説明

容器の蓋

【課題】蓋をしたまま容器内の内容物を使用者が容易に飲食することのでき、且つ、漏れ防止機能を有する容器の蓋を提供する。
【解決手段】厚さ方向に貫通する第1の貫通面及び第2の貫通面によって構成される貫通切り込み部5を有する天蓋部3と、容器に嵌着される保持部4とを備え、天蓋部と保持部が一体の弾性体によって形成され、天蓋部を蓋の表側から裏側に向かう方向に凸に湾曲した形状にすることにより、蓋の裏側から表側に向かう方向の圧力が第1の閾値未満であれば貫通切り込み部は閉じた状態を保ち、蓋の表側から裏側に向かう方向の圧力が第2の閾値(第1の閾値より小さい値)以上であれば貫通切り込み部は閉じた状態を維持できず、第1の貫通面と第2の貫通面との間に隙間ができるようにしていることを特徴とする容器の蓋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の蓋に関し、特に蓋をしたまま容器内の内容物を使用者が飲食することのできる容器の蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
コップやペットボトルなど飲料容器は、口が開いた状態で容器が転倒すると内容物である飲料がこぼれだしてしまう。特に、高齢者や手が不自由な入院患者などは手の震えなどにより内容物である飲料をこぼす可能性が高くなる。飲料がこぼれた場合、衣服等が汚れるだけでなく、内容物が熱いときには火傷のおそれもあり危険である。また、高齢者や乳幼児、あるいは手が不自由な入院患者などにとっては、コップやペットボトルなどの飲料容器を傾けて注出量をコントロールすることが難しい。
【0003】
このため、例えばストロー形状や乳首形状等の吸い口を有し蓋をしたまま飲料容器内の内容物である飲料を使用者が飲むことのできる飲料容器用蓋が各種開発されている。このような飲料容器用蓋の中には、より安全性を高めるために、飲料容器が転倒した場合でも吸い口から飲料が漏れ出さないような漏れ防止機能を有しているものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2004−535238号公報
【特許文献2】実公昭27−1789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の漏れ防止機能を有する飲料容器用蓋は、複数部品により構成されており、洗浄や組立に手間がかかるという不都合がある。また、従来の飲料容器用蓋は通常ねじ孔を有しており、このねじ孔が飲料容器の取り付けねじ部にねじ結合される。ねじ孔を有する従来の飲料容器用蓋と取り付けねじ部を有する飲料容器とはねじ結合可能な対である必要があるため、ねじ孔を有する従来の飲料容器用蓋は汎用性に乏しかった。さらに、ねじ結合により飲料容器用蓋と飲料容器とを固定する方法では、飲料容器に対する飲料容器用蓋の締め付けが弱いとねじ結合部から内容物である飲料が漏れだすことになる。
【0006】
なお、簡単な構造であって比較的洗浄の容易な蓋が、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2に開示されている蓋は、蓋をしたまま容器に対して内容液を出入りさせることができ、且つ、ゴムの弾性により自動閉塞作用をもつ切裁部が設けられている。しかしながら、特許文献2に開示されている蓋は、蓋の切裁部から容器に対して内容液を出し入れする際に、蓋の切裁部を注ぎ口として利用し、蓋を挟持した指先に力を加えて切裁部を左右に開いて切裁部を開口させる必要があるため、高齢者や乳幼児、あるいは手が不自由な入院患者などには不向きである。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑み、蓋をしたまま容器内の内容物を使用者が容易に飲食することのでき、且つ、漏れ防止機能を有する容器の蓋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る容器の蓋は、厚さ方向に貫通する第1の貫通面及び第2の貫通面によって構成される貫通切り込み部を有する天蓋部と、容器に嵌着される保持部とを備え、前記天蓋部と前記保持部が一体の弾性体によって形成され、前記天蓋部を蓋の表側から裏側に向かう方向に凸に湾曲した形状にすることにより、蓋の裏側から表側に向かう方向の圧力が第1の閾値未満であれば前記貫通切り込み部は閉じた状態を保ち、蓋の表側から裏側に向かう方向の圧力が第2の閾値(第1の閾値より小さい値)以上であれば前記貫通切り込み部は閉じた状態を維持できず、前記第1の貫通面と前記第2の貫通面との間に隙間ができるようにしている。
