては、例えば、家畜が挙げられ、家畜としては、ブタ、マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、フェレットなどの実験動物を例示することができる。ミニブタは繰り返しの採血が可能であるので、特に有利である。
【0023】
本発明の方法において、動物個体由来のサンプルを調製する場合、サンプルは臓器であるとよく、さらに、例えば組織又は細胞サンプル(卵巣、精巣、骨髄、胃腸管等の組織又は細胞等)、生体液サンプル(血液、血清、血漿、尿、髄液腹水、唾液等)などが挙げられ、採取の容易性の点から、血液、血清又は血漿などをサンプルとして用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、動物個体における遺伝子発現を測定するための手段を含む、実験動物の飼育管理状態を評価するためのキットを提供する。
【0025】
動物個体における遺伝子発現を測定するための手段は、該遺伝子の塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な配列からなるプライマーDNA又はプローブDNAであるとよい。プライマーDNA及びプローブDNAは、遺伝子の塩基配列に基づいて、公知のプログラムにより容易に設計することができる。プライマーとして実質的な機能を有するDNAの長さとしては、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは15〜50塩基であり、さらに好ましくは20〜30塩基である。またプローブとして実質的な機能を有するDNAの長さとしては、20塩基以上が好ましく、さらに好ましくは30〜60塩基であり、さらに好ましくは50〜60塩基である。
【0026】
プローブDNAは基板に固定されていてもよい(DNAアレイの場合)。キットには、さらに、血液を採取するための器具、抗凝固剤、RNAの分解を防ぐ試薬類、血液サンプルからRNAを抽出するための試薬類、RNAからcDNAを生成させるための試薬類、cDNAを鋳型とした増幅反応を行うための試薬類、取扱説明書などが含まれてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、動物の飼育管理状態の評価基準なども記載しておくとよい。
【0027】
あるいはまた、動物個体における遺伝子発現を測定するための手段は、該遺伝子によりコードされるポリペプチドに対する抗体又は抗体フラグメントであってもよい。抗体又は抗体フラグメントは基板に固定されていてもよい(プロテインチップの場合)。キットには、さらに、血液を採取するための器具、抗凝固剤、取扱説明書などが含まれてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、動物の飼育管理状態の評価基準なども記載しておくとよい。
【0028】
動物(例えば、実験動物、特にミニブタ)の出荷時のデータとして、遺伝子発現量のデータを添付することにより、動物としての品質を保障し、安定的に供給することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
標準状態で飼育管理したクラウン系ミニブタのSPFにおいて3−9月齢の血液検査、3−7月齢のRNA発現解析を行った。
【0031】
標準状態でミニブタの飼育管理は、閉鎖された人工環境下で行われ、可能な限り一定の環境で維持されている。実験動物の環境要因は、狭義の環境、栄養ならびに生物の3つに分けられ、狭義の環境因子は住居因子(動物室、ケージ、床敷き、その他)、気候および物理化学的因子(温度、湿度、風速、気圧、換気、照明、騒音、臭気、その他)が挙げられ、目標値が設けられている。また、栄養因子は飼料(栄養要求など)と飲水、生物因子は異種動物としてのヒト(飼育者や実験者)あるいは微生物などであり、ヒトと動物との接触時間や動物の取り扱い方にも十分な配慮が払われている。
【0032】
飼育環境は、温度 18〜27℃、湿度 45〜55%、 気流速度 10から25cm/sec
直接の風当たりを避ける、 換気 6回/hr.オールフレッシュ、照明 150〜300 lx 人工照明 12定時間、騒音 40〜50 dB、 臭気 アンモニア20ppm以下とし、1ケージに1頭の飼育で1頭あたりの床面積は1.5m2以上とした。
【0033】
また、飼料成分は粗たんぱく質15%以上、粗脂肪2.0%以上、粗繊維5%以下、粗灰分7%以下、カルシウム0.4%以上、りん0.3%以上、可消化栄養分総量78.0%以上である。さらに添加物として、クエン酸モランテル30g/トン、エンラマイシン3g力価/トン、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK3、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、パントテン酸、コリン、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸コバルト、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、ヨウ素酸カルシウム、フィターゼ、エトキシキンが含まれている。この飼料を3から5月齢の間は400g/日、5月齢以降は450g/日与え、飲水は自由摂取とした。
【0034】
〔実験例1〕
クラウン系ミニブタSPFは(株式会社ジャパンファーム)それぞれの月齢において血液検査を行い、月齢における分散分析を評価した(表1)。この結果から、クラウン系ミニブタは3から5月齢で成熟し、5から8月齢で、血液状態(全身の状態を反映する指標と考える)が安定するものと考えられる。9月齢以降では老化の影響が考えられる。
【0035】
【表1】

