説明

実験室用具/医療用具のためのプロピレン・ポリマー

本明細書にはポリマー組成物およびそれらから形成される製品が記載されている。該組成物はランダム・コポリマーおよび放射線添加剤(radiation additive)を含み、ここでランダム・コポリマーはプロピレンおよび2重量%未満のエチレンを含み、そして約300〜100dg/分の溶融流量を示し、ポリマー組成物は約160kpsi〜約200kpsiの曲げ弾性率を示し、そして該ポリマー組成物は低いプレートアウト、15%以下の、20milsにおける曇り度、放射線安定性およびオートクレーブ処理能を示すポリマー製品を生成するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する関係
本出願書は2008年10月21日出願の米国仮特許出願第61/107,049号の利益を請求する。
【0002】
本発明の態様は一般的にポリプロピレン組成物に関する。本発明の態様はとりわけ、耐放射線性の用途に有用なポリプロピレン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
実験室および医療等級のポリマー製品は典型的に滅菌される。ポリプロピレン製品のこのような滅菌はガンマ線を伴う可能性がある。従って、放射線に暴露されるポリプロピレン製品は放射線安定性を示さなければならない。しかし、このような製品を形成するための以前の試みはなかでも、耐放射線性、透明度および柔軟性のバランスを達成する点で困難に遭遇してきた。
【0004】
従って、医療および実験室等級の製品の形成における特性のこのようなバランスを示すポリプロピレンを開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
要約
本発明の態様は一般的に、ランダム・コポリマーおよび放射線添加剤(radiation additive)を含むポリマー組成物を含み、ここでランダム・コポリマーはプロピレンおよび2重量%未満のエチレンを含み、そして約300〜100dg/分の溶融流量を示し、該ポリマー組成物は約160kpsi〜約200kpsiの曲げ弾性率を示し、そして該ポリマー組成物は低いプレートアウト、15%以下の、20milsにおける曇り度、放射線安定性およびオートクレーブ処理能を示すポリマー製品を生成するようになっている。
【0006】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、ポリマー組成物は約1%未満のキシレン可溶物を含む。
【0007】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、ランダム・コポリマーは約30dg/分〜約60dg/分の溶融流量を示す。
【0008】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、ランダム・コポリマーは135〜165℃の融点を有する。
【0009】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、ポリマー組成物は更に透明剤、核剤およびそれらの組み合わせ物から選択される作用剤(agent)を含む。
【0010】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、作用剤は1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール;アルミニウム、ヒドロキシビス[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサフォスホシン6−オキシダト」;71(2,2’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートリチウム塩);ノニトール、1,2,3−トリデオキシ−4,6;5,7−ビス−o−
[(4−プロピルフェニル)メチレン];(1,3,5−トリスアミド誘導体)およびそれらの組み合わせ物から選択される。
【0011】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、放射線添加剤は(ポリ[[6−[1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)];(4−ヒドロキシ−2,2,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール)およびそれらの組み合わせ物から選択される。
【0012】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、放射線添加剤は二種以上の放射線添加剤を含む。
【0013】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、組成物は約0.2重量%〜約0.15重量%の放射線添加剤を含む。
