説明

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【課題】接着性、保存安定性に優れる室温硬化性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に、下記一般式(4)で示される特定のシラン化合物を配合する。


(式中、R4は独立に炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、Z3は独立に加水分解性基で、1分子中に4個以上含む。R5は水素原子、又は加水分解性基含有シリル基含有有機基であり、Yはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基である。cは独立に0,1又は2である。mは1〜6の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子部品の接着・固定などに使用される室温硬化性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気により架橋する室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物は、その取り扱いの容易さに加えて耐熱性、接着性、電気特性等に優れるため、電気電子分野での接着剤など、様々な分野で利用されている。RTVシリコーンゴム組成物に接着性を付与させるためには、非共有電子対(例えば窒素原子や硫黄原子)を有するシランカップリング剤の添加が有効である。しかし、従来使用されてきた3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン等の各種シランカップリング剤を含有するRTVシリコーンゴム組成物は、接着性には優れるもののシランカップリング剤が塩基性を示すため、RTVシリコーンゴム組成物中での触媒の失活等の問題が起こりうる。このことに起因して、経時で硬化性不良を起こし、保存安定性を低下させる原因になり得る。
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−526615号公報
【特許文献2】特表2002−536159号公報
【特許文献3】特開平9−217010号公報
【特許文献4】特開平9−12889号公報
【特許文献5】特開平11−189720号公報
【特許文献6】特開2006−321938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、接着性、保存安定性に優れる室温硬化性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため検討を行った結果、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に、下記一般式(4)で示される特定のシラン化合物を配合することにより、保存安定性に優れ、種々被着体に対する接着性が向上することを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
従って、本発明は、下記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は独立に炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン及び/又は下記一般式(2)
【化2】


(式中、R2は独立に炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、Z1は独立に炭素数1〜4のアルコキシ基であり、Xは独立に酸素原子又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、pは10以上の整数であり、aは独立に0又は1の整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記一般式(3)
34-bSiZ2b (3)
(式中、R3は独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基から選択される基であり、Z2は独立に加水分解性基であり、bは3又は4である。)
で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1〜30質量部、
(C)ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に4個以上有し、下記一般式(4)
【化3】


(式中、R4は独立に炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、Z3は独立に加水分解性基であり、R5は水素原子、又は加水分解性基含有シリル基含有有機基であり、Yはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基である。cは独立に0,1又は2である。mは1〜6の整数である。)
で示されるウレイドシラン化合物:0.1〜20質量部、
(D)硬化触媒:0.01〜5質量部
を含有してなることを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔請求項2〕
(B)成分の加水分解性基が、ケトオキシム基、アルコキシル基及びイソプロペノキシ基から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
〔請求項3〕
(C)成分の式(4)中のR5が水素原子又は下記一般式(5)
【化4】


(式中、R4、Z3、c、Yは上記の通りである。)
で示される基であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
〔請求項4〕
Yが下記一般式(6)又は(7)
【化5】


(式中、R6、R7は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基であり、mは上記の通りである。)
で示される基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
〔請求項5〕
(C)成分の式(4)中のZ3がメトキシ基又はエトキシ基であり、cが0又は1であり、mが1〜3の整数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定構造の中性のシランカップリング剤を使用することにより、接着性に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得られる。また、本発明の組成物は、中性のシランカップリング剤を使用していることから、保存安定性も優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の参考例1における目的化合物−式(16)の1H−NMRを示したものである。
【図2】本発明の参考例1における目的化合物−式(16)の13C−NMRを示したものである。
【図3】本発明の参考例1における目的化合物−式(16)の29Si−NMRを示したものである。
【図4】本発明の参考例2における目的化合物−式(17)の1H−NMRを示したものである。
【図5】本発明の参考例2における目的化合物−式(17)の13C−NMRを示したものである。
【図6】本発明の参考例2における目的化合物−式(17)の29Si−NMRを示したものである。
【図7】本発明の参考例3における目的化合物−式(18)の1H−NMRを示したものである。
【図8】本発明の参考例3における目的化合物−式(18)の13C−NMRを示したものである。
【図9】本発明の参考例3における目的化合物−式(18)の29Si−NMRを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳しく説明する。
[(A)成分]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物の(A)成分は、下記一般式(1)及び/又は(2)で示されるオルガノポリシロキサンである。
【化6】

