説明

室内用建材

【課題】マイナスイオンを放出すると同時に、放射する遠赤外線の利用、並びに光触媒機能材料により抗菌、消臭作用の増加を図った多機能性の室内用建材を提供する。
【解決手段】木質材等に、静電気に帯電しにくい高分子化合物並びに希有元素類を含む鉱物及びトルマリン若しくは遠赤外線セラミックスのいずれか一方を含有した組成物に、光触媒機能材料を混合した樹脂組成物を、一部分或いは全面に塗布した構成とする。
【効果】マイナスイオンが放出増大し、同時放射する遠赤外線の利用、並びに光触媒機能材料により抗菌、消臭作用を増加改善し得る効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内用建材に関し、マイナスイオンを放出すると同時に、放射する遠赤外線の利用、並びに光触媒機能材料の添加混合により抗菌、脱臭作用を増加させた多機能性の室内用建材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築は、それぞれの用途に応じた人間の環境を形造るものであり、建築を設計し、計画し、施工するに当たっては、その住居環境或いは性能に対するきめ細かい配慮が必要である。特に、我が国でもいわゆる環境問題に社会的認識が高まっており、建築の環境機能的な面の計画技術は、我々が快適で健康な生活を営む上で欠かすことのできない基本的要素として密接な関係をもっている。
【0003】
近年、空気環境に対する関心が高まり、人間の生活空間における悪臭や悪細菌類の除去が必要不可欠の時代になってきた背景の中、特に現在の化学建材等での塗料や接着剤などに含まれる揮発性有機化合物や原因物質とされるホルムアルデヒドによるシックハウス症候群の発症は内装建材の分野では、例えばVOC物質の規制値も低濃度に規制されるようになつてきている。就中、人々が生活を営む上で最も身近な住居内或いは職場や仕事場等の施設環境では、特に建材材料に含まれる有害物質の影響や増大、都市部における一般住居や事務所等での建築空間の高密度化に伴って、建築室内の環境浄化と併せ、喫煙嫌悪ないし交通機関での限定的喫煙禁止迄の社会的風潮を含めクリ−ンな雰囲気、有害物質の抑制、防止に対する重要性が高まってきている。
【0004】
悪臭の除去及び抗菌効果が得られる方法として、注目されるようになってきた光触媒機能材料を使った製品や、マイナスイオン効果を図った製品が市場に数多くみられるようになってきた。抗菌性と消臭性を併せ持つ組成物や、光触媒機能材料の先行技術が特許や出願、或いは市場で販売されている。その中で代表的なものとして、次の4件を挙げる。
【0005】
【特許文献1】特許第3035279号 静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに希有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含むマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放出する樹脂組成物。
【特許文献2】特許第3494407号 希有元素類を含む鉱物及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を体質顔料として含むマイナスイオンを放出する塗材により塗工してなることを特徴とする塗装部材。
【特許文献3】特開2004−137764 アクリル樹脂系エマルジョン、難燃性付与材、無機充填材及び水からなる建築用砂壁状塗材中に、マイナスイオン発生粉体組成物を含有させたことを特徴とするマイナスイオン発生建築用砂壁状塗材であり、含有させるマイナスイオン発生粉体組成物が、トルマリン粉末と、電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム化合物粉体あるいは、電融安定化酸化ジルコニウム粉末との混合物であるマイナスイオン発生建築用砂壁上塗材。
【非特許文献1】光触媒といわれる数〜数百nm粒径の酸化チタンが、太陽光などの紫外線が当たると、光電効果で電子が励起。電子と正孔が発生して、電子は、空気中の酸素を還元しスーパーオキサイドイオンに、正孔は、表面の水分を酸化して水酸化ラジカルに変える。このスーパーオキサイドと水酸化ラジカルは、強い酸化力を示し、この状態でチタニア表面に有機物が付着すると、スーパーオキサイドが有機物の炭素を、水酸化ラジカルが水素を奪って分解。こうした自浄作用が、抗菌作用及び消臭作用となるメカニズムとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、抗菌効果及び消臭効果を主目的にすると、前記多機能の室内用建材並びに光触媒は、抗菌効果では、中程度の抗菌性能であることと、一方、消臭効果では、低濃度では消臭瀬手能が得られるが、高濃度では、消臭性能が得られにくい。殺菌についての最近の背景として、病院の院内感染、食品工業の食中毒、畜産業の伝染病が社会問題化しており、医用機器、医用衣類、食品関係品は、抗菌ではなく、殺菌及び滅菌の高いレベルでなければ、製造及び使用できなくなつている。
【0007】
また、光触媒である酸化チタンは、次の大きな問題点がある。(1)太陽光等の紫外線が当たらない夜間、暗い所では効果がない。(2)光触媒機能材料の反応は、消臭作用も抗菌作用も、表面反応であるので室内空間の広い容積で効果を挙げるものではなかった。(3)樹脂に混合したり、接触させると、有機物である樹脂を分解し、劣化させるため用途が限られたものであった。このような上記問題点である抗菌効果並びに消臭性能の性能向上及び光触媒の上述のような大きな欠点を解決することが必要になってきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点にかんがみて、木質材、土質材、紙材、コルク材、モルタル材、樹脂シ−トに、静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに希有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックスのいずれか一方を含む組成物に、光触媒機能材料をの混合させた樹脂組成物を、一部分或いは全面に塗布した室内用建材を提供するものである。
