説明

室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物

【課題】室温保存が可能で、初期粘度が低く、湿気で増粘させることで垂れ難くすることができ、更に耐熱耐久性にも優れた室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の提供。
【解決手段】(A)25℃の絶対粘度が0.1〜1,000Pa・sで、両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、(B)下記式(1)


(R1は1価炭化水素基、R2はアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基、nは2〜100、aは1〜3)で表されるオルガノポリシロキサン、(C)ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシラン化合物及び/又はその(部分)加水分解(縮合)物、(D)増粘触媒、(E)熱伝導率10W/m・℃以上の熱伝導性充填剤を必須成分とする室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期粘度が低いためにディスペンスし易く、室温にて湿気で増粘することができるために垂れ難い室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子分野・輸送機分野等では、エネルギーを精密に管理するために以前にも増して数多くの制御電子素子・部品が搭載されるようになってきている。例えば、輸送機のみに着目してみても、ガソリン車からハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車等へ変化することで、今までガソリン車では必要のなかったモータ・インバータ・電池等の電子素子・部品を搭載しなくてはならなくなってきた。このような発熱電子素子・部品から効率良く熱を冷却器へ伝えるために、熱伝導性シリコーングリース組成物は今や必要不可欠な存在となりつつある。
【0003】
更に最近では、数多くの電子素子・部品を限られた空間内に搭載する必要があるために、その搭載環境(温度・角度等)も多岐に渡るようになってきた。例えば、発熱する電子素子・部品と冷却板とが水平置きされなくなり、それらを接続する熱伝導性材料もある一定の傾きを持って搭載されることが多くなってきた。このような使用環境では、熱伝導材料が発熱体と冷却体の間から垂れて抜けてしまわないように、熱伝導性シリコーン接着材料や熱伝導性ポッティング材料を使用したり、室温硬化型熱伝導性シリコーンゴム組成物を使用したりする場合がある(特開平8−208993号公報、特開昭61−157569号公報、特開2004−352947号公報、特許第3543663号公報、特許第4255287号公報:特許文献1〜5)。しかしながら、どの場合も完全に接着してしまうので、リワーク性に乏しいという欠点がある。また、接着後は熱伝導性材料が非常に硬くなってしまうために、熱歪みによる応力の繰り返し等により熱伝導性材料が耐えきれず、発熱素子から剥がれて熱抵抗が急上昇してしまったり、硬化後に電子素子・部品へストレスをかけてしまうという問題があった。
【0004】
上述した問題は、付加1液型シリコーン熱伝導性組成物を用いれば解決できる(特開2002−327116号公報:特許文献6)。つまり、加熱硬化後においてもある程度リワーク性が確保できる上に、硬化後も垂れずに、なお且つその硬化後も比較的柔らかいゴムであるので応力緩和剤の役割も果たすことができる。とは言え、このシリコーン熱伝導性組成物も幾つか課題を抱えていた。例えば、保存に冷蔵或いは冷凍が必要であったり、使用前には解凍も必要となる。また、シリコーン熱伝導性組成物を組み付ける際に、加熱と冷却が必要になるために材料を使用する生産設備に加熱炉/冷却炉の導入が必要であったり、加熱/冷却工程に長時間必要となるために生産効率が下がってしまうという課題があった。また、この工程はエネルギー効率の観点から顧みても、熱伝導性材料のみならず部品ごと全て加熱しなくてはならなくなるため、決して効率が良い工程とは言えない。更には、塗布面に硬化阻害物質であるアミン化合物等を含む金属切削油が残存してしまうと、硬化不良が生じてしまう危険性があった。
【0005】
そこで、熱伝導性シリコーン組成物を使用する側でのこのような保存/解凍管理と加熱/冷却工程の手間を省くべく、予め材料製造時に加熱架橋反応させた付加1液熱伝導性材料が既に見出されている(特開2003−301189号公報:特許文献7)。これは今まで挙げた欠点を克服した熱伝導性シリコーングリース組成物であるが、そのトレードオフとして粘度が高く塗布し難いという課題を有している。またベースポリマーの粘度が高いために高充填し難いという課題や材料製造に長時間かかってしまう問題もあった。
【0006】
そこで、初期は粘度が低く塗布し易いが、塗布後に室温湿気増粘させることで垂れ難くなり、更には室温保存も可能な脱アルコールタイプの室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物が開発された。なお、この室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、湿気で硬化させるのではなく、増粘させているために、リワーク性にも優れており、電気素子にも大きなストレスを与えることはないので、熱伝導性シリコーングリース組成物の新しい用途を開拓できるものと期待できる。しかしながら近年、高温での耐久性に乏しいことが判明したので、この点を改善することが急務な課題となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−208993号公報
【特許文献2】特開昭61−157569号公報
【特許文献3】特開2004−352947号公報
【特許文献4】特許第3543663号公報
【特許文献5】特許第4255287号公報
【特許文献6】特開2002−327116号公報
【特許文献7】特開2003−301189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、室温保存が可能であり、初期粘度が低く塗布し易いが、湿気で増粘させることで垂れ難くすることができ、なお且つ硬化せずに増粘するのみなのでリワーク性を失うことなく、更に耐熱耐久性にも優れた室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)25℃における絶対粘度が0.1〜1,000Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、(B)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、(C)ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシラン化合物及び/又はその(部分)加水分解物もしくは(部分)加水分解縮合物、(D)増粘触媒、及び(E)10W/m・℃以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填剤を必須成分とする室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物が、室温保存可能であり、初期粘度が低いために塗布し易く、湿気で増粘した後は垂れ難くなり、なお且つ硬化せずに増粘するのみなのでリワーク性を失うことなく、更に耐熱耐久性にも優れたものとなり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)25℃における絶対粘度が0.1〜1,000Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサン:5〜70質量部、
(B)下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R2は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、nは2〜100の整数であり、aは1〜3の整数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:30〜95質量部、
(但し、(A)成分と(B)成分の合計は、100質量部である。)
(C)ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシラン化合物及び/又はその(部分)加水分解物もしくは(部分)加水分解縮合物:1〜30質量部、
(D)増粘触媒:0.01〜20質量部、
(E)10W/m・℃以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填剤:100〜2,000質量部
を必須成分とすることを特徴とする室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
〔請求項2〕
更に、(F)下記一般式(2)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部含むことを特徴とする請求項1記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
3b4cSi(OR54-b-c (2)
(式中、R3は独立に炭素数6〜20の非置換のアルキル基であり、R4は独立に炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5は独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数で、b+cは1〜3の整数である。)
〔請求項3〕
更に、(G)下記平均組成式(3)で示される、25℃における絶対粘度が0.05〜1,000Pa・sのオルガノポリシロキサンを、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して10〜1,000質量部含むことを特徴とする請求項1又は2記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
6dSiO(4-d)/2 (3)
(式中、R6は独立に炭素数1〜18の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、dは1.8≦d≦2.2の正数である。)
〔請求項4〕
更に、(H)炭素原子を介してケイ素原子に結合したアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群から選択される基を有し、且つケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜30質量部含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
〔請求項5〕
(D)成分の増粘触媒が、アルキル錫エステル化合物、チタン酸エステル、チタンキレート化合物、有機亜鉛、鉄、コバルト、マンガンもしくはアルミニウム化合物、アミン化合物又はその塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属の低級脂肪酸塩、グアニジル基を含有するシラン又はシロキサンから選ばれるものである請求項1〜4のいずれか1項記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
〔請求項6〕
(D)成分の増粘触媒が、グアニジル基を含有するシラン又はシロキサンである請求項5記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、初期は塗布し易く、塗布後は湿気にて増粘するので垂れ難くなる。また、硬化せずに増粘するのみなので、良好なリワーク性も維持され、電子素子に大きなストレスをかける心配がない。更に、保存するのに冷蔵/冷凍も必要なく、組み立て時に加熱工程も必要なく、硬化不良が起こり難いので、大変取り扱い易い。なお且つ、製造方法も簡便であり、耐熱性も良好な室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の組成物における経時での粘度変化を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳述する。
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、
(A)25℃における絶対粘度が0.1〜1,000Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
【化2】