【0010】
上記式(1)、(2)中、R1、R2は、それぞれ炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子等で置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基などが挙げられる。これらの中では、特にメチル基が好ましい。
【0011】
式(1)、(2)中の複数のR1、R2は、それぞれ同一の基であっても異種の基であってもよく、またn、pはそれぞれ10以上の整数であり、特にジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が25〜500,000mm2/sの範囲、好ましくは500〜100,000mm2/sの範囲となる整数である。なお、動粘度は、オストワルド粘度計により測定できる(以下、同じ)。
【0012】
上記式(2)中、Xは独立に酸素原子又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、具体的には、酸素原子、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、好ましくは酸素原子、メチレン基、プロピレン基である。
【0013】
また、式(2)中のZ1は、独立に炭素数1〜4のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が例示され、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。aは独立に0又は1である。
(A)成分は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0014】
[(B)成分]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に3個以上有し、かつケイ素原子に結合した残余の有機基がメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基及びフェニル基から選択されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物であり、本発明の組成物において架橋剤として作用するものである。このシラン化合物は、下記一般式(3)で示されるものである。
34-bSiZ2b (3)
(式中、R3は独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基から選択される基であり、Z2は独立に加水分解性基であり、bは3又は4である。)
【0015】
(B)成分のシラン化合物及びその部分加水分解縮合物が有する加水分解性基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4、特に1又は2のアルコキシル基、エチルメチルケトオキシム基等のケトオキシム基、イソプロペノキシ基等の炭素数2〜4のアルケニルオキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、ジメチルアミノキシ基等のジアルキルアミノキシ基等が挙げられ、ケトオキシム基、アルコキシル基、イソプロペノキシ基が好ましく、アルコキシル基、イソプロペノキシ基が特に好ましい。
【0016】
(B)成分の具体例としては、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン等のケトオキシムシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のイソプロペノキシ基含有シラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン、並びにこれらシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。(B)成分は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0017】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部、特に好ましくは1〜15質量部の範囲である。0.1質量部未満では、十分な架橋性が得られず、目的とするゴム弾性を有する組成物が得難い。また30質量部を超えると、得られる硬化物は機械特性が低下し易い。
【0018】
[(C)成分]
(C)成分のウレイドシラン化合物は、本発明の室温硬化性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物の接着性を付与する重要な作用を示す成分である。(C)成分のウレイドシラン化合物は、1分子中に加水分解性基を4個以上、好ましくは6〜9個含む化合物であり、更に各種被着体のヒドロキシル基等の極性官能基と化学的相互作用(具体的には水素結合)可能な尿素結合を有するものである。この化合物は、下記一般式(4)で示される。
【0019】
【化7】

【0020】
一般式(4)において、R4は、炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、上記(A)成分の式(1)、(2)のR1、R2で例示したものと同様のものが例示できる。これらの中でもメチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。この複数のR4は同一の基であっても異種の基であってもよい。
また、Z3は、加水分解性基であり、上記(B)成分で例示した加水分解性基と同様のものが例示できる。これらの中でも炭素数1〜4のアルコキシ基、イソプロペノキシ基が好ましく、特に好ましくはメトキシ基及びエトキシ基である。この複数のZ3は同一の基であっても異種の基であってもよい。
cは独立に0,1又は2であり、0又は1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。なお、cは1分子中に4個以上、好ましくは6〜9個の加水分解性基を有するように選択されるものである。mは1〜6の整数であり、1,2又は3が好ましく、特に3が好ましい。
【0021】
5は、水素原子、又は加水分解性基含有シリル基含有有機基であり、該有機基としては下記一般式(5)で示される基が好ましい。
【化8】


(式中、R4、Z3、cは上記の通りである。)
【0022】
Yは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜15、特に3〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基であり、より具体的には、−NH−、−N(CH3)−、−N(C25)−、−N(C65)−又は
【化9】


