説明

容器における流体の充填レベルを検出するためのセンサシステム

本発明は、容器内の流体媒体22の充填レベルを静電容量的に測定するためのセンサシステム10に関する。容器は、好ましくは透析装置の気泡捕捉器である。センサシステムは、レセプタクル30を備える。レセプタクル30には、収容された容器の外面に接触する2つの接触領域、および各接触領域に配置されて前記容器の充填レベルを静電容量的に検出する少なくとも1つのレベル検出電極(C、C、C11、C12、C21、C22)が設けられている。センサシステムは、容器のレセプタクルに対する正常なカップリングを静電容量的に判断するカップリング測定装置(C11、C12、C21、C22)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部に係る、流体媒体の充填レベルを静電容量的に測定するためのセンサシステム、および請求項16に係る医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途で、流体、特に導電性流体の充填レベルを測定するためにセンサが必要である。流体の純度および汚染防止に対する要求が高い場合、流体は測定装置に接触してはならないため、非侵襲的測定システムが適当である。そのようなシステムでは、例えば電場および当該電場への被測定媒体による影響とを利用して、充填レベルを検出する。
【0003】
静電容量式の充填レベルセンサが特許文献1により公知である。そのセンサにおいては、容器の側壁に取り付けられた第1の測定電極に、増幅器を介して特定の周波数の電圧が供給される。その結果、容器の下に配設された第2の電極まで電気力線が生じてコンデンサを形成する。例えば比誘電率εの温度依存性に起因して、容器の静電容量Cが増大すると、測定結果に歪みが生ずる可能性がある。このため、補償電極Cが容器の壁に配設されて当該電極から生ずる電気力線が実質的に容器壁のみを貫くようにすることで、容器の影響を検出するようにしている。
【0004】
検出される充填レベルが、例えば容器壁の特性変化に起因して影響されるのと同様に、容器表面が濡れることにより、または液面の低下に伴い容器の内側に膜が形成されることにより測定される媒体の導電率が影響を受けやすいことが、測定装置において解決されるべき課題として挙げられる。サージ的に生ずる可能性がある液面の変化も考慮する必要がある。カップリングもまた問題を生ずる。カップリングは、測定装置に対する容器の収容状態の質を示す指標である。容器からレセプタクルへの遷移点でカップリング容量Cが生じる。当該遷移に係るインピーダンスZは、基本的に容量性リアクタンスX=1/ωC=1/2πfCによって表される。
【0005】
測定装置におけるキャパシタプレート間の測定経路は、平行プレートコンデンサの直列接続とみなされる。平行プレートコンデンサの静電容量はC=εεA/dとして計算される。
【0006】
εは誘電率(真空の誘電率)、Aは有効面積、dはプレート間の離隔距離であり、この距離は電気力線の経路に対応する。εは媒体の比誘電率である。血液やアイソトニック食塩水などの関係する測定媒体においては、比誘電率εは周波数に大きく依存する。その一方で、関係する媒体の比導電率κ(血液は6mS/cm、NaClは16mS/cm)は、限られた範囲内でのみ周波数に依存する。
【0007】
上記測定装置では、以下で詳細に説明するが、カップリング容量がpFの範囲内で変動する。媒体のオーム抵抗は数kΩの範囲内にある。これらの値から、静電容量式のセンサの場合、動作周波数fがkHzから数MHzに至る範囲にある測定結果は、主としてカップリング容量によって定まることが明らかである。インピーダンスおよび位相がそのリアクタンスによって支配されるからである。
【0008】
公知の測定装置は、正しい充填レベルと、流体の単なる薄膜またはサージとを確実に区別することができない。大量の媒体と流体薄膜とのオーム抵抗差による僅かに過ぎない影響よりも、カップリングの最も小さな変化の方が大きいからである。
【0009】
したがって、特許文献2または特許文献3に説明されているように、例えば75MHzを上回るなど、動作周波数を高くする必要性が生じる。その一方で、動作周波数が例えば80MHzから数百MHzの高い範囲にあると、機器および回路の設計、特にEMCコンプライアンスに厳しい要求が課される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開199 49 985 A1号公報
【特許文献2】独国特許出願公開196 51 355 A1号公報