(式中、R1は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R2は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、nは2〜100の整数であり、aは1〜3の整数である。)
(C)ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシラン化合物及び/又はその(部分)加水分解物もしくは(部分)加水分解縮合物、
(D)増粘触媒、
(E)10W/m・℃以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填剤
を必須成分とするものである。
【0014】
(A)成分は、本組成物のベースポリマー(主剤)であり、両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサンである。両末端に水酸基を有していれば、それ以外の構造は特に限定されず、通常の直鎖状のオルガノポリシロキサン等を硬化してエラストマーを与えるものであればよく、ケイ素原子に結合する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などの炭素数1〜8の1価炭化水素基、あるいはこれら1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化炭化水素基などが挙げられる。
【0015】
(A)成分の25℃における絶対粘度は、0.1〜1,000Pa・sであり、好ましくは0.3〜100Pa・sであり、より好ましくは0.5〜50Pa・sである。0.1Pa・sより低いと増粘するのが遅くなってしまい、1,000Pa・sより高いと、室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物が高粘度になってしまうので、塗布性が悪化してしまう。なお、本発明において、絶対粘度は回転粘度計にて測定した値である(以下、同じ)。
【0016】
この場合、より好適には、(A)成分として、下記一般式(4)で示されるオルガノポリシロキサンが用いられる。
【化3】