【0014】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、組成物は約0.2重量%〜約0.4重量%の作用剤を含む。
【0015】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様は、ポリマー組成物を含む成形品を含む。
【0016】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、成形品は低いプレートアウト、15%以下の、20milsにおける曇り度、放射線安定性およびオートクレーブ処理能を示す。
【0017】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、ランダム・コポリマーはメタロセン触媒を使用して生成される。
【0018】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、メタロセン触媒はSiMe(2−メチル−4−フェニルインデニル)ZrClである。
【0019】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、製品は医療等級の製品である。
【0020】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、医療等級の製品はピペットの先端、遠心分離管、反応槽、タンパク質アッセイ用トレー、培養管、シリンジ、ペトリ皿およびそれらの組み合わせ物から選択される。
【0021】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、製品はピペット使用後にピペット中の流体残留を最少にする表面張力を有する。
【0022】
一つまたは複数(いずれかの他の態様と組み合わせた)の態様において、製品は流体の6回の通過後に流体を全く保持しない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は生成された製品の曇り度%を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
序説および定義
次に詳細な説明が提供される。添付の請求項はそれぞれ、侵害の目的上、請求項中に明記された種々の要素または制約に対する同等物を含むものと認められる別々の発明を規定する。文脈に応じて、以下に「発明」と言及されるものはすべて、場合により、ある特定の実施態様のみを表すことができる。他の場合には、「発明」の言及は1項または複数の、しかし必ずしもすべてではない請求項中に引用される主題事項を表すことが認められるであろう。次に、特定の実施態様、バージョンおよび実施例を含む発明をそれぞれ、以下に更に詳細に説明するが、該発明は、本特許中の情報が利用可能な情報および技術と組み合わされる時に、当業者に本発明を作製させ、使用させ得るために含まれる、これらの実施態様、バージョンまたは実施例に限定はされない。
【0025】
本明細書に使用される種々の用語は以下に示される。請求項中に使用される用語が以下に定義されない範囲に対しては、当業者が、印刷された刊行物および発行された特許中に認められるものとしてその用語に与えてきたもっとも広義の定義を与えるべきである。更に、本明細書に記載されるすべての化合物は、別に明記されない限り、置換されていてもまたは未置換でもよく、そして化合物のリストはそれらの誘導体を含む。
【0026】
本明細書で使用される用語「放射線安定性」は、そこで製品が酸素の存在下で滅菌中にガンマ線または電子ビーム光線に抵抗性であり、従って、このような滅菌中そして滅菌後に通常起る脆弱化および変色の程度を軽減するポリマーから形成される物理的特性を表す。従って、本明細書で使用される放射線安定性を示す製品は一般に、少なくとも5メガラッドCo60の光線に抵抗性を示す(脆弱化または変色を増加しない)。
【0027】
本明細書で使用される用語「オートクレーブ処理能」は、製品が、一般に120℃以上におけるオートクレーブによる滅菌中、高温における軟化に抵抗性のポリマーから形成される物理的特性を表す。
【0028】
本明細書に開示される特定の重合法は、一種または複数の触媒系とポリオレフィンモノマーを接触させて、ポリマーを形成する工程を伴う。
【0029】
触媒系
オレフィン・モノマーを重合するために有用な触媒系は、請求される特性を示すポリマー組成物を形成することができるあらゆる触媒系を含む。例えば、該触媒系はクロム基剤の触媒系、メタロセン触媒系を含むシングルサイト(single site)遷移金属触媒系、チーグラー−ナッタ触媒系またはそれらの組み合わせ物を含むことができる。触媒はその次の重合のために活性化することができ、そして、例えば担持物質を伴っても伴わなくてもよい。このような触媒系の簡単な考察を以下に含むが、このような触媒に本発明の範囲を限定する意図は全くない。
【0030】
