室内照明装置
【課題】少ない半導体発光素子で明るい照明が得られる、従って、低コスト、低消費電力の室内照明装置を提供する。
【解決手段】底部7と、外周部9と、レンズ面となる頂部3と、底部から頂部に向かって形成された天井部2と内周部5とからなる凹部6とを有し、天井部が第1のレンズ面として、内周部が光入射面として、外周部が全反射面として、底部が反射面として、また、頂部が第2のレンズ面として機能するように構成したバルク型レンズ20と、バルク型レンズの凹部内に光学媒質を介して収納された光源1と、を備え、光源がバルク型レンズよりも屈折率の高い光学媒質を介して収納部に収納されていて、光源の光束を、バルク型レンズを使用して収束又は発散する。
【解決手段】底部7と、外周部9と、レンズ面となる頂部3と、底部から頂部に向かって形成された天井部2と内周部5とからなる凹部6とを有し、天井部が第1のレンズ面として、内周部が光入射面として、外周部が全反射面として、底部が反射面として、また、頂部が第2のレンズ面として機能するように構成したバルク型レンズ20と、バルク型レンズの凹部内に光学媒質を介して収納された光源1と、を備え、光源がバルク型レンズよりも屈折率の高い光学媒質を介して収納部に収納されていて、光源の光束を、バルク型レンズを使用して収束又は発散する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機やバス、電車などの乗り物の室内に設置される室内照明装置に関する。詳しくは、小さな消費電力で大きな光量が得られる室内照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飛行機の室内には、室内全体を照明する照明装置や、局所的な狭い領域を照明するもの、所謂、スポット照明装置が設置されている。従来、これらの照明装置の光源としては、蛍光灯や白熱電球などが用いられている。
【0003】
しかしながら、飛行機は、自家発電機、或いはバッテリを照明器具や各種機器の電源としており、より低消費電力が求められている。さらに、室内には、様々な機能を用意しなければならない必要から、照明装置はより単純で、小型で、かつ、交換も容易なものが必要とされる。
【0004】
飛行機に搭載された各種機器類は技術の進歩により消費電力が低減されてきているが、従来の照明器具に用いられている蛍光灯、或いは発熱電球などの光源は電気から光への変換効率が低いことから、消費電力が大きいだけでなく、発熱量も大きく、また、振動や衝撃にも弱い。
【0005】
発熱量が大きいということは光源は高い温度に達するということを意味する。このことから、それに触れた人に火傷を負わせてしまうという危険性もある。例えば、座席毎のスポット照明装置には、スポット位置を変更する際に触れる箇所が設けられているが、その箇所が火傷を負わせるほど熱くなることもある。それゆえ、スポット照明位置の調整も行い難いといった問題もある。これらのスポット照明装置では、光源の発熱のため光の集光用レンズにはガラス製のレンズが使われている。そのため、飛行機の重量増をもたらしている。
【0006】
蛍光灯は、周知のように、安定器やインバーターにより点灯させるようになっている。このため、大きなノイズの発生源となり、他の機器に多大な悪影響を与えることがあり、飛行機のように、信頼性が求められる乗り物には使用しない方がよい。また、蛍光灯には蛍光塗料や水銀が使われているので、環境に悪影響を与えるという一面もある。
【0007】
このように、乗り物等の室内に設置される従来の照明装置には、上述したような種々の問題点があったことから、小さな消費電力で大きな光量が得られる振動や衝撃に強い頑健な照明装置が強く望まれている。
【0008】
このような装置として、LEDやLDといった半導体発光素子を光源として用いることは従来から試みられている。しかしながら、LEDやLDといった半導体発光素子は小さな発光体であり、必要な照度を満たす照明光源とするには膨大な数の半導体発光素子を配列しなければならない。また、これらの小さな光源から発する発散角の大きな光束を収束することが必要である。LEDやLDといった半導体発光素子は、蛍光灯に較べればコストが高く、光束を収束するレンズ系の光損失が大きく、また、コストが高いことから、普及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、少ない半導体発光素子で明るい照明が得られる、従って、低コスト、低消費電力の室内照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を鑑み、本発明の室内照明装置は、光源の光束を収束し又は発散するのにバルク型レンズを用いる。バルク型レンズは、頂部と、底部と、外周部と、底部から頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有している光学媒体からなり、凹部が光源の収納部であり、天井部及び頂部がレンズ面として、内周部が光入射面として、外周部が全反射面として、そして底部が反射面として機能する。凹部の内部に光源を収納した場合は、天井部がレンズの入射面として、頂部がレンズの出射面として機能する。内周部から光学媒体に入射した光は、全反射して又は底部で反射されて頂部に伝送される。「バルク型」とは、砲弾型、卵型、繭型、蒲鉾型等、ある程度の厚み又は膨らみを有する固形体を意味する。光軸方向に垂直な断面の形状は、真円、楕円、三角形、四角形、多角形等が可能である。バルク型のレンズ本体の外周部は、円柱、角柱の円周部のような光軸に平行な面でも良く、光軸に対してテーパを有していてもかまわない。また、天井部及び頂部のレンズ面は、凸面、凹面、平面、フレネルレンズ面のいずれかを適宜選択できる。
【0011】
本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズは、レンズ作用及び入射面と出射面とを接続する光伝送作用を有するので、光の波長に対して透明な材料であり、かつ、屈折率が空気の屈折率とは異なる必要がある。このような材料としては、アクリル樹脂等の透明樹脂(透明プラスチック材料)、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、炭化珪素(SiC)等の結晶性材料を用いてもよい。又、可とう性、屈曲性や伸縮性のある透明ゴムのような材料でもかまわない。なお、光源として、ハロゲンランプ等の白熱球を用いる場合は、これによる発熱を考慮し、耐熱性光学材料を用いるべきである。耐熱性光学材料としては、石英ガラス、サファイアガラス等の耐熱ガラスが好ましい。或いは、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、メタクリル樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルキル基を有する高分子材料等の耐熱性樹脂等の耐熱性光学材料が使用可能である。SiC等の結晶性材料も耐熱性に優れている。
【0012】
光源としては、LEDや半導体レーザ等のように、発光に際して顕著な発熱作用を伴わない光源が好ましい。LED等を用いれば、バルク型レンズの凹部(収納部)の内部に、「光源」を収納した場合において、その発熱作用によって、バルク型レンズに熱的影響を与えることがない。
【0013】
本発明の室内照明装置に上記のバルク型レンズを使用すれば、光源の数を多数必要とすることなく、所望の照度を簡単に得ることが出来る。この照度は、光源の数を同一として較べれば、従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。本発明の室内照明装置は、従来の技術では達成出来ない照度を、簡単且つ小型な構成で実現している。
【0014】
LEDには内部量子効率と外部量子効率があるが、通常、外部量子効率は内部量子効率よりも低い。本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズは、LEDを収納部(凹部)に収納することにより、内部量子効率とほぼ等しい効率で、潜在的なLEDの光エネルギを有効に取り出すことが可能となる。
その原理は、(a)バルク型レンズの頂部及び天井部であるレンズ面、及び外周部での反射光(迷光)が外周部で全反射することによりバルク型レンズ外にほとんど散逸しない、(b)上記反射光(迷光)の一部が頂部及び天井部であるレンズ面にもどる、(c)上記反射光(迷光)の一部が底部で反射されて頂部及び天井部であるレンズ面にもどる、(d)上記反射光(迷光)の一部がLED光源に吸収され再発光する、さらに、(e)内側面に入射する光も全反射により導光し有効利用している、ことなどが考えられる。
【0015】
また、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズによれば、LED等の光源それ自身は、何ら手を加えることなく、容易に、光の発散、収束等の光路の変更や焦点の変更が可能である。
すなわち、本発明の第1の特徴である光源の発散角が既知であれば、第1及び第2の湾曲面の曲率半径等の選定が簡単に出来る。なお、第1及び第2の湾曲面のいずれか一方は、曲率半径が無限大、若しくは無限大に近い平坦な面であっても良い。第1及び第2の湾曲面のいずれか一方が、無限大ではない所定の(有限の)曲率半径を有していれば、光の収束、発散の制御が可能である。又、「所定の発散角」は0°、即ち平行光線であっても良い。又、発散角が90°であっても、収納部が光源の発光部を完全に光学的に覆っているため、有効にその光を集光することが可能である。これは、従来のレンズ等の光学系では不可能な作用である。即ち、天井部以外の収納部の内周部も、有効な光の入射部として機能し得る。
【0016】
具体的には、本発明の室内照明装置に用いる光源は、チップ状の半導体発光素子、透明材料でモールドされた半導体発光素子又は他の光源から光を導く光ファイバの出射端面である。これらの光源を光学媒質を介して収納部に収納しても良い。屈折率によって光学媒質を適宜選択することによっても、光の発散、収束等の光路の変更や焦点の変更が可能であり、また、内周面から凹部に入射する光の屈折角を変えることができ、凹部の全反射をより効果的にすることもできる。
ここで、光学媒質には、固体、液体、気体、のみならず、ゾル状、コロイド状若しくはゲル状の光の波長に対して透明な物質も含まれる。
【0017】
またさらに、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズは、内周部の光入射面が所定の傾きを有する少なくとも光波長以上の大きさの凹凸面で構成されていることを特徴とする。また所定の傾きφは、凹部の屈折率をn1 、光学媒体の屈折率をn2 、光学媒体内の外周部面における全反射角をθt 、光源の発散角をθd として、
sin-1{n1 /n2 cos(θd +φ)}=θt
から定まる角度であることを特徴としている。
この構成によれば、例えば、端面発光LEDのようにほとんどの出射光がチップの側面から出射するようなLEDを使用する場合においても、全ての出射光を集光できる。
【0018】
本発明の室内照明装置は、飛行機や電車、或いは自動車などの乗り物の室内に設置されることを前提とし、以下の構成を具備する。
【0019】
複数の発光ダイオード又はレーザーダイオード等の半導体発光素子を光源として備え、光源の光束を収束又は発散する複数のバルク型レンズを備え、複数の半導体発光素子を駆動し発光させる駆動手段と、を備えている。
この構成によれば、光源が半導体発光素子であるから、消費電力が少なく、又ほとんど発熱しない。更に、バルク型レンズで光源の光束を収束又は発散するので、極めて照度が高い。複数の半導体発光素子を駆動し発光させる駆動手段を有するので、広い面積の室内照明としても使用可能である。
このように、消費電力が少ないことが要求される乗り物用の室内照明として適している。