【特許文献3】独国特許出願公開10 2005 057 558 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、充填レベルに達しているか否かを非侵襲的に検出すること、すなわち例えば血液、食塩水、透析液等の水生媒体が非導電性の容器内に十分な充填レベルで存在するか否かを二値情報として検出することにある。すなわち解決すべき課題は、以下に掲げる通りである。
・センサシステムは、容器内壁上の膜の形成を認識可能であることを要する、および/または、液面が低下した場合にも当該膜形成と正しい充填レベルを区別可能であることを要する。
・センサシステムは、センサ要素の領域に生じる可能性のあるサージの形成に対してロバスト性を有することを要する。
・センサシステムは、血液と厚発泡(血液と空気の混合物など)とをできる限り区別可能であることを要する。そのような血液と空気の混合物は、体外回路に空気が入ったときに静脈気泡捕捉器に生じる可能性があり、特に測定媒体の表面上に集まる。
・センサシステムは接触に対してできる限りロバスト性を有することを要する。レベル検出は、(機能上の)アースに接続された媒体と接続されていない媒体の両方に対して確実に機能すべきである。
・センサシステムは、生じうる容器のレセプタクルへの正常でない収容状態を認識可能であることを要する。特に、正常な収容状態を連続的に監視可能であることを要する。
・センサシステムは、リーク等による測定領域における水分の蓄積などの汚染に対してロバスト性を有し、かつ当該汚染を認識可能であることを要する。以下に詳述する本発明に係る容器において、測定領域は、容器の外側の領域と、センサを備えるレセプタクルとを含む。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。続く従属請求項は、他の有利な発展形態を記述するものである。
【0013】
本発明によれば、容器内の流体媒体の充填レベルを静電容量的に測定するためのセンサシステムが提供される。容器は、好ましくは透析装置の気泡捕捉器である。センサシステムは、レセプタクルを備える。レセプタクルには、収容された容器の外面に接触する2つの接触領域、および各接触領域に配置されて前記容器の充填レベルを静電容量的に検出する少なくとも1つのレベル検出電極が設けられている。センサシステムは、容器のレセプタクルに対する正常なカップリングを静電容量的に判断するカップリング測定装置を備える。当該カップリングは、好ましくは機械的接触によるものであり、(小さな)空隙が残っているものも想定に含まれる。
【0014】
この構成の利点は、それが非侵襲性であることである。つまり上記の測定は、測定センサまたはプローブが流体と接触することなく行なわれる。したがって上記センサシステムは、容器に装着可能なアダプタの一種である。不十分なカップリング(例えば機械的な接触が不十分など)はカップリングの静電容量的な測定によって検出することができる。この静電容量的な測定は、評価に共通の電子回路を使用するため、コストが抑制される。この独立したカップリング測定は、充填レベルの測定をより高い周波数を用いて実行することを可能とする。高周波の使用により、測定された充填レベルの値が不十分なカップリングにより歪むリスクを伴わない。
【0015】
前記レベル検出電極は、分割された複数の電極領域を有し、前記カップリング測定装置は、各検出電極の電極領域による静電容量的な測定を通じて前記カップリングを判断するとよい。
この異なる回路構成によれば、分割された電極が接触領域ごとに1つだけ使用されるため、部品コストが抑制される。また本設計のシステムは、上記接触領域において電極対をできる限り正確にかつ近接して配置することにより、同じ場所で両測定が行なわれうるように構成されうる。
【0016】
別の実施形態においては、前記カップリング測定装置は、各接触領域において、前記レベル検出電極とは異なる2つの電極対を備えている。当該電極対は、前記レベル検出電極に対し、前記容器の長手方向について軸がずれる配置とされている。
これにより機能的な分離が可能であり、上記の異なる複数の測定が同時に実行されることを可能とする。後述するフォーカスアレイにおいて電極群のアナライザへの接続を切替える必要もない。
【0017】
加えて、前記カップリング測定装置は、例えば前記容器と前記レセプタクルとの間に間隙が存在する場合のように弱すぎるカップリングと、例えば前記接触領域に流体やその他の異物が存在する場合のように強すぎるカップリングの双方を、検出可能である。