【0017】
上記式中、R7は互いに同一又は異種の炭素数1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などの1価炭化水素基、これら1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基などで置換されたクロロメチル基、3−クロロプロピル基、トリフルオロメチル基、シアノエチル基等のハロゲン化炭化水素基、シアノ化炭化水素基が挙げられる。mは、式(4)で示されるオルガノポリシロキサンの25℃における絶対粘度を0.1〜1,000Pa・s、好ましくは0.3〜100Pa・sとする数である。
(A)成分は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(A)成分は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部中、5質量部よりも少ないと増粘しなくなり、70質量部より多いと増粘ではなく硬化してしまうため、5〜70質量部の範囲で用いるものであり、好ましくは10〜60質量部の範囲で用いるものである。
【0019】
本発明に用いる(B)成分は、下記一般式(1)で表され、好ましくは25℃における絶対粘度が0.005〜100Pa・sのオルガノポリシロキサンである。(B)成分は、組成物を硬化させきらずに増粘後もグリース状に留めておく重要な役割を担っている。
【化4】


(式中、R1は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R2は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、nは2〜100の整数であり、aは1〜3の整数である。)
【0020】
上記式(1)中、R1は独立に非置換又は置換の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3の1価炭化水素基であり、その例としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基が挙げられる。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(ノナフルオロブチル)エチル基、2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エチル基が挙げられる。シアノアルキル基としては、例えば、シアノエチル基が挙げられる。R1として、好ましくはメチル基、フェニル基、ビニル基である。
【0021】
上記R2は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。アルキル基としては、例えば、R1について例示したのと同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられる。アシル基としては、例えば、アセチル基、オクタノイル基等が挙げられる。R2はアルキル基であることが好ましく、特にはメチル基、エチル基であることが好ましい。
nは2〜100の整数であり、好ましくは5〜80である。aは1〜3の整数であり、好ましくは3である。
【0022】
(B)成分の25℃における絶対粘度は、通常、0.005〜100Pa・s、特に0.005〜50Pa・sであることが好ましい。該絶対粘度が0.005Pa・sより低いと、得られる室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物からオイルブリードが発生し易くなってしまい、また垂れ易くなってしまうおそれがある。該粘度が100Pa・sより大きいと、得られる室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の流動性が乏しくなり、塗布作業性が悪化してしまうおそれがある。
【0023】
(B)成分の好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化5】