【0009】
本発明において、室内用建材としては、床材、壁材ないし壁紙、天井材或いは吹付材として板材、壁紙、タイル、接着材、目地材等に上記樹脂組成物の塗布することができる。上記樹脂組成物の塗布により、マイナスイオン効果及び遠赤外線効果と併せ、消臭作用や抗菌作用を向上させ、さらに抗菌並びに消臭効果を発揮するように働く。
【0010】
本発明において、アクリル樹脂系エマルジョンとして、アクリル樹脂エマルジョン、アクリル・ウレタン共重合エマルジョン、アクリル・酢酸ビニール共重合エマルジョン及び酢酸ビニール系エマルジョンとして、酢酸ビニール樹脂エマルジョン、酢酸ビニール・塩化ビニール共重合エマルジョン及びウレタン樹脂系エマルジョンとして、ウレタン樹脂エマルジョン、ウレタン・アクリル・酢酸ビニール共重合エマルジョン及びシリコン樹脂系エマルジョンとして、シリコン樹脂エマルジョン、シリコン・アクリル共重合エマルジョン、シリコン・ウレタン共重合樹脂エマルジョンをいずれも使用することができ、上記2種以上の混合物をも使用することができる。
【0011】
本発明において、希有元素類を含む鉱物としては、フェルグソン石、モナズ石、ゼノタイム石、コルンブ石、ベタホ石、サマルスキー石、タンタル石、ウラン石、方トリウム石、ゴム石、ガドリン石等がある。これらの鉱物のうち、極微弱な放射線を放出し、人体に悪影響を及ぼさないとされる鉱物として、最も好ましい鉱物は、モナズ石である。上記天然鉱物の粒径として、1mm以下に粉砕したものを用いることができる。最も好ましくは、30ミクロン以下に粉砕されたものが、建材の表面の美観と、マイナスイオンの生成を減少させないうえで有益である。上記の配合部数として、樹脂エマルジョン(固形分)100重量部に対し、100重量部以下を配合することができる。
【0012】
本発明において、光触媒機能材料として、アナターゼ型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン、アパタイト被覆酸化チタン等をいずれも使用することができる。粒子径として、5〜200nmに粉砕されたものを使用することかできる。最も好ましくは、6〜30nmの方が電子を励起するうえで有益である。比表面積として、50平方メートル/g以上の方が、同じく電子を励起促進するうえで有利である。上記配合部数として、2〜50重量部配合することができる。最も好ましくは、30重量部以下が、マイナスイオンの生成を減少させないうえで有利である。
【0013】
本発明において、遠赤外線セラミックとして、シリカ系、アルミナ系のセラミック及びシリカ、アルミナ、酸化鉄、酸化マグネシゥム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウムを含有するセラミックを使用することができる。最も好ましくは、前記成分のセラミックのうち、常温体温域で、2〜50ミクロンの波長をもつ遠赤外線を放射率50%放射しているセラミックを使用する方が、マイナスイオンの発生を増幅するうえで有益である。上記成分を含有された市販品の遠赤外線セラミックとして、「商品名 セラジット、OKトレーディング製があり、マイナスイオンを増幅し、同時に遠赤外線を高放射するうえで有益である。粉体の粒径として、1mm以下に粉砕したものを使用することができる。最も好ましくは、平均粒径30ミクロン以下が、建材の美観と、遠赤外線を高放射するうえで有益である。
【0014】
本発明において、トルマリンとしては、ショールトルマリン、リチウムトルマリン、ドラマイトトルマリン、ルベライトトルマリン、ピンクトルマリン、インデコライト、バライバトルマリン、ウォーターメロン等を使用することができる。上記トルマリンの粒径として、1mm以下に粉砕したものを使用することができる。最も好ましくは、平均粒径
30ミクロン以下が、建材の美観と、遠赤外線を高放射するうえで有益である。上記配合部数として、樹脂エマルジョン(固形分)100重量部に対し、100重量部以下を配合することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、室内木質材等の内装建材に、該樹脂組成物を塗布した構成である為、室内のイオン数の挙動においても、プラスイオンを大幅に減少させ、特にマイナスイオンを持続的大量に生成し、同時に遠赤外線を増幅放射するとともに、その相互作用で混合添加した光触媒機能材料による光触媒作用のスーパーオキサイドイオンと水酸化ラジカルを増幅生成して、抗菌、脱臭効果を大きく向上せしめることができ、人々の生活環境として密接で身近な空気浄化及び煙草等の脱臭作用をはじめ室内空気環境を改善し得る多機能性の室内用建材として優れた効果を奏する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を挙げて詳細に説明する。
【0017】
試料の作成
表1及び表2に示す配合材として、アクリル樹脂エマルジョンは、商品名Vフリーシーラー、株式会社トウベ製を使用した。シリコン樹脂エマルジョンは、商品名として、SEー1980 東レダウコーニングシリコン社製を使用した。遠赤外線セラミックは、商品名セラジットALF9、オーケートレーディング社製を使用した。
【0018】
光触媒は、商品名 PCー101、チタン工業製の平均粒径20ミクロンの酸化チタンを用いた。アパタイト被覆酸化チタンは、平均粒径20nmのものを使用した。トルマリンとして、平均粒径10ミクロンのショールトルマリンを使用した。
【0019】
【表1】