このカップリング測定の2つの機能により、汚染によってカップリングが強すぎるか否かが簡易かつ低コストで検出される。これによりレベル検出の測定結果が誤って肯定的となることを回避あるいは認識することができる。
【0018】
一実施形態においては、前記カップリング測定装置は、前記容器の充填レベルの測定により十分なレベルが検出されると同時に、前記カップリング測定により不十分なカップリングが検出されたとき、当該不十分なカップリングをユーザに報知する事前アラームを動作させることが可能である。
カップリングが不十分であるのにレベル検出測定結果が肯定的である場合、真のレベルは不変でありながら、検出可能な外部の影響なしにレベル検出結果が不規則に変動する可能性がある。そのため不十分なカップリングを適時に警告することによって、そのような不規則変動の問題を回避することができる。すなわち上記不十分なカップリングの事前アラームおよび/または通知は、本来は示されない「不十分なレベル」のメッセージが誤解釈されることにより、しばしば気泡捕捉器へ過充填がなされることを防止する。
【0019】
他の実施形態においては、ユーザが空の気泡捕捉器を正しく挿入したかをチェックするための気泡捕捉器の検出にカップリング測定が用いられうる。
【0020】
具体的には、複素全インピーダンスZtotがレベル検出電極により判定され、それによりレベル検出が行なわれる。ここで上記インピーダンスの実部が評価されることが好ましい。この実部が測定流体における電気抵抗の測定値であり、その抵抗値は、容器の内壁に膜が形成された場合やサージが生じた場合において、対応する充填レベルの抵抗値よりも大きくなる。よって測定が簡易かつ確実に実行され、流体の膜と対応する充填レベルとの区別が可能となる。
一方、公知技術に係るセンサは、レベル(すなわち十分なレベルであるか否かに係る情報)の検出に際し、複素全インピーダンスZtotの位相が評価されることを基本としており、発信器の発振状態または非発振状態に基づいて行なう。この手法は、位相情報の近似的定量化とみることもできる。実部の評価は、充填レベルの検出をより正確にすることができる。また後述するように、実部は、任意で厚発泡の検出に用いられうる。評価は実部に対するものであるため、より低い動作周波数が使用されうる。
【0021】
本発明の他の発展形態においては、前記レベル検出電極を通じて複素全インピーダンスZtotを判断し、当該複素全インピーダンスZtotの経時的変化を復調器を通じて判断する構成とされており、前記変化は、ボイド率のような不均一性を認識するために、評価ユニットにおいて前記複素全インピーダンスZtotとともに前記レベル検出の判断に用いられる。換言すると、複素インピーダンスZtot(大きさと位相、あるいは虚部と実部)をより高い時間分解能で取得する。
気泡はしばしば流体の表面上で(とりわけ容器が気泡捕捉器である場合は)その位置を変えるので、測定電場が貫く媒体の電気特性は、混入した不溶空気によって、容器を満たした場合または空にした場合よりもかなり頻繁に変化する。このような変動する測定結果が気泡により生じることが分かっているので、当該測定結果は、対応する評価に使用されうる。
【0022】
例えば、レベル検出の測定は、60MHzより高い、好ましくは70MHzより高い周波数で実行される。高い動作周波数を用いる主な目的は、結合容量インピーダンスの全インピーダンスに対する割合を、測定対象の媒体とごく薄い膜との概ね周波数依存するオーム抵抗差を明確に識別かつ取得できる程度まで低減することにある。
【0023】
他の実施形態では、レベル検出の測定は、90MHzより低い、好ましくは78MHzより低い周波数で実行される。動作周波数が非常に高い(例えば100MHz以上の範囲)測定システムを用いれば、容器内側表面上の媒体の膜と、測定すべき媒体の充填レベルを、確実に識別することができる。
しかしながら、このような高周波数のシステムでは、センサシステムと監視対象の容器とのカップリングが正常かどうかを容器が充填される前にチェックする能力の低下は避けられない。すなわち高すぎる動作周波数は、カップリング判定の妨げとなりうる。この場合、最適な動作点(具体的にはレベル検出測定およびカップリング監視に係る動作点)をそれぞれ有する別々の周波数を用い、周波数の切り替えによって測定が行なわれる。
【0024】
レベルおよびカップリングの測定用の電場を生成する手段と、異なる測定電極(C11、C12、C21およびC22)の複素インピーダンスを、振幅、位相、およびこれらの経時変化に基づいて取得する手段とを備える構成とすることが好ましい。
