説明

容器のキャップ

【課題】良好な操作感を実現し、使い勝手を向上させる。
【解決手段】キャップ本体10と、ヒンジ31、31を介してキャップ本体10の上面を開閉する蓋体20とを一体成形し、キャップ本体10の操作片17上の係止フック18の頂面に内側の斜面18a、外側の斜面18bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液や、糊、マヨネーズ、油などの各種の液体や粘稠液を収納する容器のキャップであって、片手で便利に開放操作可能な容器のキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジを介して開閉する蓋体付きの容器のキャップが知られている(特許文献1)。
【0003】
このものは、ねじ付きのキャップ本体に対し、ヒンジを介して開閉する蓋体を一体成形して構成されている。キャップ本体の外周には、ヒンジと相対向する位置に上向きの操作片が形成されており、操作片を押し操作して上部を内側に弾性変形させると、操作片の上端が閉鎖位置の蓋体の下に入り込み、蓋体を上方に開放させるための指掛けが形成されるから、この指掛けを押し上げるようにして蓋体を上方に開放させることができる。なお、蓋体は、閉鎖位置において、キャップ本体の上端の嵌合リブに外側から嵌合し、嵌合リブの外周に断続的に形成する係合突条を蓋体の内周の係合凹溝に係合させることにより、閉鎖位置にロックされる。
【特許文献1】特開平10−338260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、閉鎖位置の蓋体は、キャップ本体側の嵌合リブの外周の係合突条が蓋体の内周の係合凹溝に係合してロックされているから、上方に開放させるとき、複数の係合突条が順に係合凹溝から外れることになり、一挙に開放することができず、良好な操作感が得られないという問題があった。また、操作片は、単に蓋体を開放させるための指掛けを形成するだけであり、複雑な金型を使用するにしては、付加価値が高くないという問題もあった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、蓋体のロック機能の他、蓋体の閉鎖時、開放時における補助機能を操作片に集中して搭載することによって、操作片の付加価値を高くするとともに、良好な操作感を実現し、使い勝手を向上させることができる容器のキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、キャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体の上面を開閉する蓋体とを一体成形してなり、キャップ本体の外周には、押し操作により上部を内側に弾性変形させる上向きの操作片をヒンジと対向する位置に形成し、操作片の上端には、蓋体を閉鎖位置にロックする外向きの係止フックを設け、係止フックの頂面には、操作片を押し操作することにより閉鎖位置の蓋体を押し上げる内側の斜面と、蓋体を閉鎖位置に押し下げることにより操作片の上部を内側に弾性変形させる外側の斜面とを形成することをその要旨とする。
【0007】
なお、蓋体には、操作片の上方にオーバハングする押上片を設けることができ、キャップ本体との相対位置を規制する位置決めリブを設けることができる。
【0008】
ただし、この発明において、内側、外側は、それぞれキャップ本体の径方向であって、キャップ本体の軸心に近い側、遠い側をいう。また、内向き、外向きも、それに準ずる。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、操作片の上端の外向きの係止フックは、蓋体を閉鎖位置にロックするが、操作片を押し操作して上部を内側に弾性変形させることにより、操作片とともに内側に移動して蓋体のロックを解放することができる。そこで、蓋体は、操作片を押し操作した指、たとえば親指をそのまま上方に移動させることにより、一挙に上方に開放することができ、片手操作により軽快な操作感を実現することができる。
【0010】
なお、蓋体を開放させるとき、操作片を押し操作して弾性変形させると、係止フックによる蓋体のロックが解放されると同時に、係止フックの頂面の内側の斜面を介して蓋体が上方に押し上げられるから、蓋体のロックが不用意に復活してしまうおそれがない。一方、係止フックの頂面の外側の斜面は、蓋体を閉鎖位置に押し下げて閉じる際に、操作片の上部を内側に弾性変形させ、係止フックによる蓋体のロックを一時的に無効にする。そこで、蓋体の開閉操作を繰り返しても、係止フックが摩耗したり変形したりするおそれがなく、係止フックによるロック機能を正常に維持することができる。すなわち、係止フックの頂面の斜面は、蓋体の開放操作時、閉鎖操作時において、それぞれ蓋体を押し上げ、係止フックによるロックを一時的に無効にするという開閉操作時の補助機能を分担している。
【0011】
蓋体に設ける押上片は、蓋体を開閉するヒンジと対向する位置において、キャップ本体の操作片の上方にオーバハングする。そこで、操作片を押し操作した指を上方に移動させると、そのまま指が押上片に掛かり、蓋体を一層軽快に開放させることができる。また、蓋体に設ける位置決めリブは、蓋体を閉鎖位置に閉じるとき、蓋体とキャップ本体との相対位置関係を正しく規制し、たとえば、蓋体に形成する栓体によりキャップ本体側の注出ノズルが正しく閉塞されるように蓋体を誘導し、ヒンジの強度を実質的に補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0013】
