説明

害虫防除装置

【課題】薬剤含浸体の交換の容易性を確保しながら、正面から見た場合の装飾性を損なうことのない害虫防除装置を提供する。
【解決手段】前面ケース10と、後面ケース20と、を有し、前面ケース10の後面と後面ケース20の前面とが合体されることで、前面ケースとの間に薬剤含浸体の収容空間が画成され、前面ケースの正面に装飾部12が設けられ、前面ケースと後面ケースの合わせ部30の一部に薬剤含浸体を抜き差しする開口部32が設けられ、後面ケース20側の開口部32に臨む位置に、薬剤含浸体の交換時に薬剤含浸体をつまむための交換用凹部25が設けられて、装置本体が前面ケース10の正面から見られた際に交換用凹部25が隠れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫を防除するための薬剤含浸体を収容する害虫防除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揮散方式の害虫防除装置としては、薬剤を含浸させた担体を電気ヒータで加熱して薬剤を揮散させるものや、同様の担体にファンによる風を当てて薬剤を揮散させるもの等があった(例えば、特許文献1、2参照)。また、近年では、加熱や風力によらずに揮散する自然揮散方式の害虫防除剤を利用して害虫防除を行うものが開発されている。
【0003】
これらの害虫防除剤は、一般的にメッシュ構造又は網目構造状の通気性の高い担体に含浸させて使用されるが、そのままの状態で薬剤含浸体を生活環境下に置いたり吊したりして使用すると、薬剤が使用者の手等に直接接触するおそれがある。そのため、通常は、専用のケース(容器)に入れて使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−6273号公報
【特許文献2】特開2006−325585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また近年、この種の害虫防除装置としては、生活用品としてのデザイン性の高いものが要求されている。しかし、実用上は薬剤含浸体の交換を考慮しなくてはならないため、交換の容易性と装飾性の両方を満足させることが問題となっている。例えば、ケースに薬剤含浸体の交換用の開口部を設けない場合は、装飾性については問題ないが、薬剤含浸体を交換する際にケースを開けなくてはならず、交換時の取り扱い性が悪くなっていた。
【0006】
一方、薬剤含浸体の交換用の開口部を設ける場合は、ケースを開けなくとも、その開口部を通して薬剤含浸体の交換ができる。しかしながら、薬剤含浸体が完全に隠れてしまうと取り出しにくいため、その開口部から薬剤含浸体の一部やつまみ部が出るようにする必要があり、そうすると、それらが正面から見えてしまうことにより、装飾性を損なってしまう。
【0007】
このように従来のものでは、交換性を考慮すれば装飾性が損なわれ、装飾性を考慮すれば交換性が損なわれるという問題があった。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬剤含浸体の交換の容易性を確保しながら、装置本体を正面から見た場合の装飾性を損なうことのない害虫防除装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 前面ケースと、後面ケースと、を有し、前記前面ケースの後面と前記後面ケースの前面とが合体されることで、前記前面ケースと前記後面ケースとの間に薬剤含浸体の収容空間が画成される害虫防除装置において、
前記前面ケースの正面に、所定のデザインを表現するための装飾部が設けられ、
前記前面ケースと前記後面ケースとの合わせ部の一部に渡って切欠部がそれぞれ形成されることにより、前記収容空間に対して前記薬剤含浸体を抜き差しするための開口部が設けれ、そして
前記後面ケース側の前記開口部に臨む位置に、前記薬剤含浸体の交換時に該薬剤含浸体をつまむための交換用凹部が設けられて、装置本体が前記前面ケースの正面から見られた際に当該交換用凹部が隠れる
ことを特徴とする害虫防除装置。
(2) 前記デザインの少なくとも一部が、薬剤含浸体に含浸された薬剤成分を揮散させるための揮散口を兼ねている
ことを特徴とする上記(1)の害虫防除装置。
(3) 前記前面ケース及び後面ケースの少なくともいずれか一方の下部に、前面ケース及び後面ケースを所定の設置面に対して立設するための脚部が設けられている
ことを特徴とする上記(1)又は(2)の害虫防除装置。
(4) 前記デザインは四つ足動物の頭部側正面姿であり、そして
前記脚部が、その四つ足動物の4本の足として表現されるように設けられる
ことを特徴とする上記(3)の害虫防除装置。
(5) 前記後面ケースの中央面部に、面状に分布させた多数の孔または溝の群からなる揮散口が設けられている
ことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つの害虫防除装置。
【0010】
上記(1)の構成によれば、装置本体が正面から見られた際の装飾性を損なわずに、薬剤含浸体を交換する際の使い勝手をよくすることができる。即ち、薬剤含浸体を交換する場合は、後方より交換用凹部に指を挿入し、薬剤含浸体のつまみ部に指を掛けて、そのまま開口部から薬剤含浸体を引き出せばよく、いちいちケースを開く必要がなくて使い勝手がよく、優れた交換性を発揮できる。また、薬剤含浸体の交換用凹部は、前面ケースで隠れる位置にあり、薬剤含浸体のつまみ部も、その交換用凹部の位置に合わせて、正面から見えない位置に形成すればよいので、前面ケースを正面から見た際の装飾性を損ねることもない。
また、上記(2)の構成によれば、装飾部のデザインの少なくとも一部が揮散口を兼ねるので、別に揮散口を設ける必要がなく、装飾性を損なうこともない。