一つまたは複数の特定の態様において、ポリマー組成物はメタロセン触媒系により形成される。メタロセン触媒は一般に、π結合により遷移金属と配位された一つまたは複数のシクロペンタジエニル(Cp)基(置換されてもまたは未置換でもよく、各置換基は同一でも異なってもよい)を取り込んでいる配位化合物として特徴を示すことができる。Cp上の置換基は例えば、線状、分枝または環状ヒドロカルビル基であることができる。環状ヒドロカルビル基は更に、例えばインデニル、アズレニルおよびフルオレニル基を含む他の隣接環状構造物を形成することができる。これらの隣接環状構造物はまた、例えばC〜C20ヒドロカルビル基のようなヒドロカルビル基により置換されてもまたは未置換でもよい。一つの特定の態様において、メタロセン触媒はSiMe(2−メチル−4−フェニルインデニル)ZrClである。
【0031】
重合法
本明細書の他所で示されるように、ポリオレフィン組成物を生成するために触媒系が使用される。触媒系が一旦、前記のようにそして/または当業者に知られているように調製された後に、その組成物を使用して様々な方法を実施することができる。使用することができる様々なアプローチは、引用により本明細書に取り入れられている米国特許第5,525,678号明細書に示された方法を含む。与えられる方法において、形成されるポリマーの所望の組成および特性に応じて、装置、工程の条件、反応物、添加剤および他の材料はもちろん変わるであろう。例えば、米国特許第6,420,580号、第6,380,328号、第6,359,072号、第6,346,586号、第6,340,730号、第6,339,134号、第6,300,436号、第6,274,684号、第6,271,323号、第6,248,845号、第6,245,868号、第6,245,705号、第6,242,545号、第6,211,105号、第6,207,606号、第6,180,735号および第6,147,173号明細書の方法を使用することができ、これらは引用により本明細書に取り入れられている。
【0032】
前記の触媒系は広範な温度および圧力にわたり、様々な重合法で使用することができる。温度は約−60℃〜約280℃、または約50℃〜約200℃の範囲にあり、そして使用される圧力は1気圧〜約500気圧以上の範囲にあることができる。
【0033】
重合法は溶液、気相、スラリー相、高圧法またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0034】
特定の態様において、本発明の方法は2〜30個の炭素原子、または2〜12個の炭素原子または2〜8個の炭素原子を有する一つまたは複数のオレフィンモノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブタン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキサン、オクタンおよびデカンの、溶液、高圧、スラリーまたは気相重合法に関する。他のモノマーはエチレン状の不飽和モノマー、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役もしくは非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマーおよび環状オレフィンを含む。限定されないモノマーはノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびシクロペンテンを含むことができる。一つの態様において、コポリマー、例えばプロピレン/エチレン、が生成されるか、またはターポリマーが生成される。溶液法の例は米国特許第4,271,060号、第5,001,205号、第5,236,998号および第5,589,555号明細書に記載されており、それらは引用により本明細書中に取り入れられている。
【0035】
気相重合法の一例は一般に、そこで循環気相流(あるいは再循環流または流動媒質として知られる)が重合熱により反応器内で加熱される連続サイクルを使用する。熱は反応器の外部の冷却システムによりサイクルの他の部分で再循環流から除かれる。一種または複数のモノマーを含む気相流は反応条件下で触媒の存在下で流動床を通って連続的に循環させることができる。気相流は流動床から引き出されて、反応器中に循環して戻される。同時にポリマー生成物が反応器から引き出されて、新鮮なモノマーが添加されて、重合されたモノマーと置き換えられる(例えば、引用により、本明細書に取り入れられている、米国特許第4,543,399号、第4,588,790号、第5,028,670号、第5,317,036号、第5,352,749号、第5,405,922号、第5,436,304号、第5,456,471号、第5,462,999号、第5,616,661号および第5,668,228号明細書を参照されたい)。
【0036】
気相法における反応器の圧力は例えば、約100psig〜約500psig、または約200psig〜約400psigまたは約250psig〜約350psigに変動