さらに、駆動手段による前記半導体発光素子の駆動を制御する制御手段を、更に具備しており、この制御手段は、複数の半導体発光素子として発光色が異なる複数の種類の半導体発光素子を使用する場合に、駆動手段が駆動を行う条件を半導体発光素子の種類別に設定することができ、照明の色を変化させることができる。この構成によれば、人の好みに応じて、又、必要に応じて照明色を変更できる。
【0020】
また、バルク型レンズは、前記光源の回りに回転可能に支持されており、さらに、バルク型レンズ前面に装着した光透過率を変化させた、すなわち、光透過部、非透過部のパターンを有する拡散部材を備え、バルク型レンズを回転させて光照射パターンを変更することができる。
この構成によれば、上記したように、本発明の室内照明装置は発熱することが少ないので、素手でバルク型レンズを回転させることができ、手軽に照明パターンを変えることができる。
【0021】
本発明では、室内照明装置として必要な光量を達成させるために、エネルギー変換効率が高く、すなわち、発熱量が小さく、比較的に小さな消費電力で大きな光量が得られる発光ダイオード、或いは半導体レーザなどの半導体発光素子を光源として採用し、さらに、これらの光源の光束を収束又は発散させるレンズ系として、極めて光損失の少ない、かつ、低コストのバルク型レンズを使用しているから極めて明るく、低コストで製造できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、室内照明装置として必要な光量を達成させるために、変換効率が高く、すなわち発熱量が小さく、比較的に小さな消費電力で大きな光量が得られる発光ダイオード或いは半導体レーザなどの半導体発光素子を光源として採用し、更に、これらの光源の光束を収束又は発散する光学系に極めて効率の高いバルク型レンズを使用しているので、極めて明るく、消費電力の少ない、かつ、低コストの室内照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの構成を示す断面図である。
【図2】従来技術のレンズ系による損失の状況を示す図である。
【図3】フレネル反射を示す図である。
【図4】LEDのPN接合において反射光(迷光)が再発光する過程を示す図である。
【図5】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズと従来のレンズとの特性比較に用いた測定系を示す図である。
【図6】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズと従来のレンズの集光特性を比較した図である。
【図7】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズと従来のレンズの集光特性を比較した図である。
【図8】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図9】図8の測定に用いた本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの幾何学形状を示す図である。
【図10】本発明の室内照明装置に使用する他のバルク型レンズの構成を示す断面図である。
【図11】本発明の室内照明装置に使用する他のバルク型レンズの幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図12】本発明の室内照明装置に使用する他のバルク型レンズの幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図13】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの変形例に係るバルク型レンズの原理を説明する模式図である。
【図14】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの変形例に係るバルク型レンズの構成を示す図である。
【図15】第1の実施例による室内照明装置の構成を説明する図である。
【図16】第1の実施例による室内照明装置の回路構成図である。
【図17】第2の実施例による室内照明装置の構成を説明する図である。
【図18】本発明を適用した室内照明装置用の回路の実現例を説明する図である。
【図19】本発明を適用した室内照明装置用の回路の実現例を説明する図である。
【図20】本発明を適用した室内照明装置用の回路の実現例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一の符号または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0025】
図1は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズを用いた発光体の模式的な断面図である。図1に示すように、この発光体は、所定の波長帯域の光を発するLED等の光源1と、この光源1を完全に囲むバルク型レンズ20とから少なくとも構成されている。そして、このバルク型レンズ20は、頂部3と底部7と外周部9と、底部7から頂部3に向かって形成された天井部2と内周部5とから成る凹部6とから成る光学媒体であり、この凹部6にスペーサ8を介して光源1がバルク型レンズ20と同心的に且つ完全に収納、固定され、上記天井部2がレンズの光入射面として、上記頂部3がレンズの出射面として機能するように構成されている。
【0026】
図1の光源1は、LEDチップ13と、このLEDチップ13を載置する電極を兼ねた支持ピン11と、LEDチップ13のもう一方の電極に電力を供給する電極ピン12と、チップ13、支持ピン11及び電極ピン12を覆う透明な樹脂モールド14で構成されている。樹脂モールド14は、側部が円筒形を成しており、バルク型レンズ20の凹部6の円筒形を成す内周部5とスペーサ8を介して嵌合している。
【0027】
樹脂モールド14の側面は、例えば、直径(2r)が2〜3mmφの円柱形状であり、バルク型レンズ20の凹部6の内周部5は、例えば直径が2.5〜4mmφの円柱形状となっている。LED1とバルク型レンズ20とを固定するために、LED1とバルク型レンズ20の凹部6との間には、厚さ0.25〜0.5mm程度のスペーサ8が挿入されている。スペーサ8は、LED1の発光部を除く位置、即ち図1においてLEDチップ13の底面より底部7側に配置する。
【0028】
バルク型レンズ20は、例えば頂部3が凸形状球面を有し、外周部9が円柱形状を成している。この外周部9の直径(2R0 )は、例えば、10〜30mmφであるが、使用目的に応じて任意に選択できる。しかしながら、より集光効率を高くするためには、
10r>R0 >3r (1)
の関係を満足することが好ましい。バルク型レンズ20の外周部9の直径(2R0 )は、凹部6の内周部5の内径(2r)の10倍以上でも、本発明のバルク型レンズは機能するが、必要以上に大きくなり、小型化を目的とする場合は好ましくない。
【0029】
上記構成の本発明のバルク型レンズは、以下に説明する理由により、従来の凸型形状の球面レンズを使用した光学系よりも極めて低損失で収束できる。LEDは発散角の大きな光源であるため、従来の凸型形状の球面レンズによって、LEDから発する全ての光を平行光線とすると光損失が避けられない。
図2は、従来の凸型形状球面レンズによる集光作用を示す図で、図2(A)は凸型片球面レンズを使用して、LED光源からの光を平行光とする状態を示している。図において、レンズは曲率半径rを有し、光源から焦点距離fに配置している。片球面レンズの焦点距離は、レンズの屈折率をnとして、f=r/(n−1)であるから、屈折率n=1.5とした場合、f=2rとなる。従って、図から明らかなようにレンズが受光できる発散角の最大は30°となり、図2(B)に示す光線は平行光とすることができない。すなわち、従来のレンズを使用したのでは、焦点距離と曲率半径の関係から定まる開口角以上の光は取り込むことができないので、損失が大きい。
LED光源は30°以上の発散角を有するものが多く、この場合には、上記理由により大きな損失が生じる。従来はこのような場合、高屈折率レンズを使用して改善しているが、コストが高くなる。あるいは、レンズを複雑に組み合わせて対処している例もあるが、この場合には、下記に説明するフレネル反射損が増大してしまう。
【0030】
図2(B)は、従来の凸型片球面レンズ入射面における反射の状況を示す図である。図において、矢印のついた線は、LED1から出射し凸型形状球面レンズの光入射面で反射される光線を表す。θ(θ1 、θ2 )はLEDから出射角、すなわち発散角を表し、φ(φ1 、φ2)はそれぞれの光線のレンズ面での入射角を表す。
【0031】
図3はフレネルの反射の法則を表した図である。図において、横軸は光線の入射角であり、縦軸は光強度の反射率であり、レンズの屈折率を1.5とし、空気中から光線がレンズ面に入射する場合を表している。図から明らかなように、入射角が50°あたりまでは反射率が低く一定であるが、50°を越えたあたりから急激に反射率が増加するのがわかる。
図2(B)に示した入射角が大きい光線は、図3のフレネルの反射の法則から明らかなように反射される割合が高い。例えば、屈折率1.5の片凸型球面レンズを使用し、このレンズの焦点距離に、発散角30°の光源をおいて平行光を作る場合には、上記の反射光による損失は全光量の30%近くに達する。
従って、従来の光学系におけるように、レンズを多段に接続したのでは、フレネル反射が多段に生ずることになり、損失が増えてしまう。これらの反射光は空間に散逸してしまい、収束光として利用することはできない。
【0032】
一方、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズにおいては、発散角が大きい光束であっても、全ての光束をレンズ面に入射させることができ、バルク型レンズの幾何学構造の設計により、全ての光束を平行光線にできるから、極めて損失の少ないレンズである。
また、フレネルの反射を起こす反射面は、天井部2及び頂部3であるから、これらの面で反射した反射光(迷光)はバルク型レンズ内に反射される。これらの反射光(迷光)は、外周部9で全反射することによりバルク型レンズ外に散逸せず、一部が頂部3及び天井部2であるレンズ面にもどり収束光となる。また、他の一部は、底部7で反射されて頂部3又は天井部2にもどり、収束光となる。また、他の一部はLED光源で吸収されて再発光し、収束光となる。
【0033】
図4は、LED光源1にもどった光が再発光する過程を示す図である。
図において、もどってきた光はPN接合で吸収されてホールと電子を生じ、このホールと電子が再結合して再発光する。特にこの効果は、ヘテロ構造を有するLEDの場合に大きい。ヘテロ構造のLEDは、発光部であるPN接合部のバンドギャップ・エネルギーが、P及びN領域のバンドギャップ・エネルギーよりも小さく形成されているので、反射光(迷光)はP又はN領域では吸収されずに、PN接合部のみで吸収され、再発光する。
さらにまた、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズにおいては、内周部5に入射する光も外周面9における全反射によって頂部3に導かれ、収束光となって出射する。この効果は、LED光源1を、バルク型レンズの光学媒質よりも屈折率の高い光学媒質を介して収納部に収納するとさらに効果が高まる。
本発明のバルク型レンズにおいては上記に説明した相乗効果により、内部量子効率とほぼ等しい効率で、LED光源の光を有効に収束光として取り出しているため、従来の凸型形状の球面レンズに較べ極めて低損失になると考えられる。
【0034】