さらに、上記(3)の構成によれば、脚部を用いて前面ケース及び後面ケースを、装置本体が載置される所定の設置面に立設することができて、例えば机や床の上に置いて通気性のよく且つ安定的な姿勢で使用することができる。
また、上記(4)の構成によれば、デザインが四つ足動物の頭部側正面姿であり、そして前面ケース及び後面を立設するための脚部が、装飾部のデザインの一部となるので、立体的な造形を表現することができて、さらに装飾性を高めることができる。
さらに、上記(5)の構成によれば、後面ケースの中央面部に、面状に分布させた多数の孔または溝の群からなる揮散口を設けたので、ケース後面の装飾性を損なわずに自然揮散を促すことができる。
【0011】
ここで、薬剤含浸体に含浸させる薬剤、そして薬剤含浸体の一部を構成し、薬剤が含浸される担体の例について説明する。
薬剤としては、ピレスロイド系化合物を使用する。
【0012】
使用可能なピレスロイド系化合物としては、自然蒸散が可能な化合物であればよく、実施可能である限り何ら制限は受けない。特に20℃で蒸気圧が10-3Pa(約10-5mmHg)オーダー以上のピレスロイド系化合物が好ましく挙げられる。
【0013】
このようなピレスロイド系化合物を例示すると、以下の通りである。
・2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート[一般名メトフルトリン:住友化学社製の商品名エミネンス(以下、「メトフルトリン」という)]
・2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート[一般名プロフルトリン:住友化学社製の商品名フェアリテール(以下、「プロフルトリン」という)]
・2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(+)1R−トランス−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)−シクロプロパンカルボキシレート[一般名トランスフルトリン(以下、「トランスフルトリン」という)]
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル dl−シス/トランス−3−(2,2−シグロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート[一般名テラレスリン(以下、「テラレスリン」という)]
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d−シス/トランス−クリサンテマート[一般名エムペンスリン(以下、「エムペンスリン」という)]
・5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート[一般名d−T80−フラメトリン:住友化学社製の商品名ピナミンDフォルテ(以下、「フラメトリン」という)]
・(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−イソインドリル)メチルdl−シス/トランス−クリサンテマート[一般名d−T80−フタルスリン:住友化学社製の商品名ネオピナミンフォルテ(以下、「フタルスリン」という)]
・5−プロパギル−2−フリルメチル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート[一般名テフラメトリン(以下、「テフラメトリン」という)]
・2,4−ジメチルベンジル dl−シス/トランス−2,2−ジメチル−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート[一般名ジメトリン(以下、「ジメトリン」という)]
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル dl−シス/トランス−クリサンテマート[一般名アレスリン:商品名ピナミン(以下、「アレスリン」という)]
・(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテニル(+)−シス/トランス−クリサンテマート[一般名d・d−T80−プラレトリン:商品名エトック(以下、「プラレトリン」という)]
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名dl・d−T80−アレスリン:商品名ピナミンフォルテ)
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(商品名バイオアレスリン)
・d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(商品名エキスリン)
・(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名レストメリン:商品名クリスロンフォルテ)
・3−フェノキシベンジル−dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート(一般名ペルメトリン:商品名エクシミン)
・3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フェノトリン:商品名スミスリン)
・α−シアノ−3−フェノキシベンジル 2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート(一般名フェンバレレート)
・2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート(一般名テフルスリン)