このようなシステムは、制御信号に応じて、ネットワークアナライザをセンサシステムの異なる測定電極に接続することができる。この測定システムは、とりわけ複素インピーダンスを高い分解能で測定するために用いられる。フォーカスアレイは、制御信号に応じて特定の入力信号が特定の出力ポートに至る経路を定める電子論理回路である。このようにして、単一の電子評価ユニットが、上記の各種測定のための異なる電極に対し、簡易な手段により選択的に接続されうる。
【0025】
透析装置の気泡捕捉器を上記の容器としてもよい。まさにこの用途において、容器内における流体レベルの測定が必要である。当該装置が確実に機能するには、一定値かつ特定値の流体レベルを測定することが必要であるためである。充填レベルは、例えば部分的な充填のような最小値としてもよい。空気を含まない回路の場合ならば、気泡捕捉器はできる限り完全に充填されている状態とされる。医療用点滴装置または輸血装置の気泡捕捉器を上記の容器としてもよい。
【0026】
対応する、容器内の流体媒体の充填レベルを静電容量的に測定するための方法においては、前記容器はセンサシステムのレセプタクルに保持されており、前記センサシステムのレベル検出装置は前記容器内の流体のレベルを静電容量的に測定するものであり、前記容器の前記レセプタクルに対する正常なカップリングが、カップリング測定装置を用いて静電容量的に判断される。
ここで上記カップリング測定装置は、正常なカップリングを確実に判断するためにレベル検出の測定結果を利用することもできるし、当該レベル検出中において、測定精度を上げるために、カップリング測定の測定結果が利用されうる。
【0027】
前記レベル検出に係る測定と、前記カップリングに係る測定は、時間的に交互に行なわれるとよい。これにより測定に使用される電場に対する干渉を回避することができる。さらには、同じ電極を異なる周波数で駆動して各測定に使用することができる。加えて、経時的な測定結果の変化を通じて、測定対象の媒体において生じうる気泡の発生を結論づけることができる。
【0028】
医療装置、とりわけ透析装置であって、上記のセンサシステムと、気泡捕捉器が設けられた導電性水溶液の流体回路とを備えるものが提供されうる。前記センサシステムは、前記気泡捕捉器内の流体レベルを測定し、当該測定の結果に応じて、前記流体回路の送液ポンプ、弁、またはスロットルを制御する構成とされている。
【0029】
上記透析装置は、好ましくは腎不全患者の血液から尿中物質を除去するための血液透析装置であり、本発明に係るセンサシステムが装着された気泡捕捉器を体外血液回路に備える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】レベル検出の測定に用いる電気力線とともに示す測定装置の断面図である。
【図2】測定装置の等価回路図である。
【図3】測定装置の模式図である。
【図4】レベル検出用の別の電極と電気力線とともに示す容器の断面図である。
【図5】カップリング測定用の電気力線とともに示す測定装置の断面図である。
【図6】レセプタクルと容器の接触領域に異物が存在する測定装置の断面図である。
【図7】復調器による評価結果を示すタイミング図である。
【図8】加圧レバーとともに示す容器の断面図である。
【図9】電極の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、内部に流体領域22を有する円筒状の容器20の断面を示している。通常の取付時においては、容器20は垂直方向に向けられて、その下側部分に流体が集まるようにされる。したがって示されている断面は水平面となる。
その外周の2つの側において、当該容器はセンサシステム10のレセプタクル30と線接触している。「線接触」は、気泡捕捉器の軟質材の変形によって細く平坦な面接触になる場合を含む意味である。押さえ手段24(図示せず)により、容器とレセプタクルの間で堅固な機械的接触が行なわれるようになっている。
上述の接触面領域に、キャパシタプレートC11、C12、C21およびC22が配設されている。レベル検出の測定中において、プレートC11およびC12は隣接し、かつ直接的に制御電子回路を介して相互接続される。電極C21およびC22がそれに対応して接続される。電圧または電気周波数がキャパシタプレートに印加されると、図示の電気力線が生じる。これらのプレートは、できる限り多くの電気力線が上記流体領域を貫いて案内されるように配設される。レセプタクル30の2つの接触面がなす角度は90°である。角度は60°〜150°であるとよい。
上記接触面同士は、任意の角度をなすようにすることができる。例えば接触面の間が180°である場合、それら接触面は単一平面を形成する。この場合、気泡捕捉器が機械的な手段によって当該接触面に押し付けられる。例えば接触面の間が360°である場合、互いに逆方向を向く接触面の間に気泡捕捉器が配置される。以下に詳述するように、充填レベルは電場の測定によって特定されうる。