等の態様で窒素原子等のヘテロ原子が結合途中に介在してもよい炭素数1〜15、特に3〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基であることが好ましい。
【0023】
Yとして、具体的には、下記一般式(6),(7)で示される基が挙げられる。
【化10】


(式中、R6、R7は炭素数1〜15、特に3〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基であり、mは上記の通りである。)
【0024】
上記式中、R6、R7としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2−メチルプロピレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基、ビニレン基等のアルケニレン基、フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基が結合した基などが挙げられるが、R6として、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、特に好ましくはプロピレン基である。R7として、好ましくはシクロヘキシレン基、フェニレン基である。
【0025】
上記式(7)の尿素結合を含む基としては、下記一般式(8),(9)で示される基を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【化11】


(式中、mは上記の通りである。)
【0026】
(C)成分の例として、R5、Yを含めた構造を下記一般式(10)〜(13)に示す。
【化12】


(式中、R4、Z3及びmは上記の通りである。c’は独立に0,1又は2で、1分子中のc'の合計は4以上である。)
【0027】
なお、一般式(11)の構造は、1,2−ジアミン、1,3−ジアミン、1,4−ジアミンのいずれか、一般式(12)の構造は、オルト、メタ、パラ置換のジアミンのいずれかを示している。
【0028】
上記ウレイドシラン化合物は尿素結合が存在するため、金属や樹脂表面上の極性官能基(ヒドロキシル基等)と水素結合をすることができる。該化合物を室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に配合すると、加水分解性基により本発明のウレイドシラン化合物がポリマー中に導入されることで、効果的な接着性が発現すると期待される。
【0029】
本発明のウレイドシラン化合物は、例えば下記一般式(14)
【化13】


(ここで、R4、R5、Y、Z3及びcは上記の通りである。)
で表される1級アミン又は2級アミンと、下記一般式(15)
【化14】


(ここで、R4、Z3、m及びcは上記の通りである。)
で表されるイソシアネートを反応させることにより合成することができる。
【0030】
上記反応は、イソシアネートに対するアミンの求核付加反応であり、無触媒で行うことができる。反応時に溶媒を添加してもよく、該溶媒としては特に限定されないが、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド等のアミド類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。
【0031】
この場合、式(14)のアミンと式(15)のイソシアネートの使用割合は、製造すべき目的物質等によって相違するが、通常アミノ基1モルに対しイソシアネート0.9〜1.1モル、特に0.95〜1.05モルの割合が好ましい。反応温度は、50℃以下で行うことが好ましく、−20〜40℃がより好ましく、0〜20℃が特に好ましい。反応時間は通常1分〜1時間、特に5分〜30分である。
【0032】
この(C)成分のウレイドシラン化合物は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、特に好ましくは0.2〜5質量部使用される。(C)成分の配合量が少なすぎると金属や樹脂に対する接着性が不十分となり、多すぎると接着性がそれ以上向上せず、コスト的に高くなる。
【0033】
[(D)成分]
(D)成分の硬化触媒は、本発明の組成物において(A)成分と(B)成分の縮合反応触媒として作用するものである。これらは同一であっても異種のものであってもよく、また、1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。(D)成分の具体例としては、スズジオクトエート、ジメチルスズジバーサテート、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジベンジルマレート、ジオクチルスズジラウレート、スズキレート等のスズ触媒、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示される。特にチタンキレート化合物が好ましく、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタンがより好ましい。
【0034】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜4質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部である。(D)成分の配合量が少なすぎると硬化性が悪くなり、多すぎると保存安定性が低下する。
【0035】
[その他の成分]
また、本発明の組成物には、上記成分以外に、一般的に知られている充填剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0036】
充填剤としては、粉砕シリカ、煙霧状シリカ、湿式シリカや炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナなどが挙げられる。上記充填剤は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを使用することもできる。
これらの充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して1〜500質量部、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは3〜250質量部、特に好ましくは5〜200質量部である。充填剤の配合量が少なすぎると配合効果が不十分となる場合があり、多すぎると作業性が低下する場合がある。
【0037】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(A)〜(D)成分及び必要に応じて各種添加剤を、湿気を遮断した状態で混合することにより得られる。得られた組成物は密閉容器中でそのまま保存し、使用時に空気中の水分に晒すことによりゴム状弾性体に硬化する、いわゆる1包装型室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物として用いることができる。なお、本発明組成物の硬化条件等は、この種の公知の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の場合と同様である。
【0038】
本発明の組成物は、接着性に優れることから、特に電気電子部品の接着・固定などに好適に使用される。また、中性のシランカップリング剤を使用していることから、保存安定性も優れると期待される。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を具体的に説明する実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0040】
[実施例1]
25℃における粘度が45,000mm2/sで、末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ3質量部、水酸化アルミニウム(真比重2.42、平均粒径10μm)220質量部を加えて混合機で攪拌した後、更にビニルトリメトキシシラン8質量部と下記式(16)で示されるウレイドシラン化合物を0.5質量部加えて攪拌し、ジイソプロピルチタンビス(エチルアセトアセテート)1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物1を得た。
【化15】