(式中、Meはメチル基である。)
(B)成分は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
この(B)成分は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部中、30質量部よりも少ないと増粘後硬くなってしまい、柔らかい組成物が得られず、95質量部より多いと、増粘しなくなってしまうため、30〜95質量部の範囲で用いるものであり、より好ましくは40〜90質量部の範囲で用いるものである。
【0025】
(C)成分は、ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシラン化合物、その(部分)加水分解物あるいは(部分)加水分解縮合物であり、本発明組成物の増粘剤として作用する。該シラン化合物としては、下記一般式(5)で表されるものが好適に用いられる。
8eSiX4-e (5)
【0026】
上記式(5)中、R8は非置換又は置換の1価炭化水素基であり、上記式(1)におけるR1や式(4)におけるR7と同様の基が例示されるが、特に炭素数1〜3のアルキル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。Xは加水分解性基であり、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アセトキシ基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基等が例示され、特にアルケニルオキシ基が好ましい。eは0又は1である。
【0027】
これらシラン化合物、その(部分)加水分解物及びその(部分)加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、テトラ(β−クロロエトキシ)シラン、テトラ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)シラン、プロピルトリス(δ−クロロブトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のアルコキシシラン類、エチルポリシリケート、ジメチルテトラメトキシジシロキサン等のアルコキシシロキサン類、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(ジエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン等のケトオキシムシラン類、メチルトリス(シクロヘキシルアミノ)シラン、ビニルトリス(n−ブチルアミノ)シラン等のアミノシラン類、メチルトリス(N−メチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N−ブチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N−シクロヘキシルアセトアミド)シラン等のアミドシラン類、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン等のアミノキシシラン類、メチルトリ(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリ(イソプロペノキシ)シラン、フェニルトリ(イソプロペノキシ)シラン等のアルケニルオキシシラン類、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン類が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
この(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、1質量部よりも少ないと増粘せず、30質量部より多くても増粘し難いので、1〜30質量部の範囲であり、好ましくは2〜10質量部の範囲である。
【0029】
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は縮合増粘型であり、この組成物には、(D)成分として増粘触媒(縮合触媒)が使用される。これには、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジブトキシビス(エチルアセトアセトネート)チタン、ジメトキシビス(エチルアセトアセトネート)チタン等のチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属(亜鉛、鉄、コバルト、マンガン、アルミニウム)化合物、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示されるが、これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。なかでもテトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が好適に用いられる。
【0030】
(D)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜5質量部の範囲である。(D)成分の添加量が少なすぎると増粘せず、多すぎても効果の増大がなく不経済である。
【0031】
(E)成分の熱伝導性充填剤としては、その充填剤のもつ熱伝導率が10W/m・℃より小さいと、室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導率そのものが小さくなるため、充填剤の熱伝導率が10W/m・℃以上、好ましくは15W/m・℃以上のものを用いる。このような熱伝導性充填剤としては、アルミニウム粉末、銅粉末、銀粉末、ニッケル粉末、金粉末、アルミナ粉末、酸化亜鉛粉末、酸化マグネシム粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、窒化ケイ素粉末、ダイヤモンド粉末、カーボン粉末などが挙げられるが、熱伝導率が10W/m・℃以上であれば如何なる充填剤でもよく、1種類でも2種類以上を混ぜ合わせてもよい。
【0032】
熱伝導性充填剤の平均粒径は、0.1μmより小さいとグリース状にならず伸展性に乏しいものになる場合があり、200μmより大きいと室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の均一性が乏しくなる場合があるため、0.1〜200μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜100μmの範囲がよい。また、充填剤の形状は、不定形でも球形でも如何なる形状でも構わない。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法による重量平均値(又はメジアン径)として求めることができる。
【0033】
熱伝導性充填剤の充填量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、100質量部より少ないと所望する熱伝導率が得られないし、2,000質量部より多いとグリース状にならず伸展性の乏しいものとなるため、100〜2,000質量部の範囲であり、好ましくは500〜1,500質量部の範囲である。
【0034】
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物には、更に(F)下記一般式(2)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を配合することができ、これにより更に組成物の粘度を下げる効果を与えることができる。
3b4cSi(OR54-b-c (2)
(式中、R3は独立に炭素数6〜20の非置換のアルキル基であり、R4は独立に炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5は独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数で、b+cは1〜3の整数である。)
【0035】
上記式(2)中、R3は独立に炭素数6〜20の非置換のアルキル基である。このような基としては、例えばヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられるが、特に炭素数6〜14のアルキル基であることが好ましい。
【0036】
4は独立に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。このような基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子などで置換した3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基などが挙げられるが、特にメチル基が好ましい。
【0037】
5は独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。
bは1〜3の整数、cは0〜2の整数である。b+cは1、2又は3であり、特に1であることが好ましい。
【0038】
(F)成分の好適な具体例としては、
1021Si(OCH33
1021Si(OCH2CH33
1429Si(OCH33
1429Si(OCH2CH33
が例示できる。
(F)成分は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
このオルガノシラン又はその部分加水分解縮合物を配合する場合の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、0.1質量部より少ないと、熱伝導性充填剤の耐水性の乏しいものとなる場合があるし、20質量部より多くしても効果が増大することがなく、不経済であるので、0.1〜20質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜15質量部の範囲である。
【0040】
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物には、更に(G)下記平均組成式(3)で示される、25℃における絶対粘度が0.05〜1,000Pa・sの分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基、特にトリアルキルシロキシ基で封鎖されたオルガノポリシロキサンを配合することができ、これにより初期粘度を調整する効果を与えることができる。
6dSiO(4-d)/2 (3)
(式中、R6は独立に炭素数1〜18の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、dは1.8≦d≦2.2の正数である。)
【0041】
上記式(3)中、R6は炭素数1〜18の非置換又は置換の1価炭化水素基である。このような基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子などで置換した3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基、及び炭素数6〜14のアルキル基が好ましい。
dは室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物として要求される粘度の観点から、1.8〜2.2の範囲の正数がよく、特に1.9〜2.2の範囲の正数が好ましい。
【0042】
また、上記オルガノポリシロキサンの25℃における絶対粘度は、0.05Pa・sより低いと室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物にした時にオイルブリードが出易くなる場合があるし、1,000Pa・sより大きくなると室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の塗布性が乏しくなる場合があることから、25℃における絶対粘度が0.05〜1,000Pa・sであることが好ましく、特に0.5〜100Pa・sであることが好ましい。
【0043】
(G)成分の好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化6】