・(±)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル (+)−シス/トランス−クリサンテマート(一般名d−T80−シフェノトリン:商品名ゴキラート)
・α−シアノ−3−フェノキシベンジル シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート(一般名フェンプロパトリン)
・2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル−dl−シス/トランス 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート(一般名フェンフルスリン)
等が挙げられる。
【0014】
これらの化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用される。また、これらの化合物には、光学異性体および立体異性体が存在するが、本発明においてはこれらの有効な各異性体、さらに類緑化合物やその誘導体を単独または混合して使用することもできる。
【0015】
本発明では、これらの化合物のうちメトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、テラレスリン、エムペンスリン、フラメトリン、テフラメトリンおよびジメトリンが好ましく、特に、メトフルトリンとプロフルトリンとを併用して使用するのが好ましい。
メトフルトリンは、その誘導体、その類縁体およびその異性体であってもよく、これらのうち少なくとも1種類以上を有効成分として使用することができる。
【0016】
本発明に係る薬剤には、前記ピレスロイド系化合物の自然蒸散を妨げない範囲内で、既存の天然および合成忌避剤を併用することができる。例えばジメチルフタレート、2,3,4,5−ビス−(Δ2−ブチレン)−テトラヒドロフラン、2,3,4,5−ビス−(Δ2−ブチレン)−テトラヒドロフルフリルアルコール、N,N−ジメチル−m−トルアミド、カプリン酸ジエチルアミド、2,3,4,5−ビス−(Δ2−ブチレン)−テトラヒドロフルフラン、ジ−m−プロピル−イソシンコロネート、第2級ブチルスチリルケトン、ノニルスチリルケトン、N−プロピルアセトアニリド、2−エチル−1,3−ヘキサジオール、p−メチルジエチルベンゾアミド、MGK−326,ジブチルフタレート、テトラヒドロチオフェン、β−ナフトール、ジアリルジスルフィド、テトラメチルチウラムジサルファイド、グアニジン、タフタレンクレゾール、シクロヘキシミド、シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルスルフェニルジチオカーバメイト、O,O−ジメチル−S−2−イソプロピルチオエチルジチオホスフェート、γ−クロラーゼ、4−(メチルチオ)−3,5−キシリル−N−メチルカーバメイト、アニス油、シソ油、ヒバ油、ユーカリプトール、ゲラニオール、シトロネラール、チモール、イソオイゲノール、α−ピネン等が挙げられる。
これらの化合物は、有効成分として薬剤の総量の1/100〜300倍重量%、好ましくは1〜10倍重量%を含有することができる。
【0017】
前述したピレスロイド系化合物と忌避剤との併用は、使用場所や期間、さらには選択されたピレスロイド系化合物によって、最適となる条件を選択して用いればよい。
【0018】
本発明に係る薬剤には、前記ピレスロイド系化合物の自然蒸散を妨げない範囲内で、殺虫化合物を併用することができる。併用できる殺虫化合物としては、例えば、特開2003−34682号公報、特開2003−160568号公報、特開2003−267957号公報、特開2004−175697号公報、特開2004−307465号公報、特開2005−350353号公報、特開2000−297090号公報、特開2001−114737号公報、特開2003−26647号公報、特開2004−99592号公報、特開2004−99593号公報、特開2004−99569号公報、特開2004−99597号公報、特開2004−143148号公報、特開2005−225873号公報、特開2005−225875号公報、特開2005−225876号公報、特開2002−114783号公報、特開2003−155279号公報、特開2004−123601号公報、特開2005−15468号公報、特開2000−38385号公報、特開2002−187881号公報、特開2003−146971号公報、特開2005−179321号公報、特開2002−338557号公報、特開2003−277372号公報、特開2004−131438号公報、特開2004−182722号公報、特開2005−139171号公報、特開2002−363174号公報、特開2000−212169号公報、特開2000−239262号公報、特開2002−356460号公報、特開2003−81942号公報、特開2003−221384号公報、特開2004−307471号公報、特開2004−43455号公報、特開2003−155204号公報等に開示されているものなどが挙げられる。
【0019】