容器のキャップは、キャップ本体10と、蓋体20とを一体成形してなる(図1、図2)。ただし、蓋体20は、左右の薄肉のヒンジ31、31を介してキャップ本体10に連結され、キャップ本体10の上面を開閉することができる。
【0014】
キャップ本体10は、天板14を介して同心円状に配列する下向きの外筒11、中間筒12、内筒13を備えている。外筒11より短い中間筒12の内面には、容器Yの口部Y1 の雄ねじY2 に適合する雌ねじ12aが形成されており、中間筒12より短い内筒13は、容器Yの口部Y1 に嵌入可能である。そこで、キャップ本体10は、雌ねじ12a、雄ねじY2 を介して容器Yの口部Y1 に装着し、内筒13を介して口部Y1 を水密に密栓することができる。なお、雄ねじY2 の下側には、キャップ本体10の戻り止め用のラチェットY3 が形成されている。
【0015】
天板14は、ヒンジ31、31と反対側の外筒11と中間筒12との間が上下に連通する略円弧状の開口部15として切り欠かれており(図2、図3)、開口部15を除く外筒11、中間筒12の間は、放射状に配列する複数の補強板12b、12b…を介して連結されている。また、中間筒12の下端外周には、容器Y側のラチェットY3 に係合するキャップ本体10の戻り止め用の爪12c、12cが垂設されている。中間筒12の天面には、容器Yの口部Y1 の上端面に当接するリング状のシール12dが形成されている。
【0016】
天板14の周囲には、上向きのリブ14aが形成されている(図1、図2)。また、天板14上には、注出ノズル16が開口部15寄りの偏心位置に立設されており、注出ノズル16のノズル孔16aは、小径に絞って内筒13の天面に開孔している。リブ14aの外側には、外筒11の上端面11aがリング状に形成されており、外筒11の上半部は、下向きの段11bを介して内側に肉厚になっている。
【0017】
外筒11のヒンジ31、31と対向する位置には、ヒンジ31、31に向けて互いに平行に外筒11を切断する上向きのスリット17a、17aを介し、上向きの操作片17が形成されている。操作片17の上端部には、外側に滑らかに膨出する膨出部17bが形成され、操作片17の上端には、外向きの係止フック18が形成されている。なお、係止フック18は、開口部15側に部分的に突出するようにして形成されており、係止フック18の頂面には、内側の斜面18a、外側の斜面18bが形成されている。係止フック18は、外筒11の外周と同心円状に湾曲して形成されている。
【0018】
蓋体20は、上方に膨出する低いドーム状に形成されている。蓋体20は、全体的に、キャップ本体10の外筒11の外径と同径に形成されている。
【0019】
蓋体20の天面には、キャップ本体10の注出ノズル16に嵌合してノズル孔16aを閉じる栓21a付きの栓体21が垂設されている。また、蓋体20には、キャップ本体10の係止フック18に対応する係止孔22がヒンジ31、31と対向する位置に水平に径方向に開口され、係止孔22の下側には、外向きの押上片23が形成されている。押上片23の先端部下面には、円弧状のリブ23aが形成されており、押上片23の内側端面には、キャップ本体10の係止フック18上の斜面18bに対応する斜面23bが形成されている。また、係止孔22の直近内側には、キャップ本体10の係止フック18に対応するようにして、一対の三角板状の係止片24、24が天面から垂設されている。さらに、係止片24、24の両側には、ヒンジ31、31に向けて互いに平行な位置決めリブ25、25が垂設して形成されている。蓋体20の下面外周部は、外筒11の上端面11aに対応するリング状の着地面26となっている。
【0020】
ヒンジ31、31は、それぞれキャップ本体10側、蓋体20側のベース31a、31aの間に形成されている。ヒンジ31、31の間には、帯板32が配設されている。帯板32の両端は、薄肉の補助ヒンジ32a、32aを介してキャップ本体10、蓋体20に連結されている。ただし、蓋体20には、帯板32を収納するために、切欠部32bが形成されている。そこで、蓋体20は、ヒンジ31、31を介してキャップ本体10の上面を開閉することができ(図2の実線、二点鎖線)、帯板32の弾性により、蓋体20を最大開き角度θ1 =130〜140°程度の一定角度に静止させることができ、開き角度θ<θ2 の蓋体20を閉じ方向に付勢し、開き角度θ>θ2 の蓋体20を開き方向に付勢することができる。ただし、θ2 は、死点角度であり、40°≦θ2 ≦60°程度に設定することが好ましい。
【0021】
蓋体20は、開き角度θ=0°の閉鎖位置において(図2の二点鎖線)、着地面26が外筒11の上端面11aに着地し、位置決めリブ25、25のヒンジ31、31側の先端面がリブ14aの外面に係合することにより、キャップ本体10との相対位置を正しく規制することができる。また、閉鎖位置の蓋体20は、栓21a付きの栓体21を介して注出ノズル16のノズル孔16aを閉塞するとともに、係止フック18が係止孔22に内側から弾発的に係合することにより、開放不能にロックされる。また、押上片23は、操作片17の上方にオーバハングする。
【0022】