(式中、Meはメチル基である。)
(G)成分は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(G)成分を使用する場合の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、10質量部より少ないと希釈効果が薄くなる場合があり、1,000質量部より多いと、室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の湿気による粘度上昇が起こり難くなってしまう場合があるため、10〜1,000質量部の範囲が好ましく、20〜500質量部の範囲がより好ましい。
【0045】
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物には、更に(H)炭素原子を介してケイ素原子に結合したアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群から選択される官能基を有し、且つケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を配合することができる。該成分は、本発明組成物と塗布表面との接着性を高める役割を担うものである。
【0046】
このシラン化合物及びその部分加水分解縮合物は、好ましくは1〜3個、より好ましくは2〜3個の加水分解性基を有する。該シラン化合物及びその部分加水分解縮合物中に上記官能基が2個以上存在する場合、それらは異なる炭素原子を介してケイ素原子に結合していてもよいし、同一の炭素原子を介してケイ素原子に結合していてもよい。加水分解性基としては、(C)成分の式(5)における加水分解性基Xと同様なものが例示され、中でもアルコキシ基が好ましい。
【0047】
上記シラン化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシエチルジメトキシメチルシラン等のエポキシ基含有シラン類、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン類等が挙げられる。(H)成分は、その1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。
【0048】
上記(H)成分を配合する場合の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、0.01質量部よりも少ないと効果が薄く接着性を発現できない場合があり、30質量部より多いと接着性の向上も観察されず不経済であるので、0.01〜30質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量部の範囲がよい。
【0049】
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、上記各成分を公知の方法で均一に混合することにより調製することができる。得られた室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の25℃における絶対粘度は、10〜300Pa・s、特に50〜250Pa・sであることが好ましい。
【0050】
本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、接着材料、ポッティング材料、室温硬化型熱伝導性シリコーンゴム組成物とは異なり、硬化することなく増粘することが特徴であり、湿気さえあれば室温でも増粘できるので加熱工程も不要である。また、本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、保存時に冷蔵保存や冷凍保存する必要もない。
【0051】
なお、本発明の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、23±2℃/50±5%RH/7日間放置後(湿気による増粘後)の25℃における絶対粘度が、500〜2,000Pa・s、特に700〜1,500Pa・sであることが好ましい。
【0052】
このようにして得られた室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物は、上述したように、硬化せずに増粘するだけなので、放熱グリースとして使用した場合、リワーク性に大変優れており、電子素子に大きな応力をかける心配もない。更に耐熱性も良好であるため、電気電子分野・輸送機分野などの放熱性及び耐熱性が必要とされる幅広い分野で利用できる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例及び比較例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。本発明の優位性をより明確にする目的で、具体的な実施例を示して証明する。なお、下記式において、Meはメチル基である。
【0054】
まず、以下の各成分を用意した。
(A)成分
A−1: 25℃における絶対粘度が1Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
A−2: 25℃における絶対粘度が20Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
A−3(比較用): 25℃における絶対粘度が0.08Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
A−4(比較用): 25℃における絶対粘度が1,100Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
A−5(比較用): 25℃における絶対粘度が1Pa・sであり、両末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
【0055】
(B)成分
下記式で表されるオルガノポリシロキサン
B−1:
【化7】


B−2:
【化8】

【0056】
(C)成分
C−1: フェニルトリ(イソプロペノキシ)シラン
C−2: ビニルトリ(イソプロペノキシ)シラン
【0057】
(D)成分
D−1: テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン
D−2: ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン
【0058】
(E)成分
5リットルゲートミキサー(井上製作所株式会社製・商品名:5リットルプラネタリミキサー)を用いて、下記に示す熱伝導性充填剤を下記表1に示す混合比で室温にて15分撹拌することによりE−1〜3を得た。なお、E−3は酸化亜鉛粉末のみである。
平均粒径10μmのアルミナ粉末(熱伝導率:27W/m・℃)
平均粒径15μmのアルミニウム粉末(熱伝導率:236W/m・℃)
平均粒径1.0μmの酸化亜鉛粉末(熱伝導率:25W/m・℃)
【0059】
【表1】

