説明

家畜および産卵鶏の飼育方法

【課題】電子チャージによるマイナスイオンの効能を利用して、家畜や産卵鶏の生産効率を向上させることのできる家畜および産卵鶏の飼育方法を提供する。
【解決手段】家畜の飼料あるいは飲水に電子チャージ処理を施し、その飼料、飲水を家畜に給与して、増体および飼料要求率を改善させる家畜の飼育方法。また、産卵鶏の飼料あるいは飲水に電子チャージ処理を施し、その飼料、飲水を産卵鶏に給与して、産卵率を向上させるとともに飼料要求率を改善させる産卵鶏の飼育方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増体および飼料要求率を向上させることのできる家畜および産卵鶏の飼育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メン羊や乳牛、肉牛、豚、鶏などの家畜を飼育する場合、製品(肉、乳、毛)の質を向上させるために、通常の飼料よりも蛋白質(組成)やカロリーが高い濃厚飼料が給与されている。そのために、内臓等に障害を来たすことが指摘されている。これらを予防または治療するために、抗生物質、ビタミン剤、ホルモン剤、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の各種添加剤が一般的に用いられている。
【0003】
抗生物質は、不衛生な飼育方法や過密状態が原因で発生する病気の予防と、成長の促進のために、工場方式で飼育されている豚や牛、鶏の飼料や水に混合した形で投与されている。これらの抗生物質は、健康な家畜にも使用されており、人間の体内にいるようなバクテリアは、抗生物質に対する耐性を徐々に強めている。これらの家畜が病気になるとさらに多量の抗生物質を投与する結果、抗生物質に繰り返しさらされる状況を生き抜いたごく一部のバクテリアは、最終的により強力になり、根絶がきわめて困難になる。
【0004】
すでに耐性を持ったバクテリアを含んだ家畜製品を人々が消費すると、人間の消化器官が耐性菌の繁殖場になり、抗生物質が効かなくなり、人間の健康が脅かされることになる。また、本来、家畜の病気の原因であったウイルスが、人間に感染するウイルスに変化する事例も報告されている。
【0005】
特許文献1には、家畜用飼料改良材として、麦飯石または麦飯石混合物、静電気に帯電しにくい樹脂並びにマイナスイオン放出性鉱物よりなる樹脂複合物、あるいは前記樹脂複合物にトルマリン(電気石)もしくは遠赤外線セラミックを混合したものを用いることが開示されている。これによれば、マイナスイオンの還元作用と吸着作用により家畜糞の臭気を大幅に減少させると共に、さらに遠赤外線効果による成長促進および飼料栄養素(養分)の吸収増加作用により、体重の増加、ならびに肉質が引き締まる等の効果があるとされている。
【0006】
しかしながら、麦飯石やトルマリンは希少な鉱物資源であり、家畜などに大量に継続して給与するには、供給量が限られており、適当な粒径に粉砕する工程が必要であり、またコストが嵩むという問題がある。また、特許文献1の飼料改良材は、砂を消化器官に入れている鶏には適しているが、羊や豚や牛には適用例がない。
【0007】
本出願人は、食品加工用水、飲料水、調理水、風呂水などに用いられる電子水の製造、食材や畜産飼料などに含まれる化学物質の中和除去、あるいは空気中のマイナスイオン濃度の高揚などを目的とした電子発生装置およびその電極について開発を行った(特許文献2、特許文献3参照)。
【0008】
例えば特許文献2には、図1に示すように、絶縁材被覆導電体3を導電性有底筒状体であるステンレスパイプ1に挿入し、ステンレスパイプ1と絶縁性被覆導電体3との隙間に粉粒状電気石(トルマリン)2を充填し、ステンレスパイプ1の外側を絶縁性有底筒状体であるポリエチレンパイプ4で被覆し、ステンレスパイプ1およびポリエチレンパイプ4の開口部を、絶縁性密封材であるシリコン樹脂5で閉塞した電子発生装置用電極8が記載されている。ステンレスパイプ1内の絶縁材被覆導電体3は、導電体の先端および外周が全て絶縁材で被覆されており、絶縁材被覆導電体3の基端部分には、電子発生装置7の出力端子11に接続するためのピンジャック6が取り付けられている。
【0009】
この電子発生装置を使用する場合、絶縁材被覆導電体3の基端部分のピンジャック6を電子発生装置7の出力端子11に接続し、電子発生装置用電極8を接地された容器内の材料または水に浸漬した後、電子発生装置7から絶縁材被覆導電体3に交流の高電圧を印加する。そうすると、絶縁材被覆導電体3とステンレスパイプ1の間のキャパシタンスと、ステンレスパイプ1とポリエチレンパイプ4および容器の間のキャパシタンスおよび材料や水の抵抗により形成される電気回路により交流の電流が流れる。この電流により、電極8内部の粉粒状電気石2からマイナスイオンが生成される。