図5は本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズと従来の凸形状の球面レンズとで平行光を作成した場合の特性を比較するための測定系を示す図である。 図5(A)は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20を用いた場合の、光軸方向に対して垂直方向に光強度(照度)分布を測るための測定系を示す模式図である。バルク型レンズ20の出射面からの出力光の強度(照度)を、LED1からの測定距離x=一定とし、照度計102をy軸方向に移動して測定する。測定距離(x)は、光軸方向に測る。一方、図5(B)は、同様な測定を従来の両凸レンズを用いて行うことを示す図である。
【0035】
図5(A)及び(B)に示す測定においては、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20の外径は30mmφとし、比較に用いた両凸レンズ101の外径は、この2倍強の63mmφとした。両凸レンズ101は、焦点距離150mmのものを用い、LED1からx方向に150mmの位置に配置した。また、LED光源1の発散角は約12度のものを使用した。
【0036】
図6は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズと従来の凸形状の球面レンズとで平行光を作成した場合の特性を比較した図であり、本発明のバルク型レンズ20、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101、及びバルク型レンズを用いない裸のLEDのそれぞれの出力光のy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離x=1mにおいて測定した場合の結果を示す。本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20では、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101の2倍の照度が得られている。
この結果は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズが従来の光学系では実現できない効果を有することを示している。
【0037】
図7は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズと従来の凸形状の球面レンズとで作成した平行光の平行度を評価した図である。
図5と同様にy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離xを変化させて測定したデータをまとめたものである。図の横軸は、測定距離xの逆数の2乗、即ち1/x2 を示し、縦軸は測定距離xにおける最大強度(ピーク強度)を示す。図から明らかなように、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの場合は、逆2乗則、即ち1/x2 を示す線上にきれいに測定点がプロットされる。一方、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101の場合は、逆2乗則からずれていることがわかる。
この結果は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20は、平行度においても十分であり、従来のレンズ系に較べ、勝るとも劣らない性能を実現できることを示している。
【0038】
図8は本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの幾何学的構造と集光率の関係を示す図である。ここで「集光率」とは、「バルク型レンズからの±1°以内の発散角における出力光の光量」を、「光源(LED)からの±12°以内の発散角における光量」で除した量で定義している。すなわち光線ビーム径に対応する量である。頂部3の曲率半径R、バルク型レンズの全長L、媒体長(頂部と天井部のレンズ間距離)D、収納部内径(凹部の内周部系)r、天井部2の曲率部分長さΔをパラメータとして、集光率を測定した。尚ここで、Δの符号は図1に示すように、天井部2が凹である場合を負とし、凸の場合を正と定義する。
図9は、作製した本発明のバルク型レンズの幾何学的構造を示す図である。図8から、集光率を向上するためには、
0.93 < k(R/L) < 1.06 ・・・・・ (2)
k = 1/(0.35・ n −0.168) ・・・・・ (3)
を満足することが好ましいことが実験的にわかる。ここで、nは、バルク型レンズの材料である光学媒質の屈折率である。なお、バルク型レンズ20の円柱形状部分の半径Roと、頂部3の曲率半径をRとは、必ずしも等しい必要はない。
【0039】
次に、本発明の室内照明装置に用いる他の形態のバルク型レンズを説明する。 図10は、天井部2を凸形状にした本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの構造を示す図である。図10において、バルク型レンズ22は、天井部2の形状が異なる外は、図1に示したバルクレンズ20と同等である。測定に用いたバルク型レンズ22の円柱形状部分の外径2Roは15mmφ、バルク型レンズの全長Lは、25mm、頂部と天井部のレンズ間距離Dは16mm、収納部6の内径rは5.2mm、バルク型レンズの屈折率nは1.54である。このバルク型レンズの頂部3の曲率半径Rは8.25mmである。又、測定に用いた樹脂モールドされたLED1の外径は5mmφである。
【0040】
図11(A)〜(C)及び図12(A)〜(C)は、天井部2の凸部の高さΔと、ビーム強度プロファイルとの関係を示す図である。光源からの距離x=1mで照度を測定した。
図から明らかなように、天井部2を凸形状のレンズとしても集光特性が得られることがわかる。
【0041】
このようにして、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズによれば、樹脂モールドされたLED1の数を多数必要とすることなく、照明に寄与する光ビームとして所望の照射面積の光束を確保し、且つ所望の照度を簡単に得ることが出来る。この照度は従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。驚くことに、現在市販されているハロゲンランプを用いた細身の懐中電灯と同程度の照度がたった1個のLEDで実現出来たのである。このように、本発明の第1の実施例に係る発光体によれば、従来の技術では実現できない照度を、図1に示すような簡単な構造で実現できる。
【0042】
なお、樹脂モールドされたLED1としては、種々の色(波長)のLEDが使用可能である。但し、懐中電灯のような照明目的のためには、白色LEDが人間の目には自然であろう。白色LEDは種々の構造のものが使用出来る。例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3個のLEDチップを縦に積層して構成しても良い。この場合、樹脂モールド14から、それぞれの色のLEDチップに対応し、合計6本のピンが導出されても良く、樹脂モールド14の内部配線として、6本のピンを2本にまとめ、外部ピンとしては2本設けられた構造としてもかまわない。又、一方の電極(接地電極)を共通とすれば、外部ピンは4本でよい。又、赤(R)色、緑(G)色及び青(B)色の3枚のLEDチップの駆動電圧を互いに独立に制御出来るようにしておけば、あらゆる色の混合が可能であるので、色合いの変化を楽しむことが可能である。
【0043】
本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20としては、アクリル樹脂等の透明プラスチック材料、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、ZnO、ZnS、SiC等の結晶性材料を用いてもかまわない。又、可とう性、屈曲性や伸縮性のあるゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物、或いは透明ゴムのような材料でもかまわない。また、ゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物等を、透明ゴムやフレキシブルな透明プラスチック材料等に格納して用いても良い。アクリル樹脂等の透明プラスチック材料等は、バルク型レンズ20を大量生産するのに好適な材料である。即ち、一度金型を作り、この金型により成形加工すればバルク型レンズ20が簡単に大量生産出来る。
【0044】
次に、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの変形例について説明する。
上記に説明した本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズは、端面放射型LEDのように、LEDチップの側面から発光する光源を使用する場合にも使用できるものである。
端面放射型LEDはLEDチップの側面から発光するものであり、そのため、上記のバルク型レンズにこのLEDチップを装着した場合には、バルク型レンズの内周部5に垂直に入射する成分が多くなるため、全反射されずにバルク型レンズの外部に散逸する光が多くなる。
変形例のバルク型レンズはこのような光源に対しても、極めて低損失で収束光を得ることができる。
【0045】
図13は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの内周部5と外周部9とが傾きを有する場合の光線の光路を示す図である。
図において、光源の発散角をθd 、内周部5と外周部9との傾き角をφ、外周部9の全反射角をθt 、内周部5における光線の入射角、屈折角をθ1 及びθ2 、そしてバルク型レンズの光学媒質の屈折率、収納部(凹部)6の屈折率をn2 及びn1 とする。図は、光源の最大出射角、すなわち、発散角の光線が傾き角をφにより、全反射条件を満たし、全反射されている状態を表している。
内周部5において、スネルの屈折の法則より、θ1 とθ2の間には、
sinθ1 /sinθ2 =n2/n1 (4)
が成り立ち、また、図から明らかなように、θt 、φ、θ2 の間には、
θt =φ+θ2 (5)
が成り立つ。また、図から明らかなように、θd 、θ1 、φの間には、
θd =90°−(θ1 +φ) (6)
の関係が成り立つ。上記(4)、(5)、(6)式よりθ1 とθ2 を消去すると、バルク型レンズが全反射角θt を有し、光源の発散角がθd である場合の、全反射するために必要な傾き角φを与える関係式として、
sin-1{n1 /n2 cos(θd +φ)}=θt (7)
が得られる。すなわち、(7)式を満たす傾き角φ以上で内周部5と外周部9が傾いていれば、たとえ、内周部5に垂直に光が入射する場合(θd =90°)でも全反射され、頂部3へ、あるいは底面7で反射して頂部3へ導かれるから、収束光を得ることができる。
【0046】
図14は上記室内照明装置に用いるバルク型レンズの構成を示す図である。
図14(A)は、バルク型レンズ20の内周部5の表面に微細な凹凸を設けた例を示している。この凹凸は少なくとも(7)式を満足するφ以上の傾き角を有しており、また、この凹凸の大きさは光波長程度でよい。また、この凹凸は、内周部5の光源近傍に設けるだけでよい。
このような凹凸は、適切な粒径の研磨剤を用いて、内周部5の表面を磨くことによって簡単に形成できる。
図14(B)は、ほぼ真横方向に出射した光線がバルク型レンズ内を全反射して、又は底面7で反射してかつ側壁で全反射して、頂部3に導かれる様子を示している。このように、例えば、端面発光LEDのようにほとんどの出射光がチップの側面から出射するようなLEDを使用する場合においても、全ての出射光を収束できる。