〔実験例2〕
標準飼育のブタから血液を採取し、PAX gene RNA採血管に入れて保存した。PAX gene RNA採血管に保存した血液は、PAX gene blood RNA Kit(キアゲン社)を用いて、プロトコールに従ってRNAを精製した。調製したRNAは、Bioanalyzer(アジレント社製)を用いて、純度を検定した。次に精製したRNAから、Agilent社のQuik-Amp Labeling Kit(1colore)を用いて、二本鎖cDNAを生成した。さらに、Cy3ラベル化ランダムプライマーを用いてランダムプライム反応によりサンプルの増幅・標識を行ない、ハイブリダイゼーションを16時間行った。洗浄後、スキャナーにてイメージ画像を取得し、解析を行った。アレイはAgilent社PorcineオリゴDNAマイクロアレイを用いた。
【0036】
アレイには約44000個のスポットが用意されており、おのおののスポットにはブタの遺伝子が網羅的に搭載されている。アレイの読み取り時にバックグランドよりも小さな値を示すスポット(つまり発現していない遺伝子を除く)という操作を行い、それぞれの個体の発現遺伝子数と月齢の関係を図1に示す。0月齢は胎児の状態のものである。この図から、月齢によって遺伝子の発現数は異なり、ほぼ5月齢で一定となると考えられる。
【0037】
〔実験例3〕
標準飼育の逸脱条件として以下の条件の試験を行い、血液を採取した。採取した血液の一部はPAX gene RNA採血管で保存後に遺伝子発現解析、他はそれぞれ適当な種類の採血管(プレイン、抗凝固剤入り等)に分注し血液検査を行った。
【0038】
逸脱条件1:化学物質ストレス(アジ化ナトリウム)
アジ化ナトリウムの影響濃度は動物種によってあまり変わらない。
【0039】
http://www.tokyo-eiken.go.jp/topics/echudoku/sazide.html
ラット 経口;LD50:46mg/kg、腹腔内;LDL0:30mg/kg、皮下;LDL0:35mg/kg 3)
サル 静注;LDL0:12mg/kg 3)
マウス 腹腔内;LD50:18mg/kg 3)
ラット 経口;LDL0:42mg/kg 4)
3)産業中毒便覧:後藤 稠他編(医歯薬出版)
4)危険物防災救急要覧−化学物質の性状と取り扱い−神戸海難防止研究会(成山堂書店)
そこで、30mg/kgの1/100の濃度を経口投与し、その6時間後、24時間後に血液を採取した。
【0040】
表2に、アジ化ナトリウム投与後に投与前の血液検査の値とt検定を行った結果を示す。表3〜5に、アジ化ナトリウム投与前後で遺伝子発現量に大きな変化があった遺伝子の例を示す。表3は、アジ化ナトリウム処理、6時間および24時間で変動した遺伝子の例を示す。表4は、アジ化ナトリウム処理、6時間のみで変動した遺伝子の例を示す。表5は、アジ化ナトリウム処理、24時間のみで変動した遺伝子の例を示す。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

逸脱条件2:食餌性ストレス
クラウン系ミニブタの通常飼育条件の食餌に対して、群1として食餌重量に対しコレステロール2%、ショ糖37%、ラード10%を置換したもの、群2としてコレステロール2%、ラード15%を置換したものを、3月齢から2ヶ月間与えて、採血を行った。採取した血液の一部はPAX gene RNA採血管で保存後に遺伝子発現解析、他はそれぞれ適当な種類の採血管(プレイン、抗凝固剤入り等)に分注し血液検査を行った。
【0045】
表6に、食餌試験2ヶ月後のグループ1,グループ2と対照群の血液検査の値のt検定を行った結果を示す。表7に、食餌により変動した遺伝子の例を示す。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