することができる。気相法における反応器の温度は約30℃〜約120℃、または約60℃〜約115℃、または約70℃〜約110℃または約70℃〜約95℃に変動することができる。該方法により予想される他の気相法は、引用により本明細書に取り入れている、米国特許第5,627,242号、第5,665,818号および第5,677,375号明細書に記載の方法を含む。
【0037】
スラリー法は一般に、触媒と一緒にモノマーおよび場合により水素をそれに添加する、液体重合媒質中に固形の粒状物ポリマーの懸濁物を形成する工程を含む。懸濁物(希釈剤を含むことができる)は、そこで揮発成分がポリマーから分離されて、場合により蒸留後に反応器に再循環されることができる反応器から、間欠的または連続的に取り出すことができる。重合媒質中に使用される液化された希釈剤は典型的には、3〜7個の炭素原子を有するアルカン、例えば分枝アルカンである。使用される媒質は一般に重合条件下で液体であり、そして比較的不活性である(例えばヘキサンまたはイソブテン)。
【0038】
スラリー法またはバルク法(例えば、希釈剤を使用しない方法)は一つまたは複数のループ反応器中で連続的に実施することができる。スラリーとしてまたは乾燥した自由流動性粉末としての触媒は反応器のループに定期的に注入されることができ、ループはそれ自体、希釈剤中の増加するポリマー粒子の循環しているスラリーで充填されることができる。場合により、分子量制御物として水素を添加することができる。反応器は例えば、約27バール〜約45バールの圧力および約38℃〜約121℃の温度で維持することができる。大部分の反応器は二重ジャケット管の形状にあるために、反応熱はループの壁を通して除去することができる。スラリーは、希釈剤およびすべての未反応モノマーおよびコモノマーの除去のために、加熱低圧フラッシュ容器、回転乾燥装置および窒素パージカラムに順々に、定期的間隔でまたは連続的に反応器を排出することができる。次に、生成された、炭化水素を含まない粉末を様々な適用における使用のために配合することができる。あるいはまた、他のタイプのスラリー重合法を使用することができ、そのような撹拌反応器は直列、並列またはそれらの組み合わせである。反応器から取り外すと、ポリマーは更なる加工、例えば添加剤の添加および/または押し出し、のために、ポリマー回収システムに通過させることができる。
【0039】
ポリマー生成物
本明細書に記載された方法により生成されるポリマーは例えばプロピレン−ベースのポリマー(例えばポリプロピレンおよびポリプロピレン・コポリマー)を含むことができる。ポリプロピレン・コポリマーはプロピレン−エチレン・コポリマーを含むことができる。
【0040】
ポリマーは狭い分子量分布(M/M)をもつことができる。本明細書で使用される用語「狭い分子量分布」は、約1.5〜約8、または約2.0〜約7.5または約2.0〜約7.0の分子量分布をもつポリマーを表す。
【0041】
一つの態様において、プロピレン−ベースのポリマーは例えば、130℃未満、または110℃〜125℃、または120℃の再結晶温度(T)をもつことができる。
【0042】
プロピレン−ベースのポリマーは、例えば少なくとも120℃、または120℃〜175℃、または135℃〜165℃、または140℃〜150℃の、第2溶融ピーク(T)(DSCにより測定される)とも呼ばれる、融点、をもつことができる。
【0043】
プロピレン−ベースポリマーは例えば、約15重量%以下、または約12重量%以下、または約10重量%以下、または約6重量%以下、または約5重量%以下または約4重量%以下、あるいは0.1重量%〜2重量%、または0.2重量%〜約1重量%のキシレン
可溶物質(XS)(ASTM D5492−06により測定)を含むことができる。
【0044】
プロピレン−ベースのポリマーは例えば、0.01dg/分〜1000dg/分、または0.01dg/分〜100dg/分、または10dg/分〜60dg/分、または20dg/分〜50dg/分、または30dg/分〜40dg/分の溶融流量(MFR)(ASTM D−1238により測定)をもつことができる。
【0045】
一つまたは複数の態様において、ポリマーはプロピレン−ベースのランダム・コポリマーを含む。他に明記されない限り、用語「プロピレン−ベースのランダム・コポリマー」は、そのポリマーが例えば、ポリマーの総重量に対して、少なくとも約0.2重量%、または少なくとも約0.8重量%、または少なくとも約2重量%、または約0.1重量%〜約5.0重量%、または約0.4重量%〜約1.0重量%のコモノマーを含む、主としてプロピレンおよび少量の少なくとも1種のコモノマー、よりなるようなコポリマーを表す。
【0046】