さらにまた、レンズ部と光源を収納する収納部とが一体で形成されているため、従来のレンズ系では必要であったレンズと光源を光学的位置合わせをして保持する保持部を必要とせず、また、光学的位置合わせ工程を必要とせず、ただ光源にかぶせるだけでよいので、極めて低コストである。
【0047】
図15は、第1の実施例による室内照明装置の構成を説明する図であり、同図(A)は外観図、同図(B)は断面図である。
図15に示す室内照明装置は、飛行機や電車或いは自動車、例えば、バスなどの乗り物の室内に設置されて全体的な照明に用いられるものである。図15に示すように、この室内照明装置は、筐体31と、室内に照明装置を取り付けるための取付板32と、外部の電源と接続される電力供給用の信号線33と、バルク型レンズ34と、所用に応じて取り付けられる拡散版35と、信号線33が接続されたプリント板36と、プリント板36を覆うように取り付けられた板状部材37と、光源として採用された発光ダイオードDと、から構成される。
【0048】
光源として採用された発光ダイオードDは、電気を光に変える変換効率が高く、乗り物につきものの振動や衝撃にも強い。変換効率が高いということは、発熱量が小さく、小さな電力でも大きな光量が得られるということを意味する。第1の実施の形態では、このような特性を有する発光ダイオードDを光源として採用することにより、小さな消費電力で大きな光量が得られる頑健な室内照明装置を実現させている。なお、光源としては、発光ダイオードDではなく、半導体レーザなどの他の半導体発光素子であっても良い。発光ダイオードD自体については、市販されているものであっても良く、そうでなくても良い。
【0049】
発光ダイオードDを覆うように取り付けられたバルク型レンズ34は、そのダイオードDから出射された光を特定の箇所に集光、或いは広範囲に拡散させるためのものである。バルク型レンズ34により、照明装置として適切に機能するようにしている。なお、1個のバルク型レンズ34で覆う発光ダイオードDは1個ではなく複数個であっても良い。
【0050】
発光ダイオードDでは発熱を考慮しなくても良い。このため、それを覆うようにバルク型レンズ34を取り付けるとしても、その材質としてプラスチックやアクリルなどの合成樹脂を採用することができる。このことから、採用する材質を選ぶ上での設計自由度が高くなる。この発光ダイオードDは、複数、プリント板36上に配置、例えば、各列に、それぞれ複数の発光ダイオードDを並べる形で配置しているが、その配置についての設計自由度も高い。配置は必要に応じて様々に変更させることができる。発光ダイオードDを直流で駆動させた場合には、ノイズの発生を回避させることもできる。
【0051】
図16はこの室内照明装置の回路構成図である。図に示すように、この室内照明装置は、外部電源、例えば、乗り物から信号線3を介して供給される電流から所定の電圧を発生させる電源部41と、発光ダイオードDを駆動する駆動部42と、駆動部42の制御を行う制御部43と、から構成されている。これら電源部41、駆動部42、制御部43は、図15(B)に示すプリント板36上に搭載されている。
【0052】
例えば、上記電源部41は、信号線33から電流が供給されている間、制御部43及び駆動部42の電源として機能する。制御部43はその間、各発光ダイオードDが予め定められた輝度で発光するように駆動部42を制御する。これにより、求められている光量で室内を照らすように室内照明装置は動作するようになっている。
【0053】
上記の第1の実施例による照明装置は、室内全体を照らすためのものである。これに対し、以下に説明する第2の実施例は、特定箇所を照らすためのスポットライトである。この例においても上記の例と同じ効果を得ることができる。
【0054】
図17は、第2の実施例による室内照明装置の構成を説明する図であり、同図(A)は外観図、同図(B)は断面図である。図に示すように、この室内照明装置は、照明装置を室内に固定・設置するための固定部材51と、固定部材51によって支持される回転支持固定部52と、固定部52に取り付けられた制御部53と、図示しない電源部(図16における電源部41に対応)から制御部53に電流を供給するための電源線54と、制御部53が発光ダイオードDの駆動制御用である制御信号を出力するための制御線55と、内部に発光ダイオードDを収納し、そのダイオードDから出射された光を特定箇所に集めるためのバルク型レンズ56と、バルク型レンズ56を回転させるために設けられた回転用取手部57と、所用に応じて取り付けられる拡散部材58と、バルク型レンズ56内部に収納された1個或いは複数個の発光ダイオードDを駆動する駆動部59と、から構成されている。
【0055】
上記回転支持固定部52の端部には、図17(B)に示すような内側に向かって突出したと凸部52aが数カ所或いはその端部全体に渡って形成されている。他方のバルク型レンズ56には、その凸部52aの形状に合わせて凹部56aが全体的に形成されている。このため、凹部56aと凸部52aが噛み合わさっているような状態でバルク型レンズ56を360度、自由に回転させることができるようになっている。これにより、照らされる特定箇所の微調整を行えるようにしている。発光ダイオードDを発光させても取手部57は熱くならないことから、バルク型レンズ56は常に安全に回転させることができる。
【0056】
例えば、電源線54を介しての電流の供給は、発光ダイオードDを駆動すべき間だけ行われるようになっている。制御部53はその間、制御線55を介して各発光ダイオードDを所定の輝度で発光させるための信号を駆動部59に送る。それにより、求められている光量で特定箇所を照らすように室内照明装置は動作するようになっている。
【0057】
なお、第1及び第2の実施例では、室内照明装置の回路について具体的に言及していないが、その回路は、例えば、以下のように実現させても良い。図18〜図20を参照して、その回路の実現例について詳細に説明する。
【0058】
図18に示す回路は、例えば、第1の実施の形態による室内照明装置用のものである。IC41は図16の制御部43に対応し、複数の例えばMOS−FETであるトランジスタTからなる駆動部42は図16の駆動部42に対応する。端子a〜cには、それぞれ、図16の電源部41に対応するものから予め定められた電圧が印加される。端子bとトランジスタTの、例えば、ドレインの間には1個の抵抗R、及び複数個の発光ダイオードDが直列に接続され、端子cとトランジスタTの、例えば、ドレインの間には、1個の抵抗R、及び複数個の発光ダイオードDが直列に接続されたものが複数、並列に接続されている。
【0059】
IC61は、トランジスタTのゲートに流れる電流の大きさを制御するか、或いはそれに間欠的に電流を流す、すなわち、パルス駆動を行うことで発光ダイオードDの明るさの調整を行う。パルス駆動を行うのであれば、そのIC61として、ワンチップマイクロコンピュータ、ロジックICの組み合わせ或いは抵抗、コンデンサの時定数を利用したアナログ回路を使用することができる。そのパルス駆動を行う方法としては、パルス幅、すなわち、ゲートに電流を流している時間幅が一定で繰り返し周波数を変える方法や、周波数は一定でパルス幅を変える方法などがある。
【0060】
図19に示す回路は、例えば、発光ダイオードDを単に直流駆動する場合のものである。図19中の62は電源部であり、63は電源部62と発光ダイオードDの間に挿入されたスイッチである。
【0061】
図19に示す回路では、電源部62、抵抗R、複数個の発光ダイオードD及びスイッチ63が直列に接続されている。これにより、発光ダイオードDのオン/オフは、スイッチ63への操作により行うようになっている。その抵抗Rの値は発光ダイオードDの数により変更する必要がある。
【0062】
図20に示す回路は、例えば、様々な色の照明を行えるようにする場合のものである。図20中の64は制御回路からなる制御部、65は複数の例えばMOS−FETであるトランジスタTからなる駆動部、66はセンサー、Rは抵抗、DR、DG、DB、DWはそれぞれ、赤色、緑色、青色、白色の光を発する発光ダイオードである。端子d、eにはそれぞれ、図16の電源部41に対応する電源から電力が印加される。
【0063】
制御部64は、センサー66からの信号、或いは装置に組み込んである調整器の状態に応じて、ゲートに電流を流すトランジスタT、或いは各トランジスタTに流す電流の大きさを決定し、その決定した内容に従ってトランジスタTを駆動する。それにより、照明の色を様々に変化できるようになっている。照明の色を様々に変化させられるようにすることで、用途の幅を広げることができる。
【0064】
上述した図18〜図20の回路の実現例は一例であり、本発明を適用した室内照明装置用の回路はそれらのうちの一つに限定されるものではない。それら以外の構成であっても良い。例えば電源部については、それを乗り物側に用意することで、それを不要とすることもできる。搭載させる機能についても同様に、上述したものに限定されるわけではなく、用途などに合わせて様々な機能を搭載させても良い。それら以外のことについても、本発明の技術思想を越えない範囲で様々な変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 光源
2 天井部
3 頂部
4 光学媒体
5 内周部
6 凹部
7 底部
8 スペーサ
9 外周部
20 バルク型レンズ
31 筐体
32 取付板
34、56 バルク型レンズ
36 プリント板
41、62 電源部
42、59、60、65 駆動部
43、64 制御部
52a、56a 回転支持固定部
61 IC
66 センサー
D、DR、DG、DB、DW 発光ダイオード
R 抵抗
T トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機やバス、電車などの乗り物の室内に設置される室内照明装置に関する。詳しくは、小さな消費電力で大きな光量が得られる室内照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飛行機の室内には、室内全体を照明する照明装置や、局所的な狭い領域を照明するもの、所謂、スポット照明装置が設置されている。従来、これらの照明装置の光源としては、蛍光灯や白熱電球などが用いられている。
【0003】
しかしながら、飛行機は、自家発電機、或いはバッテリを照明器具や各種機器の電源としており、より低消費電力が求められている。さらに、室内には、様々な機能を用意しなければならない必要から、照明装置はより単純で、小型で、かつ、交換も容易なものが必要とされる。
【0004】
飛行機に搭載された各種機器類は技術の進歩により消費電力が低減されてきているが、従来の照明器具に用いられている蛍光灯、或いは発熱電球などの光源は電気から光への変換効率が低いことから、消費電力が大きいだけでなく、発熱量も大きく、また、振動や衝撃にも弱い。
【0005】
発熱量が大きいということは光源は高い温度に達するということを意味する。このことから、それに触れた人に火傷を負わせてしまうという危険性もある。例えば、座席毎のスポット照明装置には、スポット位置を変更する際に触れる箇所が設けられているが、その箇所が火傷を負わせるほど熱くなることもある。それゆえ、スポット照明位置の調整も行い難いといった問題もある。これらのスポット照明装置では、光源の発熱のため光の集光用レンズにはガラス製のレンズが使われている。そのため、飛行機の重量増をもたらしている。
【0006】
蛍光灯は、周知のように、安定器やインバーターにより点灯させるようになっている。このため、大きなノイズの発生源となり、他の機器に多大な悪影響を与えることがあり、飛行機のように、信頼性が求められる乗り物には使用しない方がよい。また、蛍光灯には蛍光塗料や水銀が使われているので、環境に悪影響を与えるという一面もある。
【0007】
このように、乗り物等の室内に設置される従来の照明装置には、上述したような種々の問題点があったことから、小さな消費電力で大きな光量が得られる振動や衝撃に強い頑健な照明装置が強く望まれている。
