説明

容器のキャップ

キャップの装着時には係止部材によって栓部材を確実に口部にロックしつつ、開栓の際にはホルダー部材を上方に引き抜くのみで容易かつ迅速に栓部材とともにキャップを口部から取り外せるようにする。 そのために、ゴム栓3を抱持するように容器口部2に被冠されるタコ足状の係止部材13と、係止部材13の複数の係止片12の外周側に装着されるホルダー部材14とを備える。各係止片12上下方向中途部の薄肉の折曲部12aを介して上側部12Uと下側部12Dとが接続されてなり、上側部12Uは、その外周側にホルダー部材14が装着された状態でゴム栓3に下方側から係止され、下側部12Dは、その外周側にホルダー部材14が装着された状態で容器口部2に下方側から係止されるようにする。そして、ホルダー部材14の下端が上側部12Uから抜けることを阻止する係止凸部12e,14aを、ホルダー部材14と係止部材13とに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム栓などの栓部材が嵌め込まれた容器の口部に装着して、ゴム栓を確実に保持する容器のキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬剤を収容したバイアルなどの容器では、薬剤を衛生的に保管・運搬するために、充分に滅菌されたゴム栓により容器口部の薬剤通路を閉塞しておくとともに、口部の周囲にゴム栓へのロック手段を具備させ、これによりゴム栓の弛みや、ゴム栓と容器口部との間に形成される隙間からの空気流入等による薬剤の品質低下を防止するようにしている。
【0003】
かかるロック手段として、本願出願人は既に下記の特許文献1において、ゴム栓の上部を覆う冠状部材の上部に、この外周を口部内方側に緊密に締結する緊締リングを着脱自在に形成し、この緊締リングを下方の口部側に押し下げたときに該リングを冠状部材から切り離し、冠状部材の外周面に装着するようにしたキャップを開示している。
【特許文献1】特開平09−278051号公報(図6、図7)
【0004】
特に薬剤用容器の場合、ゴム栓による密封を確実にするために容器とゴム栓の密着度が高く設定されていることが多い。このため、上記従来のキャップ(ロック手段)は容易に取り外せても、口部に嵌め込まれたゴム栓は取り外しにくく、迅速性が要求される医療現場において不便であった。
【発明の開示】
【0005】
そこで、本発明は、キャップの取り外し時に同時にゴム栓を容器口部から引き抜くことが可能な容器のキャップを提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、本発明は、容器の口部に嵌め込まれた栓部材を覆うように装着されるキャップであって、天板部の周縁に複数の係止片を周方向に配設してなる係止部材と、該係止部材の複数の係止片の外周側に装着されるホルダー部材とを備え、各係止片は天板部周縁から下方に延設され、各係止片は、上下方向中途部の薄肉の折曲部を介して上側部と下側部とが接続されてなり、該上側部は、その外周側にホルダー部材が装着された状態で前記栓部材に下方側から係止され、前記下側部は、その外周側にホルダー部材が装着された状態で前記容器口部に下方側から係止され、前記ホルダー部材は前記係止部材に対して上下に相対移動可能であり、ホルダー部材の下端が係止片の上側部よりも上方に相対移動することを阻止するように係止する係止凸部が、前記ホルダー部材及び/又は係止部材に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
かかる本発明のキャップによれば、口部への装着時(キャッピング時)には、ホルダー部材を下方に押し込んで、該ホルダー部材により複数の係止片全体を抱持させることで、係止片の下側部を容器口部に下方側から係止させ、確実な栓部材のロックを行うことができる。一方、開栓持には、ホルダー部材を上方に引き抜いていくと、ホルダー部材が係止片の下側部から上方に離脱した後、係止凸部の係止によってホルダー部材とともに係止部材が上方に引き抜かれる。さらにこのとき、ホルダー部材の下端が係止片の上側部の外周を抱持しており、これにより該上側部が栓部材に下方側から係止しているため、ホルダー部材及び係止部材とともに栓部材もが上方に引き抜かれるようになる。このように、本発明によれば、栓部材の確実なロックを行いつつも、ホルダー部材の引き抜きという単一の操作のみで、ホルダー部材、係止部材並びに栓部材を同時に取り外すことが可能である。
【0009】
なお、上記係止凸部は、ホルダー部材の下端と、係止部材の係止片の上側部の外周とに設けることが好ましい。これによれば、ホルダー部材を係止片の下側部から完全に離脱させるとともに、上側部をホルダー部材により確実に抱持させた状態で係止凸部同士を係止させることができる。また、容器口部への下側部の係止をより確実ならしめるため、係止片外周にホルダー部材を装着した状態における下側部外径を上側部外径よりも若干大きくして、下側部がホルダー部材により確実に径方向内方へ締め付けられるようにすることが好ましい。
【0010】