【0009】
このような構成によると、容器が倒れ内容物によって蓋の裏側から表側に向かう方向に圧力がかかっても貫通切り込み部は閉じた状態を保つことができるので、貫通切り込み部からの内容物の漏れを防止することができ、その一方で、貫通切り込み部の周辺に唇等で少し押すだけの小さな圧力を蓋の表側から裏側に向かう方向にかけるだけで、貫通切り込み部5を開いた状態にすることができる。これにより、蓋をしたまま容器内の内容物を使用者が容易に飲食することのでき、且つ、内容物の漏れを防止することができる。また、唇等の動きで注出量をコントロールするので、コップやペットボトルなどの飲料容器を傾けて注出量をコントロールする場合に比べて注出量のコントロールが容易である。したがって、高齢者や乳幼児、あるいは手が不自由な入院患者などの利用に適している。また、内容物の漏れを防止することができるため、本発明に係る容器の蓋が取り付けられた容器は内容物を収容した状態で容易に携行することができる。
【0010】
また、前記貫通切り込み部5が閉じた状態を保つ保持力を増加させるために、前記貫通切り込み部の周辺領域の硬度(JIS K6301による測定値)を5度〜60度とし、前記貫通切り込み部の周辺領域の硬度を他の領域の硬度よりも小さくしてもよい。
【0011】
また、前記貫通切り込み部5が閉じた状態を保つ保持力を増加させるために、前記第1の貫通面及び前記第2の貫通面を蓋の表側から裏側に向かう方向に延長し、前記貫通切り込み部が蓋の裏側に突出するようにしてもよい。例えば、前記天蓋部の蓋の裏側に第1のリブ状突起及び第2のリブ状突起を設け、前記第1の貫通面が前記第1のリブ状突起の側面を含み、前記第2の貫通面が前記第2のリブ状突起の側面を含むようにすればよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、蓋をしたまま容器内の内容物を使用者が容易に飲食することのでき、且つ、漏れ防止機能を有する容器の蓋を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明に係る容器の蓋が取り付けられた容器の斜視図を図1に示す。
【0014】
本発明に係る容器の蓋1は、容器2の内方側(本発明に係る容器の蓋1の表側から裏側に向かう方向)に凸に湾曲した形状の天蓋部3と、輪帯状の保持部4とを備えている。天蓋部3と保持部4とはともに弾性材料(例えばシリコンゴムや弾性を有する合成樹脂など)からなり一体形成されている。
【0015】
天蓋部3には、I字状の貫通切り込み部5が設けられている。I字状の貫通切り込み部5は天蓋部3の厚さ方向に貫通する第1の貫通面及び第2の貫通面によって構成されている。また、保持部4の内壁は図2に示すようにストレート形状であり、ねじ孔を有していない。さらに、貫通切り込み部5の周辺領域6の硬度(JIS K6301による測定値)は5度〜60度とし、貫通切り込み部5の周辺領域6の硬度を他の領域の硬度より小さくしている。
【0016】
上記構成の本発明に係る容器の蓋1の作用・効果について以下に説明する。
【0017】
図1に示すように本発明に係る容器の蓋1を容器2に取り付けると、容器2の口部外壁に保持部4の内壁が接する。そして、保持部4が伸縮性のある弾性体で構成されているため、容器2の口部外壁と保持部4の内壁とが密着する。保持部4の内径が容器2の口部の外径より若干小さければ、容器2の口部に取り付けねじ部が有ろうが無かろうが、保持部4の弾性力により容器2の口部外壁と保持部4の内壁とが密着するので、容器2の口部外壁と保持部4の内壁との接触箇所から内容物が漏れださない。したがって、本発明に係る容器の蓋1は、ねじ孔を有する従来の飲料容器用蓋に比べて汎用性に富んでいる。なお、保持部4の内壁に環状のリブを設けて容器2の口部外壁と保持部4の内壁との密着量を向上させてもよい。
【0018】
天蓋部3が容器2の内方側(本発明に係る容器の蓋1の表側から裏側に向かう方向)に凸に湾曲した形状であるので、図1に示すような通常状態においては、I字状の貫通切り込み部5の第1の貫通面と第2の貫通面とが密着するように第1の貫通面及び第2の貫通面に圧力がかかり、I字状の貫通切り込み部5は閉じた状態を保つ。
【0019】