さらに、本発明に係る薬剤には、前記ピレスロイド系化合物の自然蒸散を妨げない範囲内で、薬剤に通常用いられる各種の添加剤、例えば効力増強剤、消臭剤および防臭剤、殺菌剤、香料などを添加してもよい。前記効力増強剤としては、例えばピペロニルブトキサイド、N−プロピルイソゾーム、MGK−264、サイネピリン222,リーセン384、IBTA、IBTE、S−421等を、消臭剤および防臭剤としては、例えばラウリル酸メタクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチル酸アセフェート、パラメチルアセトフェノンベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、アミルシンナミックアルデヒド、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ネオリン、サフロール、セダウッド油、セダ菜油、シトロネラ油、ラバンテン油、ペティグレイン油、レモングラス油、緑茶エキス、茶抽出物、ポリフェノール等を、殺菌剤としては、例えば2,4,4’−トリクロロ−2’−ハイドロキシジフェニルエーテル、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチル{2−〔2−(p−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノキシ)エトキシ〕エチル}アンモニウムクロライド、4−イソプロピルトロポロン、N,N−ジメチル−N−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルフォンアミド、2−(4’−チアゾリル)ベンズイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタールイミド、6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキシン、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)マンガン、亜鉛、マンネブ錯化合物、ビス(ジメチルジチオカルバミド酸)エチレンビス(ジチオカルバミド酸)二亜鉛、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィルド、クロトン酸、2,6−ジニトロ−4−オクチルフェニル反応異性体混合物、N−トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド、2,3−ジシアノ−1,4−ジチアアントラキノン、2,4−ジクロロ−6−(o−クロロアニリノ)−S−トリアジノン、S−n−ブチルS’−p−ter−ブチルベンジル N−3−ピリジルジチオカルボンイミデート、N−(3’,5’−ジクロロフェニル)−1,2−ジメチルクロロプロパン、ジカルボキシイミド、ビス(クロロフェニル)トリクロロエタノール、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカ−ボネート、テトラクロロイソフタロニトリル、メチル−1−(ブチルカルバモイル)−2−ベンゾイミダゾールカーバメイト、ストレプトマイシン塩酸塩、カスガマイシン塩酸塩、シクロヘキシミド等を各々挙げることができる。
前述した効力増強剤、消臭剤および防臭剤、殺菌剤等の含有量は薬剤の総量に対して0.05〜20.0重量%であるのが好ましい。
【0020】
香料としては、例えば動物性香料、植物性香料、合成または抽出成分からなる人工香料等があり、動物性香料としては、例えばじゃ香、霊猫香、竜延香等を、植物性香料としては、例えばアビエス油、アジョクン油、アーモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、べルガモット油、バーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コンニャク油、コリアンダー油、キュベパ油、クミン油、ジル油、樟脳、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ポップ油、ジュニパーベリー油、ローレルリーフ油、レモン油、レモングラス油、ロページ油、メース油、ナツメグ油、アンダリン油、タンゼリン油、カラシ油、ハッカ油、燈花油、玉ねぎ油、こしょう油、オレンジ油、セイジ油、スターアニス油、テレビン油、ウォームウッド油、バニラ豆エキストラクト等が挙げられる。
【0021】
また人工香料としては、例えばピネン、リモネン等の炭化水素類、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェニルエチルアルコール等のアルコール類、アネトール、オイゲノール等のフェノール類、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、ノナジエナール、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘリオトロビン、ワニリン等のアルデヒド類、メチルアミルケトン、メチルノニルケトン、ジアセチル、メントン、樟脳、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、イオノン等のケトン類、アミルブチロラクトン、メチルフェニルグリシド酸エチル、γ−ノニルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトンまたはオキシド類、メチルフォーメート、イソプロピルフォーメート、エチルアセテート、オクチルアセテート、メチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソプロピル、イソ吉草酸グラニル、カプロン酸アリル、ヘプチル酸ブチル、カプリル酸オクチル、ヘプチンカルボン酸メチル、ペラハゴン酸エチル、オクチンカルボン酸メチル、カプリン酸イソアシル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸ブチル、桂皮酸メチル、桂皮酸シンナミル、サリチル酸メチル、アニス酸エチル、アンスラニル酸メチル、エチルピルベート、エチルα−ブチルブチレート等のエステル類が挙げられる。
【0022】
前述したこれらの香料を添加することにより、有効成分や溶媒、その他の添加剤による臭気をマスキングし、好みの香りを付与することができる。これらの香料は1種類もしくは2種類以上を調合した調合香料であってもよい。