蓋体20を閉鎖するとき、蓋体20の斜面23bは、閉鎖位置の直前において、キャップ本体10側の係止フック18上の外側の斜面18bに上方から係合する(図4)。そこで、蓋体20を閉鎖位置にまで押し下げると(同図のK1 方向)、斜面23b、18bを介して操作片17の上部が内側に弾性変形し(同図のK2 方向)、係止フック18も同方向に移動するから、蓋体20は、円滑に閉鎖位置に閉じることができる。なお、蓋体20が閉鎖位置に到達すると、斜面23bは、斜面18bの下側に外れ、操作片17の上部が元の位置に弾性復帰し、係止フック18が係止孔22に係合して蓋体20をロックする。すなわち、斜面18bは、斜面23bとともに、係止フック18による蓋体20のロックを一時的に無効にすることができる。なお、蓋体20は、開き角度θ<θ2 に閉じると、帯板32を介して閉じ方向に付勢されるから、斜面23bが斜面18bに係合しても必ずしも停止することなく、一挙に閉鎖位置にまで閉じることも可能である。
【0023】
閉鎖位置にある蓋体20を開放操作するときは、容器Yを片手で把持し(図5)、親指で操作片17を押し操作することにより操作片17の上部を内側に弾性変形させる(図6の矢印K3 方向)。操作片17が内側に弾性変形すると、係止フック18が係止孔22から内側に外れ、同時に、係止フック18上の内側の斜面18aが蓋体20側の係止片24、24に係合して蓋体20を上方に押し上げる(同図の矢印K4 方向)。なお、操作片17は、押し操作されると、係止フック18の背面がリブ14aの外面に当接することにより弾性変形の最大量が規定され、それ以上に変形することがない。また、操作片17に対する押圧力を除去して操作片17を元の形に弾性復帰させても、係止孔22から外れた係止フック18は、相対的に係止孔22の下に位置して係止孔22に再係合することがない。そこで、蓋体20は、帯板32の弾性により、係止フック18のロックが解放された状態のまま、斜面23bが斜面18bに部分的に係合してキャップ本体10上に待機する。
【0024】
そこで、そのまま親指を上方に移動させて蓋体20の押上片23を押し上げ(図5の矢印K5 方向)、開き角度θ>θ2 まで蓋体20を開くと、蓋体20は、帯板32の弾性により開き角度θ=θ1 にまで一挙に自動的に開き、同時に注出ノズル16のノズル孔16aを開放する。そこで、たとえば容器Yを押し潰すようにして変形させ、ノズル孔16aを介して内容物を注出させて使用すればよい。なお、このようにして押上片23を押し上げるとき、操作片17の上端部の膨出部17bは、操作片17の上端を親指の腹に知覚させ、押上片23の下面のリブ23aは、親指の指先に対する掛りを生じさせるから、帯板32による死点角度θ2 以降の自動開放動作と相俟って、極めて良好な操作感を得ることができる。
【0025】
また、開放状態の蓋体20を閉じるときは、蓋体20を閉じ方向に押し(図2の矢印K6 方向)、開き角度θ<θ2 まで駆動すればよい。以後、蓋体20は、帯板32の弾性により、閉鎖位置にまで一挙に自動的に閉じ、栓21a、栓体21を介して注出ノズル16のノズル孔16aを再閉塞するとともに、係止フック18を介して閉鎖位置にロックされる。
【0026】
以上の説明において、蓋体20の係止片24は、一対を設けるに代えて、1枚のみとしてもよい(図7)。また、キャップ本体10は、雌ねじ12a、雄ねじY2 を介して容器Yの口部Y1 に装着するに代えて、他の任意のねじなしの装着方法によってもよい。なお、キャップ本体10、蓋体20、帯板32は、たとえばポリプロピレン、高密度ポリエチレンのような適度の弾性を有する耐薬品性のプラスチック材料により一体成形するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】全体構成斜視説明図
【図2】全体構成縦断面説明図
【図3】蓋体を閉じた底面図
【図4】要部拡大動作図(1)
【図5】使用状態説明図
【図6】要部拡大動作図(2)
【図7】他の実施の形態を示す要部斜視図
【符号の説明】
【0028】
10…キャップ本体
17…操作片
18…係止フック
18a、18b…斜面
20…蓋体
23…押上片
25…位置決めリブ
31…ヒンジ

特許出願人 大正薬品工業株式会社
伸晃化学株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体と、ヒンジを介して前記キャップ本体の上面を開閉する蓋体とを一体成形してなり、前記キャップ本体の外周には、押し操作により上部を内側に弾性変形させる上向きの操作片を前記ヒンジと対向する位置に形成し、前記操作片の上端には、前記蓋体を閉鎖位置にロックする外向きの係止フックを設け、該係止フックの頂面には、前記操作片を押し操作することにより閉鎖位置の前記蓋体を押し上げる内側の斜面と、前記蓋体を閉鎖位置に押し下げることにより前記操作片の上部を内側に弾性変形させる外側の斜面とを形成することを特徴とする容器のキャップ。
【請求項2】
前記蓋体には、前記操作片の上方にオーバハングする押上片を設けることを特徴とする請求項1記載の容器のキャップ
【請求項3】
前記蓋体には、前記キャップ本体との相対位置を規制する位置決めリブを設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載の容器のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−8553(P2007−8553A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193396(P2005−193396)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(592235075)大正薬品工業株式会社 (11)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】