また、本発明に係る容器の蓋1の裏側から表側に向かう方向の圧力が第1の閾値未満であればI字状の貫通切り込み部5は閉じた状態を保ち、本発明に係る容器の蓋1の表側から裏側に向かう方向の圧力が第2の閾値(第1の閾値より小さい値)以上であればI字状の貫通切り込み部5は閉じた状態を維持できず、第1の貫通面と第2の貫通面との間に隙間ができるように、第1の貫通面及び第2の貫通面の各面積と貫通切り込み部5の周辺領域6の硬度とが設計されている。これにより、図3のように容器2が倒れ内容物によって本発明に係る容器の蓋1の裏側から表側に向かう方向に圧力がかかってもI字状の貫通切り込み部5は閉じた状態を保つことができるので、貫通切り込み部5からの内容物の漏れを防止することができ、その一方で、貫通切り込み部5の周辺領域6に唇等で少し押すだけの小さな圧力を本発明に係る容器の蓋1の表側から裏側に向かう方向にかけるだけで、図4に示すようにI字状の貫通切り込み部5を開いた状態にすることができる。これにより、蓋をしたまま容器内の内容物を使用者が容易に飲食することのでき、且つ、内容物の漏れを防止することができ、さらに、本発明に係る容器の蓋1から一旦外部に出た内容物が貫通切り込み部5を介して逆流して容器2に戻ることがないので衛生面において優れている。また、唇等の動きで注出量をコントロールするので、コップやペットボトルなどの飲料容器を傾けて注出量をコントロールする場合に比べて注出量のコントロールが容易である。また、内容物の漏れを防止することができるため、本発明に係る容器の蓋1が取り付けられた容器2は内容物を収容した状態で容易に携行することができる。
【0020】
なお、図3に示す状態での貫通切り込み部5の長手方向にそった切断線による部分断面図は図5に示すようになり、図4に示す状態での貫通切り込み部5の長手方向にそった切断線による部分断面図は図6に示すようになる。図5及び図6中の符号7は第1の貫通面を示している。
【0021】
第1の貫通面及び第2の貫通面の各面積の設計値を変更することにより、第1の貫通面及び第2の貫通面にかかる圧力を調整することができるので、図1に示すような通常状態において第1の貫通面及び第2の貫通面にかかる圧力、上記第1の閾値、並びに上記第2の閾値の調整が可能となる。
【0022】
容器2の内圧が大気圧と等しいときは、I字状の貫通切り込み部5の第1の貫通面と第2の貫通面とが密着するように第1の貫通面及び第2の貫通面に圧力がかかるため、I字状の貫通切り込み部5は閉じた状態を保つ。一方、容器2の内圧が大気圧よりも高くなって、本発明に係る容器の蓋1の裏側から表側に向かう方向の圧力が上記第1の閾値以上になった場合、I字状の貫通切り込み部5が開いた状態になり、容器2の内圧が大気圧よりも低くなって、本発明に係る容器の蓋1の表側から裏側に向かう方向の圧力が上記第2の閾値以上になった場合、I字状の貫通切り込み部5が開いた状態になる。したがって、本発明に係る容器の蓋1が取り付けられた容器2の内容物を電子レンジ等により加熱した場合、容器2の内圧が大気圧よりも高くなって、本発明に係る容器の蓋1の裏側から表側に向かう方向の圧力が上記第1の閾値以上になると、貫通切り込み部5が開いた状態になり、貫通斬り込み部5を通じて容器2内の過剰の圧力を逃すことができるので安全に加熱を行うことができる。
【0023】
また、貫通切り込み部5の周辺領域6の硬度を他の領域の硬度より小さくすることに代えて又は加えて、第1の貫通面及び第2の貫通面を蓋の表側から裏側に向かう方向に延長し、貫通切り込み部5が蓋の裏側に突出するようにして、貫通切り込み部5が閉じた状態を保つ保持力を増加させてもよい。
【0024】
貫通切り込み部5の周辺領域6の硬度を他の領域の硬度より小さくすることに代えて、第1の貫通面及び第2の貫通面を蓋の表側から裏側に向かう方向に延長し、貫通切り込み部5が蓋の裏側に突出するように天蓋部3の蓋の裏側に第1のリブ状突起及び第2のリブ状突起を設け、第1の貫通面が第1のリブ状突起の側面を含み、第2の貫通面が前記第2のリブ状突起の側面を含む構成にした場合、I字状の貫通切り込み部5を開いた状態での斜視図は図7のようになり、貫通切り込み部5の長手方向に垂直な切断線による本発明に係る容器の蓋1の断面斜視図は図8及び図9のようになる。図8はI字状の貫通切り込み部5が閉じた状態を示しており、図9はI字状の貫通切り込み部5が開いた状態を示している。図9中の符号8は第2の貫通面を示し、図8及び図9中の符号9は第1のリブ状突起を示し、図8及び図9中の符号10は第2のリブ状突起を示している。