コモノマーはC〜C10アルケンから選択することができる。コモノマーは例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンおよびそれらの組み合わせから選択することができる。一つの特定の態様において、コモノマーはエチレンを含む。更に、用語「ランダム・コポリマー」は、鎖中のある与えられた部位における与えられたモノマー単位を見いだす確率が、隣接する単位の性状と無関係である高分子より形成されたコポリマーを表す。
【0047】
プロピレン−ベースのランダム・コポリマーは例えば、少なくとも2dg/10分、または5dg/10分〜60dg/10分、または10dg/10分〜50dg/10分、または20dg/分〜45dg/分、または30dg/分〜40dg/分の溶融流量を示すことができる。
【0048】
生成物の適用
生成されたポリマーは様々な最終使用の適用、例えば成形品、に有用である。更に具体的には、ポリマーは実験室および医療用最終使用の製品、例えばピペットの先端および遠心分離管、に使用することができる。
【0049】
一つの態様において、ポリマーは成形品、例えば医療用または実験室等級の製品、を形成するために使用される。成形品は、それらに限定はされないが、例えばピペットの先端、遠心分離管、反応容器、タンパク質アッセイトレー、シリンジ、ペトリ皿または培養管を含むことができる。成形品は当業者に知られたあらゆる方法、例えばブロー成形、圧縮成形、射出ストレッチブロー成形、等、を使用して製造することができる。
【0050】
特定の最終用途のための成形品の特定の特性を修飾または強化するために、ポリマーが、ポリマー組成物を形成するのに有効量の適当な添加剤を含むことができる。一つの態様において、添加剤は、成形品の滅菌工程中に、耐放射線性を提供する放射線添加剤である。このような添加剤の例はChimmasorb 944およびTinuvin 622(Cibaから市販)および他の同様な添加剤、例えばヒンダードアミンおよびオリゴオマーヒンダードアミン、を含む。添加剤は、例えば加工相(ペレット押し出し)中にポリマーと混合することができる。更に、複数の放射線添加剤を組み合わせて使用することができると予想される。放射線添加剤の総量は、ポリマーの総重量の0.25重量%未満、または0.05重量%〜0.20重量%、または0.1重量%〜0.15重量%の量で添加することができる。
【0051】
他の添加剤は、UV劣化、熱または酸化的劣化および/または化学線劣化を防御するための安定剤(例えば、ヒンダードアミン、ベンゾフラノン、インドリノン)、粘着防止剤(anti−blocks)、摩擦係数改変剤、加工助剤、着色剤、透明剤、核剤および当業者に知られた他の添加剤、を含むことができる。一つの態様において、有用な添加剤は界面活性の添加剤ではなく、またはポリマーもしくは製品の表面に移行しない添加剤である。このような添加剤、例えば透明剤および核剤の例は、それらに限定はされないが、Millad(登録商標)3988、Millad(登録商標)NX8000(Milliken Chemicalsから市販)、ADK NA−21およびADK NA−71(Amfine Chemicalsから市販)およびCGX386(Cibaから市販)を含む。より一般的には、透明剤は無機の核剤(例えば、粉砕粘土、シリケート、アルカリ塩、アルカリ土類塩、アルミニウム塩、チタン塩および金属酸化物)、有機の核剤(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、ソルビトール誘導体およびホスフェート誘導体)並びに1,3,5−トリスアミド誘導体を含むことができる。透明剤は例えば、0.10重量%〜0.4重量%、または0.15重量%〜0.25重量%の範囲で添加することができる。Irgafos 168(Cibaから市販)のような加工助剤および当業者に知られた他の物質は例えば、0.05重量%〜0.20重量%、または0.1重量%〜0.15重量%の範囲で添加することができる。
【0052】
予期されなかったことには、本発明で形成される製品は、以前の試みが達成することができなかった特性のバランスを示す。例えば、本発明で形成される製品(単一の製品)は、同一組成物内に望ましい柔軟性(曲げ弾性率により測定される)、低いプレートアウト、望ましい曇り度、放射線安定性およびオートクレーブ処理能を達成することができる。
【0053】
成形品は例えば、15%未満、または2%〜10%、または5%〜8%の、2milsの厚さに対する曇り度を示すことができる。成形品は例えば、20%未満、または5%〜18%、または10%〜15%の、4milsの厚さに対する曇り度を示すことができる。成形品は例えば、25%未満、または10%〜20%、または15%〜18%の、6milsの厚さに対する曇り度を示すことができる。成形品は例えば40%未満、または10%〜35%、または20%〜30%の、8milsの厚さに対する曇り度を示すことができる。曇り度はASTM D1003、方法“A”の方法に従って測定された。
【0054】