逸脱条件3:麻酔ストレス
ブタ用の麻酔剤であるマフロパン1%注射液(メシル酸マホプラジン : 10mg/1ml)を0.03mg/kg投与し、投与6時間後に採血を行い、遺伝子発現解析を行った。マフロパンは催眠鎮静剤の一種である。http://chikusan.net/modules/newdb1/detail.php?id=1746
表8に、麻酔処理、6時間で変動した遺伝子の例を示す。
【0048】
【表8】

表9に、遺伝子発現解析により恒常的に発現し変化しなかった遺伝子の例を示す。
【0049】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、動物(例えば、実験動物、特にミニブタ)の品質保障や安定的供給に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物個体における遺伝子発現を指標として、動物の飼育管理状態を評価する方法。
【請求項2】
動物個体由来のサンプルを調製する工程、該サンプル中の遺伝子の発現を検出する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝子が、(1)〜(5)に列挙した遺伝子からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子である請求項1又は2記載の方法。
(1)NM_214247、DY406205、AK235345、CV873795、CN157151、CF366984、NM_214003、BX922385、AJ958558、AK239625、BE234065、NM_214362、BX922813、DN116285、BP454356、CN156357、AY609599、AK230648、AJ943774、EV910206、AJ960599、NM_001038694
(2)BX666263、EW548701、BG609374、AK231118、AK231685、CK455500、CK449811、EW239292、NM_213917、EV961479、NM_213766、CN157127、CF179162、NM_001097445、ES443290、AK232168、NM_001113039、AK236447、AK230491、NM_001097445、AK230568
(3)DN100824、AJ952413、CF179182、CK458478、NM_214088、DN111129、BF194523、AK234933、DN114779、DB803791、CK454514、DY437619、DN110022、NM_213909、NM_001097429、BX923516、CN166560
(4)NM_001101026、EW537484、NM_001008691、DN110902、NM_213817、AJ944339、BP438909、BX926252、AK230980、AJ961542、BX917066、AK236917、DV229591、NM_214061、NM_213932、BQ604761、DN111689、NM_001004038、AJ956497、AK232816、AK238068、AK232717、BP159982、EW255532
(5)DN128270、EW274452、DN118645、DQ227991、CF367671、CN160052、AK230888、AK230888、DY426305、NM_001113039、NM_213757
【請求項4】
(6)に列挙した遺伝子のいずれか一つの発現量に対する(1)〜(5)に列挙した遺伝子からなる群より選択された少なくとも一つの遺伝子の発現量の相対値を算出し、その値に基づいて実験動物の飼育管理状態を評価する請求項3記載の方法。
(6)AY550069、AK231307、NM_001113047、AK233471、EW250348、BX673160、NM_001113047、BG608821、NM_214201、AK233704、AK239460、CK468057、AJ945423
【請求項5】
遺伝子の発現の検出が、プライマーDNAを用いてサンプル中の遺伝子のmRNA若しくはそれに対応するcDNAを鋳型とした増幅反応を行い、増幅産物を検出することにより、あるいはプローブDNAを、該サンプル中の該mRNA若しくはそれに対応するcDNAと接触させ、該プローブDNAと該mRNA若しくはcDNAとの反応を検出することにより行われる請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
遺伝子の発現の検出が、遺伝子によりコードされるポリペプチドに対する抗体と、サンプル中の該ポリペプチドとを接触させ、該ポリペプチドと該抗体との反応を検出することにより行われる請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
動物が家畜である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
家畜がブタである請求項7記載の方法。
【請求項9】
家畜がミニブタである請求項8記載の方法。
【請求項10】
サンプルが臓器である請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
臓器が血液である請求項10記載の方法。
【請求項12】
動物個体における遺伝子発現を測定するための手段を含む、実験動物の飼育管理状態を評価するためのキット。
【請求項13】
動物個体における遺伝子発現を測定するための手段が、該遺伝子の塩基配列又は該塩基配列に対し相補的な配列における少なくとも15個の連続する塩基からなるプライマーDNA又はプローブDNAである請求項12記載のキット。
【請求項14】
動物個体における遺伝子発現を測定するための手段が、該遺伝子によりコードされるポリペプチドに対する抗体又は抗体フラグメントである請求項12記載のキット。

【図1】
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【公開番号】特開2011−167149(P2011−167149A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35618(P2010−35618)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 経済産業省 地域イノベーション創出研究開発事業「高付加価値医工学用ミニブタの創出と効率的生産システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【出願人】(593018378)株式会社ジャパンファーム (2)
【Fターム(参考)】