【0032】
図2は、レベル検出測定のための等価回路図を示す。ここでは3つのコンデンサが存在する。すなわち電気力線が貫いている容器の第1の壁の静電容量CW1、測定媒体の静電容量C、および直列に接続された第2の壁の静電容量CW2である。測定媒体は導電性を有するために、媒体の抵抗RがCと並列に接続される。全インピーダンスZtotは、Ztot=ZW1+Z+ZW2で与えられる。簡単のために、上記の議論においては、レセプタクル30の壁の静電容量は容器の対応する壁の静電容量と併せて考慮されている。
【0033】
別の実施形態として、レセプタクルの外側に配置されたキャパシタ面C11、C12、C21およびC22のそれぞれに対向するレセプタクルの内側に、金属被覆または金属の表面が存在する構成としてもよい。このような金属被覆または金属の表面は容器20と直接接触し、それぞれキャパシタプレートC11、C12、C21およびC22と気泡捕捉器内の測定媒体と共に、2つのコンデンサの直列接続を形成する。これにより気泡捕捉器との容量結合が改善される。本実施形態において電気接点は、容器20の反対側に位置する、キャパシタプレートC11、C12、C21およびC22の側にある。
【0034】
別の実施形態として、例えば図1とは逆に、キャパシタプレートC11、C12、C21およびC22をレセプタクル30の内側に配設し、キャパシタプレートが容器20と直接接触する構成としてもよい。これにより、レセプタクル30の壁の厚さや材料の影響を最小限に抑えられる。
【0035】
図5は、別回路配置に係るキャパシタプレートC11、C12、C21およびC22により生じる電気力線を示している。この場合、2つの隣接するキャパシタプレートC11とC12またはC21とC22によって電場が生成される。この場合、後述するように、正しいカップリングすなわちレセプタクル30に対する容器20の接触を検出することができる。したがって上述の実施形態と同じ電極が、まずレベル検出に使用され、次いで時間的に交互に行なわれる別個の測定ステップにおいて当該カップリングのチェックに使用される。
キャパシタプレートC11、C12、C21およびC22の表面は、それぞれ7×10mmの寸法を有し、隣接するキャパシタ面同士の間にある間隙は1〜2mmである。上記キャパシタプレートの表面および間隙は他の形状および寸法を有することもできる。例えば図1に係るレベル検出のための共通回路におけるキャパシタ面は、約15(または16)×10mmの寸法を有する。
特許文献1に記載の公知技術とは対照的に、測定は容器の底部ではなく、容器の長手方向に直交する向きに沿う断面を基準にして行なわれる。流体レベルを正確に特定可能とするために、レセプタクル30における所定の位置に容器20が軸方向を揃えて配置されるように、適当な固定手段(図示せず)が用いられる。
【0036】
透析装置の気泡捕捉器など、好ましくは円筒状の容器の外径は、例えば19〜23mmである(壁厚は例えば1.5mm)。当該容器は、好ましくはプラスチックからなる。当該容器は、楕円形状または長円形状を基調とすることもできる。
当該容器は、医療用血液処理カセットの一体的構成部品にすることもできる。この場合、当該容器は任意の形状とすることができる。例えば、複数の平坦な正方形状等の外面を有する構成としてもよい。測定電極および/またはキャパシタ面の(すなわち示されている断面に)幅があるために、様々なサイズの容器20との十分な互換性が確保される。
【0037】
すでに説明した複素インピーダンスZtotは、その大きさと位相、すなわち虚数部分と実数部分により特徴付けられうる。レベル検出の実際の測定効果は、インピーダンスZtotの実数部分に位置付けられることが好ましい。膜と媒体とでインピーダンスZtotの実数部分に対応するコンダクタンス値に差があることから、サージや膜に対する良好な識別や充填レベル変化の検出が可能となる。動作周波数が比較的低い場合、複素インピーダンスZtotは虚数部分によって支配されている。したがって、サージまたは膜と充填レベルとの識別は、より高い動作周波数(例えば80kHz超)で実行することができる。EMCに係る理由により、例えば300MHzより高い周波数は好ましくない。
【0038】