【0060】
(F)成分
下記式で表されるオルガノシラン
F−1: C1021Si(OCH33
【0061】
(G)成分
下記式で表される25℃における絶対粘度が5Pa・sのオルガノポリシロキサン
G−1:
【化9】

【0062】
(H)成分
下記のアミノ基含有シラン
H−1: 3−アミノプロピルトリエトキシシラン
【0063】
[実施例1〜5及び比較例1〜6]
(A)〜(H)成分を表2及び表3に示す配合量で以下のように混合して実施例及び比較例の組成物を得た。即ち、5リットルゲートミキサー(井上製作所株式会社製・商品名:5リットルプラネタリミキサー)に(A)、(B)、(E)成分を表2及び表3に示す配合量で取り、150℃で3時間脱気加熱混合した。その後常温になるまで冷却し、(C)及び(D)成分を加え、均一になるように室温にて脱気混合した。必要に応じて(F)、(G)あるいは(H)成分を加え、均一になるように室温にて脱気混合した。このようにして得られた組成物について、粘度、熱伝導率を下記に示す方法により評価した。その結果を表2及び表3に併記する。
【0064】
〔初期粘度評価〕
初期粘度は25℃における値を示し、その測定はマルコム粘度計(タイプPC−1T)を用いた。
【0065】
〔増粘後粘度評価〕
室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物を3.0mmのシート状にして、23±2℃/50±5%RHに7日間放置し、その粘度を25℃においてマルコム粘度計(タイプPC−1T)を用いて測定した。なお、実施例1の増粘の様子を図1に示す。
【0066】
〔耐熱性試験後の粘度評価〕
室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物を3.0mmのシート状にして、23±2℃/50±5%RHで7日間放置した後、150℃中に500時間曝した。その後25℃に戻し、マルコム粘度計(タイプPC−1T)を用いて測定した。
【0067】
〔熱伝導率評価〕
京都電子工業株式会社製ホットディスク法熱物性測定装置TPA−501を用いて23℃における室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物の増粘前の熱伝導率を測定した。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における絶対粘度が0.1〜1,000Pa・sであり、両末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサン:5〜70質量部、
(B)下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R2は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、nは2〜100の整数であり、aは1〜3の整数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:30〜95質量部、
(但し、(A)成分と(B)成分の合計は、100質量部である。)
(C)ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシラン化合物及び/又はその(部分)加水分解物もしくは(部分)加水分解縮合物:1〜30質量部、
(D)増粘触媒:0.01〜20質量部、
(E)10W/m・℃以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填剤:100〜2,000質量部
を必須成分とすることを特徴とする室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項2】
更に、(F)下記一般式(2)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部含むことを特徴とする請求項1記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
3b4cSi(OR54-b-c (2)
(式中、R3は独立に炭素数6〜20の非置換のアルキル基であり、R4は独立に炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5は独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数で、b+cは1〜3の整数である。)
【請求項3】
更に、(G)下記平均組成式(3)で示される、25℃における絶対粘度が0.05〜1,000Pa・sのオルガノポリシロキサンを、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して10〜1,000質量部含むことを特徴とする請求項1又は2記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
6dSiO(4-d)/2 (3)
(式中、R6は独立に炭素数1〜18の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、dは1.8≦d≦2.2の正数である。)
【請求項4】
更に、(H)炭素原子を介してケイ素原子に結合したアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群から選択される基を有し、且つケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜30質量部含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項5】
(D)成分の増粘触媒が、アルキル錫エステル化合物、チタン酸エステル、チタンキレート化合物、有機亜鉛、鉄、コバルト、マンガンもしくはアルミニウム化合物、アミン化合物又はその塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属の低級脂肪酸塩、グアニジル基を含有するシラン又はシロキサンから選ばれるものである請求項1〜4のいずれか1項記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項6】
(D)成分の増粘触媒が、グアニジル基を含有するシラン又はシロキサンである請求項5記載の室温湿気増粘型熱伝導性シリコーングリース組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77256(P2012−77256A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226204(P2010−226204)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】