上記した本発明のキャップにおいて、係止凸部は、ホルダー部材の下端内周と、係止部材の係止片上側部の外周とに設けられ、係止部材の上端とホルダー部材の下端とが、ホルダー部材を下方に押し込むことにより破断可能な連結部を介して一体成形されているものとすることができる。これによれば、ホルダー部材下端内周の係止凸部に連結部が設けられるようになって、ホルダー部材の内周面の凹凸部位を下端のみに集約することができ、ホルダー部材の押し込み時や引き抜き時に、連結部の破断跡による無用なひっかかりが生じることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[図1]本発明の一実施例に係るキャップの装着の際の縦断面図である。
[図2]同キャップの全体正面図である。
[図3]同キャップの装着完了状態の縦断面図である。
[図4]同キャップの取り外し工程を示す縦断面図である。
[図5]同キャップの取り外し工程を示す縦断面図である。
[図6]同キャップの取り外し工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図示実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図6は本発明の一実施例に係るコレット式樹脂キャップ10を示しており、該キャップ10は、バイアル瓶1(容器)の上部口部2に内嵌されたゴム栓3(栓部材)を覆うように口部2に装着される。
【0014】
バイアル1はガラス製の透明容器であって、口部2は円筒状を呈し、口部2の外周面にはフランジ部2aが突設されている。このフランジ部2aと口部2の上端面(口上面)との間には上下方向の隙間4が形成されている。
【0015】
ゴム栓3は、口部2内に嵌め込まれる密栓部3aと、口部2の上端面に接触する鍔部3bとを一体に備えている。鍔部3bの外径は、口部2の上端面の外径よりも大きく、口部2のフランジ部2aの外径とほぼ同一となされている。密栓部3aの側部には、その下端側から上方に延びる凹部3cが形成されており、この凹部3c上端が口部2上端よりも上方に位置している半打栓状態においては、ゴム栓3と口部2との間に凹部3cによる通気路が形成されるようになっている。一方、鍔部3bが口部2の口上面に接触するまでゴム栓3を口部2に嵌め込んだ全打栓状態においては、凹部3c上端は口部2上端よりも容器内方(下方)に位置して、口部2を気密状に密封し得るようになっている。
【0016】
キャップ10は、ゴム栓3に当接する円盤状の天板部11の周縁に複数の係止片12をタコ足状に周方向に配設してなる係止部材13と、該係止部材13の複数の係止片12の外周側に装着される円筒状のホルダー部材14とから主構成されている。これら係止部材13とホルダー部材14とは、図1及び図2に示すように、製造時において一体成形され、バイエル1の充填後のキャッピング時にホルダー部材14の押し込み操作によって両者を連結しているリブ状の連結部15を破断することで、両者が別体となる。連結部15は、周方向数カ所(例えば4カ所)に設けることができる。なお、キャップ10は、焼却廃棄可能な樹脂材料から成形するのが好ましい。
【0017】
図示実施例では、8つの係止片12が口部2を包囲するように周方向に均等配置され、隣接する2つの係止片12の間にはスリットが形成されている。各係止片12は、上下方向に長尺状に構成され、天板部11の周縁から下方に延設されており、その下端側が径方向に拡縮するように弾性変形可能であって、非変形状態では図1に示すように下端側が上端側よりも径方向外方に拡がるように形成されている。さらに、各係止片12は、上下方向中途部の薄肉の折曲部12aを介して上側部12Uと下側部12Dとが接続された構成となっており、係止片12の上側部12Uが縮径したままの状態であっても、下側部12Dを拡径させることが可能である。なお、図示実施例では、上側部12U及び下側部12Dはそれぞれ実質的に剛性を有し、係止片12の上端部と、上側部と下側部との接続部に薄肉の折曲部を設けることで、係止片12全体としてその下端側が径方向に拡縮するように変形可能に構成している。
【0018】
係止片12の上側部12Uの内周面には、口部2に嵌め込まれたゴム栓3の鍔部3bと口部2外周のフランジ部2aとの間に径方向外方から嵌り込んで、鍔部3bに下方側から係止可能な係合凸部12bが設けられている。また、係止片12の下側部12Dの内周面には、口部2外周のフランジ部2aに下方側から係止可能な係合凸部12cが設けられている。係止片12の下端には、径方向外方に突出する張出部12dが設けられている。さらに、係止片12の上側部12Uの外周面には、後述するホルダー部材14の下端の内向き係止凸部14aに対して係合する係止凸部12eが設けられている。
【0019】
ホルダー部材14は、天板部11の外径よりも若干大きな内径を有する円筒からなり、複数の係止片12の外周に装着されるように係止部材13に対して上下に相対移動可能である。該ホルダー部材14の上端には径方向外方に突出するフランジ部14bが設けられ、ホルダー部材14の下端には径方向内方に突出する内向き係止凸部14aが設けられている。この係止凸部14aの内径は、天板部11の外径とほぼ一致するように設計されている。ホルダー部材14の軸長は、係止部材13の軸長とほぼ等しい。上記連結部15は、係止凸部14aの内周面に接続されている。
