説明

家禽の処理加工方法

【課題】家禽(レイヤー)の処理工程において、屠体の洗浄・冷却を効果的かつ効率的に実施し、屠体の内部検査を容易かつ効率的に実施すること。
【解決手段】家禽(レイヤー)を処理加工して製品を生産する方法において、懸吊された屠体の中抜き工程、該屠体の上半部及び下半部の間に少なくとも該屠体の背皮を残してカットを入れる工程、該屠体を冷却する工程を順次経て、該屠体の該上半部及び該下半部を開いて内部を検査する工程を設けたこと、前記検査の結果、前記屠体の内臓が残る場合には、該内臓を除去する工程を含む家禽(レイヤー)の処理加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽の屠体、特にレイヤー(採卵鶏)屠体の処理加工方法及び解体ラインにおける該屠体の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に家禽処理加工は、屠鳥・脱羽、中抜き、冷却、解体、整形、検査・包装・製品冷却の区分に分けられ、これらの区分における次の1)から12)の工程を経て製品が出荷される。
【0003】
1)生体検査・懸鳥、2)スタニング・屠鳥・放血、3)湯漬・脱羽・洗浄・屠体検査、4)頭と肢切断、5)中抜き(内臓摘出)・内臓検査、6)洗浄・冷却、7)解体(大バラシ、胸部解体、腿部解体)、8)製品検査、9)計量、10)袋詰、11)製品冷却、12)
製品保冷
【0004】
上記の各工程における作業は、間仕切りで区分(作業室)され、オーバーヘッド・コンベアとベルト・コンベアを組み合わせた流れ作業で行われている。(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照。)
【0005】
上記7)の工程では、上記6)の工程で冷却された屠体を、大バラシ機において、胸部(カブト)と脚部とに2分割(ハーヴィング)する。この2分割は、オーバーヘッド・コンベアに懸吊された丸鳥(中抜き屠体)を、回転カッタ等により切断することによりなされる(例えば、特許文献1〜3参照)。オーバーヘッド・コンベアに懸吊状態に残る脚部については、機械により、背筋入れ、坐骨カット、モモ脱臼、関節筋切り、尻皮カット、モモ引き剥がしの工程を経て、腰ガラと骨付きモモに分離され、骨抜きモモは、脱骨機による脱骨を経て、正肉となる。
【0006】
一方、胸部については、肺等の内臓物が残ってないか目視検査を行い、胸部に内臓物が一部でも残っている場合は、手動の吸引装置等により吸引した後、次の工程へ送る。内臓物がないことが確認された胸部は、次のむね解体機に送られる。むね解体機では、胸部の固定後、背筋カット、肩筋入れ、胸肉はがしの工程を経て、はがされた胸肉部分は、手羽もとカットを経て「むね肉」となり、手羽もとは、手羽さきカットを経て「手羽もと」及び「手羽さき」が生産される。一方、胸肉はがしの工程で残った部分には、ささみ筋入れ、ささみ取りの工程を経て「ささみ」及び「がら」が生産される。また、胸部からは、ミンチ等の原料とされる場合もあり、その場合には、ミンチ工程に送られる。ミンチ工程では、骨肉分離機を経て、ひき肉・すりみが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−68472号公報
【特許文献2】特開2000−125754号公報
【特許文献3】特開2002−223694号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】食鳥処理衛生管理ハンドブック、社団法人日本食品衛生協会、2002年改訂2版発行、88〜125頁
【非特許文献2】食鳥処理加工、財団法人国際研修協力機構教材センター、2008年2月発行、40〜57頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に説明した従来の家禽処理工程では、中抜き後の丸鳥状態で洗浄、冷水による冷却、冷気冷却等の処理を行なっていたので、その芯部まで完全に洗浄することは難しく、かつ、冷却するには時間を要した。また、解体工程では、完全に切断された後の胸部を目視検査する際に、移送コンベア等で移送されてくる胸部を、一羽ずつ内部を目視できるように、作業者が胸部の向きを変え、また、胸部を取り上げて検査を行っていた。このため、作業に手間がかかるだけでなく、作業時間の短縮化に支障となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の処理加工方法は、家禽を処理加工して製品を生産する方法において、家禽の屠体の中抜き工程の後、懸吊された該屠体の上半部及び下半部の間に少なくとも該屠体の背皮を残してカットを入れる工程を設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明の処理加工方法は、家禽を処理加工して製品を生産する方法において、懸吊された家禽の屠体の中抜き工程、該屠体の上半部及び下半部の間に少なくとも該屠体の背皮を残してカットを入れる工程、該屠体を洗浄及び/又は冷却する工程を順次経て、該屠体の内部を目視検査する工程を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の処理加工方法は、家禽を処理加工して製品を生産する方法において、懸吊された家禽の屠体の中抜き工程、該屠体の上半部及び下半部の間に少なくとも該屠体の背皮を残してカットを入れる工程を順次経て、該屠体の内部を目視検査する工程を設け、そして該屠体を洗浄及び/又は冷却する工程を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の処理加工方法は、上記の特徴に加えて、前記目視検査する工程において、前記カットを入れられた屠体を開いて内部を目視検査し、内臓の一部が残る場合にはこれを除去する作業を行うことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の処理加工方法は、上記の特徴に加えて、前記家禽がレイヤーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、家禽、レイヤーの処理工程において、屠体の洗浄・冷却を効果的かつ効率的に実施することができる。