【0041】
[実施例2]
25℃における粘度が45,000mm2/sで、末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ3質量部、水酸化アルミニウム(真比重2.42、平均粒径10μm)220質量部を加えて混合機で攪拌した後、更にビニルトリメトキシシラン8質量部と下記式(17)で示されるウレイドシラン化合物を0.5質量部加えて攪拌し、ジイソプロピルチタンビス(エチルアセトアセテート)1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物2を得た。
【化16】

【0042】
[実施例3]
25℃における粘度が45,000mm2/sで、末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ3質量部、水酸化アルミニウム(真比重2.42、平均粒径10μm)220質量部を加えて混合機で攪拌した後、更にビニルトリメトキシシラン8質量部と下記式(18)で示されるウレイドシラン化合物を0.5質量部加えて攪拌し、ジイソプロピルチタンビス(エチルアセトアセテート)1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物3を得た。
【化17】

【0043】
[比較例1]
25℃における粘度が45,000mm2/sで、末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ3質量部、水酸化アルミニウム(真比重2.42、平均粒径10μm)220質量部を加えて混合機で攪拌した後、更にビニルトリメトキシシラン8質量部と下記式(19)で示される化合物を0.5質量部加えて攪拌し、ジイソプロピルチタンビス(エチルアセトアセテート)1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物4を得た。
【化18】

【0044】
[比較例2]
25℃における粘度が45,000mm2/sで、末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ3質量部、水酸化アルミニウム(真比重2.42、平均粒径10μm)220質量部を加えて混合機で攪拌した後、更にビニルトリメトキシシラン8質量部と下記式(20)で示される化合物を0.5質量部加えて攪拌し、ジイソプロピルチタンビス(エチルアセトアセテート)1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物5を得た。
【化19】

