説明

家具の引き出し

【課題】引き出し本体を引き出さずに小物部材の出し入れができ、小物部材の出し入れに際して引き出し全体を引き出す必要がない引き出しを提供する。
【解決手段】キッチン本体5に対して出し入れ自在となる引き出し本体9の前板8に、背面側の収納部12と前面側の収納部10、11を設け、前記前板8の前面側に、背面側の収納部12と対応する位置に配置された固定面板16と、前面側の収納部10、11を前側に開閉できるように取付けられた扉13、14を設け、前記固定面板16の前面と閉位置にある扉13、14の前面を同一面状に並ぶようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家具の引き出し、更に詳しくは、引き出し本体における前板に複数の収納部を設け、引き出し本体を引き出さずに小物部材の出し入れができ、かつ、引き出し本体の収納空間におけるデッドスペースを小物部材の収納に有効利用することができる引き出しに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、システムキッチンのような厨房家具には、厨房用器具や調理器具等を収納するため、家具本体に対して前面側で出し入れ自在となる引き出しが設けられている。
【0003】
このような引き出しは、置くことによって収納する物の収納に比較的適していると共に、奥の物や大きな物を取出すのに大変便利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、厨房家具の引き出しには、包丁やレードル等の小型調理器具の収納も必要になるが、このような小型調理器具の出し入れに際して引き出し全体を引き出すのは面倒であり、また、引き出しの収納形態は、立てたり吊るしたりする収納には適さないため、前記したような小型調理器具の収納が困難である。
【0005】
更に、引き出しの収納空間において、前板の後ろなどは前から見えないため、どうしてもデッドスペースになりやすく、引き出しの収納空間全体を有効に利用できていないのが実情である。
【0006】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決するため、引き出し本体を引き出さずに小物部材の出し入れができ、小物部材の出し入れに際して引き出し全体を引き出す必要がないと共に、引き出し本体の収納空間における前板後部のデッドスペースを小物部材の収納に有効利用することができ、また、小物部材を立てたり吊るしたりする収納が可能な引き出しを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の発明は、家具本体に対して出し入れ自在となる引き出し本体の前板に、背面側の収納部と前面側の収納部を設け、前記前面側の収納部を前側に開閉できる扉で開閉自在とした構成を採用したものである。
【0008】
また、第2の発明は、家具本体に対して出し入れ自在となる引き出し本体の前板に、背面側の収納部と前面側の収納部を設け、前記前板の前面側に、背面側の収納部と対応する位置に配置された固定面板と、前面側の収納部を前側に開閉できるように取付けられた扉を設け、前記固定面板の前面と閉位置にある扉の前面が同一面状に並ぶようにした構成を採用したものである。
【0009】
ここで、家具としては、例えば、システムキッチンであり、シンクの下部空間を収納空間とするため、引き出し本体はシンクの下部位置において、キッチン本体の前面側から出し入れできるようになっている。
【0010】
この引き出し本体の前板は垂直に起立し、幅方向を三等分した状態で、両側の部分に、前面で開放して背面側に凹入する収納部が形成され、また、中央部分の背面側にも収納部が設けられ、両側収納部は、前側に開閉できるよう前板に取付けられた扉によって開閉自在となり、前記前板の前面側で中央部分に、扉と同じ仕様の固定面板が取り付けられている。
【0011】
上記扉と固定面板は、その上端部に出し入れ操作用の指掛け部が設けられ、前記扉は、外側の側縁を支点に観音開きとなるよう前板にヒンジ金具で取付けられ、ラッチ機構やバネにより、常時閉まる方向の弾性が付勢され、引き出し本体の出し入れ時に不用意に開くことがないようになっていると共に、その背面側には、小物調理器具を立てた状態で収納したり吊るして収納するための取付け部が、収納部内に納まる条件で設けられている。
【0012】
また、背面側の収納部は、例えば、包丁の収納部となり、前板の上下中間部から下が中空室となり、その上面板に包丁の差込孔が設けられ、この中空室の上部をスライドカバーで覆うことができる構造になっており、収納した包丁が外部から見えないのは勿論、引き出しを開けても、包丁の存在が判らず安全である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、引き出し本体の前板の前面側に収納部を設け、この前面側の収納部を前側に開閉できる扉で開閉自在としたので、前板の収納部に小物部材を収納することができ、小物部材の出し入れに際して扉を開閉するだけでよく、引き出し全体を引き出す必要がないので、小物部材の出し入れが手早く行える。
【0014】
また、前板の背面側に収納部を設けることにより、引き出し本体の収納空間における前板後部の前から見えないデッドスペースの部分を小物部材の収納に有効利用でき、引き出しの部材収納効率を向上させることができる。
【0015】
更に、固定面板の前面と閉位置にある扉の前面を同一面状に並ぶようにしたので、引き出し本体の前面が同一面に仕上がり、家具のデザイン性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0017】
図1のように、システムキッチン1は、シンク2を備えた流し台3とコンロ台4を並べて設け、キッチン本体5の流し台3におけるシンク2の下部空間を収納空間とするため、シンク2の下部位置において、キッチン本体5の前面開口に対して引き出し6が出し入れできるようになっている。
【0018】
上記引き出し6は、図3のように、収納容器部7と前板8で引き出し本体9が形成され、この引き出し本体9が、周知のように、キッチン本体5と収納容器部7の間に設けたガイドレールと車輪で前後に出し入れできるよう移動自在に支持され、収納容器部7に厨房用器具Aや調理器具等を収納するようになっている。
【0019】