図5においては、右側、すなわち容器20とレセプタクル30の間のキャパシタ面C21およびC22にある程度の間隙が存在する。これは不十分なカップリングを示している。よって図示されているように、カップリングの検出のための電場は、主に空気を通過し、容器20の壁を通過する分が少なくなる。したがって電場の状態を適切に評価することにより、不十分なカップリングを検出することができる。充填レベルの測定に関して上述したように、インピーダンスZ11からZ12、および/またはZ21からZ22の大きさを評価することができる。あるいは公知技術により知られているように、位相を考慮することもできる。これまで説明したカップリングの測定および/またはレベル検出は時間的に交互に行なわれる。このため、図3に示されている制御・評価ユニットは異なる動作状態を定義し、それらに対応してフォーカスアレイの相互接続が個別に制御される。
【0039】
フォーカスアレイの第1の相互接続ではレベル検出が行なわれる。そのために、対応するキャパシタ面に接続されるポート11、12、21および22が相互接続される。具体的には、ポート11とポート12が短絡されてネットワークアナライザの接点1に接続され、ポート21とポート22が短絡されてネットワークアナライザの接点2に接続される。これにより図1に示す電場がネットワークアナライザにより生成されうる。
第2の相互接続においては、ポート11が接点1に配線され、ポート12が接点2に配線されることにより、図5の左側に示すようなカップリングが行なわれる。このときポート21とポート22は接続されない。第3の相互接続においては、ポート21とポート22が、それぞれ接点1と接点2に接続され、図5の右側に示すようなカップリングが行なわれる。
このようにしてネットワークアナライザから得られる3つの測定結果が制御・評価ユニットで受信され、以下に詳述する評価ロジックにより、レベル、カップリング、または発泡の存在をユーザに示す出力値に変換される。必要に応じて、フォーカスアレイの異なる相互接続の各々について個別に最適化された動作周波数で測定が行なわれる。
【0040】
図6は、レセプタクルと容器の間の接触領域に水分または流体が存在する場合を示している。このためカップリング量がかなり大きくなるように、カップリングの測定結果が変化する。またこの水分は、充填レベル測定に好ましくない影響を与える点において有害である。ネットワークアナライザは、この水増しされたカップリングを検出し、制御・評価ユニットに通知する。制御・評価ユニットは、対応するアラームをユーザに対して発することができる。
【0041】
表1は、制御・評価ユニットの論理相互接続を示している。当該ユニットは、第1の相互接続で得られる充填レベル測定の結果を受け取る。この結果は、不十分なレベルを示す0と、十分なレベルを示す1で表わされる。第2および第3の相互接続の測定結果は、論理積演算を用いて組み合わされ、カップリング不良を示す0と、カップリング良好を示す1で表わされる。これらの値は評価ユニットに送られる。
【0042】
【表1】

【0043】
レベル測定に係る値が1かつカップリング測定に係る値が1の場合に限り、評価結果が「OK」とされ、この事実が例えば緑色ライト等によってユーザに通知される。レベル測定に係る値が0の場合、この装置の状態に応じてさらなる場合分けが行なわれる。
透析または洗浄の動作状態であって、カップリングが良好(値1)の場合は、レベルが低下したときにアラームが発せられる。同状態であって、カップリングが不良(値0)の場合は、カップリングまたは気泡捕捉器の位置が不適切な可能性がある旨を示す警告が発せられる。
装置のセットアップ動作状態においては、何も行なわれない。気泡捕捉器が装着されていないためにレベルを見込むことができない、あるいは検出対象のレベルが存在しない可能性があるためである。
セットアップ後の充填動作中においては、少なくとも気泡捕捉器は正しく装着されていると見込まれるため、カップリングが良好(値1)の場合にアラームは発せられない。カップリングが不良(値0)の場合は、適当な警告が発せられる。
【0044】
レベル測定に係る値が1であり、カップリングに係る値が0である場合、事前アラームの状況になる。レベル測定による信号が肯定的であるため、アラームを発する必要はない。しかしながら、流体のレベル自体は良好のままでも、後にカップリング不良のためにレベル測定に係る値が0(不十分なレベル)に変化する可能性があり、実際は当該カップリングによりもたらされたものである不良レベルを示す信号が送られることになる。事前アラームによって、カップリングの改善指示とともに事前警告がユーザに与えられる。このようにして、カップリング不良によって引き起こされる誤アラームを回避すること、とりわけユーザによる測定結果の誤った解釈を回避することが可能になる。
【0045】