【0008】
このような装置として、LEDやLDといった半導体発光素子を光源として用いることは従来から試みられている。しかしながら、LEDやLDといった半導体発光素子は小さな発光体であり、必要な照度を満たす照明光源とするには膨大な数の半導体発光素子を配列しなければならない。また、これらの小さな光源から発する発散角の大きな光束を収束することが必要である。LEDやLDといった半導体発光素子は、蛍光灯に較べればコストが高く、光束を収束するレンズ系の光損失が大きく、また、コストが高いことから、普及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、少ない半導体発光素子で明るい照明が得られる、従って、低コスト、低消費電力の室内照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を鑑み、本発明の室内照明装置は、光源の光束を収束し又は発散するのにバルク型レンズを用いる。バルク型レンズは、頂部と、底部と、外周部と、底部から頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有している光学媒体からなり、凹部が光源の収納部であり、天井部及び頂部がレンズ面として、内周部が光入射面として、外周部が全反射面として、そして底部が反射面として機能する。凹部の内部に光源を収納した場合は、天井部がレンズの入射面として、頂部がレンズの出射面として機能する。内周部から光学媒体に入射した光は、全反射して又は底部で反射されて頂部に伝送される。「バルク型」とは、砲弾型、卵型、繭型、蒲鉾型等、ある程度の厚み又は膨らみを有する固形体を意味する。光軸方向に垂直な断面の形状は、真円、楕円、三角形、四角形、多角形等が可能である。バルク型のレンズ本体の外周部は、円柱、角柱の円周部のような光軸に平行な面でも良く、光軸に対してテーパを有していてもかまわない。また、天井部及び頂部のレンズ面は、凸面、凹面、平面、フレネルレンズ面のいずれかを適宜選択できる。
【0011】
本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズは、レンズ作用及び入射面と出射面とを接続する光伝送作用を有するので、光の波長に対して透明な材料であり、かつ、屈折率が空気の屈折率とは異なる必要がある。このような材料としては、アクリル樹脂等の透明樹脂(透明プラスチック材料)、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、炭化珪素(SiC)等の結晶性材料を用いてもよい。又、可とう性、屈曲性や伸縮性のある透明ゴムのような材料でもかまわない。なお、光源として、ハロゲンランプ等の白熱球を用いる場合は、これによる発熱を考慮し、耐熱性光学材料を用いるべきである。耐熱性光学材料としては、石英ガラス、サファイアガラス等の耐熱ガラスが好ましい。或いは、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、メタクリル樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルキル基を有する高分子材料等の耐熱性樹脂等の耐熱性光学材料が使用可能である。SiC等の結晶性材料も耐熱性に優れている。
【0012】
光源としては、LEDや半導体レーザ等のように、発光に際して顕著な発熱作用を伴わない光源が好ましい。LED等を用いれば、バルク型レンズの凹部(収納部)の内部に、「光源」を収納した場合において、その発熱作用によって、バルク型レンズに熱的影響を与えることがない。
【0013】
本発明の室内照明装置に上記のバルク型レンズを使用すれば、光源の数を多数必要とすることなく、所望の照度を簡単に得ることが出来る。この照度は、光源の数を同一として較べれば、従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。本発明の室内照明装置は、従来の技術では達成出来ない照度を、簡単且つ小型な構成で実現している。
【0014】
LEDには内部量子効率と外部量子効率があるが、通常、外部量子効率は内部量子効率よりも低い。本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズは、LEDを収納部(凹部)に収納することにより、内部量子効率とほぼ等しい効率で、潜在的なLEDの光エネルギを有効に取り出すことが可能となる。
その原理は、(a)バルク型レンズの頂部及び天井部であるレンズ面、及び外周部での反射光(迷光)が外周部で全反射することによりバルク型レンズ外にほとんど散逸しない、(b)上記反射光(迷光)の一部が頂部及び天井部であるレンズ面にもどる、(c)上記反射光(迷光)の一部が底部で反射されて頂部及び天井部であるレンズ面にもどる、(d)上記反射光(迷光)の一部がLED光源に吸収され再発光する、さらに、(e)内側面に入射する光も全反射により導光し有効利用している、ことなどが考えられる。
【0015】
また、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズによれば、LED等の光源それ自身は、何ら手を加えることなく、容易に、光の発散、収束等の光路の変更や焦点の変更が可能である。
すなわち、本発明の第1の特徴である光源の発散角が既知であれば、第1及び第2の湾曲面の曲率半径等の選定が簡単に出来る。なお、第1及び第2の湾曲面のいずれか一方は、曲率半径が無限大、若しくは無限大に近い平坦な面であっても良い。第1及び第2の湾曲面のいずれか一方が、無限大ではない所定の(有限の)曲率半径を有していれば、光の収束、発散の制御が可能である。又、「所定の発散角」は0°、即ち平行光線であっても良い。又、発散角が90°であっても、収納部が光源の発光部を完全に光学的に覆っているため、有効にその光を集光することが可能である。これは、従来のレンズ等の光学系では不可能な作用である。即ち、天井部以外の収納部の内周部も、有効な光の入射部として機能し得る。
【0016】
具体的には、本発明の室内照明装置に用いる光源は、チップ状の半導体発光素子、透明材料でモールドされた半導体発光素子又は他の光源から光を導く光ファイバの出射端面である。これらの光源を光学媒質を介して収納部に収納しても良い。屈折率によって光学媒質を適宜選択することによっても、光の発散、収束等の光路の変更や焦点の変更が可能であり、また、内周面から凹部に入射する光の屈折角を変えることができ、凹部の全反射をより効果的にすることもできる。
ここで、光学媒質には、固体、液体、気体、のみならず、ゾル状、コロイド状若しくはゲル状の光の波長に対して透明な物質も含まれる。
【0017】
またさらに、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズは、内周部の光入射面が所定の傾きを有する少なくとも光波長以上の大きさの凹凸面で構成されていることを特徴とする。また所定の傾きφは、凹部の屈折率をn1 、光学媒体の屈折率をn2 、光学媒体内の外周部面における全反射角をθt 、光源の発散角をθd として、
sin-1{n1 /n2 cos(θd +φ)}=θt
から定まる角度であることを特徴としている。
この構成によれば、例えば、端面発光LEDのようにほとんどの出射光がチップの側面から出射するようなLEDを使用する場合においても、全ての出射光を集光できる。
【0018】
本発明の室内照明装置は、飛行機や電車、或いは自動車などの乗り物の室内に設置されることを前提とし、以下の構成を具備する。
【0019】
複数の発光ダイオード又はレーザーダイオード等の半導体発光素子を光源として備え、光源の光束を収束又は発散する複数のバルク型レンズを備え、複数の半導体発光素子を駆動し発光させる駆動手段と、を備えている。
この構成によれば、光源が半導体発光素子であるから、消費電力が少なく、又ほとんど発熱しない。更に、バルク型レンズで光源の光束を収束又は発散するので、極めて照度が高い。複数の半導体発光素子を駆動し発光させる駆動手段を有するので、広い面積の室内照明としても使用可能である。
このように、消費電力が少ないことが要求される乗り物用の室内照明として適している。
さらに、駆動手段による前記半導体発光素子の駆動を制御する制御手段を、更に具備しており、この制御手段は、複数の半導体発光素子として発光色が異なる複数の種類の半導体発光素子を使用する場合に、駆動手段が駆動を行う条件を半導体発光素子の種類別に設定することができ、照明の色を変化させることができる。この構成によれば、人の好みに応じて、又、必要に応じて照明色を変更できる。
【0020】
また、バルク型レンズは、前記光源の回りに回転可能に支持されており、さらに、バルク型レンズ前面に装着した光透過率を変化させた、すなわち、光透過部、非透過部のパターンを有する拡散部材を備え、バルク型レンズを回転させて光照射パターンを変更することができる。
この構成によれば、上記したように、本発明の室内照明装置は発熱することが少ないので、素手でバルク型レンズを回転させることができ、手軽に照明パターンを変えることができる。
【0021】
本発明では、室内照明装置として必要な光量を達成させるために、エネルギー変換効率が高く、すなわち、発熱量が小さく、比較的に小さな消費電力で大きな光量が得られる発光ダイオード、或いは半導体レーザなどの半導体発光素子を光源として採用し、さらに、これらの光源の光束を収束又は発散させるレンズ系として、極めて光損失の少ない、かつ、低コストのバルク型レンズを使用しているから極めて明るく、低コストで製造できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、室内照明装置として必要な光量を達成させるために、変換効率が高く、すなわち発熱量が小さく、比較的に小さな消費電力で大きな光量が得られる発光ダイオード或いは半導体レーザなどの半導体発光素子を光源として採用し、更に、これらの光源の光束を収束又は発散する光学系に極めて効率の高いバルク型レンズを使用しているので、極めて明るく、消費電力の少ない、かつ、低コストの室内照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの構成を示す断面図である。
【図2】従来技術のレンズ系による損失の状況を示す図である。
【図3】フレネル反射を示す図である。
【図4】LEDのPN接合において反射光(迷光)が再発光する過程を示す図である。
【図5】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズと従来のレンズとの特性比較に用いた測定系を示す図である。
【図6】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズと従来のレンズの集光特性を比較した図である。
【図7】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズと従来のレンズの集光特性を比較した図である。
【図8】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図9】図8の測定に用いた本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの幾何学形状を示す図である。
【図10】本発明の室内照明装置に使用する他のバルク型レンズの構成を示す断面図である。
【図11】本発明の室内照明装置に使用する他のバルク型レンズの幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図12】本発明の室内照明装置に使用する他のバルク型レンズの幾何学形状の違いによる特性変化の実測値を示す図である。