一つの態様において、成形品は定義の項で説明された耐放射線性である(すなわち、放射線安定性を示す)。一つの態様において、成形品は定義の項で説明されたオートクレーブ処理能を有する。一つの態様において、成形品は液体が製品に付着することを妨げる表面張力を示す。一つの態様において、製品はピペットの先端であり、そしてピペットの先端は例えば、流体の2回、または3回、または4回、または6回の通過後に製品の先端に流体のごく小さい液滴のみを保持する。あるはまた、製品は例えば、流体の2回、または3回、または4回、または6回の通過後に、製品の先端に全く流体を保持しない。
【0055】
本明細書で使用される「表面張力」は水保持試験により測定される。水保持試験は、残留するどんな液体をも先端の内壁に付着させずに、ピペット先端からすべての液体を完全に分配するピペット先端の効率を示す。水保持試験は蒸留水の複数のピペット使用を伴う。ピペット通過回数は、蒸留水がピペット先端から分配される回数と定義される。水がピペット先端から分配される度に、ピペット先端は水保持につき視覚的に観察される。一貫性のために、試験には、金型中の同一コアからのピペット先端を使用する。
【0056】
成形品はプレートアウトに抵抗性を示すことができる。プレートアウトは部品の成形期間中に物質が金型(コア、穴またはベント)上に堆積する時に起る。金型上に堆積する残留物もまたプレートアウトと呼ばれる。一つの態様において、該製品は、通常のまたは積極的な(aggressive)成形条件下で、低いプレートアウトを有するか、あるい
はまた製品は中程度のプレートアウトを有するか、あるいはまた製品は全くプレートアウトをもたない。
【0057】
成形品は例えば、0.10〜0.50ft−lb./in.、または0.15〜0.40ft−lb./in.、または0.20〜0.35ft−lb./in.の室温のノッチ付アイゾッド衝撃力値を有することができる。
【0058】
成形品は例えば、100〜350kpsiまたは150〜300kpsi、または200〜250kpsi、または160〜200kpsiの曲げ弾性率を示すことができる。
【実施例】
【0059】
40−溶融流量のエチレン/プロピレンのランダム・コポリマー・ポリプロピレン(実施例A)を、メタロセン触媒系SiMe(2−メチル−4−フェニルインデニル)ZrClを使用して生成した。40−溶融流量のエチレン/プロピレンのランダム・コポリマー・ポリプロピレン(実施例B)を実施例Aと同様なメタロセン触媒系を使用して生成した。実施例Aは0.5重量%のエチレン、そして実施例Bは1.0重量%のエチレンを含んだ。実施例AおよびBを、高い透明度、優れた靭性をもちそして、ポリプロピレンを滅菌するために使用される典型的なレベルのガンマ線に抵抗性の、実験室および医療用具のために調合した。表1は実施例Aの特徴を与える。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例1は透明化された、メタロセン触媒によるホモポリマーであった。表2に見られるように、比較例1よりも高い実施例Aの溶融流量が、多孔ピペット先端の金型を充填するためのポリマーの流動動態の増加を許すにちがいない。
【0062】
実施例Aの物理的特性は以下の表2に与えられる。表2に示されるように、実施例Aは比較例1より透明度を改善し、同等な曲げ弾性率をもつが、より高いノッチ付アイゾッド衝撃値を有する。実施例Aは比較例1より改善された曇り度特性およびより高い溶融流量を示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表3は比較例および実施例Aの物理的特性の比較を与える。表3で見られるように、実施例Aは、靭性および耐放射線性のバランスを提供しながら、優れた透明度を与える。
【0065】
【表3】

【0066】
更なる加工の問題に対処するために、実施例Aに他の加工助剤を添加した。添加剤はADK NA−21(Amfineから市販)、CGX 386(Cibaから市販)およびMillad(登録商標)3988(Millikenから市販)を含んだ。これらの添加剤を個々にそして組み合わせて含んでなる試料を配合し、次に試験体のために成形した。これらの試料に関する曇り度パーセントが図1に示される。表4は試料に対するDSCの結果を与える。
【0067】
【表4】

【0068】
結果は加工助剤の添加が%曇り度を増加しないことを示す。ADK NA−21核剤は実施例Aに比較して%曇り度の僅かな増加を示した。CGX386は0.02−インチ厚さの切片に対する%曇り度に僅かな減少を示したが、より厚い切片に対しては、%曇り度の僅かな増加が得られた。すべての試料が実施例Aと一致した融解温度(148℃〜149℃)を示した。Millad(登録商標)3988を使用して調製された試料(加工助剤を使用したものおよび使用しないもの)は約120℃の高い再結晶温度を示し、それは十分に分散された核形成部位と一致する。ADK NA−21およびCGX386核剤を使用して調製された試料はそれぞれ116.7℃および115.3℃の、より低い再結晶温度を示した。ADK NA−21核剤を使用した試料に対する加工助剤の添加(INT−33CLXとともに)は118.3℃までの再結晶温度の増加を示し、それは核剤ADK NA−21の分散がポリマー溶融体中で僅かに増加したことを示すと考えられる。