【0020】
上記ホルダー部材14の係止凸部14aと係止部材13の係止凸部12eとは、ホルダー部材14を押し込むときには通過するが、ホルダー部材14を引き抜くときには互いに係止するように鉤状に形成されている。したがって、ホルダー部材14を引き抜く際には、係止凸部12e,14aの係止によって、ホルダー部材14の下端が係止片12の上側部12Uよりも上方に相対移動することが阻止され、上側部12Uを縮径状態で抱持したままホルダー部材14とともに係止部材13を引き抜き得るようにしている。
【0021】
上記実施例に係るキャップ10を装着するには、図1に示すように係止部材13とホルダー部材14とが一体成形されたキャップ10の係止部材13を、ゴム栓3が内嵌されたバイアル口部2に被冠し、ホルダー部材14を下方に押し込むと、連結部15が破断して、係止部材13に対してホルダー部材14が下方に移動して、図3に示すようにホルダー部材14が複数の係止片12の外周に装着された状態となる。かかる状態では、ホルダー部材14により複数の係止片12が径方向内方に締め付けられて縮径され、係止片12の上側部12Uの係合凸部12bがゴム栓3の鍔部3bに下方側から係止されるとともに、下側部12Dの係合凸部12cがバイアル口部2のフランジ部2aに下方側から係止され、かかる係止部材13によってゴム栓3が確実にロックされる。
【0022】
開栓時には、ホルダー部材14を上方に引き抜いていくと、図4に示すように係止片12の下側部12Dからホルダー部材14が上方に離脱して、ホルダー部材14下端の係止凸部14aが係止片12の上側部12U外周の係止凸部12eに下方側から係止する。さらにホルダー部材14を上方に引き抜くと、上側部12Uを縮径状態、すなわち、ゴム栓3を保持した状態のまま、図5及び図6に示すようにホルダー部材14とともに係止部材13及びゴム栓3が上方に引き抜かれる。このように、把持面積の大きなホルダー部材14を引き抜くのみでゴム栓3をも容易に口部2から取り外すことができ、本実施例のキャップ10を取り外した後にゴム栓3をこじ開けるという作業が必要ではないので、ゴム栓3を確実にロックしつつも、必要時には迅速かつ容易に開栓することが可能である。
【0023】
本発明は図示実施例に限定されるものではなく、適宜設計変更することができる。例えば、係止片の外周面とホルダー部材の内周面とにネジを設けて、係止部材とホルダー部材とをネジ嵌合させてもよく、この場合はネジが上記係止凸部を構成する。
【0024】
本発明によれば、キャップの装着時には係止部材によって栓部材を確実に口部にロックしつつ、開栓する際にはホルダー部材を上方に引き抜くのみで容易かつ迅速に栓部材とともにキャップを口部から取り外すことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に嵌め込まれた栓部材を覆うように装着されるキャップであって、天板部の周縁に複数の係止片を周方向に配設してなる係止部材と、該係止部材の複数の係止片の外周側に装着されるホルダー部材とを備え、各係止片は天板部周縁から下方に延設され、各係止片は、上下方向中途部の薄肉の折曲部を介して上側部と下側部とが接続されてなり、該上側部は、その外周側にホルダー部材が装着された状態で前記栓部材に下方側から係止され、前記下側部は、その外周側にホルダー部材が装着された状態で前記容器口部に下方側から係止され、前記ホルダー部材は前記係止部材に対して上下に相対移動可能であり、ホルダー部材の下端が係止片の上側部よりも上方に相対移動することを阻止するように係止する係止凸部が、前記ホルダー部材及び/又は係止部材に設けられていることを特徴とする容器のキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載の容器のキャップにおいて、係止凸部は、ホルダー部材の下端内周と、係止部材の係止片上側部の外周とに設けられ、係止部材の上端とホルダー部材の下端とが、ホルダー部材を下方に押し込むことにより破断可能な連結部を介して一体成形されていることを特徴とする容器のキャップ。
【請求項3】
請求項1に記載の容器のキャップにおいて、上記係止凸部は、ホルダー部材の下端と、係止部材の係止片の上側部の外周とに設けられていることを特徴とする容器のキャップ。
【請求項4】
請求項1に記載の容器のキャップにおいて、係止片外周にホルダー部材を装着した状態における下側部外径を上側部外径よりも大きいことを特徴とする容器のキャップ。

【国際公開番号】WO2004/108549
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506777(P2005−506777)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007705
【国際出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】