【0010】
このマイナスイオンは、活性酸素を無害化し、体液を弱アルカリ性にして体調をよくし、空気を浄化し、細胞を活性化させるなどの効果があるといわれている。
【0011】
【特許文献1】特開2000−262225号公報
【特許文献2】特開2000−210668号公報
【特許文献3】特開2001−137861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上のようなマイナスイオンの効能を利用して、家畜や産卵鶏の生産効率を向上させることのできる家畜および産卵鶏の飼育方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の家畜の飼育方法は、家畜の飼料あるいは飲水に電子チャージ処理を施し、その飼料、飲水を家畜に給与して、増体および飼料要求率(体重1kg増加に要する飼料の量)を改善(低減)させることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、電子チャージ処理を行って充分に改質した飼料あるいは飲水を家畜に給与し、家畜の飼料摂取量、増体量および飼料要求率を調べたところ、飼料摂取量は電子チャージ処理区と対照区で高かったり低かったりしたが、増体量および飼料要求率は処理区の方が改善(低減)される傾向が見られ、家畜の生産効率に効果があることが判明した。
【0015】
また、本発明の産卵鶏の飼育方法は、産卵鶏の飼料あるいは飲水に電子チャージ処理を施し、その飼料、飲水を産卵鶏に給与して、産卵率を向上させるとともに飼料要求率を改善(低減)させることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、電子チャージ処理を行って充分に改質した飼料あるいは飲水を産卵鶏に給与し、産卵個数と飼料要求率を調べたところ、処理区では産卵率が向上し、また飼料要求率が低下して飼料代が節減できた。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)電子チャージした飼料、水を家畜に給与することにより、育成中や肥育中の家畜の飼料要求率が改善されると共に、家畜の体重増加率が大きくなり、家畜の生産効率に効果がある。
(2)電子チャージした飼料、水を産卵鶏に給与することにより、産卵鶏の産卵率が向上し、一方、飼料要求率は低減するので、生産効率に好影響を与えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例に用いる給与飼料と水は、図1に示した電極8を、三本、図2に示すホッパー9の中心部とその両側に配置し、ホッパー9内に飼料10を入れて、交流電圧500V〜20000V(実効値)を電極8−1〜8−3に印加し、18時間以上、飼料10に電子チャージを施した。その時の消費電力は10〜30Wであった。
【実験例1】
【0019】
4ヶ月齢・サフォーク種去勢雄子メン羊12頭を、4頭ずつ3群に分け、対照区、電子チャージ飼料区、電子チャージ飼料・飲水区に配置して、1期約30日間で各3機と2期の飼育試験を行った。飼料は、濃厚飼料(熊畜特号)と粗飼料(バミューダグラス乾草)の割合を7:3として、体重の2.2〜3.2%に相当する量を1日2回に分けて給与した。
ここで、濃厚飼料としては、熊畜特号のほか、トウモロコシ、大麦、大豆、大豆粕、なたね粕、ふすま、米ぬか、コーングルテン、炭酸カルシウム分、蜂蜜、食塩等の配合飼料やそれらの混合飼料を用いることができる。
飼料摂取量は1日の給与量と残飼を計測して、1週間ごとの平均値を算出した。体重測定を毎週1回行い、体重推移、増体量を求め、飼料要求率も算出した。
【0020】
図3は給与飼料の化学組成を示すもので(a)は粗飼料、(b)は濃厚飼料を示すグラフである。なお、図3において、DMは乾物、C−ashは粗灰分、CPは粗タンパク質、NDFは中性デタージェント繊維、ADFは酸性デタージェント繊維を示している。
図4および図5は子メン羊の飼料乾物摂取量を示すもので、図4は代謝体重1kg/1日当たりの量を示すグラフ、図5は体重比を示すグラフである。
図6は子メン羊の体重の推移、図7は1日増体量(DG)を示すグラフである。
図8(a)は子メン羊の飼料効率、(b)は飼料要求率を示すグラフである。
この実験例1においては、飼料摂取量は、電子飼料・飲水区が他の2区に比べて低い傾向を示した。しかし、1日増体量や飼料要求率は処理区で改善される傾向を示した。
【実験例2】
【0021】
6ヶ月齢・サフォーク種去勢雄子メン羊15頭を、5頭ずつ3群に分け、対照区、電子チャージ飼料区、電子チャージ飼料・飲水区に配置して、実験例1と同じ条件で飼料摂取量、体重測定、体重推移、増体量を求め、飼料要求率を算出した。