【図13】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの変形例に係るバルク型レンズの原理を説明する模式図である。
【図14】本発明の室内照明装置に使用するバルク型レンズの変形例に係るバルク型レンズの構成を示す図である。
【図15】第1の実施例による室内照明装置の構成を説明する図である。
【図16】第1の実施例による室内照明装置の回路構成図である。
【図17】第2の実施例による室内照明装置の構成を説明する図である。
【図18】本発明を適用した室内照明装置用の回路の実現例を説明する図である。
【図19】本発明を適用した室内照明装置用の回路の実現例を説明する図である。
【図20】本発明を適用した室内照明装置用の回路の実現例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一の符号または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0025】
図1は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズを用いた発光体の模式的な断面図である。図1に示すように、この発光体は、所定の波長帯域の光を発するLED等の光源1と、この光源1を完全に囲むバルク型レンズ20とから少なくとも構成されている。そして、このバルク型レンズ20は、頂部3と底部7と外周部9と、底部7から頂部3に向かって形成された天井部2と内周部5とから成る凹部6とから成る光学媒体であり、この凹部6にスペーサ8を介して光源1がバルク型レンズ20と同心的に且つ完全に収納、固定され、上記天井部2がレンズの光入射面として、上記頂部3がレンズの出射面として機能するように構成されている。
【0026】
図1の光源1は、LEDチップ13と、このLEDチップ13を載置する電極を兼ねた支持ピン11と、LEDチップ13のもう一方の電極に電力を供給する電極ピン12と、チップ13、支持ピン11及び電極ピン12を覆う透明な樹脂モールド14で構成されている。樹脂モールド14は、側部が円筒形を成しており、バルク型レンズ20の凹部6の円筒形を成す内周部5とスペーサ8を介して嵌合している。
【0027】
樹脂モールド14の側面は、例えば、直径(2r)が2〜3mmφの円柱形状であり、バルク型レンズ20の凹部6の内周部5は、例えば直径が2.5〜4mmφの円柱形状となっている。LED1とバルク型レンズ20とを固定するために、LED1とバルク型レンズ20の凹部6との間には、厚さ0.25〜0.5mm程度のスペーサ8が挿入されている。スペーサ8は、LED1の発光部を除く位置、即ち図1においてLEDチップ13の底面より底部7側に配置する。
【0028】
バルク型レンズ20は、例えば頂部3が凸形状球面を有し、外周部9が円柱形状を成している。この外周部9の直径(2R0 )は、例えば、10〜30mmφであるが、使用目的に応じて任意に選択できる。しかしながら、より集光効率を高くするためには、
10r>R0 >3r (1)
の関係を満足することが好ましい。バルク型レンズ20の外周部9の直径(2R0 )は、凹部6の内周部5の内径(2r)の10倍以上でも、本発明のバルク型レンズは機能するが、必要以上に大きくなり、小型化を目的とする場合は好ましくない。
【0029】
上記構成の本発明のバルク型レンズは、以下に説明する理由により、従来の凸型形状の球面レンズを使用した光学系よりも極めて低損失で収束できる。LEDは発散角の大きな光源であるため、従来の凸型形状の球面レンズによって、LEDから発する全ての光を平行光線とすると光損失が避けられない。
図2は、従来の凸型形状球面レンズによる集光作用を示す図で、図2(A)は凸型片球面レンズを使用して、LED光源からの光を平行光とする状態を示している。図において、レンズは曲率半径rを有し、光源から焦点距離fに配置している。片球面レンズの焦点距離は、レンズの屈折率をnとして、f=r/(n−1)であるから、屈折率n=1.5とした場合、f=2rとなる。従って、図から明らかなようにレンズが受光できる発散角の最大は30°となり、図2(B)に示す光線は平行光とすることができない。すなわち、従来のレンズを使用したのでは、焦点距離と曲率半径の関係から定まる開口角以上の光は取り込むことができないので、損失が大きい。
LED光源は30°以上の発散角を有するものが多く、この場合には、上記理由により大きな損失が生じる。従来はこのような場合、高屈折率レンズを使用して改善しているが、コストが高くなる。あるいは、レンズを複雑に組み合わせて対処している例もあるが、この場合には、下記に説明するフレネル反射損が増大してしまう。
【0030】
図2(B)は、従来の凸型片球面レンズ入射面における反射の状況を示す図である。図において、矢印のついた線は、LED1から出射し凸型形状球面レンズの光入射面で反射される光線を表す。θ(θ1 、θ2 )はLEDから出射角、すなわち発散角を表し、φ(φ1 、φ2)はそれぞれの光線のレンズ面での入射角を表す。
【0031】
図3はフレネルの反射の法則を表した図である。図において、横軸は光線の入射角であり、縦軸は光強度の反射率であり、レンズの屈折率を1.5とし、空気中から光線がレンズ面に入射する場合を表している。図から明らかなように、入射角が50°あたりまでは反射率が低く一定であるが、50°を越えたあたりから急激に反射率が増加するのがわかる。
図2(B)に示した入射角が大きい光線は、図3のフレネルの反射の法則から明らかなように反射される割合が高い。例えば、屈折率1.5の片凸型球面レンズを使用し、このレンズの焦点距離に、発散角30°の光源をおいて平行光を作る場合には、上記の反射光による損失は全光量の30%近くに達する。
従って、従来の光学系におけるように、レンズを多段に接続したのでは、フレネル反射が多段に生ずることになり、損失が増えてしまう。これらの反射光は空間に散逸してしまい、収束光として利用することはできない。
【0032】
一方、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズにおいては、発散角が大きい光束であっても、全ての光束をレンズ面に入射させることができ、バルク型レンズの幾何学構造の設計により、全ての光束を平行光線にできるから、極めて損失の少ないレンズである。
また、フレネルの反射を起こす反射面は、天井部2及び頂部3であるから、これらの面で反射した反射光(迷光)はバルク型レンズ内に反射される。これらの反射光(迷光)は、外周部9で全反射することによりバルク型レンズ外に散逸せず、一部が頂部3及び天井部2であるレンズ面にもどり収束光となる。また、他の一部は、底部7で反射されて頂部3又は天井部2にもどり、収束光となる。また、他の一部はLED光源で吸収されて再発光し、収束光となる。
【0033】
図4は、LED光源1にもどった光が再発光する過程を示す図である。
図において、もどってきた光はPN接合で吸収されてホールと電子を生じ、このホールと電子が再結合して再発光する。特にこの効果は、ヘテロ構造を有するLEDの場合に大きい。ヘテロ構造のLEDは、発光部であるPN接合部のバンドギャップ・エネルギーが、P及びN領域のバンドギャップ・エネルギーよりも小さく形成されているので、反射光(迷光)はP又はN領域では吸収されずに、PN接合部のみで吸収され、再発光する。
さらにまた、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズにおいては、内周部5に入射する光も外周面9における全反射によって頂部3に導かれ、収束光となって出射する。この効果は、LED光源1を、バルク型レンズの光学媒質よりも屈折率の高い光学媒質を介して収納部に収納するとさらに効果が高まる。
本発明のバルク型レンズにおいては上記に説明した相乗効果により、内部量子効率とほぼ等しい効率で、LED光源の光を有効に収束光として取り出しているため、従来の凸型形状の球面レンズに較べ極めて低損失になると考えられる。
【0034】
図5は本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズと従来の凸形状の球面レンズとで平行光を作成した場合の特性を比較するための測定系を示す図である。 図5(A)は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20を用いた場合の、光軸方向に対して垂直方向に光強度(照度)分布を測るための測定系を示す模式図である。バルク型レンズ20の出射面からの出力光の強度(照度)を、LED1からの測定距離x=一定とし、照度計102をy軸方向に移動して測定する。測定距離(x)は、光軸方向に測る。一方、図5(B)は、同様な測定を従来の両凸レンズを用いて行うことを示す図である。
【0035】
図5(A)及び(B)に示す測定においては、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20の外径は30mmφとし、比較に用いた両凸レンズ101の外径は、この2倍強の63mmφとした。両凸レンズ101は、焦点距離150mmのものを用い、LED1からx方向に150mmの位置に配置した。また、LED光源1の発散角は約12度のものを使用した。
【0036】
図6は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズと従来の凸形状の球面レンズとで平行光を作成した場合の特性を比較した図であり、本発明のバルク型レンズ20、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101、及びバルク型レンズを用いない裸のLEDのそれぞれの出力光のy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離x=1mにおいて測定した場合の結果を示す。本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20では、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101の2倍の照度が得られている。
この結果は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズが従来の光学系では実現できない効果を有することを示している。
【0037】
図7は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズと従来の凸形状の球面レンズとで作成した平行光の平行度を評価した図である。
図5と同様にy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離xを変化させて測定したデータをまとめたものである。図の横軸は、測定距離xの逆数の2乗、即ち1/x2 を示し、縦軸は測定距離xにおける最大強度(ピーク強度)を示す。図から明らかなように、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの場合は、逆2乗則、即ち1/x2 を示す線上にきれいに測定点がプロットされる。一方、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101の場合は、逆2乗則からずれていることがわかる。
この結果は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20は、平行度においても十分であり、従来のレンズ系に較べ、勝るとも劣らない性能を実現できることを示している。
【0038】