【0025】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、容器は飲料容器に限定されず、例えばゼリー状食品を収納する容器などであってもよい。また、貫通切り込み部5はI字状に限定されず、例えば緩やかなS字状などであってもよい。また、本発明に係る容器の蓋が取り付けられる容器はコップに限定されず、例えば図10に示すように本発明に係る容器の蓋がペットボトルの口に取り付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】は、本発明に係る容器の蓋が取り付けられた容器の斜視図である。
【図2】は、本発明に係る容器の蓋を裏側から見た斜視図である。
【図3】は、本発明に係る容器の蓋が取り付けられた容器が倒れた状態を示す図である。
【図4】は、本発明に係る容器の蓋の貫通切り込み部が開いた状態を示す図である。
【図5】は、図3に示す状態での貫通切り込み部の長手方向にそった切断線による部分断面図である。
【図6】は、図4に示す状態での貫通切り込み部の長手方向にそった切断線による部分断面図である。
【図7】は、貫通切り込み部での蓋の厚みを増した場合の貫通切り込み部が開いた状態での本発明に係る容器の蓋が取り付けられた容器の斜視図である。
【図8】は、貫通切り込み部での蓋の厚みを増した場合の貫通切り込み部が閉じた状態での本発明に係る容器の蓋の断面斜視図である。
【図9】は、貫通切り込み部での蓋の厚みを増した場合の貫通切り込み部が開いた状態での本発明に係る容器の蓋の断面斜視図である。
【図10】は、本発明に係る容器の蓋がペットボトルの口に取り付けられた様子を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 本発明に係る容器の蓋
2 容器
3 天蓋部
4 保持部
5 貫通切り込み部
6 貫通切り込み部の周辺領域
7 第1の貫通面
8 第2の貫通面
9 第1のリブ状突起
10 第2のリブ状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する第1の貫通面及び第2の貫通面によって構成される貫通切り込み部を有する天蓋部と、容器に嵌着される保持部とを備え、
前記天蓋部と前記保持部が一体の弾性体によって形成され、
前記天蓋部を蓋の表側から裏側に向かう方向に凸に湾曲した形状にすることにより、蓋の裏側から表側に向かう方向の圧力が第1の閾値未満であれば前記貫通切り込み部は閉じた状態を保ち、蓋の表側から裏側に向かう方向の圧力が第2の閾値(第1の閾値より小さい値)以上であれば前記貫通切り込み部は閉じた状態を維持できず、前記第1の貫通面と前記第2の貫通面との間に隙間ができるようにしていることを特徴とする容器の蓋。
【請求項2】
前記貫通切り込み部の周辺領域の硬度(JIS K6301による測定値)が5度〜60度であり、前記貫通切り込み部の周辺領域の硬度が他の領域の硬度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の容器の蓋。
【請求項3】
前記第1の貫通面及び前記第2の貫通面が蓋の表側から裏側に向かう方向に延長され、前記貫通切り込み部が蓋の裏側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の容器の蓋。
【請求項4】
前記天蓋部の蓋の裏側に第1のリブ状突起及び第2のリブ状突起を設け、前記第1の貫通面が前記第1のリブ状突起の側面を含み、前記第2の貫通面が前記第2のリブ状突起の側面を含むことを特徴とする請求項3に記載の容器の蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−265825(P2008−265825A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112579(P2007−112579)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【特許番号】特許第4036888号(P4036888)
【特許公報発行日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(591054820)
【Fターム(参考)】