また、屠体の内部検査を容易かつ効率的に実施することができる。その結果、屠体の下腹部から行なう中抜きの工程において完全に除去することが容易ではない肺、腎臓等の内臓器官の一部が残っても、屠体の内部検査の際に確認し、これを完全に除去することができるので、以降の工程に内臓の一部が混入することなく、製品の品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るレイヤー(採卵鶏)について、オーバーヘッド・コンベアのシャックルから懸吊され、カットを入れられた状態を示す。
【図2】従来のレイヤー(採卵鶏)について、オーバーヘッド・コンベアのシャックルから懸吊され、カットが入れられていない状態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[実施例1]
家禽の屠鳥・放血から製品に至る処理加工の中抜き工程において、加工対象の屠体(レイヤー)1は、オーバーヘッド・コンベアにより搬送されるシャックル2から懸吊された状態のまま、中抜き処理が屠体の下腹部の開口部から行なわれる。その後、屠体は、懸吊状態で、その胸部と脚部の間に、胸側から背側に向けて、背骨と背側の皮とを残してカット3が入れられ、該胸部と該脚部とを切り裂き、次の洗浄・冷却の工程に送られる。屠体にカットが入っているので、屠体の内部の洗浄と冷却を、効果的かつ効率的に行なうことができる。
【0018】
冷却後、屠体の切り裂かれた胸部と脚部を開き、内部の目視検査を行なうが、この際には、図1に示すように、オーバーヘッド・コンベアのシャックルから屠体の脚部が懸吊され、該脚部から背側の皮及び背骨により胸部が懸吊された状態となっているので、屠体の内部の目視検査を容易に実施することができ、作業操作が単純化されて検査を効率的に行なうことができる。
【0019】
目視検査の結果、屠体の内部に内臓(例えば、肺、腎臓)の一部が残っている場合には、これを吸引又は掻き出して除去する。このように、屠体をシャックルから懸垂したままの状態で目視検査を行うことができるので、作業が効率的になる。
【0020】
目視検査後、屠体の内部に内臓の一部が残っている場合にはその吸引除去後、背側の皮及び背骨を回転する丸刃にてカットして、胸部は脚部から完全に分離され、それぞれ次の工程に送られる。
【0021】
[実施例2]
実施例2は、実施例1における屠体1の胸部と脚部の間に胸側から背側に向けてカット3を入れる工程の後に、屠体の切り裂かれた胸部と脚部を開き、内部の目視検査を行ない、屠体の内部に残存する内臓があれば、これを取り出す工程を設け、その後で屠体の洗浄・冷却の工程に入るというものである。
【0022】
実施例2では、実施例1と同様に、屠体は、胸側から背側に向けて、背骨と背側の皮とを残してカットを入れられているので、屠体の洗浄・冷却を効果的かつ効率的に行なうことと、内部の目視検査を容易かつ効率的に行なうことを可能とするだけでなく、屠体に内臓が残る場合には、屠体の洗浄・冷却に先立ってこれを除去することができるので、中抜きによる内臓除去の工程で、取り残しがある場合でも、これを完全に除去することができる結果、後の工程に内臓の一部が混入して製品の品質を損なうことを避けることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 レイヤー、
2 シャックル、
3 カット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽を処理加工して製品を生産する方法において、
家禽の屠体の中抜き工程の後、懸吊された該屠体の上半部及び下半部の間に少なくとも該屠体の背皮を残してカットを入れる工程を設けたことを特徴とする処理加工方法。
【請求項2】
家禽を処理加工して製品を生産する方法において、
懸吊された家禽の屠体の中抜き工程、該屠体の上半部及び下半部の間に少なくとも該屠体の背皮を残してカットを入れる工程、該屠体を洗浄及び/又は冷却する工程を順次経て、該屠体の内部を目視検査する工程を設けたことを特徴とする処理加工方法。
【請求項3】
家禽を処理加工して製品を生産する方法において、
懸吊された家禽の屠体の中抜き工程、該屠体の上半部及び下半部の間に少なくとも該屠体の背皮を残してカットを入れる工程を順次経て、該屠体の内部を目視検査する工程を設け、そして該屠体を洗浄及び/又は冷却する工程を設けたことを特徴とする処理加工方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された家禽の処理加工方法において、
前記目視検査する工程において、前記カットを入れられた屠体を開いて内部を目視検査し、内臓の一部が残る場合にはこれを除去する作業を行うことを特徴とする処理加工方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの請求項に記載された家禽の処理加工方法において、
前記家禽がレイヤーであることを特徴とする処理加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−178647(P2010−178647A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23677(P2009−23677)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(599162646)マルイ食品株式会社 (1)
【出願人】(504225356)プライフーズ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】