図8は本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの幾何学的構造と集光率の関係を示す図である。ここで「集光率」とは、「バルク型レンズからの±1°以内の発散角における出力光の光量」を、「光源(LED)からの±12°以内の発散角における光量」で除した量で定義している。すなわち光線ビーム径に対応する量である。頂部3の曲率半径R、バルク型レンズの全長L、媒体長(頂部と天井部のレンズ間距離)D、収納部内径(凹部の内周部系)r、天井部2の曲率部分長さΔをパラメータとして、集光率を測定した。尚ここで、Δの符号は図1に示すように、天井部2が凹である場合を負とし、凸の場合を正と定義する。
図9は、作製した本発明のバルク型レンズの幾何学的構造を示す図である。図8から、集光率を向上するためには、
0.93 < k(R/L) < 1.06 ・・・・・ (2)
k = 1/(0.35・ n −0.168) ・・・・・ (3)
を満足することが好ましいことが実験的にわかる。ここで、nは、バルク型レンズの材料である光学媒質の屈折率である。なお、バルク型レンズ20の円柱形状部分の半径Roと、頂部3の曲率半径をRとは、必ずしも等しい必要はない。
【0039】
次に、本発明の室内照明装置に用いる他の形態のバルク型レンズを説明する。 図10は、天井部2を凸形状にした本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの構造を示す図である。図10において、バルク型レンズ22は、天井部2の形状が異なる外は、図1に示したバルクレンズ20と同等である。測定に用いたバルク型レンズ22の円柱形状部分の外径2Roは15mmφ、バルク型レンズの全長Lは、25mm、頂部と天井部のレンズ間距離Dは16mm、収納部6の内径rは5.2mm、バルク型レンズの屈折率nは1.54である。このバルク型レンズの頂部3の曲率半径Rは8.25mmである。又、測定に用いた樹脂モールドされたLED1の外径は5mmφである。
【0040】
図11(A)〜(C)及び図12(A)〜(C)は、天井部2の凸部の高さΔと、ビーム強度プロファイルとの関係を示す図である。光源からの距離x=1mで照度を測定した。
図から明らかなように、天井部2を凸形状のレンズとしても集光特性が得られることがわかる。
【0041】
このようにして、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズによれば、樹脂モールドされたLED1の数を多数必要とすることなく、照明に寄与する光ビームとして所望の照射面積の光束を確保し、且つ所望の照度を簡単に得ることが出来る。この照度は従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。驚くことに、現在市販されているハロゲンランプを用いた細身の懐中電灯と同程度の照度がたった1個のLEDで実現出来たのである。このように、本発明の第1の実施例に係る発光体によれば、従来の技術では実現できない照度を、図1に示すような簡単な構造で実現できる。
【0042】
なお、樹脂モールドされたLED1としては、種々の色(波長)のLEDが使用可能である。但し、懐中電灯のような照明目的のためには、白色LEDが人間の目には自然であろう。白色LEDは種々の構造のものが使用出来る。例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3個のLEDチップを縦に積層して構成しても良い。この場合、樹脂モールド14から、それぞれの色のLEDチップに対応し、合計6本のピンが導出されても良く、樹脂モールド14の内部配線として、6本のピンを2本にまとめ、外部ピンとしては2本設けられた構造としてもかまわない。又、一方の電極(接地電極)を共通とすれば、外部ピンは4本でよい。又、赤(R)色、緑(G)色及び青(B)色の3枚のLEDチップの駆動電圧を互いに独立に制御出来るようにしておけば、あらゆる色の混合が可能であるので、色合いの変化を楽しむことが可能である。
【0043】
本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズ20としては、アクリル樹脂等の透明プラスチック材料、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、ZnO、ZnS、SiC等の結晶性材料を用いてもかまわない。又、可とう性、屈曲性や伸縮性のあるゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物、或いは透明ゴムのような材料でもかまわない。また、ゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物等を、透明ゴムやフレキシブルな透明プラスチック材料等に格納して用いても良い。アクリル樹脂等の透明プラスチック材料等は、バルク型レンズ20を大量生産するのに好適な材料である。即ち、一度金型を作り、この金型により成形加工すればバルク型レンズ20が簡単に大量生産出来る。
【0044】
次に、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの変形例について説明する。
上記に説明した本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズは、端面放射型LEDのように、LEDチップの側面から発光する光源を使用する場合にも使用できるものである。
端面放射型LEDはLEDチップの側面から発光するものであり、そのため、上記のバルク型レンズにこのLEDチップを装着した場合には、バルク型レンズの内周部5に垂直に入射する成分が多くなるため、全反射されずにバルク型レンズの外部に散逸する光が多くなる。
変形例のバルク型レンズはこのような光源に対しても、極めて低損失で収束光を得ることができる。
【0045】
図13は、本発明の室内照明装置に用いるバルク型レンズの内周部5と外周部9とが傾きを有する場合の光線の光路を示す図である。
図において、光源の発散角をθd 、内周部5と外周部9との傾き角をφ、外周部9の全反射角をθt 、内周部5における光線の入射角、屈折角をθ1 及びθ2 、そしてバルク型レンズの光学媒質の屈折率、収納部(凹部)6の屈折率をn2 及びn1 とする。図は、光源の最大出射角、すなわち、発散角の光線が傾き角をφにより、全反射条件を満たし、全反射されている状態を表している。
内周部5において、スネルの屈折の法則より、θ1 とθ2の間には、
sinθ1 /sinθ2 =n2/n1 (4)
が成り立ち、また、図から明らかなように、θt 、φ、θ2 の間には、
θt =φ+θ2 (5)
が成り立つ。また、図から明らかなように、θd 、θ1 、φの間には、
θd =90°−(θ1 +φ) (6)
の関係が成り立つ。上記(4)、(5)、(6)式よりθ1 とθ2 を消去すると、バルク型レンズが全反射角θt を有し、光源の発散角がθd である場合の、全反射するために必要な傾き角φを与える関係式として、
sin-1{n1 /n2 cos(θd +φ)}=θt (7)
が得られる。すなわち、(7)式を満たす傾き角φ以上で内周部5と外周部9が傾いていれば、たとえ、内周部5に垂直に光が入射する場合(θd =90°)でも全反射され、頂部3へ、あるいは底面7で反射して頂部3へ導かれるから、収束光を得ることができる。
【0046】
図14は上記室内照明装置に用いるバルク型レンズの構成を示す図である。
図14(A)は、バルク型レンズ20の内周部5の表面に微細な凹凸を設けた例を示している。この凹凸は少なくとも(7)式を満足するφ以上の傾き角を有しており、また、この凹凸の大きさは光波長程度でよい。また、この凹凸は、内周部5の光源近傍に設けるだけでよい。
このような凹凸は、適切な粒径の研磨剤を用いて、内周部5の表面を磨くことによって簡単に形成できる。
図14(B)は、ほぼ真横方向に出射した光線がバルク型レンズ内を全反射して、又は底面7で反射してかつ側壁で全反射して、頂部3に導かれる様子を示している。このように、例えば、端面発光LEDのようにほとんどの出射光がチップの側面から出射するようなLEDを使用する場合においても、全ての出射光を収束できる。
さらにまた、レンズ部と光源を収納する収納部とが一体で形成されているため、従来のレンズ系では必要であったレンズと光源を光学的位置合わせをして保持する保持部を必要とせず、また、光学的位置合わせ工程を必要とせず、ただ光源にかぶせるだけでよいので、極めて低コストである。
【0047】
図15は、第1の実施例による室内照明装置の構成を説明する図であり、同図(A)は外観図、同図(B)は断面図である。
図15に示す室内照明装置は、飛行機や電車或いは自動車、例えば、バスなどの乗り物の室内に設置されて全体的な照明に用いられるものである。図15に示すように、この室内照明装置は、筐体31と、室内に照明装置を取り付けるための取付板32と、外部の電源と接続される電力供給用の信号線33と、バルク型レンズ34と、所用に応じて取り付けられる拡散版35と、信号線33が接続されたプリント板36と、プリント板36を覆うように取り付けられた板状部材37と、光源として採用された発光ダイオードDと、から構成される。
【0048】
光源として採用された発光ダイオードDは、電気を光に変える変換効率が高く、乗り物につきものの振動や衝撃にも強い。変換効率が高いということは、発熱量が小さく、小さな電力でも大きな光量が得られるということを意味する。第1の実施の形態では、このような特性を有する発光ダイオードDを光源として採用することにより、小さな消費電力で大きな光量が得られる頑健な室内照明装置を実現させている。なお、光源としては、発光ダイオードDではなく、半導体レーザなどの他の半導体発光素子であっても良い。発光ダイオードD自体については、市販されているものであっても良く、そうでなくても良い。
【0049】
発光ダイオードDを覆うように取り付けられたバルク型レンズ34は、そのダイオードDから出射された光を特定の箇所に集光、或いは広範囲に拡散させるためのものである。バルク型レンズ34により、照明装置として適切に機能するようにしている。なお、1個のバルク型レンズ34で覆う発光ダイオードDは1個ではなく複数個であっても良い。
【0050】
発光ダイオードDでは発熱を考慮しなくても良い。このため、それを覆うようにバルク型レンズ34を取り付けるとしても、その材質としてプラスチックやアクリルなどの合成樹脂を採用することができる。このことから、採用する材質を選ぶ上での設計自由度が高くなる。この発光ダイオードDは、複数、プリント板36上に配置、例えば、各列に、それぞれ複数の発光ダイオードDを並べる形で配置しているが、その配置についての設計自由度も高い。配置は必要に応じて様々に変更させることができる。発光ダイオードDを直流で駆動させた場合には、ノイズの発生を回避させることもできる。
【0051】
図16はこの室内照明装置の回路構成図である。図に示すように、この室内照明装置は、外部電源、例えば、乗り物から信号線3を介して供給される電流から所定の電圧を発生させる電源部41と、発光ダイオードDを駆動する駆動部42と、駆動部42の制御を行う制御部43と、から構成されている。これら電源部41、駆動部42、制御部43は、図15(B)に示すプリント板36上に搭載されている。
【0052】
例えば、上記電源部41は、信号線33から電流が供給されている間、制御部43及び駆動部42の電源として機能する。制御部43はその間、各発光ダイオードDが予め定められた輝度で発光するように駆動部42を制御する。これにより、求められている光量で室内を照らすように室内照明装置は動作するようになっている。
【0053】
上記の第1の実施例による照明装置は、室内全体を照らすためのものである。これに対し、以下に説明する第2の実施例は、特定箇所を照らすためのスポットライトである。この例においても上記の例と同じ効果を得ることができる。
【0054】