表1に示す実施例1〜8の所定量を配合した混合物を、3L真空攪拌機ダルトンにて、1時間攪拌混合した実施例の時油脂組成物を得た。その実施例の樹脂組成物を、塩化ビニール製壁紙に、ローラー刷毛で、wet塗布量50g/m2 で均一に塗布し、乾燥させた実施例1〜8の建材を得た。
【0020】
【表2】

イオン測定と遠赤外線測定
上記実施例1〜8の試料のイオン測定と遠赤外線測定を行った。イオン測定方法は、小イオン測定として、イオンテスターKST−900 神戸電波製を使用し、室温25℃、湿度60%、試料20cm角で、マイナスイオンとプラスイオンを3分間の平均生成数/ccを測定した。総イオン測定は、空気イオンテスターITC−201A アンデス電気製を使用し、同じ雰囲気で、マイナスイオンとプラスイオンを3分間の平均生成数/ccを測定した。遠赤外線測定は、FTIR測定機、JIR−E500を使用し、試料温度
35℃の遠赤外線放射率を測定した。その結果を表3に示した。
【0021】
【表3】

実施例1〜8の小イオン測定及び総イオン測定の結果、実施例1〜8の樹脂組成物に光触媒及びアパタイト被覆酸化チタン配合が、プラスイオンを大幅に減少させて、マイナスイオンを大量に生成させていた。遠赤外線の放射においても、いずれの実施例1〜8も高放射していた。
【比較例】
【0022】
試料の作成方法として、表4及び表5に示した配合処方で、実施例と同じ方法で、比較例1〜8の樹脂組成物を作成した。その樹脂組成物を、塩化ビニール製壁紙に、実施例と同じ方法で塗布して、比較例1〜8の試料を作成した。
【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