これらの香料の添加量は、薬剤の総量に対して0.01〜10.0重量%であるのが好ましい。
【0023】
また香料とともにバッチユリ油等の保留剤、オイゲノール等の変調剤、その他の香料分野で使用されている種々の成分を併用してもよい。さらに有効成分や各種の添加剤の安定性を改善するために、例えば3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−4−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル−チオ−ジ−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−4−エチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス〔メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)〕メタン、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジヒドロキノリンポリマー、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,3−ジヒドロキノリン、2−t−ブチル−4−メトキシフェニール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、α−トコフェロール、アスコルビン酸、エリソルビン酸等の化合物を含有させることができる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することもできる。その含有量は薬剤の総量に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0024】
そして、前述したような薬剤が含浸される担体としては、効率よく自然蒸散させるうえで、薄型で前記化合物の自然蒸散物がこもらないような構造のものを使用する。このような担体は、その容積が小さくても蒸散性に優れるので、ピレスロイド系化合物が効率よく自然蒸散し、その結果、優れた害虫防除効果および蒸散効果を発揮すると共に、これらの効果を維持しながら、担体を小型化することができる。
【0025】
このような担体としては、例えば紙、糸(撚り糸等)、不織布、木材、パルプ、無機高分子物質、無機多孔質物質(ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等)、有機高分子物質(セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等)、昇華性物質(アダマンタン、シクロドデカン、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳等)、樹脂類などが挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することができる。また、自重の数倍以上を保持できる担体、例えば高吸液性ポリマー、綿、海綿体、連続気泡の発泡体などを用い、より小型化をしてもよい。
【0026】
特に、本発明では、前記化合物の自然蒸散物がこもらないような構造を有する上で、例えばネット、網(メッシュ)、レース地のように多数の連続的ないし断続的な空隙を有するような担体を使用するのが好ましい。
ネット状の担体とする場合、前記化合物を保持する含浸面積が変わらないようにする(一定にする)ために、例えば、ネットを構成する縦糸と横糸(真直ぐであってもよいし、ジグザグになっていてもよい)のいずれか一方のみに前記化合物を含浸させ、この化合物を含浸する方の糸が床と平行になるようにして使用することが望ましい。前記化合物を含浸した糸が鉛直になる方向で使用すると、薬剤(前記化合物)が重力によって下に移動する(タレが生じる)傾向があり、その結果、含浸面積が小さくなる恐れがあるからである。
【0027】
また、ネット状の担体とする場合に前記化合物を保持する含浸面積が変わらないようにするためには、横糸とする糸には前記化合物を含浸させることのできる素材を用い、縦糸とする糸には非含浸性の素材を用いるようにし、前記化合物の含浸は横糸になる糸にのみ施すことが好ましい。このような形態であると、横糸に含浸された薬剤が一定幅ごとに縦糸で固定されるので、偏りが生じにくくなるからである。
なお、このとき、縦糸となる糸には、後述する薬剤塗膜を形成してもよいし、形成しなくてもよい。
【0028】
さらに、ネット状の担体の場合に薬剤保持面積が変わらないようにするためには、縦糸も横糸も非含浸性の素材で構成された糸を用い、縦糸および/または横糸に薬剤塗膜を形成するようにしてもよい。薬剤塗膜は、例えば、薬剤を含有した樹脂を塗布、乾燥するなどして形成することができ、当該薬剤の徐放性を有するよう形成されることが望ましい。
ネット状担体の形状は、特に制限されるものではなく、人形や動物の形状など、意匠性に富んだ形状にすることができる。
【0029】
また、薄型で前記化合物の自然蒸散物がこもらないような構造を有する限り、担体の形態、形状や大きさは任意であり、屋内、屋外、車内、テント、物置小屋などで使用するために各種の形態、形状(例えば立体形状、板状形状、シート形状)で使用することができる。このような形態、形状としては、例えば担体を紙やレース地部分に含浸させた団扇もしくは扇子、さらに不織布で作られる衣服(シャツ、パンツ、スカート、ジャケット、作業着など)、帽子、日傘、手袋、靴下、リストバンド、浴衣、アウトドア用品(テント、パーカー、シュラフなど)、腕章、腕抜き、ペットウェア、蚊帳、ハンモック、筒状、スノコ状、格子状、繊維マット、網状などが挙げられる。
【0030】