図17は、第2の実施例による室内照明装置の構成を説明する図であり、同図(A)は外観図、同図(B)は断面図である。図に示すように、この室内照明装置は、照明装置を室内に固定・設置するための固定部材51と、固定部材51によって支持される回転支持固定部52と、固定部52に取り付けられた制御部53と、図示しない電源部(図16における電源部41に対応)から制御部53に電流を供給するための電源線54と、制御部53が発光ダイオードDの駆動制御用である制御信号を出力するための制御線55と、内部に発光ダイオードDを収納し、そのダイオードDから出射された光を特定箇所に集めるためのバルク型レンズ56と、バルク型レンズ56を回転させるために設けられた回転用取手部57と、所用に応じて取り付けられる拡散部材58と、バルク型レンズ56内部に収納された1個或いは複数個の発光ダイオードDを駆動する駆動部59と、から構成されている。
【0055】
上記回転支持固定部52の端部には、図17(B)に示すような内側に向かって突出したと凸部52aが数カ所或いはその端部全体に渡って形成されている。他方のバルク型レンズ56には、その凸部52aの形状に合わせて凹部56aが全体的に形成されている。このため、凹部56aと凸部52aが噛み合わさっているような状態でバルク型レンズ56を360度、自由に回転させることができるようになっている。これにより、照らされる特定箇所の微調整を行えるようにしている。発光ダイオードDを発光させても取手部57は熱くならないことから、バルク型レンズ56は常に安全に回転させることができる。
【0056】
例えば、電源線54を介しての電流の供給は、発光ダイオードDを駆動すべき間だけ行われるようになっている。制御部53はその間、制御線55を介して各発光ダイオードDを所定の輝度で発光させるための信号を駆動部59に送る。それにより、求められている光量で特定箇所を照らすように室内照明装置は動作するようになっている。
【0057】
なお、第1及び第2の実施例では、室内照明装置の回路について具体的に言及していないが、その回路は、例えば、以下のように実現させても良い。図18〜図20を参照して、その回路の実現例について詳細に説明する。
【0058】
図18に示す回路は、例えば、第1の実施の形態による室内照明装置用のものである。IC41は図16の制御部43に対応し、複数の例えばMOS−FETであるトランジスタTからなる駆動部42は図16の駆動部42に対応する。端子a〜cには、それぞれ、図16の電源部41に対応するものから予め定められた電圧が印加される。端子bとトランジスタTの、例えば、ドレインの間には1個の抵抗R、及び複数個の発光ダイオードDが直列に接続され、端子cとトランジスタTの、例えば、ドレインの間には、1個の抵抗R、及び複数個の発光ダイオードDが直列に接続されたものが複数、並列に接続されている。
【0059】
IC61は、トランジスタTのゲートに流れる電流の大きさを制御するか、或いはそれに間欠的に電流を流す、すなわち、パルス駆動を行うことで発光ダイオードDの明るさの調整を行う。パルス駆動を行うのであれば、そのIC61として、ワンチップマイクロコンピュータ、ロジックICの組み合わせ或いは抵抗、コンデンサの時定数を利用したアナログ回路を使用することができる。そのパルス駆動を行う方法としては、パルス幅、すなわち、ゲートに電流を流している時間幅が一定で繰り返し周波数を変える方法や、周波数は一定でパルス幅を変える方法などがある。
【0060】
図19に示す回路は、例えば、発光ダイオードDを単に直流駆動する場合のものである。図19中の62は電源部であり、63は電源部62と発光ダイオードDの間に挿入されたスイッチである。
【0061】
図19に示す回路では、電源部62、抵抗R、複数個の発光ダイオードD及びスイッチ63が直列に接続されている。これにより、発光ダイオードDのオン/オフは、スイッチ63への操作により行うようになっている。その抵抗Rの値は発光ダイオードDの数により変更する必要がある。
【0062】
図20に示す回路は、例えば、様々な色の照明を行えるようにする場合のものである。図20中の64は制御回路からなる制御部、65は複数の例えばMOS−FETであるトランジスタTからなる駆動部、66はセンサー、Rは抵抗、DR、DG、DB、DWはそれぞれ、赤色、緑色、青色、白色の光を発する発光ダイオードである。端子d、eにはそれぞれ、図16の電源部41に対応する電源から電力が印加される。
【0063】
制御部64は、センサー66からの信号、或いは装置に組み込んである調整器の状態に応じて、ゲートに電流を流すトランジスタT、或いは各トランジスタTに流す電流の大きさを決定し、その決定した内容に従ってトランジスタTを駆動する。それにより、照明の色を様々に変化できるようになっている。照明の色を様々に変化させられるようにすることで、用途の幅を広げることができる。
【0064】
上述した図18〜図20の回路の実現例は一例であり、本発明を適用した室内照明装置用の回路はそれらのうちの一つに限定されるものではない。それら以外の構成であっても良い。例えば電源部については、それを乗り物側に用意することで、それを不要とすることもできる。搭載させる機能についても同様に、上述したものに限定されるわけではなく、用途などに合わせて様々な機能を搭載させても良い。それら以外のことについても、本発明の技術思想を越えない範囲で様々な変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 光源
2 天井部
3 頂部
4 光学媒体
5 内周部
6 凹部
7 底部
8 スペーサ
9 外周部
20 バルク型レンズ
31 筐体
32 取付板
34、56 バルク型レンズ
36 プリント板
41、62 電源部
42、59、60、65 駆動部
43、64 制御部
52a、56a 回転支持固定部
61 IC
66 センサー
D、DR、DG、DB、DW 発光ダイオード
R 抵抗
T トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、外周部と、レンズ面となる頂部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、前記天井部が第1のレンズ面として、前記内周部が光入射面として、前記外周部が全反射面として、前記底部が反射面として、また、前記頂部が第2のレンズ面として機能するように構成したバルク型レンズと、
前記バルク型レンズの凹部内に光学媒質を介して収納された光源と、を備え、
前記光源が前記バルク型レンズよりも屈折率の高い光学媒質を介して前記収納部に収納されていて、
前記光源の光束を、上記バルク型レンズを使用して収束又は発散することを特徴とする、室内照明装置。
【請求項2】
前記光源が、透明材料でモールドされた半導体発光素子又は光ファイバの出射端面であることを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項3】
前記室内照明装置のバルク型レンズは、前記天井部の第1のレンズ面を凸面に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項4】
前記室内照明装置のバルク型レンズは、前記天井部の第1のレンズ面を凹面に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項5】
前記室内照明装置のバルク型レンズは、前記第1のレンズ面を平面に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項6】
底部と、外周部と、レンズ面となる頂部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、前記天井部が第1のレンズ面として、前記内周部が光入射面として、前記外周部が全反射面として、前記底部が反射面として、また、前記頂部が第2のレンズ面として機能するように構成したバルク型レンズと、
前記バルク型レンズの凹部内に光学媒質を介して収納された光源と、を備え、
前記バルク型レンズは、前記光源の回りに回転可能に支持されており、さらに、上記バルク型レンズは該前面に光照明パターンを有する拡散部材を備えており、
上記バルク型レンズを回転させて、光照明パターンを変更し、
前記光源の光束を、上記バルク型レンズを使用して収束又は発散することを特徴とする、室内照明装置。
【請求項1】
底部と、外周部と、レンズ面となる頂部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、前記天井部が第1のレンズ面として、前記内周部が光入射面として、前記外周部が全反射面として、前記底部が反射面として、また、前記頂部が第2のレンズ面として機能するように構成したバルク型レンズと、
前記バルク型レンズの凹部内に光学媒質を介して収納された光源と、を備え、
前記光源が前記バルク型レンズよりも屈折率の高い光学媒質を介して前記収納部に収納されていて、
前記光源の光束を、上記バルク型レンズを使用して収束又は発散することを特徴とする、室内照明装置。
【請求項2】
前記光源が、透明材料でモールドされた半導体発光素子又は光ファイバの出射端面であることを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項3】
前記室内照明装置のバルク型レンズは、前記天井部の第1のレンズ面を凸面に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項4】
前記室内照明装置のバルク型レンズは、前記天井部の第1のレンズ面を凹面に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項5】
前記室内照明装置のバルク型レンズは、前記第1のレンズ面を平面に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の室内照明装置。
【請求項6】
底部と、外周部と、レンズ面となる頂部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、前記天井部が第1のレンズ面として、前記内周部が光入射面として、前記外周部が全反射面として、前記底部が反射面として、また、前記頂部が第2のレンズ面として機能するように構成したバルク型レンズと、
前記バルク型レンズの凹部内に光学媒質を介して収納された光源と、を備え、
前記バルク型レンズは、前記光源の回りに回転可能に支持されており、さらに、上記バルク型レンズは該前面に光照明パターンを有する拡散部材を備えており、
上記バルク型レンズを回転させて、光照明パターンを変更し、
前記光源の光束を、上記バルク型レンズを使用して収束又は発散することを特徴とする、室内照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−117375(P2009−117375A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5236(P2009−5236)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【分割の表示】特願2001−22188(P2001−22188)の分割
【原出願日】平成13年1月30日(2001.1.30)
【出願人】(599104299)ラボ・スフィア株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【分割の表示】特願2001−22188(P2001−22188)の分割
【原出願日】平成13年1月30日(2001.1.30)
【出願人】(599104299)ラボ・スフィア株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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