【0045】
[比較例3]
25℃における粘度が45,000mm2/sで、末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ3質量部、水酸化アルミニウム(真比重2.42、平均粒径10μm)220質量部を加えて混合機で攪拌した後、更にビニルトリメトキシシラン8質量部を加えて攪拌し、ジイソプロピルチタンビス(エチルアセトアセテート)1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物6を得た。
【0046】
[比較例4]
25℃における粘度が45,000mm2/sで、末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ3質量部、水酸化アルミニウム(真比重2.42、平均粒径10μm)220質量部を加えて混合機で攪拌した後、更にビニルトリメトキシシラン8質量部とウレイドプロピルトリエトキシシランを0.5質量部加えて攪拌し、ジイソプロピルチタンビス(エチルアセトアセテート)1質量部を加えて減圧下で完全に混合し、組成物7を得た。
【0047】
被着体としてAl,Cu,PBT,ABSを用意し、Al,Cuはトルエンで拭き、PBT,ABSはエタノールで拭いた後に、上記で調製した各組成物を10mm幅で、2mm厚になるように塗布し、23℃/50%RHにて7日硬化させて試験体を調製した。試験体の一部にカッターで切り込みを入れ、垂直方向に引き剥がしてその接着性を確認した。
また、保管試験として、上記で調製した各組成物を密閉容器に入れて、70℃にて7日放置したものについて、初期サンプルと色調及び硬化性を比較した。
これらの結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例4]
25℃における粘度が5,000mm2/sで、末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、乾式シリカ(エロジル200、日本アエロジル(株)製)15質量部を加えて減圧下で150℃、2時間加熱混合した後、3本ロールをかけた。仕上がったベースに、フェニルトリイソプロペノキシシラン8質量部、上記式(16)で示されるウレイドシラン化合物を1.5質量部、3−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加えて10分攪拌した後、更に減圧下にて20分攪拌し、組成物8を得た。
【0050】
[実施例5]
25℃における粘度が5,000mm2/sで、末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、乾式シリカ(エロジル200、日本アエロジル(株)製)15質量部を加えて減圧下で150℃、2時間加熱混合した後、3本ロールをかけた。仕上がったベースに、フェニルトリイソプロペノキシシラン8質量部、上記式(17)で示されるウレイドシラン化合物を1.5質量部、3−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加えて10分攪拌した後、更に減圧下にて20分攪拌し、組成物9を得た。
【0051】
[実施例6]
25℃における粘度が5,000mm2/sで、末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、乾式シリカ(エロジル200、日本アエロジル(株)製)15質量部を加えて減圧下で150℃、2時間加熱混合した後、3本ロールをかけた。仕上がったベースに、フェニルトリイソプロペノキシシラン8質量部、上記式(18)で示されるウレイドシラン化合物を1.5質量部、3−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加えて10分攪拌した後、更に減圧下にて20分攪拌し、組成物10を得た。
【0052】
[比較例5]
25℃における粘度が5,000mm2/sで、末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、乾式シリカ(エロジル200、日本アエロジル(株)製)15質量部を加えて減圧下で150℃、2時間加熱混合した後、3本ロールをかけた。仕上がったベースに、フェニルトリイソプロペノキシシラン8質量部、上記式(19)で示される化合物を1.5質量部、3−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加えて10分攪拌した後、更に減圧下にて20分攪拌し、組成物11を得た。
【0053】
[比較例6]
25℃における粘度が5,000mm2/sで、末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、乾式シリカ(エロジル200、日本アエロジル(株)製)15質量部を加えて減圧下で150℃、2時間加熱混合した後、3本ロールをかけた。仕上がったベースに、フェニルトリイソプロペノキシシラン8質量部、上記式(20)で示される化合物を1.5質量部、3−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加えて10分攪拌した後、更に減圧下にて20分攪拌し、組成物12を得た。
【0054】
[比較例7]
25℃における粘度が5,000mm2/sで、末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、乾式シリカ(エロジル200、日本アエロジル(株)製)15質量部を加えて減圧下で150℃、2時間加熱混合した後、3本ロールをかけた。仕上がったベースに、フェニルトリイソプロペノキシシラン8質量部、3−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加えて10分攪拌した後、更に減圧下にて20分攪拌し、組成物13を得た。
【0055】
[比較例8]
25℃における粘度が5,000mm2/sで、末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、乾式シリカ(エロジル200、日本アエロジル(株)製)15質量部を加えて減圧下で150℃、2時間加熱混合した後、3本ロールをかけた。仕上がったベースに、フェニルトリイソプロペノキシシラン8質量部、ウレイドプロピルトリエトキシシランを1.5質量部、3−テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン1質量部を加えて10分攪拌した後、更に減圧下にて20分攪拌し、組成物14を得た。
【0056】
被着体としてガラスを用意し、トルエンで拭き、上記で調製した各組成物を10mm幅で、2mm厚になるように塗布し、23℃/50%RHにて7日硬化させて試験体を調製した。試験体の一部にカッターで切り込みを入れ、垂直方向に引き剥がしてその接着性を確認した。
また、保管試験として、上記で調製した各組成物を密閉容器に入れて、70℃にて7日放置したものについて、初期サンプルと色調及び硬化性を比較した。
これらの結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
式(16)〜(18)で示されるような中性のウレイドシラン化合物は、式(19)で示されるような中性化合物と比較して接着性に優れていることが分かった。この現象は、ウレイドシラン化合物の窒素及び酸素が、被着体と有効な相互作用を示すためである。また、式(20)で示されるような塩基性化合物と比較して、保存安定性に優れていることが分かる。
【0059】
[参考例1]
式(16)で示されるウレイドシラン化合物の合成
攪拌子、滴下ロートを備えた200mLの二つ口ナスフラスコに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン24.7g(0.1mol)とジクロロメタン50mL(2M)を入れ、0℃に保った。この状態で、3−アミノプロピルトリメトキシシラン18.7g(0.105mol,1.05当量)を滴下反応させた。滴下中、発熱が確認され、滴下が終了すると発熱は止まり、系を室温に戻した。室温に戻した後、更に10分間攪拌し、溶媒であるジクロロメタンを留去し、上記式(16)で示される目的化合物を得た。
目的化合物は、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR解析により、純度、収率ともに99%であることを確認した(1H−NMR:図1、13C−NMR:図2、29Si−NMR:図3)。
【0060】
[参考例2]
式(17)で示されるウレイドシラン化合物の合成
攪拌子、滴下ロートを備えた200mLの二つ口ナスフラスコに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン24.7g(0.1mol)とジクロロメタン50mL(2M)を入れ、0℃に保った。この状態で、ビス[3−トリメトキシシリルプロピル]アミン(KBM−666P、信越化学工業(株)製)23.2g(0.105mol,1.05当量)を滴下反応させた。滴下中、発熱が確認され、滴下が終了すると発熱は止まり、系を室温に戻した。室温に戻した後、更に10分間攪拌し、溶媒であるジクロロメタンを留去し、上記式(17)で示される目的化合物を得た。
目的化合物は、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR解析により、純度、収率ともに99%であることを確認した(1H−NMR:図4、13C−NMR:図5、29Si−NMR:図6)。
【0061】
[参考例3]
式(18)で示されるウレイドシラン化合物の合成
参考例2と同様の合成方法により、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.1molに対して1,2−ジアミノシクロヘキサン0.05molを反応させ、上記式(18)で示される目的化合物を得た。
目的化合物は、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR解析により、純度、収率ともに99%であることを確認した(1H−NMR:図7、13C−NMR:図8、29Si−NMR:図9)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1は独立に炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、nは10以上の整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン及び/又は下記一般式(2)
【化2】