上記引き出し本体9の前板8は、収納容器部7の前端で垂直に起立し、この前板8には、幅方向を三等分した状態で、両側の部分に、前面で開放して背面側に凹入する箱型の収納部10と11が形成され、また、中央部分の背面側にも収納部12が設けられている。
【0020】
図2のように、上記両側の収納部10と11は、前板8と一体に背面側に凹入する箱型に成形され、前板8の前面には、両収納部10と11の前面開口をそれぞれ開閉するための扉13、14がヒンジ金具15で取付けられ、前記前板8の前面側で中央部分に、扉13、14と同じ仕様の固定面板16が取り付けられている。
【0021】
上記扉13、14と固定面板16は、その上端部に引き出し本体9の出し入れ操作用となる指掛け部17が設けられ、前記扉13、14は、ヒンジ金具15で外側の側縁を支点に観音開きとなるよう前板8に取付けられ、ラッチ機構やバネにより、常時閉まる方向の弾性が付勢され、引き出し本体9の出し入れ時に不用意に開くことがないようになっている。
【0022】
上記固定面板16の前面と閉位置にある扉13、14の前面は、図1のように、同一面状に並ぶようになっており、これによって、引き出し本体9の前面が同一面に仕上がり、システムキッチン1のデザイン性を向上させることができる
【0023】
上記扉13、14の背面側には、小物調理器具Bを立てた状態で収納したり吊るして収納するための取付け部18、19が、扉13、14を閉じたときに収納部10、11内に納まる条件で設けられている。
【0024】
図2のように、取付け部18、19は、下板と両側の側板で上向きコ字状となって扉13、14の背面から突出するように形成され、図示の場合、一方の取付け部18は、扉13の背面上部にレードル等の柄付き小物調理器具Bの挟持具20を取付け、小物調理器具Bを吊り下げ状態で収納できるようにし、また、他方の取付け部19は側板間の上部に横桟21を架設し、まな板Cを立てた状態で収納することができるようにしている。
【0025】
上記前板8の中央部で背面側に設けた収納部12は、図4の場合、包丁の収納部に形成し、前板8の上下中間部から下の位置において、上面板12aと背板12bで中空室に形成され、その上面板12aに包丁Dの差込孔12cが複数設けられ、この中空室の上部をスライドカバー12dで覆うことができる構造になっている。
【0026】
このスライドカバー12dは、収納部11の背面側突出形状に外接する断面コ字状に形成され、前板8の背面側で上下に設けたガイド溝12eと12fに沿って左右にスライド自在となり、中空室の上部を覆う位置と、中空室の上部を開放した位置の間を手で移動させることができるようになっている。
【0027】
このように、前板8の中央部で背面側に設けた収納部12を包丁Dの収納部とすれば、収納した包丁Dが外部から見えないのは勿論、スライドカバー12dで中空室の上部を覆うことにより、引き出しを開けても包丁Dの存在が判らず、子供や万一の侵入者などにすぐに発見されにくく、安全性が向上する。
【0028】
また、引き出し本体9の内部に包丁Dの収納部12を設けることにより、開き扉の裏面に包丁差しを取付けた従来の一般的なものよりも、収納時に万一包丁を落としたりした場合の安全性が高くなる。
【0029】
上記前板8と収納部10、11は、樹脂や金属を用いて横長に成形され、前面の両側収納部10、11は、引き出し本体9の収納部分と独立遮断されているので、まな板Cやレードル、包丁等が乾ききっていない状態で収納しても、引き出し本体9の収納部分が湿気ることがない。
【0030】
この発明の引き出し6は、上記のような構成であり、図1のように、引き出し6を閉じた状態にすれば、キッチン本体5の引き出しを出し入れする開口部が前板8とこれに取付けた扉13、14及び固定面板16で閉じられている。
【0031】
また、前板8の両側に設けた収納部10、11に対して小物調理器具Bを出し入れする場合は、図2のように、引き出し本体9を引き出すことなく扉13、14を開き、扉13、14の背面側に設けた取付け部18、19に対して小物調理器具Bを着脱すればよく、小物調理器具Bの出し入れに引き出し本体9を引き出さなければならないという面倒さがなくなる。
【0032】
次に、前板8の背面側に設けた収納部12に対して包丁Dを出し入れしたり、引き出し本体9の収納部分に調理器具Aを出し入れする場合は、図3のように、扉13、14と固定面板16が並んだまま引き出し本体9を手前に引き出して行えばよく、収納部12のスライドカバー12dを移動させることにより、包丁Dの差込孔12cに対する包丁Dの抜き差しが行え、収納した包丁Dをスライドカバー12dで隠蔽することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明に係る引き出しを用いたシステムキッチンの引き出しを収納した状態の斜視図
【図2】この発明に係る引き出しの前板に設けた両側収納部の扉を開いた状態を示す斜視図
【図3】この発明に係る引き出しの引き出した状態を示す斜視図
【図4】この発明に係る引き出しの前板を背面側から見た斜視図
【符号の説明】
【0034】
1 システムキッチン
2 シンク
3 流し台
4 コンロ台
5 キッチン本体
6 引き出し
7 収納容器部
8 前板
9 引き出し本体
10 収納部
11 収納部
12 収納部
13 扉
14 扉
15 ヒンジ金具
16 固定面板
17 指掛け部
18 取付け部
19 取付け部
20 挟持具
21 横桟

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具本体に対して出し入れ自在となる引き出し本体の前板に、背面側の収納部と前面側の収納部を設け、前記前面側の収納部を前側に開閉できる扉で開閉自在とした家具の引き出し。
【請求項2】
家具本体に対して出し入れ自在となる引き出し本体の前板に、背面側の収納部と前面側の収納部を設け、前記前板の前面側に、背面側の収納部と対応する位置に配置された固定面板と、前面側の収納部を前側に開閉できるように取付けられた扉を設け、前記固定面板の前面と閉位置にある扉の前面が同一面状に並ぶようにした家具の引き出し。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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