担体に前述したような薬剤(前記化合物)を保持させる方法として、例えば滴下塗布、浸漬塗布、スプレー塗布、含浸、担体への練り込み等の方法が挙げられる。薬剤の保持量は、害虫の防除に有効な量を持続的に放出できる量であり、具体的には担体の単位面積当りの薬剤量が0.1〜10mg/cm2程度になる量である。
【0031】
なお、担体に薬剤を保持させる際には、薬剤を有機溶剤などの溶剤に溶解させるのが、効率よく担体に保持させる上で好ましい。前記溶剤としては、例えば水、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ケロシン、パラフィン、石油ベンジン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類が挙げられる。
【0032】
さらにエチレングリコール、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノヘキシエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、エチレンクロロヒドリン、1,3−オクチレングリコール、グリセリン、グリセリングリシジルエーテル、グリセリン1,3−ジアセタート、グリセリンジアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリントリアセタート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノアセタート、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールクロロヒドリン、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールビスアリルカルボナート、ジエチルレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサンジオール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリグリコールジクロリド、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリメチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレンカルボナート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリールモノメチルエーテル、プロピレンクロロヒドリン、ヘキシレングリコール、ペンタエリスリトール、1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン誘導体、ポリプロピレングリコール等の高級アルコール類、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類、非イオン型ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系化合物、非イオン型ポリオキシアルキレンフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、尿素等の化合物やその他の親油性および親水性の物質、両親媒性の物質を含有させることにより溶解性を向上させることができる。
これらの含有量は、溶媒や上記の添加剤の種類によって任意に調整することができるが、通常は薬剤の総量に対して50.0〜99.9重量%の範囲である。
【0033】
薬剤を可溶化ないし乳化するために可溶化剤または乳化剤を用いることができる。可溶化剤または乳化剤としては、例えばソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10モルから40モル)硬化ヒマシ油、トリポリオキシエチレンアルキルエーテル、1,3−ブチレングリコール、デカグリセリンモノオレエート、ジオレイン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(16モルから20モル)ステアリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、その他にもステアリルアルコール、ポリビニルピロリドン、ラノリン脂肪酸など各種界面活性剤が挙げられ、これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
このようにして所定量の薬剤が含浸された担体は、そのまま室内等に設置して、薬剤を自然蒸散させる。これにより、薬剤が効率よく担体から自然蒸散し、高い害虫防除効果および蒸散効果を発揮する。単位時間当たりの蒸散量は0.1〜5mg/時であるのが適当である。
【0035】
本発明にかかる薬剤は、各種の衛生害虫、農業害虫、不快害虫による被害を防止ないし抑制するために使用することができる。
したがって、本発明の害虫防除装置が適用される飛翔害虫としては、例えばシナハマダラカ、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、トウゴウヤブカ等の蚊;サシバエ等のハエ;シクロアブ、ウシアブ、メクラアブ、ゴマフアブ等のアブ;クロオオブユ、キアシオオブユ、アオキツメトゲブユ等のブユ;トクナガクロズカカ、オオシマヌカカ、ニワトリヌカカ等のヌカカ;キイロスズメバチ、セグロアシナガバチ、ミツバチ等のハチ;ハネアリ等のアリ;その他のランデイング行動を有する害虫が挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、薬剤含浸体の交換の容易性を確保しながら、装置本体を正面から見た場合の装飾性を損なうことのない害虫防除装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は実施形態の害虫防除装置の構成図であり、(a)は後方から見た斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図であり、図2は薬剤含浸体が害虫防除装置から引き抜かれたときを示す後方斜視図であり、図3は害虫防除装置に薬剤含浸体がセットされたときを示す正面図であり、図4の(a)〜(d)は後面ケースの揮散口の他の例を示す図である。