図9は給与飼料の化学組成を示すグラフである。
図10は代謝体重1kg/1日当たりの量を示し、図11は体重比を示すグラフである。
図12は子メン羊の体重の推移、図13は1日増体量(DG)を示すグラフである。
図14は子メン羊の飼料効率、図15は飼料要求率を示すグラフである。
この実験例2においては、処理区の飼料摂取量が対照区に比べて大きい傾向を示し、これを反映して1日増体量も処理区が高い傾向となった。飼料要求率は、区間で大差が見られなかった。
【実験例3】
【0022】
産卵鶏の産卵率と飼料要求率を、電子チャージ飼料・飲水区と無処理の対照区について多数の鶏舎で統計を行った。
産卵率は、電子チャージ飼料・飲水区では84%であったのに対し、対照区では75%であった。これを10万羽の養鶏家に換算すると、1日当たり84000個と75000個となり、1日9000個、1月27万個の差となる。
【0023】
飼料要求率は、電子チャージ飼料・飲水区では平均が1.95%であったのに対し、対照区では平均が2.10%であった。これを同じく10万羽の養鶏家に換算すると、1羽当たりの平均体重が1.45825kgとして、1月当たり284,359kgの飼料となるのに対し、対照区では306,232kgとなり、21,873kg/月の節約ができることになる。
すなわち、電子チャージ飼料・飲水区では、少ない飼料でも高い産卵率となり、生産効率が高くなることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、家畜や産卵鶏に対して、生産効率を向上することのできる飼育方法として、畜産業に有用に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の方法に用いる電子チャージ装置の電極の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の方法に用いるホッパーの例を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図3】実験例1における給与飼料の化学組成を示すもので(a)は粗飼料、(b)は濃厚飼料を示すグラフである。
【図4】実験例1における子メン羊の飼料乾物摂取量と代謝体重1kg/1日当たりの量を示すグラフである。
【図5】実験例1における子メン羊の飼料乾物摂取量と体重比を示すグラフである。
【図6】実験例1における子メン羊の体重の推移を示すグラフである。
【図7】実験例1における子メン羊の1日増体量を示すグラフである。
【図8】実験例1における(a)は子メン羊の飼料効率、(b)は飼料要求率を示すグラフである。
【図9】実験例2における給与飼料の化学組成を示すグラフである。結果である。
【図10】実験例2における代謝体重1kg/1日当たりの量を示すグラフである。
【図11】実験例2における体重比を示すグラフである。
【図12】実験例2における子メン羊の体重の推移を示すグラフである
【図13】実験例2における1日増体量を示すグラフである。
【図14】実験例2における子メン羊の飼料効率を示すグラフである。
【図15】実験例2における飼料要求率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0026】
1 ステンレスパイプ
2 粉粒状電気石
3 絶縁材被覆導電体
4 ポリエチレンパイプ
5 シリコン樹脂
6 ピンジャック
7 電子発生装置
8,8−1〜8−3 電極
9 ホッパー
10 飼料
11 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の飼料あるいは飲水に電子チャージ処理を施し、その飼料、飲水を家畜に給与して、増体および飼料要求率を改善させることを特徴とする家畜の飼育方法。
【請求項2】
産卵鶏の飼料あるいは飲水に電子チャージ処理を施し、その飼料、飲水を産卵鶏に給与して、産卵率を向上させるとともに飼料要求率を改善させることを特徴とする産卵鶏の飼育方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−94785(P2006−94785A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284861(P2004−284861)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月20日 社団法人日本畜産学会発行の「日本畜産学会 第103回大会 講演要旨」に発表
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(597016251)株式会社ジェム (1)
【Fターム(参考)】