(式中、R2は独立に炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、Z1は独立に炭素数1〜4のアルコキシ基であり、Xは独立に酸素原子又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、pは10以上の整数であり、aは独立に0又は1の整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記一般式(3)
34-bSiZ2b (3)
(式中、R3は独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基から選択される基であり、Z2は独立に加水分解性基であり、bは3又は4である。)
で示されるシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1〜30質量部、
(C)ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に4個以上有し、下記一般式(4)
【化3】


(式中、R4は独立に炭素数1〜10の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、Z3は独立に加水分解性基であり、R5は水素原子、又は加水分解性基含有シリル基含有有機基であり、Yはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基である。cは独立に0,1又は2である。mは1〜6の整数である。)
で示されるウレイドシラン化合物:0.1〜20質量部、
(D)硬化触媒:0.01〜5質量部
を含有してなることを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(B)成分の加水分解性基が、ケトオキシム基、アルコキシル基及びイソプロペノキシ基から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(C)成分の式(4)中のR5が水素原子又は下記一般式(5)
【化4】


(式中、R4、Z3、c、Yは上記の通りである。)
で示される基であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
Yが下記一般式(6)又は(7)
【化5】


(式中、R6、R7は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基又はこれらが組み合わされた基であり、mは上記の通りである。)
で示される基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
(C)成分の式(4)中のZ3がメトキシ基又はエトキシ基であり、cが0又は1であり、mが1〜3の整数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−25876(P2012−25876A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167044(P2010−167044)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】