比較例のイオン測定と遠赤外線測定を、実施例と同じ方法で行った。その結果を表6に示した。
【0025】
【表6】

実施例と比較例の小イオン測定結果及び総イオン測定結果から明らかなように、樹脂組成物に光触媒酸化チタンを加えることで、プラスイオンが大幅に減少することになり、よりマイナスイオン効果を発揮できるものとなった。また、遠赤外線放射では、実施例1〜8及び比較例1,2,5,6は殆ど変らず高放射を維持していたが、比較例3,7,8は殆ど放射していないものであった。
【0026】
実用化試験
実施例及び比較例で作成した試料を使用して、抗菌試験及び消臭試験をして、本発明を明らかにする。
【0027】
抗菌試験
抗菌試験として、公的試験機関である(財)日本紡績協会で試験を行った。抗菌性試験方法として、JISーL1902定量試験法を準拠し、環境条件として、(1)ブラックライト照明、(2)照明無しの暗闇とした。試験菌株として、MRSA(耐性黄色ぶどう球菌)を使用した。試験結果として、下記に示した。
【0028】
試験結果 (1)ブラックライト照射時

logB−logA=2.7 有効
殺菌活性値=logA−logC
静菌活性値=logB−logC
【0029】
【表7】

試験結果 (2)光無し(暗闇)
【0030】
【表8】

上記の抗菌試験から明らかなように、実施例と比較例を対比すると、樹脂組成物よりも相当高い抗菌性を示し、殺菌レベルの性能を有するものとなった。また、光の無い環境でも、余り低下することなく抗菌性を維持していた。それに対し、光無しの環境では、比較例3,4の光触媒のみの試料では、全く効果がみられなかった。これらの効果は、樹脂組成物のマイナスイオン増幅をする電子と遠赤外線と、光触媒の相互作用が働き、抗菌効果を大幅に向上させたことは明らかである。
【0031】
消臭試験
消臭試験として、検知管法を用いた。試験方法として、5リットルのテトラーバッグ中に、実施例及び比較例の試料5cm角及びガスを注入し、30分後と1時間後のガス濃度を検知管を用いて測定し、下記の式により、消臭率(%)を換算した。また、環境条件として、(1)ブラックライト照射時と、(2)照明無し暗黒の2方法で行った。
【0032】
ガスの種類として、アンモニアを使用した。コントロールは、試料を入れていないブランクである。アンモニアガス 初期濃度 200ppm,ガス量 600ml,脱臭率%={(コントロールガス濃度−試料ガス濃度)/コントロールガス濃度}×100
(1)ブラックライト照射時
その結果、30分後のコントロールガス濃度 190ppm
1時間後のコントロールガス濃度 170ppm
【0033】
【表9】

(2)照明無し暗黒
その結果、30分後のコントロールガス濃度 190ppm
1時間後のコントロールガス濃度 170ppm
【0034】
【表10】

上記の消臭結果から明らかなように、実施例及び比較例と対比して、高濃度のアンモニアガス濃度でも、実施例では、効率よく分解消臭したことが明らかとなった。また光無しの環境条件では、大差なく効率よく分解消臭したことが明らかとなった。比較例3,4,7,8の光触媒だけでは、全く消臭しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材、土質材、紙材、コルク材、モルタル材、樹脂シ−トに、静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに希有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックスのいずれか一方を含有する組成物に、光触媒機能材料を添加混合した樹脂組成物を一部分或いは全面に塗布したマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射と共に、抗菌、脱臭作用を増加させたことを特徴とする室内用建材。
【請求項2】
前記高分子化合物が、アクリル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニール樹脂系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン及びシリコン樹脂系エマルジョンである請求項1記載の室内用建材。
【請求項3】
前記光触媒機能材料が、光触媒酸化チタンである請求項1、2のいずれか記載の室内用建材。
【請求項4】
前記光触媒機能材料が、アパタイト被覆二酸化チタンである請求項1、2のいずれか記載の室内用建材。

【公開番号】特開2008−88747(P2008−88747A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272411(P2006−272411)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000153410)株式会社日野樹脂 (26)
【Fターム(参考)】