【0038】
図1に示すように、本発明に係る一実施形態の害虫防除装置は、共に樹脂等の材料で成形された、前面ケース10と後面ケース20とから主に構成される。
【0039】
前面ケース10と後面ケース20とは、共に円筒状の周壁部11、21に曲面状の面板を連ねた略お椀形状で成型されたものであり、後面ケース20は、前面ケース10の後面に合体されることで、前面ケース10と後面ケース20の間に、後述する薬剤含浸体40(図2参照)の収容空間が画成される。即ち、この収容空間に薬剤含浸体40がセットされることで、害虫防除装置が使用されるようになっている(図3参照)。
【0040】
前面ケース10の正面には、所定のデザインが表現されるための装飾部12が設けられ、一方、後面ケース20の中央面部22には、面状に分布させた多数の孔や溝の群からなる揮散口23が設けられている。
本実施形態の場合には、後面ケース20の中央面部22に、木の葉形の複数の孔が放射状に配列されることで揮散口23が構成されている。
【0041】
前面ケース10と後面ケース20とは、円筒状の周壁部11、21が嵌合されることで合体されており、前面ケース10と後面ケース20との合わせ部30の一部に渡って、即ちこの合わせ部30の装置本体の載置時に上側となる部分に、互いに対向配置されるように切欠部19、29が前面ケース10と後面ケース20とにそれぞれ形成されている。
したがって、この切欠部19、29により、装置本体内部の収容空間に対して薬剤含浸体40を抜き差しするためのスリット状の開口部32が、前面ケース10と後面ケース20との合体時において、その境界に設けられることになる。
【0042】
また、後面ケース20の上部で、且つ当該後面ケース20側の開口部32に臨む位置に薬剤含浸体40の交換時に該薬剤含浸体40をつまむための交換用凹部25が設けられている。このため、装置本体が前面ケース10の正面から見られた際に当該交換用凹部25が隠れることになる。
【0043】
また、前面ケース10及び後面ケース20の下部には、装置本体が所定の設置面、例えば床面などに載置された時に、前面ケース10及び後面ケース20を垂直に立設するための脚部18、28がそれぞれ設けられている。
【0044】
前面ケース10の装飾部12のデザインとしては、四つ足動物である「豚」の頭部側正面姿が形成され、そして、その豚の4本の足として表現され得るように、前記脚部18、28が形作られている。また、装飾部12に形成された豚の頭部のデザインの一部である鼻の穴13と目14は、貫通孔としてくり抜かれており、そのくり抜かれた鼻の穴13と目14が、薬剤含浸体40に含浸された薬剤の揮散口を兼ねている。
【0045】
また、前面ケース10の上部には、装飾部12のデザインの一部をなす2つの耳16が突設され、両耳16の間には、ケースを吊り下げるための孔付きの吊り下げ片15が突設されている。
【0046】
そして、図2に示すように、薬剤含浸体40は、円環状の表枠体41aとこの表枠体41aの縁部同士を格子状に連結する桟41bとを有する表蓋体41と、この表蓋体41と同様に円環状の裏枠体(不図示)とこの裏枠体の縁部同士を格子状に連結する桟(不図示)とを有する裏蓋体42と、前述した薬剤を保持するとともにこの表蓋体41とこの裏蓋体42とに挟持され且つ両表面に蚊取り線香を表現するための縞模様43aが施されるネット状の担体43と、前記収納空間に対し薬剤含浸体40本体を抜き差しするために裏蓋体42の端部に設けられるつまみ部44と、を有して構成される。
【0047】
以上、このように構成された本実施形態に係る害虫防除装置によれば、装置本体が正面から見られた際の装飾性を損なわずに、薬剤含浸体40を交換する際の使い勝手をよくすることができる。
即ち、薬剤含浸体40を交換する場合は、後方より交換用凹部25に指を挿入し、薬剤含浸体40のつまみ部44に指を掛けて、そのまま開口部32から薬剤含浸体40を引き出せばよく、いちいちケースを開く必要がなく、使い勝手がよい。また、薬剤含浸体40のつまみ部44又は交換用凹部25は前面ケース10で隠れるため、それらが、前面ケース10を正面から見た際の装飾性を損ねることもない。
【0048】
また、本実施形態によれば、装飾部12のデザインの少なくとも一部(鼻の穴13と目14)が揮散口を兼ねているので、別に揮散口を設ける必要がなく、装飾性を損なうこともない。さらに、図3に示すように、本実施形態によれば、薬剤含浸体40が収納空間にセットされたときに、担体43の両表面に施された蚊取り線香の縞模様43aが鼻の穴13と目14を介して視認されるので、装飾性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、脚部18、28を用いて前面ケース10及び後面ケース20を装置本体が載置される所定の設置面に立設することができるので、例えば机の上や床の上に置いて通気性よく且つ安定的な姿勢で使用することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、デザインが四つ足動物である「豚」の頭部側正面姿であり、そしてケース10、20を立設するための脚部18、28が、装飾部12のデザインの一部(豚の4本の足)を表現するように設けられているので、立体的な造形を表現することができて、さらに装飾性を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、後面ケース20の中央面部22に、面状に分布させた多数の孔の群からなる揮散口23を設けているので、自然揮散を促すことができる。