【0069】
三種類のポリプロピレンのピペット先端が水保持につき試験された:実施例B;実施例A;および実施例C:Total Petrochemicals USA,Inc.から入手できる、0.6重量%のCを含むチーグラー−ナッタ・ランダム・コポリマーポリプロピレン。
【0070】
水保持試験の結果は、実施例Cを使用して製造されたすべてのピペット先端が水保持を示したことを表した。一般に、メタロセン法を使用して生成されたポリプロピレンから製造されたピペット先端は、ソルビトール透明剤Millad(登録商標)3988、NX8000または、NA−21とのMillad(登録商標)39988の組み合わせ物を使用して、水保持を示さなかった。表5は水保持試験の結果を与える。
【0071】
【表5】

【0072】
CGX386と組み合わせたメタロセン法を使用して生成されたポリプロピレンからのピペット先端は2回目の通過時に水保持を示した。1900ppm負荷時に、NX8000透明剤は6回の通過後ですら、Millad(登録商標)3988に比較して何の水保持をも示さなかった。NX8000の量を1300ppmまで低下すると、試験の4回目の通過時に水保持を示した。
【0073】
プレートアウトに対するポリマー製品の抵抗性を決定するために、プレートアウトを促進するために積極的成形条件を使用した。通常の(または定常的)積極的条件は表6に示される。
【0074】
【表6】

【0075】
三種の基剤樹脂をプレートアウトの目的のために研究した。実施例A、実施例Bおよび実施例C。表7は研究された試料の調合および特性を与える。
【0076】
【表7】

【0077】
表8は研究のプレートアウトの結果を与える。
【0078】
【表8】

【0079】
表9はYIインデックスおよび曇り度と一緒に、プレートアウトおよびピペットの水保持の研究をまとめている。
【0080】
【表9】

【0081】
実施例Cを含むすべての調合物は金型のプレートアウトおよび水保持に関して実施例Bに比較して改善を示さなかった。NX8000透明剤は既存の実施例Bに比較して、金型のプレートアウト、水保持およびイエローカラーインデックス(YIインデックス)において同様な成績を示した。NX8000調合物は加工性、機能的成績および外見に関して最良の全体的成績を示した。YIインデックスはHunter Lab D25の光学センサーを使用するHunter色彩分析法により測定した。
【0082】
態様が示され、説明されてきたが、本開示の精神および教示から逸脱せずに、当業者はそれらの修飾を実施することができる。本明細書に記載された態様は例示のみのためであり、限定する意図はもたれない。本明細書に開示された本発明の多数の変更および修飾が可能であり、発明の範囲内に入る。数値的範囲または限界が明白に記述される場合は、このような明白な範囲または限界は、明白に記述された範囲または限界内に入る同様な数字の反復する範囲または限界を含む(例えば、1〜10は2、3、4、等を含む;0.10超は0.11、0.12、0.13、等を含む)ものと理解しなければならない。例えば、下限Rおよび上限Rをもつ数値範囲が開示される場合はいつも、その範囲内に入るあらゆる数が明確に開示される。とりわけ、その範囲内の以下の数が特別に開示される:R=R+k(R−R)、ここでkは、1パーセントの増加を伴う、1パーセント〜100パーセントの範囲内の変数である、すなわち1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…50パーセント、51パーセント、52パーセント、…95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセント、である。更に、前記に定義された2つのR数により規定されるあらゆる数の範囲もまた明確に開示される。請求項のあらゆる要素に関する用語「場合により」の使用は、主題要素が必要とされるか、あるいはまた必要とされないか、を意味することが意図される。両方の選択肢が請求の範囲内にあることが意図される。含んでなる(comprises)、含む(includes)、有する(having)、等のような広義の用語の使用は、よりなる(consisting of)、本質的によりなる(consisting essentially of)、実質的によりなる(comprised substantially of)、等のような狭義の用語の支援物を提供すると理解しなければならない。
【0083】