また上述のように、カップリング測定によりカップリングの増大も検出できる。この状態は表1に値2で示されている。当該検出により、レベル測定に係る値とは無関係に、リーク報知器より警告メッセージが発せられる。
【0046】
上述のように、センサシステムは厚発泡も認識することを要する。厚発泡は、例えば測定流体が血液である場合に形成される。気泡捕捉器に耐圧接続された配管系にリークが生じると、空気が流体すなわち血液の循環内に進入しうる。例えば血液ポンプの場合、流体を送る際のシステム全体の挙動により、発泡の比率および分布は経時的に一定値に留まらない。したがって測定された電場に経時的な変化が生じ、測定される複素インピーダンスZtotが変化する。図7は位相変化の波形を示している。
この波形は、測定複素インピーダンスZtotから復調器によって生成され、制御・評価ユニットに送られる。評価ユニットはこのように変動する結果を受け取ると、ユーザは適当なリーク警告(光、音響または触覚による)を与えられうる。あるいは処理動作を停止または開始不可にすることができる。復調器はまた、測定複素インピーダンスZtotの振幅に係る値を生成し、それを制御・評価ユニットに送ることもできる。
【0047】
上記センサシステムは、個々の測定を十分な頻度で行なうことができるように構成される。それにより測定は、数〜数百ミリ秒の範囲内ごとに行なわれる。
【0048】
図8は、センサシステムのレセプタクル30に容器20を係止するシステムの例を示している。2本のアーム24が、レセプタクルの旋回軸26に取り付けられている。図示しないばねの補助により、容器が上述の接触面に押し付けられうる。
【0049】
図9は、図4のA−A方向から見た電極配置の様々な別例を示している。図9の(a)においては、レベル検出に用いられる電極対C11およびC12は、上述の主要な実施形態に対応して同じサイズを有している。
【0050】
これに代えて、レベル検出とカップリング検出に異なる電極を用いてもよい。図9の(b)においては、電極Cはレベル測定のみを担当し、電極C11’およびC12’はカップリング検出を担当する。これらの電極は容器の軸方向について異なる並びとされるため、複数の測定を同時に行なうことができる。ここでは詳述しないが、この場合、当然に異なる構成の分析・評価ユニットが必要となる。
図9の(c)と(d)に示すように、単一のメイン電極Cをレベル測定に使用することもできる。カップリング測定動作中においてメイン電極Cは、対応する補助電極C12”と協働して動作する。図9の(c)においては、補助電極C12”が主要電極Cの片側に沿って延びている。図9の(d)においては、メイン電極が長円形(あるいは円形)であり、補助電極C12”がその外周側に同心状に配置されている。
【0051】
本発明は、透析装置等の医療装置、とりわけそのような装置の気泡捕捉器に好適に用いられうる。この気泡捕捉器の主な目的は、その断面を拡大することにより空気を分離することである。流体は気泡捕捉器の下端面から流れ出すため、生じうる気泡は流れ込む流体から分離される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の流体媒体(22)の充填レベルを静電容量的に測定するためのセンサシステム(10)であって、
収容された容器の外面に接触する2つの接触領域、および各接触領域に配置されて前記容器の充填レベルを静電容量的に検出する少なくとも1つのレベル検出電極(C、C、C11、C12、C21、C22)が設けられたレセプタクル(30)を備え、
前記容器の前記レセプタクルに対する正常なカップリングを静電容量的に判断するカップリング測定装置(C11、C12、C21、C22)を備えることを特徴とする、センサシステム。
【請求項2】
前記レベル検出電極は、分割された複数の電極領域を有し、
前記カップリング測定装置は、各検出電極の電極領域による静電容量的な測定を通じて前記カップリングを判断することを特徴とする、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記カップリング測定装置は、各接触領域において、前記レベル検出電極(C、C)とは異なる2つの電極対(C11’、C12’、C21、C22)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記電極対は、前記レベル検出電極に対し、前記容器の長手方向について軸がずれる配置とされていることを特徴とする、請求項3に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記カップリング測定装