【0052】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、装飾部12のデザインとして「豚」を用いているが、牛、犬、猫などのデザインを使用してもよいし、マンガやアニメ等のキャラクタを使用してもよい。
【0054】
そして、上記実施形態では、木の葉形の孔を放射状に配列することにより後面ケース20の揮散口23を構成したが、図4(a)〜(d)に例を示すように、途中で途切れた環状溝や螺旋溝の群により揮散口23a、23b、23cを構成してもよいし、放射状に溝の群を形成することで、揮散口23dを構成してもよく、揮散口の形状は限定されない。
【実施例】
【0055】
ここで、本発明に係る、薬剤含浸体に含浸される薬剤、特にメトフルトリン及びプロフルトリンの合剤処方の飛翔害虫に対する飛来阻止効果を確認するための試験を行った。この試験内容について説明する。
【0056】
下記表1に示す処方に従って薬剤(350mg)を作製し、薬剤含浸体の担体(100cm)に含浸させ、下記試験に供した。
【0057】
【表1】

【0058】
[試験内容]
(試験場所):赤穂市内緑地帯
(試験時間帯):17時〜翌朝8時
(試験・評価方法)
照明装置を空中に照射して飛翔害虫を誘引し(ライトトラップ)、前述の所定場所・所定時間帯で飛翔害虫の捕獲を2回行った。このとき、一方の区画には担体に薬剤が含浸された薬剤含浸体を略3m×3mの四隅に約150cmの高さの位置に配置し(この区画を薬剤区という)、またこの薬剤区から25m離れた位置の他方の区画には薬剤含浸体を配置せず(この区画を無処理区という)試験を行った。なお、2回目の試験では、1回目の試験の薬剤区及び無処理区の区画をそれぞれ入れ替えて行った。
このようにして行った試験により捕獲された害虫の捕獲数および薬剤区における飛来阻止率を表2に示す。
【0059】
なお、飛来阻止率(%)=(無処理区の捕獲数平均値−薬剤区の捕獲数平均値)/無処理区の捕獲数平均値×100として、飛来阻止率(%)を求めた。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の試験結果から、メトフルトリンとプロフルトリンとの合剤処方で広いスペクトルが認められ、様々な飛来害虫の飛来を阻止できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態の害虫防除装置の構成図であり、(a)は後方から見た斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
【図2】薬剤含浸体が害虫防除装置から引き抜かれたときを示す後方斜視図である。
【図3】害虫防除装置に薬剤含浸体がセットされたときを示す正面図である。
【図4】(a)〜(d)は後面ケースの揮散口の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 前面ケース
12 装飾部
13 鼻の穴(揮散口)
14 目(揮散口)
18 脚部
19 切欠部
20 後面ケース
23 揮散口
25 交換用凹部
28 脚部
29 切欠部
30 合わせ部
32 開口部
40 薬剤含浸体
43 担体
44 つまみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面ケースと、後面ケースと、を有し、前記前面ケースの後面と前記後面ケースの前面とが合体されることで、前記前面ケースと前記後面ケースとの間に薬剤含浸体の収容空間が画成される害虫防除装置において、
前記前面ケースの正面に、所定のデザインを表現するための装飾部が設けられ、
前記前面ケースと前記後面ケースとの合わせ部の一部に渡って切欠部がそれぞれ形成されることにより、前記収容空間に対して前記薬剤含浸体を抜き差しするための開口部が設けれ、そして
前記後面ケース側の前記開口部に臨む位置に、前記薬剤含浸体の交換時に該薬剤含浸体をつまむための交換用凹部が設けられて、装置本体が前記前面ケースの正面から見られた際に当該交換用凹部が隠れる
ことを特徴とする害虫防除装置。
【請求項2】
前記デザインの少なくとも一部が、薬剤含浸体に含浸された薬剤成分を揮散させるための揮散口を兼ねている
ことを特徴とする請求項1に記載の害虫防除装置。
【請求項3】
前記前面ケース及び後面ケースの少なくともいずれか一方の下部に、前面ケース及び後面ケースを所定の設置面に対して立設するための脚部が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫防除装置。
【請求項4】
前記デザインは四つ足動物の頭部側正面姿であり、そして
前記脚部が、その四つ足動物の4本の足として表現されるように設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の害虫防除装置。
【請求項5】
前記後面ケースの中央面部に、面状に分布させた多数の孔または溝の群からなる揮散口が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の害虫防除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−131243(P2009−131243A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217885(P2008−217885)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】