従って、保護の範囲は前記の説明により限定されず、以下の請求項により限定されるのみであり、その範囲は請求項の主題事項のすべての同等物を含む。ありとあらゆる請求項が本発明の一つの態様として明細書中に取り入れられている。従って、請求項は更なる説明であり、本発明の態様に対する追加である。引用物、特に本出願の優先日後の公開日をもつことができるあらゆる引用物、の考察は、それが本発明に対する先行技術であることを承認するものではない。本明細書に引用されたすべての特許、特許出願書および公開書の開示は、それらが、本明細書に示されるものを補う、例示的、手続き上のまたは、他の詳細を提供する範囲内で、引用により本明細書に取り入れられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダム・コポリマーおよび放射線添加剤を含んでなるポリマー組成物であって、そこでランダム・コポリマーはプロピレンおよび2重量%未満のエチレンを含んでなり、そして約300〜100dg/分の溶融流量を示し、ポリマー組成物は約160kpsi〜約200kpsiの曲げ弾性率を示し、そしてポリマー組成物は低いプレートアウト、15%以下の、20milsにおける曇り度、放射線安定性およびオートクレーブ処理能を示すポリマー製品を生成するようになっている。
【請求項2】
ポリマー組成物が約1%未満のキシレン可溶物(soluble)を含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項3】
ランダム・コポリマーが約30dg/分〜約60dg/分の溶融流量を示す、請求項1の組成物。
【請求項4】
ランダム・コポリマーが135〜165℃の融点を有する、請求項1の組成物。
【請求項5】
更に透明剤、核剤およびそれらの組み合わせ物から選択される作用剤を含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項6】
作用剤が1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール;アルミニウム、ヒドロキシビス[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサフォスホシン6−オキシダト」;71(2,2’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート・リチウム塩);ノニトール、1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−o−[(4−プロピルフェニル)メチレン];(1,3,5−トリスアミド誘導体)およびそれらの組み合わせ物から選択される、請求項5の組成物。
【請求項7】
放射線添加剤が(ポリ[[6−[1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)];(4−ヒドロキシ−2,2,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール)およびそれらの組み合わせ物から選択される、請求項1の組成物。
【請求項8】
放射線添加剤が二種以上の放射線添加剤を含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項9】
組成物が約0.2重量%〜約0.15重量%の放射線添加剤を含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項10】
組成物が約0.2重量%〜約0.4重量%の物質を含んでなる、請求項5の組成物。
【請求項11】
請求項1の組成物を含んでなる成形品。
【請求項12】
成形品が、低いプレートアウト、15%以下の、20milsにおける曇り度、放射線安定性およびオートクレーブ処理能を示す、請求項11の成形品。
【請求項13】
ランダム・コポリマーがメタロセン触媒を使用して生成される、請求項1の組成物。
【請求項14】
メタロセン触媒がSiMe(2−メチル−4−フェニルインデニル)ZrClである、請求項13の組成物。
【請求項15】
製品が医療等級の製品である、請求項11の製品。
【請求項16】
医療等級の製品がピペットの先端、遠心分離管、反応槽、タンパク質アッセイトレー、培養管、シリンジ、ペトリ皿およびそれらの組み合わせ物から選択される、請求項15の医療等級製品。
【請求項17】
製品がピペット使用後にピペット中の流体残留を最少にする表面張力を有する、請求項11の製品。
【請求項18】
製品が流体の6回の通過後に流体を全く保持しない、請求項17の製品。

【図1】
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【公表番号】特表2012−506455(P2012−506455A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532320(P2011−532320)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/061222
【国際公開番号】WO2010/048108
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】