置は、例えば前記容器と前記レセプタクルとの間に間隙が存在する場合のように弱すぎるカップリングと、例えば前記接触領域に流体やその他の異物が存在する場合のように強すぎるカップリングの双方を、検出可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記カップリング測定装置は、前記容器の充填レベルの測定により十分なレベルが検出されると同時に、前記カップリング測定により不十分なカップリングが検出されたとき、当該不十分なカップリングをユーザに報知する事前アラームを動作させることが可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記センサシステムは、前記レベル検出電極を通じて複素全インピーダンスZtotを判断し、前記全インピーダンスの評価を通じて前記レベル検出を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記センサシステムは、前記全インピーダンスの実部の評価を通じて前記レベル検出を実行するように構成されている、請求項7に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記センサシステムは、前記レベル検出電極を通じて複素全インピーダンスZtotを判断し、当該複素全インピーダンスZtotの経時的変化を復調器を通じて受け取る構成とされており、
前記変化は、ボイド率のような不均一性を認識するために、評価ユニットにおいて前記複素全インピーダンスZtotとともに前記レベル検出の判断に用いられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記センサシステムは、60MHzより高い、好ましくは70MHzより高い周波数で前記レベル検出に係る前記測定を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記センサシステムは、90MHzより低い、好ましくは78MHzより低い周波数で前記レベル検出に係る前記測定を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項12】
レベルおよびカップリングの測定用の電場を生成する手段と、
異なる測定電極(C11、C12、C21およびC22)の複素インピーダンスを、振幅、位相、およびこれらの経時変化に基づいて取得する手段とを備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項13】
前記容器は、透析装置、点滴装置、または輸血装置における気泡捕捉器であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項14】
容器内の流体媒体(22)の充填レベルを静電容量的に測定するための方法であって、
前記容器はセンサシステムのレセプタクルに保持されており、
前記センサシステムのレベル検出装置(C、C、C11、C12、C21、C22)は前記容器内の流体のレベルを静電容量的に測定するものであり、
前記容器の前記レセプタクルに対する正常なカップリングが、カップリング測定装置(C11、C12、C21、C22)を用いて静電容量的に判断されることを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記レベル検出に係る測定と、前記カップリングに係る測定は、時間的に交互に行なわれることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
医療装置、とりわけ透析装置であって、
請求項1から15のいずれか一項に記載のセンサシステムと、
気泡捕捉器が設けられた導電性水溶液の流体回路とを備え、
前記センサシステムは、前記気泡捕捉器内の流体レベルを測定し、当該測定の結果に応じて、前記流体回路の送液ポンプ、弁、またはスロットルを制御する構成とされている、医療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−519077(P2013−519077A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551630(P2012−551630)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051623
【国際公開番号】WO2011/095573
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】